説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
実施の形態1
まず、実施の形態1にかかる半導体装置について説明する。そこで、図1に実施の形態1にかかる半導体装置のブロック図を示す。図1では、2つの半導体装置の例を示した。図1に示した半導体装置の第1の例では、半導体装置は、アナログデジタル変換回路1、入出力インタフェース2、後段信号処理回路3、周辺回路4、周辺回路5、演算部6、メモリ7を有する。また、第2の例では、半導体装置は、第1の例の入出力インタフェース2に代えて、入出力インタフェース8、前段信号処理回路9を有する。
アナログデジタル変換回路1は、アナログ信号の入力信号VINの電圧レベルをデジタル値に変換して、ADC出力として出力する。入出力インタフェース2、8は、外部から与えられる入力信号を半導体装置内に取り込む。また、入出力インタフェース2、8は、半導体装置内で生成された信号を出力する。後段信号処理回路3は、例えば、ADC出力に対してフィルタ処理等の信号処理を加える回路である。周辺回路4は、演算部6が用いる周辺回路及び演算部6により制御される周辺回路のうちアナログ回路を含む。周辺回路4としてはオペアンプ、基準電圧生成部、コモン電圧生成部、発振回路などが考えられる。周辺回路5は、演算部6が用いる周辺回路及び演算部6により制御される周辺回路のうちデジタル回路を含む。周辺回路5は、例えば、コプロセッサ、タイマー等の回路が考えられる。演算部6は、例えば、メモリ7に格納されたプログラムを実行する。また、演算部6は、演算結果を用いて周辺回路4、5を制御すると共に、周辺回路5の処理により得られた結果を用いた演算処理を行う。メモリ7は、例えば、演算部6で用いられるプログラム及びデータを保持する。前段信号処理回路9は、アナログデジタル変換回路1に与える入力信号VINの前処理を行う。この前処理としては、アナログ信号の増幅が考えられる。
ここで、実施の形態1にかかる半導体装置では、アナログデジタル変換回路1に特徴の1つを有する。以下では、アナログデジタル変換回路1について詳細に説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1のブロック図を示す。
図2に示すように、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1は、容量DAC(Digital-to-Analog Converter)回路10、コンパレータ11、逐次比較レジスタロジック12、出力回路13、ADCタイミング制御回路14を有する。アナログデジタル変換回路1は、コンパレータ11が出力する比較結果に基づき容量DAC回路10に与えるデジタル値(例えば、スイッチ制御信号Ssar)を最上位ビットから最下位ビットに向かって1ビットずつ値を決定しながら比較動作を繰り返すことで、事前変換結果を生成する。このとき、アナログデジタル変換回路1では、事前変換結果に冗長ビットの値が含まれる。そこで、アナログデジタル変換回路1では、出力回路13を用いて冗長ビットを含む事前変換結果が示す値を算出してアナログデジタル変換回路1の最終的な出力値であるADC出力を得る。
容量DAC回路10は、入力信号VIN及びコモン電圧VCMをサンプリングし、サンプリングした入力信号VIN及びコモン電圧VCMの電圧レベルを逐次比較レジスタロジック12が出力するスイッチ制御信号Ssarが示すデジタル値に基づきシフトさせて、スイッチ制御信号Ssarに対応するシフト量を有する入力信号VIN及びコモン電圧VCMを出力する。図2に示す例では、容量DAC回路10は、コンパレータの反転入力端子に入力信号VINの変換値を与え、正転入力端子にコモン電圧VCMの変換値を与える。
コンパレータ11は、2つの入力端子に入力される電圧レベルの大小関係に基づいて出力信号(例えば、比較結果Cout)の論理レベルを切り替える。逐次比較レジスタロジック12は、冗長ビットの値を含むアナログデジタル変換回路1の事前変換結果を生成する。逐次比較レジスタロジック12は、DACスイッチ制御回路21、冗長ビット制御回路22、レジスタ23を有する。DACスイッチ制御回路21は、アナログデジタル変換回路1の比較動作の回数とコンパレータ11が出力する比較結果Coutとに基づき容量DAC回路10のスイッチを制御するためのスイッチ制御信号Ssarのビットの値を更新する。冗長ビット制御回路22は、DACスイッチ制御回路21が更新したスイッチ制御信号Ssarのビット値のうち冗長ビットに対応するビットの値を変更する。この冗長ビット制御回路22は、組合せ回路により構成される。冗長ビット制御回路22の詳細は後述する。レジスタ23は、DACスイッチ制御回路21及び冗長ビット制御回路22により決定されたスイッチ制御信号Ssarの値を保持する。
出力回路13は、冗長ビットを含む比較完了時のスイッチ制御信号Ssarである事前変換結果から出力すべきデジタル値を算出してアナログデジタル変換回路1の最終的な出力値となるADC出力を生成する。アナログデジタル変換回路1は、冗長ビットが1ビットであり、ADC出力としてnビットの値を出力するとした場合、事前変換結果としてn+1の値を出力する。そこで、出力回路13は、n+1の値からnビットの値を算出することで、nビットのADC出力を出力する。ADCタイミング制御回路14は、クロック信号CLKから、コンパレータ11、逐次比較レジスタロジック12及び出力回路13に動作タイミングを指示するタイミング信号を出力する。コンパレータ11、逐次比較レジスタロジック12及び出力回路13は、タイミング信号を受けてサンプリング動作と比較動作との動作の切り替え、或いは、ADC出力の出力タイミングの判断を行う。
続いて、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の詳細について説明する。図3に実施の形態1にかかる容量DAC回路10の回路図を示す。なお、図3では、容量DAC回路10の構成を明確にするためにコンパレータ11も示した。また、図3では、1回目の比較動作を行う際のスイッチの状態を示す。
図3に示すように、容量DAC回路10は、コンデンサ30〜39、コモン電圧供給切替スイッチ(例えば、スイッチSW1、SW2)、スイッチSW10〜SW19、第1の比較配線Wp、第2の比較配線Wn、入力配線Win、コモン電圧配線Wcmを有する。
第1の比較配線Wpは、一端がコンパレータ11の反転入力端子に接続され、他端にスイッチSW1が接続される。そして、スイッチSW1を閉状態に制御している期間に第1の比較配線Wpにコモン電圧VCMが伝達される。
また、第1の比較配線Wpには、複数の第1のコンデンサ(例えば、コンデンサ30〜36)の一端が接続される。コンデンサ30〜36は、それぞれ、変換対象のビットの重みに対応した容量値を有する。図3に示す例では、1Cを単位容量として、2C(1Cの2倍)、4C(1Cの4倍)、8C(1Cの8倍)、16C(1Cの16倍)の容量値のコンデンサが設けられる。
