JP6866813B2 - プロピレン−コモノマー共重合体 - Google Patents

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Description

本発明は、末端ビニル構造を高い割合で含有するプロピレン−コモノマー共重合体に関する。
ポリプロピレンは化学的安定性が高く、力学物性に優れ、安価なことから生活部材、工業部材などとして幅広く用いられている。一方、不飽和結合を有するポリプロピレンは、不飽和結合に起因する反応性を利用して、高機能化の試みが検討されている。末端ビニル基含有ポリプロピレンは、官能化の原料として、またマクロマーとしての利用が期待されている。マクロマーとは、末端ビニル基含有ポリマーとプロピレン等のモノマーとの重合反応によってポリマーを製造する際における当該末端ビニル基含有ポリマーをいう。
末端ビニル基含有ポリプロピレンは、プロピレンの重合反応において、ポリマー成長停止反応が、通常のβ水素脱離ではなくβメチル脱離を起こすことにより生じると考えられている(非特許文献1参照)。
しかし、非特許文献1に開示されたβメチル脱離を起こすような重合条件(触媒成分等)では、立体規則性がないアタクチックなポリプロピレンしか得ることができず、ポリプロピレン本来の力学物性が犠牲になっていた。
立体規則性を有する末端ビニル基含有ポリプロピレンを得る方法として、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドに代表されるキラルの立体剛性遷移金属化合物を用いる方法(特許文献1請求項10、非特許文献2参照)、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウムに代表される2位に窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基を有するメタロセン錯体を用いる方法(特許文献2参照)が提案されている。
特許文献1の方法では、数平均分子量(Mn)が2,000ダルトン乃至50,000ダルトンであり、さらに、1,000炭素原子当りのビニル基の総数が7000÷Mn以上である、立体規則性を有する末端ビニル基含有ポリプロピレンが得られるとしている。
しかしながら、この方法は、高選択的に末端ビニル構造を得るために比較的高温かつ低圧でスラリー重合することを必要とするものである。こういった重合条件では、生成するポリプロピレンは分子量が低く、また立体規則性も十分高いものにはならない。
特許文献2の方法では、数平均分子量(Mn)が5万より大きく13万未満、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比が2.0以上4.0以下、末端ビニル率≧0.7、末端ビニリデン率<0.1、40℃以下の温度で溶出する成分が3重量%以下、プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上の末端ビニル基含有ポリプロピレンが得られる。しかしながら、数平均分子量(Mn)が5万以下のポリプロピレンへの言及はない。
ところで、末端ビニル基含有ポリプロピレンを官能化させた化合物は、塗料、プライマー等の用途に適合すると考えられる。かかる用途においては、末端ビニル基含有ポリプロピレン及び末端ビニル基含有ポリプロピレンを官能化させた化合物は、溶媒に可溶であること、他基材との親和性が高いことが好まれる。
特表2001−525461号公報 特開2009−299045号公報
J. Am. Chem. Soc. 114,1992, 1025−1032 Resconi Macromol. Rapid Commun. 2000, 21, 1103−1107
本発明者らが、上述の特許文献1による末端ビニル基含有ポリプロピレンおよび特許文献2による末端ビニル基含有ポリプロピレンを検討したところ、溶媒可溶性、他基材との親和性が十分とは言えないことが判明した。
そこで、本発明は、反応性が高く、溶媒可溶性が改良された末端ビニル基含有ポリプロピレンを提供するものである。
本発明者らは、下記(1)〜(3)の特性を有することを特徴とするプロピレン−コモノマー共重合体が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
特性(1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる数平均分子量(Mn)が5万以下。
特性(2):全ポリマー鎖のうち末端にビニル基を持つ鎖の割合(末端ビニル率)が0.7以上。
ここで、末端ビニル率は以下の式で表される。
末端ビニル率=[Vi]/((総末端数)−LCB数)×2
(式中、[Vi]は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニル基の数である。総末端数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数である。LCB数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素の数である。)
特性(3):13C−NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上。
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、さらに、下記(4)の特性を有することが好ましい。
特性(4):示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)は、150℃以下。
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、さらに、下記(5)の特性を有することが好ましい。
特性(5):コモノマーは、炭素数4以上のα−オレフィンであり、コモノマー含量は、1.5mol%以上。
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体によれば、反応性が高く、溶媒可溶性が改良された末端ビニル基含有ポリプロピレンとすることができる。
GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間の説明の図である。
1.プロピレン−コモノマー共重合体
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、下記(1)〜(3)の特性を有することを特徴とする。
特性(1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる数平均分子量(Mn)が5万以下。
特性(2):全ポリマー鎖のうち末端にビニル基を持つ鎖の割合(末端ビニル率)が0.7以上。
ここで、末端ビニル率は以下の式で表される。
末端ビニル率=[Vi]/((総末端数)−LCB数)×2
(式中、[Vi]は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニル基の数である。総末端数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数である。LCB数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素の数である。)
特性(3):13C−NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上。
特性(1):数平均分子量(Mn)
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、数平均分子量(Mn)が、5万以下であり、好ましくは4.5万以下であり、さらに好ましくは4万以下である。上記範囲であると、末端ビニル基の変性をおこなう官能化の反応効率が良い。また、単位重量あたりの末端ビニル基の量が増えるために変性によって官能基の量が十分な量導入できる。また、溶媒への溶解性が高まる。
一方、数平均分子量(Mn)は、好ましくは1万以上であり、より好ましくは1.5万以上であり、さらに好ましくは2万以上である。上記範囲であると、共重合体の規則性(立体/位置)の特性に由来する結晶性およびそれに由来する2次構造がとりやすく、例えば表面改質剤、コーティング剤として用いた場合に十分に基材となじみ、基材表面で材料の機能性を発揮でき、基材表面から剥がれ難くなる。
このプロピレン−コモノマー共重合体の数平均分子量(Mn)は、重合用触媒成分として停止反応であるβメチル脱離反応速度が速い特殊な構造の錯体を選ぶことによって、制御が可能である。そのような錯体構造としては、2位に嵩高い複素環基を有し、4位に置換されてもよいアリール基等を有するビスインデン錯体を挙げることができる。また、この脱離反応速度は重合温度や、プロピレンの濃度、圧力を変えることによっても制御することができる。例えば、実施例に示す錯体では、重合温度が高くなる程、数平均分子量(Mn)を小さくすることができる。
ここで、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであり、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
試料の調製は、試料と、ODCB(0.5mg/mLのジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して、溶解させて行う。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
特性(2):末端ビニル率(−)と末端ビニリデン率(−)
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の全ポリマー鎖のうち末端にビニル基を持つ鎖の割合(末端ビニル率)は、下式を満たす。
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の全ポリマー鎖のうち末端にビニリデン基を持つ鎖の割合(末端ビニリデン率)は、下式を満たすことが好ましい。
(末端ビニル率)=[Vi]/((総末端数)−LCB数)×2 ≧0.7
(末端ビニリデン率)=[Vd]/((総末端数)−LCB数)×2 <0.1
(ただし、[Vi]は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニル基の数、[Vd]は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニリデン基の数である。総末端数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数である。LCB数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素の数である。)
オレフィン重合においては、モノマー、コモノマーとしてどのような種類のものを用いても、オレフィン部分の炭素2個を1つのユニットとして考え、その炭素2個の1つのユニットが連続して結合して骨格炭素を形成していると考える。
ここで、1000モノマーユニットとは、骨格形成炭素2000個を意味する。
