WO2024004250A1 - 協調自律分散型系統連系システム、系統連系方法、及びプログラム - Google Patents

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Abstract

多数の協調自律分散型機器を同期させてセルグリッドを独立運転可能にし、主系統に対して、常に同期接続可能とする協調自律分散型系統連系システムを提供すること。 本発明の一態様の協調自律分散型系統連系システムは、本発明の第1の態様の協調自律分散型系統連系システムは、標準時刻信号に基づいて前記系統連系制御器から発信される周波数情報と位相情報、又は周波数情報と位相情報との合成信号を、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が受信し、前記同期検定付遮断器(21)が開のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記セルグリッド系統の電圧位相を前記主系統の電圧位相に同期させるように制御し、前記同期検定付遮断器(21)が閉のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記主系統と前記セルグリッド系統との間を流れる電力潮流を制御することを特徴とする。

Description

協調自律分散型系統連系システム、系統連系方法、及びプログラム
 本発明は、協調自律分散型系統連系システム、系統連系方法、及びプログラムに関する。
 近年、再生エネルギーを用いた発電設備等による発電電力をその地域内で消費する電力の地産地消の要請が高まっている。このために、1つ又は複数の発電設備を含む電力系統を区分して管理する、ミニグリッド又はマイクログリッド等と呼ばれる方式が知られている。このミニグリッド内の交流系統は、発電設備の出力側に設けられたインバータにより同期をとられている。
 特許文献1には、マイクログリッドを独立して管理する方式が記載されている。特許文献1では、マイクログリッド内の複数の発電設備の出力にそれぞれ設けられたインバータが、GPSから得られた時刻信号を基準にして、出力電圧値と位相とが調整されている。また、実際のマイクログリッドの直列インピーダンスを基に、実効電力と無効電力とがフィードバック制御されている。他のマイクログリッドとの系統連系のためには、中央エネルギーマネージメントシステムが必要となる。
 引用文献2には、マイクログリッド内の複数の発電設備の出力にそれぞれ設けられたインバータが、GPS等から得られた時刻信号を基準として内部クロックを時刻補正することにより、同一位相で制御される電力変換装置が記載されている。引用文献2では、マイクログリッドが固定周波数であるため、マイクログリッド内の系統と主系統とを接続するために、交流-直流-交流電力変換を行う非同期連系電力変換器が設けられている。
 引用文献3には、PMU(Phasor Measurement Unit)を用いて、マイクログリッドを独立して固定周波数で制御する方法が記載されている。PMUは、マイクログリッド内の系統の電圧位相及び電流位相を測定し、この測定された位相情報は、各発電設備の出力に接続されたインバータの同期固定周波数制御における基準として用いられる。また、各発電設備の出力からマイクログリッド内系統までのインピーダンスを、共通の基準インピーダンスと見なして、補償仮想インピーダンスにより補償を行うことが記載されている。
 引用文献4には、マイクログリッド内の電力コンバータの電流制御を行う方法について記載されている。その方法はAC電源に接続されたコンバータを、仮想インピーダンスを持つ仮想電圧源とみなし、有効電流と無効電流の位相を操作することでAC電圧の波形を制御するものである。また瞬時電流の操作方法としてはドゥループ制御方式を採用し、電流制限や最大電力追求(MPPT)方式などの組み合わせとなっている。
米国特許公開2016/0329709号公報 特許第6863564号公報 LU 500171 B1 米国登録特許第10008854号公報
 上記特許文献1のマイクログリッドを独立して管理する方式によって、主系統との連携を図るためには、別途のシステム全体を統括制御する、中央エネルギーマネージメントシステムが必要となる。このため、マイクログリッド内系統と主系統とを系統連系するためのシステムが、全系統を統括制御できるような大規模なものとなってしまい、かつ通信システムも大規模なものとなりその通信遅れにより急峻な変動に追従できないという問題があった。
 上記特許文献2の電力変換装置では、マイクログリッドは固定周波数であるため、マイクログリッド内系統と主系統とを系統連系するために、交流-直流-交流電力変換を行う非同期連系電力変換器が設けられているので、系統連系に際して、マイクログリッド内系統の周波数及び位相を、主系統に合わせるという同期化は必要としない。しかしながら、上記特許文献2の非同期型系統連系装置では、マイクログリッド内系統と主系統とを系統連系するために、交流-直流-交流変換器を介した非同期系統連系装置を用いているため、連系可能な電力容量に限りがあり、通電できる電流が制限され、装置の大型化を招いていた。また、再生エネルギーを用いた電力設備を含むエリアの系統の中にある需要家の保護措置は、主系統から供給される短絡電流の大きさに合わせて設定されているため、交流-直流-交流変換器を間に挟むと、短絡電流を十分に供給できなくなり、需要家内で短絡事故が起こっても、保護回路が作動しないケースが発生するという問題があった。
 上記特許文献3の同期固定周波数制御手法では、マイクログリッド内の系統は、独立して固定周波数で同期運転されている。しかしながら、主系統周波数は、例えば日本では50Hz±0.2Hzで変動しているため、マイクログリッド内の系統の周波数が固定であると、主系統との系統連系ができないという問題があった。
 上記特許文献4のインバータの振幅及び位相を制御する方法によれば、位相シフト仮想電圧-仮想インピーダンス垂下等、マイクログリッド内の系統の電圧及び周波数の関数として所望の実効相及び無効相の電流が決まる適宜の垂下技術を採用することができるが、系統に接続するインバータの制御手法に関する特許となっている。提案するインバータの制御手法でマイクログリッドを独立させ、同期運転するというような内容は含まれておらず、主系統に対して同期投入するための手法等についても言及されてはいない。
 そこで、本発明の目的は、主系統を分離可能な遮断器によって少なくとも1箇所を分離した配電系統(以下「セルグリッド」という)において、多数の協調自律分散型機器を同期させてセルグリッドを独立運転可能にし、主系統に対して、常に同期接続可能とする協調自律分散型系統連系システムを提供することにある。
 本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の協調自律分散型系統連系システムは、主系統(15)とセルグリッド系統(28)とを接続ないし分離可能な同期検定機能付遮断器(21)と、前記主系統(15)の電力情報及び前記セルグリッド系統(28)の電力情報を検出する系統連系制御器(MGC30)と、前記セルグリッド系統内に1個以上接続され、互いに同期連系するように電力変換する協調自律分散型機器(DGR40)と、を備える協調分散型系統連系システムであって、前記系統連系制御器(MGC30)及び各前記協調自律分散型機器(DGR40)が、標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得装置を備え、前記標準時刻信号に基づいて前記系統連系制御器(MGC30)から発信される周波数情報と位相情報、又は周波数情報と位相情報との合成信号を、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が受信し、前記同期検定付遮断器(21)が開のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記セルグリッド系統の電圧位相を前記主系統の電圧位相に同期させるように制御し、前記同期検定付遮断器(21)が閉のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記主系統と前記セルグリッド系統との間を流れる電力潮流を制御することを特徴とする。
 本発明の第2の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記系統連系制御器(MGC30)が、系統間位相差信号(φglobal)を生成して、各前記協調自律分散型機器(DGR40)へ送信し、前記同期検定機能付遮断器(21)が閉の時には、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記系統間位相差信号(φglobal)を用いて潮流及び逆潮流を制御し、前記同期検定機能付遮断器(21)が開で、かつ、系統連系制御器(MGC30)からの情報を受信できない場合にも、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記標準時刻信号に基づき、セルグリッド系統を同期制御することができることを特徴とする。
