以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の実施形態による自律走行作業装置について説明する。図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面の清掃作業を実行する床面洗浄機等の清掃部5を作業部として備える。
また、図2に示すように、自律走行作業装置1は、装置本体2とこの装置本体2の周囲の壁や置物等の障害物(物体)との位置関係(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)等を計測する計測部6を備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御装置7と、各種機能の操作や表示のためのタッチパネルからなる操作表示部8と、外部機器と無線通信を行うための無線通信部9と、各部に電力を供給するための電源装置10とを備える。更に、自律走行作業装置1は、清掃部5による床面の清掃作業の結果に基づいて床面の汚れを検出する汚れ検出部11を備える。
自律走行作業装置1は、事前に入力されたプログラムに従って自律的な走行が可能な車両であり、手動操作による走行および自動操作による自律的な走行が可能な車両であってもよく、手動操作モード、自動操作モードおよびデータ修正モードの何れかの動作モードに切り換えられて動作する。
自律走行作業装置1は、清掃エリア(作業エリア)の環境地図、走行経路、走行設定、清掃設定(作業設定)を事前に記憶することで、自律走行作業(清掃)を実行することができる。清掃エリアは、自律走行作業装置1の清掃(作業)対象領域であり、例えば、シネマコンプレックスやショッピングモール等の大型商業施設の床が清掃の対象となる。1つ以上の清掃エリアのそれぞれに関連付けられて、唯一のエリア名および環境地図が記憶される。なお、走行経路、走行設定および清掃設定を組み合わせたプランは、清掃エリアに1つ以上、唯一のプラン名と共に事前に記憶される。
自律走行作業装置1は、事前に入力された環境地図、走行経路、走行設定および清掃設定を、自動操作による走行および清掃を行う自律走行作業により実行することができる。自律走行作業装置1は、1つ以上の清掃エリア毎に、1つ以上のプランを用意していて、各清掃エリアで自律走行作業を実行する場合に、1つ以上のプランから選択された1つのプランを使用する。このとき、1つのプランは、操作表示部8を介した手動操作で、あるいは制御装置7による自動操作で選択される。なお、2つ以上のプランが存在する場合、各プランは、異なる走行経路で構成されてもよく、共通の走行経路で構成されてもよい。
自律走行作業装置1は、プランの走行設定および清掃設定の少なくとも一部を変更することができる。この走行設定および清掃設定の変更が行われると、変更後の新たな走行設定および清掃設定が作成されて記憶される。換言すれば、変更前のプランとは別個に、変更後の走行経路、走行設定および清掃設定を組み合わせたプランが、変更毎に記憶される。なお、データ変更は、入力されたデータをもとに変更されてもよく、制御装置7による自動変更により行われてもよい。
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、図2に示すように、駆動輪として一対の左前輪部12および右前輪部13を備え、補助輪として左右一対の後輪14とを備える。左前輪部12は、左前輪、左前輪を駆動する左モータおよび左前輪の回転を検出する左エンコーダ12aを備え、右前輪部13は、右前輪を駆動する右モータおよび右前輪の回転を検出する右エンコーダ13aを備える。走行部3は、左モータおよび右モータが左前輪および右前輪を同時に回転させることで装置本体2を走行(前進または後退)させることができる一方、左前輪または右前輪を停止(または低速に回転)させると同時に右前輪または左前輪を回転(または高速に回転)させることで装置本体2を左旋回または右旋回させることができる。なお、左前輪および右前輪をそれぞれ逆方向に回転させることで、その場で転回させることもできる。
走行部3の走行経路として記憶される走行データには、例えば、走行経路の座標(環境地図上におけるX座標およびY座標)、進行方向に対する旋回角度、エンコーダ(左エンコーダ12aや右エンコーダ13a)のカウント数等があり、これらの走行データに基づいて走行経路を図化することができる。また、走行部3の走行設定には、走行の作動/停止、走行速度等があり、走行設定として記憶される走行データには、例えば、走行モータ(左前輪部12の左モータや右前輪部13の右モータ)の稼働状態(オフ、低速、中速、高速)がある。走行モータの稼働状態は、低速、中速、高速の他、数字(1〜5または1〜7等)による複数段階設定でもよい。
走行操作部4は、装置本体2の上面後側に設けられ、ハンドル4aおよびスロットル4bを備え、ハンドル4aおよびスロットル4bの手動操作によって左前輪部12の左モータや右前輪部13の右モータが操作される。例えば、走行操作部4は、ハンドル4aの手動操作によって装置本体2を左旋回または右旋回させることができ、また、スロットル4bの手動操作によって装置本体2の走行(前進や後退)の作動および停止、並びに走行速度の調整(加減速)を行うことができる。なお、走行操作部4は、自律走行作業装置1の動作モードが手動操作モードに設定されている間は、作業者による手動操作を受け付けるが、自動操作モードおよびデータ修正モードに設定されている間は、緊急停止ボタン37の操作以外の作業者による手動操作を受け付けないように構成される。
清掃部5は、清掃設定に従って床面を清掃するように構成され、清掃設定は、初期設定されてもよく、操作表示部8を介して手動で設定されてもよく、または記憶部7bに記憶された清掃データに基づいて自動で設定されてもよい。清掃部5は、例えば、液体を用いた湿式の清掃手法によって床面を清掃する機構であり、床面を洗浄する洗浄部16と、洗浄部16へと洗浄液を供給する洗浄液供給部17(図2参照)と、洗浄部16での使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部18とを備える。
洗浄部16は、例えば、洗浄部材16a、カバー16b、洗浄部材回転モータ16cおよび接地圧調整部材16d(図2参照)等を備える。洗浄部材16aは、洗浄パッドや洗浄ブラシ等で構成され、装置本体2の下面中央に回転可能に取り付けられ、床面に接触すると共に回転することで床面を清掃する。また、洗浄部材16aは、装置本体2に対して着脱可能であり、即ち、交換可能な部材である。カバー16bは、洗浄部材16aを覆うように構成され、洗浄部材16aで使用された洗浄液の飛散を防止する。洗浄部材回転モータ16cは、洗浄部材16aの上部に接続されていて、洗浄部材16aを回転駆動させる。接地圧調整部材16dは、洗浄部材16aの床面に対する接地圧を調整し、例えば、洗浄パッドのパッド圧を調整するパッド圧調整アクチュエータで構成される。
洗浄液供給部17は、装置本体2の内部に設けられ、洗浄液を貯蔵する洗浄液タンク(図示せず)、洗浄液タンクと洗浄部16の洗浄部材16aとを連通する給水ホース(図示せず)、および給水ポンプ(図示せず)等を備える。洗浄液供給部17は、給水ポンプによって洗浄液タンクから給水ホースを介して洗浄部材16aへと洗浄液を供給する。また、洗浄液供給部17は、洗浄液の残量を検知するために、洗浄液タンクに水位センサ19を備える。
吸引部18は、例えば、スキージ18a、吸引パイプ(図示せず)、汚水タンク(図示せず)、吸引ブロア18b(図2参照)、スキージ位置調整部材18c(図2参照)等を備える。スキージ18aは、左右方向に長い部材であり、装置本体2の下面において洗浄部16よりも後方に設けられ、床面に接触して洗浄部16からの汚水を装置本体2の後方に逃がすことなく収集する。吸引パイプ、汚水タンクおよび吸引ブロア18bは、装置本体2の内部に設けられ、吸引パイプは、スキージ18aと汚水タンクとを連通している。吸引部18は、吸引ブロア18bによってスキージ18aから吸引パイプを介して汚水を吸引すると共に汚水タンクへと回収する。スキージ位置調整部材18cは、スキージ18aの床面に対する上下位置を調整するアクチュエータである。また、吸引部18は、汚水の回収量を検知するために、汚水タンクに水位センサ19を備える。
