JP6867713B2 - 低結晶性バナジウム硫化物 - Google Patents

低結晶性バナジウム硫化物 Download PDF

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Description

本発明は、低結晶性バナジウム硫化物に関する。
近年の携帯電子機器・ハイブリッド車等の高性能化により、それに用いられるリチウムイオン二次電池は益々高容量化が求められている。しかしながら、現行のリチウムイオン二次電池は、負極に比べて正極の高容量化が不十分であり、比較的高容量と言われるニッケル酸リチウム系材料でもその容量は190〜220mAh/g程度に過ぎない。
一方、硫黄は理論容量が約1670mAh/gと高く、正極材料としての利用が期待されるが、電子伝導性が低く、更に充放電時に多硫化リチウムとして有機電解液に溶出するという問題もあり、有機電解液への溶出を抑制する技術が不可欠である。
金属硫化物は電子伝導性を有しており、有機電解液への溶出も少ないものの、硫黄に比べて理論容量が低く、更に、充放電時のLi挿入及び脱離に伴う大きな構造変化が原因で可逆性が低いという問題がある。金属硫化物の高容量化の実現には、硫黄含量の増加が必要であるが、結晶性金属硫化物では、放電時にLiが挿入されるサイトが結晶の空間群により規定さることで最大容量が決定されるため、この最大容量値を超えることは困難である。
例えば、金属硫化物のなかでも、バナジウム硫化物としては、試薬として販売されている結晶性硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)を正極活物質として用いた場合には、理論容量は811.0mAh/gと高いにもかかわらず、有機電解液との反応を抑制することができないために、実測の容量は充電容量が23mAh/g程度、放電容量が52mAh/g程度に過ぎない。また、非特許文献1には、水熱合成法で作製した酸化グラフェンとのナノ複合体VS4-rGOが出力特性が高く、リチウムイオン二次電池の負極材料として提案されている。しかしながら、この材料は結晶性であるため、他材料とのナノ複合体を形成したところで、放電時にLiが挿入されるサイトが結晶の空間群により規定されることで最大容量が決定される理由から容量には改善の余地がある。
X. Xu, et al., J. Mater. Chem. A, 2. (2014) 10847-10853.
上記のとおり、バナジウム硫化物は、理論容量が大きいことから高い容量のリチウムイオン二次電池を得る潜在能力が期待されるものの、実測の容量は著しく低いのが現状である。このため、本発明は、優れた容量及びサイクル特性を示すリチウムイオン二次電池用の電極活物質を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の組成を有する低結晶性バナジウム硫化物が、リチウムイオン二次電池用電極活物質として使用した場合に高い容量を示し、また、サイクル特性にも優れることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成されたものである。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.バナジウム及び硫黄を構成元素として含み、
前記バナジウムと前記硫黄との組成比(S/V)がモル比で2.1以上である、
低結晶性バナジウム硫化物。
項2.一般式(1):
VSx (1)
[式中、xは2.1以上である。]
で表される組成を有する、項1に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
項3.VS2型結晶構造を有する、項1又は2に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
項4.CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、15.4°、35.3°及び45.0°にピークを有する、項1〜3のいずれか1項に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
項5.前記2θ= 15.4°、35.3°及び45.0°のピークの半値全幅がいずれも0.8〜2.0°である、項1〜4のいずれか1項に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
項6.CuKα線によるX線回折図において、±1.0°の許容範囲で、2θ= 23.0°に極大を有するピークを有さないか、2θ= 23.0°に極大を有するピークの面積が、前記2θ= 35.3°に極大を有するピークの面積の20%以下である、項1〜5のいずれか1項に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
項7.項1〜6のいずれか1項に記載の低結晶性バナジウム硫化物の製造方法であって、
原料又は中間体として、バナジウム硫化物及び硫黄を用い、メカニカルミリング処理に供する工程
を備える、製造方法。
項8.前記バナジウム硫化物の使用量が、前記硫黄1モルに対して、2.1モル以上である、項7に記載の製造方法。
項9.項1〜6のいずれか1項に記載の低結晶性バナジウム硫化物からなるリチウムイオン二次電池用電極活物質。
項10.項9に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を含むリチウムイオン二次電池用電極。
項11.項10に記載のリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池。
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、従来のバナジウム硫化物と比較して充放電容量を著しく向上させることができるとともに、サイクル特性にも優れる材料である。
