JP6866072B2 - 熱可塑性エラストマー樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、特定のオレフィン系重合体とスチレン系重合体を含んでなる樹脂組成物に関する。
本発明は、各種工業製品から発する様々な振動を適正なレベルに抑制できる防振効果が付与され、耐久性に優れた熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関する。すなわち、機械的強度、硬度、ゴム弾性、成形加工性、外観といった熱可塑性エラストマー樹脂組成物の必要な基本特性を維持しつつ、低反発弾性といった制振性と、長期間使用されたとしても永久変形(歪)の少ない低永久歪性がバランスよく付与された熱可塑性エラストマー樹脂組成物に関する。
近年、自動車、家電製品、精密機器などでは、振動やそれから生じる騒音を防止し、快適な居住環境を作り出すという要求性能が重要視されており、前記の機械、機器を構成する部材に高い制振性が必要とされるようになってきた。また、オーディオ機器、映像機器、スピーカー等の視聴覚機器分野においては、高品位の音質や画質を得るために従来以上の制振性能が求められるようになってきた。
この防振材としてブチルゴムやハロゲン化ブチルゴムが主として使用されてきた(例えば、特許文献1、2参照。)が、加硫工程が必要であることから成形品の形状が制限されてしまう。また、廃材料の焼却時には有毒ガス発生の可能性もある。の加硫が施されたゴム製品はバリが発生しやすく、後工程が必要となり、生産性に劣るため、コスト高の要因となっている。
一方、近年ゴム様な軟質材料であって、加硫工程を要せず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電製品部品、雑貨、履物、電線被覆等、さらには、Oリング等パッキンの分野で注目されている。このような熱可塑性エラストマーに現在、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系等の種々のポリマーが開発され、市販されている。しかし、低反発弾性をはじめとする制振性と低永久歪をバランスよく併せ持つ材料は見当たらなかった(特許文献3、4参照)。
特開平9−003278号公報 特開平9−071700号公報 特開平7−053785号公報 特開平6−145477号公報
本発明は上記の技術背景に基づいて行われたものであり、すなわち機械的強度、硬度、ゴム弾性、成形加工性、外観といった熱可塑性エラストマー樹脂組成物の必要な基本特性を維持しつつ、低反発弾性に代表される制振性能と、長期間に渡って工業用部材などとして使用されたとしても永久変形(歪)が少ない耐久性のある低永久歪性がバランスよく付与された熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定性質を満たす水添スチレンブロック共重合体(A)に、特定性質を満たす4−メチル−1−ペンテン・α―オレフィン共重合体(B)を混練することによって、相容化剤を使わなくても均一に分散し、このようにして得られた樹脂組成物が前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の主旨は次の通りである。
[1]下記要件(a1)および(a2)を満たす水添スチレンブロック共重合体(A)95〜51質量部と、
下記要件(b1)および(b2)を満たす、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)5〜49質量部含む樹脂組成物(ここで、成分(A)と成分(B)の合計は100質量部)であって、
樹脂組成物が下記要件(x1)および(x2)を満たすことを特徴とする樹脂組成物。
(a1)スチレン類に由来する構造単位からなる重合体ブロック1と、共役ジエン類に由来する構造単位を有する重合体ブロック2からなるブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロック1の含有量が5質量%以上25質量%以下である。
(a2)測定周波数1.6Hzで求められた損失正接tanδのピークが、−20℃未満に存在する。
(b1)測定周波数1.6Hzで求められた損失正接tanδのピークが、0℃以上45℃以下の温度範囲に存在する。
(b2)示差走査量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が観測されない。
(x1)−60〜+80℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが二つ以上観測される。
(x2)+10〜+50℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが一つ以上観測される。
[2]下記要件(x3)および(x4)の一つ以上をさらに満たす前記[1]に記載の樹脂組成物。
(x3)JIS K6262に準拠して測定した圧縮永久歪が24%以下である。
(x4)JIS K6255に準拠して測定した反発弾性率が54%以下である。
[3]下記要件(x5)をさらに満たす前記[2]に記載の樹脂組成物。
(x5)JIS K6262準拠で測定した圧縮永久歪(%)が、成分(B)単独の圧縮永久歪(%)未満である。
[4]前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)60〜80モル%、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)20〜40モル%および非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)0〜10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)からなる前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の樹脂組成物を含む成形体。
熱可塑性エラストマー樹脂組成物として必要な基本特性を維持しつつ、低反発弾性に代表される制振性能と、低永久歪特性がバランスよく付与された樹脂組成物、およびこれを含む成形体が提供される。
以下、本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、水添スチレンブロック共重合体(A)と4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物である。
