図1は、本発明の実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1を示す図である。また、図2は、図1に示す切除ガイド部2の正面図である。また、図3(A)は、図2に示す切除ガイド部2の斜視図、図3(B)は、図2に示す切除ガイド部2を図3(A)とは別の方向から視た斜視図である。また、図4は、切除ガイド部2が左足の大腿骨遠位端101に基準位置で固定された状態を示す図である。また、図5(A)は、図4に示す状態から角度調整ピン6を内旋孔16に差し込み且つ固定ピン5を抜き取った状態を示す図、図5(B)は、図5(A)に示す状態から切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外した後、角度調整ピン6が基準孔15に挿入されるように切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付けた状態を示す図、である。また、図6(A)は、図4に示す状態から角度調整ピン6を外旋孔17に差し込み且つ固定ピン5を抜き取った状態を示す図、図6(B)は、図6(A)に示す状態から切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外した後、角度調整ピン6が基準孔15に挿入されるように切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付けた状態を示す図、である。
なお、以下で説明する各図について、説明の便宜上、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、右と記載された矢印が指示する方向を右側、左と記載された矢印が指示する方向を左側、と称する。また、図2,3,4,11〜16における上下方向、前後方向、及び左右方向は、それぞれ、患者の人体の上下方向、前後方向、及び左右方向に対応する。なお、図7から図9における上下方向、前後方向、及び左右方向は、図7に示す屈曲スペーサ3、及び図8,9に示すアングルスペーサ4の形状を説明するためのものであり、他の図の上下方向、前後方向、及び左右方向とは対応しない。
また、以下では、本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1が有する切除ガイド部2が左足の大腿骨遠位端101に固定されて使用される例を挙げて説明する。しかしながら、右足の大腿骨遠位端に対しても同様に使用することができる。
本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、人工膝関節置換術で用いられる。人工膝関節置換術とは、例えば変形性膝関節症や慢性関節リウマチ等により膝関節が高度に変形した患者の膝関節を人工膝関節へ置換する手術である。
[人工膝関節置換術用手術器具の構成及び使用方法の概要]
本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、図1を参照して、切除ガイド部2と、屈曲スペーサ3と、複数のアングルスペーサ4とを備えている。
人工膝関節置換術では、図4を参照して、大腿骨100の遠位側の端部である大腿骨遠位端101に、大腿骨コンポーネントの設置面としての骨切り面101aが形成される。そして、術前計画に基づき、その骨切り面101aに対して切除ガイド部2が設置され、固定ピン5によって大腿骨遠位端101に固定される(図4参照)。その後、術者は、屈曲位における患者の内外側の靭帯のバランスを確認する。具体的には、術者は、図11及び図12を参照して、大腿骨遠位端101に固定された状態における切除ガイド部2と、脛骨110の近位側の端部である脛骨近位端111との間に、屈曲スペーサ3を単独で挟み込むことにより、或いは屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を挟み込むことにより、内外側の靭帯バランスの確認を行う。
このとき、内外側の靭帯バランスが適切である場合には、術者は、切除ガイド部2に設けられた各スリット12,13,14a,14bに沿って、大腿骨遠位端101における各部位を切除する。これにより、大腿骨コンポーネントが設置される設置面を適切に形成することができる。
しかしながら、内外側の靭帯バランスがとれていない場合、術前計画で設定した切除ガイド部2の取り付け位置を大腿骨遠位端101に対して内旋方向又は外旋方向へ回旋させた方が好ましい場合がある。
この点につき、本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1では、従来のような煩雑な作業を伴うことなく、人工膝関節置換術用手術器具1を容易に回旋させることができる。以下では、この人工膝関節置換術用手術器具1の構成、及びその使用方法について詳しく説明する。
[切除ガイド部の構成]
切除ガイド部2は、大腿骨遠位端101に設置される。人工膝関節置換術においては、人工膝関節の大腿骨コンポーネントが大腿骨100に設置される際には、まず、大腿骨遠位端101の一部が切除される。これにより、大腿骨遠位端101において、大腿骨100の長手方向に対して略垂直に広がる骨切り面101a(図4参照)が形成される。
上記のように骨切り面101aが形成された後、切除ガイド部2が、術前計画に基づいて骨切り面101aに設置される(図4参照)。術者は、このようにして設置された切除ガイド部2によって大腿骨遠位端101が切除された場合に内外側の靭帯バランスが適切なものとなるか否かを、詳しくは後述する屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を用いて確認する。
切除ガイド部2は、図2及び図3を参照して、上下方向に厚みを有するブロック状に形成されている。切除ガイド部2は、本体部11及び固定部20を有し、これらが一体に形成されている。本体部11は、切除ガイド部2を上下方向から視た場合における該切除ガイド部2の中央部分を構成する部分であって、矩形状に形成されている。固定部20は、本体部11における左右両縁部のそれぞれから外側へやや延びるように形成された部分である。各固定部20には、前後方向に間隔を空けて2つの固定孔21が形成されている。切除ガイド部2は、患者の大腿骨遠位端101に固定される際、固定ピン5が固定孔21を介して大腿骨遠位端101に打ち込まれることにより、大腿骨遠位端101に対して固定される。
切除ガイド部2には、複数のスリット12,13,14a,14bが形成されている。具体的には、切除ガイド部2には、前側スリット12と、後側スリット13と、前側チャンファー用スリット14aと、後側チャンファー用スリット14bと、が形成されている。これら複数のスリット12,13,14a,14bは、大腿骨遠位端101を切除するボーンソー70(切除刃、図11及び図12において仮想線で図示)の切除方向をガイドするためのものである。
前側スリット12は、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101に設置された状態において、大腿骨遠位端101の前面側が切除される切除方向に沿って延びている。前側スリット12は、大腿骨遠位端101の前面側を切除するためのものである。前側スリット12は、図2及び図3に示すように、切除ガイド部2の本体部11における前側の部分に形成されている。前側スリット12は、左右方向に細長いスリット状に形成され、本体部11を上下方向において貫通している。前側スリット12の延出方向(左右方向)の中央位置は、前側中心点C1として設けられている。
後側スリット13は、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101に設置された状態において、大腿骨遠位端101の後面側が切除される切除方向に沿って延びている。後側スリット13は、大腿骨遠位端101の後面側を切除するためのものである。後側スリット13は、図2及び図3に示すように、切除ガイド部2の後側の部分に形成されている。後側スリット13は、左右方向に細長いスリット状に形成され、本体部11を上下方向において貫通している。
