以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての能動型制振装置10が示されている。この能動型制振装置10は、加振機構である電磁式アクチュエータ12を含んで構成されており、本実施形態では、当該電磁式アクチュエータ12が、制振対象である車両ボデー14に取り付けられることで、車両ボデー14からの振動に対して能動的な制振効果が発揮されるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、特に断りのない限り、能動型制振装置10の中心軸方向をいい、図1等における上下方向をいう。また、上下方向とは、特に断りのない限り、装着状態で略鉛直上下方向とされる、図1等における上下方向をいう。
より詳細には、電磁式アクチュエータ12は、インナ軸部材16を備えている。当該インナ軸部材16は、全体として軸方向に延びる中空の略筒形状とされており、中央に、略一定の断面形状を有して軸方向に延びる内孔18を備えている。本実施形態では、インナ軸部材16の内孔18は軸方向で貫通しておらず、インナ軸部材16は逆有底筒形状の中空構造とされている。すなわち、インナ軸部材16において軸方向の一方である上方の端部には、内周側に突出する環状のフランジ状部としての内周フランジ部20が形成されているとともに、インナ軸部材16の内孔18は、軸方向の他方である下方に開放されている。そして、かかる内周フランジ部20の内周縁部により、上下方向に貫通する挿通孔22が形成されている。なお、見方によれば、インナ軸部材16の内孔18は、上側開口部において円環板形状(フランジ形状)の内周フランジ部20で狭窄されているのであり、かかる内孔18は、内周フランジ部20の中心孔である挿通孔22を通じて、軸方向に貫通している。
一方、インナ軸部材16において軸方向の一方である上方の端部には、外周側に突出する外周フランジ部24が設けられている。本実施形態では、外周フランジ部24が、周方向の全周に亘って連続して形成されており、円環板状(フランジ状)とされている。尤も、かかる外周フランジ部24は、周上で部分的に突出した構造とされていても良い。
かかるインナ軸部材16は、例えば鉄やアルミニウム合金などの金属や補強樹脂などの合成樹脂の如き剛性材により好適に形成される。なお、本実施形態では、インナ軸部材16の上端部分(外周フランジ部24の下方)において、インナ軸部材16の他の部分よりも外径寸法が大きくされた大径部26が形成されている。この大径部26は、周方向の全周に亘って形成されており、当該大径部26の下方端面により、軸直角方向に広がる環状の段差面28が形成されている。すなわち、インナ軸部材16において、段差面28よりも上方の外径寸法が相対的に大径とされている一方、段差面28よりも下方の外径寸法が相対的に小径とされている。
なお、インナ軸部材16の内孔18の内径寸法φA(図1参照)は、インナ軸部材16の軸方向寸法L1 (図1参照)の40%以上(φA≧0.4L1 )とされることが好適であり、更に好適には、50%以上(φA≧0.5L1 )とされる。本実施形態では、インナ軸部材16の内径寸法φAが、軸方向寸法L1 の60%程度(φA≒0.6L1 )とされている。
かかるインナ軸部材16には、コイル部材30が外挿装着されている。当該コイル部材30は、インナヨーク部材32と、当該インナヨーク部材32に上下二段に組み付けられる樹脂製のボビン34,34と、これらボビン34,34に巻回されてなるコイル36,36とから構成されている。
インナヨーク部材32は、全体として略筒状とされており、鉄などの強磁性材により形成されている。かかるインナヨーク部材32の上下端および軸方向中央部分からは、それぞれ外周側に突出する環状の端部フランジ部38,40および中央フランジ部42が形成されている。そして、これら端部フランジ部38,40と中央フランジ部42との軸方向間において、インナヨーク部材32に対して、外周側に開口する凹部44,44を有する環形状とされたボビン34,34が外挿装着されており、ボビン34,34が、端部フランジ部38,40と中央フランジ部42とにより軸方向で挟まれて固定支持されている。
さらに、当該ボビン34,34の凹部44,44内において導電性の金属線材を巻回してコイル36,36が構成されている。そして、かかるコイル36,36の端部は、図示しない外部電源に接続されており、当該外部電源から適宜給電され得るようになっている。なお、本実施形態では、上側のコイル36と、下側のコイル36は、線材がボビン34,34に対して互いに逆向きに巻回されており、通電によって逆向きの磁束を生じるようになっている。かかる上下のコイル36,36は、相互に連続した線材で構成されていてもよい。
また、端部フランジ部38,40および中央フランジ部42の突出先端(外周端部)は、軸方向に屈曲しており、端部フランジ部38,40の外周端部と中央フランジ部42の外周端部とが軸方向で所定距離を隔てて相互に対向している。これにより、ボビン34,34が、端部フランジ部38,40および中央フランジ部42の外周端部により外周側から覆われており、インナヨーク部材32に対して軸直角方向において挟まれて固定支持されている。
更にまた、上下のコイル36,36の周囲において、コイル36,36への通電によって磁束を導く磁路が、端部フランジ部38,40と中央フランジ部42を含むインナヨーク部材32によって形成されるようになっている。そして、当該磁路上において、これら端部フランジ部38,40と中央フランジ部42との外周端部における軸方向間の隙間により、それぞれ磁気ギャップ46,46が形成されている。かかる磁気ギャップ46,46は、それぞれ略一定の軸方向寸法をもって、周方向の全周に亘って連続して環状に広がっている。
なお、かかるインナヨーク部材32は、例えば軸方向で複数の部材に分割可能とされており、別個に形成された当該複数の部材が、相互に後固着されて、または相互に固着することなく軸方向で重ね合わされて、インナ軸部材16に組み付けられている。
一方、かかるコイル部材30の外周側には、マス部材としての可動子48が配設されている。かかる可動子48は、一対のアウタヨーク部材50,52と、その軸方向間に位置する永久磁石54とから構成されている。
かかる可動子48を構成する永久磁石54は、上下両面が軸直角方向に広がる平面とされた略円環板形状を有しており、軸方向に着磁されることで上下両面にN/Sの各一方の磁極が形成されている。即ち、永久磁石54は、例えば上面にN極/下面にS極のように、上面と下面に対して互いに対となる磁極が設定されている。なお、永久磁石54は、フェライト系磁石やアルニコ系磁石なども採用可能であるが、好適には希土類コバルト系磁石が採用される。