以下、本発明の樹脂組成物を構成する、水添スチレンブロック共重合体(A)、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)および任意成分である熱可塑性エラストマー(C)および添加剤(D)について説明する。
<水添スチレンブロック共重合体(A)>
本発明で使用する水添スチレンブロック共重合体(A)は、スチレン類に由来する構造単位からなる重合体ブロック1と、共役ジエン類に由来する構造単位を有する重合体ブロック2からなるブロック共重合体の水素添加物である。具体的には、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体を水添したものであり、そのスチレン−ブタジエンブロック共重合体とは、スチレンブロックとブタジエンブロックからなるジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ラジアルブロック共重合体などである。
本発明に用いられる水添スチレンブロック共重合体(A)における、スチレン類に由来する構造単位からなる重合体ブロック1は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−t −ブチルスチレン、o−エチルスチレン、およびo,p−ジクロルスチレンなどから重合されるブロックであり、これらの中ではスチレンが好ましい。
本発明に用いられる水添スチレンブロック共重合体(A)における共役ジエン類に由来する構造単位を有する重合体ブロック2は、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、ブタジエン/イソプレン共重合体、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、およびクロロプレンなどから重合されるブロックであり、これらの中でもブタジエンおよびイソプレン、イソブチレンからなる一種以上のジエンを重合して得られるブロックが好ましく用いられる。
さらにまた、本発明においては組成の異なる水添スチレンブロック共重合体(A)を二種類以上使用することを何ら妨げるものではない。
水添スチレンブロック共重合体(A)としては、MFR(メルトフローレート、200℃、10kg荷重)が、5〜100g/10分であることが好ましい。MFRが100g/10分を上回る場合、樹脂組成物の耐熱性が低下する場合が有り、また、5g/10分を下回る場合は粘度の増大により成形性が悪化する場合がある。なお、MFRはJIS K7210に準拠して測定される。
使用される水添スチレンブロック共重合体(A)における、スチレンの含有量は、5〜25質量%の範囲内とするのが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、樹脂組成物の粘度が高くなるほか、耐熱性が低下するなどの問題がある。一方で、25質量%を超えると、圧縮永久歪と反発弾性率が共に高まるので好ましくない。
水添スチレンブロック共重合体(A)は、測定周波数1.6Hzで求められた損失正接tanδのピークが、−20℃未満に存在する。好ましくは25℃以下に存在し、より好ましくは30℃以下に存在する。この条件を満たすことによって、本発明の樹脂組成物の、室温付近における制振性と低反発性のバランスを保つことが可能となる。
水添スチレンブロック共重合体の市販品としては、クレイトンG1657(シェルジャパン株式会社製商品名:MFR(200℃、5kg荷重下)=7g/10分、スチレン含有量=13質量%、tanδピーク=−50℃、「クレイトン」は登録商標)、タフテックH1221(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名:MFR(20℃、2.16kg荷重下)=4.5g/10分、スチレン含有量=12質量%、tanδピーク=−25℃、「タフテック」は登録商標)、セプトン2063(クラレ株式会社製商品名:MFR(20℃、2.16kg荷重下)=g/10分、スチレン含有量=13質量%、tanδピーク=−43.4℃、「セプトン」は登録商標)などが挙げられるが、本発明において水添スチレンブロック共重合体(A)として使用可能なものはスチレン含有量が5〜25質量%の範囲を満たすクレイトンG1657とタフテックH1221、セプトン2063などが挙げられる。
<4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)>
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)(以下、単に「共重合体(B)」ともいう。)は、以下の要件(b1)および(b2)を共に満たす。
要件(b1);本発明の樹脂組成物の室温での応力吸収性をより高める観点からは、−40〜150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、共重合体(B)のtanδピーク温度は、0℃以上45℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることがより好ましく、20℃以上40℃以下であることがさらに好ましく、25℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
共重合体(B)のtanδピーク温度を上記の温度範囲にすることで、室温でのtanδの値をより高めることができる。
要件(b2)
共重合体(B)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が観測されない。このような要件を満たすことによって、本発明の伸縮性構造体の引張物性の向上、引張永久歪の経時変化を緩やかにすることが可能となる。
本発明に係る共重合体(B)は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、α−オレフィン(ただし、4−メチル−1−ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)60〜80モル%と、当該構成単位(ii)20〜40モル%とからなる(以下の説明では、該要件を要件(b3)と呼ぶ場合がある)。