清掃部5の清掃設定には、例えば、洗浄部材16aの回転の作動/停止、洗浄液供給部17による洗浄液供給の作動/停止、吸引部18による吸引の作動/停止、洗浄部材16aの床面に対する接地圧の強度、洗浄液供給部17による洗浄液供給量、吸引部18による吸引強度等がある。また、清掃設定として記憶される清掃データには、例えば、洗浄部16による洗浄部材16aの回転状態(オフ、低速、中速、高速)および接地圧状態(オフ、低圧、中圧、高圧)、洗浄液供給部17による洗浄液の供給状態(オフ、少量、中量、多量)、吸引部18による吸引ブロア18bの吸引状態、即ち、汚水の回収状態(オフ、少量、中量、多量)等がある。なお、各清掃データは、数字(1〜5または1〜7等)による複数段階設定でもよい。
計測部6は、装置本体2と周囲の障害物や壁面等の物体との距離および角度を計測する障害物センサ6a(図2参照)を備え、更に、装置本体2付近の床面の段差を検知する段差センサ(図示せず)、障害物等の物体との接触を検知する接触センサ(図示せず)等を備えてもよい。障害物センサ6aは、例えば、装置本体2の前面に設けられ、障害物レンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)等から構成され、床面から所定の計測可能高さ以内で、障害物センサ6aから所定の計測可能範囲内に存在する障害物等の物体を検出する。
制御装置7は、図2および図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)等で構成される制御部7aと記憶部7bとを備える。制御部7aおよび記憶部7bは、バス7cを介して接続され、バス7cは、更にインタフェース7dに接続されている。記憶部7bは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等からなり、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータが格納される。
制御部7aは、記憶部7bに格納されたプログラムやデータを読み取り、このプログラムを実行することにより、各部および各種機能を制御する。制御部7aは、バス7cおよびインタフェース7dを介して、上記の走行部3、走行操作部4、清掃部5、計測部6、操作表示部8、無線通信部9、電源装置10および汚れ検出部11に接続されている。そして、制御装置7は、電源装置10から電力供給を受けて、各部に制御信号を送信して各部を作動させ、また、各部から信号を受信する。例えば、制御部7aは、自律走行における走行部3による走行や自動清掃における清掃部5による清掃作業、床面の汚れ状況の検出、自律走行作業における推奨プランの判定や報知等の機能を統括制御する。
更に、制御部7aは、自律走行制御部21と、自動清掃制御部22と、環境地図作成部23と、走行データ作成部24と、清掃データ作成部25と、推奨プラン判定部26と、推奨プラン報知部27と、セル分割部28と、清掃履歴作成部29と、汚れ頻度判定部30と、設定変更部31と、清掃レポート作成部32と、清掃レポート出力部33とを備える。なお、自律走行制御部21、自動清掃制御部22、環境地図作成部23、走行データ作成部24、清掃データ作成部25、推奨プラン判定部26、推奨プラン報知部27、セル分割部28、清掃履歴作成部29、汚れ頻度判定部30、設定変更部31、清掃レポート作成部32および清掃レポート出力部33は、記憶部7bに記憶されて制御部7aに実行されるプログラムで構成されていてよい。また、走行データ作成部24および清掃データ作成部25は、走行経路、走行設定および清掃設定を組み合わせたプランとして作成するように統合されたプラン作成部でもよい。制御部7aに備わる各部(自律走行制御部21、自動清掃制御部22、環境地図作成部23、走行データ作成部24、清掃データ作成部25、推奨プラン判定部26、推奨プラン報知部27、セル分割部28、清掃履歴作成部29、汚れ頻度判定部30、設定変更部31、清掃レポート作成部32および清掃レポート出力部33)の詳細は後述する。
また、記憶部7bは、1つ以上の清掃エリアについてそれぞれの環境地図およびエリア名を記憶する環境地図記憶部41と、各清掃エリアの1つ以上の走行データを記憶する走行データ記憶部42と、各清掃エリアの1つ以上の清掃データを記憶する清掃データ記憶部43と、清掃作業における汚れ検出部11の検出結果を汚れログとして記憶する汚れログ記憶部44と、複数のセルのセル情報を記憶するセル記憶部45と、複数のセルの清掃履歴(例えば、汚れ状況)を清掃作業毎に記憶する清掃履歴記憶部46と、複数のセルの汚れ頻度を記憶する汚れ頻度記憶部47と、1つ以上の清掃作業毎の清掃レポートを記憶する清掃レポート記憶部48とを備える。環境地図記憶部41、走行データ記憶部42、清掃データ記憶部43、汚れログ記憶部44、セル記憶部45、清掃履歴記憶部46、汚れ頻度記憶部47および清掃レポート記憶部48は、記憶部7bのハードディスクやフラッシュメモリの一部で読み書き自在に構成されてよい。なお、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43は、走行経路、走行設定および清掃設定を組み合わせた1つ以上のプランおよびプラン名を記憶するように統合されたプラン記憶部でもよい。更に、記憶部7bは、各プランを構成する走行経路が自動操作モードの自律走行作業で使用された回数、即ち実行回数を記憶する。なお、プラン記憶部は、各プランが清掃作業に要する作業必要時間も記憶される。
操作表示部8は、装置本体2の上面において走行操作部4の前側に設けられ、図4に示すように、メインスイッチ51と、緊急停止ボタン52と、タッチパネル53(表示部)とを備え、操作表示部8の各部は、制御装置7に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネル等で構成されてもよく、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末等で構成されてもよい。なお、タブレット端末等で構成される操作表示部8は、ビルトインで取り付けられてもよく、また、無線通信部9を介して制御装置7と接続され、これにより自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
メインスイッチ51は、オン、オフを切換可能に構成されている。メインスイッチ51をオンに切り換えることで、電源装置10から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、メインスイッチ51をオフに切り換えることで、電源装置10から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン52は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自律走行)を強制的に停止し、電源装置10から各部への電力供給も強制的に停止する。
タッチパネル53は、制御装置7からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御装置7へと送信する。タッチパネル53で表示される各画面の詳細については後述する。
無線通信部9は、制御装置7からの制御信号に基づいて、タブレット端末等の操作表示部8や外部機器と、Wi−Fi等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の通信規格によって無線通信を行う。例えば、無線通信部9は、制御装置7からタブレット端末の操作表示部8への各画面を表示させる制御信号の送信や、タブレット端末の操作表示部8から制御装置7への操作信号の受信を行う。
電源装置10は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)を備え、外部電源に接続することで充電可能に構成される。