 本発明の第3の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1又は第2の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記標準時刻信号取得装置は、第1標準時刻信号を取得する第1標準時刻取得部(32)、及び第2標準時刻信号を取得する第2標準時刻取得部(42)を含み、前記系統連系制御器(MGC30)が、前記第1標準時刻取得部(32)を備え、前記周波数情報と位相情報との合成信号として、主系統周波数(f)及び主系統回転位相角(θref)に前記第1標準時刻信号(t)を作用させることにより位相同期信号(Ncyc_ref_Sync)を生成して、前記協調自律分散型機器(DGR40)に出力し、前記協調自律分散型機器(DGR40)が、前記第2標準時刻取得部(42)を備え、前記系統連系制御器(MGC30)が出力した前記位相同期信号(Ncyc_ref_Sync)と前記主系統周波数(f)に前記第2標準時刻信号(t’)を作用させることにより、前記主系統回転位相角(θref)と同期するセルグリッド系統回転位相角信号(θref’)を復調することを特徴とする。
 本発明の第4の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1又は第2の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記系統連系制御器(MGC30A)が、前記主系統の電力情報及び/又は前記セルグリッド系統の電力情報を入力とし、主系統周波数測定値(f)を測定すると共に、系統間位相差信号(φglobal)を生成して、前記協調自律分散型機器(DGR40A)に出力し、前記協調自律分散型機器(DGR40A)が、前記セルグリッド系統電圧(Vgrid_mini)からセルグリッド系統位相角信号(θpll)及びセルグリッド系統角速度信号(ωpll)を生成し、前記セルグリッド系統位相角信号(θpll)、前記セルグリッド系統角速度信号(ωpll)、前記主系統周波数測定値(f)、及び前記系統間位相差信号(φglobal)から、セルグリッド系統回転位相角信号(θref)を演算することを特徴とする。
 本発明の第5の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第4の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記系統連系制御器(MGC30B)が、第1位相同期回路(96a)により前記主系統周波数測定値(f)を測定し、前記協調自律分散型機器(DGR40B)が、第2位相同期回路(83)により前記セルグリッド系統位相角信号(θpll)及び前記セルグリッド系統角速度信号(ωpll)を生成し、前記標準時刻信号取得装置は、前記第1位相同期回路(96a)に第1標準時刻(t)を入力する第1標準時刻取得部(32)、及び前記第2位相同期回路(83)に第2標準時刻(t’)を入力する第2標準時刻取得部(42)を含むことを特徴とする。
 本発明の第6の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1または第2の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記セルグリッド系統(28)が前記同期検定機能付遮断器(21a、21b)を介して複数の前記主系統(15a、15b)に接続可能であり、前記主系統の中の第1主系統(15a)に異常が発生した場合には、前記セルグリッド系統(28)が、前記第1主系統(15a)以外の第2主系統(15b)と系統連系すると共に、前記第1主系統(15a)の中で異常が発生していないエリア(15a1)への送電が可能であることを特徴とする。
 本発明の第7の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1又は第2の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記同期検定機能付遮断器(21)が閉で、かつ、前記主系統(15)が停電した場合には、前記同期検定機能付遮断器(21)が閉から開にされると共に、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記セルグリッド系統(28)を独立運転し、前記同期検定機能付遮断器(21)が開で、かつ、前記セルグリッド系統内で事故が発生した場合には、前記同期検定機能付遮断器(21)を閉にすると共に、電力潮流を制御して事故点に対して事故電流を供給して、前記事故点の保護継電器を動作させて事故点を切り離すことを特徴とする。
 本発明の第8の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第1又は第2の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記協調自律分散型機器がマザーボード(123)を有する共通ユニット(120)と、1つ以上の個別ユニット(130)とを含み、前記マザーボード(123)がパルス波生成を含む制御演算を行うことを特徴とする。
 本発明の第9の態様の協調自律分散型系統連系システムは、第8の態様の協調自律分散型系統連系システムにおいて、前記マザーボード(123)におけるパルス波生成の演算にヒステリシス制御が用いられることを特徴とする。
 本発明の第10の態様の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法は、主系統(15)とセルグリッド系統(28)とを接続ないし分離可能な同期検定機能付遮断器(21)と、前記主系統(15)の電力情報及び前記セルグリッド系統(28)の電力情報を検出する系統連系制御器(MGC30)と、前記セルグリッド系統内に1個以上接続され、互いに同期連系するように電力変換する協調自律分散型機器(DGR40)と、を備える協調分散型系統連系システムによる系統連系方法であって、前記系統連系制御器(MGC30)及び各前記協調自律分散型機器(DGR40)が、標準時刻信号を取得するステップと、前記標準時刻信号に基づいて前記系統連系制御器(MGC30)から発信される周波数情報と位相情報、又は周波数情報と位相情報との合成信号を、各前記協調自律分散型機器が受信するステップと、前記同期検定機能付遮断器(21)が開のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記セルグリッド系統(28)の電圧位相を前記主系統の電圧位相に同期させるように制御するステップと、前記同期検定機能付遮断器(21)が閉のときには、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が前記主系統(15)と前記セルグリッド系統(28)との間を流れる電力潮流を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
  本発明の第11の態様のプログラムは、第10の態様の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法の各ステップをコンピュータによって実行することを特徴とする。
 本発明の第1の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、セルグリッド内に各協調自律分散型機器が分散配置され、互いに同期連系する電圧源として機能し、セルグリッドの電圧を確立することが可能である。また、セルグリッド系統(28)は常に主系統(15)に対して周波数及び位相の同期がとれた状態とすることが可能であり、かつ、各協調自律分散型機器は台数が多くても同期可能なので小型化が可能である。各協調自律分散型機器の容量は接続される発電設備に応じて設定されるため、異常時の短絡電流による保護動作も適切に行われる。しかも、協調自律分散型機器の設置台数によって、セルグリッド内の電力容量を任意に調整できるため、十分な電力容量を確保した上で、異常時の短絡電流による保護動作も協調自律分散型機器(DGR40)の電流制限機能・時限遮断機能などにより適切に行われる。さらに、一部の協調自律分散型機器(DGR40)が故障による保護動作で遮断された場合にも、残りの協調自律分散型機器(DGR40)により、セルグリッド系統(28)への配電を継続することができる。また、同期検定機能付遮断器(21)を介してセルグリッド系統(28)を主系統(15)に接続することにより、主系統(15)とセルグリッド系統(28)が同期している時にセルグリッド系統(28)を主系統(15)に接続可能であり、主系統(15)とセルグリッド系統(28)とが同期していない時にはセルグリッド系統(28)を主系統(15)に接続不可となっているため、セルグリッド系統(28)を主系統(15)に対して、確実に同期投入することができる。なお、系統連系制御器(30)は例えばクラウドとして設けることが可能である。また、同期検定機能付遮断器(21)において、系統電圧情報やセルグリッド電圧情報を取得し、演算を行うことにより、系統連系制御器(30)の一部を分担することも可能である。
