図1は、本発明の実施例としての制御装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、昇降圧コンバータ55と、システムメインリレー56と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24によって運転制御されている。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23からのクランク角θcrなどが入力ポートから入力されている。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ23からのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
モータMG1は、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを有する同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様に、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを有する同期発電電動機として構成されており、回転子がプラネタリギヤ30のリングギヤおよび駆動軸36に接続されている。
図2に示すように、インバータ41は、高電圧側電力ライン54aに接続されている。このインバータ41は、6つのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16と、を有する。トランジスタT11〜T16は、それぞれ高電圧側電力ライン54aの正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。また、トランジスタT11〜T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータMG1の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ41に電圧が作用しているときに、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、対となるトランジスタT11〜T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータMG1が回転駆動される。インバータ42は、インバータ41と同様に、高電圧側電力ライン54aに接続されており、6つのトランジスタT21〜T26と6つのダイオードD21〜D26とを有する。そして、インバータ42に電圧が作用しているときに、モータECU40によって、対となるトランジスタT21〜T26のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータMG2が回転駆動される。以下、インバータ41,42のトランジスタT11〜T13,T21〜T23を「上アーム」といい、トランジスタT14〜T16,T24〜T26を「下アーム」ということがある。
昇降圧コンバータ55は、インバータ41,42が接続された高電圧側電力ライン54aと、バッテリ50が接続された低電圧側電力ライン54bと、に接続されている。この昇降圧コンバータ55は、2つのトランジスタT31,T32と、トランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32と、リアクトルLと、を有する。トランジスタT31は、高電圧側電力ライン54aの正極側ラインに接続されている。トランジスタT32は、トランジスタT31と、高電圧側電力ライン54aおよび低電圧側電力ライン54bの負極側ラインと、に接続されている。リアクトルLは、トランジスタT31,T32同士の接続点と、低電圧側電力ライン54bの正極側ラインと、に接続されている。昇降圧コンバータ55は、モータECU40によってトランジスタT31,T32のオン時間の割合が調節されることにより、低電圧側電力ライン54bの電力を昇圧して高電圧側電力ライン54aに供給したり、高電圧側電力ライン54aの電力を降圧して低電圧側電力ライン54bに供給したりする。昇降圧コンバータ55のトランジスタT31を「上アーム」といい、トランジスタT32を「下アーム」ということがある。高電圧側電力ライン54aの正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ57が取り付けられており、低電圧側電力ライン54bの正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ58が取り付けられている。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
モータECU40には、モータMG1,MG2や昇降圧コンバータ55を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2を挙げることができる。また、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(高電圧側電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(低電圧側電力ライン54bの電圧)VLも挙げることができる。
モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26へのスイッチング制御信号や昇降圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、低電圧側電力ライン54bに接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサからの電池電圧Vbやバッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサからの電池電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサからの電池温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサからの電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
システムメインリレー56は、低電圧側電力ライン54bにおけるコンデンサ58よりもバッテリ50側に設けられている。このシステムメインリレー56は、HVECU70によってオンオフ制御されることにより、バッテリ50と昇降圧コンバータ55側との接続および接続の解除を行なう。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。さらに、車体前側の中央部や両側部などに取り付けられた加速度センサ89からの車体加速度αも挙げることができる。
HVECU70は、上述したように、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド走行(HV走行)モードや電動走行(EV走行)モードで走行する。ここで、HV走行モードは、エンジン22を運転しながら、エンジン22の運転を伴って走行するモードであり、EV走行モードは、エンジン22の運転を伴わずに走行するモードである。
実施例のハイブリッド自動車20では、車両の衝突を検知したときには、システムメインリレー56をオフとし、エンジン22が運転されているときには、エンジン22の運転を停止する。このとき、電圧センサ58aにより検出されたコンデンサ58の電圧VLがバッテリ50の定格電圧より高い所定値VLref以上となったときには、昇降圧コンバータ55をシャットダウンして(トランジスタT31,T32のゲートをオフとして)、昇降圧コンバータ55のトランジスタT32の保護を図っている。なお、車両の衝突は、実施例では、加速度センサ89により検出された車体加速度αが衝突判定用の閾値αrefを超えたときに検知する。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、車両の衝突を検知したときの動作について説明する。図3は、実施例のHVECU70により実行される衝突検知時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、車両の衝突を検知されたときに実行される。
本ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、システムメインリレー56をオフとする処理を実行し(ステップS100)、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を入力する(ステップS110)。モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力している。
続いて、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0であるか否かを判定する(ステップS120)。車両の衝突時には、通常、車両の停止(駆動輪39a,39bの回転停止)に伴って、モータMG2の回転も停止する。しかしながら、衝突の影響により、駆動軸36とモータMG2の回転軸との接続が解除されると、車両が停止したにも拘わらず、モータMG2の回転が継続する場合がある。また、車両の衝突時には、モータMG1の回転が継続していることが多い。車両の衝突が検知されてシステムメインリレー56をオフした後に、モータMG1,MG2の回転が継続していると、モータMG1,MG2の回転による発電電力がコンデンサ57,58に供給されて、コンデンサ57,58の電圧VH,VLが大きく上昇する場合がある。したがって、ステップS120の処理は、コンデンサ57,58の電圧VH,VLが大きく上昇する可能性があるか否かを判定する処理となっている。
ステップS120の処理でモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0であると判定されたときには、コンデンサ57,58の電圧VH,VLが大きく上昇することはないと判断して、インバータ41,42のd軸電流制御の実行要求と昇降圧コンバータ55の放電制御の実行要求とをモータECU40に送信して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。d軸電流制御の実行要求と放電制御の実行要求とを受信したモータECU40は、インバータ41,42のd軸電流制御と昇降圧コンバータ55の放電制御とを実行する。d軸電流制御は、モータMG1,MG2にd軸電流が流れるようにインバータ41,42を制御する制御である。d軸電流制御の実行により、モータMG1,MG2からトルクを出力せずに、コンデンサ57,58の電荷がモータMG1,MG2の損失として消費される。昇降圧コンバータ55の放電制御は、デューティDを所定値D1(実施例では、50%)として昇降圧コンバータ55のトランジスタT31,32をスイッチング制御する制御である。ここで、デューティDは、トランジスタT31,T32のうちトランジスタT31(上アーム)のオン時間とトランジスタT32(下アーム)のオン時間との和に対するトランジスタT32(下アーム)のオン時間の割合である。昇降圧コンバータ55の放電制御の実行により、トランジスタT31をオフとすると共にトランジスタT32をオンとしたときには、コンデンサ58の電荷がリアクトルLやトランジスタT32での損失として消費され、トランジスタT31をオンとすると共にトランジスタT32をオフとしたときには、コンデンサ57の電荷がトランジスタT31やリアクトルLでの損失として消費される。このように、インバータ41,42のd軸電流制御を実行するとともに昇降圧コンバータ55の放電制御を実行することにより、コンデンサ57,58を放電させて、高電圧側電力ライン54aの電圧VHや低電圧側電力ライン54bの電圧VLを低下させる。