実施例1で得られたVS2.1粉末及び比較例1で得られたV2.0S3.0粉末のX線回折図を示す。VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークとともに示す。 実施例2で得られたVS2.5粉末及び実施例3で得られたVS3.0粉末のX線回折図を示す。VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークとともに示す。 実施例4で得られたVS3.5粉末のX線回折図を示す。VSと、VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークとともに示す。 実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末、又は比較例2-4で得たV2.0S3.0+S粉末を正極活物質として用いた試験用電気化学セルの充放電試験の結果である。 原料として用いたV2.0S3.0試薬、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、及び比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末について、X線中性子原子対相関関数解析(PDF解析)の結果である。 原料として用いたV2.0S3.0試薬、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、及び比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末について、X線中性子原子対相関関数解析(PDF解析)の結果(拡大図)である。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
また、本明細書において、「A〜B」との表記は、「A以上且つB以下」を意味する。
さらに、本明細書において、「リチウムイオン二次電池」は、リチウム金属を負極活物質とするリチウム二次電池も包含する概念である。
1.低結晶性バナジウム硫化物
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、バナジウム及び硫黄を構成元素として含み、
前記バナジウムと前記硫黄との組成比(S/V)がモル比で2.1以上である、低結晶性バナジウム硫化物である。
より詳細には、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、一般式(1):
VSx (1)
[式中、xは2.1以上である。]
で表される組成を有することが好ましい。
このように、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、バナジウムに対する硫黄の元素比が高い。このため、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、高い充放電容量を有する。なお、本発明では、硫黄の含有量を高くするほど(xを大きくするほど)充放電容量が高くなりやすく、硫黄の含有量を低くするほど(xを小さくするほど)単体硫黄を含みにくくしてサイクル特性が高くなりやすい。これらのバランスを取る観点から、xとしては2.1〜4.0が好ましく、2.3〜3.3がより好ましい。
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、結晶性硫化バナジウム(IV)(VS2)と類似した結晶構造(以下、「VS2型結晶構造」と言うこともある)を有することが好ましい。この結晶性硫化バナジウム(IV)(VS2)は、無機結晶構造データベース(ICSD)において、01-089-1640として掲載されている。
より具体的には、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、15.4°、35.3°及び45.0°にピークを有することが好ましい。つまり、14.4°〜16.4°、34.3°〜36.3°及び44.0°〜46.0°の範囲にピークを有することが好ましい。
なお、本発明において、X線回折図は、粉末X線回折測定法によって求められるものであり、例えば、以下の測定条件:
測定装置: D8 ADVANCE (Burker AXS)
X線源:CuKα 40kV/40mA
測定条件:2θ= 10°〜80°、0.1°ステップ、走査速度0.02°/秒
で測定することができる。
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、上記した2θ位置にピークを有するが、回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、54.0°及び56.0°の少なくとも1箇所(特に全て)にもピークを有することが好ましい。
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、平均組成としては硫黄の比率が高い硫化物であるにもかかわらず、硫黄は後述のように単体硫黄としてはほとんど存在せず、バナジウムと結合して低結晶性の硫化物を形成している。このように、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、結晶性を低くすることにより、リチウムイオンが挿入及び脱離可能なサイトが多く存在し、また、3次元的にリチウムの導電経路となり得る隙間を構造的に有することができる。また、充放電時に3次元的な体積変化を行うことができる等多数の利点を有している。このため、充放電容量をさらに向上させることができる。また、原料として使用する硫化バナジウム(V2.0S3.0等)もほとんど存在しない。なお、本明細書において、硫化物の平均組成とは、硫化物の全体を構成する各元素の元素比を示す。