 また、系統連系時に主系統(15)が停電した場合、主系統(15)の停電を検出して、同期検定機能付遮断器(21)を開にして、セルグリッド系統(28)を独立運転することができる。同期検定機能付遮断器(21)を閉から開にするまでの時間は、例えば高圧用真空遮断器(VCB)を用いた場合には、定格で3サイクル~5サイクル、すなわち、0.06秒~0.1秒程度の遅れがある。従って、系統連系時に主系統が停電した場合には、セルグリッド系統電圧(Vgrid_mini)が主系統電圧(Vgrid_main)の低下に伴い、共に低下してしまうことがある。このため、系統連系時に主系統(15)が停電した場合に同期検定機能付遮断器(21)を閉から速やかに開にしたとしても、セルグリッド系統電圧(Vgrid_mini)を0Vに近い状態から立ち上げる、いわゆるブラックスタートになる可能性がある。
 そこで、標準時刻信号取得装置から取得された標準時刻信号を用いることにより、例えばGPS時計(42)等からの標準時刻信号を基にして、各協調自律分散型機器(DGR40)をブラックスタートすることが可能である。標準時刻信号として、一般的な水晶発振子では、±10μsecが最高水準であり、協調自律分散型機器(DGR40)ごとの誤差が累積される可能性がある。標準時刻信号取得装置は、協調自律分散型機器(DGR40)間の時刻誤差が±5μsec以内となる精度を満たすことが求められる。
 例えばGPS時計、原子時計、個々の協調自律分散型機器(DGR40)の配置に応じて時刻を精密に距離補正する、あるいは交流電圧のゼロクロッシングとその時刻を測定し個々の協調自律分散型機器(DGR40)にその情報を伝え個々の協調自律分散型機器(DGR40)のゼロクロッシングの時刻と突き合わせて内部クロックを補正する、等の手段を有する標準時刻信号取得方法が挙げられる。
 本発明の第2の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、同期検定機能付遮断器(21)が閉の時には、各前記協調自律分散型機器(DGR40)が系統間位相差信号(φglobal)を用いて潮流及び逆潮流を制御することが可能であり、また、同期検定機能付遮断器(21)が開で、かつ、系統連系制御器(MGC30)からの情報を受信できない場合にも、各協調自律分散型機器(DGR40)が標準時刻信号に基づき、前記セルグリッド系統を同期制御することができる。このため、各前記協調自律分散型機器(DGR40)は、主系統の停電時や、系統連系制御器(MGC30)の故障時や、系統連系制御器(MGC30)との通信障害時等にも、セルグリッド系統の独立運転を継続することができる。
 本発明の第3の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、系統連系制御器(MGC30)にて生成した、主系統周波数(f)及び主系統回転位相角(θref)に第1標準時刻信号(t)を作用させた位相同期信号(Ncyc_ref_Sync)を、各協調自律分散型機器(DGR40)に伝達し、各系統連系制御器(DGR40)は位相同期信号(Ncyc_ref_Sync)と主系統周波数(f)に第2標準時刻信号(t’)を作用させることにより、主系統回転位相角(θref)と同期するセルグリッド系統回転位相角信号(θref’)を復調することによって、セルグリッド系統(28)は常に主系統(15)と同期がとれている。このためセルグリッド系統は、同期検定機能付遮断器(21)を介して、いつでも主系統(15)に接続ないし分離が可能である。主系統(15)に事故があった場合にも、同期検定機能付遮断器(21)を開とすることにより、セルグリッド系統(28)は、セルグリッド系統内の発電設備からの給電をそのまま継続することができる。
 本発明の第4の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、系統連系制御器(MGC30)が、主系統(15)の電力情報及び/又はセルグリッド系統(28)の電力情報、例えば主系統電圧、主系統有効電力、主系統無効電力等を入力とし、主系統周波数測定値(f)を測定すると共に、系統間位相差信号(φglobal)を生成して、協調自律分散型機器(DGR40)に出力し、協調自律分散型機器(DGR40)が、セルグリッド系統電圧(Vgrid_mini)からセルグリッド系統位相角信号(θpll)及びセルグリッド系統角速度信号(ωpll)を生成し、セルグリッド系統位相角信号(θpll)、セルグリッド系統角速度信号(ωpll)、主系統周波数測定値(f)、及び系統間位相差信号(φglobal)から、セルグリッド系統回転位相角信号(θref)を演算することにより、各協調自律分散型機器(DGR40)の電力変換器、例えばインバータ等の周波数及び位相が適切に制御され、セルグリッド系統(28)の同期制御が行われる。本態様では、電圧情報だけを使っているので必ずしも標準時刻信号は必要としていない。
 第1位相同期回路(96a)により主系統周波数測定値(f)を測定し、また、第2位相同期回路(83)によりセルグリッド系統位相角信号(θpll)及びセルグリッド系統角速度信号(ωpll)を生成する場合には、電圧信号からPLL等によって位相情報や周波数情報を生成するため、協調自律分散型機器(DGR40)にY-Δ変換器が接続されていて位相が30度ずれていたり、協調自律分散型機器(DGR40)に接続されているインピーダンスが大きい時であって位相がずれていたりしても、電圧信号自体に基づくため、これらの位相ずれの問題は解消される。また、電圧信号からPLL等によって検出電圧から位相情報や周波数情報を生成する場合には、常に電圧信号に基づいて動作しているため、協調自律分散型機器(DGR40)は、単独運転検出保護装置として要求される保護機能に準拠し易い。
 本発明の第5態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、第1位相同期回路(96a)及び第2位相同期回路(83)においては、定期的に標準時刻信号取得装置からの標準時刻信号を用いており、例えば1秒に1回程度の頻度で標準時刻信号により例えばPLLクロック等の同期を取るだけでよいので、常に標準時刻信号を必要としない分だけ、演算負荷が低減される上に、常に各協調自律分散型機器(DGR40)のPLLクロックの同期をとることができる。
 また、各協調自律分散型機器(DGR40)の同期が取れているので、セルグリッド系統(28)をブラックスタートすることが可能となる。系統連系制御器(MGC30)からの信号が得られない場合、例えば系統連系制御器の故障時等において、系統間位相差信号が得られず、φglobal=0の場合、系統連系制御器(MGC30)の故障の場合、あるいは、系統連系制御器(MGC30)との通信異常の場合等であっても、各協調自律分散型機器(DGR40)の同期を保つことができる。また、系統連系制御器(MGC30)から主系統周波数測定値が得られない場合には、各協調自律分散型機器(DGR40)が主系統周波数値に相当する固定信号、例えば主系統周波数が50Hzであれば、f=50Hzを生成することにより、セルグリッド系統は独立運転を継続することができる。
 本発明の第6の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、セルグリッドが中抜き系統である場合であって、第1主系統(15a)に異常が発生した場合にも、セルグリッド系統は単独で電力供給を継続することが可能であるだけではなく、正常な第2主系統との系統連系を継続することが可能である。しかも、第1主系統に含まれる変電所管内で異常が発生していないエリア(15a1)への送電が可能となる。この場合、セルグリッド系統(28)は、正常な第2主系統(15b)からの電力を、第1主系統(15a)に含まれる変電所管内で異常が発生していないエリア(15a1)へ、送電することが可能である。
(主系統停電時、セルグリッド系統事故時の対応)
 本発明の第7の態様の協調自律分散型系統連系システムによれば、セルグリッド系統(28)が主系統(15)と系統連系している時に、主系統(15)で停電が発生した場合には、セルグリッド系統(28)を独立運転して、セルグリッド系統内の電力設備からの給電を継続することができる。また、セルグリッド系統(28)が独立運転している時に、セルグリッド系統内で事故が発生した場合には、同期検定機能付遮断器(21)を閉にすることにより事故点に対して主系統(15)から短絡電流を供給して、前記事故点の保護継電器を動作させて事故点を切り離し、セルグリッド系統内の正常な部分への給電を継続することができる。
 本発明の第8の態様の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法によれば、1つ以上の個別ユニット(130)のパルス波生成を含む制御演算を全てマザーボード(123)が行うことができる。これにより、共通ユニット(120)を共通化し、ボード間インターフェイスを標準化しておくことにより、個別ユニット(120)は様々な応用製品として提供可能である。システムの運用は、全て系統連系制御器(MGC30)により、クラウドで実現可能となる。しかも、マザーボードのソフトウエアを系統連系制御器(MGC30)によりクラウド経由で更新することにより、常に最新のソフトウエアを利用することができる。