ステップS120の処理でモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2の少なくとも一方が値0でないと判定されたときには、コンデンサ57,58の電圧VH,VLが大きく上昇する可能があると判断して、インバータ41,42の三相オン制御の実行要求と昇降圧コンバータ55の放電制御の実行要求とをモータECU40に送信する(ステップS130)。インバータ41,42の三相オン制御の実行要求と昇降圧コンバータ55の放電制御の実行要求とを受信したモータECU40は、インバータ41,42の三相オン制御と昇降圧コンバータ55の放電制御とを実行する。インバータ41の三相オン制御は、インバータ41のトランジスタT11〜T16のうちトランジスタT11〜T13(上アーム)の全てをオンとすると共にトランジスタT14〜T16(下アーム)の全てをオフとするか、あるいは、トランジスタT11〜T13(上アーム)の全てをオフとすると共にトランジスタT14〜T16(下アーム)の全てをオンとする制御である。インバータ42の三相オン制御は、インバータ41の三相オン制御と同様に行なうことができる。インバータ41,42の三相オン制御の実行により、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2の絶対値を小さくする方向のトルク(引き摺りトルク)を発生させる。昇降圧コンバータ55の放電制御は、ステップS200の処理の昇降圧コンバータ55の放電制御と同一の制御である。
続いて、インバータ41,42の三相オン制御を継続可能であるか否かを判定する(ステップS140)。ここでは、モータMG1,MG2の各相に流れる電流をモータECU40を介して入力し、モータMG1,MG2の各相に流れる電流のいずれかが閾値Iref以上であるときに、インバータ41,42の三相オン制御を継続できないと判定する。閾値Irefは、インバータ41,42に比較的大きな電流(過電流)が流れているか否かを判定するための閾値である。モータMG1,MG2のうち少なくとも一方が回転している状態でインバータ41,42の三相オン制御を実行すると、インバータ41,42に過電流が流れる場合がある。こうした過電流は、インバータ41,42の保護の観点から望ましくない。そのため、インバータ41,42に過電流が流れているときにインバータ41,42の三相オン制御を継続しないほうがよいから、ステップS140の処理で、三相オン制御を継続可能か否かを判定している。
ステップS140の処理でインバータ41,42の三相オン制御を継続可能と判定されたときには、ステップS110の処理に戻り、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2が値0となるまで、インバータ41,42の三相オン制御および昇降圧コンバータ55の放電制御を継続する(ステップS110〜S140)。インバータ41,42の三相オン制御を継続することにより、引き摺りトルクによりモータMG1,MG2のうち回転しているモータの回転数が低下する。昇降圧コンバータ55の放電制御を継続することにより、コンデンサ57,58の電荷を放電して電圧VH,VLが低下する。
そして、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2が値0となったときには、インバータ41,42のd軸電流制御を実行するとともに昇降圧コンバータ55の放電制御を実行して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、コンデンサ57,58の電荷を放電して電圧VH,VLをさらに低下させることができる。
ステップS140の処理でインバータ41,42の三相オン制御を継続できないと判定されたときには、インバータ41,42に比較的大きな電流(過電流)が流れていると判断して、インバータ41,42のシャットダウン要求をモータECU40に送信する(ステップS150)。インバータ41,42のシャットダウン要求を受信したモータECUは、トランジスタT11〜T16,T21〜T26のゲートをオフとしてインバータ41,42をシャットダウンする。こうした処理により、インバータ41,42の保護を図っている。このとき、モータMG1,MG2のうちに回転しているモータの回転数は、その回転抵抗によってあるタイミングで低下を開始すると考えられる。
続いて、ステップS130の処理と同一の処理で昇降圧コンバータ55を放電制御したときの高電圧側電力ライン54aの電圧VHdisを設定する(ステップS160)。実施例では、昇降圧コンバータ55の放電制御がデューティDを所定値D1(実施例では、50%)としてトランジスタT31,32をスイッチング制御する制御であることから、電圧VHdisをデューティD(所定値D1)に応じた電圧(例えば、所定値D1が50%であるときには、電圧VLの2倍の電圧など)に設定する。