一対のアウタヨーク部材50,52は、それぞれ略筒状の部材とされており、鉄などの強磁性材により形成されている。なお、それぞれのアウタヨーク部材50,52は、永久磁石54への重ね合わせ面が、永久磁石54に対応した平坦面形状とされており、永久磁石54に対して広い面で略密接状態に重ね合わされるようになっている。また、一方(図1中の上方)のアウタヨーク部材50の内周面には、軸方向外方(図1中の上方)に向かって次第に内径寸法が大きくなる傾斜面56が形成されているとともに、他方(図1中の下方)のアウタヨーク部材52の内周面には、軸方向外方(図1中の下方)に向かって次第に内径寸法が大きくなる傾斜面58が形成されている。なお、これらのアウタヨーク部材50,52は、相互に上下反転した形状とされており、同じ部材を上下反転して用いることも可能である。
また、一方のアウタヨーク部材50の内周面における軸方向内側(図1中の下側)と、他方のアウタヨーク部材52の内周面における軸方向内側(図1中の上側)には、内周側に突出する環状の磁極部60,62が形成されている。すなわち、永久磁石54の軸方向両端面に設定された磁極により、一方のアウタヨーク部材50の磁極部60と他方のアウタヨーク部材52の磁極部62に対して、N/Sの各一方の磁極が与えられるようになっている。本実施形態では、各磁極部60,62の内周面が、互いに対となる磁極面とされている。なお、かかる磁極部60,62の軸方向寸法は、コイル部材30に設けられた磁気ギャップ46,46の軸方向寸法よりも小さくされている。
そして、かかる構造とされた可動子(マス部材)48が、コイル部材30に対して弾性的に支持されている。すなわち、コイル部材30および可動子48の上下両端面には、弾性部材としての板ばね64,64が重ね合わされて配設されている。これら板ばね64,64は、それぞれ環状とされており、コイル部材30の上下両側においてインナ軸部材16に外挿されるとともに、それらの内周部分が、コイル部材30の上下両端面に重ね合わされて、必要に応じて固着されている。一方、それらの外周端部が、アウタヨーク部材50,52の上下両端面における外周部分に固着されている。なお、かかる板ばね64,64には、所定の位置に、板厚方向で貫通する貫通孔が形成されている。
このように、可動子48がコイル部材30に対して弾性支持されることにより、可動子48がコイル部材30に対して軸方向で弾性的に移動可能とされている。なお、初期状態などコイル36,36に対して通電がなされていない状態では、コイル部材30に設けられた磁気ギャップ46,46と、可動子48に設けられた磁極部60,62とが、軸直角方向で対向して位置せしめられている。
以上の如き構造とされたコイル部材30がインナ軸部材16に対して固定的に取り付けられている。すなわち、インナ軸部材16に対して下方から、上方の板ばね64、コイル部材30および可動子48、下方の板ばね64が順に外挿されて、更に下方の板ばね64の下方から環状の固定部材66が外挿されて、当該固定部材66がインナ軸部材16に固定的に取り付けられている。なお、固定部材66のインナ軸部材16への固定手段は、圧入が好適であるが、接着や溶着などの従来公知の各種固定手段も採用され得る。
これにより、コイル部材30の内周部分が、板ばね64,64を介して、インナ軸部材16の大径部26と固定部材66とにより軸方向で挟まれて、固定支持されている。そして、コイル部材30に対して可動子48が軸方向で弾性的に移動可能とされていることから、コイル部材30がインナ軸部材16に対して固定的に取り付けられることで、可動子(マス部材)48が、インナ軸部材16に対して軸方向で弾性的に移動可能とされている。
また、本実施形態では、コイル部材30や可動子48を覆うように、インナ軸部材16の下方からカバー部材68が被せられている。当該カバー部材68は、上方に開口する有底の略筒形状とされており、底壁70の中央には貫通孔72が形成されている。そして、カバー部材68の底壁70が固定部材66の下方からインナ軸部材16に圧入状態で外挿されて、カバー部材68の下端部分がインナ軸部材16に嵌着されている。
一方、カバー部材68の上端部は外周側に屈曲せしめられて鍔部74が形成されている。この鍔部74は、周方向で全周に亘って連続して形成されており、当該鍔部74がインナ軸部材16の外周フランジ部24に重ね合わされている。さらに、鍔部74の外周端部には、上方に突出するかしめ片76が形成されており、かかるかしめ片76により、カバー部材68の上端部分がインナ軸部材16の外周フランジ部24にかしめ固定されている。
かかる能動型制振装置10における電磁式アクチュエータ12では、外部からコイル36,36に給電されることにより、コイル36,36の周囲に磁束が発生すると共に、発生した磁束がインナヨーク部材32で構成された磁路によって導かれて、磁気ギャップ46,46の軸方向両側に磁極が形成されるようになっている。
これにより、コイル部材30のコイル36,36への通電によって上下の磁気ギャップ46,46に磁界が生ぜしめられると、アウタヨーク部材50,52の磁極部60,62に対して軸方向の磁気吸引力が及ぼされることとなる。すなわち、上下の磁気ギャップ46,46では、それぞれの対向面において逆向きの磁界が生ぜしめられるようになっており、例えば上側の磁気ギャップ46を挟んだ対向面には上側がN極で下側がS極の磁極が発生する一方、下側の磁気ギャップ46を挟んだ対向面には上側がS極で下側がN極の磁極が発生することとなる。その結果、上側の磁気ギャップ46に対向するアウタヨーク部材50の磁極部60と、下側の磁気ギャップ46に対向するアウタヨーク部材52の磁極部62とが、互いに反対の磁極が設定されていても、同じ軸方向への電磁力が及ぼされるようになっている。これらの磁力の作用に基づいて、可動子48には、コイル部材30のコイル36,36への通電方向に応じて、何れかの軸方向への駆動力が作用せしめられるのであり、コイル36,36への通電間隔や通電方向を制御することにより、所定の周期で可動子48に、インナ軸部材16に対する軸方向の加振力を及ぼすことができる。すなわち、本実施形態では、電磁式アクチュエータ12が、インナ軸部材16、コイル部材30、可動子48、板ばね64,64を含んで構成されており、インナ軸部材16とマス部材(可動子48)との間における電磁力による軸方向の加振機構が、かかる電磁式アクチュエータ12により構成されている。
