JP6871201B2 - 構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法 - Google Patents
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Description
一般的に、橋梁のコンクリート床版において、水平ひび割れといった床版内部の損傷は、従来の非破壊検査で検出することが非常に困難であるが、AEセンサによって取得されたデータの分析により内部の損傷を推定することができる。しかし、橋梁等にAEセンサを設置し、損傷の推定に十分なデータを得るには長い時間を要してしまう。そのため、コンクリート内部の評価を効率的に行えない場合があった。なお、このような問題は、橋梁のコンクリート床版に限らず亀裂の発生または進展に伴い弾性波が発生する構造物すべてに共通する問題である。
図1は、実施形態の構造物評価システム100のシステム構成を示す図である。構造物評価システム100は、構造物の健全性の評価に用いられる。本実施形態において、評価とはある基準に基づいて、構造物の健全性の度合い、すなわち構造物の劣化状態を決定することを意味する。なお、本実施形態では、構造物の一例として橋梁を例に説明するが、構造物は橋梁に限定される必要はない。例えば、構造物は、亀裂の発生または進展、あるいは外的衝撃(例えば雨、人工雨など)に伴い弾性波が発生する構造物であればどのようなものであってもよい。なお、橋梁は、河川や渓谷などの上に架設される構造物に限らず、地面よりも上方に設けられる種々の構造物(例えば高速道路の高架橋)なども含む。
位置標定部201は、所定の期間内のAE信号を不図示のバッファから取得する(ステップS101)。すなわち、位置標定部201は、対象時刻を含む所定の期間内のAE信号を不図示のバッファから取得する。位置標定部201は、取得した複数のAE信号を用いて、それぞれAE発信源の位置標定を行う(ステップS102)。その後、位置標定部201は、位置標定の結果に基づいて発信源分布を導出する(ステップS103)。
一方、AE発信源の密度が第一の閾値未満の領域がない場合(ステップS104−NO)、評価部202は構造物の劣化が生じている領域がないと評価する(ステップS106)。評価部202は、評価結果を表示部203に表示させる。例えば、評価部202は、発信源分布において劣化が生じている領域を他の領域と異なる態様で評価結果を表示させる。他の領域と異なる態様としては、劣化が生じている領域を色付けすること、円などで囲むこと、劣化が生じている領域を文字で表示させるなどが挙げられる。表示部203は、評価部202の制御に従って、評価結果を表示する。
構造物評価装置20は、構造物への衝撃によるAE信号を用いることで、大量のAE発信源を含む発信源分布を導出する。そして、構造物評価装置20は、発信源分布に基づいて、AE発信源の密度が第一の閾値未満の領域を構造物の劣化が生じている領域と評価する。このように、従来ではノイズ源となってしまうデータを利用することによって効率的に構造物の評価を行うことが可能になる。
構造物評価装置20が備える各機能部は、一部又は全てが別の筺体に備えられていてもよい。例えば、構造物評価装置20が評価部202のみを備えて、位置標定部201および表示部203が別の筺体に備えられてもよい。このように構成される場合、評価部202は、発信源分布を別の筺体から取得し、取得した発信源分布を用いて構造物の健全性を評価する。そして、評価部202は、評価結果を別の筺体が備える表示部203に出力する。
このように構成されることによって、発信源分布の導出に既存の装置を用いることによって、構造物評価装置20の製造コストを抑えることができる。
図1では、複数のAEセンサ10−1〜10−nに1台の信号処理部11が接続されているが、構造物評価システム100は複数台の信号処理部11を備え、各AEセンサ10にそれぞれ信号処理部11が接続されて複数台のセンサユニットを備えるように構成されてもよい。
評価部202は、対象時刻のAE信号を、構造物への衝撃によるAE信号として用いて発信源分布を導出するように構成されてもよい。
評価部202は、発信源分布をコンター図で表示部203に表示させてもよい。
図6及び図7は、構造物評価システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。
なお、図6及び図7において、処理開始時にはAEセンサ10−1が稼働中で、AEセンサ10−2が休止中であるとする。休止中とは、装置の全ての機能が休止しているわけではなく、起動に関わる機能のみ動作している状態を表す。
AEセンサ10−1は、構造物が発生する弾性波(AE波)を検出する(ステップS201)。AEセンサ10−1は、検出した弾性波を電圧信号(AE源信号)に変換し、AE源信号に対して増幅、周波数制限などの処理を施して信号処理部11に出力する(ステップS202)。信号処理部11は、入力したAE源信号に対して、必要とされるノイズ除去、パラメータ抽出などの信号処理を行う(ステップS203)。信号処理部11は、信号処理を行うことによって抽出されるAE特徴量に基づく情報をAE信号として構造物評価装置20に出力する(ステップS204)。ステップS201〜ステップS204の処理が繰り返し実行される。信号処理部11から出力されたAE信号は、不図示のバッファに蓄積される。
