JP6863564B2 - 電力変換器、電力ネットワークシステムおよびその制御方法 - Google Patents

電力変換器、電力ネットワークシステムおよびその制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、電源に接続された電力変換器により電圧を確立する独立電力系統を構成するための電力変換器、電力ネットワークシステムおよびその制御方法に関する。
電力システムは巨大であるにもかかわらず、いつの瞬間でも我々の消費している「需要」と発電所による「供給」のバランスをとっている。需要の変動が起こるとすみやかに供給が追従するように蒸気や燃料を調整して発電所の出力を増減している。
この需給バランスの変動は周波数の変化に現れる。日本では周波数が50Hz(60Hz)±0.2Hz以内に収まるように運用している。この需給バランスの変化を速やかに検出するために、周波数変化率を指標としている。すなわち、周波数が下がるということは、発電が不足しているという事であるから、全発電機の回転数を上げる方向に発電を制御するという事になる。
周波数という値が電力系統全体にわたって1つの値を取っているという事は、全発電機の回転数がいかなる瞬間においても同じであるという事である。これを達成するために、同期発電機群の並列運転という手段を用いている。現在の電力系統は巨大な同期電力ネットワークシステムになっているといえる。
各同期発電機は内部に回転子があり、直流励磁回路により電磁石となって回転している。外側には固定子があって、回転磁界の変化に合わせて固定子コイルに交流電力を生み出している。
並列接続した同期発電機間に同期のずれが起こり、一方が他方より速く回転しかけるとそれはたちまち固定子コイルの電圧の差になって現れ、もう一方の同期発電機を加速する力となる。このため2つの発電機は、全く同じ回転速度で回転するようになる。あたかも片方が追加発電を行い、他方がそのエネルギーをもらって部分的にモーターとなるようなものである。これにより、回転子の位置を示す「電圧位相」も常に一致することとなる。
このことを「同期」という。
この同期メカニズムは送配電線を経由して非常に高速に伝搬し、全発電機の回転子の位相を一致させるのに有効に機能する。そのため、同期発電系統は数千kmにもおよぶ範囲で同期を維持することができるようになった。
しかし、この同期メカニズムから容易に想像できるように、遅れかけた発電機を加速するという電力のやり取りが常に広範囲な電力系統で行われているため、何らかのきっかけでその電力のやり取りが増幅され、ゆったりとした共振現象を生み出すことがある。このことを「系統動揺」という。
系統動揺の振幅が大きくなり、範囲が拡大し、電圧や電力の制限値を超えたりする地域が出てくると、そこで保護装置が働いて個別の発電機や変圧器を停止させる。電力の急変は、動揺を加速する。その影響でさらに別のエリアが停電し、停電範囲が連鎖的に拡大していく。このようなことを「連鎖停電」という。連鎖停電は広域停電を生み出す。このような停電事故は数年に一度程度の割合で発生しており、その経済的損失は計り知れない。
連鎖停電を防止するために、まず系統動揺を極力抑制することが大事である。そのため、同期発電機はその制御性を高度化し、系統の容量を拡大する動きが各国で取り組まれている。
しかしながら、近年急速に増加しつつある太陽光発電、風力発電、蓄電池などの分散電源は、同期発電機ではない。
再生可能エネルギーによる電源は、おもに直流もしくは系統周波数と異なる周波数の出力であるものが多い。そのため、系統との連系にインバータが用いられる。インバータ電源には同期発電機が持つような上記同期メカニズムがない。同期系統の安定度に寄与しないばかりか、上述の系統動揺を促進してしまう可能性を有していることが指摘されている。
その1つの例がインバータの一斉脱落問題である。これは、系統動揺や事故等で電圧が20%程度低下するとインバータが停止するように設計されていることが原因である。広範囲で電圧低下が起き、インバータが停止すると、発電が不足して動揺が拡大し、さらに他のエリアでも電圧低下が起き、インバータが停止してしまう。
事故が数秒以内に復旧すれば、同期発電機の場合、重量物である回転子が慣性で回転を続けているので、遮断器を再投入するだけで引き続き発電を継続できる。(「慣性力」があるという。)
特開2008−61296号公報 特許第4783453号公報 特許第5612920号公報 特表2013−529051号公報 特表2014−526235号公報 特表2015−503891号公報 特開2014−183600号公報 特表平9−74684号公報 特許4792553号公報 特開2008−61296号公報
角田次郎他著、「新エネルギー発電装置を用いたマイクログリッドの自立運転の検討」(pp.145-154、電気学会論文誌B127巻1号、2007年) 崎元謙一他著、「仮想同期発電機によるインバータ連系型分散電源の並列運転特性」(pp.186−194、電気学会論文誌B133巻2号、2013年) 伊東洋一著、「CVCFインバータの並列運転制御法」(tdl.libra.titech.ac.jp/hkshi/xc/contents/pdf/300062784/6、東京工業大学理工学研究科学位論文「無停電電源・分散型電源システムのディジタル制御と高性能化に関する研究(第4章)」平成19年6月)
しかし、インバータ電源は「慣性力」が生じる部分がないので、一旦停止すると自然には復旧できず、停止したままの状態となってしまう。これにより系統動揺がさらに拡大することもありうる。
このように従来型同期電力系統では、あくまでも同期発電機群が系統周波数と電圧を維持する役割を負い、インバータ電源はそこに電流を供給するだけの従属的な役割を果たしている。系統に依存して運転しているインバータ電源は、「同期化力を持たない」と表現される。
このように同期電力系統に接続するインバータ電源の運転方法は、「系統連系運転」というものになっている。基本的に系統の電圧を瞬時々々に測定し、それに合わせて、指定された電力を送り込むのに必要な電流になるよう電力変換素子のスイッチングを行い、電流を制御している。このようなインバータ電源は「電流源」(CSC:Current Source Converter)という。系統電圧に依存しているため、送配電線の事故時の電圧低下に反応して停止したり、系統動揺を引き起こしてしまったりする。
インバータ電源の運転方法には、他にも「自立運転」というものがある。基本的に自らの時刻情報をもとに交流電圧を作り出すため、「電圧源」(VSC:Voltage Source Converter)という。自立運転には「周波数可変運転」や「周波数固定運転」、および「電圧可変運転」や「電圧固定運転」などがある。周波数可変はモーターなどの回転数を可変させて効率的に運転するものである。周波数固定は、UPS電源のように電気機器に電圧を供給するものである。電圧固定、可変を含め、いずれの運転方法とも、インバータ電源を同期電力系統に接続させることはできない。その理由は、同期系統の周波数が50Hzまたは60Hzを中心に需給バランスを取るために、わずかながらも常に変動しているためである。このような系統に接続するには、自立運転では不可能で、系統連系運転にするしか方法がない。
しかし、再生可能エネルギーを大量に系統に導入しようとすると、インバータ電源を大量に系統連系することになるが、それには限界がある。なぜなら同期発電機群が周波数を維持しているのであって、同期発電機群の占める割合が小さくなると系統全体の「同期」する力が弱くなり、周波数が維持できなくなるからである。系統に連系している大量のインバータ電源は、電流制御しているだけなので系統の擾乱を吸収できないからである。このような状態では、再生可能エネルギー大量導入への切り札のように言われている系統増強策もこの問題の根本的な解決策とはなりえない。
また、再生可能エネルギーが大量に系統に導入され、需要の少ないときにそれらによって発電すると、火力や原子力の発電出力を各発電機の構造等によって決まる最低出力よりも下げる必要が生じるという「下げ代不足問題」が発生する。
欧州では、出力ベースで60%以上もの再生可能エネルギーが導入されているかのような報道があるが、これは一国の話であり、全欧州で複雑に接続しあっている電力システムとしては、未だ小さな割合にしか過ぎない。
このように、これまではインバータ電源を大量に導入して、系統を安定に運転制御する方法が見出されていなかったので、再生可能エネルギーの導入目標は小さく抑えざるを得なかった。
従来の系統連系型(電流制御)の先行知見として、以下のような方法が提案されているが、解決策となっていない。
例えば、マイクログリッドのような小さな電力系統においてインバータ主体で構成し、周波数安定化手法として、マスター電源を準備してそれに電圧を確立させ、その他の電源をスレイブとして従来型の系統連系をさせる方法である(非特許文献1参照)。これは従来型同期系統を小さくしただけであり、同期化力の問題を解決していない。
また、従来型の電力系統において、接続するインバータの制御回路に回転機の動揺方程式を組み込み、仮想同期化力を持たす制御方式が考案されている(非特許文献2参照)。しかし、インバータ電源が主力を占める電力系統になった場合、相互に及ぼす影響や、事故時の過渡的現象や負荷のアンバランスや振動発生など想定外の問題もあり、確立した技術とはなっていない。
また、従来の自立運転型(電圧制御)の先行知見としては、以下のような方法が提案されているが、これも解決策となっていない。
例えば、CVCFインバータの並列運転について述べたものがあるが、基本的に並列するインバータに電圧や周波数、位相のずれがあることを想定し、そのために横流が発生するという課題を解決する制御方法を記述している(非特許文献3参照)。そもそも、電圧、周波数、位相が一致していればこのような問題は発生しないが、これらを自立型(電圧制御)で達成するのは困難なのでこのような横流抑制方法を提案している。
また、複数のインバータを並列に接続する母線から電力を負荷に供給する際、インバータ間に生じる横流を抑制するのに好適なインバータの電圧補正方法と回路について述べている(特許文献1参照)。そもそも周波数信号を各インバータに伝送しているので、広く分散配置されたインバータに適用するのは困難である。
自立型のインバータがそれぞれ電圧を確立して並列運転をする際にはまず周波数を一致させなければならないが、これについては外部の伝送回路を通じて同期を取る方法が提案されている(非特許文献3、特許文献1参照)。但し、これは隣接しているインバータ間だから物理的に可能になっているのであって広く分散配置されたインバータに適用するのは困難である。