コンデンサ30は、1Cの容量値を有するダミーコンデンサである。コンデンサ30の他端には第1のスイッチSW10が設けられている。第1のスイッチSW10は、コンデンサ30の他端に、入力信号VINと、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ31は、変換結果の最下位ビットに対応する重みに対応する1Cの容量値を有するコンデンサである。コンデンサ31の他端には第1のスイッチSW11が設けられている。第1のスイッチSW11は、コンデンサ31の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ32は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する2Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ32は、後述する変換結果の2ビット目に対応するコンデンサ33と同じ容量値を有する。つまり、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、変換結果においてLSBと2ビット目との間に冗長ビットを有する。コンデンサ32の他端には第1のスイッチSW12が設けられている。第1のスイッチSW12は、コンデンサ32の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ33は、変換結果の2ビット目に対応する重みに対応する2Cの容量値を有するコンデンサである。コンデンサ33の他端には第1のスイッチSW13が設けられている。第1のスイッチSW13は、コンデンサ33の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ34は、変換結果の3ビット目に対応する重みに対応する4Cの容量値を有するコンデンサである。コンデンサ34の他端には第1のスイッチSW14が設けられている。第1のスイッチSW14は、コンデンサ34の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ35は、変換結果の4ビット目に対応する重みに対応する8Cの容量値を有するコンデンサである。コンデンサ35の他端には第1のスイッチSW15が設けられている。第1のスイッチSW15は、コンデンサ35の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ36は、変換結果の5ビット目に対応する重みに対応する16Cの容量値を有するコンデンサである。コンデンサ36の他端には第1のスイッチSW16が設けられている。第1のスイッチSW16は、コンデンサ36の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
第2の比較配線Wnは、一端がコンパレータ11の正転入力端子に接続され、他端にスイッチSW2が接続される。そして、スイッチSW2を閉状態に制御している期間に第2の比較配線Wnにコモン電圧VCMが伝達される。
また、第2の比較配線Wnには、複数の第2のコンデンサ(例えば、コンデンサ37〜39)の一端が接続される。コンデンサ37〜39は、総容量値が複数の第1にコンデンサ(例えば、コンデンサ30〜36)の総容量と同じ容量値となる。コンデンサ39は、冗長ビットの重みに応じた容量値を有する冗長ビットコンデンサである。コンデンサ37、38の総容量値は、コンデンサ30〜36の総容量値から冗長ビットコンデンサの容量値を引いた容量値に設定される。なお、図3に示す容量DAC回路10ではコモン配線Wcmを介してコンデンサ37〜39に対するコモン電圧の供給を行う。
コンデンサ37の他端には第2のスイッチSW17が設けられている。第2のスイッチSW17は、コンデンサ37の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。図3に示した例では、第2のスイッチSW17を介してコンデンサ37の他端に低電位側基準電圧VREFNを与える。コンデンサ38の他端には第2のスイッチSW18が設けられている。第2のスイッチSW18は、コンデンサ38の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。図3に示した例では、第2のスイッチSW18を介してコンデンサ38の他端に高電位側基準電圧VREFPを与える。コンデンサ39の他端には第2のスイッチSW19が設けられている。第2のスイッチSW19は、コンデンサ39の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
図3に示す例では、冗長ビットが変換結果の2ビット目に対応する位置に設定されているため、コンデンサ39の容量値は2Cに設定される。また、コンデンサ30〜36の総容量値は34Cとなるため、コンデンサ37、38の総容量値は、34Cから2Cを引いた32Cに設定される。変換処理の開始時に冗長ビットコンデンサとなるコンデンサ39の他端に低電位側基準電圧VREFNが供給される。ここで、コンデンサ37、38は、第2の比較配線Wnの電圧をコモン電圧VCMに安定化させるために用いられる。そのため、容量DAC回路10では変換処理開始時に、第2の比較配線Wnと低電位側基準電圧VREFNが供給される配線との間に設けられるコンデンサの容量値と、第2の比較配線Wnと高電位側基準電圧VREFPが供給される配線との間に設けられるコンデンサの容量値と、を同一容量にすることが好ましい。そこで、図3に示す例では、他端に低電位側基準電圧VREFNが供給されるコンデンサ38の容量値と、他端に高電位側基準電電圧VREFPが供給されるコンデンサ37、39の総容量値と、を同じにする。具体的には、コンデンサ39が2Cであり、コンデンサ37〜39の総容量値が34Cであるため、34Cを2分割した17Cをコンデンサ38の容量値とし、17Cから2Cを引いた15Cをコンデンサ37の容量値とした。なお、以下の説明ではコンデンサ37、38を場合に応じて調整コンデンサと称す。
図3に示すように、容量DAC回路10では、5ビットの分解能で変換処理を行うが、この変換結果に1ビットの冗長ビットを含む。つまり、逐次比較レジスタロジック12から出力される事前変換結果には、1ビットの冗長ビットの変換結果と5ビットの変換結果とが含まれる。また、容量DAC回路10は、変換処理を開始する前に、第1の比較配線Wp及び第2の比較配線Wnをコモン電圧VCMで初期化した状態で、入力信号VINをコンデンサ30〜36にサンプリングする。そして、容量DAC回路10は、変換処理のステージが進む毎にスイッチSW16からスイッチSW11に向かってスイッチを制御する。また、容量DAC回路10は、コンデンサ32及び39を用いて冗長ビットに基づく冗長比較を行う。図3では、コンデンサ32及び39を含む回路を冗長ビット回路40とした。
続いて、逐次比較レジスタロジック12の詳細について説明する。そこで、図4に冗長ビット制御回路及び冗長ビット制御回路に対応するレジスタのブロック図を示す。なお、図4に示した冗長ビット制御回路22は、冗長ビット制御回路22の一例であり、冗長ビット制御回路22としては様々な組み合わせ回路を用いることができる。図4に示すように、冗長ビット制御回路22は、インバータ回路を有する。このインバータ回路は、冗長ビットに関する比較動作(以下、冗長比較動作)の直前に比較動作が行われる2ビット目に関する比較結果Cout[2]を反転してレジスタ23において冗長ビット制御回路22に対応して設けられるレジスタに出力する。