骨格形成炭素とは、プロピレン由来のメチル炭素原子およびコモノマー由来の側鎖炭素原子以外の全ての炭素原子を意味する。
プロピレンの重合においては、一般的にβ水素脱離を起して、下記構造式(1−b)に示すビニリデン構造の末端が生成する。
また、水素を用いた場合には、通常水素へ連鎖移動が優先的に起こり下記構造式(1−c)に示すi−ブチル構造の末端が生成する。
しかしながら、特殊な構造の錯体を用いた場合には、βメチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応が起こり、下記構造式(1−a)に示すビニル構造(1−プロペニル構造)の末端が生成する(参照文献:Macromol.Rapid Commun.2000,21,1103−1107)。
また、プロピレンの重合においては、機構上、下記末端が生成する。
プロピレン挿入し、β水素脱離を起した後に、さらにγ位から水素を引き抜くことでできるπアリル中間体を経た、i−ブテニル末端:構造式(1−d)が生成する。
また、プロピレンは不規則な2,1挿入を起こすことがあるが、このような不規則結合を起こした後に、水素に連鎖移動したり、β水素脱離を起こしたり、πアリル中間体を経て水素脱離したりすると、n−ブチル末端:構造式(1−e)、1−ブテニル末端:構造式(1−f)、ビニレン末端:構造式(1−g)が生成する。
Figure 0006866813
さらに、本発明においてコモノマーとして、エチレン、1−ブテンを使用した場合、機構上、下記末端が生成する。
エチレン挿入後水素へ連鎖移動すると、n−プロピル末端:構造式(1−h)が生成する。
1−ブテン挿入後水素へ連鎖移動するとi−ペンチル末端:構造式(1−i)が生成する。
β水素脱離が起こると、ブチル−ビニリデン末端:構造式(1−j)が生成する。
Figure 0006866813
上記各種の末端構造のうち、ビニル構造は反応性が高い。
そのため、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、末端ビニル率が0.7以上必要であり、好ましくは0.75以上である。さらに好ましくは0.8以上であり、理想的には1.0(すべての末端がビニル基)である。
また、βメチル脱離反応とは反対に、β水素脱離反応の結果生成する上記構造式(1−b)の末端ビニリデン構造は反応性が乏しい。
したがって、末端ビニリデン構造が少ない共重合体は、反応性が高くなる。すなわち末端変性原料として用いた場合には、変性効率が良く、機能性が高くなる。
また、末端ビニリデン構造が少ない共重合体は、色相や耐候性が良くなる。
上記観点から、末端ビニリデン率は0.1より小さいことが好ましく、より好ましくは0.05未満であり、さらに好ましくは0.01未満であり、理想的には0(末端ビニリデンが実質的に存在しない)である。
また、βメチル脱離反応、β水素脱離反応の後の最初の挿入モノマーがプロピレンの場合には、開始末端は、それぞれ、i−ブチル末端:構造式(1−c)、n−プロピル末端:構造式(1−h)である。
また、βメチル脱離反応、β水素脱離反応の後の最初の挿入モノマーがエチレンの場合には、開始末端は、それぞれ、n−プロピル末端:構造式(1−h)、i−ペンチル末端:構造式(1−i)、である。
また、βメチル脱離反応、β水素脱離反応の後の最初の挿入モノマーが1−ブテンの場合には、開始末端は、それぞれ、i−ペンチル末端:構造式(1−i)、n−ブチル末端:構造式(1−e)である。
すなわち、開始末端は、必ず飽和炭化水素末端であり、両末端に不飽和結合が現れることはない。
このことは、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の変性を行う場合には、片側の末端のみが変性されることを意味する。
これに対して、例えば、ポリプロピレンを熱分解して得られる末端不飽和結合を有する重合体は、両末端がビニリデン(Vd)基となる可能性があり、これから不飽和結合を変性した場合には両末端が変性される可能性があり、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体とは形態が異なってしまう。
このプロピレン−コモノマー共重合体の末端ビニル率と末端ビニリデン率は、重合用触媒成分としてβメチル脱離反応をβ水素脱離反応に対して選択的におこすような特殊な構造の錯体を選ぶことによって、制御が可能である。そのような錯体構造としては、2位に嵩高い複素環基を有し、4位に置換されてもよいアリール基等を有するビスインデン錯体を挙げることができる。
また、このような錯体を用いた場合には、水素を用いた場合にも、驚くべきことに、活性は増大するものの優先的にβメチル脱離反応が起こり、ビニル構造(1−プロペニル構造):構造式(1−a)が主に生成する。
また、この選択率は、重合温度を変えることによっても制御することができる。例えば、実施例に示す錯体では、重合温度が高くなる程、末端ビニル率を高くすることができる。
13C−NMRにより算出される末端ビニル(1−プロペニル)基の数[Vi]および末端ビニリデン基の数[Vd]の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料390mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃で、プロトン完全デカップリング法で測定した。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
上記構造式(1−a)、構造式(1−b)の帰属方法及び定量方法としては、2重結合炭素の末端に近い方から下記のケミカルシフトで検出されることを利用して帰属し、そのうち一番末端に近いケミカルシフトの強度から、1000モノマーユニットに対する個数として下式のように算出する。
構造式(1−a)1−プロペニル:約115.5ppm、約137.6ppm
構造式(1−b)ビニリデン:約111.2ppm、約144.5ppm
[Vi]=[炭素1のピーク面積]/[骨格形成炭素のピーク面積の総和]×2×1000
[Vd]=[炭素3のピーク面積]/[骨格形成炭素のピーク面積の総和]×2×1000
その他、上記構造式(1−c)〜構造式(1−j)までの帰属方法及び定量方法としては、構造式(1−d)、構造式(1−f)、構造式(1−g)の場合には、2重結合炭素の末端に近い方から下記のケミカルシフトで検出されることを利用して帰属し、そのうち一番末端に近いケミカルシフトの強度から、[Vi]、[Vd]と同様の方法で、1000モノマーユニットに対する個数として算出する。
構造式(1−c)の場合には、末端から2番目までの炭素のケミカルシフトが下記のように検出されることを利用して帰属し、末端から2番目の炭素のケミカルシフトのピーク面積から、[Vi]、[Vd]と同様の方法で、1000モノマーユニットに対する個数として算出する。
構造式(1−e)、構造式(1−h)、構造式(1−i)の場合には、末端から3番目まで炭素のケミカルシフトが下記のように検出されることを利用して帰属し、末端から3番目の炭素のケミカルシフトのピーク面積から、[Vi]、[Vd]と同様の方法で、1000モノマーユニットに対する個数として算出する。
構造式(1−j)の場合には、2重結合炭素の末端に近い方から下記のケミカルシフトで検出されることを利用して帰属し、そのうち一番末端に近いケミカルシフトのピーク面積から、[Vi]、[Vd]と同様の方法で、1000モノマーユニットに対する個数として算出する。
構造式(1−c)i−ブチル:約20.4ppm、約25.8ppm、
構造式(1−d)i−ブテニル:約129.2ppm、約132.3ppm
構造式(1−e)n−ブチル:約12.1ppm、約21.1ppm、約23.2ppm構造式(1−f)1−ブテニル:約114.1ppm、約139.3ppm
構造式(1−g)ビニレン:約124.5ppm、約129.7ppm
構造式(1−h)n−プロピル:約12.4ppm、約18.0ppm、約37.5ppm
構造式(1−i)i−ペンチル:約10.7ppm、約30.6ppm、約32.2ppm
構造式(1−j)ブチル−ビニリデン:約109.8ppm、約149.6ppm
総末端数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数であり、具体的には、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの構造式(1−a)〜構造式(1−j)までの末端の個数の総和である。
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体には、下記の構造式(A)で示される長鎖分岐(LCB)構造部分を持ち得る。
Figure 0006866813
[但し、構造式(A)中、P、P、Pはプロピレン−コモノマー共重合体残基であり、それぞれ1つ以上のプロピレンユニットを有し、Cbrは、炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、Ca、Cb、Ccは、該メチン炭素(Cbr)に隣接するメチレン炭素を示す。]
構造式(A)において、プロピレン−コモノマー共重合体の主鎖は、P−Cbr−Pのライン、P−Cbr−Pのライン又はP−Cbr−Pのラインの3通りが存在する。したがって、それぞれに対応して、Cbr−Pのライン、Cbr−Pのライン又はCbr−Pのラインが上記分岐鎖になり得る。P、P、Pは、それ自体の中に、構造式(A)に記載されたCbrとは、別の分岐炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
ここでLCB構造の帰属は、プロピレン−コモノマー共重合体の13C−NMRにより、43.9〜44.1ppm、44.5〜44.7ppm及び44.7〜44.9ppmに3つのメチレン炭素(Ca、Cb、Cc)が観測され、31.5〜31.7ppmにメチン炭素(Cbr)として観測されるものである。Cbrに近接する3つのメチレン炭素が、ジアステレオトピックに非等価に3本に分かれて観測されることが特徴である。
また、LCB数とは、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素(Cbr)の数である。
炭素数が6より多い分岐鎖と炭素数が6以下の分岐鎖とは、分岐の根本のメチン炭素のピーク位置が異なることにより区別できる(Macromol.chem.phys.2003年、Vol.204、1738頁参照。)。
本発明において、LCB数は、特に限定されないが、通常0.5以下であることが好ましい。
特性(3)13C−NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の13C−NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率(アイソタクチックトライアッド分率)は、95%以上である。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度に制御されていることを意味する。
プロピレン−コモノマー共重合体のmm分率が高いと、他のポリプロピレンや基材に混合または塗布した場合にその混合効率が上がったり、コーティングの効率が良くなったり、さらにコーティング剤として剥がれにくくなる特性が生じてくる。したがって、mm分率は、好ましくは96%以上であり、より好ましくは97%以上である。