以上の如き構造とされた能動型制振装置10は、マウントに設けられた固定用ボルト78を利用して車両ボデー14に取り付けられている。なお、本実施形態の能動型制振装置10が取り付けられるマウントは何等限定されるものではないが、本実施形態ではエンジンマウント80として説明する。すなわち、パワーユニット82と車両ボデー14との間にエンジンマウント80が介装されて、パワーユニット82が車両ボデー14に対して弾性的に支持されている。
エンジンマウント80は、上下方向で離隔する第一の取付部材84と第二の取付部材86と、これら両取付部材84,86の対向面に加硫接着された本体ゴム弾性体88とを含んで構成されている。また、第一の取付部材84からは、上方に向かって固定用ボルト90が突出している一方、第二の取付部材86からは、下方に向かって固定用ボルト78が突出している。
かかるエンジンマウント80から上方に突出する固定用ボルト90がパワーユニット82に対して挿通されることで、エンジンマウント80がパワーユニット82に取り付けられているとともに、エンジンマウント80から下方に突出する固定用ボルト78が車両ボデー14に設けられたボルト挿通孔92に対して挿通されてナット94が締結されることで、エンジンマウント80が車両ボデー14に取り付けられている。
ここにおいて、かかるエンジンマウント80を車両ボデー14に固定する固定用ボルト78を利用して、本実施形態の能動型制振装置10が車両ボデー14に取り付けられている。すなわち、車両ボデー14のボルト挿通孔92と能動型制振装置10におけるインナ軸部材16の内周フランジ部20に設けられた挿通孔22とが相互に位置合わせされて、それぞれに対してエンジンマウント80から下方に突出する固定用ボルト78が挿通されている。かかる固定用ボルト78の突出先端は、インナ軸部材16の内孔18内に位置しており、当該固定用ボルト78に対して下方からナット94が締結されることで、車両ボデー14に対して能動型制振装置10が取り付けられている。したがって、本実施形態では、インナ軸部材16における内周フランジ部(フランジ状部)20により、車両ボデー(制振対象)14に対して固定される固定部が構成されている。また、車両ボデー14におけるボルト挿通孔92とその周縁部が取付部とされて、当該取付部に対して固定部(内周フランジ部20)がボルト固定されるようになっている。
かかる車両ボデー14に対する能動型制振装置10の固定状態では、固定用ボルト78の突出先端が、能動型制振装置10におけるインナ軸部材16の内孔18内に位置しており、当該内孔18の下端開口部を通じて治具を挿し入れて、ナット94を締結することが可能とされている。すなわち、本実施形態では、インナ軸部材16の内孔18により、固定用ボルト78に対する作業用孔が構成されている。
上記の如き本実施形態の能動型制振装置10では、パワーユニット82から入力される振動が本体ゴム弾性体88の弾性変形により低減されて車両ボデー14に伝達されるが、かかる車両ボデー14に伝達された振動に対して能動型制振装置10により制振効果が発揮されるようになっている。すなわち、車両ボデー14に入力された振動に対して、能動型制振装置10に設けられた加振機構としての電磁式アクチュエータ12により相殺的に振動を及ぼすことで、車両ボデー14に入力された振動に対して制振効果が発揮されるようになっている。
特に、本実施形態では、エンジンマウント80を車両ボデー14に取り付ける固定用ボルト78を利用して、能動型制振装置10を制振対象である車両ボデー14に取り付けることができることから、作業効率の向上が図られ得る。また、能動型制振装置10におけるインナ軸部材16が中空構造とされており、当該インナ軸部材16の内孔18を作業用孔として、固定用ボルト78に対してナット94を締結したり、または締結を解除することができるから、例えば能動型制振装置10を予め取り外したりすることなく、エンジンマウント80と車両ボデー14との固定を解除することも可能となる。
さらに、制振対象である車両ボデー14に対する能動型制振装置10の固定部がインナ軸部材16の内周フランジ部20により構成されて、能動型制振装置10の内部で車両ボデー14に固定されることから、能動型制振装置10の大型化が回避され得る。
次に、図2には、本発明の第二の実施形態としての能動型制振装置100が示されている。本実施形態の能動型制振装置100は、流体封入型防振装置に設けられた固定用ボルト102を利用して車両ボデー14に取り付けられている。なお、本実施形態の能動型制振装置100が取り付けられる流体封入式防振装置は何等限定されるものではないが、本実施形態ではエンジンマウント104として説明する。すなわち、パワーユニット82と車両ボデー14との間にエンジンマウント104が介装されて、パワーユニット82が車両ボデー14に対して弾性的に支持されている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一な部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことで詳細な説明を省略する。
本実施形態の能動型制振装置100は、前記第一の実施形態に示された能動型制振装置(10)に対して上下反転しているものの、略同様な構造であることから、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の能動型制振装置100におけるインナ軸部材106の内径寸法φB(図2参照)は、軸方向寸法L2 (図2参照)よりも大きくされており、軸方向寸法L2 の170%程度(φB≒1.7L2 )とされている。すなわち、本実施形態の能動型制振装置100は、前記第一の実施形態に記載の能動型制振装置(10)よりも径方向に扁平な形状とされている。
一方、本実施形態のエンジンマウント104は、第一の取付部材108と筒状の第二の取付部材110と、第一の取付部材108と第二の取付部材110の上方開口部との間に配設される本体ゴム弾性体112とを含んで構成されている。一方、第二の取付部材110の下方開口部は可撓性膜114で覆蓋されており、これら本体ゴム弾性体112と可撓性膜114との上下方向間に流体室116が形成されて非圧縮性流体が封入されている。なお、当該流体室116内にはオリフィス機構や可動膜機構などを有する仕切部材が収容配置されてもよい。