 本発明の第9の態様の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法によれば、マザーボード(123)におけるヒステリシス制御によって、適切に全ての個別ユニット(130)用のパルス波の演算を行うことができる。
 本発明の第10の態様の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法によれば、第1の態様の協調自律分散型系統連系システムと同様の効果を奏する系統連系方法を提供することができる。
 本発明の第11の態様のプログラムによれば、第1の態様の協調自律分散型系統連系システムと同様の効果を奏するプログラムを提供することができる。
本発明の実施形態1の協調自律分散型系統連系システムのブロック図である。 1台の協調自律分散型機器の回路図である。 図2Aの詳細回路図である。 図2Bの動作説明図である。 本発明の実施形態1の協調自律分散型系統連系システムの回路図である。 図2Dの回転位相角の説明図である。 図2Dの調整後の回転位相角の説明図である。 本発明の実施形態1のGPS同期の同期制御のブロック図である。 本発明の実施形態1のGPS同期の主系統接続状態の制御ブロック図である。 本発明の実施形態1のGPS同期のセルグリッド系統独立状態(同期制御)の制御ブロック図である。 本発明の実施形態1のGPS同期のセルグリッド系統独立状態(主系統停電時)の制御ブロック図である。 本発明の実施形態1の電圧同期の主系統接続状態の制御ブロック図である。 本発明の実施形態1の電圧同期のセルグリッド系統独立状態(同期制御)の制御ブロック図である。 本発明の実施形態1の電圧同期のセルグリッド系統独立状態(主系統停電時)の制御ブロック図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第1状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第2状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第3状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第4状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第5状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第6状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第7状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第8状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第9状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第10状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第11状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第12状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第13状態の説明図である。 本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第14状態の説明図である。 本発明の実施形態3の協調自律分散型系統連系システムのブロック図である。
 以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る協調自律分散型系統連系システムを説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための協調自律分散型系統連系システムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
[実施形態1]
 本発明の実施形態1に係る協調自律分散型系統連系システムについて、図1乃至図4Cを参照して説明する。図1は、本発明の実施形態1の協調自律分散型系統連系システムのブロック図である。
[協調自律分散型系統連系システムの全体構成]
 発電所10で発電された電力は、特別高圧変電所11により特別高圧電圧に昇圧され、その後、送電設備12を介して、変電所13にて、さらに降圧された電力が主系統である配電設備15(以下、「主系統」という。)に供給される。主系統15には、複数のセルグリッド20が接続されている。主系統15に配電される電圧は、高圧(交流600V超7,000V以下)に限定されるものではなく、例えば特別高圧(交流では7,000Vを超える)でもよく、逆に低圧(交流では600V以下)でもよい。
 主配電系統(以下「主系統」という)を分離可能な同期検定機能付遮断器21によって少なくとも1箇所を分離した配電系統(以下「セルグリッド」という)において、セルグリッド20は、同期検定機能付遮断器21、同期検定機能付遮断器21を介して主系統15に接続されるセルグリッド系統28、セルグリッド系統28に接続されている1つ以上の電力変換機能を有する協調自律分散型機器40(以下、Digital Grid Router、「DGR」ということがある。)、及び、セルグリッド系統28に接続されているさまざまな電力設備を備えている。なお、セルグリッド20とは、例えば団地程度の規模でもよく、一つの市街区でもよく、あるいはコンビナートや工業団地サイズの規模の電力ネットワークのことであり、域外の大規模な原子力発電所や火力発電所原等の電力に依存することなく、域内の自然エネルギー発電設備等の分散型電源の電力を地産地消することができる電力ネットワークを意味する。日本では「マイクログリッド」と表現することもあるが、明細書中、英語の表現として、「ミニグリッド」と称することもある。これらをセルグリッド20と同義として用いている。また、系統連系制御器30を省略して「MGC」(Mini Grid Controller)ということがある。
 1つのセルグリッド20として団地を考えた場合、そのサイズは、例えば日本の団地面積は100ha以上の団地が52%を占めており(「住宅団地の実態について」国土交通省住宅局、平成30年12月)、1つのセルグリッド20の規模は100ha以上とすることもでき、いずれの規模の団地に対しても、DGR40の数を増減することにより、適用可能である。
 DGR40には、発電設備23として、例えば風力発電装置23a、太陽光発電装置23b、燃料電池装置、水素発電装置、バイオ発電装置、内燃機関発電装置(例えばディーゼルやガスエンジン等)23d、ガスタービン発電装置、地熱発電装置、水力発電装置(例えば200kW程度)等、様々な分散電源が接続できる。また、DGR40には、蓄電装置22b、23cや電気自動車充放電装置22c等の電力設備を接続することも可能である。DGR40には電力変換器、例えばインバータが設けられており、例えば太陽光発電装置23bで発電された直流電圧を交流電圧に変換してセルグリッド系統28に供給することができる。
 セルグリッド系統28は、電力需要設備22としての各家庭設備22aに配電しており、電力需要設備22としては、特に限定されるものではないが、各家庭設備22a、蓄電装置22b、電気自動車充放電装置22c、及び電気自動22d等が挙げられる。なお、蓄電装置22b、電気自動車充放電装置22c、及び電気自動22dは、充放電が可能であるため、充電時には電力需要設備22であると共に、放電時には発電設備23としての機能も有しており、図1においては電力需要設備22として例示しているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、発電設備23として協調自律分散型機器40に接続するようにしてもよい。
 風力発電装置23a、太陽光発電装置23b、内燃機関発電装置23d等の各発電設備23、蓄電設備23c等は、DGR40を介して、セルグリッド系統28に接続されている。各DGR40は、後述のとおり、例えばクラウド上に設けられている、MGC30から送られてくる主系統周波数測定値f及び位相同期信号Ncyc_ref_Sync等に基づき、主系統15の周波数及び位相に同期がとれるように、セルグリッド系統28の同期制御を行う。また、主系統15とセルグリッド系統28との系統間位相差φglobalを調整することにより、有効及び無効電力それぞれの潮流、または逆潮流を制御することが可能である。すなわち、セルグリッド系統28が主系統15の電力を受電する場合、すなわちセルグリッド系統が電力潮流を受け取る場合には、系統間位相差φglobalを減少させることにより、主系統からセルグリッド系統への電力潮流を増加することができる。また逆に、例えばセルグリッド20内の太陽電池発電装置等の発電設備23が発電した余剰電力を主系統15へ送電する場合、すなわち逆潮流する場合には、系統間位相差φglobalを増加してセルグリッド系統28の位相角を進めることにより主系統15へ送電する電力量を増加することができる。