13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、上記[Vi]の測定と同様に13C−NMRスペクトルを用いて行う。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,(1975年)8卷,687頁やPolymer,30巻 1350頁(1989年)を参考に行う。
以下に、mm分率決定のより具体的な方法を述べる。
プロピレン単位を中心として頭−尾結合(1,2結合)した3連鎖の中心プロピレンのメチル基に由来するピークは、その立体配置に応じて、3つの領域に生じる。
mm:約24.3〜約21.1ppm
mr+rm:約21.1〜約20.5ppm
rr:約20.5〜約19.8ppm
各領域の化学シフト範囲は、共重合体の分子量や、モノマー組成により若干シフトするが、上記3領域の識別は、容易である。
ここで、mm、mr+rmおよびrrは、それぞれ下記の構造式(2−a)〜(2−c)で表される。
Figure 0006866813
mm分率は、次の数式(I)から、算出される。
mm分率=mm領域のピーク面積/(mm領域のピーク面積+(mr+rm)領域のピーク面積+rr領域のピーク面積)×100[%] ・・・(I)
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体のコモノマーがエチレン単位を含む場合、以下の構造式(3−a)〜(3−b)で表される部分構造を持ち得る。
Figure 0006866813
部分構造PPE+EPPの中心プロピレン単位のメチル基(PPE+EPP−メチル基)は、20.9ppm付近のmr+rm領域で共鳴し、部分構造EPEの中心プロピレン単位のメチル基(EPE−メチル基)は、20.2ppm付近のrr領域で共鳴するため、このような部分構造を有する場合には、mr+rm、rr両領域のピーク面積から、PPE+EPP−メチル基及びEPE−メチル基に基づくピーク面積を減ずる必要がある。
PPE+EPP−メチル基に基づくピーク面積は、対応するメチン基(31.0ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価でき、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、対応するメチン基(33.3ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価できる。
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体のコモノマーがブテン単位を含む場合、以下の構造式(4−a)〜(4−b)で表される部分構造を持ち得る。
Figure 0006866813
部分構造PPB+BPPの中心プロピレン単位のメチル基(PPB+BPP−メチル基)は、21.6ppm付近のmm領域で共鳴し、部分構造BPBの中心プロピレン単位のメチル基(BPB−メチル基)は、21.5ppm付近のmm領域で共鳴するため、このような部分構造を有する場合には、mm領域のピーク面積から、PPB+BPP−メチル基及びBPB−メチル基に基づくピーク面積を減ずる必要がある。
PPB+BPP−メチル基及びBPB−メチル基に基づくピーク面積は、対応するメチレン基(42〜44ppm付近で共鳴)のピーク面積の半分により評価できる。
また、2,1結合、1,3結合等の異種結合に起因する位置不規則ユニットを含む部分構造として、下記構造式(5−a)〜(5−f)を有することがある。
Figure 0006866813
このうち、炭素A、A’、A”ピークおよび炭素Q、Q’ピークは、mr+rm領域に、炭素B、B’ピークは、rr領域に現れる。
なお、炭素C、C’ピークは、16.8〜17.8ppmに現れるが、注目するmm、mr+rm、rr領域と全く関与しないので考慮する必要はない。
したがって、上記数式(I)に従って、mm分率を算出する場合には、それぞれmr+rm領域のピーク面積、rr領域のピーク面積から、頭−尾結合した3連鎖に基づかないピークでmr+rm領域及びrr領域に現れる炭素A、A’、A”、B、B’、Q、Q‘に基づくピーク面積を減ずる必要がある。
炭素Aに基づくピーク面積は、位置不規則部分構造[構造式(5−a)]の炭素D(42.4ppm付近で共鳴)、炭素E(35.8ppm付近で共鳴)、炭素F(38.7ppm付近で共鳴)及び炭素G(36.0ppm付近で共鳴)のピーク面積の和の1/4より評価できる。
炭素A’に基づくピーク面積は、位置不規則部分構造[構造式(5−b)]の炭素H(34.7ppm付近で共鳴)及びI(35.0ppm付近で共鳴)のピーク面積の和の1/2より評価できる。
炭素A”に基づくピーク面積は、炭素L(27.7ppm付近で共鳴)のピーク面積の和により評価できる。
炭素Bに基づくピーク面積は、炭素J(34.1ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価できる。
また、炭素B’に基づくピーク面積は、炭素K(33.5ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価できる。
炭素Qに基づくピーク面積は、炭素S(30.8ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価できる。
炭素Q’に基づくピーク面積は、炭素R(31ppm付近で共鳴)のピーク面積により評価できる。
以上により、mm、mr+rmおよびrrのピーク面積を評価することができるので、上記数式(I)に従って、プロピレン単位を中心として頭−尾結合からなる3連鎖部のmm分率を求めることができる。
異種結合(2,1結合と1,3結合)量
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、特性(1)〜(3)を有する他に、さらに、異種結合(2,1結合と1,3結合)量に関して下記の特性を有することが好ましい。
異種結合の量が少ないと、他のポリプロピレンや基材に混合または塗布した場合にその混合効率が上がったり、コーティングの効率が良くなったり、さらにコーティング剤として剥がれにくくなる等の特性が生じてくる。
また、プロピレンの規則性(立体/位置)が高くなりすぎないように制御することにより、溶媒への可溶性を高め、末端ビニルの反応性を高めることができる。
したがって、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の異種結合量は13C‐NMRにより算出される2,1結合が0.2mol%以下かつ1,3結合が0.2mol%以下となることが好ましく、2,1結合は、より好ましくは0.15mol%以下、さらに好ましくは0.12mol%以下、特に好ましくは0.10mol%以下がよく、1,3結合は、より好ましくは0.15mol%以下、さらに好ましくは0.12mol%以下、特に好ましくは0.10mol%以下がよい。
異種結合の量は、触媒の調整方法や重合の種類、添加する水素の量、コモノマー種、コモノマーの量によって制御することが可能であるが、その方法は、同時に、数平均分子量(Mn)や[Vi]、[Vd]、mm分率、分岐の量にも影響を及ぼす。分岐状プロピレン−コモノマー共重合体は、バルク重合を用い重合温度を75℃以上で重合することで得ることができるが、中でも触媒の調製方法において錯体の種類を適切に選択することにより、異種結合の量を制御することが可能である。
具体的には、後述の触媒成分(a)の一般式(a−1)上のR11〜R14(インデン上の2位または4位)をより嵩高くすることで異種結合の量を減少させることができる。
2,1−結合量(2,1−挿入による異種結合量)は、以下の式に従って求める。
Figure 0006866813
ただし、上記式中の記号は、以下を意味する。
αβ(i):構造式(5−a)に含まれるαβメチレン炭素(構造図中の炭素G)に由来するピーク面積であり、36.0ppm付近に観測される。
αβ(ii):構造式(5−b)に含まれるメチレン炭素(構造図中の炭素H及び炭素I)に由来するピーク面積であり、34.8ppm付近に2本観測される。
αβ(iii):構造式(5−c)に含まれるメチレン炭素(構造図中の炭素N及び炭素O)に由来するピーク面積であり、34.9ppm付近に2本観測される。
αα:1,2−結合したプロピレン2連鎖にはさまれたメチレン炭素に由来するピーク面積であり、45.5〜47.0ppm付近に生じる。
αγ+αδ:メチン炭素に直接結合、かつ直接結合したメチン炭素とは反対側の最隣接メチン炭素の位置がγ位またはそれより先であるメチレン炭素(例えば、構造式(5−d)の炭素Lと炭素Mの間のメチレン炭素)に由来するピーク面積であり、37.2〜38.4ppm付近に生じる。
βγ:構造式(5−d)のメチレン炭素Lに由来するピーク面積であり、27.7ppm付近に生じる。
1,3−結合量(1,3−挿入による異種結合量)は、以下の式に従って求める。
Figure 0006866813
(ただし、上式中の記号の意味は前記したとおりである。)
異種結合(1,4結合)量
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、特性(1)〜(3)を有する他に、さらに、異種結合(1,4結合)量に関して下記の特性を有することが好ましい。
異種結合(1,4結合)は、ブテンが挿入した後に不規則に位置異性化反応が起こった結果できる構造である。また異種結合(1,4結合)は、形式上エチレン挿入が2回連続でおこったものと同じ構造となる。そこで、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体がプロピレンの規則性と結晶化度の最適な関係をみたすことにより上記同様の効果を有するためには、この異種結合(1,4結合)量は少ない方がよく、好ましくは0.1mol%以下であり、より好ましくは0.05mol%であり、さらに好ましくは実質無いことがよい。
特性(4):示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)が150℃以下であることが好ましい。
融点が高くなるほど、結晶の厚みは厚くなる。
ポリプロピレン中でプロピレンの規則性(立体/位置)が高くなるほど、それ自身の耐熱性や剛性が向上するだけでなく、他のポリプロピレンや基材に混合または塗布した場合にその混合効率が上がったり、コーティングの効率が良くなったり、さらにコーティング剤として剥がれ難くなる特性が生じてくる。
また、プロピレンの規則性(立体/位置)が高くなりすぎないように制御することにより、溶媒への可溶性を高め、末端ビニルの反応性を高めることができる。
したがって、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の融点は、150℃以下が好ましく、より好ましくは148℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の融点は、110℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。