周波数が同期できると、次に問題なのは電圧の大きさや位相のずれによる横流の発生である。これについては様々な提案がなされているのでそれらを応用することは可能である。しかし、これまでに提案されてきた方法では、離れたインバータ間で周波数を同期させるという本質的な問題については実現することが困難で、いまだ解決に至っていない。
また、電力系統を多端子型非同期連系装置で分割し、複数の中小規模電力系統の集合体にする提案がなされているが、分割された電力系統の中でインバータ電源が主力を占める場合の手法についての提案はされていない(特許文献2参照)。
時刻同期手法について記載があるが、電力単位での輸送に関するタイミングを計るための手段であって、インバータ電源の同期化力や慣性力に関わる解決手段を提供するものとは関係がない(特許文献3参照)。
特許文献4では、太陽光発電予測情報を衛星を使ってやり取りすることが書かれているが、電力系統に擾乱を与える対策について解決手段を提供するものではない。
特許文献5では、複数の風力発電装置に対し電気パラメータの測定値の測定時点を一致させるため、GPS衛星信号を使い、時刻信号同期化を行っている。これにより絶対時間を一致させることで同一時点での有効電力/無効電力/電圧を整合させることができ、負荷分担を調整することができるとしている。しかし、この手法をもってしても電力系統の擾乱というような課題に対して、何らかの対策手段を提供しているわけではない。
特許文献6では、電圧ベクトルの位相を測定するフェーザー測定ユニット(PMU)を使い電力システムの電力調整を行うことが提案されている。PMUの測定時刻が一致していないと電圧ベクトルの進み/遅れの相互関係が分からなくなるため、精度の高いGPS衛星から得られる時刻信号を使用してPMU時刻を補正している。この測定結果を使って送電網の電力潮流の配分を知り、風力発電機の出力を制御することが記述されている。しかし、この方法も従来の風力発電の出力変動による系統擾乱という課題に対して根本的な解決手段を提供するものではない。
特許文献7では、複数の電力変換器(パワーユニット)が並列接続され、PWM信号におけるキャリア信号を同期させることにより、並列運転を可能にする方法が提案されている。しかし、キャリア信号はスイッチング周波数に依存しているので、本提案は同一仕様のパワーユニットの並列運転にかかわるものであるといえる。例えば無停電電源ユニット(UPS)の複数ユニット並列化の対策である。どのようにキャリア信号を伝搬するかについても記載はない。また、電力系統に太陽光発電、風力発電、燃料電池、電気自動車、蓄電池など、多様な出力を有するインバータ電源が距離的にも広範囲に離れて電力系統に並列に接続される場合に同期信号を伝える手段について提案しているわけではなく、異なるキャリア周波数の場合の対策も提案していない。さらにインバータ電源が電力系統の擾乱の原因となるという課題に対しての解決手段を提供するものではない。
特許文献8では、単独運転検出の手法として多く用いられている無効電力注入法において、多数のインバータがばらばらに無効電力を出力すると、インバータ間に横流が流れて保護リレーが正常に働かなくなる可能性があるため、同期した無効電力とするためにGPS時刻信号を使おうというものである。電力系統の停電時にインバータを確実に停止させるための保護装置の工夫である。無効電力を多くのインバータで同期させて周期的に注入するということはそもそも電力系統の擾乱を作り出すことになり、インバータ電源が電力系統の擾乱の原因となるという課題の解決にはなっていない。
特許文献9および10は、特許文献7と同様にUPS並列運転時の電流バランスを補償する制御回路の提案であって、並列運転インバータの分担電流値が定められていて、実際の出力電流値がこれと異なる場合の補償方法が記載されている。電力系統においては太陽光や風力のインバータが多数あってその出力が時々刻々と変動しているような場合に分担電流を何らかの手段で算出して伝達しなくてはならない。したがって、広く分散配置されたインバータ電源を大量に導入した場合にも系統を安定に運転制御する手段を提示するまでには至っていない。
このように同期電力系統において、多種多様のインバータ電源が過半を占めて連系し、安定な運転をすることについては未だ実例がなく、運転制御方法について確立したものがなかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来型の同期電力系統から、独立あるいは非同期に連系した、電力系統において正確な時刻で制御される電力変換器を介して連系した分散型電源群によって固定周波数の系統電圧を確立することにより、再生可能エネルギーや蓄電池などを大量導入し、需要に合わせて自動的に出力が調整されることを可能にする電力変換器、電圧制御型電力ネットワークシステムおよびその制御方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、独立電力系統に接続して他の電力変換装置と並列運転する電力変換装置であって、内部クロックに基づき内部時刻情報を生成する時刻情報生成部と、接続された電源の出力電圧を変換して、接続された前記独立電力系統に対して、前記内部時刻情報に同期した位相で、予め定められた固定周波数を有する電圧を創出する電圧源型の電力変換部と、前記独立電力系統の系統電圧を測定する電圧測定部と、を備え前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記電圧測定部で測定した前記独立電力系統において確立された系統電圧の位相情報に基づき前記内部時刻情報を補正し、前記電力変換部は、負荷の変動に応じて、並列運転する前記他の電力変換装置とともに自立的に、前記内部時刻情報に同期した位相を変化させて前記予め定められた固定周波数を有する電圧の位相と前記系統電圧の位相との間に位相差を生じさせること又は前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより、前記独立電力系統に有効電力又は無効電力を送り込む、若しくは前記独立電力系統から有効電力又は無効電力を引き込み、前記予め定められた固定周波数および前記予め定められた固定周波数を有する電圧、ならびに前記同期した位相は、前記独立電力系統に接続された前記の電力変換装置と同一となることを特徴する。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力変換装置において、外部の時計によって生成された外部時刻情報を取得する外部情報取得部をさらに備え、前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記外部時刻情報に基づき前記内部時刻情報を補正することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力変換装置において、前記外部時刻情報は、GPS信号、電波時計用タイムコードおよびネットワーク・タイム・プロトコル信号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力変換装置において、前記電力変換部は、前記電力変換部が創出する電圧および前記電力変換部に流れる電流を検出して前記独立電力系統のインピーダンスを判定し、前記独立電力系統のインピーダンスに応じて、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより無効電流を制御し、又は前記内部時刻情報に同期した位相を変化させることにより有効電流を制御することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、独立電力系統を、予め定められた固定周波数、位相および電圧で固定周波数・固定電圧制御する電力ネットワークシステムであって、内部クロックに基づき内部時刻情報を生成する時刻情報生成部と、電源と、前記電源に接続され、前記電源の出力電圧を変換して、接続された独立電力系統に対して、前記内部時刻情報に同期した位相で、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を創出する電圧源型の電力変換部と、前記独立電力系統の系統電圧を測定する電圧測定部と、を備えた2以上の並列運転する電源装置を備え、前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記電圧測定部で測定した前記独立電力系統において確立された系統電圧の位相情報に基づき前記内部時刻情報を補正し、前記電力変換部は、負荷の変動に応じて、並列運転する他の電源装置とともに自立的に、前記内部時刻情報に同期した位相を変化させて前記予め定められた固定周波数を有する電圧の位相と前記系統電圧の位相との間に位相差を生じさせること又は前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより、前記独立電力系統に有効電力又は無効電力を送り込む、若しくは前記独立電力系統から有効電力又は無効電力を引き込み、前記予め定められた固定周波数および前記予め定められた固定周波数を有する電圧、ならびに前記同期した位相は、前記独立電力系統に接続された全ての前記電力変換部において同一となり、前記独立電力系統の電圧は、前記電源装置によって確立されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力ネットワークシステムにおいて、前記電源装置は、外部の時計によって生成された外部時刻情報を取得する外部情報取得部をさらに備え、前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記少なくとも1つの外部時刻情報に基づき前記内部時刻情報を補正することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力ネットワークシステムにおいて、前記外部時刻情報は、GPS信号、電波時計用タイムコードおよびネットワーク・タイム・プロトコル信号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力ネットワークシステムにおいて、前記電力変換部は、前記電力変換部が創出する電圧および前記電力変換部に流れる電流を検出して前記独立電力系統のインピーダンスを判定し、前記独立電力系統のインピーダンスに応じて、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより無効電流を制御し、又は前記内部時刻情報に同期した位相を変化させることにより有効電流を制御することを特徴とする。
本願発明には、大きく分けて次の3つの効果がある。
1.技術革新による経済効果