 同期検定機能付遮断器(DGブレーカー)21は、主系統15とセルグリッド系統28とが同期している時にセルグリッド系統28を主系統15に接続可能であり、主系統15とセルグリッド系統28とが同期していない時にはセルグリッド系統28を主系統15に接続不可である。このように、同期検定機能付遮断器21は、PLLを備えており、主系統15とセルグリッド系統28との位相差を検出することもでき、両系統が同期している時だけ、同期検定機能付遮断器21を閉にすることができる。すなわち同期検定をPLLで行うこともできる。
 同期検定機能付遮断器21は、主系統周波数f及び主系統回転位相角θrefを検出可能である。また、同期検定機能付遮断器21はPLLを備えており、主系統15とセルグリッド系統28との位相差を検出することもできる。同期検定機能付遮断器21により検出された主系統周波数f、主系統回転位相角θref、及び主系統15とセルグリッド系統28との位相差は、DGR40に送られ、位相の同期制御に利用される。このように、同期検定機能付遮断器(21)において、系統電圧情報やセルグリッド電圧情報を取得し、演算を行うことにより、系統連系制御器(30)の一部を分担することも可能である。
 ここでは、同期検定機能付遮断器21に主系統周波数f、主系統回転位相角θref、PLLが設けられている例を説明したが、本実施形態はこれに限定するものではなく、主系統周波数f及び主系統回転位相角θrefの検出器は、同期検定機能付遮断器21とは別途設けられていてもよい。また、PLLについても同期検定機能付遮断器21と別体に設けられている構成であってもよい。
 DGR40が、セルグリッド系統28内に分散して複数配置されていることにより、1個のDGR40でカバーする範囲を細分化することができるため、セルグリッド系統28内に大規模な系統連系用設備を集中して配置する必要が無いため、配電路が短くなり、電線径も細くなる等のメリットがある。1個のDGR40がカバーする範囲は、特に限定されるものでは無いが、例えば住宅十軒程度の単位とすることができる。この場合、特に限定されるものでは無いが、DGR40のDC入力は、例えば750V、40kW、AC出力は、例えば380V、3相、40kW、内蔵電池容量20kWhを1~4台とすることができる。さらに小型の場合は例えばDC入力は350V、20kW、AC出力は、例えば200V、3相、20kW、内蔵電池容量20kWhを1~4台とすることができる。
 本実施形態のシステムは、主系統とセルグリッド系統を接続されていないときには、主系統側の周波数と位相を後述する手法によりセルグリッド内の全DGR40に伝えることによりセルグリッドの周波数と位相を同期し、接続されているときには両系統間の潮流を制御するものである。さらに接続されているときに主系統が短時間電圧低下したときには同期を維持し続け(Fault Ride Through:FRT)、主系統が停電したときには、切り離して、セルグリッドをブラックスタートできるものである。電圧の大きさは、無効電力に大きく関わる情報であり、これも同様にセルグリッド内の全DGR40に伝えている。この伝達手法は既存技術であるので詳細については記述していない。これらにより定電圧時にはセルグリッド系統28に接続されている発電設備23、例えば再生エネルギー発電設備等の潮流及び逆潮流を制御し、セルグリッド系統28内の発電設備23で発電された電力を地産地消し、主系統15の停電時には自立運転を行うことができる。
 MGC30は、セルグリッド20内の各DGR40を統括制御し、セルグリッド20の総電力需要、発電設備23の発電量、位相及び周波数の連系制御、事故時制御、系統停電・復電制御、需要スケジュール制御等を行う。
 各DGR40には、正確な時刻情報、例えば人工衛星17を用いたGPSによる時刻情報によって同期制御が行われている。また、MGC30から各DGR40には、主系統同期情報として、例えば主系統周波数f、位相同期信号Ncyc_ref_Sync、系統間位相差φglobal等の情報が送信される。
[セルグリッドにおけるDGR40の等価回路]
 図2A~図2Fは、本発明の実施形態1の協調自律分散型系統連系システムの原理図である。図2Aは、1台の協調自律分散型機器40の回路図であり、セルグリッド系統28における1台のDGR40を取り出したときの等価回路である。すべてのDGR40は、図2Aに示すように、出力インピーダンスを有する交流電圧源Vdgr_iとして動作する。iはDGR40の数を表す添字である。各DGR40は系統連系抵抗RGとインダクタンスLGを介してセルグリッド電圧Vgridに並列接続し、各DGR40からは電流Idgr_iが流出する。セルグリッド電圧Vgridは全DGR40に対して共通なので、各DGR40は内部電圧Vdgr_iを変化させることで、Idgr_iを制御できる。
 通常状態では、Idgr_iはすべてのiに対して等しくなるように制御して、各DGR40の負荷分担を等しくする。しかし、DGR40の状態によっては負荷分担を変えたり、内部の蓄電池を充電するために、Idgr_iをDGR40内部への流入方向に制御したりする場合もある。これらはVdgr_iの目標値の作り方次第で制御可能となる。
[電流ヒステリシス制御によるVdgr電圧制御]
 図2Bは、図2Aの詳細回路図であり、DGR40の構成要素であるハーフブリッジインバータを示す。図2Cは、図2Bの動作説明図であり、ハーフブリッジの上下のスイッチが交互にオンになることにより、ILが増減を繰り返す様子を示す。目標電流値Irefに対し、上限・下限のバンド幅を設定し、測定電流値ILが上側のバンドを超えたら、ハーフブリッジの上側スイッチを切り、下側スイッチを入れ、測定電流値ILが下側のバンドを下回ったら、下側のスイッチを切り、上側のスイッチを入れるという操作を反復し続ける。これを電流ヒステリシス制御という。ヒステリシス制御の詳細については、下記実施形態3で述べる。
 一般にヒステリシス制御は、スイッチング周期が変動することが課題であり、フィルタの設計などを困難にしている。本発明では、この課題を解決するため変動バンド幅方式を考案した。図2Cの目標電流値Irefの上側と下側にある線がバンドであり、その幅を狭めればスイッチング周期は早まり、広げればスイッチング周期が遅くなる。ハーフブリッジのリアクトル電流ILはVdcとVdgrの差で傾きが変化するため、その差に応じてバンド幅を変化させスイッチング周波数がほぼ一定となるような操作を加えている。これにより、目標電流値IrefをIdgrに等しくなるように制御し、ハーフブリッジのフィルタ電圧が目標のVdgrに等しくなるように補正するオープンループ制御を行っている。制御対象は電流だが、結果して、高速な電圧制御を可能としている。以下、この方式によって直接Vdgrを制御していることを前提として説明を進める。
 図2Dは、本発明の実施形態1の協調自律分散型系統連系システムの回路図であり、図2Aで表されたDGR40がセルグリッドにN個並列に接続している状態を示す。セルグリッド電圧Vgridは共通であり、それに対し、各DGR40が異なる出力インピーダンスZG_i(i=1~N)を介して、異なる電圧Vdgr_iで接続し、それぞれIdgr_iの電流を流入させていることを示している。このように複数の電圧源の並列接続運転は、電圧の同期が高精度で実現できなければ電圧源間で横流が流れるため、同期化力が重要とされてきた。本発明では、その同期信号として標準時刻信号を使う手段を採用した。本実施例では、さらに以下に述べる仮想インピーダンス技術をつかって、ZG_iを仮想的に等しくし、Vdgr_iもIdgr_iも等しくして負荷分担を均等化している。また、Vdgrを制御することにより、Idgrも変化させてDGR40ごとに負荷分担を変更させることも可能とする。
 DGR40の物理的な出力インピーダンスはその設置場所、出口変圧器の影響、配電線の距離や電線太さなどにより異なる。これらの値は既知ではないため、DGR40の内部電圧Vdgrを操作しても、複数のDGR40の間で負荷の分担割合を均等化することが難しい。これを解決する一つの方法として、既知のインピーダンスの割合を大きくする仮想インピーダンスの導入が有効である。物理的なインピーダンスを含めた仮想インピーダンスを定義して、その値を各DGR40で等しくし、Vdgrの制御に加味すれば、負荷の分担割合が均等化しやすくなる。
 具体的には、Vdgrの制御目標値に、仮想インピーダンスによる電圧降下分(=(仮想リアクトル-物理リアクトル)×Idgrの時間微分値)を減算して制御することで実現する。仮想インピーダンスの整定値の例としては物理インピーダンスを含んで定格電流を流したときに定格電圧の15%程度電圧降下が起こるように整定する。そのため、物理インピーダンスはDGR40の設置場所ごとに正確に把握して制御定数として組み込むことが重要である。