前側チャンファー用スリット14aは、大腿骨遠位端101における前側の部分にチャンファー面を形成するためのものである。前側チャンファー用スリット14aは、図2及び図3に示すように、切除ガイド部2の前面中央部分から該切除ガイド部2の裏面における中央部分と左右両側とに向かって延びるように形成されている。前側チャンファー用スリット14aは、上下左右方向に延びる面に対して斜め方向に延びるスリット状に形成されている。
後側チャンファー用スリット14bは、大腿骨遠位端101における後側の部分にチャンファー面を形成するためのものである。後側チャンファー用スリット14bは、図2及び図3に示すように、前側チャンファー用スリット14aよりも後側であって、且つ切除ガイド部2の前後方向中央部分における左右両側に形成されている。後側チャンファー用スリット14bは、上下左右方向に延びる面に対して斜め方向に延びるスリット状に形成されている。
[基準孔、内旋孔、及び外旋孔について]
図2に示すように、切除ガイド部2の本体部11には、一対の基準孔15,15、一対の内旋孔16,16(回旋孔、第1回旋孔)、及び一対の外旋孔17,17(回旋孔、第1回旋孔)が形成されている。各孔15,16,17は、本体部11を上下方向に貫通する貫通孔であって、互いに異なる孔として構成されている。各孔15,16,17は、詳しくは後述する角度調整ピン6(ピン)が挿通可能な大きさ及び形状に形成されている。角度調整ピン6は、その横断面形状が円形状に形成されているため、各孔15,16,17は、その横断面形状が、角度調整ピン6の外径よりも僅かに大きい円形状に形成されている。
一対の基準孔15,15は、大腿骨遠位端101に切除ガイド部2が設置される際に角度調整ピン6が挿通される孔として構成されている。一対の内旋孔16,16は、術前計画に基づく切除ガイド部2の設置位置である基準位置に切除ガイド部2が配置された状態から、該切除ガイド部2を基準位置に対して内旋方向に回旋させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔である。一対の外旋孔17,17は、基準位置に切除ガイド部2が配置された状態から該切除ガイド部2を基準位置に対して外旋方向に回旋させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔である。
一対の基準孔15,15は、右側基準孔15R、及び左側基準孔15Lで構成されている。一対の内旋孔16,16は、右側内旋孔16R、及び左側内旋孔16Lで構成されている。一対の外旋孔17,17は、右側外旋孔17R、及び左側外旋孔17Lで構成されている。一対の基準孔15,15の中心点間の距離と、一対の内旋孔16,16の中心点間の距離と、一対の外旋孔17,17の中心点間の距離とは、互いに同じである。
右側基準孔15R、右側内旋孔16R、及び右側外旋孔17Rは、本体部11の前側における右側の部分に形成されている。
右側基準孔15Rは、本体部11の右側に設けられた3つの孔15R,16R,17Rのうちの左右方向の真ん中に形成された孔である。
右側内旋孔16Rは、右側基準孔15Rと間隔を空けて、該右側基準孔15Rよりも左側に形成されている。すなわち、右側内旋孔16Rは、本体部11の右側に設けられた3つの孔15R,16R,17Rのうち最も左側に設けられた孔である。右側内旋孔16Rの前後方向における位置は、右側基準孔15Rの前後方向における位置よりも、僅かに後側である。
右側外旋孔17Rは、右側基準孔15Rと間隔を空けて、該右側基準孔15Rよりも右側に形成されている。すなわち、右側外旋孔17Rは、本体部11の右側に設けられた3つの孔15R,16R,17Rのうち最も右側に設けられた孔である。右側外旋孔17Rの前後方向における位置は、右側基準孔15Rの前後方向における位置よりも、僅かに前側である。
左側基準孔15L、左側内旋孔16L、及び左側外旋孔17Lは、本体部11の前側における左側の部分に形成されている。
左側基準孔15Lは、本体部11の左側に設けられた3つの孔15L,16L,17Lのうちの左右方向の真ん中に形成された孔である。
左側内旋孔16Lは、左側基準孔15Lと間隔を空けて、該左側基準孔15Lよりも左側に形成されている。すなわち、左側内旋孔16Lは、本体部11の左側に設けられた3つの孔15L,16L,17Lのうち最も左側に設けられた孔である。左側内旋孔16Lの前後方向における位置は、左側基準孔15Lの前後方向における位置よりも、僅かに前側である。
左側外旋孔17Lは、左側基準孔15Lと間隔を空けて、該左側基準孔15Lよりも右側に形成されている。すなわち、左側外旋孔17Lは、本体部11の左側に設けられた3つの孔15L,16L,17Lのうち最も右側に設けられた孔である。左側外旋孔17Lの前後方向における位置は、左側基準孔15Lの前後方向における位置よりも、僅かに後側である。
一対の基準孔15R,15Lの位置と一対の内旋孔16R,16Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを、前側中心点C1を回旋中心として所定角度(本実施形態の場合、2度)内旋させ且つ左側へ少し移動させたときに、右側基準孔15Rと右側内旋孔16Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側内旋孔16Lとが一致する。言い換えれば、一対の内旋孔16R,16Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2を、前側中心点C1を回旋中心として2度内旋させ且つ左側へ少し移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
一方、一対の基準孔15R,15Lの位置と一対の外旋孔17R,17Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを、前側中心点C1を回旋中心として所定角度(本実施形態の場合、2度)外旋させ且つ右側へ少し移動させたときに、右側基準孔15Rと右側外旋孔17Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側外旋孔17Lとが一致する。言い換えれば、一対の外旋孔17R,17Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2を、前側中心点C1を回旋中心として2度外旋させ且つ右側へ少し移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
また、切除ガイド部2には、内旋指標マーキング18と、外旋指標マーキング19とが形成されている。
内旋指標マーキング18は、左側内旋孔16Lよりもやや左側に形成されたマーキングであって、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。本実施形態では、内旋指標マーキング18は、内旋角度マーキング18aと、内旋方向マーキング18bとで構成されている。内旋角度マーキング18aとしては、内旋孔16を用いて内旋可能な角度が記載されている。本実施形態に係る切除ガイド部2には、内旋角度マーキング18aとして、「2°」とマーキングされている。内旋方向マーキング18bは、内旋孔16を用いて内旋される内旋方向を指標している。本実施形態に係る切除ガイド部2には、内旋方向マーキング18bとして、反時計回り方向の矢印がマーキングされている。
外旋指標マーキング19は、右側外旋孔17Rよりもやや右側に形成されたマーキングであって、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。本実施形態では、外旋指標マーキング19は、外旋角度マーキング19aと、外旋方向マーキング19bとで構成されている。外旋角度マーキング19aとしては、外旋孔17を用いて外旋可能な角度が記載されている。本実施形態に係る切除ガイド部2には、外旋角度マーキング19aとして、「2°」とマーキングされている。外旋方向マーキング19bは、外旋孔17を用いて外旋される外旋方向を指標している。本実施形態に係る切除ガイド部2には、外旋方向マーキング19bとして、時計回り方向の矢印がマーキングされている。
また、切除ガイド部2には、内旋孔指示マーキング22及び外旋孔指示マーキング23が形成されている。