汚れ検出部11は、清掃部5による清掃作業前の床面の汚れを判定するもので、例えば、光学式の濁度計等を備え、清掃中の床面から吸引部18の汚水タンクへと回収される洗浄汚水の濁度(汚れ度合い)を計測する。また、汚れ検出部11は、清掃作業中の走行経路の所定間隔の座標毎の計測結果を汚れログとして汚れログ記憶部44に記憶しておく。
次に、制御部7aに備わる各部(自律走行制御部21、自動清掃制御部22、環境地図作成部23、走行データ作成部24、清掃データ作成部25、推奨プラン判定部26、推奨プラン報知部27、セル分割部28、清掃履歴作成部29、汚れ頻度判定部30、設定変更部31、清掃レポート作成部32および清掃レポート出力部33)について説明する。
自律走行制御部21は、自動操作モードの選択による自律走行作業の実行時に、自動操作による自律的な走行を制御する。具体的には、自律走行制御部21は、所定の清掃エリアの自律走行において、その清掃エリアの環境地図を環境地図作成部23によって作成する。また、自律走行制御部21は、この自律走行の走行経路および走行条件の走行データを走行データ作成部24によって作成して記憶部7bの走行データ記憶部42に記憶する。また、自律走行制御部21は、自律走行で使用された走行経路、走行設定および清掃設定からなるプランの走行経路の実行回数をカウントする。
例えば、これらの走行経路、走行設定および清掃設定からなるプランは、自律走行の開始から終了までの所定間隔のステップ毎に、走行部3の左エンコーダ12aや右エンコーダ13aの所定カウント、走行データおよび清掃データを列挙して作成される。走行データおよび清掃データからなるプランには、ステップ数、エンコーダカウント数、自律走行の開始からの経過時間も含まれる。走行データおよび清掃データからなるプランは、ステップ毎に基づいて作成されてもよいが、所定の経過時間や所定の移動距離、左エンコーダ12aや右エンコーダ13aの所定カウントに基づいて作成されてもよい。
自動清掃制御部22は、自動操作モードの自律走行作業の実行時に、自動清掃を実行すべき環境地図、走行データおよび清掃データ(実行プラン)を走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43から読み取る。そして、自動清掃制御部22は、装置本体2がこの環境地図上でこの清掃データの清掃設定に従った清掃を行うように清掃部5を制御する。自動清掃制御部22は、この自動清掃の清掃設定の清掃データを清掃データ作成部25によって作成して記憶部7bの清掃データ記憶部43に記憶する。なお、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43は、清掃エリア毎に走行データおよび清掃データ、即ちプランを記憶していて、清掃エリア毎にプランを読み出し可能にしている。
環境地図作成部23は、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いる。環境地図作成部23は、所定位置の装置本体2について、計測部6で計測された障害物(物体)からの距離および角度を座標変換して装置本体2の周囲の局所地図を作成すると共に、作成した局所地図に基づいて環境地図を作成する。また、環境地図作成部23は、環境地図と、走行部3の左前輪部12の左エンコーダ12aおよび右前輪部13の右エンコーダ13aによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、環境地図における装置本体2の自己位置(座標)を推定する。
走行データ作成部24は、事前に入力された走行経路および走行設定をもとに、走行データを作成する。または、教示走行をもとに作成されてもよい。なお、走行データには、作成日時も付加される。
清掃データ作成部25は、事前に入力された清掃設定をもとに、清掃データを作成する。または、教示走行にともなう手動操作による清掃作業をもとに作成されてもよい。なお、清掃データには、作成日時も付加される。
推奨プラン判定部26は、異なる走行経路からなる2つ以上のプランが存在する場合、自律走行作業の開始時に、これら2つ以上のプランから所定の推奨条件に合致した推奨プランを判定する。例えば、推奨プラン判定部26は、自律走行作業装置1が自動操作モードで動作する場合に、1つ以上の清掃エリアから自律走行作業を行う清掃エリアが選択されたときに、推奨条件の判定を行う。清掃エリアの選択は、例えば、タッチパネル53に表示される図5に示すようなプラン選択画面57を用いて行われる。プラン選択画面57の詳細は後述する。プラン選択画面57において、何れかの清掃エリアの何れかのプラン項目61が選択されることで、選択されたプラン項目61に対応する清掃エリアとプラン(走行経路、走行設定および清掃設定)が選択される。
例えば、推奨プラン判定部26は、走行経路の自律走行作業の実行回数または実行時間が所定の上限回数(例えば3回)または上限時間(例えば、20時間)に達していないことを推奨条件として、2つ以上のプラン毎に推奨条件に合致したか否かを判定する。なお、推奨プラン判定部26は、推奨条件に合致した2つ以上の走行経路がある場合には、実行頻度がより低い走行経路(例えば、実行回数や実行時間がより少ない走行経路)が優先的に推奨されるように順位付けがされ、実行頻度が最も低い走行経路(例えば、実行回数や実行時間が最も少ない走行経路)からなるプランを推奨プランとしてよい。また、推奨プラン判定部26は、推奨条件に合致した走行経路からなる2つ以上のプランがある場合には、作成日時(走行データおよび清掃データの作成日時)の最も新しいプランを推奨プランとしてよい。更に、推奨プラン判定部26は、推奨条件に合致した走行経路がない場合には、前回の清掃作業で使用されたプランを推奨プランとしてよい。
推奨プラン報知部27は、推奨プラン判定部26による判定結果の推奨プランを作業者へと報知する。推奨プランの報知は、例えば、タッチパネル53に表示される図6に示すような推奨プラン報知画面63を用いて行われる。推奨プラン報知画面63の詳細は後述する。推奨プラン報知画面63において、2つ以上のプランのプラン選択キー64が選択可能に表示され、推奨プランのプラン選択キー64が選択状態64aで表示されることで、推奨プランの報知が行われる。図6では、推奨プランのプラン選択キー64にハッチングを掛けて選択状態64aを識別しているが、推奨プランは、他のプラン選択キー64と異なる表示色や太字によって選択状態64aを識別してもよい。上記したように、推奨プラン判定部26では、推奨条件に合致した走行経路のプランの有無に拘らず推奨プランを判定するため、推奨プランの報知(推奨プラン報知画面63の表示)は、タッチパネル53に表示されるプラン選択画面57(図5参照)でプラン項目61の選択によって清掃エリアが選択された後で、推奨プラン判定部26によって推奨プランを判定した後に行われる。
セル分割部28は、各清掃エリアの床面の状況を局所的に把握するために、各清掃エリアを複数のセルに分割し、各セル情報をセル記憶部45に記憶する。例えば、セル分割部28は、各清掃エリアの環境地図が作成されたときに、環境地図を複数のセルに分割し、各セルに固有のIDを割り当てると共に、各セルの環境地図上の座標を取得して、各セルのIDや座標をセル情報とする。なお、セル分割部28は、走行経路が作成されたとき、走行経路の幅や、走行経路に沿った所定間隔に基づいて各セルの大きさを決定してよい。例えば、走行経路が平行な2つ以上の経路を含んで構成される場合に、その平行線毎の間隔(清掃ピッチ)の平均値を幅とする正方形状のセルを推定し、このセルを走行経路に沿って並べることで複数のセルを定義してもよい。
清掃履歴作成部29は、汚れ検出部11によって検出される床面の汚れログを汚れログ記憶部44から取得して、各セルの汚れ状況を示す清掃履歴を清掃履歴記憶部46に記憶する。清掃履歴記憶部46では、各セルの清掃履歴が清掃作業毎に記憶されていて、全ての清掃作業の複数のセルの清掃履歴を取り出すことができ、また、全ての清掃作業の清掃履歴をセル毎に取り出したり、複数のセルの清掃履歴を清掃作業毎に取り出したりすることもできる。