 セルグリッド内の全DGR40の周波数と位相を同期させるには次の二つの同期手法を採用した。それらは、(A)GPS時刻信号による同期手法、と(B)電圧に基づく同期手法、である。この2つの手法はお互いに補完することが可能であり、両者を組み合わせて使うことも単独で使うことも可能である。標準時刻信号を入手する手段として、全DGR40はGPS受信機を搭載しているが、標準時刻信号の精度が得られるものなら、GPSに限るものではない。GPS信号が途絶えたときには(B)電圧に基づく同期手法により、標準時刻信号なしでも全DGR40同期運転が可能である。ともにPhase Lock Loop(PLL)というよく知られた手法で電圧ベクトルから周波数と位相を検出する。以下に2つの同期手法について詳述する。なお、無効電力に関しては電圧補正情報を、MGC30を経由して全DGR40に送信し、従来技術のPI制御等で無効電力の調整を可能としている。まず、(A)GPS時刻信号による同期手法について述べる。
 [(A)GPS時刻信号による同期手法に関する説明]
 図2Eは、GPS時刻同期制御における一台のDGR40の電流IdgrおよびDGR40内部電圧位相Vdgrとセルグリッドの電圧位相Vgridとの相互関係を図示したものである。
なお、Vgrid*のように右肩に添えた「*」の表記は、目標値を表す。図中では目標と実値が一致している状態を表している。以下の説明では実値で表現する。VgridはGPS時刻信号に基づいているので、全DGR40で同期している。Vgridは、GPS時間基準から計算されたグローバル角度基準θrefに基づいて周波数の速度で回転しているが、図2EではこれをD軸(Daxis)として固定して表現する。Idgrはセルグリッド内の負荷とグリッドインピーダンスに基づく位相角φで遅れた電流となる。IdgrをDQ軸に分解するとIDとIQになり、IDはVgridと同相で、IQは90°遅れた成分となる。
 Idgrと前述の物理インピーダンスを含んだ仮想インピーダンスにより、DQ軸の電圧降下が起こる。D軸成分の電圧降下はID×RG+IQ×XGであり、Q軸成分の電圧降下はID×XG-IQ×RGとなる。なお、図2Eおよび図2Fの中では乗算記号「×」を、「.」で表記している。これらのD軸およびQ軸成分の電圧降下がVdgrとVgrid間の電圧降下にあたるので、Vdgrはこの電圧降下分を補うように求められる。このとき生ずる内部電圧Vdgrとセルグリッド系統電圧Vgridとの間の位相角をδとする。Vgridは全DGR40において同期しているので、Vdgrも位相差はあるが、同期して回転している。したがって位相角δの調整により、各DGR40の出力分担を変えたり、内蔵蓄電池を充電するために負の出力、すなわち負荷として機能したりできる。
 GPS時刻同期手法において、セルグリッドが主系統と接続しているときは、主系統の周波数に基づき、目標のVgrid*ベクトルが作られ、DGR40内部電圧目標Vdgr*も電流目標Idgr*も仮想インピーダンスに応じて図2Eのようになっている。実際のセルグリッド電圧VgridもDGR40内部電圧Vdgrも電流Idgrもそれぞれの目標値Vgrid*, Vdgr*, Idgr*に収斂するよう制御されており、ほぼ等しくなっている。全DGR40の合計出力とセルグリッド内の全需要のアンバランスから生じる電力過不足分は主系統から供給されるか、あるいは主系統に向かって逆流する。
 しかし、セルグリッドが主系統と分離して、独立運転を行っているときは、主系統による電力調整がないため、全DGR40の合計出力とセルグリッド内の全需要の合計は完全に一致しなければならない。DGR40は需要の情報を持たないため、目標のDGR40内部電圧Vdgr*に実際のVdgrを合わせる制御の結果、図2Fに示すように実需要に応じた実際の電流Idgrが流れ、この実Vgridと実Idgrにより、需要の有効電力分と無効電力分を過不足なく供給することになる。その結果、実電流Idgrと目標電流値Idgr*とはズレが生じる。実電圧Vgridも、目標のVgrid*からずれる。この実セルグリッド電圧Vgridと目標セルグリッド電圧Vgird*の間の位相差をΔδとする。Daxis*軸は主系統の周波数に同期しているので、セルグリッドを独立運転から連系運転に移行するには、このΔδをゼロに近づけて主系統との同期をとれば良い。このため、後述するφglobalという信号を用いることでこれを実現している。
 全DGR40を同期させるためには、正確な標準時間を作用させる必要がある。同期エラーが起こるとDGR40間で電圧差を生み出す。DGR40間のインピーダンスにより10%~20%の電圧降下が起こるので、許容される電圧誤差を1%としても、電流の制御誤差は±10%~±5%程度になるので、電圧誤差はできるだけ小さくしたい。電圧誤差1%は、位相角で0.0015ラジアンに相当する。これは時間に換算すると5μsecの精度に相当する。水晶発振子は±10μsec程度のものもあるが、共通補正をかけないと、DGR40間の誤差が拡大する。この精度を確保する共通の時刻信号で比較的安価に入手できるものはGPS時刻信号である。電波時計やネットワークタイムプロトコルでは精度が不足する。高価ではあるが原子時計も選択肢になる。
 本実施形態において標準時刻信号取得装置としては、例えばGPS時計、原子時計、個々の協調自律分散型機器(DGR40)の配置に応じて時刻を精密に距離補正する、あるいは交流電圧のゼロクロッシングとその時刻を測定し個々の協調自律分散型機器(DGR40)にその情報を伝え個々の協調自律分散型機器(DGR40)のゼロクロッシングの時刻と突き合わせて内部クロックを補正する、等の手段を有する標準時刻信号取得方法が挙げられる。
[(A)同期制御のブロック図]
 図3Aは、本発明の実施形態1のGPS同期の同期制御のブロック図である。図3Aを参照して、GPS時刻信号に基づく同期制御方式について説明する。本方式は、主系統周波数信号fとGPS時刻信号を作用させて得た位相同期信号Ncyc_ref_Syncの2つの信号をMGC30経由で受け取り、DGR40内部のGPS時刻信号と組み合わせることにより、主系統に±5μsec以内で同期した位相角信号θrefを各DGR40が作成できることを特徴とする。以下に詳細を示す。
 図3Aの演算ブロックにおいて、系統連系制御器(MGC)30における演算は次のように行われる。主系統周波数測定器31により主系統周波数fが測定され、第1時刻取得部において、第1時刻情報(t)としてGPS時刻t32が得られる。この両者の乗算をおこない、1周期毎の鋸刃状である主系統回転位相角θref34から差し引いた結果にfloor関数のような以下に示す「小数部を抽出する関数」を作用させると位相同期信号Ncyc_ref_Sync39(Δδに相当する)が算出できる。主系統周波数信号fと位相同期信号Ncyc_ref_Syncの2つの信号をMGC30から各DGR40に送信する。送信手段はサーバー方式でもブロードキャスト方式でも良い。また、上記演算部はMGC30内部の機能であるが物理的には同期検定機能付遮断器21に内蔵されて演算され、モバイル回線を使ったクラウド経由や電力線搬送などで各DGR40に送信されても良い。
 小数部を抽出する関数としては、floor関数のかわりに、frac関数、ceil関数、round関数、MOD関数などで置き替えることができる。主系統周波数信号fと位相同期信号Ncyc_ref_Syncの2つの信号は変化が緩やかであるため、演算速度やMGC30からDGR40への信号伝達時間と比較すると、あたかも定数のように扱える。MGC30とDGR40の間の通信レートは0.1秒から10秒程度が許容される。
 また、図3Aの演算ブロックにおいて、協調自律分散型機器(DGR)40における演算は次のように行われる。まず、DGR40は、系統連系制御器(MGC)30において、同期検定機能付遮断器21から取得された主系統周波数fを主系統周波数測定値取得部41が受け取る。また、第2時刻取得部から第2時刻情報(t’)が、GPS時刻t’42として取得される。また、各DGR40には、当該DGR40の配置場所に応じた固有の調整値が必要になる場合に備えてNcyc_shift_local44が用意されている。また、DGR40は、MGC30により演算されたNcyc_ref_Sync39を受け取り、DGR40内部のNcyc_ref_Sync45とする。
 次に、主系統周波数測定値f41とGPS時刻t’42とが乗算器43により乗算され、連続して増加する特性のグラフとしてf・t’が得られる。このf・t’に、Ncyc_shift_local44と、Ncyc_ref_Sync45とを加算器46及び加算器47によって加算したものに、floor関数51の出力を減算器52により減算する演算50を行うと、Ncyc_ref_basが鋸刃状のグラフとして得られる。このfloor関数による演算50は、これに限定されるものではなく、例えば、上述のとおり、他の小数部を抽出する関数で置き替えることができる。
 DGR40において、frac関数による演算50の後には、Ncyc_refをフィードバックして減算する減算器53が設けられている。さらに、加算器54では、0.5の値が加算された後、frac関数による演算55が行われる。このfrac関数による演算55は、図3Aではfloor関数56の出力を減算器57により減算しているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、上述のとおり、小数部を抽出する関数で置き替えることができる。その後、加算器58により-0.5の値を加える演算を行い、さらに、乗算器59により、