ここにおいて、第一の取付部材108からは上方に固定用ボルト118が突出しており、パワーユニット82に挿通されて、エンジンマウント104がパワーユニット82に取り付けられている。一方、第二の取付部材110の下端部には、有底筒形状のブラケット120が固定されており、その底壁122から下方に固定用ボルト102が突出している。この固定用ボルト102が車両ボデー14に設けられたボルト挿通孔92に挿通されてナット94が締結されることにより、エンジンマウント104が車両ボデー14に取り付けられている。
以上の如き構造とされたエンジンマウント104のブラケット120が、能動型制振装置100におけるインナ軸部材106の内孔124内に挿入されるとともに、インナ軸部材106において内周フランジ部20により形成される挿通孔22と車両ボデー14に形成されたボルト挿通孔92とが位置合わせされ、それぞれに固定用ボルト102が挿通されてナット94が締結されている。これにより、エンジンマウント104を車両ボデー14に取り付ける固定用ボルト102を利用して、能動型制振装置10が制振対象である車両ボデー14に取り付けられている。すなわち、本実施形態においても、制振対象である車両ボデー14に対して固定される固定部が、インナ軸部材106における内周フランジ部20により構成されているとともに、ボルト挿通孔92とその周縁部が取付部とされて、当該取付部に対して固定部(内周フランジ部20)がボルト固定されるようになっている。
本実施形態では、パワーユニット82由来の振動が、エンジンマウント104の本体ゴム弾性体112の弾性変形や、それに伴う流体室116内の流体移動により低減せしめられるが、かかる低減せしめられた振動がブラケット120を介して車両ボデー14に及ぼされる。このように車両ボデー14に入力される振動に対して、能動型制振装置100の電磁式アクチュエータ12により相殺的な振動を及ぼすことで、車両ボデー14に入力される振動に対する制振効果が発揮される。
以上の如き能動型制振装置100においても、エンジンマウント104の車両ボデー14への取付けに際して能動型制振装置100を固定用ボルト102を利用して同時に取り付けることができることから、作業効率の向上が図られ得る。特に、インナ軸部材106が中空構造とされて、その内孔124内にエンジンマウント104のブラケット120が挿入されることから、能動型制振装置100の取付けに際して軸方向で必要とされるスペースが減少され得る。
次に、図3には、本発明の第三の実施形態としての能動型制振装置130が示されている。この能動型制振装置130は、前記第一の実施形態におけるエンジンマウント(80)と略同様の構造とされたマウント132を介して、車両ボデー14に取り付けられている。なお、本実施形態における能動型制振装置130も、前記第一の実施形態に示された能動型制振装置(10)に対して上下反転しているものの、略同様な構造であることから、詳細な説明は省略する。
すなわち、マウント132における第一の取付部材84から上方に突出する固定用ボルト90が、能動型制振装置130におけるインナ軸部材16の内周フランジ部20により形成される挿通孔22に挿通されて、固定用ボルト90にナット94が締結されることにより、能動型制振装置130がマウント132に取り付けられている。一方、マウント132における第二の取付部材86から下方に突出する固定用ボルト78が、車両ボデー14におけるボルト挿通穴134に挿通されることで、マウント132が車両ボデー14に取り付けられている。すなわち、本実施形態では、車両ボデー14に対して内周フランジ部20がマウント132を介して間接的に固定されており、制振対象である車両ボデー14に対する固定部が内周フランジ部20により構成されている。また、ボルト挿通穴134とその周縁部が取付部とされて、当該取付部に対して固定部(内周フランジ部20)が間接的にボルト固定されるようになっている。
したがって、本実施形態においても、車両ボデー14に入力される振動に対して、能動型制振装置130の電磁式アクチュエータ12により相殺的な振動を及ぼすことで、車両ボデー14に入力される振動に対する制振効果が発揮される。特に、本実施形態では、能動型制振装置130を1つのマス成分とするとともに、マウント132の本体ゴム弾性体88をバネ成分とすることで、1つのマス−バネ系が構成されている。これにより、能動型制振装置130による電磁式アクチュエータ12の加振力を、マス−バネ系の共振作用を利用して大きな加振力として車両ボデー14に及ぼすことができて、車両ボデー14に入力される振動に対して優れた制振効果が発揮される。
次に、図4,5には、本発明の第四の実施形態としての能動型制振装置140が示されている。本実施形態における能動型制振装置140も、前記第一の実施形態に示された能動型制振装置(10)に対して上下反転しているものの、略同様な構造であることから、詳細な説明は省略する。
本実施形態の能動型制振装置140を構成するインナ軸部材142には、前記第一の実施形態などのような内周フランジ部(20)は設けられておらず、インナ軸部材142の内孔144が、略一定の断面形状をもって軸方向に貫通する形状とされている。
また、本実施形態におけるフランジ状部としての外周フランジ部146には、周上の3箇所において、外周側に突出する取付片148,148,148が形成されている。これら取付片148,148,148は、周上で略等間隔に形成されている。そして、これら取付片148,148,148には、上下方向で貫通する挿通孔150,150,150が形成されている。
以上の如き構造とされた能動型制振装置140は、車両ボデー14に形成されたボルト挿通穴152と、インナ軸部材142の外周フランジ部146に設けられた取付片148の挿通孔150とが相互に位置合わせされる。そして、これら挿通孔150とボルト挿通穴152とのそれぞれに固定用ボルト154が挿通されることで、能動型制振装置140が、車両ボデー14に取り付けられるようになっている。すなわち、本実施形態では、インナ軸部材142の取付片148,148,148を含む外周フランジ部146が、車両ボデー(制振対象)14に対してボルト固定される固定部とされており、車両ボデー14におけるボルト挿通穴152とその周縁部が取付部とされて、当該取付部に対して固定部(外周フランジ部146)がボルト固定されるようになっている。
したがって、本実施形態の能動型制振装置140においても、車両の走行などに伴い車両ボデー14に入力される振動に対して、電磁式アクチュエータ12により相殺的に加振力を及ぼすことができて、入力振動に対する制振効果が安定して発揮され得る。