2.中小規模独立電力系統の安定化効果
3.先進国電力系統の再生可能エネルギー比率向上
(1.技術革新による経済効果)
時刻同期系統内では、主たるインバータ電源が自立運転をするため、シンプルな装置となる。スマートグリッドに要求されるような重厚な通信手段、系統連系運転と自立運転の切り替え、単独運転防止保護システムや遠隔による発電停止手段などの複雑なシステムが不要になる。
インバータは標準化され、許認可項目も大幅に減ることになり、ソフトウェアの更新で性能を向上させていくことが主流となるため、安価になる。自律分散型電源系統は、他との連動部分が少なく、セキュリティ面からも低コスト化が可能となる。再生可能エネルギー電源のコストの大きな部分を占めるインバータが低コスト化すれば、全体コストも低下する。
これらの技術革新による経済効果は、単にインバータ関連機器価格の低下に限定されるものではなく、生み出される電力の低価格化とその質の変化をもたらす。電力が化石燃料主体から、再生可能エネルギー主体になることは、従量費から固定費に移行することを意味している。すなわち電力料金が、従量料金から基本料金ベースにシフトすることを含意している。その結果、石油・ガス価格のような外部経済による電気料金の変動が起こりにくくなる。このことは電気料金の低価格化のみならず、質の変化との両面による産業創出経済効果をもたらす可能性がある。
(2.中小規模独立電力系統の安定化)
東南アジアや南米、中国、アフリカなど電源系統の弱い地域では、従来型の火力・水力電源の追設と系統強化、配電網延伸という施策がとられているが、経済合理性が小さいため進展が遅い。そのため、飛び地的にディーゼル発電を中心とした中小規模電源系統(以下「セルグリッド」という。)が数多く生まれている。世界中に無数にある離島も同様である。
しかし、このような電力系統は系統規模が小さく、再生可能エネルギーといった天候により発電量が激しく変動してしまう設備が導入されると、安定性を保つのが難しいという問題がある。このような地域の送配電網を流用可能な時刻同期方式は、電力系統の安定性を乱すことなく、より多くの再生可能エネルギー発電を導入することが可能である。
基幹系統が延伸してきた場合には非同期連系方式により接続することで、ハイブリッド化し、安定で信頼度の高い、かつ再生可能エネルギー比率の極めて高い電力システムが構築できる。
また、基幹系統が接続されている地域でも、周波数変動、電圧不安定、停電頻発などの問題があるところは多い。そのような地域のオフィスビルや工業団地などでは深刻な問題となっているが、上述のハイブリッド化で解決できる。
(3.先進国電力系統の再生可能エネルギー比率向上)
先進国では、すでにある同期電力系統の末端にあるセルグリッドを、時刻同期系統化し、従来系統とは非同期連系装置で接続することにより、時刻同期系統内に大量の再生可能エネルギー電源を取り込むことができるようになる。
時刻同期電力系統では、インバータ電源は基本的にすべて電圧制御モードになっているため、需要に合わせて電力が供給され、需要がないときには電力が供給されない。再生可能エネルギーが発電し過ぎるときは、電圧制限により自律的にそれぞれのインバータが出力を絞る仕組みとなる。
周波数調整が必要なくなるので、時刻同期系統内が100%再生可能エネルギー源でも安定に系統を維持できる。但し、電力供給に不足があるときは、非同期連系装置を経由して既存電力系統から電力を受給する必要がある。既存電力系統に時刻同期系統をサポートする調整機能を担わすことで、全電力系統としての再生可能エネルギー比率を飛躍的に高めることが可能となる。
(a)は、本発明の一実施形態に係る時刻同期電力系統システムの概念図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る時刻同期電力系統と従来の電力系統とを非同期接続した場合の概念図である。 (a)は、電力系統の構成例を示す図であり、(b)は負荷側のベクトル図であり、(c)はインバータ電源側のベクトル図である。 (a)は、時刻同期した場合のインバータ電源側のベクトル図であり、(b)は、時刻同期した場合の図2(a)の電力系統の等価構成を示す図である。 閉路方程式を説明するための図である。 電力系統の電圧カーブとインバータのGPS時刻予測による予定電圧カーブを示す図である。 本発明の一実施形態に係る時刻同期インバータの同期補正部の構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る時刻同期電力系統と従来の電力系統とを非同期接続した場合の概念図である。
本発明では、電源に接続されたインバータをインバータ内部クロックに基づき固定周波数の定電圧源として自立運転させ、インバータ内部クロックを他の電源に接続されたインバータ群と同期させることにより「同期化力」を持つ電圧源型電力系統を作ることが可能である。また本発明では、インバータの内部クロックが一定周期で作り出す0−2πの繰り返し位相変化により、各インバータ電圧源が「回転力」や「慣性力」を持つため、系統を安定に運転制御することが可能である。
自立運転するインバータ電源を同一系統内で並列運転するためには、電圧を作り出すための位相を全インバータ間で正確に同期させる必要がある。一旦同期すれば、インバータの内部クロックはCPUやマイコンを動かしている水晶発振子(クォーツ)などの正確なものであるので、1μ秒程度の誤差が生ずるまでは、位相作成回路は修正の必要なく運転でき、時刻情報が「回転力」や「慣性力」を疑似的に生み出す。
同期誤差が大きくなる前に、位相作成回路の定期的な時刻補正を行うことは、繰り返し位相変化を全インバータ間で同期させることになるので、本電力系統に「同期化力」を与えることになる。
系統電圧については、すべての電源に接続されたインバータにおいて同一の基準電圧を固定周波数・同一位相で同期させて発生させることにより、系統内の電圧を一定に保つ電圧源型電力系統になる。この電圧源型電力系統は、需要に応じて電力を供給し、需要が少ないときは、電源出力を絞ることで電圧を保つので、個々のインバータにおいて出力調整をすることを特徴とする電力系統となる。負荷との位置関係において電圧低下が起こるが、インバータの最低出力は極めて低く、複数のインバータが自動的に出力を調整して電圧を維持するため、いわゆる「下げ代不足問題」が起こらなくなる。
位相作成回路の定期的な時刻補正方法として、本発明では、GPS、インターネット、電波時計といった時刻信号から得られる情報を用いる手法と、これらのインバータが作り出す合成電圧の周波数情報から得られる情報を用いる手法と、その組み合わせを行う手法との、合わせて3つの手法を提案する。
上記3つの手法により、インバータの内部時刻信号を修正することにより、複数のインバータの位相作成回路を同期させ、全インバータ電源出力を仮想的に同期させることができる。
この本発明の同期方法は、従来の同期機による同期方法とは異なり、外部情報による正確な時刻又は後述する内部情報(8e.位相作成回路の定期的な時刻補正方法、参照)と、内部クロックとにより同期化力や慣性力を仮想的に作り上げるという新たな考え方(以下、『時刻同期』方式という。)に基づく。この同期メカニズムより、自立電源型のインバータを複数並列運転させて、インバータ電源出力が過半を占める「時刻同期電力系統」を可能にする。これによって、この電力系統内は極めて正確で固定された周波数となる。
位相については、同期された時刻から、計算により一定時刻早めたり、遅めたりした電圧出力により実現し、これによって電力系統に電力を送り込んだり、引き込んだりできる。
インバータにはフィルターリアクトルに加えて、系統連系用のリアクトルが必要である。これによりノイズやリップルに起因するわずかな電圧差によるインバータ間の横流が抑えられ、があるため電力系統の変動は、局所的なものとなる。系統連系用のリアクトルは変圧器があるときはそのリアクトル成分が利用できるので省略することができる。事故があっても、近傍のインバータが低電圧で停止すれば、事故は除去でき、遠方のインバータには影響を与えない。
以上のようなことから、インバータによる「時刻同期電力系統」は、従来の同期発電機による同期電力系統の課題をすべて解決することができる。さらに周波数・電圧が固定化されるため、極めて安定で高品質の電力系統となる。
また、本発明を使用すれば、離島・限界集落・孤立電源系統など、従来型の電力系統と接続していない独立電源系統では、そこに連系する電源をすべてインバータ電源とし、時刻同期により固定周波数・固定電圧制御をおこなうことにより、再生可能エネルギー主体の電源系統を確立して運用することができる。
時刻同期電力系統では、新しいインバータ電源を接続するのは極めて容易である。インバータを時刻同期させて電圧の大きさを調整すれば電気的なショックなしに容易に接続が可能である。系統連系保護装置などが不要になる。
時刻同期電力系統に、従来型同期発電機を接続する場合は、従来のものと同じ保護装置などをつければ、従来型同期系統に接続するのと全く同じように接続が可能である。ただし、従来型同期発電機の出力が、周波数に影響を与えるようなレベルになってはいけないため、その量には制限が設けられる。
本発明では、上述の「時刻同期電力系統」を従来型同期電力系統と共存させるハイブリッド型電力系統も可能である。時刻同期電力系統は、周波数が正確に固定されてしまうため、従来の電力系統とは直接接続できない。したがって両者の接続点に、交流/直流/交流の非同期連系電力変換装置をおいて接続する必要がある。これは、多端子型でも2端子型のバック・トゥ・バック方式でも構わない。この非同期連系装置の従来同期系統側に対する接続端子は系統連系運転を行い、時刻同期電力系統に対する接続端子は自立型の時刻同期運転を行う。
遠隔地域や一定規模の需要家(事務所、ビル、工場、キャンパス、団地等)などは受電点に非同期連系装置を置けば、従来型の電力系統と接続しながら、地域・需要家内を時刻同期系統とし再生可能エネルギーを大量に取り込むことを可能にすることができる。
本願発明では単独系統においても、ハイブリッド型電力系統においても、再生可能エネルギーを大量に取り込んだ電力系統を実現し、その運転制御を可能とする。
マイクログリッドは一時期脚光を浴びたが次の課題が解決できなかった。すなわちマイクログリッドは系統に接続しているときはインバータ電源が電流源として運転し、系統停電時には電圧源に切り替えなければならず、系統復電時には再切り替えが必要だった。この制御は困難だった。一方本願発明は、系統とは非同期連系しているうえに、セルグリッド内のインバータは電圧源として運転しているため切り替えが不要である。そのため、マイクログリッドの運転方法として実用化が期待できる。