以下、本発明における「低結晶性」について説明する。本発明の低結晶性バナジウム硫化物においては、2θ= 15.4°、35.3°及び45.0°のピークの半値全幅がいずれも0.8〜2.0°(特に0.9〜1.6°)が好ましい。このように、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、2θ= 15.4°、35.3°及び45.0°のピークの半値全幅が、結晶性硫化バナジウム(IV)(VS2)と比較すると大きいことが好ましい。このように、本発明においては低結晶性であることにより、Liが安定して存在できるサイトが増えるため、充放電容量及びサイクル特性を向上させることができる。
また、単体硫黄等を多量に含む材料を電極活物質(正極活物質等)として用いた場合には、カーボネート系溶媒は単体硫黄と反応を起こすうえに、エーテル系溶媒は硫黄成分を大量に溶解させるために性能悪化を引起こすために溶媒選択の幅が狭かった。これに対して、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は単体硫黄等をほとんど含んでいないため、電極活物質(正極活物質等)として使用する場合には、カーボネート系溶媒、エーテル系溶媒を用いた場合にもこれらの問題は生じず、電解液用の溶媒の選択性を向上させることができる。
より具体的には、硫黄(S8)の最も強いピークは、±1.0°の許容範囲で、2θ= 23.0°に存在する。このことから、CuKα線によるX線回折図において、±1.0°の許容範囲で、単体硫黄に特徴的なピークである、2θ= 23.0°に極大を有するピークを有さないか、2θ= 23.0°に極大を有するピークの面積が、前記2θ= 35.3°に極大を有するピークの面積の20%以下(0〜20%、特に0.1〜19%)であることが好ましい。これにより、本発明の低結晶性バナジウム硫化物において、単体硫黄をほとんど含まない材料とすることができ、上記のような電解液との反応を起こす懸念をより少なくし、充放電容量及びサイクル特性をより向上させることができる。なお、低結晶化の目安としては、上記2θ= 23.0°に極大を有するピークの面積が、原料として用いた硫黄の2θ= 23.0°に極大を有するピークの面積の20%以下(0〜20%、特に0.1〜19%)であることが好ましい。
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、他にも、±1.0°の許容範囲で、単体硫黄に特徴的なピークである2θ= 25.8°及び27.8°の位置についても、ピークを有さないか、当該位置に極大を有するピークの面積が、前記2θ= 35.3°に極大を有するピークの面積の10%以下(0〜10%、特に0.1〜8%)であることが好ましい。これにより、本発明の低結晶性バナジウム硫化物において、単体硫黄をほとんど含まない材料とすることができ、上記のような電解液との反応を起こす懸念をより少なくし、充放電容量及びサイクル特性をより向上させることができる。
なお、本発明では、本発明の低結晶性バナジウム硫化物の性能を阻害しない範囲であれば、その他の不純物も含まれ得る。このような不純物としては、原料となるバナジウム硫化物(V2.0S3.0)や原料に混入する可能性のあるバナジウム等の他、原料及び製造時に混入する可能性のある酸素等を例示できる。
これらの不純物の量については、上記した本発明の低結晶性バナジウム硫化物の性能を阻害しない範囲が好ましく、通常、2質量%以下(0〜2質量%)が好ましく、1.5質量%以下(0〜1.5質量%)がより好ましい。ただし、不純物としては、上記したように、単体硫黄は極力含まないことが好ましい。
このような条件を満たす本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、X線中性子原子対相関関数解析(PDF解析)において、±0.1Åの許容範囲で、g(r)= 2.4Åの位置に強いピークを有するが、より充放電容量及びサイクル特性が良好な硫化物については、g(r)= 2.0Åに肩ピークを有することが好ましく、また、g(r)= 3.3Åの位置にもピークを有することが好ましい。言い換えれば、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、V-S結合のみならず、S-S結合(ジスルフィド結合)も有することが好ましい。
以上のように、本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、特に優れた充放電容量を有し、サイクル特性にも優れることから、リチウムイオン二次電池用電極活物質(特にリチウムイオン二次電池用正極活物質)として有用である。
2.低結晶性バナジウム硫化物の製造方法
本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、
原料又は中間体として、バナジウム硫化物及び硫黄を用い、メカニカルミリング法に供する工程
を備える製造方法によって得ることができる。
メカニカルミリング処理は、機械的エネルギーを付与しながら原料を摩砕混合する方法であり、この方法によれば、原料に機械的な衝撃及び摩擦を与えて摩砕混合することによって、バナジウム硫化物及び硫黄が激しく接触して微細化され、原料の反応が生じる。つまり、この際、混合、粉砕及び反応が同時に生じる。このため、原料を高温に熱することなく、原料をより確実に反応させることが可能である。メカニカルミリング処理を用いることで通常の熱処理では得ることのできない、準安定結晶構造が得られることがある。
メカニカルミリング処理としては、具体的には、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、振動ミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等の機械的粉砕装置を用いて混合粉砕を行うことができる。
これらの原料又は中間体については、全てを同時に混合してメカニカルミリング処理に供することもでき、一部の材料又は中間体についてまずメカニカルミリング処理に供した後、残りの材料を加えてメカニカルミリング処理に供することもできる。