また、レジスタとしては、トリガ入力端子Cに信号の立ち上がりエッジが入力されたタイミングで、入力端子Dに入力される信号レベルを、次にトリガ入力端子Cに信号の立ち上がりエッジが入力されたタイミングまで保持するDフリップフロップが用いられる。冗長ビット制御回路22に対応するレジスタは、レジスタ23に含まれるレジスタの1つでる。図4に示す例では、冗長ビット制御回路22に対応するレジスタには、トリガ信号として、ADCタイミング制御回路14が出力するタイミング信号が入力される。冗長ビット制御回路22に対応するレジスタに入力されるタイミング信号は、冗長ビットの重み付けを変更するタイミングで立ち上がりエッジを有する。また、図4に示したDフリップフロップ回路では、Dフリップフロップ回路に入力されるリセット信号を省略して表示したが、Dフリップフロップ回路は、比較動作完了後から次の比較動作の開始までの任意のタイミングで出力がローレベルにリセットされるものとする。
また、図4では特に記載しなかったが、第2の比較配線Wn側に接続される冗長ビットに対応するスイッチ制御信号Ssar以外のスイッチ制御信号Ssarは、初期状態がローレベルであり、比較動作が行われる直前にハイレベルとなり、比較動作後に比較結果がハイレベルであればハイレベルを維持し、比較結果がローレベルであればローレベルに戻されるように冗長ビット制御回路22及びレジスタ23により制御される。
続いて、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の動作について説明する。実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、冗長ビット回路を用いた冗長比較を行うことで誤変換を補正する。この誤変換を説明するために、まず、図5に冗長ビットを有さないアナログデジタル変換回路における下位4ビット分の二分探索経路を説明する図を示す。なお、図5及びこれ以降に示す二分探索経路の図において丸の中の数字は各比較動作を実行する際の重みを示すものである。アナログデジタル変換回路では、例えば、5ビット目の比較結果がローレベルであった場合、5ビット目の重みを0とする。そして、4ビット目の比較動作を行う場合、8Cの容量値を有するコンデンサ35の他端に高電位側基準電圧VREFPを与えた後に、4ビット目の比較動作を行う。この4ビット目の比較結果がハイレベルであれば、4ビット目の重みを8とした上で3ビット目に対応する4Cの容量値を有するコンデンサ34の他端に高電位側基準電圧VREFPを与えた後に3ビット目の比較動作を行う。一方、4ビット目の比較結果がローレベルであれば、4ビット目の重みを0とした上で3ビット目に対応する4Cの容量値を有するコンデンサ34の他端に高電位側基準電圧VREFPを与えた後に3ビット目の比較動作を行う。つまり、3ビット目の比較動作は、重みを4又は12とした状態で行われる。図5に示す二分探索経路は、このようなアナログデジタル変換回路の動作を図にしたものである。
そして、図5に示すように、アナログデジタル変換回路では、二分探索法に基づき比較動作を繰り返すため、各最終結果にたどり着く探索経路はそれぞれ1つしかない。そのため、冗長比較を行わない場合、上位ビットで誤変換が発生した場合、最終的な変換結果で誤変換に基づく誤差が補正されない。
図6に実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1における下位4ビット分の二分探索経路を説明する図を示す。なお、図6において丸の中の数字は各比較動作を実行する際の重みを示すものである。図6に示すように、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、最下位ビットと2ビット目の比較動作の間に冗長ビットを用いた冗長比較動作が行われる。この冗長比較では、2ビット目と同じ重みで変換結果に影響を与えることができる。具体的には、冗長比較を行うことで、1つの最終結果にたどり着く探索経路が少なくとも2つ形成される。そのため、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、誤変換が生じたとしても、別の探索経路を介して本来得たい変換結果にたどり着くことができる。
続いて、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の容量DAC回路10におけるスイッチ制御について説明する。そこで、図7に実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路の冗長ビットの制御例を説明する図を示す。図7では、3ビット目の比較動作から冗長ビットを用いた冗長比較動作までの第1のスイッチ及び第2のスイッチの制御について示した。また、図7において、1は第1のスイッチ及び第2のスイッチが高電位側基準電圧VREFPを選択している状態を示し、0は第1のスイッチ及び第2のスイッチが低電位側基準電圧VREFNを選択している状態を示す。
図7に示すように、3ビット目の比較動作が行われる比較3回目では、3ビット目のP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。比較3回目では、この状態で比較動作を行い比較結果Coutがローレベルであれば、2ビット目の比較動作を行う比較4回目で第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPから低電位側基準電圧VREFNに戻す。一方、比較3回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、2ビット目の比較動作を行う比較4回目で第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPで維持する。
次いで、比較4回目では、2ビット目のP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW13が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。比較4回目では、この状態で比較動作を行い比較結果Coutがローレベルであれば、冗長ビットの比較動作を行う比較5回目で第1のスイッチSW13が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPから低電位側基準電圧VREFNに戻す。一方、比較4回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、冗長ビットの比較動作を行う比較5回目で第1のスイッチSW13が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPで維持する。