尚、本明細書においては「インバータ」を例に挙げて説明しているが、本発明では、「インバータ」に限定されず、太陽光発電システムや家庭用燃料電池等において利用されるパワーコンディショナーや、バッテリーの充放電装置等を含む電力変換機能を有する装置であれば置き換えが可能である。図中にはVSC(Voltage Source Converter)という表現も使用している。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<1.時刻同期電力系統とは>
本願発明の時刻同期電力系統は、極めて正確な時刻情報を基にインバータ電源が個別に時刻同期した基準周波数と基準電圧を同一位相で作り出し、それにより同期化力・慣性力を得る電力システムである。
図1(a)に、本発明の一実施形態に係る時刻同期電力系統システムの概念図を示す。中小規模の電力系統において、分散電源102につながれたインバータ101が同期された時刻信号をベースに駆動される電圧突合せ型の電圧源並列運転電力系統が「時刻同期電力系統」(Time−Based Synchronized Grid)である。同図の下部にある折れ線グラフはインバータ内部の位相の変化を表す。インバータ内部の時刻を基準とした位相変化が、同系統内の過半のインバータ101において同期していることにより、電圧ベクトルが同期して回転し、同期化力・慣性力を生み出す。これが、インバータ電源100が過半を占める電力系統の新しい同期方式になる。
系統内のすべてのインバータ電源100が時刻同期インバータである必要はない。一部のインバータや分散電源は従来型電力系統に連系接続するのと同じ電流型の接続が可能である。しかしこれらは同期化力を持たないため、この系統内の同期化力を強めるためには過半のインバータ群が時刻同期インバータである必要がある。
同期時刻の誤差が1ミリ秒を超えるようなレベルになることは望ましくない。後述するようにこれ以上の悪い精度でも運用は可能であるが、精度が高いほうが望ましい。
外部信号の精度が1ミリ秒あると、それは50Hz同期系統においては18.0度もの位相差にあたる。これではインバータ電源100間に大電流の横流(internal power flow)が流れてしまうので、本時刻同期電力系統は機能しなくなってしまう。
内部時刻の同期を補正するために外部より同期された時刻信号を入力する。これにはGPSやインターネット、電波時計、自ら接続する系統電圧など多様な情報源がある。
しかし、後述するように、時刻同期系統において自ら接続する系統電圧は、多数のインバータ電源100が作り出した平均的な電圧カーブになるため、その位相を参照して補正する方法により、時刻精度の許容範囲が大きくなる。
それでも電圧の大小により大電流の横流が流れる可能性があるがこれに対しては電圧垂下特性や、インバータ内部のDC側電圧監視によるAC電圧補正を行うことで横流を抑制することができる。
(実機シミュレーション)
AC200V単相、DC375VのAC/DC双方向インバータ(PWM制御方式、出力3kW)を製作し、内部時刻情報を古野製GPS世界時計による1秒ごとのPPS出力を使用して同期させ、3台を自立運転同期させた。
AC出力側は100%負荷、70%負荷、50%負荷と変動させたが、均等に負荷配分された。連系リアクトルはおよそ1ミリヘンリーであった。
試験は問題なく実施され、複数の時刻同期インバータによる電圧制御型自立電力系統が安定に運転できることが実証された。
<2.従来系統との非同期接続>
図1(b)に、本発明の一実施形態に係る時刻同期電力系統に従来の電力系統を非同期接続した場合の概念図を示す。図1(b)に示すように、時刻同期電力系統では周波数が固定化されるのに対し、従来の電力系統では、わずかながらも周波数が常に変動している。
たとえば50Hzの時刻同期電力系統では、正確に20ミリ秒ごとに0−2πの周期で電圧を作り出すので、50Hz固定の電力系統である。一方、従来型の電力系統は、同期発電機間の電力のやり取りや、需要変化の調整により周波数は揺らいでいる。日本では50Hz±0.2Hzの範囲に収まるように調整されている。
従って、この両者を直接接続することはできない。しかし、周波数変換所のように直流部を介した接続、バックトゥバック(BTB)のような非同期連系装置を両者間に設置することで電力の融通が可能となる。このようにした電力系統は、時刻同期電力系統側に大量の再生可能エネルギー電源をインバータ経由で接続しても安定に運転できるため、全体として、再生可能エネルギー比率を大幅に増加させることが可能になる。
尚、この図1(b)では蓄電池は図示していないが、多端子型非同期連系装置の1つの接続端子に接続すれば、電力のバッファーとして機能を果たすが、本発明において必須の条件ではない。
このような従来型電力系統との非同期接続の実現プロセスとしては、以下のようなものが考えられる。従来型電力系統の送配電網はそのままに変電所レベルで上流・下流に分割し、上流側は従来型同期電力系統、下流側はインバータ電源を主とした自立型電圧制御系統とする。
上下流の接続部は変電所の遮断器に代えて、バック・トゥ・バック(BTB)や多端子型非同期連系装置(デジタルグリッドルータ)に代表される交流/直流/交流の非同期連系装置を用いて電力融通を可能とする。
同非同期連系装置は、上流側インバータにおいては系統の電圧および周波数に依存した電流制御(系統連系モード)を行い、下流側インバータにおいては上流側インバータと同様に電流制御(系統連系モード)を行うか、時刻同期して固定周波数・固定電圧を自ら発生した電圧制御(自立モード)を行う。
後述するように(<19.時刻同期電力系統内における電圧源・電流源インバータの比率>、参照)、時刻同期により同期化力・慣性力を持たせたインバータ電源の割合は50%を超えることが望ましく、より望ましくは3分の2を超えることが望ましい。そのため、そのような条件を満たす限りにおいては、下流側インバータを電流制御(系統連系モード)で運用することはできる。
同非同期連系装置の下流側インバータおよび系統下流側に連系する全てのインバータは、時刻信号により仮想同期し、周波数と電圧の同期した独立型電圧制御系統とする。この時刻信号は、GPSやインターネット、電波時計、系統電圧など多様な情報源から得られる「同期した時刻」を基に得られ、内部時計のクォーツシグナルにより仮想回転ベクトルを有した電圧を作成することにより、すべてのインバータ間で電圧同期が保たれる。また、仮想的な慣性力や同期化力が生まれる。
これにより、セルグリッドは基幹系統と電気的に連系し、電力のやり取りが可能となる。この連系には多端子型非同期連系装置を使用することも可能である。時刻同期系統側との接続を電圧制御とした場合、電流制御ではないため、単独運転の検出というような問題がなくなる。単独運転保護継電器の設置も不要となり、単独運転検出の協調の問題もなくなる。また事故時の一斉脱落を抑制する制御(FRT:Fault Ride Through)も不要となる。インバータ個々の過電流・低電圧保護で事故点を除去することが可能となる。
<3.時刻同期電力系統の電力供給>
時刻同期電力系統では、周波数が固定化されるため、図2(a)のような構成の電力系統において、図2(b)、(c)のようにベクトル図で負荷側、インバータ電源側の電圧・電流をそれぞれ表すことができる。ここで、E1,E2はそれぞれインバータ電源1,2の電圧である。X1,X2はインバータ電源の外部に位置するインピーダンスであり、柱上変圧器や配電線のインピーダンスを含んでいる。抵抗分も考慮しなくてはならないが、非常に小さいため、変圧器のリアクトル分と比較すると無視できると考えた。X1にはE1からE2の間の配電線のインピーダンスが含まれていると考える。X3とR3は負荷のインピーダンスでX3はリアクトル分、R3は抵抗分を表している。Vは配電線の電圧であると同時に負荷の電圧になり、同一の値を取る。
図2(b)で示すように、電圧Vに対し、負荷電流i3は、R3とX3が作る電流ベクトルとなるので、X3・i3とR3・i3が作るベクトル和とベクトルVが一致する。
図2(c)で示すように、電流i3は電流i1とi2の和になるので、それぞれの電流位相が異なるようにすることができる。この場合、同図からわかるように電圧E1,E2の位相も異なることとなる。この場合のE1,E2の大きさはX1,X2のインピーダンスで定まる。
ここで、図3(a)のようにE1,E2の位相を一致させることができれば、電流i1とi2の位相はi3の位相と一致し、電流i1とi2の和はi3と等しくなる。また、X1,X2における電圧降下X1・i1とX2・i2は等しくなり、電圧E1,E2の大きさも位相も等しくなる。この状態は、図3(b)のように、E1とE2がその出力側で接続されていて、1つの発電源のように電圧も位相も一致しているのと等価であるといえる。変圧器を介さない配電線レベルでは抵抗分も考慮する必要があるが、結果は同様で電圧と位相を正確に一致させれば1つの発電源とみなすことができる。
このように、同一系統内にある複数のインバータ電源が主たる電力供給源であって、電圧と位相と周波数を同期させて出力することが「時刻同期電力系統」の特徴となる。
<4.時刻同期電力系統のメリット>
従来型の同期系統が“周波数変化を見ながら出力を瞬時々々調整して需給バランスを保たなければならない”のに対し、時刻同期電力系統では、“個々のインバータ電源が、自己の持つ正確な時刻により周波数と位相を基準値に維持しつつ、フィードバック回路により出力電圧を一定に保つことにより、その電力系統内での同期を保つ”革新的な電力系統であるため、周波数も電圧も安定で再生可能エネルギーを大量に導入することが可能となる。
従来型同期電力系統に対し、時刻同期電力系統は以下のような優れた点がある。
(1)同一電力系統内のあらゆる場所で電圧が維持され、各インバータの出力は自動的に負荷を含めたインピーダンスにより自律分散的に調整される。
(2)接続するインバータ電源は外部時刻情報を基に作成した、自らの時刻情報により一定周波数、一定電圧の正弦波電力を独立に出力するだけであるため、自己完結型の自律制御となっている。
(3)従来の電力系統のように±0.2Hzというような周波数変動が原則なくなり、±0.0Hzで固定化されるうえ、電圧および位相も同一系統内で1つの基準値に固定化されて運用されるので、極めて高品質の電力となる。
(4)周波数は従来型同期系統で使用されていた値(たとえば50Hzあるいは60Hzなど)を踏襲することで既設電力設備を流用できる。
(5)新たにインバータ電源を接続するときに、周波数・位相・電圧の同期がとれているので電流をゼロにする操作を自動化すれば、プラグアンドプレイのように簡便に着脱可能となる。
(6)事故が起こると、近傍のインバータのみが低電圧や過電流になり、速やかにゲートブロックされ、事故電流の供給を止めることができる。インバータ電源の内蔵リアクトルにより事故電流が大きくならず系統内の遮断部の遮断容量が小さくて済む。
