JP7031640B2 - 金属板の成形可否評価方法 - Google Patents
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ここで、プレス部品のせん断縁における変形限界への影響度が大きいせん断縁近傍の変形状態を踏まえた、従来の成形可否の判定方法としては、例えば特許文献1~3に記載された方法がある。
なお、せん断縁でない部位における、FEMなどの成形解析による成形可否予測については、特許文献4に記載の方法がある。しかし、この方法は、せん断縁近傍の変形限界に対しての影響度が大きいひずみ勾配は考慮されておらず、上記のようなせん断縁での評価には適さない。
本発明は、上記のような点に着目したもので、単純な伸びフランジ変形での成形可否の評価ばかりでなく、引っ張り曲げ変形を伴うようなフランジ変形が生じるせん断縁についても精度良く、成形可否の評価を可能とすることを目的としている。
本発明の態様によれば、例えば、従来では精度良く予測できなった引張曲げ変形を伴う伸びフランジ部についても、成形可否の評価を精度よく予測できるようになる。
本実施形態の、せん断縁を有する金属板の成形可否評価方法(以下、単に成形可否評価方法とも記載する。)は、図1に示すように、第1の工程10と、第2の工程20と、評価工程30と、を備える。
「第1の工程10」
第1の工程10は、穴広げ試験実験部10Aと、穴広げひずみ解析部10Bと、成形可能領域決定部10Cとを備える。
穴広げ試験実験部10Aは、穴広げ試験の加工条件を変えて、評価する金属板と同じ材料からなる金属板に穴広げ試験の実験をそれぞれ実施して、各加工条件でのせん断縁での変形限界のひずみ量からなる変形限界量をそれぞれ求める。
上記の加工条件の変数としては、例えば、金属板に形成する初期穴径や、穴広げ用のパンチ形状などがある。そして、これらの条件を変更して、上記穴広げ試験の実験を2以上実施する。
穴広げひずみ解析部10Bは、穴広げ試験実験部10Aで使用した金属板と同じ材料条件かつ上記の穴広げ試験実験部10Aで採用した加工条件と同じ条件にて、変形限界の際の穴広げ率で、穴広げ試験の成形解析を実施してせん断縁での板表面に沿ったひずみ勾配とを求める。
ここで、伸びフランジ変形による変形限界にはひずみ勾配が影響しているため、幅広いひずみ勾配における変形限界を取得することが好ましい。このためには、金属板への初期穴径と穴広げ用のパンチの寸法を種々変更して、上記情報を取得することが好ましい。通常、種々の穴広げ試験では、同一形状のパンチを使用した穴広げ試験の成形では、金属板の初期穴径が小さいほど、種々の穴広げ試験の同一の穴広げ率における成形時の穴端縁から穴の半径方向へのひずみ勾配が大きくなる。また、パンチ形状もひずみ勾配に影響しており、同一の金属板の初期穴径に対し、相対的に、パンチ形状が円錐形状だとひずみ勾配が大きく、パンチ形状が円筒形状だとひずみ勾配が小さくなる傾向にある。
穴広げ試験の成形解析は、上記を考慮して決定した成形条件を再現した解析を実施する。
成形解析の手法としては、広く採用されている有限要素法を用いるのが好ましい。ただし、成形解析の手法は、成形条件を解析上で再現でき、かつ成形中の金属板のひずみを取得できればどのような成形解析方法を採用しても構わない。以下では有限要素解析を用いた場合を例に説明する。
穴広げ率λは、抜き穴径をd0、拡径後の穴径をdとした場合、下記式で表すことが出来る。
λ=((d-d0)/d0)×100
ここで、穴広げ成形解析における成形中の穴広げ率から真ひずみ換算される穴端縁のひずみと、その穴広げ成形中の穴端縁から半径方向に沿った方向のひずみ勾配との関係は、金属板の初期穴径と穴広げ試験を実施するパンチ形状によって決まり、材料強度や板厚、r値といった材料の機械的特性に影響されない。