次いで、比較5回目では、冗長ビットのP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW12が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。また、この冗長比較を行う比較5回目では、冗長ビットのN側(例えば、第2の比較配線Wn)の第2のスイッチSW19が選択する基準電圧を制御する。具体的には、比較4回目の比較結果Coutがローレベルであれば、第2のスイッチSW19が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。これは、P側のDAC出力に対してN側のDAC出力が高電位側に変化するため、等価的に負の重み付けを実現することに相当する。一方、比較4回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、第2のスイッチSW19が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNで維持する。
このように、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、入力信号のサンプリングが行われるP側(第1の比較配線Wp側)に配置されるスイッチに関しては比較動作の対象とされるビットに対応する第1のスイッチに高電位側基準電圧VREFPを選択させ、変換結果に応じて、比較動作を行ったビットに対応する第1のスイッチが選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPとするか低電位側基準電圧VREFNとするかを切り替える。また、冗長ビットに対応する第2のスイッチに関しては、直前の比較動作で得られた比較結果に基づき高電位側基準電圧VREFPを選択するか、低電位側基準電圧VREFNを選択するか、を切り替える。また、直前の比較動作で得られた比較結果に基づいて、負の重み付けの有無を決定することになる。
続いて、上記のようなスイッチの制御を行った場合の具体的動作を説明する。そこで、図8に実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の容量DAC回路のスイッチ制御を説明する図を示す。図8では、第1の比較配線Wpの電圧波形(図8のP側)と第2の比較配線Wnの電圧波形(図8のN側)を示した。また、図8では、上図に比較動作が正しく行われたときの電圧波形を示し、下図に4ビット目の比較動作が正しく行われなかったときの電圧波形を示した。そのため、図8では、4ビット目の比較動作の結果に基づき決まるP側の電圧に基づき行われる3ビット目の比較動作(比較3回目)において、上図と下図との間でP側の電圧に違いが生じる。
そして、図8に示すように、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、誤りなく比較動作が行われた場合は、冗長比較が行われる比較5回目でN側に配置される第2のスイッチSW19が選択する基準電圧に変化がないため、N側の電圧がVCMで維持される。一方、比較動作の1つに誤りが生じた場合、冗長比較が行われる比較5回目で、N側に配置される第2のスイッチSW19が選択する基準電圧が低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替わるため、N側の参照電圧に冗長ビットの重みに応じた電圧変化が生じる。すなわち、比較5回目では、比較4回目の参照電圧とはその値が異なる参照電圧で比較動作を行う。これにより、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、比較2回目で生じた誤判定の影響を補正する。また、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の事前変換結果には、冗長ビットの直前に比較が行われるビットの比較結果に対応したビットにN側冗長ビットのハイレベル/ローレベルの情報、つまり、負の重み付けの有無情報も含まれるため、上位ビットで生じた誤りが補正される。図8に示す例では、冗長比較を行うことで、誤りの有無にかかわらず変換結果として7を得ることができる。
ここで、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の構成の特徴をより明確にするために、比較例として第2の比較配線Wn側に冗長ビットを有さないアナログデジタル変換回路100を説明する。そこで、図9に比較例にかかるアナログデジタル変換回路100のブロック図を示す。
図9に示すように、比較例にかかるアナログデジタル変換回路100は、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の容量DAC回路10及び逐次比較レジスタロジック12に代えて容量DAC回路110及び逐次比較レジスタロジック112を有する。逐次比較レジスタロジック112は、逐次比較レジスタロジック12の冗長ビット制御回路22に代えて加算器122を設けたものである。加算器122は、冗長ビットを用いた冗長比較を行う際に既に決定された変換結果の桁下げを行うための演算を行う。
図10に比較例にかかる容量DAC回路110の回路図を示す。図10に示すように、比較例にかかる容量DAC回路110は、実施の形態1にかかる容量DAC回路10からコンデンサ39及び第2のスイッチSW19を除いたものである。図10では、冗長ビット回路40からコンデンサ39及び第2のスイッチSW19を除いた回路を冗長ビット回路140とした。
続いて、比較例にかかるアナログデジタル変換回路100の容量DAC回路110におけるスイッチ制御について説明する。そこで、図11に比較例にかかるアナログデジタル変換回路100の冗長ビットの制御例を説明する図を示す。図11では、3ビット目の比較動作から冗長ビットを用いた冗長比較動作までの第1のスイッチ及び第2のスイッチの制御について示した。また、図11において、1は第1のスイッチが高電位側基準電圧VREFPを選択している状態を示し、0は第1のスイッチが低電位側基準電圧VREFNを選択している状態を示す。
図11に示すように、3ビット目の比較動作が行われる比較3回目及び2ビット目の比較動作が行われる比較4回目の動作は図7で説明した実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1におけるP側に配置される第1のスイッチの動作と同じであるため、ここでは、説明を省略する。一方、冗長ビットを用いた冗長比較を行う比較5回目の動作は実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と比較例にかかるアナログデジタル変換回路100とでは異なる動作となるため、以下で説明する。
比較例にかかる比較5回目では、比較4回目の変換結果にかかわらず冗長ビットに対応する第1のスイッチSW12が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。また、比較例にかかる比較5回目では、比較4回目の比較結果の値に応じて、すでに変換結果として決定されている値を変更する。具体的には、比較4回目の比較結果がローレベルであった場合、4ビット目から2ビット目の値を変更する。具体的には、4ビット目から2ビット目の値を、それまでの比較処理で得られた値から冗長ビットの重みである2を引いた値とする。一方、比較4回目の比較結果がハイレベルであった場合、4ビット目から2ビット目の値は変更しない。