内旋孔指示マーキング22は、例えばレーザマーキングによって形成されている。内旋孔指示マーキング22は、右側内旋孔16R及び左側内旋孔16Lのそれぞれから後方へやや延びる第1直線22aと、一方の第1直線22aの先端から他方の第1直線22aの先端まで直線状に延びる第2直線22bとで構成されている。すなわち、内旋孔指示マーキング22は、一対の内旋孔16,16を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2に形成された複数の孔15,16,17のうちいずれが一対の内旋孔16,16であるかを一目で把握することができる。
外旋孔指示マーキング23は、例えばレーザマーキングによって形成されている。外旋孔指示マーキング23は、右側外旋孔17R及び左側外旋孔17Lのそれぞれから前方へやや延びる第1直線23aと、一方の第1直線23aの先端から他方の第1直線23aの先端まで直線状に延びる第2直線23bとで構成されている。すなわち、外旋孔指示マーキング23は、一対の外旋孔17,17を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2に形成された複数の孔15,16,17のうちいずれが一対の外旋孔17,17であるかを一目で把握することができる。
[屈曲スペーサ及びアングルスペーサの構成]
図7(A)は、屈曲スペーサ3の斜視図、図7(B)は屈曲スペーサ3を側方から視た図、である。また、図8は、アングルスペーサ4の斜視図であって、図8(A)は第1アングルスペーサ4aの斜視図、図8(B)は第2アングルスペーサ4bの斜視図、図8(C)は第3アングルスペーサ4cの斜視図、である。また、図9は、アングルスペーサ4の側面図であって、図9(A)は第1アングルスペーサ4aの側面図、図9(B)は第2アングルスペーサ4bの側面図、図9(C)は第3アングルスペーサ4cの側面図、である。
屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4は、内外側の靭帯バランスを確認するためのものである。具体的には、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4は、図12を参照して、患者の大腿骨100及び脛骨110が屈曲位の状態で、大腿骨遠位端101に設置された切除ガイド部2と脛骨近位端111との間に挟まれるようにして用いられる。また、屈曲スペーサ3は、図11を参照して、アングルスペーサ4を用いずに単独で用いることもできる。術者は、図11及び図12に示す状態での内外側の靭帯のテンションを確認することにより、内外側の靭帯のバランスを確認することができる。
[屈曲スペーサの構成]
屈曲スペーサ3は、図7を参照して、屈曲スペーサ本体部31及び把持部39を有し、これらが一体に形成されている。
屈曲スペーサ本体部31は、屈曲スペーサ3における、患者の大腿骨遠位端101に固定された切除ガイド部2と脛骨近位端111との間に挿入される部分である。屈曲スペーサ本体部31は、基部32及び平板部35を有し、これらが一体に形成されている。
基部32は、上方から視て略扇形状に形成された部分であって、上下方向において所定の厚みを有している。基部32の上面33は、平坦面となっている。上面33は、屈曲スペーサ3が有する両端面のうちの一方の面である。
平板部35は、基部32における下側の部分と一体に設けられていて、上下方向に薄い略平板状に形成されている。平板部35は、上下方向から視て、その後側の部分が基部32と一体に設けられるとともに、基部32よりも前方へ延びるように形成されている。平板部35は、上方から視て、左右両側の縁部が直線状に形成されている一方、先端側の縁部は、その中央部分が前方へ膨出する円弧状に形成されている。平板部35の下面36は、基部32の上面33と平行な平坦面となっている。下面36は、屈曲スペーサ3が有する両端面のうちの他方の面である。
平板部35の下面36には、左右方向に延びる溝状の係合部37が形成されている。この係合部37には、詳しくは後述するアングルスペーサ4の被係合部49が係合する。
把持部39は、術者によって把持される部分として設けられている。把持部39は、基部32から後方へ延びるように設けられている。また、把持部39には、2つのスリット孔39a,39aが形成されている。各スリット孔39aは、上下方向から視て前後方向に延びる細長い孔であって、前後方向に間隔を空けて形成されている。これにより、屈曲スペーサ3の軽量化を図ることができる。
[アングルスペーサの構成]
アングルスペーサ4は、屈曲スペーサ3とともに用いられる部品であって、内外側の靭帯バランスを確認するためのものである。本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、複数種類(具体的には、3種類)のアングルスペーサ4を備えている。以下では、これら複数種類のアングルスペーサを区別せずに説明する際には符号4を用い、区別して説明する場合には、各種類のアングルスペーサに対応する符号4a,4b,4cを用いる。また、以下では、アングルスペーサ4aを第1アングルスペーサ4aと称し、アングルスペーサ4bを第2アングルスペーサ4bと称し、アングルスペーサ4cを第3アングルスペーサ4cと称する場合もある。
アングルスペーサ4は、図8及び図9を参照して、アングルスペーサ本体部41と、被係合部49とを有し、これらが一体に形成されている。
アングルスペーサ本体部41は、上下方向から視た形状が八角形状に形成された部分であって、上下方向に薄い形状を有している。
アングルスペーサ本体部41では、平坦面として設けられた下面42(他方の面)と、平坦面として設けられた上面43(一方の面)との間の角度が、アングルスペーサ4a,4b,4c毎に異なる角度となっている。具体的には、図8(A)及び図9(A)を参照して、第1アングルスペーサ4aでは、下面42と上面43との間の傾斜角が2度となっている。言い換えれば、第1アングルスペーサ4aの上面43は、該第1アングルスペーサ4aの下面42に対して2度の角度で傾斜する傾斜面44として設けられている。また、図8(B)及び図9(B)を参照して、第2アングルスペーサ4bでは、下面42と上面43との間の傾斜角が3度となっている。言い換えれば、第2アングルスペーサ4bの上面43は、該第2アングルスペーサ4bの下面42に対して3度の角度で傾斜する傾斜面44として設けられている。また、図8(C)及び図9(C)を参照して、第3アングルスペーサ4cでは、下面42と上面43との間の傾斜角が4度となっている。言い換えれば、第3アングルスペーサ4cの上面43は、該第3アングルスペーサ4cの下面42に対して4度の角度で傾斜する傾斜面44として設けられている。
被係合部49は、アングルスペーサ本体部41の上面43において、左右方向に細長い突条に形成されている。被係合部49の横断面形状は、逆台形状に形成されている。被係合部49は、屈曲スペーサ3の係合部37と係合可能に構成されている。アングルスペーサ4は、被係合部49が屈曲スペーサ3の係合部37と係合した状態において、屈曲スペーサ3に対して固定される。
[使用方法]
次に、本発明の実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1の使用方法について説明する。以下では、まず切除ガイド部2の使用方法について説明し、その後、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4の使用方法について説明する。
[切除ガイド部の使用方法]
図10は、切除ガイド部2の使用方法を説明するためのフローチャートである。以下では、図10等を参照して、切除ガイド部2の使用方法について説明する。
まず、ステップS1では、大腿骨遠位端101に形成された骨切り面101aに切除ガイド部2が固定される。具体的には、大腿骨遠位端101の骨切り面101aにおいて、術前計画に基づく基準位置に切除ガイド部2が配置された後、固定ピン5が切除ガイド部2の固定孔21に差し込まれてその先端部が大腿骨遠位端101に打ち込まれる(図4参照)。
次に、ステップS2では、患者の内外側の靭帯のバランスがとれているか否かが確認される。靭帯のバランスが適切になっていれば(ステップS3のYes)、ステップS4において、その時点で大腿骨遠位端101に固定されている状態における切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿って、大腿骨遠位端101の各部位が切除される。これにより、適切な骨切り面を形成することができる。一方、靭帯のバランスが適切になっていなければ(ステップS3のNo)、ステップS5に進む。なお、ステップS2において内外側の靭帯バランスを確認する際、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4が用いられる。これらの使用方法については、後述する。