本発明においては、セイコー社製高感度示差走査熱量計(DSC−6200)を用い、試料5.0mgを採り、200℃まで加熱し5分間保持した後、20℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を融点(Tm)とする。(単位:℃)。
融点(Tm)の制御
挿入したプロピレンの規則性(立体/位置)が高くなるほど、またアイソタクチック連鎖長が長くなるほど、融点は高くなる。
したがって、融点は立体規則性、位置規則性、アイソタクチック連鎖長、異種結合量、その他、コモノマー種やコモノマー量、コモノマー分布により制御する。
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の融点を得る為に、立体規則性、位置規則性、アイソタクチック連鎖長、異種結合量の最適な錯体を選定し、さらに、重合温度圧力の調整、重合中にブテン、エチレン等のコモノマーを挿入すること等で融点を制御することができる。
特性(5)プロピレン以外のコモノマー
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、1.5mol%以上のコモノマーを含むことが好ましい。
コモノマーは、規則的(立体/位置)に挿入したプロピレン連鎖の中に入って1次構造を変える。その1つの結果として、融点に代表される結晶性を下げるという効果を持つ。
したがって、コモノマー含量が小さくなりすぎないように制御することにより、結晶性が高くなりすぎず、溶媒への可溶性を高め、末端ビニルの反応性を高めることができる。
一方、コモノマー含量が高くなり過ぎないように制御することにより、規則的(立体/位置)に挿入したプロピレン連鎖が短くなり過ぎず、他のポリプロピレンや基材に混合または塗布した場合にその混合効率を向上させ、コーティングの効率を向上させ、コーティング剤として剥がれ難くすることができる。
コモノマーの種類としては、エチレン、1−ブテン、炭素数5〜8のアルケンである。
コモノマー含量によるアイソタクチック連鎖長と結晶性のバランスを良くする観点から、コモノマーは、炭素数4〜8のα−オレフィンであることが好ましく、1−ブテンがより好ましい。またコモノマーとしては2種類以上を用いてもよい。
1−ブテンを用いた場合に、好ましいブテン含量は1.5mol%以上、より好ましくは1.8mol%以上であり、さらに好ましくは1.9mol%以上である。
また、アイソタクチック連鎖長と結晶性のバランスを良くする為には、好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは7mol%以下であり、さらに好ましくは5mol%以下である。
[コモノマー含量の測定]
13C−NMRによるエチレン含有量の測定、および13C−NMRによる1−ブテン含有量の測定は、上記のNMRと同様の測定を行い、得られたピークからJ.Appl.Polym.Sci.80,2001,1880−1890.に従いコモノマー含量を計算する。
特性(6):Mw/Mn
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体のGPC測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、2.0以上、4.0以下の範囲であることが好ましい。
Mw/Mnが4.0以下であると、必要としない低分子量成分の量を減少させられ、満足する物性のものが得られる。
また、Mw/Mnが2.0以上であると、所望の量の高分子量成分が得られ、結晶構造由来の物性と反応性に由来する機能性のバランスが良くなる。
また、Mw/Mnは、より好ましくは2.3以上、3.5以下であり、さらに好ましくは2.4以上、3.0以下である。
2.プロピレン−コモノマー共重合体の製造方法
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体を製造する方法については、前記を満たすプロピレン−コモノマー共重合体が得られる方法であればよく、特に制限はないが、下記触媒成分(a)、(b)、(c)を用いて、プロピレンとコモノマーを共重合すること、また、重合方法としては、プロピレンを溶媒として用いるバルク重合または各モノマーをガス状に保つ気相重合を行うことにより、本発明の特性を有するプロピレン−コモノマー共重合体を製造することができる。
(1)触媒
成分(a):
本発明に好ましく用いられる触媒成分(a)は、下記一般式(a−1)で表されるハフニウムを中心金属とするメタロセン化合物である。
Figure 0006866813
[一般式(a−1)中、R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含有する複素環基を示す。
また、R13およびR14は、独立して、炭素数6〜16のケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、及び、リンからなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子並びにハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有してもよいアリール基、又は、炭素数6〜16の窒素、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含有する複素環基を表す。
11及びY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表す。
11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよい、シリレン基またはゲルミレン基を表す。]
上記R11およびR12の炭素数4〜16の窒素、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含有する複素環基は、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基、置換された2−ピロリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
複素環基上に適当な大きさの置換基を導入することにより、挿入されるプロピレンの向きが規則的に制御される。更に、この置換基により成長ポリマー鎖のβ位のメチル基が遷移金属上の空配位場へ向きやすくなり、成長ポリマー鎖との相対的な位置関係を適切にすることにより、βメチル脱離反応が進行しやすくなり、本発明に規定する末端にビニル基を高選択的に導入した末端ビニル基含有プロピレン−コモノマー共重合体を得ることができる。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基、置換された2−ピロリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i(iso)−ブチル基、t(tert)−ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、5−メチル−2−フリル基、5−t−ブチル−2−フリル基である。
また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14は、独立して、炭素数6〜16のケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、及び、リンからなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子並びにハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有してもよいアリール基、又は、炭素数6〜16の窒素、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含有する複素環基である。
特に、R13とR14を、より嵩高くすることで、より立体規則性が高く、異種結合の少なく、末端ビニル基を含有するプロピレン−コモノマー共重合体を得ることができる。
ヘテロ原子としては、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リンなどが挙げられる。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子のいずれであってもよい。
また、R13とR14が互いに同一である場合が好ましい。
さらに、R13およびR14は、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、又は、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有するアリール基が好ましい。
そのようなR13およびR14の具体例としては、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジt−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基である。
また、R13およびR14において、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニリル基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。
また、アリール基がフェニル基の場合は、4位にのみ置換基を有することが好ましい。
そのようなR13およびR14の具体例としては、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基である。
また、βメチル脱離反応が進行しやすくなり、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体をより低分子量にするための錯体の選定方法として、R11およびR12の複素環上の置換基と、R13およびR14のアリール基の置換基の好ましい組み合わせとしては、複素環基の置換基と、アリール基の置換基とは同一ではなく、R13及びR14は、互いに同一であり、且つ、4位にのみ置換基を有するアリール基であって、当該複素環基の置換基のうち、炭素原子とヘテロ原子との合計数が最も大きい置換基の当該合計数が、当該アリール基の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数よりも大きい。
すなわち、複素環基(R11およびR12)上に同一でない複数の置換基が存在する場合(例えば、複素環基上の4位及び5位に互いに構造の異なる置換基を有する場合)、各置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数が最大の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数と、アリール基上の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数とを比較したときに、複素環基上の炭素原子とヘテロ原子との合計数が最大の置換基が有する当該合計数の方が、アリール基上の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数よりも大きいことが好ましい。