すなわち、構成単位(i)の割合の下限値は、60モル%であるが、62モル%であることが好ましく、65モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(i)の割合の上限値は、80モル%であるが、78モル%であることが好ましく、75モル%であることがより好ましい。このように、本発明では共重合体(B)における前記構成単位(i)の割合が前記下限値以上であることで、室温付近にtanδのピーク値温度を持つことになるため、形状追従性および応力緩和性が優れ、また、前記構成単位(i)の割合が前記上限値以下にあることで適度な柔軟性を持つ。
また、構成単位(ii)の割合の上限値は、40モル%であるが、38モル%であることが好ましく、35モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、20モル%であるが、22モル%であることがより好ましく、25モル%であることが特に好ましい。
前記構成単位(ii)を導くα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは炭素原子数2〜10の直鎖状のα−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは炭素原子数5〜15の分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
ここで、本発明の一態様において共重合体(B)は、通常、構成単位(i)および構成単位(ii)のみからなるものである。ただし、共重合体(B)は、本発明の目的を損なわない程度の少量(10モル%以下)であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)のほかに、構成単位(iii)として、4−メチル−1−ペンテンおよび構成単位(ii)を導くα−オレフィンのいずれでもない他のモノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。このような他のモノマーの好ましい具体例としては、前記共重合体(B)が4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体の場合であれば、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
本発明に係る共重合体(B)は、前記要件(b1)、(b2)および(b3)に加えて下記要件(b4)〜(b7)の任意の一つ以上、好ましくは任意の二つ以上、より好ましくは任意の三つ以上、特に好ましくは四つ全てをさらに充足していることが好ましい。
要件(b4)
デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が、通常0.1〜5.0dL/g、好ましくは0.5〜4.0dL/g、より好ましくは0.5〜3.5dL/gの範囲である。
後述するように重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得て極限粘度[η]を調整することが出来る。前記極限粘度[η]が0.1dL/gよりも過小、または5.0dL/gよりも過大であると、重合体組成物をシート等に加工する際の、成形加工性が損なわれる場合がある。
要件(b5)
密度(ASTM D1505にて測定)が、通常870〜830kg/m3、好ましくは865〜830kg/m3、さらに好ましくは855〜830kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
密度は共重合体(B)のコモノマー組成比によって適宜変えることができ、密度が上記範囲内にある共重合体(B)は、軽量なシートを製造する上で有利である。
要件(b6)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)が、通常1.0〜3.5、好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.8の範囲である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。前記Mw/Mnが3.5よりも過大であると、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響が懸念されて、成形性が悪くなる。
ここで、本発明においては、後述する触媒を用いれば、上記要件(b)で示される極限粘度[η]の範囲内において、上記要件(b6)を満たす共重合体(B)を得ることができる。なお、前記Mw/Mnおよび以下のMwの値は、後述する実施例において採用された方法で測定した場合の値である。
また、共重合体(B)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500〜10,000,000、より好ましくは1,000〜5,000,000、さらに好ましくは1,000〜2,500,000である。
要件(b7);
−40〜150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、tanδピーク値が、1.0以上5.0以下であることが好ましく、1.5以上5.0以下であることがより好ましく、2.0以上4.0以下であることがさらに好ましい。
<4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)の製造方法>
前記共重合体(B)の製造方法は、特に限定されないが前記共重合体(B)は、例えば、4−メチル−1−ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」とを適当な重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
ここで、本発明で用いることのできる重合触媒として、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3-193796号公報あるいは特開平02-41303号公報中、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817等に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられる。