このように、比較例にかかるアナログデジタル変換回路1では、冗長ビットを用いた冗長比較を行う際の重みを実現するために既に決定している変換結果の値を変更する必要がある。そして、この値の変更には加算器122等を用いた演算が必要になる。
上記説明より、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、容量DAC回路10が比較動作において比較サイクルにおいて変動する比較電圧の比較対象となる参照電圧が生成される第2の比較配線Wnに冗長ビットコンデンサ(例えば、コンデンサ39)を設ける。そして、冗長ビットコンデンサの他端に与える基準電圧を、冗長比較動作の直前に比較動作の比較結果に応じて切り替える。実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、このような回路構成とスイッチ制御を行うことで、冗長比較動作時にそれまで決定した変換結果を変更することなく負の重みを有する変換結果を得ることができる。そして、この動作を行うためには、図4で示した冗長ビット制御回路22のような簡単な組み合わせ回路を採用するのみでよい。このようなことから、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1は、冗長比較動作におけるスイッチ制御に要する遅延時間を極めて小さくできるため、制御に要する時間を短縮して変換処理を高速化することができる。
また、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、冗長比較動作におけるスイッチ制御に要する遅延時間を極めて小さくできるため、冗長比較動作の期間を他の通常動作の期間の長さと同じにしても、容量DAC回路10の出力が収束するまでの時間を十分に確保することができ、アナログデジタル変換回路の動作を安定化させることができる。
特にシングルエンド信号を入力信号VINとするシングルエンド型アナログデジタル変換回路では、冗長ビットを用いた冗長比較動作時の変換速度の低下が大きな問題となっており、この冗長比較動作の変換速度を高める効果は極めて大きい。
また、シングルエンド型アナログデジタル変換回路においても変換精度を高めるために、第1の比較配線Wp側のコンデンサの総容量値と第2の比較配線Wn側のコンデンサの総容量値を揃えることが理想である。ここで、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、第2の比較配線Wn側に冗長ビットコンデンサとなるコンデンサ39を設けるが、このコンデンサ39と調整コンデンサとなるコンデンサ37、38の総容量値は、第1のコンデンサとなるコンデンサ30〜36の総容量値と同じである。つまり、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、冗長ビットコンデンサを第2の比較配線Wn側に設けても、コンデンサの総容量値は冗長ビットコンデンサを設けない場合と同じであり、半導体チップの面積の増加はない。
また、例えば、比較例にかかるアナログデジタル変換回路100のように冗長比較を行う際に、冗長ビットよりも上位のビットに対応するスイッチの切替を行う場合、冗長ビットよりも上位のビットに対応するコンデンサへの充放電に起因して瞬時に大きく電流値が変動する瞬時電流が発生する。このような瞬時電流が発生した場合、半導体装置内の配線、半導体チップとパッケージを接続するワイヤ、パッケージのピン等に寄生するインダクタンス成分により基準電圧が変動して変換精度が低下する問題が生じる。しかしながら、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1では、冗長比較動作を行う際に接続先を切り替えるスイッチは冗長ビットに関するものだけである。そのため、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1は、比較例にかかるアナログデジタル変換回路100のような瞬時電流が発生することがないため、基準電圧の変動を抑制して変換精度を高めることができる。
ここで、図3で示した容量DAC回路10では、第2の比較配線Wn側に設けられた調整コンデンサ(例えば、コンデンサ37、38)に対して第2のスイッチSW17、SW18を設けた。しかしながら、この調整コンデンサは、サンプリング動作、比較動作のいずれにおいても与えられる基準電圧が固定される。そのため、この調整コンデンサは他の実装方法を用いることができる。その具体例として、第1の変形例と第2の変形例を説明する。
図12に実施の形態1にかかる容量DAC回路の第1の変形例を説明する回路図を示す。この第1の変形例にかかる容量DAC回路10aは、低電位側基準電圧VREFNが与えられる配線と第2の比較配線Wnとの間にコンデンサ50を有する。このコンデンサ50は、コンデンサ37、38の容量値を合計した容量値を有する。このような回路構成としても第2の比較配線Wnに接続される容量値は容量DAC回路10と変わらないため、容量DAC回路10を採用した実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と同じアナログデジタル変換回路を実現することができる。
図13に実施の形態1にかかる容量DAC回路の第2の変形例を説明する回路図を示す。この第1の変形例にかかる容量DAC回路10bは、コンデンサ37をスイッチを介すことなく低電位側基準電圧VREFNが与えられる配線に接続し、コンデンサ38をスイッチを介すことなく高電位側基準電圧VREFPが与えられる配線に接続するものである。このような回路構成としても第2の比較配線Wnに接続される容量値は容量DAC回路10と変わらないため、容量DAC回路10を採用した実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と同じアナログデジタル変換回路を実現することができる。
また、上記説明では、コンデンサ30〜39をそれぞれ1つのコンデンサとして説明した。しかし、コンデンサは、例えば、同一形状、かつ、同一容量値の単位コンデンサをレイアウトし、1つのコンデンサとして機能させる単位コンデンサの数を配線レイアウトにより調節する形式でも良い。このような単位コンデンサの組み合わせ個数を調節することによりコンデンサ30〜39を構成することでコンデンサ間の比精度を高めることができる。
また、スイッチSW10〜SW19及びスイッチSW1、SW2は、トランジスタにより構成されるが、スイッチを構成するトランジスタは、分割してレイアウトされたトランジスタを複数個並列接続して1つのトランジスタを構成するものであっても良い。
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の別の形態となる容量DAC回路60について説明する。そこで、図14に実施の形態2にかかる容量DAC回路60の回路図を示す。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