なお、複素環基上に置換基が1つのみ存在する場合は、当該置換基が、上記合計数が最大の置換基である。また、複素環基の置換基及びアリール基の置換基がヘテロ原子を有しない場合があってもよく、ヘテロ原子を有しない場合は、当該ヘテロ原子数は0個とする。さらに、アリール基の置換基が炭素原子を有しない場合があってもよく、炭素原子を有しない場合は、当該炭素原子数は0個とする。
好ましい具体例としては、複素環基であるR11およびR12上の置換基がt−ブチル基(炭素原子4個とヘテロ原子0個で合計数が4)であり、アリール基であるR13およびR14上の4−位の置換基がi−プロピル基(炭素原子3個とヘテロ原子0個で合計数が3)である。
上記X11およびY11は、補助配位子であり、成分(b)と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX11及びY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表す。
上記Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよい、シリレン基またはゲルミレン基を表す。上述のシリレン基、またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記Q11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
上記一般式(a−1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(20)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル)]ハフニウム、
(21)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル)]ハフニウム、
(22)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル)]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−インデニル}]ハフニウム、
(24)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(26)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(27)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(28)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(29)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(30)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{(2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル)}ハフニウム、
(31)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(32)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(33)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(34)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム
(35)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム
(36)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−4−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム
などを挙げることができる。
これらのうち、さらに好ましいのは、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−インデニル}]ハフニウム、
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(34)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム
である。
また、特に好ましいのは、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(34)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム
である。
成分(b):
次に、本発明に好ましく用いられる触媒成分(b)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(I)イオン交換性層状珪酸塩の種類
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出され、水中に分散/膨潤させ、沈降速度等の違いにより精製することが一般的であるが、完全に除去することが困難であることがあり、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)を含んでいることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、成分(b)に含まれる。
また、本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
また、本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩も、イオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1988年)等に記載される1:1型構造や2:1型構造をもつ層状珪酸塩が挙げられる。
1:1型構造とは、前記「粘土鉱物学」等に記載されているような1層の四面体シートと1層の八面体シートが組み合わさっている1:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示し、2:1型構造とは、2層の四面体シートが1層の八面体シートを挟み込んでいる2:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示す。
1:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族珪酸塩、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族珪酸塩等が挙げられる。
2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらの中では、主成分が2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩であるものが好ましい。より好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されないが、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属、あるいは鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属などが、工業原料として比較的容易に入手可能である点で好ましい。
(II)イオン交換性層状珪酸塩の処理
前記イオン交換性層状珪酸塩は、乾燥状態で用いてもよく、液体にスラリー化した状態で用いてもよい。また、イオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。
(II−i)造粒、粉砕、分級
このうち造粒されたイオン交換性層状珪酸塩を用いると、該イオン交換性層状珪酸塩を触媒成分として用いた場合に、良好なポリマー粒子性状を与えるため特に好ましい。
ここで用いられる造粒法としては、例えば、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられるが、特に限定されない。好ましくは、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、流動造粒法が挙げられ、特に好ましくは撹拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられる。
なお、噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液中における成分(b)の濃度は、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
造粒において、粒子強度の高い担体を得るため、及び、重合活性を向上させるためには、珪酸塩を必要に応じ微細化する。珪酸塩は、如何なる方法において微細化してもよい。
微細化する方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕いずれの方法でも可能である。好ましくは、水を分散媒として使用し珪酸塩の膨潤性を利用した湿式粉砕であり、例えば、ポリトロン等を使用した強制撹拌による方法やダイノーミル、パールミル等による方法がある。造粒する前の平均粒径は、0.01〜3μm、好ましくは0.05〜1μmである。
また、造粒の際に有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール等が挙げられる。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉発生を抑制するためには、0.2MPa以上の圧縮破壊強度を有することが好ましい。また、造粒されたイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmの範囲である。粉砕法についても特に制限はなく、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれでもよい。
(II−ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に好ましく用いられる触媒成分(b)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を行うことが望ましく、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、酸類、塩類、アルカリ類、有機物等とイオン交換性層状珪酸塩とを接触させることをいう。
化学処理による共通の影響として、層間陽イオンの交換を行うことが挙げられるが、それ以外に各種化学処理は、次のような種々の効果がある。例えば、酸類による酸処理によれば、珪酸塩表面の不純物が取り除かれる他、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって、表面積を増大させることができる。これは、珪酸塩の酸強度を増大させ、また、単位質量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。