(7)速やかに遮断部で切り分けられるため、事故点より遠方のインバータは需要家に電力を供給したまま運転継続が可能である。
(8)自立型独立電力系統となるため、上位系統の停電事故等に対し、カスケード停電がなくなる。
(9)離島などで基幹系統と接続していないセルグリッドで再生可能エネルギー電源を連系する場合、変動が大きいうえに、変動を吸収する同期化力もないため、主電源であるディーゼル発電機の作る周波数が安定せず制御が難しかった。時刻同期系統ではすべての電源が安定周波数で駆動されるため、独立系統の制御が安定で複雑な保護システムが不要になる。
<5.時刻同期電力系統特有の条件>
時刻同期電力系統では次のようなことが新たに必要となる。
(1)各インバータは自立運転をするため、負荷の増減に合わせて自動的に出力が定まる。これにより中央からの遠隔制御による再生可能エネルギーの出力抑制は不要となる。
インバータ電源が負荷を超えた出力を出そうとすると、系統電圧が上昇し、インバータのDC側電圧も上昇する。そうすると太陽光発電の場合はIV特性により自動的に電流が抑制される。風力発電でも同様に翼のベーン制御がなされ負荷を超えた発電が抑制されることとなる。ディーゼルやガスエンジン等の内燃力発電機、蓄電池、燃料電池、水力発電、ガスタービン発電、地熱発電などあらゆる分散電源は自立運転モードでは負荷に合わせた出力調整が行われるので、需要を超えた出力を出さないように自動制御されることとなる。発電設備には自立運転可能な制御システムが組み込まれていることが必要である。
(2)同じ周波数であっても、従来の電流制御型電力系統は多少の周波数変動があるため、直接接続できないため、図1(b)で説明した非同期連系を行う必要がある。
(3)非同期連系装置が外部系統に対して系統連系して出力を送り出した場合、時刻同期系統側から見ると需要が増えたのと同じ状況になる。この際各インバータの出力分担が自動的に決まる。非同期連系装置の時刻同期系統側は他のインバータ電源と同じ電源に見え、需要のインピーダンス配分に合わせて電力を供給できる。そのためにはその制御回路が必要となる。
(4)非同期連系装置も含めてインバータ電源が能動的に出力を出したり、減らしたりすることも可能である。この場合は、時刻同期系統の電圧と位相に対し、意図的に自己の電圧を増減したり、位相を増減したりすることで意図的な出力調整が可能となる。また、有効電力と無効電力を独立に制御することが可能である。そのためには制御回路の運用にそのアルゴリズムを組み込む必要がある。
(5)従来型同期電力系統では、系統停電時にインバータ電源が運転継続しないように単独運転検出保護継電器を義務付けているが、時刻同期電力系統では不要となる。インバータ電源は自立運転をしているので、系統停電時でも近傍に電力を供給できる災害に強い電力系統となっているため、停電時の安全対策について従来と異なる方式を構築する必要がある。
(6)インバータ電源が非絶縁の場合、直流分の流出・流入が起こる可能性がある。これを検出して抑制することが必要となる。
<6.時刻同期電力系統の電力の配分>
時刻同期系統において各地点の電圧や電流は、インバータ電源の起電力と受動的な電気素子を流れる電流による電圧降下が等しくなるという「キルヒホッフの第2法則」を使った閉路方程式で解くことができる。
閉路方程式の一般系はどの閉路にも起電力(E1,E2,・・・,En)を含み、
Z11・I1+Z12・I2+・・・+Z1n・In=E1
Z21・I1+Z22・I2+・・・+Z2n・In=E2
・・・
Zn1・I1+Zn2・I2+・・・+Znn・In=En
となる。
ここでZii(i=1,2,・・・,n)は着眼している閉路の1周にかかる抵抗の総和である。また、Zij(i,j=1,2,・・・,n)はj番目の閉路電流によるi番目の閉路の電圧降下の増減の度合いを表している。
例えば、図4のような電気回路において、Eがインバータ電源、Ztransが柱上変圧器、Zdisが需要家までの線路インピーダンス、Loadが需要とする。時刻同期電力系統の原則として、全てのEは同位相で同電圧となる。Ztransの柱上変圧器はほぼ同じインピーダンスを持つと考えられる。Zdisの線路インピーダンスもほぼ同じと考える。
図4の閉路方程式を、Ztrans,Zdisを20ミリΩとし、Loadを1オームとして解くと、ILは100A流れ、Idisはゼロとなる。この関係から読み取れることは、遠方にある閉路の電流も隣接する閉路に影響を及ぼし、更にその隣接閉路に影響を及ぼし、結果して着眼している閉路に影響するという事である。分散したインバータ電源は、部分的にも全体的にも時刻同期電力系統の電圧維持に貢献しあうことがわかる。
このように時刻同期電力系統における潮流計算は、線形になることが分かる。このことは従来型同期電力系統における潮流計算が、非線形であったことと比較すると格段に設計がしやすくなることが予想できる。
<7.既存系統電力設備の流用>
50Hz系統と60Hz系統では、使用されている柱上変圧器や電線、碍子、保護継電器など様々な点において、異なる仕様となっているので、使用されている周波数を変えることは得策ではなく、既存設備をそのまま使って、独立セルグリッドを作ることが望ましい。この場合、50Hz系統では、50Hzをインバータの固定周波数として定め、60Hz系統では60Hzをインバータの固定周波数として定める。
しかしそれ以外の値を固定周波数として定めることも可能である。特殊な例であるが、0Hzとして直流系統化することも可能である。しかし、既存設備の流用が可能であればコストメリットは非常に大きい。
このような独立セルグリッドを、時刻同期系統化する際は、ディーゼル発電機の出力をインバータ化し、時刻同期させ、太陽光や風力発電も時刻同期させることで、周波数と電圧が固定された、安定な電力系統とすることができる。
<8.同期用時刻情報の取得方法>
同期用時刻情報には図6に示すように電波時計、NTP、GPSのような外部情報とおよび系統の電圧情報から得られる内部情報がある。内部情報は電圧測定器103で所得し、外部情報は、GPS受信機等の外部情報取得部104で取得する。
これらから得られた「同期された時刻信号」はインバータの「CPU/DSPクロック」やインバータの「内部時刻信号」を、定期的あるいは非定期的に補正する。インバータは常時は「内部時刻信号」により、「PWM/インバータ出力」を出し、慣性力・回転力を持つインバータとして機能させつつ、補正時にインバータ間の同期ずれを補正する。
8a.電波時計
電波時計は、情報通信研究機構で運用している電波であり、長波帯のJJYでは、時刻に関する情報としてタイムコードを送信している。セシウムビーム型原子周波数標準器をはじめ、水素メーザ型や実用セシウムビーム型原子時計群が用いられ、得られる正確さは1×10-13の桁に達するが、受信される電波は電離層の影響などで精度が低下する。電離層の影響を受けにくい長波の標準電波では、24時間の周波数比較平均値で1×10-11の精度を得ることができる。
しかしながら、受信したタイムコードは周囲ノイズの影響で、数ミリ秒から200ミリ秒以上のジッタ(時間のゆらぎ)が生じるだけでなく、タイムコードのデータ化けを生じる場合がある。したがって、1ミリ秒のずれも許さない時刻同期系統には不向きである。
8b.NTP時刻
インターネット上のネットワーク・タイム・プロトコル(Network Time Protocol:NTP)は、ネットワークに接続される機器において、機器が持つ時計を正しい時刻へ同期するための通信プロトコルである。
NTPでは、往復の通信時間を計測することで遅延時間の補正を行っている。具体的には、クライアントがリクエストを送信した時刻をts、サーバがクライアントのリクエストを受信した時刻をTr、サーバがレスポンスを送信した時刻をTs、クライアントがサーバのレスポンスを受信した時刻をtrとすると、通信遅延時間δは、
δ=(tr−ts)−(Ts−Tr)
で表される。これは、パケットの往復時間からサーバの処理時間を引いたものである。一方、往路と復路の通信時間に差がないと仮定すれば、クライアントの時計の遅延時間θは、
θ={Ts+Tr}/2−{ts+tr}/2
で表される。これは、サーバ、クライアントの、パケットの送信時刻、受信時刻の平均の差である。実際にはネットワークの速度にも依存しており、実力的には数ミリ秒のずれは許容されている。NTPサービスによる方法は、±10ミリ秒の精度を持つ製品が販売されているが、1ミリ秒のずれも許さない時刻同期系統には不向きである。
8c.GPS時刻
GPS測位の原理は、局所慣性系で光速c(=2.99792458×108m/s)が一定であることによる。GPS衛星には原子時計が搭載されており、10-11から10-13秒程度の極めて高精度な時刻を有している。GPS衛星と受信機がともに正確とみなせる時計をもっていれば、送信時刻(測定値)Tと受信時刻tの差にcを掛けると距離がわかる。
GPS衛星の位置を得るには、受信データに重畳された航法メッセージ信号を復調し、送信時刻と組み合わせる。受信時刻tはGPS受信機の時計の値であり、もしそれが正確ならば、受信機の位置である3つの変数(未知数)x,y,zを得るために最低三本の連立方程式があれば良い。しかしGPS受信機の時計はそれほど正確ではなく、受信時刻tも未知数とする必要がある。したがって、4つの衛星から受信することで、これら4つの未知数を求められる。
Figure 0006863564
このことは、GPS受信機の設置されている、位置の情報のみならず、時刻情報が、原子時計と同じレベルの精度で得られることを意味している。インバータ電源が設置されている場所は、固定されていて動かないので、通常GPSが車や人の移動を前提に位置を計測しているのとは異なる。連続した衛星の計測により、位置情報は精度を上げることができるので、同時に時刻情報もナノ秒オーダーの精度が得られることになる。これは、GPSを設置したインバータ電源すべてにおいて、時刻同期が達成できることを意味している。
一方時刻情報が正確であれば、3つ以上のGPS衛星により、位置情報を正確に得ることができる。複数のインバータの位置が相対的に変化することは通常考えられず、このようなことが起こった場合、GPS検出系統の異常を検知できる。
全体として、位置情報の変化がある場合は、地殻的な変化とみなすこともでき、地震予知などに応用できる可能性がある。時刻情報は以下の「8d.系統情報」に述べるように系統内で一致させることができるので精度を高くすることができる。
さらに、一旦位置情報が正確に得られた場合、1つのGPS衛星により、正確な時刻情報を得ることができる。補足するGPS衛星が多ければ、時刻情報も複数取得できその平均値は中心極限定理により精度を上げることができる。