特に、本実施形態における能動型制振装置140では、インナ軸部材142から外周側に延び出す外周フランジ部146により、制振対象である車両ボデー14にボルト固定される固定部が構成されていることから、固定部の大きさを十分に確保することができて、能動型制振装置140の車両ボデー14への取付固定が安定して実現され得る。また、内孔144の内周側には前記第一の実施形態などのような内周フランジ部(20)は設けられておらず、内孔144が軸方向に貫通していることから、内孔144に他部材を配設するなど車両ボデー14への固定以外の用途にも利用され得る。
次に、図6には、本発明の第五の実施形態としての能動型制振装置160が示されている。本実施形態の能動型制振装置160の構造は、前記第四の実施形態の能動型制振装置(140)と略同様であることから、詳細な説明は省略するが、本実施形態の能動型制振装置160は、ストラットマウント162を車両ボデー14に取り付ける固定用ボルト164を利用して車両ボデー14に取り付けられている。
すなわち、本実施形態のストラットマウント162は、第一の取付部材166と第二の取付部材168とを備えており、これら両取付部材166,168間が本体ゴム弾性体170により弾性連結されている。また、第一の取付部材166がショックアブソーバのピストンロッド172に対して外挿されて固定的に取り付けられているとともに、第一の取付部材166よりも上方では、ピストンロッド172にリバウンドストッパ部材174が外挿されている。そして、ピストンロッド172上端に設けられた雄ねじ部にナット176が締結されることにより、ピストンロッド172に対してリバウンドストッパ部材174が固定的に取り付けられている。また、本実施形態のストラットマウント162は、流体封入式のストラットマウントとされており、本体ゴム弾性体170と、当該本体ゴム弾性体170の下方に設けられた可撓性膜178との間に流体室180が形成されて、非圧縮性流体が封入されている。なお、かかる本体ゴム弾性体170と可撓性膜178との間には、オリフィス機構を有する仕切部材などが配置されてもよい。
さらに、第二の取付部材168の外周部分からは上方に固定用ボルト164が突出しているとともに、当該第二の取付部材168の外周部分における下方には、コイルスプリング182がピストンロッド172に外挿状態で配設されている。このコイルスプリング182は、上端部分がアッパスプリングシート184に支持されている一方、下端部分が図示しないショックアブソーバのシリンダに固定されたロアスプリングシートに支持されており、ショックアブソーバの伸縮に応じてコイルスプリング182が上下方向で伸縮されるようになっている。
一方、車両ボデー14には、ストラットマウント162に設けられた固定用ボルト164が挿通されるボルト挿通孔186が形成されている。そして、当該ボルト挿通孔186に対して固定用ボルト164が挿通されてナット188が締結されている。これにより、ストラットマウント162の内周部分がピストンロッド172に固定されている一方、ストラットマウント162の外周部分が車両ボデー14に固定されており、ストラットマウント162が、ピストンロッド172と車両ボデー14間に介装されている。
ここにおいて、本実施形態の能動型制振装置160は、ストラットマウント162を車両ボデー14に固定する固定用ボルト164を利用して、車両ボデー14に固定されている。すなわち、第四の実施形態と同様に能動型制振装置160を構成するインナ軸部材190の外周フランジ部146には挿通孔150を有する取付片148が設けられており、当該挿通孔150と、車両ボデー14に設けられたボルト挿通孔186とが相互に位置合わせされて、それぞれに固定用ボルト164が挿通されてナット188が締結されている。これにより、車両ボデー14に対して能動型制振装置160が取り付けられており、能動型制振装置160のインナ軸部材190においてボルト固定される固定部が、取付片148を含む外周フランジ部146により構成されている。また、制振対象(車両ボデー14)においてボルト挿通孔186とその周縁部が取付部とされて、当該取付部に対して固定部(外周フランジ部146)がボルト固定されるようになっている。
さらに、車両ボデー14には貫通孔192が形成されており、ストラットマウント162の上端部分とピストンロッド172の上端部分が車両ボデー14よりも外方(図6中の上方)に突出して、能動型制振装置160におけるインナ軸部材190の内孔194内に位置している。これにより、インナ軸部材190における内孔194の上端側開口部から治具を挿し入れて、ピストンロッド172上端の雄ねじ部にナット176を締結することが可能とされている。すなわち、能動型制振装置160を車両ボデー14に装着した状態であっても、インナ軸部材190の内孔194によってナット176の操作が可能とされており、当該内孔194によって、他部材を操作するための作業用孔が構成されている。
なお、本実施形態の能動型制振装置160を構成するインナ軸部材190の内孔194の内径寸法φC(図6参照)は、軸方向寸法L3 (図6参照)よりも大きくされており、軸方向寸法L3 の150%程度(φC≒1.5L3 )とされている。すなわち、本実施形態の能動型制振装置160は、前記第四の実施形態の能動型制振装置(140)に比べてより径方向に扁平な形状とされている。それ故、内孔194の内径寸法が十分に大きく確保されて、内孔194内にストラットマウント162の上端部分とピストンロッド172の上端部分が安定して位置せしめられるとともに、内孔194内に治具を挿し入れてのナット176の締結または締結解除などの操作が行い易くなっている。
以上の如き構造とされた本実施形態の能動型制振装置160では、ピストンロッド172からの振動がストラットマウント162における本体ゴム弾性体170の弾性変形および流体室180内の流体移動により低減されて車両ボデー14に伝達される。また、ショックアブソーバの収縮に伴う振動が、コイルスプリング182の圧縮により吸収されて、車両ボデー14に伝達される。そして、かかる車両ボデー14に伝達される振動に対して能動型制振装置160に設けられた加振機構(電磁式アクチュエータ12)により相殺的に振動を及ぼすことで、車両ボデー14に入力される振動に対して制振効果が発揮されるようになっている。
ここにおいて、本実施形態では、ストラットマウント162を車両ボデー14に固定する固定用ボルト164を利用して、能動型制振装置160が車両ボデー14に取り付けられることから、作業効率の向上が図られ得る。
