JP6870670B2 - 変形限界の評価方法、割れの予測方法及びプレス金型の設計方法 - Google Patents
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Description
特に、金属板として、引張強度が590MPa以上の高強度鋼板を採用した場合、プレス成形時に、せん断加工面の曲げ割れが顕在化してきている。
本発明は、上記のような課題に着目したもので、せん断加工面の曲げ割れの発生を防ぐために金属板のせん断加工面の曲げ割れ限界を予測し、プレス成形条件を決定するための技術を提供することを目的とする。
本発明は、金属板に必要となる曲げ性の予測方法と、それを用いた金属板に発生する割れの予測方法である。また、対象とする金属板に割れを発生させることなくプレス成形するための変形限界の評価・予測方法と、金型形状の設計方法を提供する。
そして、本発明の一態様によれば、例えば、自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品をプレス成形する際に、用いる金属板の選定が適切であるか精度良く予測できるようになり、プレス成形を安定して行うことができる。また、プレス成形品の不良率の低減にも大きく寄与することができる。更に、本発明の一態様によれば、例えば、プレス金型の形状を設計段階で精度良く予測できるようになり、プレス金型の製造期間の短縮に貢献できる。
図1(b)に、金属板1を曲げ加工を含むプレス成形で成形したプレス部品2の一例を、示す。図1は、金属板1を断面コ字状に曲げ成形した例である。
この例は、図1(a)の形状にせん断加工された金属板1を、図1(b)、図1(c)のプレス部品2の形状にプレス成形した例であり、符号2Aの位置がせん断加工面10を含む部分に曲げ変形を施すことで生じた曲げ部である。図1(a)中、符号1Aが曲げ変形を加えられる位置である。
本実施形態では、このような、せん断加工された金属板1に曲げ変形を含むプレス成形を行う際における、金属板1のせん断加工面10での変形限界を評価する評価方法である。
なお、本発明の適用は、断面コ字状への曲げ成形に限定されず、せん断加工された金属板に曲げ変形を含むプレス成形を有するものであれば、特にプレス部品の形状に制限はない。
図2に、本実施形態での金属板1のせん断加工面10での変形限界を評価する手順の例を示す。本実施形態での変形限界の評価は、図2に示すように、例えば曲げ試験3A、曲げ半径と亀裂長さの関係を取得3B、限界曲げ半径の決定3C、変形限界ひずみを取得3D、せん断加工面での割れ判定3Eの順番に実施される。
本実施形態の評価方法では、せん断加工を施した金属板1からなる試験片を複数用意する。
ここで、試験片の材質は、評価対象の金属板1と同じ材質とする。
また、試験片における曲げ変形が行われる位置における、平面視でみた、せん断加工面10の端面形状(輪郭形状)での曲率半径は、評価対象の金属板1にせん断加工する際の輪郭形状での曲率半径R0以下となっていることが好ましい。また、金属板1の板厚も、評価対象の金属板1の板厚と等しい厚さか又は近似した厚さであることが好ましい。
ここで、曲げ試験にはU曲げ試験、V曲げ試験など様々な種類がある。自動車の車体構造部材の評価には、図3に示すようなV曲げ試験が好ましい。但し、試験片20のせん断加工面10に曲げ変形を与えることができ、かつ後述の成形シミュレーションで曲げ試験を再現できれば、どのような曲げ試験の方法でも構わない。図3中、符号21がダイを、符号22がパンチ22を示す。
各パンチ22の曲げ半径Rのピッチ(隣り合う曲げ半径Rの差)は、パンチ22の曲げ半径Rが5mm未満でのピッチに比べて、相対的にパンチ22の曲げ半径Rが5mm以上でのピッチを大きく設定するとよい。なお、ピッチは等間隔にする必要はない。
次に、曲げ試験を実施後、各試験片20における、せん断加工面10に発生した亀裂長さを測定する。なお、亀裂は、せん断加工面10に対して垂直方向に伸展しているとは限らない。
亀裂長さLの測定方法は、例えば図4に示すように、亀裂先端k1からせん断加工面10の曲げ外表面までの最小距離で定義するのが良い。他にも図5に示すように、亀裂長さLとして、亀裂先端k1と曲げ外表面における亀裂の口開き部の中点Nとの距離で測定する方法や、亀裂に沿った長さを測定する方法などがある。亀裂長さLの測定方法は、同一の亀裂長さLの測定条件で評価すれば良く、いずれの亀裂長さLの測定方法でも構わない。