8d.系統情報
時刻同期電力系統の電圧の変化はすべてのインバータが出力した電圧の合成したものになる。これは各インバータの内部クロックが進むに合わせて、0−2πの繰り返し位相変化を作り、それをサインカーブに置き換えたものになる。サインカーブの合成はサインカーブになるので、この合成された電圧情報は系統内のどの場所でも同じ変化になる。すなわち電圧がゼロクロスするタイミングはどのインバータにとっても同じ時刻情報になる。たとえば位相作成回路が0−20ミリ秒を繰り返しカウントするように作られているとき、このインバータを電力系統に接続して、数秒程度同期をとれば、0ミリ秒のタイミングを電力系統と同期させることができる。但し、その精度はインバータの計算能力に依存する。精度を上げるため、例えば1万サイクル分の最初の時間と最終の時間を記録し、それが正確に20ミリ秒の1万倍になっていなければ、自身のインバータ内部クロックがずれていると考えて定期的に内部時刻の補正をかけることとすると、この1万サイクル分の時間は同一系統内では共通の指標になるので、全インバータが時刻同期できることとなる。
この時間幅は1万サイクルである必要はなく、各インバータが自由に設定し、独立のタイミングで補正を実施する方が望ましい。これにより、中心極限定理が働き、精度が向上する。
8e.位相作成回路の定期的な時刻補正方法
GPS、インターネット、電波時計といった時刻信号から得られる情報によりインバータの内部クロックを定期的に同期させることは比較的容易に達成され似たような事例は数多くある。これらを外部情報(External time information)による位相作成回路の定期的な時刻補正方法(Periodical Adjustment)と呼ぶ。
また、系統情報から得られた指標で補正する方法は、同一系統内で唯一の電圧情報を利用するので系統内だけで完結してしまい誤った時刻情報であっても修正する手段がないものの時刻同期を取るのに簡便で好適である。これを内部情報(Internal time information)による位相作成回路の定期的な時刻補正方法(Periodical Adjustment)と呼ぶ。
この両者の時刻補正方法の組み合わせによる補正方法は効果的である。すなわちある一定以上の出力を有する電源はこの両者を備え、小さ目な出力のものは内部情報だけを用いる方式にすれば、コスト低減を達成しながら正確な時刻同期を達成することができる。
<9.器差・通信遅れ補正方法>
以上見てきたように、正確な時刻を得る方法としてはGPS測位法が最も精度が高いが、インバータごとの器差や衛星を捕捉できない時の内部時計のずれ、制御遅れなど様々な要因から、制御上の時刻誤差が発生すると考えられる。GPSは屋外で衛星を4つ以上補足して初めて正確な時刻情報を取得することができるので、インバータが屋内設置である場合や、何らかの原因で衛星補足ができなる場合などについての対処が必要である。
仮にGPS測位データが±2ミリ秒の精度とする。各インバータはまずGPS時刻測定データを基に独自に20ミリ秒±2ミリ秒で出力を行う。すると時刻同期電力系統全体としてはそれらの出力が合成され、共通の電圧カーブを1つだけ作ることになる。
ここでは、仮に図5の点線のカーブが電力系統の電圧カーブとする。この電圧は同一系統内のすべての場所で同一時刻に同一位相を持つ。一方、図5の実線のカーブが当該インバータのGPS時刻測定による予定電圧カーブとする。ここではGPS測位のエラーにより、2ミリ秒ほど進んでいることにあたる。
このまま、このインバータが出力を発生させると、系統電圧との電圧差により大電流が流れてインバータを損壊する恐れがある。そのため、インバータと系統の間にあるコンタクタを投入する前に、インバータ内部の位相作成回路の時刻を補正し、同期を取ってからコンタクタを投入する必要がある。
9a.周波数精度向上の原理
この方法により、全てのインバータの内部時計は同じ値を持つように同期される。この値は全てのインバータの位相作成回路の時刻情報の平均値になる。すべての位相作成回路のクロックは独立で相関がないので、サインカーブ1サイクルの平均値の分布は正規分布をなし、平均からの誤差の分散はインバータの数が増えるほど小さくなる。
したがって時刻同期系統において、インバータの数が増えるほど1サイクルの平均秒数は50Hz系統の場合、20ミリ秒に近づき、誤差分布の分散は小さくなる。これは「中心極限定理」に従う事象となる。
ここで中心極限定理について説明する。平均μ,分散σ2をもつ同一の確率分布に従うn個の事象Xi(i=1,2,・・,n)に関して、その事象の平均X(総和ΣXiをnで割った値)の分布を考える。このとき、nが大きくなるにつれて、Xの分布は平均μ、分散σ2/nの正規分布に近づく。これを中心極限定理という。すなわち、どのような確率分布に従う事象でも、その平均あるいは和(合計)をとった分布は正規分布で近似できることを示している。
インバータクロックの時刻精度が1ミリ秒であるということは、ある時刻tを1個のGPSで測定したとき、測定結果の集合の平均値はtであり、分散は(1ミリ秒)の2乗であるが、N個のGPSの測定結果の平均はtになり、分散は(1ミリ秒)の2乗/Nとなる。精度は標準偏差であるので、1ミリ秒/√Nとなる。N=1000個の場合、精度は1ミリ秒/√1000=0.032ミリ秒となる。
50Hz系統においては1台のGPSの精度で電圧を作ると、±1ミリ秒すなわち約±18度の位相ずれが起こりうるが、1000台のGPSにより補正して電圧を作ると±約0.032ミリ秒すなわち±約0.5度の位相ずれに誤差が縮小する。
このようにして、多くのGPSが測定して作り出す周波数は、非常に精度よく固定化されるといえる。
9b.他の時刻情報による時刻同期
ここではGPSだけを例にとったが、インターネット上で使用されるNTP(Network Time Protocol)や電波時計などでも精度の良い方法は知られており、今後さらに新たな精度の高い手法が生み出されると思われる。
本願発明で提案した手法は、外部の時刻測定結果を、時刻同期系統配電線に発生する電圧で補正して各インバータの時刻を同期させる方法であるので、GPSにこだわらず、これらの時刻情報を使用しても、十分な精度を得ることができる。
例えばNTPを使った場合、十ミリ秒以内の精度は得られると考えられる。このような電源の突合せを行っていくと、最初に2つのインバータで突合せて横流を抑制し、時刻補正をすると1つの周波数が得られる。この周波数に3つめのインバータを突き合わせて横流を抑制し、時刻補正をすると新たに1つの周波数になる。このようにして多数のインバータの突合せで合成された周波数は上述の中心極限定理により、外部時刻情報の平均値に近づいてくる。
9c.内部情報のみによる時刻同期
内部情報である系統の電圧情報は、接続されているインバータ電源の平均値になる外部のGPS,電波時計、NTPの情報を用いなくても、精度を上げることが可能である。接続されているインバータ電源の内部クロックはそれぞれ誤差を持っているものの、それらが合成された電圧の持つ周波数は中心極限定理により誤差が小さくなってくる。系統電圧の情報だけを基に、8d.で述べたような補正方法を採用すれば正確な時刻情報を得ることができる。この方法は外部の手段に頼らなくてよいため、経済性から見ても望ましい手法ということができる。
9d.電力線重畳情報による時刻同期
時刻同期電力系統は、電力線そのものに精度の高いタイミング情報をのせることも可能である。例えば一定間隔ごとにパルス状の信号を電力線に乗せることも可能である。接続しているインバータはこの情報をもとに時刻補正を行うことで時刻同期電力系統を構築することも可能である。
<10.回転力・慣性力の創出と同期補正のタイミング>
以上見てきたように、GPSをはじめとして、複数の外部情報や系統電圧から得られる内部情報により、インバータ出力の同期を取ることができ、それらのインバータが1つの系統電圧を作れば、合成した電圧は固定周波数の安定したものとなる。
しかしながら、時刻同期系統配電線に発生する電圧で常時同期を取っていると、系統電圧に何らかの理由で変動が生じた時にもその変動に対して同期を取ってしまい、変動を吸収する力がなくなってしまう。これではいわゆる回転力、慣性力を持っていないことになる。
そこで図6に示すように、時刻同期系統配電線に発生する電圧による同期信号は、ある一定間隔で同期を取る(periodical adjustment)のみとして、常時は各インバータのクロックで0−2πの位相変化信号を作成することとする。インバータのクロックは、通常、中央演算処理装置(CPU)クロックやマイコンのクロック、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等のクロックであり、数百MHzでカウントしており、累積誤差も1ヶ月で数秒というようなレベルにある。
したがって、このクロックで内部時刻信号を作れば数時間から数日は誤差が無視できる状態となる。内部時刻信号がPWM等の方法でインバータ出力を継続的に出すため、負荷変動などで系統電圧が変動したり、周波数がずれようとしたりしても、内部時刻信号により作られるインバータ電圧は回転力・慣性力は維持することとなる。
たまたまそのタイミングで同期信号が出て、クロックの補正が行われているとしても、各インバータが独立のタイミングをもって、定期的な時刻補正を行っていれば、時刻補正のタイミングがバラバラになるので、電力系統全体としては回転力・慣性力を失う事にはならない。したがって補正のタイミングは独立に設定されることが望ましく、かつ数時間に一度または数日に一度程度の間隔が望ましい。
これらのインバータ電源はそれぞれ補正された時刻情報で回転力を得ているのでいわゆる慣性力を有している。したがってこのようにして作られた時刻同期系統は強い同期化力を有している電力系統になるといえる。
<11.電力調整>
以上みてきたように、GPSによる時刻情報は、他の手段に比べて比べものにならない正確性を持っている。この手段を用いることにより、定期的にインバータ内部時計(クォーツ時計等)を修正し、正確な時刻を維持する。内部時計を修正せず、ソフト的に差分を保持することも可能である。
例えば50Hz系統にあるセルグリッドを、時刻同期化する場合、全てのインバータが20ミリ秒で1周期の電圧を出力する。位相を0度とした場合、毎0,10,20,30,…ミリ秒ごとにゼロ点を通過(以下「ゼロクロス)という。)することになる。これにより全インバータ出力が同期することになる。
図5(a)は横軸をミリ秒としたときの50Hzのサインカーブである。すべてのインバータがこれに比例した電圧を出力することで、時刻同期をとる。ゼロクロス時刻は毎正10ミリ秒ごとである必要はなく、全インバータに対し一定の時間分進めたり、遅らせたりする運用も可能である。すなわち、これは全体位相の調整にあたる。