特に、本実施形態では、インナ軸部材190の内孔194により作業用孔が構成されており、当該内孔194(作業用孔)を通じて、ピストンロッド172へのナット176の締結または締結解除が可能とされている。それ故、ストラットマウント162の上部に能動型制振装置160が設けられる場合であっても、能動型制振装置160を取り外すことなく、ピストンロッド172とストラットマウント162との連結を解除することができる。すなわち、能動型制振装置160のインナ軸部材190が、内孔194が軸方向に貫通する中空構造とされていることで、ピストンロッド172とストラットマウント162との連結解除に先立って能動型制振装置160を取り外すことがなく、更なる作業効率の向上が図られ得る。
次に、図7,8には、本発明の第六の実施形態としての能動型制振装置200が示されている。この能動型制振装置200は、図示しない車両の車輪から延びる部材に取り付けられるサブフレーム202と車両ボデー14との間に介装されている。本実施形態における能動型制振装置200も、前記第四の実施形態に示された能動型制振装置(140)と略同様な構造であることから、詳細な説明は省略する。本実施形態の能動型制振装置200を構成するインナ軸部材204では、外周フランジ部205において前記第四の実施形態のような取付片(148)は設けられていない一方、インナ軸部材204の内孔206に筒形防振装置(ブッシュ)208が固定されている。
すなわち、筒形防振装置208は、インナ筒部材210とアウタ筒部材212と、それらの径方向対向面に加硫接着された本体ゴム弾性体214とを含んで構成されており、インナ筒部材210とアウタ筒部材212とが軸方向で相対的に、且つ弾性的に移動可能とされている。かかる筒形防振装置208のアウタ筒部材212における外径寸法は、能動型制振装置200のインナ軸部材204における内径寸法と略等しくされている。そして、当該筒形防振装置208が、能動型制振装置200におけるインナ軸部材204の内孔206に圧入状態で挿通されることで、能動型制振装置200に対して筒形防振装置208が取り付けられており、インナ軸部材204とアウタ筒部材212とが、インナ筒部材210に対して軸方向で一体的に移動可能とされている。
一方、本実施形態のサブフレーム202は、全体として略矩形状とされており、その四隅には、上下方向に貫通する貫通孔216が形成されている。当該貫通孔216の内径寸法は、能動型制振装置200におけるカバー部材68の外径寸法と略等しくされている。
そして、かかるサブフレーム202の貫通孔216のそれぞれに対して、能動型制振装置200が圧入状態で挿通されて固定されている。かかる能動型制振装置200のサブフレーム202への固定状態では、貫通孔216を構成する筒状の周壁部218が、カバー部材68の鍔部74を介してインナ軸部材204の下端に設けられた外周フランジ部205に重ね合わされている。なお、本実施形態では、サブフレーム202に設けられた4つの貫通孔216,216,216,216のそれぞれに能動型制振装置200,200,200,200が圧入状態で挿通されて固定されているが、何れか1つの貫通孔216に対して能動型制振装置200が固定されていればよい。
一方、筒形防振装置208のインナ筒部材210には、車両ボデー14から延びるボルト222が挿通されて、ナット224が締結されている。これにより、車両ボデー14に対してインナ筒部材210が固定的に取り付けられている。
以上の如き構造とされた本実施形態の能動型制振装置200では、車両の走行に伴う上下方向の振動が、サブフレーム202、カバー部材68、インナ軸部材204、筒形防振装置208を介して車両ボデー14に伝達される。ここにおいて、筒形防振装置208のアウタ筒部材212に入力された振動は、本体ゴム弾性体214の弾性変形により低減されてインナ筒部材210および車両ボデー14に及ぼされるが、当該低減された振動に対して能動型制振装置200の電磁式アクチュエータ12により相殺的な加振力を及ぼすことで、車両ボデー14に入力される振動に対して制振効果が発揮されるようになっている。換言すれば、サブフレーム202からカバー部材68を介してインナ軸部材204に及ぼされる振動に対して能動型制振装置200の電磁式アクチュエータ12により相殺的な加振力を及ぼすことで、インナ軸部材204およびアウタ筒部材212に入力される振動が低減されるとともに、当該低減された振動が本体ゴム弾性体214の弾性変形により更に低減せしめられてインナ筒部材210および車両ボデー14に伝達されることから、車両ボデー14に及ぼされる振動が小さく抑えられ得る。
したがって、本実施形態では、インナ軸部材204が、内孔206に取り付けられる筒形防振装置208を介して車両ボデー14に固定されることから、インナ軸部材204の内孔206により制振対象である車両ボデー14に対する固定部が構成されている。また、車両ボデー14から延びるボルト222が取付部とされて、当該取付部が固定部(内孔206)に挿通されるようになっている。
本実施形態においても、能動型制振装置200が、インナ軸部材204の内孔206を利用して制振対象である車両ボデー14に固定されることから、能動型制振装置200の大型化が回避され得る。
次に、図9には、本発明の第七の実施形態としての能動型制振装置230が示されている。本実施形態の能動型制振装置230は、前記第六の実施形態における能動型制振装置(200)と略同様の構造とされていることから、詳細な説明は省略するが、本実施形態の能動型制振装置230は、サスペンションアーム232に取り付けられている。
すなわち、本実施形態のサスペンションアーム232は、図9中の左右方向に延びており、長さ方向両端部分に貫通孔234,236が形成されている。なお、これら貫通孔234,236は相互に異なる方向に延びており、一方(図9中の左方)の端部に設けられた貫通孔234が紙面奥手前方向に延びているとともに、他方(図9中の右方)の端部に設けられた貫通孔236が上下方向に延びている。そして、一方の端部に設けられた貫通孔234には、筒形防振装置238が圧入状態で挿通されて固定されているとともに、他方の端部に設けられた貫通孔236には、前記第六の実施形態と同様に筒形防振装置208が固定された能動型制振装置230が、圧入状態で挿通されて固定されている。
そして、一方の端部に設けられた筒形防振装置238が、ボルト−ナット構造をもって車両の車輪から延びる部材に取り付けられている一方、他方の端部に設けられた能動型制振装置230に固定される筒形防振装置208に対して車両ボデー14から延びるボルト222が挿通されてナット224が締結されている。