ステップS5では、術者によって、大腿骨遠位端101に取り付けられた切除ガイド部2を内旋すべきか外旋すべきかが判断される。術者が、切除ガイド部2を内旋した方が靭帯のバランスが適切になると判断した場合には、ステップS6に進む。一方、術者が、切除ガイド部2を外旋した方が靭帯のバランスが適切になると判断した場合には、ステップS10に進む。
[切除ガイド部を内旋する際の工程]
ステップS6からステップS8では、術前計画に基づいて基準位置に設置された切除ガイド部2を内旋する作業が行われる。具体的には、ステップS6では、一対の内旋孔16,16のそれぞれに角度調整ピン6,6が差し込まれて大腿骨遠位端101に固定される。
次に、ステップS7では、各固定ピン5が引き抜かれて切除ガイド部2が図5(A)に示す状態となった後、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101から取り外される。
次に、ステップS8では、大腿骨遠位端101に固定された状態の一対の角度調整ピン6,6のそれぞれが、一対の基準孔15,15のそれぞれに挿通するように、大腿骨遠位端101に対して切除ガイド部2が設置される(図5(B)参照)。これにより図5(B)に示すように、切除ガイド部2が、術前計画に基づいて設置された基準位置に対して2度、内旋する。
上述のように内旋された切除ガイド部2が固定ピン5によって大腿骨遠位端101に対して固定された後、再び靭帯バランスが確認され、その靭帯バランスが適切であると確認されると、その状態の切除ガイド部2のスリットに沿って大腿骨遠位端101の各部位が切除される(ステップS9)。
[切除ガイド部を外旋する際の工程]
ステップS10からステップS12では、術前計画に基づいて基準位置に設置された切除ガイド部2を外旋する作業が行われる。具体的には、ステップS10では、一対の外旋孔17,17のそれぞれに角度調整ピン6,6が差し込まれて大腿骨遠位端101に固定される。
次に、ステップS11では、各固定ピン5が引き抜かれて切除ガイド部2が図6(A)に示す状態となった後、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101から取り外される。
次に、ステップS12では、大腿骨遠位端101に固定された状態の一対の角度調整ピン6,6のそれぞれが、一対の基準孔15,15のそれぞれに挿通するように、大腿骨遠位端101に対して切除ガイド部2が設置される(図6(B)参照)。これにより図6(B)に示すように、切除ガイド部2が、術前計画に基づいて設置された基準位置に対して2度、外旋する。
上述のように外旋された切除ガイド部2が固定ピン5によって大腿骨遠位端101に対して固定された後、再び靭帯バランスが確認され、その靭帯バランスが適切であると確認されると、その状態の切除ガイド部2のスリットに沿って大腿骨遠位端101の各部位が切除される(ステップS13)。
[屈曲スペーサ及びアングルスペーサの使用方法]
図11及び図12は、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4の使用方法を説明するための図である。具体的には、図11は、屈曲スペーサ3のみを用いて内外側の靭帯バランスが確認されている状態を示す図であり、図11(A)は正面図、図11(B)は側面図である。また、図12は、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を用いて内外側の靭帯バランスが確認されている状態を示す図であり、図12(A)は正面図、図12(B)は側面図である。
切除ガイド部2が患者の大腿骨遠位端101に固定された状態において内外側の靭帯バランスを確認する際、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4が用いられる。内外側の靭帯バランスを確認する際、患者の膝関節が屈曲した状態で、まずは屈曲スペーサ3が単独で用いられる。具体的には、図11を参照して、術者は、屈曲スペーサ3の下面36が脛骨近位端111の骨切り面111aに当接し且つ屈曲スペーサ3の上面33が切除ガイド部2の後面24に当接するように、屈曲スペーサ3を患者の膝関節の間に挿入する。そして、術者は、屈曲スペーサ3を適宜動かし、内外側の靭帯のバランスを確認する。
上述のように内外側の靭帯バランスを確認した際、靭帯バランスが適切であった場合には、切除ガイド部2の設置位置が適切であったと判断できる。この場合、その設置位置における切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿って大腿骨遠位端101の各部位を切除することにより、適切な骨切り面を形成することができる。
一方、上述のように内外側の靭帯バランスを確認した際、靭帯バランスが不適切であった場合には、切除ガイド部2の設置位置が不適切であると考えることができる。この場合において、例えば患者の外側(図11(A)における左側)の靭帯が、患者の内側(図11(A)における右側)の靭帯よりも緩んでいると判断された場合、術者は、切除ガイド部2を何度外旋させると靭帯のバランスが適切になるかを確認する。
その際、術者は、まず、屈曲スペーサ3にアングルスペーサ4(例えば第1アングルスペーサ4a)を係合する。具体的には、術者は、図7(A)、図8(A)及び図9(A)を参照して、第1アングルスペーサ4aの被係合部49の左側の部分49Lが屈曲スペーサ3の係合部37の右側の部分に位置し、且つ被係合部49の右側の部分49Rが係合部37の左側の部分に位置するように、屈曲スペーサ3に第1アングルスペーサ4aを係合する。術者は、このようにして第1アングルスペーサ4aが係合された屈曲スペーサ3を、患者の膝関節に挿入する。具体的には、アングルスペーサ4の下面42が脛骨近位端111の骨切り面111aに当接し且つ屈曲スペーサ3の上面33が切除ガイド部2の後面24に当接するように、屈曲スペーサ3を患者の膝関節の間に挿入する。この状態において、屈曲スペーサ3の両端面(上面33及び下面36)が、切除ガイド部2の後面24とアングルスペーサ4の上面43との間に挟まれるように配置され、アングルスペーサ4の両端面(上面43及び下面42)が、屈曲スペーサ3の下面36と脛骨近位端111の骨切り面111aとの間に挟まれるように配置される。これにより、切除ガイド部2が固定された状態の大腿骨遠位端101が、2度、内旋した状態となる。
この状態において、術者が内外側の靭帯のバランスを確認した結果、その靭帯バランスが適切であれば、切除ガイド部2をその設置位置(基準位置)から2度外旋させることにより、靭帯バランスが適切になると考えられる。従って、切除ガイド部2をその設置位置から2度外旋させて固定し、その位置における切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿って大腿骨遠位端101の各部位を切除することにより、適切な骨切り面を形成することができる。
なお、ここでは、2度の傾斜角を有する第1アングルスペーサ4aを用いて内外側の靭帯バランスを確認する例を挙げて説明したが、内外側の靭帯バランスの度合に応じて、3度の傾斜角を有する第2アングルスペーサ4b、或いは4度の傾斜角を有する第3アングルスペーサを用いてもよい。これにより、内外側の靭帯バランスの度合に応じて適切なアングルスペーサを採用することが可能となり、且つ内外側の靭帯バランスの度合を定量的に把握することができる。
また、ここでは、例えば患者の外側の靭帯が内側の靭帯よりもテンションが緩い場合における屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4の使用方法を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、本実施形態に係る屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4は、患者の内側(図11(A)における右側)の靭帯が、患者の外側(図11(A)における左側)の靭帯よりもテンションが緩い場合にも有用である。