図14に示すように、実施の形態2にかかる容量DAC回路60は、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の冗長ビット回路40に代えて冗長ビット回路61を有する。冗長ビット回路61は、コンデンサ62〜65、第1のスイッチSW62、SW63、第2のスイッチSW64、SW65を有する。
コンデンサ62は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する2Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ62は、変換結果の2ビット目に対応するコンデンサ33と同じ容量値を有する。コンデンサ62の他端には第1のスイッチSW62が設けられている。第1のスイッチSW62は、コンデンサ62の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ63は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する4Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ63は、変換結果の3ビット目に対応するコンデンサ34と同じ容量値を有する。コンデンサ63の他端には第1のスイッチSW63が設けられている。第1のスイッチSW63は、コンデンサ63の他端に、入力信号VINと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ64は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する2Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ64は、変換結果の2ビット目に対応するコンデンサ33と同じ容量値を有する。コンデンサ64の他端には第2のスイッチSW64が設けられている。第2のスイッチSW64は、コンデンサ64の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ65は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する4Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ65は、変換結果の3ビット目に対応するコンデンサ34と同じ容量値を有する。コンデンサ65の他端には第2のスイッチSW65が設けられている。第2のスイッチSW65は、コンデンサ65の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
つまり、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路では、変換結果においてLSBと2ビット目との間に2ビットの冗長ビットを有する。そして、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路では、冗長ビットを2ビット有する。そこで、冗長ビットが2ビットとなった場合のアナログデジタル変換回路の動作について以下で説明する。
まず、図15に実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路における二分探索経路を説明する図を示す。図15に示すように、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路では、重みが4Cとなる冗長ビットと、重みが2Cとなる冗長ビットを有するため、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1よりも複雑な二分探索経路を形成することができる。
続いて、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路の容量DAC回路60におけるスイッチ制御について説明する。そこで、図16に実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路の冗長ビットの制御例を説明する図を示す。図16では、3ビット目の比較動作から冗長ビットを用いた冗長比較動作までの第1のスイッチ及び第2のスイッチの制御について示した。また、図16において、1は第1のスイッチ及び第2のスイッチが高電位側基準電圧VREFPを選択している状態を示し、0は第1のスイッチ及び第2のスイッチが低電位側基準電圧VREFNを選択している状態を示す。
図16に示すように、3ビット目の比較動作が行われる比較3回目及び2ビット目の比較動作が行われる比較4回目の動作は図7で説明した実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1におけるP側に配置される第1のスイッチの動作と同じであるため、ここではでは、説明を省略する。一方、冗長ビットを用いた冗長比較を行う比較5回目及び比較6回目の動作は実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路とでは異なる動作となるため、以下で説明する。
比較5回目では、4Cの重みを有するコンデンサ63に対応して設けられるP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW63が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。また、この冗長比較を行う比較5回目では、冗長ビット回路61のN側(例えば、第2の比較配線Wn)の第2のスイッチSW64、SW65が選択する基準電圧を制御する。具体的には、比較4回目の比較結果Coutがローレベルであれば、第2のスイッチSW64、SW65が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。一方、比較4回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、第2のスイッチSW64、SW65が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNで維持する。
次いで、比較6回目では、比較5回目の比較結果に基づきP側(第1の比較配線Wp側)に配置される第1のスイッチSW62が選択する基準電圧を決定する。具体的には、比較5回目の変換結果がローレベルであった場合、第1のスイッチSW62が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPから低電位側基準電圧VREFNに戻す。一方、比較5回目の変換結果がハイレベルであった場合、第1のスイッチSW62が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPのまま維持する。