具体的には、清掃履歴作成部29は、汚れログ記憶部44から取得される走行経路の座標毎の汚れログを、セル記憶部45から取り出される複数のセルのセル情報(座標)と対応させて、各セルに対応する汚れログに基づいて、各セルの洗浄での汚水濁度(汚れ度合い)を判定する。また、清掃履歴作成部29は、複数のセルでの汚水濁度を平均し、その平均値を基準値として基準値に基づく基準範囲を定める。そして、清掃履歴作成部29は、その清掃作業での各セルの汚れ状況として、各セルから得られる濁度が基準範囲よりも高い場合、そのセルが汚れていると判定し、基準範囲以下の場合には、そのセルが汚れていないと判定する。
なお、清掃履歴作成部29は、セルの汚れ状況を複数段階のレベルで表して区別してもよい。例えば、基準値±5を基準範囲に設定して、基準範囲を超える濁度の数値が5ずつ上昇する度に、セルの汚れ状況のレベルも上昇するように設定され、例えば、濁度が基準値+6〜+10以内の場合にレベル+1に設定され、基準値+11〜+15以内の場合にレベル+2に設定され、基準値+16〜+20以内の場合にレベル+3に設定される。このように、セルの汚れ状況を複数段階のレベルで示すことで、セルの汚れ状況を客観的に評価できる。なお、各セルの汚れ状況のレベルの範囲は、5段階評価に限定されず、他の数の段階で評価されてもよく、例えば、レベル毎の濁度の数値範囲を狭めて10段階評価で表してもよい。
汚れ頻度判定部30は、清掃履歴記憶部46に記憶された複数のセルの清掃履歴を集計し、その集計結果に基づいて、各セルが汚れ易いか否か、即ち、各セルの汚れ頻度を統計的に判定する。例えば、汚れ頻度判定部30は、直近の一定期間(例えば、1週間)内に実行された清掃作業の中で、所定の汚れあり回数(例えば、3回)以上の清掃作業の清掃履歴で汚れていると判定されているセルを、汚れ易いセルと判定する。また、汚れ頻度判定部30は、一定期間(例えば、1週間)内に実行された清掃作業の中で、所定の汚れなし回数(例えば、5回)以上の清掃作業の清掃履歴で汚れていないと判定されているセルを、汚れ難いセルと判定する。なお、汚れ易いまたは汚れ難いと判定されなかったセルは、通常の汚れ頻度のセルと判定してよい。
このように、複数の清掃作業の清掃履歴に基づいてセルの汚れ易さを判定することで、1回の清掃作業のみのセルの汚れ状況を判定するよりも、信頼性の高い判定結果が得られる。そして、汚れ頻度判定部30は、複数のセルについて汚れ易い、汚れ難い等の汚れ頻度の判定結果を汚れ頻度記憶部47に記憶する。また、汚れ頻度判定部30は、例えば、推奨プラン判定部26によって推奨プランが判定されたときに、その推奨プランに対応する清掃エリアの複数のセルについて汚れ頻度の判定を行う。
設定変更部31は、汚れ頻度判定部30による複数のセルの統計的な汚れ頻度の判定結果に基づいて、推奨プランの走行設定や清掃設定を変更する。設定変更部31は、例えば、汚れ易いセルに対して清掃強度を強めたり(例えば、走行速度をより遅くする、洗浄水をより多く供給する、パッド圧をより強める等)、汚れ難いセルに対して清掃強度を弱めたり(例えば、走行速度をより速くする、洗浄水をより少なく供給する、パッド圧をより弱める等)するように、走行設定や清掃設定を変更する。なお、走行設定や清掃設定の変更は、各種設定のレベルを1段階ずつ上下させて行ってもよい。
そして、設定変更部31は、走行設定や清掃設定の変更に応じて、推奨プランの走行データおよび清掃データを書き換えたプランを新たに作成し、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43に記憶する。なお、この設定変更後では、新たに作成されたプランが推奨プランとなる一方、変更前の推奨プランは、過去のプランとなり、過去のプランの走行データおよび清掃データは、清掃レポート作成および出力のために、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43に残される。このように、複数のセルの統計的な汚れ頻度を反映して走行設定および清掃設定を変更することで、清掃エリアをより適切に清掃することが可能となる。
また、設定変更部31は、推奨プラン判定部26による判定後で推奨プラン報知部27による報知前に、上記のような推奨プランの設定変更を行う。設定変更部31は、汚れ頻度判定部30の判定結果に応じて、自動的に推奨プランの設定変更を行ってもよく、あるいは、図16に示すような汚れ頻度判定部30の判定結果を割り当てた環境地図をタッチパネル53に表示して、作業者の手動操作に応じて推奨プランの設定変更を行ってもよい。
清掃レポート作成部32は、自律走行作業での清掃作業の終了後に、その清掃作業での複数のセルの清掃履歴や、清掃作業の詳細情報を含む清掃レポートを清掃レポート記憶部48に記憶する。清掃レポートには、清掃作業の日付、走行経路の種類(走行経路名)、セルの汚れ状況(複数のセルにおける汚れているセルの有無)および詳細情報の有無も記憶される。詳細情報には、作業者名、作業時間、清掃の種類、自律走行作業のエラーの有無、清掃作業中の自律走行(自動清掃)の実行比率(%)等が含まれる。
清掃レポート出力部33は、清掃レポート記憶部48に記憶された1つ以上の清掃レポートの内、選択された清掃レポートを、タッチパネル53に出力して表示させる。例えば、清掃レポート出力部33によって出力される清掃レポートには、図17や図18に示すように、清掃レポート記憶部48に記憶される上記の清掃履歴や詳細情報に加えて、環境地図上に走行経路や汚れたセルの位置を記載した簡易図も出力される。また、清掃レポート出力部33は、選択された清掃レポートを、JPEGやPDFファイルのフォーマットに変換し、無線通信部9を介して自律走行作業装置1に接続された作業者やユーザーの外部機器へと送信する。あるいは、清掃レポート出力部33は、選択された清掃レポートを、無線通信部9を介して自律走行作業装置1に接続されたプリンター(図示せず)へと送信して印刷させる。
次に、本実施形態の自律走行作業装置1の清掃作業の動作を、制御装置7が操作表示部8のタッチパネル53に表示する図4〜図6および図11〜図17の各画面と共に、図7〜図10のフローチャートを参照しながら説明する。図7は、自律走行作業での清掃作業の一連の動作例を示し、図8は、推奨プラン判定の動作例を示し、図9は、設定変更の動作例を示し、図10は、床面のセルの汚れ検出および清掃履歴作成の動作例を示す。
先ず、自律走行作業装置1が稼働すると、制御装置7は、図4に示すメニュー画面55をタッチパネル53に表示する。メニュー画面55には、動作モードの切換ボタンとして、手動操作モードボタン55a、自動操作モードボタン55b、データ修正モードボタン55cがタッチ操作可能に表示される。自律走行作業装置1の動作モードは、手動操作モードボタン55aが操作されることで手動操作モードに切り換えられ、自動操作モードボタン55bが操作されることで自動操作モードに切り換えられ、データ修正モードボタン55cが操作されることでデータ修正モードに切り換えられる。
制御装置7は、タッチパネル53上でメニュー画面55の手動操作モードボタン55aが操作されると、メニュー画面55に代えて手動操作画面(図示せず)をタッチパネル53に表示する。手動操作画面には、例えば、手動走行を実行するためのボタンが表示され、このボタンが操作されることで手動走行中の走行設定や清掃設定が変更できる。また、手動操作画面には、走行部3の左前輪部12の左モータと右前輪部13の右モータの回転を操作するためのボタンや回転の状況を示す表示器が表示され、清掃部5の各部を手動操作するための各種ボタンや清掃部5の各部の操作状況を示す各種表示器が表示される。制御装置7は、各種ボタンの操作信号に基づいて走行部3および清掃部5を制御する。例えば、手動操作画面は、走行部3の速度設定、洗浄部材16aの回転および接地圧、洗浄液供給部17の洗浄液供給および供給水量、並びに吸引部18の吸引および吸引量等を操作可能なボタンを有する。なお、走行部3および清掃部5を操作する各種ボタンは、自律走行作業装置1の動作モードが手動操作モードに設定されている間は、作業者による手動操作を受け付ける。