具体的には、図7(A)、図8(A)及び図9(A)を参照して、第1アングルスペーサ4aの被係合部49の左側の部分49Lが屈曲スペーサ3の係合部37の左側の部分に位置し、且つ被係合部49の右側の部分49Rが係合部37の右側の部分に位置するように、屈曲スペーサ3に第1アングルスペーサ4aを係合する。このようにして第1アングルスペーサ4aが係合された屈曲スペーサを患者の膝関節に挿入することにより、切除ガイド部2が固定された状態の大腿骨遠位端101が、2度、外旋した状態となる。この状態において靭帯バランスが適切であれば、切除ガイド部2をその設置位置(基準位置)から2度内旋させることにより、靭帯バランスが適切になると考えられる。
[効果]
以上のように、本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、上述したように使用することができる。具体的には、まず術者は、術前計画に基づいて切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付ける。この状態において、術者は、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を用いて、内外側の靭帯バランスを確認する。このとき、内外側の靭帯バランスが適切であれば、術者は、基準位置に配置された切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿って、大腿骨遠位端101における所定部位を切除する。これにより、大腿骨コンポーネントを設置するための骨切り面を適切に形成することができる。
しかしながら、内外側の靭帯バランスが適切でない場合、そのままの状態の切除ガイド部2によって骨切り面を形成し、その骨切り面に大腿骨コンポーネントを設置すると、手術後の患者の内外側の靭帯のバランスが適切とならない虞がある。
この点につき、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、術者に過度な作業負担を強いることなく、大腿骨遠位端101を適切な位置で切除することができる。具体的には、術者が、切除ガイド部2を基準位置に対して回旋させた方が靭帯のバランスがとれると判断した場合、まず術者は、角度調整ピン6を一対の内旋孔16,16又は一対の外旋孔17,17に挿入し大腿骨遠位端101に差し込んで固定する。そして、術者は、切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外した後、大腿骨遠位端101に差し込まれた状態で保持されている角度調整ピン6が基準孔15,15に挿通するように、切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2を、基準位置に対して内旋方向又は外旋方向に回旋させた状態で大腿骨遠位端101に取り付けることができる。このように、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側の靭帯のバランスをとるために切除ガイド部2を回旋させる前後において、角度調整ピン6の差し込み位置を変更したり、或いは他の器具を用いて切除ガイド部2の設置位置を再決定する必要がなくなる。すなわち、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側の靭帯バランスを容易に調整することができる。
しかも、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、切除ガイド部2に回旋孔16,17を形成するだけで、内外側の靭帯バランスを調整することが可能となる。
従って、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側靭帯バランスの確保のためにその設置位置を術前計画に対して容易に変更でき、更に、その作業の容易化を簡素な構造で実現することができる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、術前計画に基づいて一旦基準位置に配置された切除ガイド部2を、外旋方向及び内旋方向のいずれにも回旋させることができる。よって、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側の靭帯バランスをより適切に調整することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、基準位置に配置された切除ガイド部2が回旋される際、前側スリット12の前側中心点C1を回旋中心として回旋される。こうすると、大腿骨遠位端101の前面側の切除面を前後方向にずらすことなく、内外側の靭帯バランスを調整することが可能となる。
また、例えば、上述したような切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に基準位置で固定した状態において内外側の靭帯バランスが崩れている場合、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を用いることで、切除ガイド部2をどの程度回旋させると内外側の靭帯バランスが適切となるかを見極めることができる。具体的には、傾斜角が所定角度であるアングルスペーサ4を用いて内外側の靭帯バランスを確認した結果、内外側の靭帯バランスが適切であった場合には、前記所定角度分だけ切除ガイド部2を回旋させることにより、内外側の靭帯バランスを適切にすることができる。すなわち、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側の靭帯バランスをとるために必要な切除ガイド部2の回旋角度を定量的に把握することができる。
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、内外側の靭帯バランスが最も適切となったアングルスペーサ4a,4b,4cの傾斜角だけ切除ガイド部2を回旋させることにより、内外側の靭帯バランスをより適切に調整することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
[変形例]
(1)図13は、変形例に係る切除ガイド部2aの正面図である。上述した実施形態の切除ガイド部2では、基準孔15、内旋孔16、及び外旋孔17が、切除ガイド部2における前側の部分に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、図13に示す変形例では、一対の基準孔25、一対の内旋孔26(回旋孔、第2回旋孔)、及び一対の外旋孔27(回旋孔、第2回旋孔)が、切除ガイド部2aにおける後側の部分に形成されている。また、これに伴い、内旋指標マーキング51、外旋指標マーキング52、内旋孔指示マーキング53、及び外旋孔指示マーキング54も、切除ガイド部2aにおける後側の部分に形成されている。以下では、上記実施形態と異なる部分について主に説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
一対の基準孔25,25は、右側基準孔25R、及び左側基準孔25Lで構成されている。一対の内旋孔26,26は、右側内旋孔26R、及び左側内旋孔26Lで構成されている。一対の外旋孔27,27は、右側外旋孔27R、及び左側外旋孔27Lで構成されている。一対の基準孔25,25の中心点間の距離と、一対の内旋孔26,26の中心点間の距離と、一対の外旋孔27,27の中心点間の距離とは、互いに同じである。各孔25,26,27の横断面形状及び大きさは、上記実施形態の場合と同じであるため、その説明を省略する。各孔25,26,27は、切除ガイド部2aにおいて形成されている位置が、上記実施形態の場合と異なるものの、各孔25,26,27の互いに対する相対的な位置関係は、上記実施形態の場合と同じである。