  f=2πf0・10      (1)
の演算を行い、f+Δfを算出する。fに対して、f-αとf+αとによるリミッタ60を通した後、積分器61による演算により、Ncyc_refを復調する。これらの操作により、主系統15の系統位相角θref34と各DGR40の出力系統位相角θref62の位相が同期し、周波数も一致する。
 リミッタ60の入力信号はf+Δf、すなわち周波数と周波数変化率(ROCOF:Rate of Change of Frequency)の和になっており、変化率部分のリミッタ60を設けることで、セルグリッドの位相追従の速さと大きさを決定する要素となっている。すなわち、リミッタ60の幅を広げれば、主系統の位相変化に速やかに追従するがやや位相変動が大きい。リミッタ60の幅を狭めれば、主系統の位相変化に追従するのにより時間がかかるが、位相変動が小さい。
 このようにしてMGC30による周波数・位相追従の伝達遅れがあり、リミッタ60で制約できることは、周波数変化率(ROCOF)を一定の範囲に抑える効果がある。一般的なグリッドフォーミングインバーターの同期機を模擬した2次的な伝達関数ではなく、一次の伝達関数になるため、非常に安定性が高い仕組みとなる。なお、主系統回転位相角θrefは、本来0-2πの信号であるが、ここでは2πで除して0-1間の鋸刃状信号として扱った。
 減算器53から積分器61までのブロックは、ローパスフィルタの役割があり、Ncyc_ref_basに含まれるノイズ、例えば、いわゆるひげ状のノイズ等を除去する役割があるが、本実施形態はこのブロックに限定されるものではなく、例えば1/Z変換を用いた非連続時間制御として構成することも可能である。
[(A)系統連系、独立運転、主系統停電状態の説明]
 次いで、図3B、図3C、図3Dを参照して、次の3つの状態を説明する。
・主系統接続状態:図3Bは、本発明の実施形態1のGPS同期の主系統接続状態の制御ブロック図である。
・セルグリッド独立状態:図3Cは、本発明の実施形態1のGPS同期のセルグリッド系統独立状態(同期制御)の制御ブロック図である。
・主系統停電・セルグリッド独立運転状態:図3Dは、本発明の実施形態1のGPS同期のセルグリッド系統独立状態(主系統停電時)の制御ブロック図である。
[(A)主系統接続状態]
 図3Bでは、同期検定機能付遮断器21が閉とされ、主系統15とセルグリッド系統28とが同期連系されている。このため、主系統電圧Vgrid_mainは、セルグリッド系統電圧Vgrid_miniと等しい。MGC30には、主系統有効電力Pgrid_main及び主系統無効電力Qgrid_mainが入力され、系統間位相差信号φglobalを算出する。系統連系状態ではφglobalは両系統間の有効電力・無効電力の潮流を制御する。なお、φglobalは合計を変えずに各DGR40ごとに異なる値を伝送し、異なる出力を出させることも可能である。
 MGC30には、第1時刻取得部としてのGPS受信器91から、第1時刻情報(t)としてのGPS時刻情報trefが入力される。一方、DGR40aには、第2時刻取得部としてGPS受信器92から、第2時刻情報(t’)としてのtrefが入力される。
 MGC30では、位相同期信号(Ncyc_ref_Sync)を演算し、主系統周波数をFgrid_refとの2つの情報を伝送し、DGR(GPSに基づく位相計算ブロック)40aに入力する。同期制御にはこの2つの情報で十分であるが、潮流制御としてφglobal信号も伝送する。DGR40aではDGR40のセルグリッド系統回転位相角θrefを演算する。加算器93において、θrefとφglobalとを加算し、θref_adjを算出する。θref_adjに基づきDGR40bが運転され、各DGR40の出力電流Idgrが出力される。各DGR40の出力電流は合算されてセルグリッドに流れる(図では加算器94として表現している)。主系統からの流入電流Igrid_mainも加わって、セルグリッド系統負荷90に供給される。その結果、セルグリッド系統電圧Vgrid_mini(=セルグリッド系統負荷電圧Vload)が確立する。この電圧が、MGC30に入力され安定なフィードバックループを作る。
[(A)セルグリッド独立状態(主系統運転時)]
 図3Cでは、同期検定機能付遮断器21が開とされ、主系統15とセルグリッド系統28とが切り離されてセルグリッドは独立運転状態のときの両系統の位相同期方法を説明する。両系統が切り離されている場合、主系統電圧Vgrid_mainは、セルグリッド系統電圧Vgrid_miniと異なるのが一般的だが、本GPS時刻同期方式では、主系統周波数f31と位相同期信号Ncyc_ref_Sync39の伝送と図3Aの演算により、両系統のθrefは常に同期している。独立運転時には、系統間位相差信号φglobalは微調整用として使用することができる。このようにして、セルグリッド系統28の電圧位相は主系統15の電圧位相と同期しているため、いつでも同期検定機能付遮断器21を閉とすることによって、セルグリッド系統28を主系統15と接続することが可能である。
[(A)セルグリッド独立状態(主系統停電時)]
 図3Dは、実施形態1のGPS同期の主系統停電かつセルグリッド系統独立状態(主系統停電時)のセルグリッド内のDGR40を如何に同期させるかについて説明する。主系統が停止した場合、同期検定付き遮断器は切となり、MGC30からの情報は失われる。一方、DGR40aには、第2時刻取得部としてGPS受信器92から、第2時刻情報(t’)としてのtrefが継続して入力されている。
 したがってDGR40において、主系統周波数測定値Fgrid_refを直前の値もしくは、予め決めておいた固定値(例えば50Hzなど)に置き換え、位相同期信号Ncyc_ref_Syncも直前の値もしくは、予め決めておいた固定値(例えば0など)に置き換えれば、全DGR40はGPS時刻を共通指標として同期したθrefを得ることができる。また、系統間位相差信号φglobalについては、オプションなので予め決めておいた固定値(例えば0など)にすることで、θref_adjも同期する。したがって、主系統停電時でもセルグリッドは、全DGR40が同期して独立運転することができる。主系統が復帰したときは、GPS時刻同期運転を再開し、同期が取れたところで、同期検定付き遮断器を閉じて系統連系運転に移行するか、あるいはそのまま、セルグリッド独立運転を継続することができる。
 主系統(15)が停電したにも関わらず、同期検定機能付遮断器(21)が開放せず、セルグリッドが独立運転を継続することがないように、系統連系制御器(MGC30)には単独運転検出を含む系統連系保護機能を有し、能動型単独運転検出に際しては、各協調自律分散型機器(DGR40)の無効電力の出力を調整して、保護機能を動作させ、同期検定機能付遮断器(21)を開とすることが可能となっている。また短時間の主系統停電時には、同期検定機能付遮断器(21)を、閉状態を維持するようFRT機能も具備している。
[(A)セルグリッドのブラックスタート運転]
 系統連系時に主系統が停電した場合、主系統の停電を検出して同期検定機能付遮断器21を閉から開にするまでの時間は、例えば高圧用真空遮断器(VCB)を用いた場合には、定格で3サイクル~5サイクル、すなわち、0.06秒~0.1秒程度の遅れがある。また、系統連系時に主系統が停電した場合には、セルグリッド系統電圧が主系統電圧の低下に伴い、共に低下し、0Vになってしまうことも考えられる。ここから独立運転に復帰するのは、いわゆるブラックスタートになる。
 この場合、主系統周波数測定値f41を従前の値を維持するか、あるいは定格値に置き換え、位相同期信号Ncyc_ref_Sync45を従前の値を維持するか、あるいは予め用意していた固定値に置き換えることを予め決めておけば、電圧がゼロになっても、全DGR40内部で同期を維持したまま、主系統を切り離した後にブラックスタートし、セルグリッドの独立運転に移行することができる。これは全DGR40がGPS時刻t’42(図3A)すなわちtref92(図3D)を持っていて、それを基準に演算をしているためである。
[(A)時刻同期誤差]
 主系統とセルグリッドが切り離された状態で、主系統周波数f31と位相同期信号Ncyc_ref_Syncに変化がなく一定である場合、このようにして、各DGR40で得られたθref(=2π・Ncyc_ref)は、主系統のθrefに対して、電圧誤差1%以内(時間誤差5μsec以内に相当)の誤差で同期している。この程度の誤差の場合、主系統とセルグリッドは、同期していると言えるので、同期検定機能付遮断器21を投入して両系統を接続しても両系統間に異常な電流が流れるようなことはない。
[(A)伝送遅れ時間の影響]
 主系統とセルグリッドが切り離された状態で、主系統における周波数や位相が変化すると、その変化をDGR40に伝えるMGC30からDGR40への伝送遅れ時間やMGC30及びDGR40での演算時間等の時間遅れがあるため、一時的に主系統と同期がずれる状態となる。この状態のときに同期検定機能付遮断器21を投入して両系統を接続しようとしても、同期検定機能が動作して、遮断器を投入できない可能性がある。しかし、伝送遅延時間が経過すれば、セルグリッドの電圧位相が主系統に同期して遮断器が投入される。この伝送遅延時間はネットワーク通信の遅れ程度の時間であり、通信環境にもよるが通常は0.1秒~1秒程度以内である。