制御装置7は、タッチパネル53上でメニュー画面55の自動操作モードボタン55bまたはデータ修正モードボタン55cが操作されると(ステップS1)、メニュー画面55に代えて図5に示すプラン選択画面57をタッチパネル53に表示する。プラン選択画面57には、メニューボタン57aがタッチ操作可能に表示され、メニューボタン57aが操作されると、自動操作モードまたはデータ修正モードが終了して自律走行作業装置1の動作モードはオフ状態となり、制御装置7は、プラン選択画面57に代えてメニュー画面55をタッチパネル53に表示する。
更に、プラン選択画面57には、エリアリスト58が表示され、エリアリスト58には、記憶部7bの環境地図記憶部41に記憶された1つ以上の清掃エリアのそれぞれに対応する1つ以上の清掃エリア欄59が列挙されていて、各清掃エリア欄59にはその清掃エリアのエリア名が表示される。
プラン選択画面57において各清掃エリアの清掃エリア欄59には、プランリスト60が表示され、プランリスト60には、当該清掃エリアについて記憶部7bの走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43に記憶された走行データおよび清掃データの1つ以上のプランのそれぞれに対応する1つ以上のプラン項目61が列挙されていて、各プラン項目61にはそのプランのプラン名61aと走行経路のサムネイルアイコン61bが表示される。エリアリスト58およびプランリスト60では、全ての清掃エリア欄59の全てのプラン項目61の中から1つのプラン項目61を選択可能である。更に、プラン選択画面57には、選択プラン表記欄57bが表示されると共に、プラン決定ボタン57cがタッチ操作可能に表示される。選択プラン表記欄57bには、選択されたプラン項目61のプラン名が表示される。
上記のようなプラン選択画面57において、プラン決定ボタン57cが操作されると、選択されたプラン項目61に対応する清掃エリアおよびプランが選択される(ステップS2)。以降の動作は、自動操作モードとデータ修正モードとによって異なり、ここでは、自動操作モードの場合の動作を説明する。
清掃エリアが選択されると、推奨プラン判定部26によって、選択された清掃エリアの清掃作業で過去に使用された走行データおよび清掃データからなるプランが、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43から読み出される(ステップS3)。推奨プラン判定部26は、読み出した走行データおよび清掃データに基づいて、選択中の清掃エリアについて、2つ以上のプランが使用されたか(存在するか)否かを判定し、更に、2つ以上の走行経路が使用されたか(存在するか)否かを判定する(ステップS4)。
このとき、選択中の清掃エリアについて1つだけのプランが存在する場合や、1つだけの走行経路が存在する場合には(ステップS4:No)、選択されたプランをそのまま実行プランとして(ステップS5)、自律走行作業(清掃)が自律走行制御部21および自動清掃制御部22によって実行される(ステップS6)。この自律走行作業(清掃)の実行中では、制御装置7は、図11に示す走行経路表示画面66をタッチパネル53に表示する。
走行経路表示画面66では、全体地図画面67と、詳細修正画面68と、操作キー画面69とを1画面表示している。全体地図画面67、詳細修正画面68および操作キー画面69は様々なパターンで配置されてよく、例えば、全体地図画面67が中央に、詳細修正画面68が全体地図画面67の右側に、操作キー画面69が全体地図画面67の左側にそれぞれ配置される。
全体地図画面67には、実行プランの清掃エリアに対応する環境地図71が全体的に表示され、実行プランの走行データに基づいて直線や曲線によって表示した走行経路72がこの環境地図71上に重ねて表示される。走行経路72において、走行開始位置72aや走行終了位置72bには四角等の記号が表示される。更に、走行経路72上には、所定の指定位置に矢印状の方向カーソル72cが表示され、方向カーソル72cの矢印の向きは進行方向を示す。また、全体地図画面67では、実行プランの走行データに基づく走行設定や清掃データに基づく清掃設定の設定チャートを、走行経路72に沿って重ねて表示してもよい。また、全体地図画面67は、拡大縮小操作ボタン67aやスクロール操作ボタン67bも備え、環境地図71および走行経路72の拡大縮小やスクロールを可能にしている。
詳細修正画面68には、全体地図画面67の方向カーソル72cの指定位置およびその周辺の走行経路72をステップ順に連続した直線のみで示すステップバー74が表示され、この指定位置の対応カーソル74aも表示される。更に、ステップバー74と同じステップの走行設定や清掃設定の設定チャート75が左右に並べて表示され、設定チャート75は、ステップ順に連続した直線のバーチャート状に作成される。設定チャート75において、同じ走行設定や同じ清掃設定が連続する部分は線分のデータバー75aで示され、走行設定や清掃設定の変化の境界は丸等の境界記号75bで示される。換言すれば、走行設定や清掃設定のデータバー75aが境界記号75bで連結されている。詳細修正画面68では、清掃設定の供給水量、接地圧や吸引量の設定チャート75に限らず、走行速度の設定チャート75を表示してもよい。なお、詳細修正画面68では、1つ以上の走行設定や清掃設定の設定チャート75を様々な組み合わせで表示してよい。図11等に示す清掃設定の設定チャート75は、データバー75a毎の清掃設定の違いを、線の太さを変えることで識別しているが、データバー75a毎の走行設定や清掃設定の違いは、網掛け、濃淡や色を変えて識別してもよい。
操作キー画面69には、例えば、メニューボタン69a、保存ボタン69b、走行速度ボタン69c、削除ボタン69d、走行経路修正ボタン69e、停止修正ボタン69fがタッチ操作可能に表示される。これらのボタンは、自動操作モードで推奨プランの走行設定や清掃設定を自動的に変更する場合には使用されないので、選択不能にしていてもよい。
また、上記した推奨プラン判定部26による選択中の清掃エリアのプランおよび走行経路の判定(ステップS4)において、選択中の清掃エリアについて2つ以上のプランが存在し、且つ2つ以上の走行経路が存在する場合には(ステップS4:Yes)、推奨条件判定処理(ステップS7)に移行する。
推奨条件判定処理(ステップS7)では、図8に示すように、推奨プラン判定部26は、上記したように推奨条件として、各走行経路の実行回数が所定の上限回数に達しているか否かを判定する(ステップS8)。
ところで、同一の清掃エリアにおいて異なる2つ以上の走行経路としては、例えば、図12に示すように縦方向に清掃作業を移行していく第1の走行経路、図13に示すように横方向に清掃作業を移行していく第2の走行経路、図14に示すように清掃エリアを複数のブロックに分けてブロック毎に清掃作業を移行していく第3の走行経路、図15に示すように清掃エリアを外側から中心に向かって螺旋状に走行する第4の走行経路等がある。なお、図12〜図15は、第1〜第4の走行経路を表示する走行経路表示画面66を示し、この走行経路表示画面66では、環境地図71に割り当てられた複数のセル71aも表示している。2つ以上の走行経路は、それぞれ教示走行を行うことによって作成されてもよく、データ入力することで作成されてもよく、あるいは既に作成された走行経路を変換して作成されてもよい。2つ以上の走行経路は、清掃エリアの環境地図を分割した複数のセル71aを全て辿るように、清掃ピッチをセル71aの中心の間隔に合わせて作成されるとよい。
例えば、第1の走行経路を90度回転して、環境地図に適合するように調整することで第2の走行経路を作成することができる。このように、走行経路の方向を変更させることで、床面に清掃痕が発生し難くなり、カーペットの倒れ込みを防ぎ易くなる。また、第3の走行経路のように、清掃作業するブロックを分けることで、自律走行作業装置1によって一のブロックの自律走行作業(清掃)を行う間に、作業者が他のブロックや清掃エリアの隅等の細かな場所を手作業で清掃することができ、作業効率を向上することができる。また、第4の走行経路のように、清掃エリアの外側から中心に向かって清掃作業をさせることで、砂、埃や洗浄水の外側への広がりを抑制しつつ清掃作業することができ、テニスコート等の運動場の清掃に好適に利用することができる。このように、複数の走行経路を使い分けることによって、床面の種類に応じて清掃を使い分けることができ、床面に清掃痕が更に発生し難くなり、カーペットの倒れ込みも更に防ぎ易くなる。