続いて、設定した電圧VHdisが閾値Vref2以上であるか否かを判定する(ステップS170)。閾値Vref2は、モータMG1,MG2のうち回転しているモータに発生する誘起電圧Viにマージンαを加えた電圧である。電圧Viは、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2と誘起電圧との関係である所定関係を予め実験や解析などで求めて図示しないROMに記憶しておき、回転しているモータの回転数と所定関係とに基づいて設定している。なお、モータMG1,MG2の双方が回転しているときには、モータMG1,MG2の誘起電圧のうち高いほうの電圧を電圧Viとして設定する。マージンαは、後述するように電圧VHが電圧Viを下回らないように制御する際のマージンであり、例えば、10V,15V,20Vなどに設定される。高電圧側電力ライン54aの電圧VH(電圧VHdis)が電圧Vi未満のときに、昇降圧コンバータ55を放電制御すると、回転しているモータからの発電電力がコンデンサ57,58に供給されて、電圧VH,VLが上昇してしまう。電圧VLが上昇し所定値VLref以上になると、上述したように、昇降圧コンバータ55がシャットダウンされてしまう。ここでは、インバータ41,42がシャットダウンされているから、昇降圧コンバータ55がシャットダウンされると、コンデンサ57,58を放電できなくなる。閾値Vref2は、誘起電圧Viにマージンαを加えた電圧であるから、ステップS170の処理は、昇降圧コンバータ55の放電制御を継続したときに昇降圧コンバータ55がシャットダウンされるか可能性があるか否かを判断する処理となっている。
ステップS170の処理で電圧VHdisが閾値Vref2以上であると判定されたきには、放電制御を継続しても昇降圧コンバータ55がシャットダウンされる可能性はないと判断して、ステップS130の処理と同一の処理で、昇降圧コンバータ55を放電制御する(ステップS190)。これにより、コンデンサ57,58の電圧VH,VLを低下させることができる。
そして、ステップS110の処理と同一の処理で、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を入力して(ステップS200)、回転数Nm1,Nm2がともに値0であるか否かを判定し(ステップS210)、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0となるまで、ステップS160,S170,S190〜S210の処理を繰り返す。そして、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0となったときには、そして、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0となっときには、ステップS220の処理に進み、インバータ41,42のd軸電流制御を実行するとともに昇降圧コンバータ55の放電制御を実行して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。
ステップS170の処理で電圧VHdisが閾値Vref2未満であると判定されたきには、昇降圧コンバータ55の放電制御を継続すると電圧VLが上昇して昇降圧コンバータ55がシャットダウンされる可能性があると判断して、昇降圧コンバータ55の電圧制御要求をモータECU40に送信する(ステップS180)。電圧制御要求を受信したモータECUは、閾値Vref2より若干高い電圧を目標電圧VH*に設定して、電圧VHが目標電圧VH*となるように昇降圧コンバータ55のトランジスタT31,32をスイッチング制御する。こうした制御により、電圧VHが閾値Vref2より低くなることが抑制されるから、モータMG1,MG2のうち回転しているモータの発電電力によりコンデンサ57,58が充電されて電圧VH,VLが上昇することを抑制できる。これにより、電圧VLの上昇により昇降圧コンバータ55がシャットダウンされることを抑制することができる。
ステップS180の処理を実行すると、ステップS160の処理に戻り、電圧VHdisが閾値Vref2以上となるまで、ステップS160〜S180の処理を実行する。そして、電圧VHdisが閾値Vref2以上になったときには、ステップS190の処理へ進み、昇降圧コンバータ55を放電制御して(ステップS190)、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0となるまで、ステップS190〜S210の処理を繰り返す。そして、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2がともに値0となったときには、ステップS220の処理へ進み、インバータ41,42のd軸電流制御を実行するとともに昇降圧コンバータ55の放電制御を実行して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。
図4は、衝突を検知したときのモータMG2の回転数Nm2,電圧VH,Vi,VLの時間変化の一例を示す説明図である。図中、電圧の時間変化において、実線は電圧VH,破線は電圧Vi,一点鎖線は電圧VLの時間変化を示している。なお、ここでは、モータMG1の回転による誘起電圧よりモータMG2の回転による誘起電圧のほうが大きいとして、モータMG1の回転数の記載とその説明を省略している。