アルカリ類によるアルカリ処理では、粘土鉱物の結晶構造が破壊され、粘土鉱物の構造の変化をもたらす。
以下に、処理剤の具体例を示す。なお、本発明では、以下の酸類、塩類を予め組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。これら酸類、塩類の複数の処理剤の逐次処理を各種の組み合わせで行ってもよい。
(II−ii−1)酸類
酸処理は、表面の不純物を除く、あるいは層間に存在する陽イオンの交換を行うほか、結晶構造の中に取り込まれているAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピオン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、などが挙げられる。中でも無機酸が好ましく、硫酸、塩酸、硝酸が好ましく、さらに好ましくは硫酸である。
(II−ii−2)塩類
塩類としては、有機陽イオン、無機陽イオン、金属イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、無機陰イオン、ハロゲン化物イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期律表第1〜14族から選択される少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。
このような塩類の具体例としては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、LiNO、Li(OOCCH)、NaCl、NaBr、NaSO、Na(PO)、NaNO、Na(OOCCH)、KCl、KBr、KSO、K(PO)、KNO、K(OOCCH)、CaCl、CaSO、Ca(NO、Ca(C、MgCl、MgSO、Mg(NO、Mg(C、Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、TiBr、TiI、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl等が挙げられる。
また、Cr(OOCCHOH、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrOCl、CrF、CrCl、CrBr、CrI、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl、MnBr、FeI、FeC、Co(OOCCH等が挙げられる。
さらに、CuCl、CuBr、Cu(NO、CuC、Cu(ClO、CuSO、Cu(OOCCH、Zn(OOCCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO等が挙げられる。
これらのなかで好ましくは、陰イオンが無機ブレンステッド酸の陰イオン、又は、ハロゲンからなり、陽イオンがLi、Mg、又は、Znからなる化合物である。
そのような塩類で特に好ましい化合物は、具体的にはLiCl、LiSO、MgCl、MgSO、ZnCl、ZnSO、Zn(NO、Zn(POである。
(II−ii−3)その他の処理剤
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いるアルカリ類としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
有機物処理で用いる有機物としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,5−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルオクタデシルアンモニウム、オクタドデシルアンモニウムなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また、化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
(II−ii−4)化学処理条件
上述した各種処理剤は、適当な溶剤に溶解させて処理剤溶液として用いてもよいし、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。使用できる溶剤としては、特に制限はないが、水、アルコール類が一般的であり、特に水が好ましい。例えば、化学処理を行う場合、処理剤濃度、イオン交換性層状珪酸塩と処理剤との比率、処理時間、処理温度等の処理条件を制御することによって、イオン層状珪酸塩化合物を、性能を発現するのに好ましい任意の組成、構造へと変化させ制御することが可能である。
イオン交換性層状珪酸塩と処理剤との比率に関しては、特に限定されないが、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩[g]:処理剤[mol]=1:0.001〜1:0.1程度である。
また、処理温度は、室温〜処理剤溶液の沸点の範囲が好ましく、処理時間は5分〜24時間の条件を選択し、イオン交換性層状珪酸塩を構成している物質の少なくとも一部が除去又は交換される条件で行うことが好ましい。処理条件は、特には制限されないが、処理温度は80℃から、処理剤溶媒沸点以下で、処理時間は0.5時間以上5時間未満にすることが好ましい。
酸処理における処理剤濃度に関しては、下式を満たす酸濃度(N)の酸で処理することが好ましい。
N≧1.0
ここで示す酸濃度Nは、酸のモル数×酸の価数/酸水溶液の体積(単位:モル/リットル)と定義する。ただし、塩を共存させたときには、塩化合物に含まれる結晶水量は考慮するが、塩による体積変化は考慮しないものとする。なお、酸水溶液の比重は、化学便覧の基礎編IIp6(日本化学会編集,丸善発行,改訂3版)を引用した。なお、上限は取り扱い上の安全性、容易性、設備面の観点から、酸濃度Nが、20以下、特に15以下であることが好ましい。
(III)イオン交換性層状珪酸塩の乾燥
イオン交換性層状珪酸塩の洗浄処理は、上記化学処理を実施した後に、過剰の処理剤及び処理により溶出したイオンの除去をすることが可能であり、好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。
脱水後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は、100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能である。800℃を超えると、珪酸塩の構造破壊を生じるおそれがあるので好ましくない。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
造粒、粉砕、分級などのイオン交換性層状珪酸塩の形状の加工は、化学処理の前に行ってもよい(すなわち、あらかじめ形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩に上記の化学処理を行ってもよい)し、化学処理を行った後に形状を加工してもよい。
(IV)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理後の組成
本発明に好ましく用いられる触媒成分(b)は、化学処理されたイオン交換性層状珪酸塩であり、Al/Siの原子比として、0.01〜0.25、好ましくは0.03〜0.24、さらには0.05〜0.23の範囲のものがよい。Al/Si原子比は、粘土部分の酸処理強度の指標となるものとみられる。また、上記の範囲にAl/Si原子比を制御する方法としては、化学処理前のイオン交換性層状珪酸塩として、モンモリロナイトを使用し、上記「(II−ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理」に記載の化学処理をおこなう方法が挙げられる。
イオン交換性層状珪酸塩中のアルミニウム及びケイ素は、JIS法による化学分析による方法で検量線を作成し、蛍光X線で定量するという方法で測定される。
成分(c):
本発明に好ましく用いられる触媒成分(c)は、有機アルミニウム化合物であり、好ましくは、一般式:(AlR3−nで表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の、mは1〜2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
(2)触媒の調製
本発明に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒は、上記成分(a)、成分(b)及び成分(c)を含む。これらは、重合槽内で、あるいは重合槽外で接触させオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。
本発明で使用する成分(a)、成分(b)及び成分(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜1×10、の範囲内が好ましい。
前記成分(a)、成分(b)及び成分(c)を接触させる順番は、任意であり、これらのうち2つの成分を接触させた後に残りの1成分を接触させてもよいし、3つの成分を同時に接触させてもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素の例として、具体的にはヘキサン、ヘプタン、トルエン等が挙げられる。また、予備重合モノマーとしては、プロピレンを溶媒として用いることができる。
(3)予備重合
本発明に好ましく用いられる触媒は、オレフィン重合用触媒にオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付されることが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができ、好ましくはプロピレンである。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、成分(b)に対する予備重合ポリマーの質量比が好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に成分(c)を添加、又は追加することもできる。
上記各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いても良いし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
(4)重合方法
重合形態は、前記オレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。
また、重合方式は、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
また、重合段数は、本発明の物質を製造できるのであれば特に制限はないが、1段でもよく、バルク重合2段、バルク重合後気相重合、気相重合2段といった様式も可能であり、さらにはそれ以上の重合段数で製造することが可能である。