樹脂組成物中の水添スチレンブロック共重合体(A)の含有量は、通常95〜51質量%、好ましくは55〜95質量%であり、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量は、通常5〜49質量%、好ましくは5〜45質量%である。(なお、成分(A)と成分(B)の合計量は100質量部である。) 水添スチレンブロック共重合体(A)の含有量が51質量%未満の場合には、水添スチレンブロック共重合体(A)が固有に備えるゴム的な性質を樹脂組成物が発現しない場合が有り、一方、95質量%を超えた場合には、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)が固有に備える制振性能が発現しない場合があるので好ましくない。
<熱可塑性エラストマー(C)>
本発明の樹脂組成物には、成分(A)および成分(B)以外の熱可塑性エラストマー(C)が添加されていてもよい。添加される場合、その添加量は、一般的には樹脂組成物100質量部当たり30質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
本発明でいう熱可塑性エラストマー(C)とは、融点以上に加熱すると熱可塑性の性質を示す一方、常温ではゴム弾性の性質を示すポリマーである。そのような熱可塑性エラストマー(C)は具体的には、ポリオレフィン系エラストマー(C−1)、ポリエステル系エラストマー(C−2)、ポリアミド系エラストマー(C−3)が挙げられる。
≪ポリオレフィン系エラストマー(C−1)≫
ポリオレフィン系エラストマー(C−1)の第1の態様は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体等(ただし、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)を除く)が挙げられる。
共重合の形態は、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでもよい。例えば硬質部となるポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すα−オレフィン共重合体とのブロック共重合体が挙げられる。
第1の態様の具体例としては、JSR株式会社から商品名DYNARON(ダイナロン)(登録商標)、三井化学株式会社から商品名タフマー(登録商標)、ノティオ(登録商標)、ダウケミカル社から商品名ENGAGETM、INFUSETM、VERSIFYTM、エクソンモービルケミカル社から商品名VistamaxxTMとして市販されているものなどが挙げられる。
ポリオレフィン系エラストマー(C−1)の第2の態様は、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1つと、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、水素添加スチレンブタジエン、α−オレフィンからなる共重合体(ただし、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)を除く)からなる群より選ばれる1つとのブレンド物である。このとき、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体は、部分的もしくは完全に架橋されていてもよい。
第2の態様の具体例としては、三井化学製から商品名ミラストマー(登録商標)、住友化学製から商品名エスポレックス(登録商標)、三菱化学製から商品名サーモラン(登録商標)、ゼラス(登録商標) 、エクソンモービルケミカル社から商品名Santoplene(登録商標)”などが挙げられる。
また、本発明に係るポリオレフィン系エラストマーは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されていてもよい。
≪ポリエステル系エラストマー(C−2)≫
本発明に係るポリエステル系エラストマーとしては、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、および、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体が挙げられるが、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であることが好ましい。
ポリエステル系エラストマーとして市販されているものとしては、東レ・デュポン製の“ハイトレル(登録商標)”、東洋紡製の“ペルプレン(登録商標)”、三菱化学製の“プリマロイ(登録商標)”などが挙げられる。
≪ポリアミド系エラストマー(C−3)≫
本発明に係るポリアミド系エラストマー(C−3)は、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)等のポリアミド樹脂の他、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、ポリアミドと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体を挙げることができる。
ポリアミド系エラストマーとして市販されているものとしては、宇部興産製の“UBESTA(登録商標)”、ダイセル・エボニック製の“ダイアミド(登録商標)”、“ベスタミドE(登録商標)”、アルケマ製の“ペバックス(登録商標)”などが挙げられる。
<添加剤(D)>
本発明の樹脂組成物には添加剤が含まれていてもよい。添加剤(D)の具体例として、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
上記の添加剤(D)の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、前記樹脂組成物に対して、それぞれ、0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、必要に応じて成分(C)や添加剤(D)を上記したような組成範囲で種々公知の方法、たとえば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
このようにして調製される樹脂組成物は、以下の要件(x1)と(x2)を共に満たすことを特徴としている。
(x1)−60〜+80℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが二つ以上、好ましくは二つ観測される。本発明の樹脂組成物の好ましい態様においては、−60〜+60℃の温度範囲、より好ましい態様においては、−55〜+50℃、さらに好ましい態様においては、−50〜+50℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが二つ以上、好ましくは二つ観測される。