衝突を検知すると(時刻t11)、システムメインリレーをオフとする(ステップS100)。衝突によりモータMG2の回転軸と駆動軸36との接続が解除されるなどによりモータMG2の回転数Nm2が急上昇すると、インバータ41,42の三相オン制御と昇降圧コンバータ55の放電制御を実行するが(ステップS110〜S140)、三相オン制御を継続できないときには、インバータ41,42をシャットダウンして、電圧VHdisが閾値Vref2以下であるか否かを判定する(ステップS150〜S170)。電圧VHdisが閾値Vref2以上であるときには、昇降圧コンバータ55の放電制御を実行する(ステップS190)。インバータ41,42をシャットダウンするから、モータMG2の回転数Nm2および誘起電圧Viは上昇を継続する。このとき、昇降圧コンバータ55の放電制御により、コンデンサ57,58の電荷が放電されるが、コンデンサ57の電荷は一部がコンデンサ58に蓄電される。そのため、電圧VHが時間の経過とともに低下し、電圧VLは時間の経過とともに若干上昇する。
電圧VHdisが閾値Vref2以下となると(時刻t12)、電圧VHが閾値Vref2より若干高い目標電圧VH*となるように昇降圧コンバータ55を電圧制御する(ステップS180)。これにより、電圧VHが電圧Vi未満とならないようにするから、モータMG2の発電電力でコンデンサ57,58が充電されることを抑制でき、電圧VLの上昇を抑制できる。このとき、モータMG2の回転数Nm2は、モータMG2の回転抵抗によりあるタイミングで低下するから、誘起電圧Viも低下する。したがって、電圧VHは、誘起電圧Viに応じて徐々に低下するように昇降圧コンバータ55で調整される。また、昇降圧コンバータ55の損失により、電圧VLも徐々に低下する。
そして、電圧VHdisが閾値Vref2を以上になると(時刻t13)、再び昇降圧コンバータ55の放電制御を実行する(ステップS190)。そして、モータMG1、MG2の回転数Nm1,Nm2が値0になったときには(時刻t14)、インバータ41,42のd軸電流制御を実行するとともに昇降圧コンバータ55の放電制御を実行する(ステップS220)。こうした処理により、電圧VLの上昇を抑制することができる。したがって、昇降圧コンバータ55のシャットダウンを抑制して、コンデンサ57,58の放電を継続することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、システムメインリレー56をオフすると共にインバータ41,42をシャットダウンしているときには、コンデンサ57の電圧VHがモータMG1,MG2の回転に伴う誘起電圧より高くなるように昇降圧コンバータ55を制御する。これにより、コンデンサ58(低電圧側電力ライン54b)の電圧VLの上昇を抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、システムメインリレー56をオフした後に、ステップS110〜S140の処理を実行しているが、これらの処理を実行せずに、ステップS150以降の処理を実行してもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS150の処理でインバータ41,42をシャットダウンした後は、ステップS160,S170の処理を実行し、ステップS170の処理で電圧VHdisが閾値Vref2より大きいと判定されたときには、ステップS190の処理を実行して昇降圧コンバータ55を放電制御している。しかしながら、ステップS160,S170,S190の処理を実行しないものとしてもよい。この場合、ステップS150の処理でインバータ41,42をシャットダウンした後に、ステップS180の処理を実行して昇降圧コンバータ55を電圧制御し、S200,S210の処理を実行してモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を調べ、回転数Nm1,Nm2が値0でないときにはステップS180の処理を繰り返して実行すればい。
実施例では、衝突が検知され、システムメインリレー56がオフされたときの制御について例示しているが、衝突と検知とは異なる要件でシステムメインリレー56がオフされたときの制御に適用してもよい。
実施例では、本発明を、エンジン22,プラネタリギヤ30,モータMG1,MG2を有するハイブリッド自動車20に適用する場合を例示しているが、モータと、モータを駆動するインバータと、バッテリと、バッテリが接続された第1電力ラインとインバータが接続された第2電力ラインとの間で電圧の変更を伴って電力のやりとりを行なう昇降圧コンバータと、第2電力ラインに取り付けられたコンデンサと、第1電力ラインに取り付けられたリレーと、を備える電気自動車に適用してもよい。また、こうしたハイブリッド自動車や電気自動車に適用するものに限定されず、モータと、インバータと、バッテリと、コンデンサと、リレーとを備えるモータ装置であればいかなるものに適用してもよい。さらに、本発明を、こうしたモータ装置に搭載されるインバータや昇降圧コンバータを制御する制御装置の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「モータ」に相当し、インバータ42が「インバータ」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、昇降圧コンバータ55が「昇降圧コンバータ」に相当し、コンデンサ57が「コンデンサ」に相当し、システムメインリレー56が「リレー」に相当し、HVECU70とモータECU40とが「制御手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例 を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。