なお、特に、硫黄含量が多いバナジウム硫化物(一般式(1)において、x≧3.3)を製造する場合には、仕込み質量によっては、結晶性のバナジウム硫化物が得られることがある。このため、充放電容量及びサイクル特性に優れた低結晶性バナジウム硫化物を得やすくするため、まず、バナジウム硫化物と硫黄の一部とをメカニカルミリング処理に供することにより中間体として所望の低結晶性硫化物を得た後、得られた低結晶性硫化物と残りの硫黄とをメカニカルミリング処理に供することが好ましい。
具体的な原料としては、バナジウム硫化物として、結晶性硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)を使用することが好ましい。バナジウム硫化物は、特に限定はなく、市販されている任意のバナジウム硫化物を用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、バナジウム硫化物をメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用するバナジウム硫化物の粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状のバナジウム硫化物を用いることができる。
また、硫黄としては、目的とする組成の硫化物を形成するたに必要な量の単体硫黄(S8)を用いることが可能である。原料として用いる硫黄についても特に限定はなく、任意の硫黄を用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫黄をメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫黄の粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫黄を用いることができる。
さらに、上記したように、複数(特に2段階)のメカニカルミリング処理に供する場合、中間体としては、所望の組成の低結晶性バナジウム硫化物(低結晶性VS2.5等)等を用いることもできる。
原料の混合割合については、原料の仕込み比率が、ほとんどそのまま生成物の各元素の比率となるため、目的とする低結晶性バナジウム硫化物におけるバナジウム及び硫黄の元素比と同一の比率とし得る。例えば、バナジウム硫化物1モルに対して、硫黄を1.2モル以上(特に1.2〜5.0モル、さらに1.5〜3.5モル)が好ましい。
メカニカルミリング処理を行う際の温度については、特に制限はなく、硫黄が揮発しにくくするとともに、既報の結晶相が生成されにくくするため、300℃以下が好ましく、-10〜200℃がより好ましい。
メカニカルミリング処理の時間については、特に限定はなく、目的の低結晶性バナジウム硫化物が析出した状態となるまで任意の時間メカニカルミリング処理を行うことができる。
例えば、メカニカルミリング処理は、0.1〜100時間(特に15〜80時間)の処理時間の範囲内において、0.1〜100kWh/原料混合物1kgのエネルギー量で行うことができる。なお、このメカニカルミリング処理は、必要に応じて途中に休止を挟みながら複数回に分けて行うこともできる。
なお、メカニカルミリング処理を複数回繰り返す場合は、各工程のメカニカルミリング処理において、上記条件とすることができる。
上記したメカニカルミリング処理により、目的とする低結晶性バナジウム硫化物を微粉末として得ることができる。
3.低結晶性バナジウム硫化物の用途
上記した本発明の低結晶性バナジウム硫化物は、上記のとおり特に充放電容量に優れ、サイクル特性にも優れることから、特に、リチウムイオン二次電池用電極活物質として有用である。本発明の低結晶性バナジウム硫化物を電極活物質(特に正極活物質)として有効に使用できるリチウムイオン二次電池は、電解質として非水電解液を用いる非水電解液リチウムイオン二次電池ともし得るし、リチウムイオン伝導性の固体電解質を用いる全固体型リチウムイオン二次電池ともし得る。
非水電解液リチウムイオン二次電池及び全固体型リチウムイオン二次電池の構造は、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を電極活物質(特に正極活物質)として用いること以外は、公知のリチウムイオン二次電池と同様とすることができる。
例えば、非水電解液リチウムイオン二次電池としては、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を電極活物質(特に正極活物質)として使用する他は、基本的な構造は、公知の非水電解液リチウムイオン二次電池と同様とすることができる。
正極については、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を正極活物質として用いる場合は、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を正極活物質として用いる他は、公知の正極と同様の構造とすることができる。例えば、本発明の低結晶性バナジウム硫化物と必要に応じて導電剤及びバインダーを含む正極合剤をAl、Ni、ステンレス、カーボンクロス等の正極集電体に担持させることができる。導電剤としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンブラック(ケッチェンブラック等)、針状カーボン等の炭素材料を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の材料を単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。一方、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を正極活物質として用いない場合は、正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、酸化バナジウム系材料、硫黄系材料等の公知の正極活物質を用いることもできる。
