JP6868643B2 - プラスチックシンチレーションファイバ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、クラッドは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やフッ素を含有する低屈折材料などからなる。
また、特許文献3については、本発明の実施の形態の説明において言及する。
紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有するコアと、前記コアの外周面を被覆すると共に、前記コアよりも低い屈折率を有するクラッドと、を備えた断面円形状のプラスチックシンチレーションファイバであって、
前記コアにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コアの断面の中心から外周方向へ向かって上昇する分布を有するものである。
前記コアにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コアの断面の中心から外周方向へ向かって上昇する分布を有しているため、断面円形状でありながら放射線の横断位置による発光量の低下を抑制することができる。
紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有するコアと、前記コアの外周面を被覆するクラッドと、を備えたプラスチックシンチレーションファイバの製造方法であって、
紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有する樹脂からなる棒状のコア用ロッドを、前記コア用ロッドよりも低い屈折率を有する樹脂からなる円筒状のクラッド用パイプに挿入してプリフォームを作製する工程と、
前記プリフォームを加熱しつつ線引きする工程と、を備え、
前記コア用ロッドにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コア用ロッドの断面の中心から外周方向へ向かって上昇する分布を有するものである。
前記コア用ロッドにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コア用ロッドの断面の中心から外周方向へ向かって上昇する分布を有しているため、得られるプラスチックシンチレーションファイバは、断面円形状でありながら放射線の横断位置による発光量の低下を抑制することができる。
コア11の外周面を被覆するクラッド12は、コア11よりも低い屈折率を有する透明樹脂からなる。クラッド12の外径は例えば0.2〜2.0mmである。クラッド12を構成するクラッド基材については後述する。
図1〜図3は、同時に、コア11にドープされた紫外線吸収発光性を有する蛍光剤(以下、単に「蛍光剤」と称する)の濃度分布を示している。従来のシンチレーションファイバでは、コア内の蛍光剤の濃度が均一であるのに対し、図1〜図3に示すように、本実施の形態に係るシンチレーションファイバ1では、コア11における蛍光剤の濃度が、コア11の断面の中心から外周方向へ向かって上昇する分布を有している。以下に、図1〜図3のそれぞれについて説明する。
図2に示したシンチレーションファイバ1では、中心部における低濃度C1と、外周部における高濃度C2との間に中濃度C3を設け、中心部から外周部へ向かって蛍光剤の濃度を3段階で不連続に上昇させている。
図3に示したシンチレーションファイバ1では、中心部における低濃度C1から外周部における高濃度C2へ向かって蛍光剤の濃度を滑らかに連続して上昇させている。
従って、本実施の形態に係るシンチレーションファイバ1を図10に示したように配列させた検出器では、シンチレーションファイバ1同士の中間部に形成される不感領域を抑制することができる。
なお、発光量は横断距離には比例するが、高濃度域では飽和するため蛍光剤濃度には必ずしも比例しない。そのため、コア内における発光量の均一性を高めるためには、実際の試作によって発光量の蛍光剤濃度依存性を確認することが好ましい。
コア基材としては、シンチレータである必要からベンゼン環等の芳香環を有するポリマーであることが重要である。すなわち、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、1−フェニルエチルメタクリレート、1,2−ジフェニルエチルメタクリレート、ジフェニルエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、1−フェニルシクロヘキシルメタクリレート、ペンタクロロフェニルメタクリレート、ペンタブロモフェニルメタクリレート、1−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンからなるモノマー群のうちのいずれか1種類を重合して得られる重合体が好適である。
クラッド基材としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートおよびブチルアクリレートからなるモノマー群のうちの1種類以上を重合または共重合して得られる重合体が適している。中でも、メチルメタクリレートの重合体またはメチルメタクリレートと他のモノマーとの共重合体が望ましい。メチルメタクリレートは透明性が高く、容易に重合するため取り扱いやすい利点がある。重合に際しては、一般的な重合開始剤及び分子量調整剤を添加してもよい。
アウタークラッド基材としては、前述のクラッド基材より低屈折率であれば市販のものでもよい。具体的には、メチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート,2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、α−フルオロアクリル酸メチルおよび2−(トリフルオロメチル)プロペン酸メチルからなるモノマー群のうちの1種類以上を重合または共重合して得られる重合体、および、前記重合体とポリフッ化ビニリデンの混合物が適している。特には、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートポリマーとポリフッ化ビニリデンの混合物が望ましい。