上記複数の(パンチ22の曲げ半径R、亀裂長さL)の組からなる評価データによって、曲げ変形による曲げ部の曲げ半径Rとせん断加工面10に発生する亀裂長さLとの関係は表現できる。その関係は、例えば図6に示すような関係となっている。図6から分かるように、所定の曲げ半径Rから急に亀裂が伸展していることが分かる。
上記の複数の(パンチ22の曲げ半径R、亀裂長さL)の組からなる評価データについて、回帰分析などの統計処理を行って、図7のような、パンチ22の曲げ半径Rの変化に対する亀裂長さLの変化からなる変化率L/Rを求める。そして、変化率L/Rが急激に変化する変化位置CHに対応する曲げ半径Rを、評価したせん断加工面10での曲げ変形の成形限界(変形限界)である限界曲げ半径RXとする。ここで、成形限界は成形可能な限界を表す。
次に、限界曲げ半径RXを決定した曲げ試験の試験方法を再現した成形シミュレーションを実施する。この成形シミュレーションで、曲げ半径Rに対するせん断加工面10での亀裂発生部の表面ひずみを推定する。表面ひずみとしては、例えば最大主ひずみを採用する。
成形シミュレーションの手法としては、プレス成形時のせん断加工面10の曲げ割れを判断する上で、プレス成形シミュレーションとして広く用いられているFEM解析が良い。解析結果より、せん断加工面10の亀裂発生部での最大主ひずみを取得し、せん断加工面10の割れ発生部の最大主ひずみと成形条件であるパンチ22の曲げ半径Rの関係を取得する。FEM解析では有限要素により最大主ひずみを取得する。
また、割れ限界の成形条件の成形シミュレーションを実施し、割れ限界のひずみを測定して変形限界ひずみとしても良い。なお、ひずみの評価位置としては、簡易的には曲げ外側の最表面の有限要素から取得してもよい。
また、曲げ試験時に金属板1の表面にスクライブドサークル等のマーキングをし、曲げ加工前後のマーキング位置の変化からせん断加工面10近傍の最大主ひずみを実験的に取得することで変形限界ひずみを取得してもよい。すなわち、試験片20の表面に微小なマークをつけてマークの変形からひずみを求めても良い。
3次元のソリッド要素を用いた有限要素法を用いると精度良く割れひずみが算出できる。
プレス成形のFEM解析を実施し、割れを判定したい部分のせん断加工面10の割れ発生懸念部位の最大主ひずみεedgeを算出する。そして、割れを判定したい部分のせん断加工面10の最大主ひずみεedgeと、上記求めた変形限界ひずみεlimitを比較することで、割れ発生の有無を判定する。
ここで、割れを判定したい部分のせん断加工面の位置と、限界曲げ半径RXで割れが発生するせん断加工面の評価位置は一致している必要はない。
具体的には、以下の条件(1)を満たすときに割れ発生と判定する。
εedge ≧ εlimit ・・・(1)
ここで、せん断加工面10の割れ判定は、割れを判定したい部分のせん断加工面10の割れ発生懸念部位の曲げ成形時の曲げ半径Rが限界曲げ半径RX以上か否かで判定しても良い。
使用する金型形状における曲げ半径Rが、上記のようにして評価・予測した限界曲げ半径RXよりも大きな半径となるように、プレス成形で使用するプレス金型の設計、若しくは設計変更を行う。
本実施形態では、対象となる金属板1をせん断加工後にプレス成形される際に、金属板1のせん断加工面10の変形限界を精度良く評価することができる。この結果、端面からの割れ発生の有無を精度良く予測したり、割れの発生を抑えたりすることができる金型形状の設計が可能となる。
例えば、自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品をプレス成形する際に用いる金属板1の選定が適切であるか精度良く予測できるようになる。また、プレス成形を安定して行うことができるとともに、プレス成形品の不良率の低減にも大きく寄与することができる。更に、本実施形態によれば、例えば、プレス金型の形状を設計段階で精度良く予測できるようになり、プレス金型の製造期間の短縮に貢献できる。
表1に示す3種類の供試材A、B及びCからなる金属板1を対象として、実施例を説明する。表1に各供試材の材料特性を示す。
V曲げ試験は、試験片20の中央線(打ち抜き穴の中央を通過する位置)と、V曲げ用のパンチ22の稜線が一致するように試験片20を設置し、パンチ22の移動速度を3mm/s、決め押し荷重を100kNとして曲げ試験を実施した。このとき、曲げ半径Rが異なるV曲げ用のパンチ22でそれぞれ実施した。
そして、パンチ22で曲げられた各試験片20におけるせん断加工面10に発生している亀裂のうちの、最大長さの亀裂長さLを、せん断加工面10での亀裂長さLとして測定した。