負極については、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を負極活物質として用いる場合は、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を負極活物質として用いる他は、公知の負極と同様の構造とすることができる。例えば、本発明の低結晶性バナジウム硫化物と必要に応じて導電剤及びバインダーを含む負極合剤をAl、Ni、ステンレス、カーボンクロス等の負極集電体に担持させることができる。導電剤としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンブラック、針状カーボン等の炭素材料を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の材料を単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。一方、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を負極活物質として用いない場合は、負極活物質としては、金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛等)、ケイ素、酸化ケイ素、Si−SiO系材料、リチウムチタン酸化物等の公知の負極活物質を用いることもできる。
非水電解液の溶媒としては、カーボネート、エーテル、ニトリル、含硫黄化合物等の非水系リチウムイオン二次電池の溶媒として公知の溶媒を用いることができる。特に、単体硫黄を正極活物質として用いた場合には、カーボネートを溶媒に用いると単体硫黄とカーボネートとが反応を起こすため使用できず、エーテルを溶媒に用いると硫黄成分が電解液中に大量に溶解して性能悪化を引起こすために、これらの溶媒を使用することはできなかったが、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を電極活物質(特に正極活物質)として使用すると、これらの問題を解決することができるため、いずれの溶媒でも適用可能であり、電解液中の溶媒の選択性を向上させることができる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン、芳香族アラミド、無機ガラス等の材質からなり、多孔質膜、不織布、織布等の形態の材料を用いることができる。
一方、全固体型リチウムイオン二次電池についても、本発明の低結晶性バナジウム硫化物を電極活物質(特に正極活物質)として用いる以外は、公知の全固体型リチウムイオン二次電池と同様の構造とすることができる。この場合、正極、負極及びセパレータとしては、上記したものを採用できる。
この場合、電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド系の高分子化合物;ポリオルガノシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物等のポリマー系固体電解質の他、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質等も用いることができる。
非水電解液リチウムイオン二次電池及び全固体型リチウムイオン二次電池の形状についても特に限定はなく、円筒型、角型等のいずれも採用し得る。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
[実施例1:VS2.1粉末の合成]
実施例1-1:ミリング10時間
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末及び硫黄粉末を、V2.0S3.0とSのモル比が1.0: 1.2(V2.0S3.0 1.6747g、S 0.3253g)となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた容量45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでVS2.1粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計10回行った。得られたVS2.1組成の粉末を、便宜上VS2.1粉末と称する。実施例1-2〜1-4も同様である。
実施例1-2:ミリング20時間
メカニカルミリング処理を20時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った)こと以外は実施例1-1と同様に処理を行い、VS2.1粉末を得た。
実施例1-3:ミリング40時間
メカニカルミリング処理を40時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計40回行った)こと以外は実施例1-1と同様に処理を行い、VS2.1粉末を得た。
実施例1-4:ミリング60時間
メカニカルミリング処理を60時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計60回行った)こと以外は実施例1-1と同様に処理を行い、VS2.1粉末を得た。得られたVS2.1粉末の粉体密度を乾式粉体密度計(メイクロメリティックス社製アキュピックII 1340-1CC)により測定したところ、3.72g cm-3であった。
[比較例1:V2.0S3.0粉末の合成]
比較例1-1:ミリング10時間
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末を、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた容量45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでV2.0S3.0粉末(2.0000g)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計10回行った。得られたV2.0S3.0組成の粉末を、便宜上V2.0S3.0粉末と称する。比較例1-2〜1-4も同様である。