一対の基準孔25R,25Lの位置と一対の内旋孔26R,26Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔25R,25Lを、後側中心点C2を回旋中心として所定角度(本変形例の場合、2度)内旋させ且つ左側へ少し移動させたときに、右側基準孔25Rと右側内旋孔26Rとが一致し且つ左側基準孔25Lと左側内旋孔26Lとが一致する。言い換えれば、一対の内旋孔26R,26Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2aを、後側中心点C2を回旋中心として2度内旋させ且つ左側へ少し移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
一方、一対の基準孔25R,25Lの位置と一対の外旋孔27R,27Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔25R,25Lを、後側中心点C2を回旋中心として所定角度(本変形例の場合、2度)外旋させ且つ右側へ少し移動させたときに、右側基準孔25Rと右側外旋孔27Rとが一致し且つ左側基準孔25Lと左側外旋孔27Lとが一致する。言い換えれば、一対の外旋孔27R,27Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2aを、後側中心点C2を回旋中心として2度外旋させ且つ右側へ少し移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
また、切除ガイド部2aには、内旋指標マーキング51と、外旋指標マーキング52とが形成されている。
内旋指標マーキング51は、左側内旋孔26Lよりもやや左側に形成されたマーキングであって、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。本実施形態では、内旋指標マーキング51は、内旋角度マーキング51aと、内旋方向マーキング51bとで構成されている。内旋角度マーキング51aとしては、内旋孔26を用いて内旋可能な角度及び単位が記載されている。本実施形態に係る切除ガイド部2aには、内旋角度マーキング51aとして、「2°」とマーキングされている。内旋方向マーキング51bは、内旋孔26を用いて内旋される内旋方向を指標している。本実施形態に係る切除ガイド部2aには、内旋方向マーキング51bとして、反時計回り方向の矢印がマーキングされている。
外旋指標マーキング52は、右側外旋孔27Rよりもやや右側に形成されたマーキングであって、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。本実施形態では、外旋指標マーキング52は、外旋角度マーキング52aと、外旋方向マーキング52bとで構成されている。外旋角度マーキング52aとしては、外旋孔27を用いて外旋可能な角度が記載されている。本実施形態に係る切除ガイド部2aには、外旋角度マーキング52aとして、「2°」とマーキングされている。外旋方向マーキング52bは、外旋孔27を用いて外旋される外旋方向を指標している。本実施形態に係る切除ガイド部2aには、外旋方向マーキング52bとして、時計回り方向の矢印がマーキングされている。
また、切除ガイド部2aには、内旋孔指示マーキング53及び外旋孔指示マーキング54が形成されている。
内旋孔指示マーキング53は、例えばレーザマーキングによって形成されている。内旋孔指示マーキング53は、一対の内旋孔26,26を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2aに形成された複数の孔25,26,27のうちいずれが一対の内旋孔26,26であるかを一目で把握することができる。また、外旋孔指示マーキング54は、例えばレーザマーキングによって形成されている。外旋孔指示マーキング54は、一対の外旋孔27,27を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2aに形成された複数の孔25,26,27のうちいずれが一対の外旋孔27,27であるかを一目で把握することができる。
[本変形例の切除ガイド部の使用方法]
本変形例の切除ガイド部2aによれば、上記実施形態の切除ガイド部2の場合と異なり、基準位置に配置された切除ガイド部2aを、後側スリット13の延出方向の中央位置である後側中心点C2を回旋中心として回旋することができる。
具体的には、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2aを2度、内旋させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各内旋孔26に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2aを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔25に挿通するように、切除ガイド部2aを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2aを、後側中心点C2を回旋中心として、2度内旋させることができる。
一方、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2aを2度、外旋させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各外旋孔27に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2aを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔25に挿通するように、切除ガイド部2aを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2aを、後側中心点C2を回旋中心として、2度外旋させることができる。
以上のように、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具の切除ガイド部2aによれば、上記実施形態の場合と同様、内外側靭帯バランスの確保のためにその設置位置を術前計画に対して容易に変更でき、更に、その作業の容易化を簡素な構造で実現することができる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
また、切除ガイド部2aによれば、基準位置に配置された切除ガイド部2aが回旋される際、後側スリット13の後側中心点C2を回旋中心として回旋される。こうすると、大腿骨遠位端101の後面側の切除面を前後方向にずらすことなく、内外側の靭帯バランスを調整することが可能となる。
(2)図14は、変形例に係る切除ガイド部2bの正面図である。上述した実施形態の切除ガイド部2では、複数の孔15,16,17が、切除ガイド部2における前側の部分のみに形成されている例を挙げて説明した。また、図13に示す変形例の切除ガイド部2aでは、複数の孔25,26,27が、切除ガイド部2aにおける後側の部分のみに形成されている例を挙げて説明した。しかし、これらに限らず、図14に示すように、切除ガイド部2bにおける前側の部分及び後側の部分の双方に、複数の孔15,16,17,25,26,27が形成されていてもよい。これにより、切除ガイド部2bを、前側中心点C1を回旋中心として回旋させることも、後側中心点C2を回旋中心として回旋させることも可能となる。
(3)図15は、変形例に係る切除ガイド部2cの正面図である。上述した実施形態では、切除ガイド部2に、内旋孔16が一対、及び外旋孔17が一対、形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、図15に示すように、切除ガイド部2dに、異なる複数の内旋角度(本変形例の場合、2度及び4度)に対応するように構成された複数対(図15に示す例の場合、2対)の内旋孔16,55が設けられていてもよい。また、切除ガイド部2dに、異なる複数の外旋角度(本変形例の場合、2度及び4度)に対応するように構成された複数対(図15に示す例の場合、2対)の外旋孔17,56が設けられていてもよい。
図15に示すように、本変形例の切除ガイド部2cには、基準孔15、内旋孔16(本変形例において、二度内旋孔16と称する場合もある)、及び外旋孔17(本変形例において、二度外旋孔17と称する場合もある)の他に、一対の四度内旋孔55,55及び一対の四度外旋孔56,56が形成されている。一対の四度内旋孔55,55は、右側四度内旋孔55R、及び左側四度内旋孔55Lで構成されている。一対の四度外旋孔56,56は、右側四度外旋孔56R、及び左側四度外旋孔56Lで構成されている。各四度内旋孔55及び各四度外旋孔56の横断面形状及び大きさは、他の孔15,16,17と同じである。また、一対の四度内旋孔55,55の中心点間の距離、及び一対の四度外旋孔56,56の中心点間の距離は、一対の基準孔15,15の中心点間の距離と同じである。