11a.自動電力調整:電圧源としての働き
時刻同期電力系統は、電圧源が多数分散された電気回路になる。負荷電流は、負荷と電源の作る閉路方程式で定まる。従来型電力系統では、周波数変化率を見て発電を調整しなくてはいけなかったが、時刻同期系統ではすべてのインバータを電圧源としても、周波数が時刻により維持できるので負荷の変化に対する出力調整は、個々のインバータで自律的になされることになる。
例えば、太陽光発電の近傍で負荷が減少すれば、最も近いインバータの電圧は維持するために、電流を絞ることになる。すなわち出力は減少する。そうすれば、インバータに接続している太陽光のIV特性が自動的に開放側に近づき太陽光の出力そのものを自動的に減少させる。風力発電やディーゼル発電などは同様に、インバータ出力が減少すれば発電機出力を絞るように運転される。
逆に太陽光発電の近傍で負荷増大すれば、最も近いインバータは電圧を維持するために電流を増大させる。すなわち出力は増大する。インバータ出力が太陽光の最大出力に達したら、インバータ出力はその値を維持する。不足する電流は、次に近い他のインバータ電源から当該負荷対して追加供給される。
この機能により、時刻同期電力系統では再生可能エネルギー電源が過半を占めたとしても需要の変動に速やかにマッチングして出力が増減される。この点が従来型の電力系統と全く異なる点である。
従来型の電力系統では再生可能エネルギー電源は最大出力を追求し続けるため、需給アンバランスが常におこり、その差が周波数変化率の値に現れ、それを基に火力電源が負荷を調整するというメカニズムである。このメカニズムのもとでは、周波数が変動するのは当然であり、離島のような小規模な系統では火力電源が変動を吸収しきれず、周波数範囲を逸脱して停電事故に波及することも多い。
時刻同期電力系統では、各インバータがすでに周波数同期していて、さらに電圧維持を図るため、需要の変動に対して必要な電力しか供給しない。不要な分はインバータに接続されている電源の出力を絞ることになる。
しかし、インバータが意図的に出力を増減できないのかというとそうではない。以下に述べるように、特定のインバータが位相を意図的にずらしたり、電圧を意図的に増減したりして、有効電力・無効電力を変化させることも可能である。
11b.位相ずらしによる電力調整
時刻同期系統に接続している特定のインバータについて、位相を進めたり遅らせたりする(一定ミリ秒数進めたり、遅らせたりする)運用も可能である。時刻同期系統電圧との差によって、同系統に対し、任意の出力を意図的に出力したり、受け取ったりすることが可能となる。有効電力と無効電力の割合を変えることも可能になる。
インバータ電源間のインピーダンスは通常とても小さいため、わずかの位相のずれは、大きな電力潮流になる。したがって、時刻が正確に測れて、それに基づいた出力ができることが時刻同期系統においては極めて重要となる。
11c.電圧の大きさによる電力調整
電圧の大きさを変えることにより、電力を増減することも容易にできる。PWMを作成する際に、インバータのDC電圧とスイッチングのデューティレシオで任意の電圧を作ることができる。系統電圧のフィードバックによる補正も可能である。
電圧は通常は基準値にそろえることが望ましいが、運用上や事故時の対応などさまざまなバリュエーションに対応可能である。
<12.横流・突入電流の防止>
時刻同期系統においては、各インバータ電源は、正確な時刻により周波数と位相を同期させることができるので、電圧を正確に作り出すことができれば、並列運転は可能である。
しかし、実運用上は、機器特有の誤差や遅れが生じると考えられる。電圧突合せの場合、わずかの電圧差や位相差でも電力系統のインピーダンスは非常に小さいので大電流がインバータ間で流れることになる。これを横流という。UPSやCVCFの並列運転でこの横流を抑制する方法については数多くの手法が提案されている(非特許文献3、特許文献1、7、9、10参照)。
(キャリア周波数)インバータの制御で一般的なPWM制御では、キャリア周波数が重要となる。通常インバータを並列運転するにはキャリアを同期させるなどの方法が知られている。しかし、本発明では系統周波数を同期させればよく、異なるキャリア周波数であっても問題なく並列できる。系統連系リアクトルまたは変圧器がノイズなどによる電圧の揺らぎをも吸収して安定に並列運転を可能とすることができる。
(電圧垂下特性)他にも横流を防止するためのよく知られた手法として、インバータに電流が流れた時に数ミリΩ程度に相当する電圧降下が起こるような垂下特性を持たす方法がある。インバータ間にリアクタンス分があると、電圧差がある場合には無効電流、位相差がある場合には有効電流が流れる。インバータ間で抵抗分が支配的だと、電圧差がある場合には有効電流、位相差がある場合には無効電流が流れる。インバータが接続する系統のインピーダンスは自身のインバータ電流と出力電圧のみの検出で判定できる。接続インピーダンスを知ったうえで、無効電流の大きさから出力電圧を制御する事により電圧の微調整をし、横流を防止することができる。また、外部インピーダンスの特性によってはわずかに位相差をつけることにより横流を防止する方が効果的な場合もある。
(直流電圧連動制御)このような電圧垂下特性にもかかわらず、何らかの理由で、大電流がインバータ側に流れ込む場合、DC側の母線電圧が上昇することになる。これは系統側からの電流流入か、電源側からの電流流入かのいずれかになるので、系統側からの場合は電圧を上昇させて流入を防ぐ特性を持たすことが必要となる。電源側からの場合は、電源側の出力を絞り込む制御を行うことが必要となる。
(直流横流抑制制御)横流には直流横流もある。複数のインバータが電圧突合せで接続される場合、直流分の横流が流れる可能性がある。これを防止するために直流検出を行ってそれを抑制するようなスイッチングを行う制御が必要となるがこれについても多くの文献がある。
<13.電流制御インバータの連系>
時刻同期系統では、周波数・位相が同期しているので、インバータの制御は柔軟にできる。例えば、連系しているインバータを電流源とすることも可能である。電流源とするときは、電圧源型のインバータを使ってその作る電圧の大きさや位相を制御することで電流を調整する。実際回路では実電流を読み取り、作りたい電圧のリファレンスとの差をとり、その差がゼロになるように、PWMを制御する方法が一般的である。それに合わせて電流リファレンスを作って電流が目標値になるよう制御することができる。これは従来型の電流制御インバータであり、時刻同期系統においてもある程度連系することが可能である。
<14.事故時の挙動>
配電線や変圧器、需要家などで地絡事故、短絡事故などが起き、地絡電流、短絡電流が流れた場合、時刻同期系統は電流の急増を各インバータが検出し、抑制をかけることになる。従来の電力系統では数サイクルの事故電流の流れで保護が働き、ゼロクロスのタイミングで遮断器が動作するため、数十から百ミリ秒ほどの事故電流が継続し、被害を拡大することにつながった。
インバータ電源は数十kHzのスイッチングを行っているので、事故電流の検出も数マイクロ〜数十マイクロ秒で検出でき、オン時間を小さくし、最終的にはゲートブロックをかけて電流を遮断する。
(フォールト・ライド・スルー:FRT)さらに事故点の近傍と遠隔地では供給する事故電流に差が生まれ、事故の拡大が防げる。事故点を切り離せば、残りのインバータは速やかに出力再開が可能となるので慣性力を持った発電機と同様の機能を持つことになり、いわゆるフォールト・ライド・スルー(FRT)機能を有していることになる。
(単独運転)従来系統では、系統停電時に分散電源が単独運転しないようその検出方法について様々な研究と保護継電方式の提案がなされてきた。またその検査や認定にも膨大な費用を要していた。分散型電源の規模では負担の重いコストとなっている。単独運転を禁じている主たる理由は作業員の安全確保にあるが、一方で停電による需要家の不利益は十分に考慮されているとは言い難い。
時刻同期系統は上述のようにそもそもインバータ電源が電圧源となっているため、系統停電時には速やかに事故点近傍のみ停電し、事故を切り離し、事故点から離れたところでは電力を供給し続けるメカニズムとなっている。これらのメカニズムが自動的に行われるため、作業員の安全確保という観点からすべてを停電させるという発想にない。むしろ需要家の利益保護という観点が強いが、現代の技術をもってすれば作業員安全確保も同時に達成することが可能である。
例えば、作業前には作業対象系統の無電圧を確認の上、線路接地・短絡ワイヤを取り付けることとなっている。これは万一作業中に電圧が復旧してもこのワイヤにより電流が大地に流れ、作業員が被災することのないためである。この作業初期段階で、系統無電圧を確認する器具が故障していて、電圧があるにもかかわらず、ワイヤを取り付けると大電流が流れ、作業員が被災する可能性がある。このため原則この系統は停電させる必要がある。
時刻同期系統でも同様の作業手順となるが、仮に誤ってワイヤを取り付けてもインバータ電源の場合は速やかにゲートブロックがかかり大電流が流れることがない。したがって作業員が被災することもなく、安全性が高い。このことから時刻同期電力系統内では、単独運転検出機能は不要となり、コスト低減効果が大きい。
<15.構築の仕方>
現在の系統から、時刻同期系統とのハイブリッドを構築していく手法の1つとして以下のようなものが考えられる。
(1)対象となるセルグリッドの需要規模の非同期連系装置と1−2割程度の小規模非同期連系装置を並列設置する。
(2)停電切り替えにより受電点を非同期接続する。
(3)非同期連系装置の需要家側を時刻同期系統にする。
(4)新設の再生可能エネルギー電源等のインバータ電源を系統連系モードで、電流0で同期投入する。
(5)パルス幅を維持したまま、時刻同期運転に切り替える。
(6)電圧を基準値までゆっくり上昇させる。
(7)(4)〜(6)を繰り返し、たくさんのインバータ電源を投入していく。
(8)大規模非同期連系装置の電圧を低下させ、電流0として、停止する。
(9)大規模非同期連系装置を撤去し、別な場所で稼働させる。小規模装置のみ継続使用する。
<16.再エネ以外の電源の系統連系>
再生可能エネルギーの出力が十分でなく、ディーゼル発電機等の従来電源が主たる電力供給源になるときは、ディーゼル発電機出力をインバータ化することにより時刻同期手法を使うことができる。インバータが従になるように系統連系モードに変更することもできる。
<17.電力関連情報のマッピング>