比較例1-2:ミリング20時間
メカニカルミリング処理を20時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った)こと以外は比較例1-1と同様に処理を行い、V2.0S3.0粉末を得た。
比較例1-3:ミリング40時間
メカニカルミリング処理を40時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計40回行った)こと以外は比較例1-1と同様に処理を行い、V2.0S3.0粉末を得た。
比較例1-4:ミリング60時間
メカニカルミリング処理を60時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計60回行った)こと以外は比較例1-1と同様に処理を行い、V2.0S3.0粉末を得た。得られたV2.0S3.0粉末の粉体密度を乾式粉体密度計(メイクロメリティックス社製アキュピックII 1340-1CC)により測定したところ、4.14g cm-3であった。
[実施例2:VS2.5粉末の合成]
実施例2-1:ミリング10時間
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末及び硫黄粉末を、V2.0S3.0とSのモル比が1.0: 2.0(V2.0S3.0 1.5109g、S 0.4891g)となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた容量45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでVS2.5粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計10回行った。得られたVS2.5組成の粉末を、便宜上VS2.5粉末と称する。実施例2-2〜2-4も同様である。
実施例2-2:ミリング20時間
メカニカルミリング処理を20時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った)こと以外は実施例2-1と同様に処理を行い、VS2.5粉末を得た。
実施例2-3:ミリング40時間
メカニカルミリング処理を40時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計40回行った)こと以外は実施例2-1と同様に処理を行い、VS2.5粉末を得た。
実施例2-4:ミリング60時間
メカニカルミリング処理を60時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計60回行った)こと以外は実施例2-1と同様に処理を行い、VS2.5粉末を得た。得られたVS2.5粉末の粉体密度を乾式粉体密度計(メイクロメリティックス社製アキュピックII 1340-1CC)により測定したところ、3.40g cm-3であった。
[実施例3:VS3.0粉末の合成]
実施例3-1:ミリング10時間
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末及び硫黄粉末を、V2.0S3.0とSのモル比が1.0: 3.0(V2.0S3.0 1.3462g、S 0.6538g)となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた容量45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでVS3.0粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計10回行った。得られたVS3.0組成の粉末を、便宜上VS3.0粉末と称する。実施例3-2〜3-4も同様である。
実施例3-2:ミリング20時間
メカニカルミリング処理を20時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った)こと以外は実施例3-1と同様に処理を行い、VS3.0粉末を得た。
実施例3-3:ミリング40時間
メカニカルミリング処理を40時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計40回行った)こと以外は実施例3-1と同様に処理を行い、VS3.0粉末を得た。
実施例3-4:ミリング60時間
メカニカルミリング処理を60時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計60回行った)こと以外は実施例3-1と同様に処理を行い、VS3.0粉末を得た。得られたVS3.0粉末の粉体密度を乾式粉体密度計(メイクロメリティックス社製アキュピックII 1340-1CC)により測定したところ、3.03g cm-3であった。
[比較例2]
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末及び硫黄粉末を、V2.0S3.0とSのモル比が1.0: 1.2(V2.0S3.0 1.6747g、S 0.3253g)となるように秤量・混合し、その後、乳鉢中で混合し、V2.0S3.0とSの混合物(V2.0S3.0+S粉末)を得た。
[実施例4:VS3.5の合成]
実施例4-1:ミリング10時間
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化バナジウム(III)(V2.0S3.0)粉末及び硫黄粉末を、V2.0S3.0とSのモル比が1.0: 2.0(V2.0S3.0 1.5109g、S 0.4891g)となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた容量45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでVS2.5粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った。つまり、上記実施例2-2と同様の処理を行った。