図10に、V曲げ試験によるせん断加工面10の亀裂長さLとパンチ22の曲げ半径Rの関係を示す。
図10から分かるように、亀裂長さLは、所定の曲げ半径Rを境に急激に変化し、その変化位置は、各供試材によって異なることが分かる。
本実施例では、亀裂長さLが急激に変化する試験結果を割れと判定した。この割れ判定より割れ限界の曲げ半径Rを決定した。例えば、供試材Aでは、5mmが割れ限界の曲げ半径Rと決定された。
次いで、上記のV曲げ試験を再現したFEM解析により、最大主ひずみからなる表面ひずみと割れ限界の曲げ半径Rとの関係を取得した。その結果を図11に示す。
この図11に示すような結果から、V曲げ試験の割れ判定条件における変形限界ひずεlimitは表2のようになった。この結果から、他の成形条件をFEM解析で再現し、せん断加工面10のひずみを求めれば、せん断加工面10の割れ発生の有無を予測することができる。
なお、供試材Cの限界曲げ半径RXは6.0mmであった。
図12にプレス成形品におけるせん断加工面10の曲げ割れ評価部を示す。
図12中の評価部を含む部品稜線の曲げ半径Rを4mm、6mm、8mmと変化させてFEM解析及び実部品試作による検証を行った。表3に、割れ予測及び実部品試作による割れ判定結果を示す。
ここで、本発明は、上記に説明した内容に限られるものではなく、例えば、上記実施例では、引張強さが980MPa級以上の鋼板(1180MPa級の鋼板)に適用した例を示している。本発明は、このような高強度鋼板のプレス成形に適用することが好ましいが、引張強さが980MPa級未満の鋼板や、鋼板以外の金属板1に適用することもできる。
2 プレス部品
2A 曲げ部
3A 曲げ試験
3B 曲げ半径と亀裂長さの関係取得
3C 限界曲げ半径の決定
3D 変形限界ひずみの取得
3E せん断加工面での割れ判定
10 せん断加工面
20 試験片
22 パンチ
CH 変化位置
L 亀裂長さ
L/R 変化率
R パンチの曲げ半径
RX 限界曲げ半径
Claims (8)
- せん断加工された金属板に曲げ変形を含むプレス成形を行う際における、上記金属板のせん断加工面での変形限界を評価する変形限界の評価方法であって、
金属板のせん断加工面を含む部分に曲げ変形を与えることによる、曲げ変形による曲げ部の曲げ半径とせん断加工面に発生する亀裂長さとの関係を求め、その求めた曲げ半径と亀裂長さとの関係から、せん断加工面での金属板の曲げ変形の限界を評価することを特徴とする変形限界の評価方法。 - 上記曲げ半径の変化に対する上記亀裂長さの変化である変化率が予め設定した設定変化率以上に変化する変化位置に対応する曲げ半径を、評価したせん断加工面での曲げ変形の成形限界と判定することを特徴とする請求項1に記載した変形限界の評価方法。
- 上記設定変化率が0.03であることを特徴とする請求項2に記載した変形限界の評価方法。
- 上記評価の位置を、曲げ変形時に亀裂が発生すると推定されるせん断加工面での位置とすることを特徴とした請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した変形限界の評価方法。
- せん断加工された金属板に曲げ変形を含むプレス成形を行う際における、上記金属板のせん断加工面での変形限界を評価する変形限界の評価方法であって、
金属板のせん断加工面を含む部分に曲げ変形を与えることによる、曲げ変形による曲げ部の曲げ半径とせん断加工面に発生する亀裂長さとの関係を求め、求めた上記関係から、せん断加工面で割れが発生する曲げ割れの変形限界ひずみを求め、求めた変形限界ひずみでせん断加工面での金属板の曲げ変形の限界を評価することを特徴とする変形限界の評価方法。 - 曲げ半径と亀裂長さとの関係から、せん断加工面で割れが発生する成形限界の曲げ半径を求め、上記成形限界の曲げ半径を求めた際の曲げ成形条件で成形シミュレーションを行って、せん断加工面での表面ひずみを求めることで、曲げ割れの変形限界ひずみを決定することを特徴とする請求項5に記載した変形限界の評価方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の変形限界の評価方法を用いた、金属板のせん断加工面での曲げ変形による割れの予測方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の評価方法又は請求項7に記載の予測方法のいずれか1つの方法を用いて、金属板端面での割れ発生を抑制したプレス金型を設計することを特徴とするプレス金型の設計方法。
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