(x2)+10〜+50℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが一つ以上、好ましくは一つ観測される。本発明の樹脂組成物の好ましい態様においては、+20〜+50℃の温度範囲、より好ましい態様においては、+25〜+45℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが一つ以上、好ましくは一つ観測される。
このような要件を満たすことによって、室温付近において良好な低圧縮歪と低反発弾性率がバランスよく発現するのである。
<成形体>
本発明の樹脂組成物を含む成形体は、例えば押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、スタンピング成形、真空成形、カレンダー成形、フィラメント成形、発泡成形、パウダースラッシュ成形などの公知の熱成形方法により得られる。また、本発明の成形体は、本発明に係る共重合体、共重合体組成物および変性体を適宜組み合せても製造できる。
<用途>
本発明の樹脂組成物を上記方法で成形して得られる成形品は、熱可塑性エラストマーとして必要な基本ゴム特性を維持しつつ、低反発弾性に代表される制振性能と、低永久歪特性がバランスよく付与されている。本発明の成形体は、従来公知の用途である、機械部品、電気電子部品、自動車用部品、土木建築用資材、産業用資材、医療用資材などの用途に用いることができる。
具体的な用途として次のような用途を挙げることができるが、これらの中でも本発明の樹脂組成物が備える上記特性が最大限に生かされる用途として各種ガスケット、グリップ、栓、キャップライナー、パッキン、シール材、Oリング等の工業用品に好んで用いられる。
≪自動車分野のブーツ・カバー類、エンジン回りのホース・カバー類≫
・車体回り(ドアーラッチ、コントロールケーブルカバー、ステアリング周り等)
・エンジン回り( エアーダクトホース、各種防振・制振材、ラジエータホース、各種ガスケット類等)
≪電線・ケーブルの被覆材≫
・電子・民生機器用電線( コンピュータなどの電線被覆)
・通信ケーブル( 通信用電線・光ファイバー用被覆材料等)
≪ホース・チューブ・ベルト・防音防振シート等の工業用品≫
・高圧ホース(チューブ)、クッショングリップ、消音ギア、ガスケット、パッキン、シール材、Oリング等
≪建材分野≫
・扉、窓枠に使用するシーリング用パッキン
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各種物性は以下の方法により測定した。
〔組成〕
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)中の各構成単位(4−メチル−1−ペンテン及びα−オレフィン)の含有率(モル%)は、13C−NMRにより測定した。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
約20mgの特定4MP1系共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求める(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
−条件−
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示唆屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m)を軽量性の指標とした。
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。約5mgの重合体を、測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱する。重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却する。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
〔各種測定用プレスシートの作製〕
200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形した。0.4〜3mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.4〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度とし、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として、5mm厚の真鍮板を用いた。得られたサンプルを用いて、各種物性評価を行った。
〔ショアー硬度測定〕
JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートを用いてショアー硬度計により測定した。ショアー硬度計は、A硬度計を用いた。さらに測定直後と測定15秒後の値の変化率ΔHSを以下のようにして求めた。
ΔHS=(押針接触開始直後のショアーA硬度値) − (押針接触開始から15秒後のショアーA硬度値)。
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0〜40℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
〔機械特性(引張破断伸び、引張破断強度、ヤング率〕
厚みが1mmのプレスシートを、JIS K7127 5号ダンベル状に切断したものを試験片として用いた。
JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片の引張弾性率(YM)(単位:MPa)、引張破断伸び(EL)(単位:%)、および引張破断強度(TS)(単位:MPa)を測定した。
〔引張永久歪〕
厚みが1mmのプレスシートを、JIS K7127 5号ダンベル状に切断したものを試験片として用いた。JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離80mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件でシートを150%伸長させて10分保持した。保持したチャックを解放させてシートを試験機から外し、解放1分後と10分後のチャック間距離を測定し、下記の式から引張永久歪を算出した。