しかしながら、プロピレンを溶媒として用いるバルク重合、または各モノマーをガス状に保つ気相重合を行うことにより、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体を製造することが好ましい。
プロピレンを溶媒として用いるバルク重合法の場合は、重合温度は、0〜80℃であり、好ましくは60〜80℃であり、さらに好ましくは65〜75℃である。重合圧力は、0〜5MPaG、好ましくは0〜4MPaGが適当である。
気相重合の場合は、重合温度は、0〜200℃であり、好ましくは60〜120℃であり、さらに好ましくは70〜100℃である。重合圧力は、0〜4MPaG、好ましくは0〜3MPaGが適当である。
さらに、活性向上効果のために、補助的に水素を用いることができる。通常水素は、連鎖移動剤として機能して、飽和末端を生成するが、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体の製造法では、驚くべきことに水素を加えても、依然ビニル末端割合が高いまま保たれる。しかも水素を加えることにより、活性が向上する。
3.プロピレン−コモノマー共重合体の用途
本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、必要に応じて、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、着色剤、無機質または有機質の充填剤等の各種添加剤、さらには種々の合成樹脂を配合した後、溶融混練機を用いて加熱溶融混練後、さらに粒状に切断されたペレットとすることが可能である。
また、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、ビニル末端構造を高い割合で含有するように末端構造を高度に制御したプロピレン−コモノマー共重合体であるので、その特性により、マクロマー、塗料、プライマー、表面改質材、コーティング材の原料等、として用いることができる。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の方法に従ったものである。
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K6758のポリプロピレン試験方法のメルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って、測定した。単位はg/10分である。
(2)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、上記本明細書記載の方法で、測定した。
(3)mm分率:
日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、上記本明細書記載の方法で測定した。単位は%である。
(4)エチレン、ブテン含量の測定:
13C−NMRにより検量線を作成し、IRを用いてプロピレン−コモノマー共重合体中のエチレン、ブテン含量を測定した。
(5)組成分析:
イオン交換性層状珪酸塩の組成は、JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線により測定した。
(6)融点(Tm):
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して、結晶化させた時の結晶最大ピーク温度(℃)として、結晶化温度(Tc)を求め、その後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として融点(Tm)を求めた。
(7)溶解性試験
本発明は、規則性(立体/位置)が高いにもかかわらず溶解性がよいプロピレン−コモノマー共重合体を提供するものであり、溶解性とは溶媒への溶解しやすさを意味する。
この溶解性は、溶媒として熱p−キシレンを選び、ポリマーのどのくらいはやく完全に溶解するかという方法で評価した。
熱p−キシレンへの溶解性の測定方法は、以下の通りである。
還流器および攪拌機を備えた500mlのフラスコを窒素置換した後に、p−キシレンを300ml導入し、攪拌しながら、オイルバスを用いて140℃まで加熱し保持する。
そこへ、評価用ポリマーをパウダーの状態で5g一気に導入する。導入が終わった時点からフラスコ中が完全に透明になって溶解するまでの時間を測定することで共重合体の溶解時間を計測する。この透明になるまでの時間が短いほど溶解性がよいことを意味する。
[実施例1]
(1)rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成:
(1−1)ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}シランの合成:
1000mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)インデン(22g、66mmol)、THF(200ml)を加え、−70℃まで冷却した。ここにn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(42ml、67mmol、1.60mol/L)を滴下した。滴下後、徐々に室温まで戻しながら3時間攪拌した。再び−70℃まで冷却し、1−メチルイミダゾール(0.3ml、3.8mmol)を加え、ジメチルジクロロシラン(4.3g、33mmol)を含むTHF溶液(100ml)を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜攪拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄した。ここに硫酸ナトリウムを加え一晩放置し反応液を乾燥させた。無水硫酸ナトリウムをろ過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}シランの淡黄色固体(22g、収率92%)を得た。
(1−2)rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成:
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}シラン9.6g(13.0mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液16ml(26mmol)を滴下した。滴下後、室温に戻し3時間攪拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン250ml、ジエチルエーテル10mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.2g(13.0mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜攪拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムのラセミ体(純度99%以上)を黄橙色結晶として1.3g(収率22%)得た。
(2)触媒の調製:
(2−1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理:
セパラブルフラスコ中で蒸留水3456gに96%硫酸(1044g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)600gを加えた。このスラリーを0.5℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で120分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水2400g加えた後にろ過したところケーキ状固体1230gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム648g、蒸留水1800gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入し、さらに蒸留水522gを加えた。このスラリーを0.5℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で120分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水1980g加えた後にろ過し、さらに蒸留水でpH3まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体1150gを得た。
得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに215℃、窒素気流下、滞留時間10分の条件でロータリーキルン乾燥することにより、化学処理スメクタイト340gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:7.81質量%、Si:36.63質量%、Mg:1.27質量%、Fe:1.82質量%、Li:0.20質量%であり、Al/Si=0.222[mol/mol]であった。
(2−2)予備重合:
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記(2−1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理で得られた化学処理スメクタイト10gを入れ、ヘプタン(65mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を35mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、トルエン(60mL)にrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.3mmol)を加えてスラリー溶液とした。
先ほどの化学処理スメクタイトが入った3つ口フラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.6mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を1.7mL)を加えた後、上記スラリー溶液を加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後、ヘプタンを340mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし2時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、50℃で0.5時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、予備重合触媒30gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.50であった。