かかる構造とされた本実施形態の能動型制振装置230においても、前記第六の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
なお、本実施形態では、サスペンションアーム232の一方の端部に設けられた貫通孔234には筒形防振装置238が固定されていたが、他方の端部と同様に、筒形防振装置208を備える能動型制振装置230が固定されてもよい。
次に、図10には、本発明の第八の実施形態としての能動型制振装置240が示されている。本実施形態においても、能動型制振装置240が、サスペンションアーム242に取り付けられている。
すなわち、本実施形態のサスペンションアーム242においても、長さ方向両端部分に貫通孔234,236が形成されており、それぞれに筒形防振装置238,244が圧入状態で挿通されて固定されている。なお、本実施形態では、図10中左方の端部に設けられた貫通孔234が上下方向に延びている一方、図10中右方の端部に設けられた貫通孔236が紙面奥手前方向に延びている。そして、一方の端部に設けられた筒形防振装置238が、ボルト−ナット構造をもって車両の車輪から延びる部材に取り付けられている一方、他方の端部に設けられた筒形防振装置244が、ボルト−ナット構造をもって車両ボデー(14)から延びる部材に取り付けられている。
さらに、かかるサスペンションアーム242の長さ方向中間部分において、本実施形態の能動型制振装置240が取り付けられている。すなわち、サスペンションアーム242の長さ方向中間部分は直線状に延びるストレート部245とされており、本実施形態では、能動型制振装置240を構成するインナ軸部材246の内孔248の内径寸法が、サスペンションアーム242におけるストレート部245の外径寸法と略等しくされている。そして、能動型制振装置240のインナ軸部材246が、サスペンションアーム242のストレート部245に対して圧入状態で外挿されることで、能動型制振装置240がサスペンションアーム242に対して固定されている。なお、本実施形態のサスペンションアーム242は、長さ方向で複数の部材に分割可能とされており、能動型制振装置240の外挿後、当該複数の部材を相互に溶着などで固定することで、サスペンションアーム242の長さ方向中間部分に能動型制振装置240が取り付けられている。
以上の如き本実施形態の能動型制振装置240では、車両の走行に伴い図10中の左右方向の振動が及ぼされると、両筒形防振装置238,244により、かかる振動が低減せしめられて車両ボデー(14)に伝達されるが、当該低減せしめられた振動に対して、能動型制振装置240の電磁式アクチュエータ12により相殺的な加振力を及ぼすことで車両ボデー(14)に対して入力される振動に対して制振効果が発揮され得る。換言すれば、車両の走行に伴い図10中の左右方向の振動が及ぼされると、当該振動が一方の筒形防振装置238によって低減されてサスペンションアーム242に伝達されるとともに、かかる振動に対して能動型制振装置240により相殺的に加振力を及ぼすことでサスペンションアーム242に入力される振動に対して制振効果が発揮される。そして、サスペンションアーム242から車両ボデー(14)に入力される振動が更に他方の筒形防振装置244により低減されることから、車両の走行に伴う振動が十分小さくされ得る。
したがって、本実施形態では、サスペンションアーム242が制振対象とされており、インナ軸部材246の内孔248により制振対象(サスペンションアーム242)に対する固定部が構成されている。そして、サスペンションアーム242の長さ方向中間部分であるストレート部245が取付部とされて、当該取付部が固定部(内孔248)に挿通されるようになっている。
かかる構造とされた本実施形態の能動型制振装置240では、中空構造の能動型制振装置240が、サスペンションアーム242に外挿されて固定されることから、サスペンションアーム242の長さ方向の振動に対しても安定して制振効果が発揮され得る。また、能動型制振装置240が、インナ軸部材246の内孔248を利用して取り付けられることから、大型化も回避され得る。
なお、本実施形態では、サスペンションアーム242の長さ方向両端部分の貫通孔234,236に対して筒形防振装置238,244が挿通されて固定されていたが、前記第六や第七の実施形態のように筒形防振装置を備える能動型制振装置が挿通されて固定されてもよい。
次に、図11,12には、本発明の第九の実施形態としての能動型制振装置260が示されている。この能動型制振装置260は、サブフレーム202を車両ボデー14に固定するボルト262を利用して車両ボデー14に取り付けられている。なお、本実施形態における能動型制振装置260の構造は、上下反転しているものの、前記第六の実施形態における能動型制振装置(200)の構造と略同様であることから、詳細な説明を省略する。また、サブフレーム202の構造は、前記第六の実施形態と略同様であることから、図中に、前記第六の実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
すなわち、サブフレーム202の四隅には貫通孔216が形成されており、当該貫通孔216のそれぞれに筒形防振装置264が圧入状態で挿通されて固定されている。当該筒形防振装置264は、インナ筒部材266とアウタ筒部材268と、それらの径方向間に配設された本体ゴム弾性体270とを備えている。そして、インナ筒部材266の内孔272の下方に能動型制振装置260を構成するインナ軸部材204の内孔206が位置合わせされ、それぞれに車両ボデー14から下方に突出するボルト262が挿通されてナット274が締結されている。なお、本実施形態では、車両ボデー14から下方に突出する4本のボルト262のうち、図11中の上方の2本のボルト262,262に対して能動型制振装置260,260が固定されているが、能動型制振装置260が固定されるボルト262は、4本のうちの1本でもよいし、全てのボルト262に対して能動型制振装置260が固定されてもよい。
したがって、本実施形態の能動型制振装置260では、サブフレーム202を車両ボデー14に固定するボルト262を利用して能動型制振装置260が固定されることから、能動型制振装置260を固定する固定部が、インナ軸部材204の内孔206により構成されている。また、車両ボデー14から下方に突出するボルト262が取付部とされて、当該取付部が固定部(内孔206)に挿通されるようになっている。