右側四度内旋孔55Rは、右側内旋孔16R(右側二度内旋孔16R)と間隔を空けて、該右側二度内旋孔16Rよりも左側に形成されている。右側四度内旋孔55Rの前後方向における位置は、右側二度内旋孔16Rの前後方向における位置よりも、僅かに後側である。
右側四度外旋孔56Rは、右側外旋孔17R(右側二度外旋孔17R)と間隔を空けて、該右側二度外旋孔17Rよりも右側に形成されている。右側四度外旋孔56Rの前後方向における位置は、右側二度外旋孔17Rの前後方向における位置よりも、僅かに前側である。
左側四度内旋孔55Lは、左側内旋孔16L(左側二度内旋孔16L)と間隔を空けて、該左側二度内旋孔16Lよりも左側に形成されている。左側四度内旋孔55Lの前後方向における位置は、左側二度内旋孔16Lの前後方向における位置よりも、僅かに前側である。
左側四度外旋孔56Lは、左側外旋孔17L(左側二度外旋孔17L)と間隔を空けて、該左側二度外旋孔17Lよりも右側に形成されている。左側四度外旋孔56Lの前後方向における位置は、左側二度外旋孔17Lの前後方向における位置よりも、僅かに後側である。
一対の基準孔15R,15Lの位置と一対の四度内旋孔55R,55Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを、前側中心点C1を回旋中心として所定角度(本変形例の場合、4度)内旋させ且つ左側へ移動させたときに、右側基準孔15Rと右側四度内旋孔55Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側四度内旋孔55Lとが一致する。言い換えれば、一対の四度内旋孔55R,55Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2cを、前側中心点C1を回旋中心として4度内旋させ且つ左側へ少し移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
一方、一対の基準孔15R,15Lの位置と一対の四度外旋孔56R,56Lの位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを、前側中心点C1を回旋中心として所定角度(本実施形態の場合、4度)外旋させ且つ右側へ少し移動させたときに、右側基準孔15Rと右側外旋孔17Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側外旋孔17Lとが一致する。言い換えれば、一対の四度外旋孔56R,56Lは、基準位置に配置された切除ガイド部2cを、前側中心点C1を回旋中心として4度外旋させ且つ右側へ移動させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
また、切除ガイド部2cには、内旋指標マーキング18と、外旋指標マーキング19とが形成されている。各マーキング18,19は、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。
内旋指標マーキング18は、二度内旋角度マーキング18aと、四度内旋角度マーキング18cと、内旋方向マーキング18bとで構成されている。二度内旋角度マーキング18aは、左側二度内旋孔16Lのやや前側に形成されている。四度内旋角度マーキング18cは、左側四度内旋孔55Lのやや前側に形成されている。内旋方向マーキング18bは、左側四度内旋孔55Lのやや左側に形成されている。
外旋指標マーキング19は、二度外旋角度マーキング19aと、四度外旋角度マーキング19cと、外旋方向マーキング19bとで構成されている。二度外旋角度マーキング19aは、右側二度外旋孔17Rのやや後側に形成されている。四度外旋角度マーキング19cは、右側四度外旋孔56Rのやや後側に形成されている。外旋方向マーキング19bは、右側四度外旋孔56Rのやや右側に形成されている。
また、切除ガイド部2cには、四度内旋孔指示マーキング64及び四度外旋孔指示マーキング65が形成されている。
四度内旋孔指示マーキング64は、例えばレーザマーキングによって形成されている。四度内旋孔指示マーキング64は、一対の四度内旋孔55,55を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2cに形成された複数の孔15,16,17,55,56のうちいずれが一対の四度内旋孔55,55であるかを一目で把握することができる。また、四度外旋孔指示マーキング65は、例えばレーザマーキングによって形成されている。四度外旋孔指示マーキング65は、一対の四度外旋孔56,56を繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2cに形成された複数の孔15,16,17,55,56のうちいずれが一対の四度外旋孔56,56であるかを一目で把握することができる。
[本変形例の切除ガイド部の使用方法]
本変形例の切除ガイド部2cによれば、基準位置に配置された切除ガイド部を2度、内旋又は外旋させるだけでなく、4度、内旋又は外旋させることもできる。
具体的には、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2cを4度、内旋させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各四度内旋孔55に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2cを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔15に挿通するように、切除ガイド部2cを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2cを4度内旋させることができる。
一方、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2cを4度、外旋させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各四度外旋孔56に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2cを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔15に挿通するように、切除ガイド部2cを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2cを4度外旋させることができる。
以上のように、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具の切除ガイド部2cによれば、上記実施形態の場合と同様、内外側靭帯バランスの確保のためにその設置位置を術前計画に対して容易に変更でき、更に、その作業の容易化を簡素な構造で実現することができる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
また、切除ガイド部2cによれば、切除ガイド部2cを複数の回旋角度に調整することができるため、内外側の靭帯バランスをより精度良く調整することができる。
(4)図16は、変形例に係る切除ガイド部2dの正面図である。本変形例に係る切除ガイド部2dには、一対の基準孔15,15、一対の内旋孔16,16及び一対の外旋孔17,17の他に、一対の前進孔57,57(前後位置調整孔)及び一対の後退孔58,58(前後位置調整孔)が形成されている。
一対の前進孔57,57及び一対の後退孔58,58は、本体部11を上下方向に貫通する貫通孔であって、一対の基準孔15,15、一対の内旋孔16,16及び一対の外旋孔17,17とは異なる孔として構成されている。各前進孔57及び各後退孔58の横断面形状及び大きさは、他の孔15,16,17と同じである。また、一対の前進孔57,57の中心点間の距離、及び一対の後退孔58,58の中心点間の距離は、一対の基準孔15,15の中心点間の距離と同じである。