(3)重合:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを投入し、1−ブテン15g、液体プロピレン720gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、上記予備重合触媒(表1において、触媒1と表記する)を、予備重合ポリマーを除いた質量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約116gの共重合体が得られた。
得られた共重合体の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で合成した予備重合触媒を用い、下記の重合を行った。
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを投入し、1−ブテン30g、液体プロピレン690gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、実施例1で合成した予備重合触媒を、予備重合ポリマーを除いた質量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約140gの共重合体が得られた。
得られた共重合体の評価結果を表1に示す。なお、本明細書において、表1中の「trace」は定量限界以下を示し、0として扱った。
[実施例3]
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウムを、特開2009−299046の実施例13の(1)の方法に従って合成した。
(2)触媒の調製:
(2−a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理:
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lの3つ口フラスコに、蒸留水645.1gと98%硫酸82.6gを加え、95℃まで昇温した。
そこへ市販のモンモリロナイト(水澤化学工業社製ベンクレイKK、Al=9.78質量%、Si=31.79質量%、Mg=3.18質量%、Al/Si(モル比)=0.320、平均粒径14μm)100gを添加し、95℃で320分反応させた。320分後、蒸留水0.5Lを加えて反応を停止し、濾過することでケーキ状固体物255gを得た。
このケーキ1gには、0.31gの化学処理モンモリロナイト(中間物)が含まれていた。化学処理モンモリロナイト(中間物)の化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量% Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222であった。
上記ケーキに蒸留水1545gを加えスラリー化し、40℃まで昇温した。水酸化リチウム・水和物5.734gを固体のまま加え、40℃で1時間反応させた。1時間後、反応スラリーを濾過し、1Lの蒸留水で3回洗浄し、再びケーキ状固体物を得た。
回収したケーキを乾燥したところ、化学処理モンモリロナイト80gを得た。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%であった。
(2−b)予備重合:
1Lの3つ口フラスコに、得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン131mLを加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を69mL)を加えて1時間攪拌した。1時間後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、全容量を100mLとした。
この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液を50℃に保ち、そこへトリノルマルオクチルアルミニウム4.2mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を10.7mL)を加えて20分間撹拌した。
そこへ、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム0.3mmol(トルエン50mLでスラリーとしたもの)を加えて、50℃に保ちながら20分間撹拌した。
その後ヘプタン350mLを追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃のまま1時間残重合を行った。
得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、再びヘプタンを加えてデカンテーションすることにより予備重合触媒の洗浄をおこなった。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を16.6mL)を加えて10分間攪拌した。この固体を40℃で2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒54.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.70であった。この予備重合触媒を触媒2とした。
(3)重合:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを投入し、1−ブテン30g、液体プロピレン690gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、上記予備重合触媒(表1において、触媒2と表記する)を、予備重合ポリマーを除いた質量で160mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約268gの共重合体が得られた。
得られた共重合体の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成:
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウムを、特開2009−299046の実施例13および特開2009−91512の実施例1の方法に準じて合成した。
(2)触媒の調製:
実施例3の(2−b)予備重合において、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウムに替えて、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−−2−フリル)−4−(4−i−プロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.3mmol)を使用する以外は同様の操作を行った。
その結果、乾燥予備重合触媒34.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.70であった。この予備重合触媒を触媒3とした。
(3)重合:
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを投入し、1−ブテン30g、液体プロピレン690gを導入した後、75℃まで昇温した。
その後、上記予備重合触媒(表1において、触媒3と表記する)を、予備重合ポリマーを除いた質量で160mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約216gの共重合体が得られた。
得られた共重合体の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例4(3)重合において、1−ブテン30g、液体プロピレン690gを導入した後に80℃まで昇温し、その後、80℃で1時間保持する以外は同様の重合をおこなった。そうしたところ約68gの共重合体が得られた。
得られた共重合体の評価結果を表1に示す。
Figure 0006866813
表1に示すように、実施例1の溶媒への溶解時間は8分であり、実施例2〜5の溶媒への溶解時間は6分であった。
したがって、本発明のプロピレン−コモノマー共重合体は、溶媒可溶性が高いことが確認された。
また、触媒3を用いて得た実施例4〜5のプロピレン−コモノマー共重合体は、実施例1〜3のプロピレン−コモノマー共重合体と比較して数平均分子量(Mn)がさらに低いものであることが確認された。
さらに、同じ触媒(触媒3)を用いて得た実施例4と実施例5のプロピレン−コモノマー共重合体を比較すると、重合温度を高くすることによって、得られるプロピレン−コモノマー共重合体の数平均分子量を低下させられることが確認された。
また、実施例1〜5のプロピレン−コモノマー共重合体の末端ビニル率は0.76以上であり、反応性が高いプロピレン−コモノマー共重合体が得られたことが確認できた。
さらに、触媒3を用いて得た実施例4〜5のプロピレン−コモノマー共重合体は、実施例1〜3のプロピレン−コモノマー共重合体と比較して末端ビニル率がさらに高いものであることが確認され、触媒3を用いることによりプロピレン−コモノマー共重合体の反応性をより高めることができた。
また、同じ触媒(触媒3)を用いて得た実施例4と実施例5のプロピレン−コモノマー共重合体を比較すると、重合温度を高くすることによって、得られるプロピレン−コモノマー共重合体の末端ビニル率を向上させられることが確認された。

Claims (3)

  1. 下記(1)〜(3)の特性を有することを特徴とするプロピレン−コモノマー共重合体。
    特性(1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる数平均分子量(Mn)が5万以下。
    特性(2):全ポリマー鎖のうち末端にビニル基を持つ鎖の割合(末端ビニル率)が0.7以上。
    ここで、末端ビニル率は以下の式で表される。
    末端ビニル率=[Vi]/((総末端数)−LCB数)×2
    (式中、[Vi]は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニル基の数である。総末端数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数である。LCB数は、13C−NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素の数である。)
    特性(3):13C−NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上。
  2. さらに、下記(4)の特性を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン−コモノマー共重合体。
    特性(4):示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)は、150℃以下。
  3. さらに、下記(5)の特性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロピレン−コモノマー共重合体。
    特性(5):コモノマーは、炭素数4以上のα−オレフィンであり、コモノマー含量は、1.5mol%以上。
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