以上の如き構造とされた能動型制振装置260では、車両の走行に伴うサブフレーム202およびアウタ筒部材268における上下方向の振動が、筒形防振装置264における本体ゴム弾性体270の弾性変形により低減されて、インナ筒部材266およびインナ軸部材204に伝達される。そして、当該インナ軸部材204に入力された振動に対して、能動型制振装置260の電磁式アクチュエータ12により相殺的な加振力を及ぼすことで、サブフレーム202から車両ボデー14に入力される振動に対しての制振効果が発揮され得る。
また、本実施形態においても、能動型制振装置260の固定に際して、インナ軸部材204の内孔206を利用することで、能動型制振装置260の大型化が回避され得る。それに加えて、サブフレーム202を車両ボデー14に固定するボルト262を利用して能動型制振装置260を固定することができることから、作業効率の向上が図られ得る。
次に、図13には、本発明の第十の実施形態としての能動型制振装置280が示されている。本実施形態の能動型制振装置280においても、前記第六の実施形態などと同様にインナ軸部材204の内孔206に筒形防振装置208が圧入状態で挿通されて固定されている。そして、筒形防振装置208を構成するインナ筒部材210に対して車両ボデー14から延びるボルト222が挿通されており、ナット224が締結されている。
したがって、本実施形態においても、車両ボデー14に入力される上下方向の振動に対して、能動型制振装置280の電磁式アクチュエータ12により相殺的な振動を及ぼすことで、車両ボデー14に入力される振動に対する制振効果が発揮される。特に、本実施形態では、能動型制振装置280を1つのマス成分とするとともに、筒形防振装置208を構成する本体ゴム弾性体214をバネ成分とすることで、1つのマス−バネ系が構成されている。これにより、能動型制振装置280による電磁式アクチュエータ12の加振力を、マス−バネ系の共振作用を利用して大きな加振力としてインナ筒部材210を通じて車両ボデー14に及ぼすことができて、車両ボデー14に入力される振動に対して優れた制振効果が発揮される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等限定的に解釈されるものではない。
たとえば、前記実施形態では、インナ軸部材において制振対象に対して固定される固定部が、インナ軸部材の内孔と、インナ軸部材から内周側に突設されたフランジ状部(内周フランジ部)と、インナ軸部材から外周側に突設されたフランジ状部(外周フランジ部)との何れか1つにより構成されていたが、これらのうち2つまたは3つを相互に組み合わせて採用してもよい。
また、前記第一〜第三の実施形態では、インナ軸部材16,106の内周側に環状の内周フランジ部20が突出することで、その内周縁部により挿通孔22が形成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、インナ軸部材の内周側に内孔を閉鎖するような円形、且つ平板状の内周フランジ部が設けられて、当該内周フランジ部に、軸方向に貫通する挿通孔が設けられてもよい。かかる挿通孔は、円形、且つ平板状とされた内周フランジ部の中央に1つだけ形成されるものに限定されず、内周フランジ部の適切な位置に複数設けられてもよい。
さらに、前記第一の実施形態では、エンジンマウント80を車両ボデー14に固定する固定用ボルト78を利用して、能動型制振装置10が車両ボデー14に固定されているが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、エンジンマウントを車両ボデーに固定する固定用ボルトと能動型制振装置を車両ボデーに固定する固定用ボルトとは別個であってよい。前記第二、第五、第九の実施形態も同様であり、能動型制振装置の車両ボデーへの固定は、他部材を車両ボデーに固定する固定用ボルトを利用するものでなくてよい。
更にまた、前記実施形態において、能動型制振装置にはカバー部材68が設けられていたが、カバー部材は必須なものではない。また、制振対象への固定部がインナ軸部材の内孔や内周フランジ部とされた第一〜第三、および第六〜第十の実施形態においては、外周フランジ部は必須なものではない。なお、外周フランジ部が設けられる場合であっても、外周フランジ部は、周方向の全周に亘って連続して延びる必要はなく、周方向で部分的に形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、インナ軸部材にコイル部材30が固定的に取り付けられる一方、マス部材(可動子48)に永久磁石54およびアウタヨーク部材50,52が設けられていたが、反対に、インナ軸部材に永久磁石およびヨーク部材が設けられるとともに、マス部材にコイル部材が設けられてもよい。
さらに、前記実施形態における電磁式アクチュエータ12では、インナ軸部材に固定的に取り付けられるコイル部材30とマス部材(可動子48)とが径方向で対向していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、本発明の能動型制振装置において採用される電磁式アクチュエータでは、インナ軸部材とマス部材とは軸方向で対向して、電磁石の吸着力を利用して加振力を及ぼすようになっていてもよい。
更にまた、前記実施形態では、電磁式アクチュエータ12が、位置固定に配置されたコイル部材への通電によって発生する電磁場の作用に基づいて、移動可能に配置された永久磁石が軸方向に加振駆動されるソレノイド型とされていたが、利用する電磁力(電磁気力)の種類などが限定されるものでなく、各種の電磁式アクチュエータの構成が採用可能である。例えば、永久磁石をインナ軸部材とアウタ筒部材の一方の側に固定的に配置すると共に、コイル部材を軸方向へ移動可能に配置せしめて、コイル部材への通電によって発生するローレンツ力などの電磁力を利用して加振駆動力を得るようにしたボイスコイルタイプの電磁式アクチュエータとされてもよい。
また、前記実施形態では、インナ軸部材の軸方向端部に内周フランジ部や外周フランジ部が設けられていたが、これら内周フランジ部や外周フランジ部は、インナ軸部材の軸方向中間部分に設けられてもよい。なお、前記第一〜第三の実施形態では、内周フランジ部20と外周フランジ部24が何れもインナ軸部材16,106における軸方向一方の端部(上方端部)に設けられていたが、インナ軸部材における内周フランジ部と外周フランジ部の軸方向位置は相互に異ならされてもよい。