また、比較6回目では、2Cの重みを有するコンデンサ62に対応して設けられるP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW62が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。また、この冗長比較を行う比較6回目では、冗長ビット回路61のN側(例えば、第2の比較配線Wn)の第2のスイッチSW64、SW65が選択する基準電圧を比較5回目と同じ低電位側基準電圧VREFNで維持する。
このように、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路では、入力信号のサンプリングが行われるP側(第1の比較配線Wp側)に配置されるスイッチに関しては比較動作の対象とされるビットに対応する第1のスイッチに高電位側基準電圧VREFPを選択させ、変換結果に応じて、比較動作を行ったビットに対応する第1のスイッチが選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPとするか低電位側基準電圧VREFNとするかを切り替える。また、冗長ビットに対応する第2のスイッチに関しては、冗長比較の前に行われる通常比較のうち最も後に行われた通常比較で得られた比較結果に基づき高電位側基準電圧VREFPを選択するか、低電位側基準電圧VREFNを選択するか、を切り替える。
上記説明より、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路では、冗長ビットを2ビット有することで、1つの最終結果にたどり着くための探索経路を実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路よりも多く形成することができる。これにより、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路は、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路よりも高い補正能力を有する。
また、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路においても、冗長ビットの制御は、冗長比較の前に行われた通常比較動作の比較結果に基づき行われ、冗長ビットよりも上位のビットの値を変更することはない。従って、実施の形態2にかかるアナログデジタル変換回路においても実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と同様に、変換速度の高速化と基準電圧の安定化を実現することができる。
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の別の形態となる容量DAC回路70について説明する。そこで、図17に実施の形態3にかかる容量DAC回路70の回路図を示す。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
図17に示すように、実施の形態3にかかる容量DAC回路70は、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の第1の比較配線Wp側に配置されていた冗長ビットに対応するコンデンサ32及び第1のスイッチSW12が除かれている。また、実施の形態3にかかる容量DAC回路70は、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の冗長ビット回路40に代えて冗長ビット回路71を有する。冗長ビット回路61は、コンデンサ62〜65、第1のスイッチSW62、SW63、第2のスイッチSW64、SW65を有する。なお、実施の形態3にかかる容量DAC回路70では、第1の比較配線Wp側に設けられるコンデンサの総容量が実施の形態1にかかる容量DAC10よりも2C分少ない。また、実施の形態3にかかる容量DAC回路70では、第2の比較配線Wn側に設けられるコンデンサの総容量が実施の形態1にかかる容量DAC10よりも2C分少ない。そのため、コンデンサ37、38の総容量値が実施の形態1にかかる容量DAC10よりも少なくなっている。
コンデンサ72は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する2Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ72は、変換結果の2ビット目に対応するコンデンサ33と同じ容量値を有する。コンデンサ72の他端には第2のスイッチSW72が設けられている。第2のスイッチSW72は、コンデンサ72の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
コンデンサ73は、変換結果の冗長ビットに対応する重みに対応する4Cの容量値を有する冗長ビットコンデンサである。また、コンデンサ73は、変換結果の3ビット目に対応するコンデンサ34と同じ容量値を有する。コンデンサ73の他端には第2のスイッチSW73が設けられている。第2のスイッチSW73は、コンデンサ73の他端に、コモン電圧VCMと、高電位側基準電圧VREFP、低電位側基準電圧VREFNと、のいずれか1つを選択して与える。
つまり、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、変換結果においてLSBと2ビット目との間に2ビットの冗長ビットを有する。そして、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、重みが異なる冗長ビットコンデンサを有するが、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、2つの冗長ビットコンデンサを用いて1ビットの冗長ビットを構成する。そこで、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路の動作について以下で説明する。
実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路の容量DAC回路70におけるスイッチ制御について説明する。そこで、図18に実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路の冗長ビットの制御例を説明する図を示す。図18では、3ビット目の比較動作から冗長ビットを用いた冗長比較動作までの第1のスイッチ及び第2のスイッチの制御について示した。また、図18において、1は第1のスイッチ及び第2のスイッチが高電位側基準電圧VREFPを選択している状態を示し、0は第1のスイッチ及び第2のスイッチが低電位側基準電圧VREFNを選択している状態を示す。
図18に示すように、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、変換動作開始時に冗長ビットコンデンサとなるコンデンサ72、73のうち対応付けられる重みが小さいコンデンサ72に接続される第2のスイッチSW72が高電位側基準電圧VREFPを選択するようにした上で比較動作を開始する。