蛍光剤は複数個の芳香環をもち、かつ共鳴可能な構造を有するものの中から選ばれる。代表的な蛍光剤としては、2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(b−PBD)、2−(4−ビフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、パラターフェニル(PTP)、パラクォーターフェニル(PQP)、2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO)、4,4’−ビス−(2,5−ジメチルスチリル)−ジフェニル(BDB)、2,5−ビス−(5−t−ブチル−ベンゾキサゾイル)チオフェン(BBOT)、1,4−ビス−(2−(5−フェニロキサゾリル))ベンゼン(POPOP)、1,4−ビス−(4−メチル−5−フェニル−2−オキサゾリル)ベンゼン(DMPOPOP)、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン(DPB)、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン(DPH)、1−フェニル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−ピラゾリン(PMP)、3−ヒドロキシフラボン(3HF)などが挙げられる。
シンチレーションファイバの製造方法については特に制限はない。例えば、低屈折率基材からなるクラッド用の円筒状透明重合体(クラッド用パイプ)に高屈折率基材からなるコア用の透明棒状重合体(コア用ロッド)を挿入してプリフォームロッドを作製した後、先端を加熱して細く線引きするロッド線引き法を用いることができる。
コア用ロッドは円筒状の重合容器にモノマーを入れて、熱重合によって製造できる。重合方法は、開始剤を添加せずに熱だけによる自発的重合が好ましいが、最小限量の熱解裂型ラジカル開始剤を添加してもよい。さらに、光解裂型ラジカル開始剤を併用してもよい。また、コア用ロッドは、分子量が低過ぎると、光ファイバとして機械的強度や信頼性が確保できないことがある。逆に、分子量が高過ぎると、溶融粘度が高くなるため、加熱温度を高くする必要があり、熱劣化による着色や熱分解といった問題が発生することがある。このため、必要に応じて、分子量調整剤を添加してもよい。
例えば、図1、図2に示すような蛍光剤濃度分布が不連続なシンチレーションファイバを製造する場合には、蛍光剤濃度が小さく、直径の小さいロッドと、蛍光剤濃度が高く、直径の大きいパイプといった、異なる複数のロッド及びパイプを重合した後、組み合わせてコア用ロッドとすればよい。
クラッド用パイプは、円形ダイを装着した溶融押出機に熱可塑性樹脂ペレットを投入してパイプ状に押出成形する方法により製造することができる。また、回転する円筒容器中で遠心力によってモノマーを側面に押し付けるようにして中空部を形成させながら重合固化させる方法を用いてもよい。さらに、ロッド状の重合体の軸中心部にドリル等で穴を開けて中空部を形成する方法を用いてもよい。
[コア用ロッド]
モノマー連続注入方式によって、コア用ロッドを作製した。具体的には、回転する内径70mmの円筒容器内に、スチレンモノマー中に第一蛍光剤として蛍光剤パラターフェニル(PTP)1.0質量%を一定濃度にし、第二蛍光剤として2,5−ビス−(5−t−ブチル−ベンゾキサゾイル)チオフェン(BBOT)を外周部には0.035質量%、中心部には0.005質量%となるように連続して濃度を変化させるようにモノマーを注入しながら重合した。円筒容器から取り出して外径70mm、内径約10mmのポリスチレン製コア用中空ロッドを得た。このポリスチレン製コア用中空ロッドの屈折率は25℃で1.59であった。
メチルメタクリレートモノマーに重合開始剤(日油社製パーオクタO(登録商標)(PO−O):0.05質量%、日油社製パーヘキサV(登録商標)(PH−V):0.05質量%)と分子量を調整するための連鎖移動剤n−オクチルメルカプタン(n−OM:0.25質量%)を添加した。これを内径75mmの円筒容器に充填し、熱媒中で軸中心に回転させながら70〜120℃で加熱重合させることによって、外径75mm、内径71mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)製クラッド用パイプを得た。このPMMA製クラッド用パイプの屈折率は25℃で1.49であった。
ポリスチレン製コア用中空ロッドとPMMA製クラッド用パイプとを組み合わせてプリフォームを作製した。コア用中空ロッドの中心と、コア用中空ロッドとクラッド用パイプとの間隙部を減圧しながら、このプリフォームを加熱線引きし、外径1mmのシンチレーションファイバを得た。コア径は940μm、クラッド厚は約30μmであった。
実施例1と同様の方法でコア用ロッドとクラッド用パイプとを作製し、このクラッド用パイプをインナークラッド用パイプとした。
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FMA)モノマーに重合開始剤(PO−O:0.05質量%、PH−V:0.05質量%)と分子量を調整するための連鎖移動剤n−オクチルメルカプタン(n−OM:0.025質量%)を添加した。これを内径80mmの円筒容器に入れ、熱媒中で軸中心に回転させながら加熱重合させて外径80mm、内径76mmのポリトリフルオロエチルメタクリレート製アウタークラッド用パイプを得た。このポリトリフルオロエチルメタクリレート製アウタークラッド用パイプの屈折率は25℃で1.42であった。