PS=(I−I)/I×100
PS :引張永久歪(%)
I :1分後または10分後のチャック間距離(mm)
:試験前のチャック間距離(mm)
[ゴム弾性(圧縮永久歪 CS)]
圧縮永久歪はJIS K6262に従って以下の方法で測定した。
実施例または比較例に記載の方法で調製した重合体組成物から得た厚さ2mmのプレスシートについて、これを6枚重ねて12mmtとしたものを試験片として用いた。この試験片を25%圧縮し、23℃で24時間保持した後解放し、試験後厚みを測定した。この結果より、下式に従って、24時間保持後の残留歪(圧縮永久歪 CS)を算出した。なお、後述する実施例および比較例においては、水添スチレンブロック共重合体(A−1)または(A'−2)単体の圧縮永久歪が樹脂組成物とすることによってどのように変化するかその変化率の絶対値を求めた。
残留歪(%)=100×(試験前厚み試験後厚み)/(試験前厚み圧縮時厚み)
〔反発弾性率〕
JIS K6255(2013)加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−反発弾性率の求め方によるリュケ式(23℃)による測定値である。後述する実施例および比較例においては、水添スチレンブロック共重合体(A−1)または(A'−2)単体の反発弾性率が樹脂組成物とすることによってどのように変化するかその変化率を絶対値として求めた。
<実験に使用した水添スチレンブロック共重合体>
実施例および比較例においては、下表1に示す市販の水添スチレンブロック共重合体(A)を用いた。表中、記号(A)は実施例に供した水添スチレンブロック共重合体、(A’)は比較例で用いた水添スチレンブロック共重合体であることを示す。
Figure 0006866072
次に、実施例および比較例において用いた4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてプロピレンを使用)の調製例を以下に示す。
〔調製例1〕
<4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)の調製>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体(B−1)を得た。得られた共重合体(B−1)の各種物性の測定結果を表に示す。
共重合体(B−1)中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体(B−1)の密度は839kg/m3であった。共重合体(B−1)の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体(B−1)の融点(Tm)は観測されなかった。
〔調製例2〕
<4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B’−2)の調製>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、44.0gの粉末状の4−メチル‐1−ペンテン共重合体(B’−2)を得た。
共重合体(B’−2)中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は84.1mol%であり、プロピレンの含有率は15.9mol%であった。また、共重合体(B’−2)の密度は838kg/mであった。共重合体(B’−2)の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は340,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体(B’−2)の融点(Tm)は132℃であった。
上記の調製例1よび2で得られた4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)および(B'−2)の特性一覧を表に示した。表中、記号(B)は実施例に供した水添スチレンブロック共重合体、(B')は比較例に供した水添スチレンブロック共重合体であることを示す。
Figure 0006866072
<実施例1>
水添スチレンブロック共重合体(A−1)90質量部と、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)10質量部を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を230℃、ダイス温度を230℃に設定し、Tダイから溶融混練物を厚み400μmで押し出し、キャストシート成形することによりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<実施例2>
水添スチレンブロック共重合体(A−1)80質量部と、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)20質量部とを用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<実施例3>
水添スチレンブロック共重合体(A−1)60質量部と、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)40質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<実施例4>
実施例3において、水添スチレンブロック共重合体(A−1)の代わりに、水添スチレンブロック共重合体(A−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例1>
水添スチレンブロック共重合体(A’−3)80質量部と、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)を20質量部と、を用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例2>
水添スチレンブロック共重合体(A−1)を100質量部用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例3>
水添スチレンブロック共重合体(A’−3)を100質量部用いた以外は実施例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例4>