AEセンサ10−1は、構造物が発生する弾性波(AE波)を検出する(ステップS209)。AEセンサ10−1は、検出した弾性波を電圧信号(AE源信号)に変換し、AE源信号に対して増幅、周波数制限などの処理を施して信号処理部11に出力する(ステップS210)。信号処理部11は、入力したAE源信号に対して、必要とされるノイズ除去、パラメータ抽出などの信号処理を行う(ステップS211)。信号処理部11は、信号処理を行うことによって抽出されるAE特徴量に基づく情報をAE信号として構造物評価装置20に出力する(ステップS212)。ステップS209〜ステップS212の処理が繰り返し実行される。信号処理部11から出力されたAE信号は、不図示のバッファに蓄積される。
以上のように構成されることによって、常時、全てのAEセンサ10が稼働している必要がない。そのため、消費電力を低減することができる。
本実施形態で示した構造物評価システム及び構造物評価装置に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
構造物より発生した弾性波を検出する複数のセンサと、
前記構造物への衝撃により発生した前記弾性波の発信源分布を導出する位置標定部と、
前記発信源分布における前記弾性波の特徴量から前記構造物の劣化状態を評価する評価部と、
を備える構造物評価システム。
(付記2)
前記評価部は、前記弾性波の特徴量が第一の閾値未満の領域を前記構造物の劣化が生じている領域と評価する、付記1に記載の構造物評価システム。
(付記3)
前記位置標定部は、第二の閾値以上の数の弾性波が検出された時刻における弾性波から得られた信号又は前記時刻を含む所定の期間内における弾性波から得られた信号を、前記構造物への衝撃により発生した前記弾性波の信号として用いることによって前記発信源分布を導出する、付記1又は2に記載の構造物評価システム。
(付記4)
前記構造物への衝撃は、無数の微小物体の衝突により生じる衝撃である、付記1から3のいずれか一つに記載の構造物評価システム。
(付記5)
前記微小物体は、構造物の外部から構造物に影響を与える物体である、付記4に記載の構造物評価システム。
(付記6)
前記微小物体は、気象現象により発生する物体である、付記4又は5に記載の構造物評価システム。
(付記7)
前記微小物体の衝突により生じる衝撃は、人工的な行為により発生する衝撃である、付記4から6のいずれか一つに記載の構造物評価システム。
(付記8)
前記微小物体の衝突により生じる衝撃は、前記センサを設置した面に相対する面へ加わる衝撃である、付記4から7のいずれか一つに記載の構造物評価システム。
(付記9)
前記センサの一部が休止状態であり、
第三の閾値以上の弾性波が検出された場合に前記休止状態のセンサを起動させる信号処理部をさらに備える、付記1から8のいずれか一つに記載の構造物評価システム。
(付記10)
前記センサの一部又は全てが休止状態であり、
前記構造物への衝撃に起因する事象の発生が予想される時刻に前記休止状態のセンサを起動させる信号処理部をさらに備える、付記1から8のいずれか一つに記載の構造物評価システム。
(付記11)
構造物への衝撃により発生した弾性波の発信源分布を導出する位置標定部と、
前記発信源分布における前記弾性波の特徴量から前記構造物の劣化状態を評価する評価部と、
を備える構造物評価装置。
(付記12)
構造物への衝撃により発生した前記弾性波の発信源分布を導出する位置標定ステップと、
前記発信源分布における前記弾性波の特徴量から前記構造物の劣化状態を評価する評価ステップと、
を有する構造物評価方法。
Claims (6)
- 弾性波を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサが設置されている面と異なる構造物の面の少なくとも一部の領域に対して均等に与えられた衝撃により発生した前記弾性波と、前記複数のセンサそれぞれの設置位置に関する情報とに基づいて前記構造物の劣化状態を評価する評価部と、
を備える構造物評価システム。 - 前記設置位置に関する情報を保持し、前記衝撃により発生した前記弾性波の発信源を導出する位置標定部をさらに備え、
前記評価部は、前記複数のセンサそれぞれの設置位置の周辺の領域のうち、前記発信源の数が第一の閾値未満の領域を前記構造物の劣化が生じている領域と評価する、請求項1に記載の構造物評価システム。 - 前記位置標定部は、第二の閾値以上の数の弾性波が検出された時刻における弾性波から得られた信号又は前記時刻を含む所定の期間内における弾性波から得られた信号を、前記衝撃により発生した前記弾性波の信号として用いることによって前記発信源を導出する、請求項2に記載の構造物評価システム。
- 前記構造物の領域に対して均等に与えられた衝撃は、無数の微小物体の衝突により生じる衝撃である、請求項1から3のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
- 弾性波を検出する複数のセンサが設置されている面と異なる構造物の面の少なくとも一部の領域に対して均等に与えられた衝撃により発生した弾性波と、前記複数のセンサそれぞれの設置位置に関する情報とに基づいて前記構造物の劣化状態を評価する評価部、
を備える構造物評価装置。 - 弾性波を検出する複数のセンサが設置されている面と異なる構造物の面の少なくとも一部の領域に対して均等に与えられた衝撃により発生した弾性波と、前記複数のセンサそれぞれの設置位置に関する情報とに基づいて前記構造物の劣化状態を評価する評価ステップ、
を有する構造物評価方法。
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