そして、推奨プラン判定部26は、実行回数が所定の上限回数に達していない推奨条件に合致した走行経路があれば(ステップS8:Yes)、その中でも最も実行回数の少ない走行経路からなるプランの内、最も作成日時の新しい(直近に使用された)プランを推奨プランとして判定する(ステップS9)。一方、実行回数が所定の上限回数に達していない推奨条件に合致した走行経路がなければ(ステップS8:No)、前回の清掃作業で使用された走行経路からなるプランの内、最も作成日時の新しい(直近に使用された)プランを推奨プランとして判定する(ステップS10)。
このように推奨プランが判定されると、制御装置7は、設定変更処理(ステップS11)に移行して、図9に示すように、汚れ頻度判定部30によって選択中の清掃エリアの汚れ頻度を判定すると共に、設定変更部31によって汚れ頻度に応じて推奨プランの走行設定および清掃設定を変更する。
具体的には、汚れ頻度判定部30は、選択中の清掃エリアの複数のセル71a毎に、一定期間の清掃履歴を清掃履歴記憶部46から取得する(ステップS12)。汚れ頻度判定部30は、各セル71aの一定期間の清掃履歴において汚れていると判定された回数をカウントし(ステップS13)、所定の汚れあり回数以上の場合には(ステップS14:Yes)、そのセル71aは汚れ易いセル71aとして判定され(ステップS15)、それ以外の場合には(ステップS14:No)、通常の汚れ頻度のセル71aとして判定される(ステップS16)。これらの汚れ頻度の判定結果は汚れ頻度記憶部47に記憶される。
なお、汚れ頻度判定部30で判定された複数のセル71aの汚れ頻度は、図16に示すように、環境地図71上の各セル71aに割り当てて、汚れ頻度マップ77に表示することができる。汚れ頻度マップ77は、例えば、走行経路表示画面66の操作キー画面69の汚れ頻度表示ボタン(図示せず)の操作によって、全体地図画面67に表示される。図16では、一例として、通常の汚れ頻度のセル71aを白抜きで表し、汚れ易いセル71aを右肩上がりのハッチングで表し、汚れ難いセル71aは左肩上がりのハッチングで表している。また、汚れ頻度に応じて、ハッチングの間隔や塗りつぶしの色を変更することで汚れ頻度を区別してもよく、あるいは○や×の記号を付して区別してもよい。
そして、設定変更部31は、汚れ頻度判定部30で判定された汚れ易いセル71aに対して清掃強度を強めるように走行設定や清掃設定を変更し(ステップS17)、走行設定や清掃設定の変更に応じて走行データおよび清掃データを書き換えた新たな推奨プランを走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43に記憶する(ステップS18)。
この設定変更処理(ステップS11)が終了すると、図7に示すように、推奨プランの報知に移行し(ステップS19)、推奨プラン報知部27によって、推奨プラン報知画面63(図6参照)がタッチパネル53に表示される。推奨プラン報知画面63では、選択中の清掃エリアについてのプランに対応するプラン項目64が選択可能に表示され、特に、推奨プランのプラン項目61が選択状態64aで表示される。
推奨プラン報知画面63で選択されたプランが実行プランとなり(ステップS20)、選択された実行プランでの自律走行作業(清掃)が、自律走行制御部21および自動清掃制御部22によって実行されて清掃作業が行われる(ステップ6)。
なお、この自律走行作業(清掃)中は、制御装置7は、各セル71aの清掃履歴作成処理(ステップS21)も行う。清掃履歴作成処理(ステップS21)では、図10に示すように、先ず、選択中(清掃作業中)の清掃エリアの環境地図からセル分割部28によって分割された複数のセルのセル情報が、セル記憶部45から取り出される(ステップS22)。また、自動清掃中は、汚れ検出部11によって走行経路の座標毎に洗浄で生じた汚水の濁度の汚れログが汚れログ記憶部44に記憶され、自動清掃後に、清掃履歴作成部29によって、汚れログが取り出される(ステップS23)。
そして、清掃履歴作成部29によって、各セル情報と汚れログとに基づいて、各セルの洗浄で生じた汚水の濁度が判定される(ステップS24)。また、清掃履歴作成部29では、各セルの濁度が基準範囲を超えるか否かが判定され(ステップS25)、濁度が基準範囲を超える場合には(ステップS25:Yes)、そのセルは汚れていると判定され(ステップS26)、それ以外の場合には(ステップS25:No)、そのセルは汚れていないと判定される(ステップS27)。清掃履歴作成部29では、各セルの汚れ状況の判定結果に基づいて清掃履歴が作成され(ステップS28)、清掃履歴記憶部46に記憶される(ステップS29)。
この清掃履歴作成処理(ステップS21)が終了すると、清掃レポート作成部32によって、その清掃作業での複数のセルの清掃履歴や清掃作業の詳細情報を含む清掃レポートが作成され、清掃レポート記憶部48に記憶される(ステップS30)。
なお、清掃レポート作成部32で作成された清掃レポートは、図17に示すように、清掃レポート表示画面79として表示することができる。清掃レポート表示画面79は、例えば、走行経路表示画面66の操作キー画面69の清掃レポート表示ボタン(図示せず)の操作によって、全体地図画面67に表示される。清掃レポート表示画面79では、清掃作業毎に、日付、走行経路の種類(走行経路名)、セルの汚れ状況(複数のセルにおける汚れているセルの有無)および詳細情報の有無等の一覧表80が表示される。また、清掃レポート表示画面79では、清掃作業の一覧表80から各清掃作業の欄を選択可能であり、更に、出力ボタン81および表示ボタン82が操作可能に表示される。
そして、清掃レポート表示画面79において各清掃作業を選択した状態で出力ボタン81を操作することにより、その清掃作業の詳細情報が清掃レポート出力部33によって出力される。例えば、清掃作業の詳細情報は、清掃レポート出力部33によってプリンターを用いて印刷され、図18に示すように、清掃作業の詳細情報の印刷物84には、例えば、日付、作業者名、作業時間、走行の種類等が表示され、更に、複数のセル、走行経路、汚れ頻度等が示された環境地図の簡易図が表示される。
また、清掃レポート表示画面79において各清掃作業を選択した状態で表示ボタン82を操作することにより、その清掃作業の詳細情報は、清掃レポート詳細表示画面(図示せず)に表示することができる。清掃レポート詳細表示画面は、例えば、走行経路表示画面66の操作キー画面69の清掃レポート詳細表示ボタン(図示せず)の操作によって、全体地図画面67に表示される。清掃レポート詳細表示画面には、清掃レポート出力部33による印刷物84(図18参照)と同様の内容が表示されてよい。
上記した実施形態では、設定変更部31が、汚れ頻度判定部30の判定結果に基づいて自動的に推奨プランの走行データおよび清掃データを変更する例を説明したが、設定変更部31は、作業者の操作に応じてプランの走行データおよび清掃データを変更してもよい。例えば、自動操作モードにおいて推奨プラン判定部26によって推奨プランが判定されたとき、またはデータ修正モードにおいてプランが選択されたときに、そのプランについて上記の走行経路表示画面66(図11等参照)をタッチパネル53に表示して、この走行経路表示画面66を用いて走行データおよび清掃データを変更してもよい。
例えば、走行経路表示画面66の全体地図画面67では、走行設定や清掃設定の設定チャートをタッチ操作可能にして、設定チャートの操作に応じて走行設定や清掃設定を変更することができる。例えば、走行経路上の設定チャートの清掃部分や非清掃部分を伸び縮みさせてもよく、また、各清掃部分の設定内容を変更可能にしてもよい。なお、全体地図画面67では、図13に示すように、各セルの汚れ頻度を表示することで、作業者に設定変更すべきセルを報知してもよい。
また、詳細修正画面68では、設定チャート75のデータバー75aや境界記号75b、およびステップバー74をタッチ操作可能にして、データバー75aや境界記号75bの操作に応じて走行設定や清掃設定を変更することができる。例えば、データバー75aを伸び縮みさせてもよく、また、各データバー75aの設定内容を変更可能にしてもよい。