成形可能領域決定部10Cは、穴広げ試験実験部10Aが求めた変形限界量と、穴広げひずみ解析部10Bが、穴広げ試験実験部10Aにおける、加工条件及び変形限界時の穴広げ率と同じ条件にて求めたひずみ勾配とから、変形限界量と、それに対応するひずみ勾配の組、つまり変形限界量とひずみ勾配をパラメータとした、(変形限界量、ひずみ勾配)のデータの組を2以上取得する。
この成形限界線Lよりも下方の領域が、成形可能領域SAとなる。
「第2の工程20」
第2の工程20は、評価する設計仕様のプレス部品形状を作製するためのプレス成形を模擬した成形解析を実施して、上記プレス成形によるせん断縁での材料縁に沿ったひずみ量と金属板表面に平行な面に沿ったひずみ勾配を求め。
第2の工程20は、成形解析部20A、評価データ取得部20Bを備える。
成形解析部20Aは、対象とするプレス部品を得るための評価すべきプレス成形の成形仕様の情報を取得する。そして、成形解析部20Aでは、例えば、評価すべきプレス成形を模擬した成形解析を実施して、ひずみの分布を取得する。
評価データ取得部20Bは、成形解析部20Aの成形解析に基づき、評価対象の金属板における評価するせん断縁でのひずみと、端縁より金属板内側の方向のひずみ勾配とを求める。
せん断縁でのひずみは、材料縁に沿った方向のひずみである。ひずみ勾配は、材料縁と平行な面に沿ったひずみの勾配である。ひずみ勾配の方向は、端縁から離れる方向、例えば端縁に直交する方向のうち金属板の表面に平行な面に沿った方向に設定する。評価するせん断縁位置若しくはその近傍に板厚方向に曲げ変形が生じ、端縁から離れるような稜線が形成される場合には、ひずみ勾配の方向として、その稜線若しくはその稜線に平行な方向に設定しても良い。端縁に直交とは、端面の延在方向に対し直交する方向を指す。
評価データ取得部20Bでの処理例を、図3の処理フローを参照して説明する。
すなわち評価データ取得部20Bは、せん断縁のうちの評価位置情報を取得すると、ステップS10にて、評価するせん断縁での一方の面側(例えば表面側)のひずみ量と、他方の面側(例えば裏面側の)ひずみ量を求める。
次に、ステップS30では、求めたひずみ量の差Δεの絶対値が0.1以上か否かを判定する。ひずみ量の差Δεの絶対値が0.1以上の場合には、ステップS40に移行する。ひずみ量の差Δεの絶対値が0.1未満の場合には、ステップS50に移行する。
ステップS40では、ステップS10にて求めた板両面のひずみ量のうち、ひずみ量が大きい側の面を特定し、その特定した面に対する、ステップS10で求めた材料縁に沿ったひずみ量と、その特定した面に沿った表面ひずみ勾配を、ひずみ勾配として求める。そして、ステップS60に移行する。
ここで、ひずみ量の差Δεの絶対値が0.1以上の場合、そのせん断縁位置では、例えば引っ張り曲げ変形を伴っており、曲げ変形による曲げ凸側の板表面が、相対的にひずみ量が大きくなっている。
そして、ステップS60に移行する。
ステップS60では、求めたひずみ量とひずみ勾配からなるデータを、評価位置情報と共に評価工程30に供給する。
次に、せん断縁における評価位置がまだある場合には、新たな評価位置情報を取得して、ステップS10に戻って、上記処理を繰り返し、新たな評価位置が無ければ、処理を終了する。
ここで、ステップS20が評価基準取得工程20Baを構成する。
評価工程30は、第2の工程20から取得したひずみ量とひずみ勾配の関係が、第1の工程10が求めた成形可能領域SA内に位置するか否かで、評価するせん断縁位置での成形可否を判定する。
具体的には、第2の工程20から取得したひずみ量とひずみ勾配のデータの組が、成形可能領域SA内に位置する場合、成形可能と判定する。このとき、第2の工程20から取得したひずみ量とひずみ勾配のデータと成形限界線Lとの距離の大きさから、成形否の危険性又は成形余裕度を評価するようにしてもよい。