次に、アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、得られたVS2.5粉末及び硫黄粉末を、VS2.5とSのモル比が1.0: 1.0(VS2.5 1.6070g、S 0.3930g)となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、20時間のメカニカルミリング処理を行うことでVS3.5粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った。得られたVS3.5組成の粉末を、便宜上VS3.5粉末と称する。
実施例4-2:ミリング20時間
2回目のメカニカルミリング処理を20時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計20回行った)こと以外は実施例4-1と同様に処理を行い、VS3.5粉末を得た。
実施例4-3:ミリング40時間
2回目のメカニカルミリング処理を40時間行った(1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計40回行った)こと以外は実施例4-1と同様に処理を行い、VS3.5粉末を得た。
[試験例1:X線回折(その1)]
実施例1及び比較例1で得られた粉末について、
測定装置: D8 ADVANCE (Burker AXS)
X線源: CuKα 40kV/40mA
0.1°step
走査速度: 0.02°/秒
を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図1に示す。参考のため、図1には、VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークもあわせて示す。
図1に示すX線回折図では、実施例1の試料は、メカニカルミリングの処理時間が10時間、20時間、40時間及び60時間いずれにおいても、回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、15.4°、35.3°、45.0°及び56.0°にピークを有しており、VS2と類似のパターンを示していた。なお、52.0〜53.0°付近に見られるピークは微量不純物(V2O3)のピークである。また、メカニカルミリング時間を増加するほどVS2に近いパターンが得られた。実施例1-4の試料において各ピークの半値全幅は、15.4°に極大を有するピークは1.3°、35.3°に極大を有するピークは1.2°、45.0°に極大を有するピークは1.6°、56.0°に極大を有するピークは1.0°であった。また、いずれの試料も、2θ= 23.0°の位置にはピークが存在しないため硫黄のピークが消滅していることが理解できる。なお、比較例1で得られた粉末はVS2に近いパターンではなかった。
[試験例2:X線回折(その2)]
実施例2〜3で得られた粉末について、
測定装置: D8 ADVANCE (Burker AXS)
X線源: CuKα 40kV/40mA
測定条件:2θ= 10°〜80°、0.1°ステップ、走査速度0.02°/秒
を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図2に示す。参考のため、図2には、VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークもあわせて示す。
図2に示すX線回折図では、実施例2及び3の試料は、メカニカルミリングの処理時間が10時間、20時間、40時間及び60時間いずれにおいても、回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、15.4°、35.3°、45.0°及び56.0°にピークを有しており、VS2と類似のパターンを示していた。なお、52.0〜53.0°付近に見られるピークは微量不純物(V2O3)のピークである。また、メカニカルミリング時間を増加するほどVS2に近いパターンが得られた。実施例2-4において各ピークの半値全幅は、15.4°に極大を有するピークは1.1°、35.3°に極大を有するピークは1.0°、45.0°に極大を有するピークは1.3°、56.0°に極大を有するピークは1.1°であった。また、実施例3-1の試料では、2θ= 23.0°の位置に硫黄のピークが残存しているものの、そのピークの面積は35.3°に極大を有するピークの面積の18.1%であった。その他の試料については、2θ= 23.0°の位置にはピークが存在しないため硫黄のピークが消滅していた。また、いずれの試料においても、原料であるV2S3は若干残存しているものの、そのピークの面積は35.3°のピークの面積の20%であり含有量は13質量%程度であると見積もられる。
[試験例3:X線回折(その3)]
実施例4で得られた粉末について、
測定装置: D8 ADVANCE (Burker AXS)
X線源: CuKα 40kV/40mA
0.1°step
走査速度: 0.02°/秒
を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図3に示す。参考のため、図3には、VSと、VS2.0と、原料であるV2.0S3.0粉末及びS8.0粉末のピークもあわせて示す。また、中間体として得られたVS2.5粉末のピークもあわせて示す。