また、操作キー画面69では、メニューボタン69aが操作されると、データ修正モードが終了して自律走行作業装置1の動作モードはオフ状態となり、制御装置7は、データ修正画面57に代えてメニュー画面40をタッチパネル53に表示する。自動操作モードの場合には、メニューボタン69aは操作不能にしてもよい。保存ボタン69bが操作されると、全体地図画面67や詳細修正画面68での設定変更が反映されて新たな走行データおよび清掃データからなるプランが保存され、即ち、走行データ記憶部42および清掃データ記憶部43に記憶される。走行速度ボタン69cは、全体地図画面67の設定チャートまたは詳細修正画面68のデータバー75aについて走行速度の変更操作を可能にする。削除ボタン69dは、全体地図画面67の設定チャートまたは詳細修正画面68のデータバー75aについての清掃設定のオフ操作や走行経路の部分削除を可能にする。走行経路修正ボタン69eは、全体地図画面67の走行経路の修正を可能にする。停止修正ボタン69eは、全体地図画面67の走行経路72上の一時停止箇所の連続走行への変更を可能にする。操作キー画面69では、上記の各種操作キー以外にも、走行経路の自動オフセット、手動オフセットおよび逆転走行等、走行設定や清掃設定のテンプレート修正等を行う操作キーを備えてよい。
上述のように、本実施形態によれば、事前に入力されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業する自律走行作業を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を清掃エリア(作業エリア)内で走行させる走行部3と、装置本体2の清掃エリア内の走行経路上で清掃(作業)を行う清掃部5(作業部)と、走行部3の走行経路および走行設定と清掃部の清掃設定(作業設定)との組み合わせからなるプランを自律走行作業のために記憶する記憶部7bと、2つ以上のプランが存在すると共に、これら2つ以上のプランが2つ以上の走行経路の何れかからなる場合、自律走行作業の開始時に、2つ以上のプランから所定の推奨条件に合致した推奨プランを判定する推奨プラン判定部26と、推奨プラン判定部26による判定結果の推奨プランを報知する推奨プラン報知部27と、を備える。
このような構成により、本実施形態に係る自律走行作業装置1では、清掃フロアの清掃作業にとってより適切であると判定されたプランの推奨が報知されるので、より適切なプランによる清掃作業の選択が推奨されている旨を作業者が認識することが可能となる。これにより、自動的な清掃作業の効率を向上し、さらに清掃エリアの美観を高く維持することが可能となる。このように、本発明によれば、商業施設等の床面の作業に起因する損傷を抑制し、同じ作業エリア内で作業すべき場所の変化に対応し、かつ作業者の変更に拘らず床面を適切に維持管理することができる。
また、本実施形態では、記憶部7bは、2つ以上の走行経路のそれぞれの自律走行作業の実行回数を記憶し、推奨プラン判定部26は、走行経路の実行回数が所定の上限回数に達していないことを推奨条件として、2つ以上のプラン毎に推奨条件に合致したか否かを判定するとよい。
このような構成により、推奨プランでの清掃作業への切り換えをより適切に行うことができ、清掃エリアの床面の清掃痕等の発生をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、推奨プラン判定部26は、自律走行作業の開始時に、自律走行作業を行う清掃エリアの選択操作がされた後で、推奨プランの判定を行うとよい。
このような構成により、推奨すべきプランの判定を適切なタイミングで行うと共に、推奨プランの存在を適切なタイミングで作業者に報知することができる。
また、本実施形態では、推奨プラン報知部27は、2つ以上のプランを選択可能に表示しつつ、推奨プランを選択状態で表示した推奨プラン報知画面63をタッチパネル53(表示部)に表示させることで推奨プランの報知を行うとよい。
このような構成により、作業者に対して推奨プランを選択し易くすることができる。
また、本実施形態では、清掃部5は、床面の清掃、洗浄、研磨または剥離の清掃作業を行うように構成されている。また、自律走行作業装置1は、清掃部5の清掃作業の結果に基づいて床面の汚れを検出する汚れ検出部11と、清掃エリアを分割した複数のセル毎に、清掃作業の後に汚れていたか否かを判定する清掃履歴作成部29と、を更に備え、清掃履歴作成部29は、各セルの汚れ検出部11による検出結果が所定の基準範囲以上の場合に各セルが汚れていたと判定するとよい。
このような構成により、床面の場所毎の汚れを適切に把握することができる。
また、本実施形態では、清掃履歴作成部29は、各セルが汚れていたか否かの判定結果を各セルの清掃履歴として記憶部7bの清掃履歴記憶部46に記憶し、清掃履歴記憶部46に記憶された複数のセルの清掃履歴に基づいて、床面の汚れ頻度を統計的に判定し、その判定結果に基づいて新しい推奨プランを作成するとよい。
このような構成により、床面の場所毎の汚れ頻度を統計的に判定することで、場所毎の汚れの傾向を適切に把握し、その傾向に合わせて走行設定や清掃設定を適切に変更し、または適切に作成したプランを推奨することができる。そして、作業者がこのプランを選択することで、効率の良い清掃作業を行うことが可能となる。例えば、汚れ易い床面のセルに対して、走行スピードを遅くし、洗浄液の散水量を多くし、洗浄パッドの接地圧を強くして清掃強度を高めることで、汚れを除去することができ、また、汚れ易い床面のセルを作業者へと報知することで、そのセルだけ作業員の手作業で追加清掃することもできる。
また、本実施形態では、自律走行作業のの詳細情報を示す清掃レポートを作成して出力するとよい。
このような構成により、過去の清掃状況を示す清掃レポートを、画面に一覧表示したり、印刷やデータファイルとして出力して管理保管したりすることができる。これにより、レポートを見た作業者は、自動的な清掃作業後に清掃レポートを確認して、汚れているセルや汚れ易いセルを追加清掃してフォローすることもできる。
上記した実施形態では、制御装置7の設定変更部31は、汚れ頻度判定部30による複数のセルの汚れ頻度に基づいて、過去のデータである推奨プランから走行設定や清掃設定を変更した推奨プランを作成したが、作成される推奨プランはこれに限定されない。
例えば、他の実施形態では、図3に示すように、制御装置7の制御部7aは、バッテリー残量検出部34と、水量判定部35とを備える。バッテリー残量検出部34および水量判定部35は、記憶部7bに記憶されて制御部7aに実行されるプログラムで構成されていてよい。バッテリー残量検出部34は、電源装置10のバッテリーの残りの容量を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置7へと出力する。水量判定部35は、洗浄液供給部17の洗浄液タンクや吸引部18の汚水タンクに設けられた水位センサ19の検出結果に基づいて各タンクの水量を算出し、洗浄液タンク内の洗浄水の残量や汚水タンク内の汚水の回収量(汚水タンク内の空き容量)を判定する。
設定変更部31は、清掃作業に割り当てられた残り時間(清掃可能時間)、電源装置10のバッテリーの残量、洗浄液供給部17の洗浄液タンクの残量、吸引部18の汚水タンクの空き容量に基づいて、推奨プラン判定部26で判定された推奨プランによって清掃エリアの全体を清掃作業できるか否かを判定する。
例えば、推奨プランの作業必要時間よりも清掃可能時間が短い場合、バッテリーの残量が少ない場合、洗浄液タンクの残量や汚水タンクの空き容量が少ない場合に、清掃作業できないと判定する。そして、推奨プランで清掃エリア全体を清掃作業できると判定した場合には、上記実施形態と同様に、過去のデータである推奨プランから走行設定や清掃設定を変更した推奨プランを作成する。