一対の前進孔57,57は、右側前進孔57R、及び左側前進孔57Lで構成されている。一対の後退孔58,58は、右側後退孔58R及び左側後退孔58Lで構成されている。
一対の基準孔15,15の位置と、一対の前進孔57,57の位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを前方へ所定距離(本変形例の場合、2mm)移動させ且つ左側へ移動させたときに、右側基準孔15Rと右側前進孔57Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側前進孔57Lとが一致する。言い換えれば、一対の前進孔57,57は、基準位置に配置された切除ガイド部2dを前方へ変位させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
一方、一対の基準孔15,15の位置と、一対の後退孔58,58の位置とは、以下のような位置関係となっている。具体的には、一対の基準孔15R,15Lを後方へ所定距離(本変形例の場合、2mm)移動させ且つ右側へ移動させたときに、右側基準孔15Rと右側後退孔58Rとが一致し且つ左側基準孔15Lと左側後退孔58Lとが一致する。言い換えれば、一対の後退孔58,58は、基準位置に配置された切除ガイド部2dを後方へ変位させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際における、大腿骨遠位端101への角度調整ピン6の差し込み位置を指標する孔として設けられている。
また、切除ガイド部2dには、前進指標マーキング59と、後退指標マーキング61とが形成されている。各マーキング59,61は、例えば一例としてレーザマーキングによって形成される。
前進指標マーキング59は、前進距離マーキング59aで構成されている。前進距離マーキング59aは、左側前進孔57Lのやや前側に形成されている。前進距離マーキング59aとしては、前進を指標する記号である「+」と、前進孔57を用いて前方へ移動可能な切除ガイド部2dの移動量を示す数字である「2」とがマーキングされている。また、後退指標マーキング61は、後退距離マーキング61aで構成されている。後退距離マーキング61aは、右側後退孔58Rのやや後側に形成されている。後退距離マーキング61aとしては、後退を指標する記号である「−」と、後退孔58を用いて後方へ移動可能な切除ガイド部2dの移動量を示す数字「2」とがマーキングされている。
また、切除ガイド部2dには、前進孔指示マーキング62及び後退孔指示マーキング63が形成されている。
前進孔指示マーキング62は、例えばレーザマーキングによって形成されている。前進孔指示マーキング62は、一対の前進孔57,57を直線状に繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2dに形成された複数の孔15,16,17,57,58のうちいずれが一対の前進孔57,57であるかを一目で把握することができる。また、後退孔指示マーキング63は、例えばレーザマーキングによって形成されている。後退孔指示マーキング63は、一対の後退孔58,58を直線状に繋ぐように形成されたマーキングである。これにより、術者は、切除ガイド部2dに形成された複数の孔15,16,17,57,58のうちいずれが一対の後退孔58,58であるかを一目で把握することができる。
[本変形例の切除ガイド部の使用方法]
本変形例の切除ガイド部2dによれば、基準位置に配置された切除ガイド部を回旋させるだけでなく、前後方向にスライド移動させることもできる。
具体的には、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2dを、前方へ2mm、平行移動させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各前進孔57に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2dを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔15に挿通するように、切除ガイド部2dを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2dを、前方へ2mm、平行移動させることができる。
一方、基準位置に配置された状態の切除ガイド部2dを、後方へ2mm、平行移動させたい場合には、2本の角度調整ピン6を、それぞれ、各後退孔58に差し込んで大腿骨遠位端101に固定する。そして、切除ガイド部2dを一旦大腿骨遠位端101から外し、大腿骨遠位端101に固定された各角度調整ピン6が各基準孔15に挿通するように、切除ガイド部2dを大腿骨遠位端101に取り付ける。これにより、基準位置に配置された切除ガイド部2dを、後方へ2mm、平行移動させることができる。
以上のように、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具の切除ガイド部2dによれば、上記実施形態の場合と同様、内外側靭帯バランスの確保のためにその設置位置を術前計画に対して容易に変更でき、更に、その作業の容易化を簡素な構造で実現することができる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
また、切除ガイド部2dによれば、切除ガイド部2dを基準位置に配置した状態において内外側の靭帯バランスが崩れている場合、切除ガイド部2dを回旋させるだけでなく、切除ガイド部2dを前後方向に変位させることによっても、内外側の靭帯バランスを調整することができる。よって、切除ガイド部2dによれば、内外側の靭帯バランスをより精度よく調整することができる。
(5)上述した実施形態では、屈曲スペーサ3及びアングルスペーサ4を備えた人工膝関節置換術用手術器具1を例に挙げて説明したが、これに限らない。本発明は、上述した切除ガイド部2,2a,2b,2c,2dに例示される切除ガイド部のみを備えた人工膝関節置換術用手術器具に適用することもできる。
(6)上述した実施形態では、内旋孔16及び外旋孔17の双方が形成された切除ガイド部2を例に挙げて説明したが、これに限らない。本発明は、内旋孔16及び外旋孔17の一方のみが形成された切除ガイド部を備えた人工膝関節置換術用手術器具に適用することもできる。
(7)上述した実施形態では、切除ガイド部2を内旋させる際、一対の内旋孔16,16のそれぞれに角度調整ピン6を差し込んだ後に切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外し、角度調整ピン6が一対の基準孔15,15に挿入されるように切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付けて固定する例を挙げたが、これに限らない。具体的には、基準孔15,15と外旋孔17,17との関係において、基準孔15を内旋孔として用い且つ外旋孔17を基準孔として用いることにより、切除ガイド部2を内旋させることができる(図17参照)。図17(A)は、図4に示す状態から角度調整ピン6を基準孔15に差し込み且つ固定ピン5を抜き取った状態を示す図、図17(B)は、図17(A)に示す状態から切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外した後、角度調整ピン6が外旋孔17に挿入されるように切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付けた状態を示す図、である。
同様に、基準孔15,15と内旋孔16,16との関係において、基準孔15を外旋孔として用い且つ内旋孔16を基準孔として用いることにより、切除ガイド部2を外旋させることができる(図18参照)。図18(A)は、図4に示す状態から角度調整ピン6を基準孔15に差し込み且つ固定ピン5を抜き取った状態を示す図、図18(B)は、図18(A)に示す状態から切除ガイド部2を大腿骨遠位端101から外した後、角度調整ピン6が内旋孔16に挿入されるように切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に取り付けた状態を示す図、である。