図3に示すX線回折図では、実施例4の試料は、メカニカルミリングの処理時間が10時間、20時間及び40時間いずれにおいても、回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、15.4°、35.3°、45.0°及び56.0°にピークを有しており、VS2と類似のパターンを示していた。なお、52.0〜53.0°付近に見られるピークは微量不純物(V2O3)のピークである。また、メカニカルミリング時間を増加するほどVS2に近いパターンが得られた。実施例4-3において各ピークの半値全幅は、15.4°に極大を有するピークは0.8°、35.3°に極大を有するピークは0.8°、45.0°に極大を有するピークは1.1°、56.0°に極大を有するピークは0.9°であった。また、実施例4-1及び4-2の試料では、2θ= 23.0°の位置に硫黄のピークが残存しているものの、そのピークの面積は35.3°に極大を有するピークの面積に対して実施例4-1は4.1%、実施例4-2は2.2%であった。実施例4-3の試料については、2θ= 23.0°の位置にはピークが存在しないため硫黄のピークが消滅していた。
[試験例4:充放電試験]
次に、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末、又は比較例2で得たV2.0S3.0+S粉末を正極活物質として用いて、以下の方法で試験用電気化学セル(リチウム二次電池)を作製し、30℃において、電流密度10mA/g(充放電レート:0.01C)で、電圧1.5〜3.0Vの範囲内で、サイクル環の休止時間10分として、定電流充放電測定を行った。
試験用電気化学セルの作製方法としては、まず、作用極(正極)は、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末、又は比較例2で得たV2.0S3.0+S粉末10mgに対して、ケッチェンブラック1mg及びバインダーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)1mgを加え、乳鉢で8分間混合した後、アルミニウムメッシュに張り付けることで作製した。対極(負極)としてはリチウム金属を用いた。電解液としては、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との質量比1: 1の混合溶媒に溶解させたもの(1M LiPF6 EC/DMC)を用いた。セパレータとしてはポリプロピレンを用いた。
結果を図3に示す。この結果、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末及び実施例3-4で得たVS3.0粉末を用いた場合は、カーボネート系溶媒を用いた場合にも、高い充放電容量及び優れたサイクル特性が得られた。それぞれの容量は、VS2.1粉末(充電容量:310mAh/g、放電容量:336mAh/g)は、VS2.5粉末(充電容量:402mAh/g、放電容量:424mAh/g)、VS3.0粉末(充電容量:517mAh/g、放電容量:560mAh/g)であり、硫黄含有量が増えるほど充放電容量が増加した。一方、比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末を用いた場合は、安定した充放電は可能であるものの、明らかに低容量であった(充電容量:73mAh/g、放電容量:103mAh/g)。また、比較例2で得たV2.0S3.0+S粉末を用いた場合は、容量が低い(充電容量:3mAh/g、放電容量:78mAh/g)うえに、カーボネート系溶媒と副反応が起こるために安定した充放電を行うことができなかった。
[試験例5:X線中性子原子対相関関数解析(PDF解析)]
原料として用いたV2.0S3.0試薬、実施例1-4で得たVS2.1粉末、実施例2-4で得たVS2.5粉末、実施例3-4で得たVS3.0粉末、及び比較例1-4で得たV2.0S3.0粉末について、X線中性子原子対相関関数解析(PDF解析)を行った。結果を図5に示す。この結果、総じてV2.0S3.0試薬と類似したパターンを示したが、4.0〜5.0Å付近のパターンには相違が見られた。そこで、図5の拡大図を図6に示す。この結果、メカニカルミリング処理を施すことにより、約4.0Åのピークが消失する傾向にあり、V-V結合又はV-S結合が少なくなることが示唆される。また、メカニカルミリング処理をした場合、硫黄の含有量が増えると、2.0Å付近に肩ピークが見られた。このことから、S-S結合の存在が示唆される。

Claims (7)

  1. バナジウム及び硫黄を構成元素として含み、
    前記バナジウムと前記硫黄との組成比(S/V)がモル比で2.1以上であり
    VS 2 型結晶構造を有し、
    CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、15.4°、35.3°及び45.0°にピークを有し、前記2θ= 15.4°、35.3°及び45.0°のピークの半値全幅がいずれも0.8〜2.0°であり、且つ、2θ= 23.0°に極大を有するピークを有さないか、2θ= 23.0°に極大を有するピークの強度が、前記2θ= 35.3°に極大を有するピークの強度の4.1%以下である、
    低結晶性バナジウム硫化物。
  2. 一般式(1):
    VSx (1)
    [式中、xは2.1以上である。]
    で表される組成を有する、請求項1に記載の低結晶性バナジウム硫化物。
  3. 請求項1又は2に記載の低結晶性バナジウム硫化物の製造方法であって、
    原料又は中間体として、バナジウム硫化物及び硫黄を用い、メカニカルミリング処理に供する工程
    を備える、製造方法。
  4. 前記バナジウム硫化物の使用量が、前記硫黄1モルに対して、2.1モル以上である、請求項に記載の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の低結晶性バナジウム硫化物からなるリチウムイオン二次電池用電極活物質。
  6. 請求項に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を含むリチウムイオン二次電池用電極。
  7. 請求項に記載のリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池。
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