一方、推奨プランで清掃エリア全体を清掃作業できないと判定した場合には、設定変更部31は、複数のセルの清掃履歴や汚れ頻度に基づいて、汚れていると判定されたセルや汚れ易いと判定されたセルを清掃対象セルと判定する。そして、設定変更部31は、図19に示すように、清掃対象セルのみを経由する最短経路の第5の走行経路72および走行設定からなる走行データを作成し、清掃対象セルのみを清掃する清掃設定からなる清掃データを作成する。設定変更部31は、このような清掃対象セルのみ作業を行うスポット清掃プランを新たな推奨プランとする。なお、スポット清掃プランでの自律走行作業による清掃作業の終了後に、清掃可能時間、バッテリーの残量、洗浄液タンクの残量、汚水タンクの空き容量に余裕があれば、未清掃のセルに対して自律走行作業による清掃作業を行ってもよい。
あるいは、設定変更部31は、複数のセルの清掃履歴や汚れ頻度に基づいて、汚れていないと判定されたセルや汚れ難いと判定されたセルを非清掃対象セルと判定し、非清掃対象セルの清掃作業を省略したプランを作成して推奨プランとしてもよい。または、設定変更部31は、清掃可能時間、バッテリーの残量、洗浄液タンクの残量、汚水タンクの空き容量に応じて、過去のデータである推奨プランからの走行設定や清掃設定の変更内容を決定してもよい。
このように、汚れ易いセルや汚れ難いセルのデータに基づいて、スポット清掃プランや清掃を回避するプランを用いることで、清掃作業時間を短縮したり、バッテリー切れや洗浄水切れ、洗浄汚水満水による自律走行作業のトラブルを回避したりすることができる。
上記した実施形態では、制御装置7の汚れ頻度判定部30は、複数のセルの清掃履歴に基づいて、各セルの汚れ頻度を判定したが、汚れ頻度の判定材料はこれに限定されない。
例えば、他の実施形態では、図3に示すように、制御装置7の制御部7aは、環境情報取得部36を備える。環境情報取得部36は、記憶部7bに記憶されて制御部7aに実行されるプログラムで構成されていてよい。記憶部7bは、清掃作業が行われる前のイベントや天気等の環境に関する1つ以上の環境情報を記憶する環境情報記憶部49を備える。環境情報記憶部49は、記憶部7bのハードディスクやフラッシュメモリの一部で読み書き自在に構成されてよい。
環境情報取得部36は、清掃エリアにおけるイベントや天気等の環境に関する環境情報を取得して環境情報記憶部49に記憶する。例えば、イベントに関する環境情報としては、図20に示すように、イベントが開催される日時(日付や開催時刻)や営業日の種類(通常日や繁忙日等)、各階や会場等の場所、イベントの種類(キャラクターショーや物産展等)、混雑のレベルを示すイベントID等がある。清掃エリアでは、このようなイベントの開催会場付近の床面が特に汚れ易くなる。イベントに関する環境情報は、清掃エリアのある施設や店舗の運営会社等が保有するサーバ(図示せず)等に年間スケジュール等のデータとして記憶されていて、環境情報取得部34が、無線通信部9を介したFTP(File Transfer Protocol)通信や汎用ソフト等によって、定期的にそのサーバに接続して自動的に取得する。
また、天気に関する環境情報としては、日付や天気の種類(晴、曇、雨等)等がある。更に、天気に関する環境情報としては、地域によって特有の情報があり、例えば、北陸や東北地方における冬場の雪や、九州地方の春先の黄砂や、鹿児島県の桜島の噴火による火山灰等の情報もある。清掃エリアでは、このような天気の影響を受け易い玄関付近の床面が特に汚れ易くなる。天気に関する環境情報は、Web情報提供サービス等の専用サイトに記憶されていて、環境情報取得部36が、無線通信部9を介したFTP通信等によって、定期的にそのサイトに接続して自動的に取得する。
なお、環境情報取得部36は、上記のように環境情報を自動的に取得することに限定されず、作業者によって手作業で入力された環境情報を取得してもよい。
この実施形態では、清掃作業時に清掃履歴作成部29が清掃履歴を清掃履歴記憶部46に記憶する際に、その清掃作業が行われる前のイベントや天気等の環境に関する環境情報を環境情報記憶部49から取得して付加しておくことにより、過去の清掃作業の清掃履歴には、環境情報が付加されていることになる。例えば、イベント情報や天気情報等の環境情報と関連付けて清掃履歴記憶部46に記憶される各清掃作業の清掃履歴等の情報を図21に示す。各清掃作業の清掃履歴には、日付、各セルの汚れ状況、営業日の種類、天気、清掃作業時のプラン、イベントIDが含まれる。
汚れ頻度判定部30は、複数のセルの清掃履歴に加えて、環境情報記憶部49に記憶された環境情報に基づいて各セルの汚れ頻度を統計的に判定する。現行の清掃作業を行う場合、汚れ頻度判定部30は、環境情報記憶部49に記憶された現行の環境情報を取得し、更に清掃履歴記憶部46に記憶された過去の清掃履歴から、現行の環境情報と同様の環境情報が付加された清掃履歴(以下、関連清掃履歴と称する)を取得する。
そして、汚れ頻度判定部30は、直近の一定期間の清掃履歴に加えて、過去の関連清掃履歴を集計し、その集計結果に基づいて各セルの汚れ頻度を統計的に判定する。これにより、床面の現行の汚れ状況だけでなく、清掃作業が行われるときのイベントや天気等の環境に応じて、汚れ頻度を判定することができる。
例えば、図21では、2015年9月のイベントB開催時の週の清掃履歴と、2016年9月の同一のイベントB開催時の週の清掃履歴とが示される。これらの清掃履歴を参照すると、イベントBのない通常日では汚れていないセルが、イベントBの開催された繁忙日では汚れてしまう傾向があり、この傾向は2015年および2016年の両方の同じイベントBに現れることから、このイベントBに特有の汚れ方であると判定できる。そこで、汚れ頻度判定部30は、現行の清掃作業でイベントBが開催されるときの清掃設定を、過去のイベントB開催時の清掃履歴に基づいて変更することで、イベントBに特有の床面の汚れを清掃することができる。
また、図21では、2015年9月の雨の日の清掃履歴と、2016年9月の雨の日の清掃履歴とが示される。これらの清掃履歴を参照すると、晴や曇の日に汚れの少ないセルが、雨の日には繁忙日でない通常日でも汚れが多くなる傾向があり、この傾向は2015年および2016年の両方の雨の日に現れることから、雨の日に特有の汚れ方であると判定できる。そこで、汚れ頻度判定部30は、現行の清掃作業で雨の日の清掃設定を、過去の雨の日の清掃履歴に基づいて変更することで、雨の日に特有の床面の汚れを清掃することができる。
このように、天気やイベント等の環境情報に関連付けられた清掃エリアの各セルの清掃履歴を統計的に比較検討することで、作業者でも容易に知り得ない特徴的な各セルの汚れ状況を把握することができる。更に、特徴的な各セルの汚れ状況に基づいて、走行設定や清掃設定を適切に変更することができ、自動的な清掃作業の効率を向上し、さらに清掃エリアの美観を高く維持することが可能となる。
また、上記した実施形態では、推奨プラン判定部26が、走行経路の実行回数または実行時間が所定の上限回数または上限時間に達していないことを推奨条件として、推奨条件に合致した走行経路のプランを推奨プランとする例を説明したが、推奨するプランはこれに限定されない。例えば、推奨プラン判定部26は、清掃作業を行う曜日を判断して、曜日毎に異なるプランを推奨プランとしてもよい。この推奨プラン判定部26は、月曜から土曜は第1の走行経路のプランを推奨プランと判定し、日曜は第2〜第5の走行経路のプランを切り換えて推奨プランと判定してもよい。その他、曜日を決めて切替えてもよい(例えば、毎週火曜日にプランを推奨のプランに変更する)。
また、上記した実施形態では、汚れ検出部11が、濁度計を用いて汚水タンクへと回収される洗浄汚水の濁度を計測することで床面の汚れを検出する例を説明したが、汚れの検出手法はこれに限定されない。例えば、汚れ検出部11は、カメラ等の撮像装置を搭載して床面の画像を撮像し、その撮像データに基づいて床面の汚れを判定してもよい。この汚れ検出部11は、撮像データの色彩の濃淡の差から床面の汚れを判定してもよく、または画像認識処理によって床面の汚れを判定してもよい。なお、この撮像データは記憶されて、清掃レポートに添付してもよい。
上記した本実施形態では、清掃部5は、洗浄部16、洗浄液供給部17および吸引部18を有する湿式の清掃機構で構成される例を説明したが、清掃部5は、この例に限定されず、乾式の清掃機構で構成されてもよい。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。