そして、評価工程30にて、成形否と判定されたせん断縁がある場合には、評価するプレス成形の方法やプレス部品形状を変更して、再度、常時成形可否の評価を実施すればよい。
プレス成形を評価する金属板は、プレス成形の前工程として、金属板にせん断工程が施されて、せん断縁を有する金属板である。この金属板は、平板状の金属板であっても良い。
また金属板は、予成形によって予変形(一次変形)が加えられた後に、せん断変形を加えられた金属板であってもよい。
評価の金属板が予成形で予変形を加えた金属板の場合、第1の工程10での金属板についても予成形を加えた後の金属板に対して、穴広げ試験を行って成形限界線Lを求めることが好ましい。
このときの穴広げ試験は、例えば、対象とする金属板を円錐台形状に一次成形を加えた後に、円錐台の上面を中心に試料とする部分を切り出し、その切り出した試料を平坦化する。その後、試料の中心に抜き穴(せん断に相当)を形成し、パンチによって抜き穴の穴広げを行う試験とする。
これは、予成形を加えることで、金属板の材料特性が変更されていることを考慮したものである。
本実施形態の金属板の成形可否評価方法は、せん断縁を有する金属板に対するプレス成形によるせん断縁の成形可否を精度良く評価する。
せん断縁の評価位置は、金属板のせん断縁に沿って所定間隔毎に設定しても良いが、図4の符号Aに例示するような、プレス成形で伸びフランジ変形が発生するせん断縁に限定しても良い。
この際に、本実施形態では、図4の符号Aのような、プレス形状に単純な伸びフランジ変形となっているせん断縁位置では、図5のように、板の表裏でのひずみ量が同じか近似している。それに基づき、図4の符号Aのような位置では、板厚中央部位置での材料縁に沿ったひずみ量と、端縁から離れる方向のひずみ勾配で評価する。
これに鑑み、本実施形態では、プレス成形で、せん断縁に引っ張り曲げ変形を伴う伸びフランジ変形が生じるせん断縁については、曲げ凸側の板表面で材料縁に沿ったひずみ量と端縁から離れる方向のひずみ勾配とで評価する。これによって、本実施形態では、伸びフランジ変形の変形形態に関わらず、伸びフランジ割れを精度良く評価することが可能となる。
また、本実施形態の金属板の成形可否評価方法は、後述のように、金属板の引張強度が高いほど、より効果を奏する。この観点からは、金属板が、例えば引張強度980MPa以上のハイテン材の場合により効果を奏する。
まず、板厚の1.2mmで引張強度が590MPa級及び980MPa級の鋼種からなる各金属板に対し、穴広げ試験の実験及び成形解析を行って、図12のように成形限界線L1、L2を求めた。L1は590MPa級の鋼種の場合であり、L2は980MPa級の鋼種の場合であり、板の引張強度が高くなるほど、成形条件が厳しくなることが分かる。
その各データP1~P4を、図12にプロットして、各鋼種での成形限界線Lとの関係を図12に示した。
なお、ひずみ勾配は、端面に垂直な方向で5mmまでのひずみ勾配とした。また、ひずみ量として最大主ひずみを採用した。
実際に、引張強度が590MPa級及び980MPa級の各鋼板を使用して、上記プレス部品形状にプレス成形したところ、590MPa級に鋼板の場合には、伸びフランジ割れが生じずに成形できたが、980MPa級に鋼板の場合には、伸びフランジ割れが発生した。
なお、引張強度が590MPa級の場合には、板厚中心での評価でも上面(曲げ外の面)でも、成形可能と判定されるが、上面(曲げ外の面)の方が、成形限界線Lに近く、成形の余裕度が小さいことが分かり、より精度良く評価できることが分かる。
このように、本発明に基づく方法は、板厚方向中心位置でのひずみ量とひずみ勾配で一律評価する場合に比べて、より精度良く成形可否を評価できることが分かる。
10A 穴広げ試験実験部
10B 穴広げひずみ解析部