GPSを使用している場合、設置個所の位置情報を得ることができる。この情報と電力情報を組み合わせることにより、電力系統の電力潮流やインピーダンスマッピング、天気情報との組み合わせによる需要予測、他のセンサー群(気温・湿度・気圧・日照・風速等)による天候予測マッピングなども可能となる。
<18.プラグアンドプレイ>
時刻同期系統においては、時刻同期したインバータ電源は、従来系統での電源接続・脱着に比べて簡便な接続・脱着が可能となる。
従来系統では電流制御を行うため、まずインバータ回路を従来系統に接続して電圧を確認し、プリチャージ回路を使ってインバータのDC母線を充電する。その後インバータ側の電圧を確立し、系統側と周波数・位相・電圧の同期を取ってからコンタクタを投入して電流を徐々に増やすというプロセスを踏む。
しかし、本時刻同期系統では、電圧制御であり、コンタクタ投入以前に周波数・位相・電圧の同期がとれているので、任意の段階でコンタクタを投入することができる。また脱着するときは、脱着ボタンを押すなどの行為をすることで電流を絞り、コンタクタを切り離せばよい。電圧がゼロクロスするタイミングであればなおよい。したがってプラグアンドプレイという簡便な接続方法という事ができる。
<19.時刻同期電力系統内における電圧源・電流源インバータの比率>
あるセルグリッドが時刻同期電力系統である場合、その中で時刻同期により同期化力・慣性力を持たせたインバータ電源の割合は50%を超えることが望ましい。より望ましくは3分の2を超えることが望ましい。これにより電流源インバータや電流源型系統連系発電機が残りを占めても系統の変動を吸収することができる。
望ましくは電流源型の電源がセルグリッド内の需要のベース部分を供給する程度の割合になり、それをピーク需要から差し引いた部分以上の電源が電圧源型であることがよい。こうすれば、需要変動部分を供給する電圧源型の電源は、需要に見合った電力しか供給しないため、セルグリッド内で電力の需給バランスが取れることになる。
仮にベースロードを超える電力を電流源型が供給している場合、余剰になった電力は吸収できるところがないためセルグリッドの外の系統に吸収してもらう必要が出てくる。
<20.従来型同期電力系統と時刻同期電力系統のハイブリッド電力ネットワーク>
図7に、2つの時刻同期電力系統と1つの従来型同期電力系統が多端子型の非同期連系装置を介して接続された電力ネットワークを示す。各電力系統と他の2つの電力系統との間では、電圧制御か電流制御か、周波数が50Hzか60Hzかに関わらず、同時に、かつ、個別に送受電を行うことができる。例えば、50Hzの時刻同期電力系統において電力供給に不足が生じるとき、60Hzの時刻同期電力系統と従来型同期電力系統とから受電したり、50/60Hzの両時刻同期電力系統で発電量が需要を上回るときには、それらから従来型同期電力系統に送電したりすることができる。発電機の構成が異なる複数の電力系統を非同期連系することで、電力不足、需要不足を互いに補い合うことも期待できる。
また、各インバータと非同期連系装置とを協調して動作させることにより、異なる電力系統にあるインバータ間でも電力の授受を行うことができる。例えば、50Hzの時刻同期電力系統内のインバータ電源から電力を出力するタイミングで、非同期連系装置の50Hzの時刻同期電力系統側のインバータから同量の電力を引き込み、非同期連系装置の60Hzの時刻同期電力系統側のインバータから同量の電力を送り込み、60Hzの時刻同期電力系統内のインバータ電源で同量の電力を引き込むことで、電力の授受が可能である。
<21.定額料金による回収モデル>
複数のインバータ電源が時刻同期し、基準電圧制御する電力系統は負荷の状態や電源の状態で出力分担が刻々と変動する。したがって、発生電力量ベースの料金システムは適切なビジネスモデルではない。設備容量に応じた定額料金システムになるべきである。しかしながら、現行の電力システムの課金制度は燃料代回収を主目的とした消費電力量ベースの課金システムとなっていてその調和は大変困難を伴う。
時刻同期電力系統では、インバータ電源を主とした独立電力系統内を使用最大容量ベースに応じた定額課金システムとし、電源に対しては最大発電可能容量ベースとした定額支払いシステムとすることが考えられる。
このことにより、使用者側は最大使用電力を低減させようと努力するため、省エネ効果(設備容量)が得られる。また、蓄電して不足分の出力を需要家内で補うブースト効果を志向するようになるため、蓄電の促進が図られる。
一方で、発電側については、設備容量当たりの単価を引き下げようとするインセンティブが働くと同時に、保守費用逓減、運転寿命の延命化を志向するようになり、競争が促進される。
出力調整可能な再生可能エネルギー電源や、火力発電電源については再生可能エネルギーだけでは出力が不足するときのためのスピニングリザーブとしての役割が期待されているが、従量料金ベースではそのインセンティブが小さい。これらの電源についても設備容量ベースの定額支払いベースを採用し、発生電力量についてはコストベースの追加支払いを需要家から徴収する仕組みとすることが考えられる。
100 インバータ電源
101 インバータ
102 分散電源
103 電圧測定部
104 外部情報取得部

Claims (8)

  1. 独立電力系統に接続して他の電力変換装置と並列運転する電力変換装置であって、
    内部クロックに基づき内部時刻情報を生成する時刻情報生成部と、
    接続された電源の出力電圧を変換して、接続された前記独立電力系統に対して、前記内部時刻情報に同期した位相で、予め定められた固定周波数を有する電圧を創出する電圧源型の電力変換部と、
    前記独立電力系統の系統電圧を測定する電圧測定部と、
    を備え
    前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記電圧測定部で測定した前記独立電力系統において確立された系統電圧の位相情報に基づき前記内部時刻情報を補正し、
    前記電力変換部は、負荷の変動に応じて、並列運転する前記他の電力変換装置とともに自立的に、前記内部時刻情報に同期した位相を変化させて前記予め定められた固定周波数を有する電圧の位相と前記系統電圧の位相との間に位相差を生じさせること又は前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより、前記独立電力系統に有効電力又は無効電力を送り込む、若しくは前記独立電力系統から有効電力又は無効電力を引き込み、
    前記予め定められた固定周波数および前記予め定められた固定周波数を有する電圧、ならびに前記同期した位相は、前記独立電力系統に接続された前記の電力変換装置と同一となることを特徴する電力変換装置。
  2. 外部の時計によって生成された外部時刻情報を取得する外部情報取得部をさらに備え、
    前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記外部時刻情報に基づき前記内部時刻情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記外部時刻情報は、GPS信号、電波時計用タイムコードおよびネットワーク・タイム・プロトコル信号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記電力変換部は、前記電力変換部が創出する電圧および前記電力変換部に流れる電流を検出して前記独立電力系統のインピーダンスを判定し、前記独立電力系統のインピーダンスに応じて、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより無効電流を制御し、又は前記内部時刻情報に同期した位相を変化させることにより有効電流を制御することを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
  5. 独立電力系統を、予め定められた固定周波数、位相および電圧で固定周波数・固定電圧制御する電力ネットワークシステムであって、
    内部クロックに基づき内部時刻情報を生成する時刻情報生成部と、電源と、前記電源に接続され、前記電源の出力電圧を変換して、接続された独立電力系統に対して、前記内部時刻情報に同期した位相で、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を創出する電圧源型の電力変換部と、前記独立電力系統の系統電圧を測定する電圧測定部と、を備えた2以上の並列運転する電源装置を備え、
    前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記電圧測定部で測定した前記独立電力系統において確立された系統電圧の位相情報に基づき前記内部時刻情報を補正し、
    前記電力変換部は、負荷の変動に応じて、並列運転する他の電源装置とともに自立的に、前記内部時刻情報に同期した位相を変化させて前記予め定められた固定周波数を有する電圧の位相と前記系統電圧の位相との間に位相差を生じさせること又は前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより、前記独立電力系統に有効電力又は無効電力を送り込む、若しくは前記独立電力系統から有効電力又は無効電力を引き込み、
    前記予め定められた固定周波数および前記予め定められた固定周波数を有する電圧、ならびに前記同期した位相は、前記独立電力系統に接続された全ての前記電力変換部において同一となり、
    前記独立電力系統の電圧は、前記電源装置によって確立されていることを特徴とする電力ネットワークシステム。
  6. 前記電源装置は、外部の時計によって生成された外部時刻情報を取得する外部情報取得部をさらに備え、
    前記時刻情報生成部は、予め定められた間隔で、前記少なくとも1つの外部時刻情報に基づき前記内部時刻情報を補正することを特徴とする請求項に記載の電力ネットワークシステム。
  7. 前記外部時刻情報は、GPS信号、電波時計用タイムコードおよびネットワーク・タイム・プロトコル信号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項に記載の電力ネットワークシステム。
  8. 前記電力変換部は、前記電力変換部が創出する電圧および前記電力変換部に流れる電流を検出して前記独立電力系統のインピーダンスを判定し、前記独立電力系統のインピーダンスに応じて、前記予め定められた固定周波数を有する電圧を変化させることにより無効電流を制御し、又は前記内部時刻情報に同期した位相を変化させることにより有効電流を制御することを特徴とする請求項に記載の電力ネットワークシステム。
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