実施例3において、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)の代わりに、水添スチレンブロック共重合体(A’−4)を用いた以外は実施例3と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例5>
比較例1において、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)の代わりに、水添スチレンブロック共重合体(A’−4)を用いた以外は比較例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例6>
比較例1において、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)の代わりに、水添スチレンブロック共重合体(A’−5)を用いた以外は比較例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
<比較例7>
実施例3において、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)の代わりに、4−メチル−1−ペンテン・プロプレン共重合体(B’−2)を用いた以外は比較例1と同様の方法によりシートを得た。得られたシートの物性評価結果を表3に示す。
Figure 0006866072
表3から明らかなように、実施例の樹脂組成物については、圧縮永久歪≦24%、且つ反発弾性率≦54%以下を満たしている。好ましくは、圧縮永久歪≦20%以下、且つ反発弾性率≦40%以下を満たしている。比較例の樹脂組成物は、このような効果を与えないことが分かる。より詳細に結果を眺める。実施例3と比較例7の対比から、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体であっても、本願クレームで規定された融点観測されない要件を満たしている成分(B−1)を用いた実施例3のみで低圧縮永久歪と低反発弾性率が達成されていることが明瞭である。一方で、水添スチレンブロック共重合体であっても、スチレン含量が25質量%以下、且つtanδピークが−20℃未満領域に存在する成分(A−1)および成分(A−2)において本願発明の効果が達成できることが分かる(実施例2と比較例1との対比、実施例3と比較例4の対比など)。比較例2〜比較例6の結果から、水添スチレンブロック共重合体のみで本願発明の効果を発現させることは難しいことも明らかである。
水添スチレンブロック共重合体のみからなる比較例2の樹脂組成物は、なるほど圧縮永久歪≦24%と反発弾性率≦54%を満たしているが、−60℃〜+80℃領域に二つ以上のtanδピークを示さす、また+10〜+50℃範囲においてtanδピークを持たないので室温付近の応力吸収性が劣ることが予想される。
圧縮永久歪、または反発弾性率の変化率に着目してみると、本願発明に係る水添スチレンブロック共重合体(A−1)を用いた場合では、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(B−1)のブレンドによって変化率は正となる、すなわち、成分(B−1)の添加によって低反発弾性率化できることが分かった(実施例1〜3と比較例2の対比)。一方で、本願発明範囲外の水添スチレンブロック共重合体(A’−3)を用いた場合では変化率は負となることもわかった(比較例1と比較例3の対比)。

Claims (5)

  1. 下記要件(a1)および(a2)を満たす水添スチレンブロック共重合体(A)95〜51質量部と、
    下記要件(b1)および(b2)を満たす、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)5〜49質量部含む樹脂組成物(ここで、成分(A)と成分(B)の合計は100質量部)であって、
    樹脂組成物が下記要件(x1)および(x2)を満たすことを特徴とする樹脂組成物。
    (a1)スチレン類に由来する構造単位からなる重合体ブロック1と、ジエン類に由来する構造単位を有する重合体ブロック2からなるブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロック1の含有量が5質量%以上13質量%以下である。
    (a2)測定周波数1.6Hzで求められた損失正接tanδのピークが、−20℃未満に存在する。
    (b1)測定周波数1.6Hzで求められた損失正接tanδのピークが、0℃以上45℃以下の温度範囲に存在する。
    (b2)示差走査量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が観測されない
    (x1)−60〜+80℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが二つ以上観測される。
    (x2)+10〜+50℃の温度範囲に、測定周波数1.6Hzで測定した際の損失正接tanδピークが一つ以上観測される。
  2. 下記要件(x3)および(x4)の一つ以上をさらに満たす樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
    (x3)JIS K6262に準拠して測定した圧縮永久歪が24%以下である。
    (x4)JIS K6255に準拠して測定した反発弾性率が54%以下である。
  3. 下記要件(x5)をさらに満たす樹脂組成物であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
    (x5)JIS K6262準拠で測定した圧縮永久歪(%)が、成分(A)単独の圧縮永久歪(%)未満である。
  4. 前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)60〜80モル%、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)20〜40モル%および非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)0〜10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
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