そして、3ビット目の比較動作が行われる比較3回目では、3ビット目のP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。比較3回目では、この状態で比較動作を行い比較結果Coutがローレベルであれば、2ビット目の比較動作を行う比較4回目で第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPから低電位側基準電圧VREFNに戻す。一方、比較3回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、2ビット目の比較動作を行う比較4回目で第1のスイッチSW14が選択する基準電圧を高電位側基準電圧VREFPで維持する。
次いで、比較4回目では、2ビット目のP側(例えば、第1の比較配線Wp側)の第1のスイッチSW13が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。比較4回目では、この状態で比較動作を行う。そして、比較4回目の比較結果Coutがローレベルであれば、冗長ビットの比較動作を行う比較5回目で第2のスイッチSW73が選択する基準電圧を低電圧側基準電圧VREFNから高電位側基準電圧VREFPに切り替える。一方、比較4回目の比較結果Coutがハイレベルであれば、冗長ビットの比較動作を行う比較5回目で第2のスイッチSW73が選択する基準電圧を低電位側基準電圧VREFNで維持する。また、比較5回目では、第2のスイッチSW72が選択する基準電圧は、比較4回目の比較結果Coutがローレベルであるかハイレベルであるかに関わらず、高電位側基準電圧VREFPから低電位側基準電圧VREFNに切り替える。
このように、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路においても、冗長ビットに対応する第2のスイッチに関しては、直前の比較動作で得られた比較結果に基づき高電位側基準電圧VREFPを選択するか、低電位側基準電圧VREFNを選択するか、を切り替える。
上記説明より、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、重みの異なる冗長ビットコンデンサを有し、かつ、冗長ビットコンデンサに与える基準電圧を前の変換結果に基づき切り替えることで、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路と同様の冗長比較動作を行うことができる。つまり、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路においても、冗長ビットの制御は、冗長比較の前に行われた通常比較動作の比較結果に基づき行われ、冗長ビットよりも上位のビットの値を変更することはない。従って、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路においても実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と同様に、変換速度の高速化と基準電圧の安定化を実現することができる。
また、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路では、容量DAC回路70に用いられるコンデンサの総容量値が実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1の容量DAC回路10よりも少ない。具体的には、そのため、実施の形態3にかかるアナログデジタル変換回路は、実施の形態2にかかる容量DAC回路70に用いられるコンデンサの総容量値は、容量DAC回路10に用いられるコンデンサの総容量値よりも4C分少ない。コンデンサは半導体チップ上で大きな面積を占める素子であり、このコンデンサの総容量値を削減することで半導体チップの面積を大きく削減することができる。
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の別の形態となる容量DAC回路80について説明する。そこで、図19に実施の形態4にかかる容量DAC回路90の回路図を示す。なお、実施の形態4の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
実施の形態1から実施の形態3で説明した容量DAC回路は、変換対象ビットに対する重みを決定するコンデンサ31〜36の端子のうち高電位側基準電圧VREFP又は低電位側基準電圧VREFNが入力される側の端子から入力信号を入力するボトムプレートサンプリング型アナログデジタル変換回路を説明した。一方、実施の形態4にかかるアナログデジタル変換回路は、コンデンサ31〜36の端子のうち第1の比較配線Wpに接続される側の端子から入力信号を入力するトッププレートサンプリング型アナログデジタル変換回路である。なお、図19では、冗長ビット回路40に対応する回路として冗長ビット回路81を示した。冗長ビット回路81は、含まれるスイッチが第1のスイッチSW82と第2のスイッチSW89となっている。
図19に示すように、実施の形態4にかる容量DAC回路80は、実施の形態1にかかる容量DAC回路10の入力配線Win、コモン電圧配線Wcmを削除し、第1のスイッチSW11〜SW16及び第2のスイッチSW17〜SW19を第1のスイッチSW81〜SW86及び第2のスイッチSW87〜SW89に置き換えたものである。また、実施の形態4にかかる容量DAC回路80では、サンプリングスイッチ(例えば、スイッチSW1)を介して第1の比較配線Wpに入力信号VINが与えられる。
第1のスイッチSW81〜SW86及び第2のスイッチSW87〜SW89は、それぞれ、高電位側基準電圧VREFPと低電位側基準電圧VREFPとのいずれか一方を選択して、対応するコンデンサに与える。
ここで、実施の形態4にかかるアナログデジタル変換回路においても容量DAC回路80のスイッチ制御は、入力信号VINをサンプリングする際に入力信号VINを第1の比較配線Wp側から入力する点が実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路とは異なる。しかしながら、サンプリングした入力信号VINに対する比較処理を行う際のスイッチの制御方法は、実施の形態4にかかるアナログデジタル変換回路と実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1とで同じ方法を採用することができる。
上記説明より、実施の形態4にかかるアナログデジタル変換回路では、トッププレートサンプリング型のアナログデジタル変換回路においても容量DAC回路80に含まれる重みを決定するコンデンサと当該コンデンサに基準電圧を印加するスイッチの構成を容量DAC回路10と同じにする。これにより、実施の形態4にかかるアナログデジタル変換回路においても、実施の形態1にかかるアナログデジタル変換回路1と同様に変換速度の高速化及び参照電圧の安定化を実現することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。