10C 成形可能領域決定部
20 第2の工程
20A 成形解析部
20B 評価データ取得部
20Ba 評価基準取得工程
30 評価工程
L、L1、L2 成形限界線
P1~P4 評価データ
SA 成形可能領域
Δε ひずみ量の差
Claims (5)
- せん断縁を有する金属板に対するプレス成形によるせん断縁の成形可否を評価する、金属板の成形可否評価方法であって、
金属板に穴広げ試験の実験を行ってせん断縁での変形限界のひずみ量からなる変形限界量を求めると共に、上記穴広げ試験の成形解析を実施してせん断縁での金属板表面に沿った方向のひずみ勾配を求め、上記変形限界量と上記ひずみ勾配とを関連づけて成形可能領域を決定する第1の工程と、
上記プレス成形を模擬した成形解析を実施して、上記プレス成形によるせん断縁における、材料縁に沿ったひずみ量と、金属板表面に平行な面に沿った方向のひずみ勾配とを求める第2の工程と、
上記第2の工程で求めたひずみ量及びひずみ勾配と上記成形可能領域とから成形可否を評価する評価工程と、
上記プレス成形を模擬した成形解析を実施して、成形可否を評価するせん断縁部分における、板表裏両面のひずみ量の差を求める評価基準取得工程と、を備え、
上記評価基準取得工程が求めたひずみ量の差が0.1以上の場合には、上記第2の工程で求めるひずみ量及びひずみ勾配として、板表裏面のうちの相対的に上記ひずみ量が大きい側の表面でのひずみ量及びひずみ勾配を用い、上記ひずみ量の差が0.1未満の場合には、板厚方向中央部位置でのひずみ量及びひずみ勾配を用いる、ことを特徴とする金属板の成形可否評価方法。 - 上記ひずみ量を、最大主ひずみとすることを特徴とする請求項1に記載した金属板の成形可否評価方法。
- 上記プレス成形が、せん断縁の少なくとも一部に引張り曲げ変形が生じるプレス成形であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属板の成形可否評価方法。
- 評価対象の金属板は、予成形で予変形を加えた後にせん断処理が施された金属板であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の金属板の成形可否評価方法。
- せん断縁を有する金属板に対する、上記せん断縁の少なくとも一部に引張り曲げ変形が生じるプレス成形によるせん断縁の成形可否を評価する、金属板の成形可否評価方法であって、
金属板に穴広げ試験の実験を行ってせん断縁での変形限界のひずみ量からなる変形限界量を求めると共に、上記穴広げ試験の成形解析を実施してせん断縁での金属板表面に平行な面に沿った方向のひずみ勾配を求め、上記変形限界量と上記ひずみ勾配とを関連づけて成形可能領域を決定する第1の工程と、
上記プレス成形を模擬した成形解析を実施して、上記プレス成形によるせん断縁における、材料縁に沿ったひずみ量と、金属板表面に平行な面に沿った方向のひずみ勾配とを求める第2の工程と、
上記第2の工程で求めたひずみ量及びひずみ勾配と上記成形可能領域とから成形可否を評価する評価工程と、を備え、
上記プレス成形で引張り曲げ変形が生じるせん断縁の評価であって、上記引張り曲げ変形が予め設定した値以上の場合には、上記第2の工程で求めるひずみ量及びひずみ勾配として、引張り曲げ変形による曲げ凸側の板表面でのひずみ量及びひずみ勾配を用いることを特徴とする金属板の成形可否評価方法。
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JP4935713B2 (ja) | 2008-02-27 | 2012-05-23 | Jfeスチール株式会社 | プレス品のせん断縁における成形可否判別方法 |
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