ポリスチレン製コア用ロッドとPMMA製インナークラッド用パイプとポリトリフルオロエチルメタクリレート製アウタークラッド用パイプとを組み合わせてプリフォームを作製した。コア用中空ロッドの中心、コア用中空ロッドとインナークラッド用パイプとの間隙部、及びインナークラッド用パイプとアウタークラッド用パイプとの間隙部を減圧しながら、このプリフォームを加熱線引きし、外径1mmのシンチレーションファイバを得た。コア径は900μm、クラッド厚は全体で約50μmであった。
[コア用ロッド]
スチレンモノマーに蛍光剤パラターフェニル(PTP)1質量%及び2,5−ビス−(5−t−ブチル−ベンゾキサゾイル)チオフェン(BBOT)0.02質量%を均一に溶解し、これを内径70mmの円筒容器中に入れ、70〜120℃に温度調節して熱重合させた。円筒容器から取り出し、蛍光剤を含んだポリスチレン製コア用ロッドを得た。このポリスチレン製コア用ロッドの屈折率は25℃で1.59であった。
実施例1と同様の方法で、外径75mm、内径71mmのPMMA製クラッド用パイプを得た。このPMMA製クラッド用パイプの屈折率は25℃で1.49であった。
ポリスチレン製コア用ロッドとPMMA製クラッド用パイプとを組み合わせてプリフォームを作製した。このプリフォームを加熱線引きし、外径1mmのシンチレーションファイバを得た。コア径は940μm、クラッド厚は約30μmであった。
実施例1及び比較例に係るシンチレーションファイバの製造に使用したコア用ロッドの一部を切断して、径方向でサンプリングし、クロロホルム溶剤に溶解・希釈した後、蛍光剤である2,5−ビス−(5−t−ブチル−ベンゾキサゾイル)チオフェン(BBOT)の吸光度を測定することにより、蛍光剤の濃度分布を得た。図4に、線引き後のシンチレーションファイバの径に換算した蛍光剤の濃度分布の測定結果を示す。図4は、実施例1及び比較例に係るシンチレーションファイバにおける蛍光剤の濃度分布を示すグラフである。横軸はファイバ径方向位置(μm)、縦軸は蛍光剤濃度(ppm)を示している。ファイバ径方向位置500μm付近が、中心部に対応している。図4に示すように、比較例では、ファイバ径方向位置によらずほぼ同じ濃度であったのに対し、実施例1では、中心部から外周部に向かって連続して濃度が上昇するような蛍光剤の濃度分布となった。すなわち、実施例1に係るシンチレーションファイバは、図3に示したシンチレーションファイバに対応している。
実施例1及び比較例に係る外径1mmのシンチレーションファイバについて、ファイバ径方向位置による発光量変化を測定した。図5は、ファイバ径方向位置による発光量変化を測定するための測定システムのブロック図である。図6は、シンチレーションファイバを搭載したステージの断面図である。なお、図5、図6に示した右手系xyz座標は、図面間において相互に対応しているが、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。z軸プラス向きが鉛直上向き、xy平面が水平面である。
可動クランプに固定されたシンチレーションファイバ1をx軸方向に移動させつつ、100μm幅に限定して照射したβ線によるトリガ信号によって、ファイバ径方向位置による発光量変化を測定することができる。
APD2によって検出されるパルスは、図6の上方スリットを通過したβ線の多くによって多数発生する。それらの中から、下方のスリットを通過したβ線によるAPD2のトリガ信号が立ち上がったもののみをANDゲートによって選別計数する。
このような構成により、ファイバ断面の100μm幅に限定してβ線を照射することによって発生したシンチレーション光の発光量をマルチチャンネルアナライザによって計数した。
11 コア
12 クラッド
Claims (4)
- 紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有するコアと、前記コアの外周面を被覆すると共に、前記コアよりも低い屈折率を有するクラッドと、を備えた断面円形状のプラスチックシンチレーションファイバであって、
前記コアにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コアの断面の中心から外周方向へ向かって2段階以上で不連続に上昇する分布を有する、
プラスチックシンチレーションファイバ。 - 前記クラッドが、
インナークラッドと、
前記インナークラッドの外周面を被覆すると共に、前記インナークラッドよりも低い屈折率を有するアウタークラッドと、を含むマルチクラッド構造を有している、
請求項1に記載のプラスチックシンチレーションファイバ。 - 紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有するコアと、前記コアの外周面を被覆するクラッドと、を備えたプラスチックシンチレーションファイバの製造方法であって、
紫外線吸収発光性を有する蛍光剤を含有する樹脂からなる棒状のコア用ロッドを、前記コア用ロッドよりも低い屈折率を有する樹脂からなる円筒状のクラッド用パイプに挿入してプリフォームを作製する工程と、
前記プリフォームを加熱しつつ線引きする工程と、を備え、
前記コア用ロッドにおける前記蛍光剤の濃度が、前記コア用ロッドの断面の中心から外周方向へ向かって2段階以上で不連続に上昇する分布を有する、
プラスチックシンチレーションファイバの製造方法。 - 前記クラッド用パイプを、
インナークラッド用パイプと、
前記インナークラッド用パイプの外周面を被覆すると共に、前記インナークラッド用パイプよりも低い屈折率を有する樹脂からなるアウタークラッド用パイプと、から構成する、
請求項3に記載のプラスチックシンチレーションファイバの製造方法。
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