[(A)慣性力と同期化力]
 主系統とセルグリッドが接続された状態では、両系統が物理的につながっているため、両系統の周波数fおよび回転位相角信号θrefは共通の値になる。ここで、主系統の周波数または回転位相角に変化が起こったとき、MGC30はその変化を伝送遅延時間の間、各DGR40に伝えることができない。したがって、各DGR40の周波数および回転位相角の追従がこの遅延時間分遅れる。そのため主系統側から見ると、各DGR40およびセルグリッドが一体として強い慣性力を持っているかのごとく振る舞うように見える。さらにこの遅延時間後に主系統に追従し始めるので、各DGR40及びセルグリッドが強い同期化力を有するように見える。
 また、伝送された主系統の周波数変動についてもDGR40の制御器の中のリミッタ60でも制限している。この制限幅が狭ければ主系統の周波数変動に追従しにくいため、慣性力が大きくなったように振る舞う。制限幅が広ければ周波数変動に追従しやすいため、慣性力が軽くなったように振る舞う。セルグリッドが複数あっても同様である。離島などの単独系統においてセルグリッドの規模がここには小さくても全体として全需要の半分以上を占めるようになると、周波数変化率の制限幅を狭めて、周波数変動に対しロバストにすることにより、セルグリッド側が主系統並みの振る舞いをするように徐々に入れ替えていくことが可能である。すなわちセルグリッドは制御可能な慣性力を有する電力系統となる。
 次いで、セルグリッド内の全DGR40の周波数と位相を同期させる二つの同期手法のうち、「(B)電圧に基づく同期手法」に関して説明をおこなう。
[(B)電圧に基づく同期手法に関する基本説明]
 電圧に基づく同期手法は、系統連系型のマイクログリッドに於ける標準的な手法である。この方法は、世界中で広く実装、テスト、および展開されている。主系統と接続しているときは、セルグリッド側の変動は主系統が吸収し悪影響を与えることはない。しかし、主系統から独立してインバータ群が中心になってセルグリッドの独立運転をする場合は周波数の維持が困難になる。また、セルグリッドの一斉ブラックスタートはできない。以下にこれらの課題を解決する手法について提案する。
 まず、電圧に基づく同期制御方式には次のようなメリットが有る。
・同期信号は、セルグリッドの配電線の電圧を使用する。
  -GPS信号や受信機などの特段の追加設備が不要である。
  -電圧という同期信号は非常に堅牢である。
  -電力線に障害が発生したり、破損したりしない限り、操作を続行できる。
・電圧同期信号は以下の課題を自動的に調整する。
  -変圧器の電圧変化と位相シフト。
  -回路インピーダンスによる電圧降下と位相シフト。
・DGR40は、セルグリッドに接続する際に特別な構成なしで脱着できる。
・DGR40は、セルグリッド回路構成の手動または自動変更に対して柔軟である。
 一方、次のようなデメリットも有る。
・主系統と切り離されたセルグリッド独立運転時は同期が取れない。
  -一般的な周波数垂下特性(Droop)制御では変動が大きくなりすぎる。
  -ここで提案するMGC30による同期信号が必要となる。
・セルグリッド停電時のブラックスタートはできない。
  -GPS時刻による同期信号が必要となる。
 主系統と切り離されたセルグリッド独立運転時は同期が取れない理由について、以下に説明する。セルグリッドが独立運転を行っているときは、全DGR40の合計出力とセルグリッド内の全需要の合計が一致しなければならないため、図2Fに示すように実需要に応じた実際の電流Idgrが流れ、目標のIdgr*とズレが生じる。その結果、目標のVgrid*に対し、実際のセルグリッド電圧VgridはΔδの位相差が生じる。Δδがゼロであれば周波数・位相は安定であるが、一旦、合計出力と全需要のバランスが崩れて、Δδが正または負になると|Δδ|は増加していく。
 例えばDGR40有効電力出力が実負荷有効電力を超える場合、実電圧Vgridは目標電圧Vgrid*より位相が進み、Δδは常に正になる。目標電圧Vgrid*はPLLにより、実電圧Vgridに一致させようと動くので、正のフィードバックがかかり、θrefの位相を増加させる。その結果、PLL周波数は継続的に増加する。
 また、逆にDGR40有効電力出力が実負荷有効電力より小さい場合、実電圧Vgridは目標電圧Vgrid*より位相が遅れ、Δδは常に負になる。PLLは、正のフィードバックループでθrefの位相を連続的に減少させる。その結果、PLL周波数は継続的に低下する。いずれの場合も、PLLとミニグリッドの位相差は安定せず、周波数も安定しない。
 このように、電圧ベースの同期は、グリッドに依存しない独立運転状態のセルグリッドには使用できない。これは、DGR40と負荷の間の実際の無効電力の差を受け入れたり、提供したりするための堅固な電源がないためである。逆に堅固な電源があれば、実電圧Vgridは安定しているので、目標電圧Vgrid*はそれに近づく制御をしても正のフィードバックループには陥らない。
[(B)系統間位相差信号φglobalの導入]
 主系統に依存しない独立運転状態のセルグリッドに置いても、このような正のフィードバックループに陥らないため、以下の手法を考案した。すなわち、MGC30を通じて主系統周波数信号fと系統間位相差信号φglobalを全DGR40に伝えることで、セルグリッドの周波数と位相を安定させる方法を提案する。まず、図4Bに示すように、まず 位相角信号θrefは、基準角周波数ωrefとミニグリッド角周波数ωgridの間の誤差を小さくするフィードバック制御Kθctrl85によって、φsyncを作り出す。それに各DGR40のPLLによって、得られた位相角信号θpllを加算器86において加算し、ローカルな系統位相角信号Ncyc_ref89を作る。しかし、この制御のみではセルグリッドの電圧位相が前述のように正のフィードバックをおこし、安定しない。
 そこで図4Bで示すようにφglobal80を加算器86においてさらに加算する。φglobalは、主系統とセルグリッドの位相差を表す信号である。主系統とセルグリッドは切り離されているものの、主系統の位相と比較して、セルグリッドの位相が開けば、φglobalが変化する。φglobalが加算されることにより、位相が開いていく正のフィードバックループを抑制し、セルグリッドの位相さらには周波数の不安定性を抑制することが可能となる。これは、主系統に直接接続していなくても、その情報だけを使うという形でセルグリッドの周波数の安定化を図ったものである。これにより主系統と接続しない独立運転時においてもセルグリッド内の全DGR40が同期し、周波数を安定化させることができるようになる。また、両系統が同期するので、いつでも同期検定付き遮断器を投入し、両系統を接続できる。
 主系統とセルグリッドが接続しているときにも、φglobalは有効であることを、図4Aを使って示す。両系統の位相差が開けば有効電力が流れるので、φglobalは両系統間を流れる電力潮流17を測定して目標の有効電力・無効電力と比較して必要な位相差信号φglobalを作成し、全DGR40に送信する。これにより、全DGR40の出力を増減して、両系統間の電力潮流を目標値に合うように制御できる。
 また、主系統が停電した状態であって、セルグリッドを独立運転する場合には、主系統の電圧位相の代わりに、内部クロックによる基準電圧位相を作成し、セルグリッド電圧位相との位相差信号をφglobalとしてMGC30を通じて全DGR40に伝えることによりセルグリッドの周波数と位相を同期することができる。
 次にMGC30停止時およびセルグリッド停電時のブラックスタート時について標準時刻信号が必要となる理由について説明する。上述のように、主系統とセルグリッドが接続されている状態では、主系統の電圧位相が基準となり、分離されている状態では、MGC30を通じて主系統の電圧位相情報を得ることができる。また、主系統が停電していても、MGC30を通じてMGC30内部のクロックによる位相を共通基準として全DGR40に伝えることができる。
 しかし、MGC30が停止した場合で主系統と分離されている状態では、全DGR40に共通の電圧位相情報がない。また、セルグリッドが停止した状態も同様に全DGR40に共通の電圧位相情報がない。このような場合には、全DGR40に共通の同期信号を別の手段で供給する必要がある。DGR40が、標準時刻情報を取得していれば、それに基づき内部クロックを補正することで、全DGR40に同期した電圧位相を作成することが可能となる。
 このようにして、セルグリッド停電後のブラックスタート時やMGC30停止時のセルグリッド独立運転には標準時刻情報を使ってセルグリッドの周波数と位相を安定させる方法を提案する。
[(B)電圧に基づく同期手法に関する詳細説明]
 電圧に基づく同期制御方式に付いて図4A、4B、4Cを参照して説明する。図4Aは、本発明の実施形態1の電圧同期の主系統接続状態の制御ブロック図であり、図4Bは、本発明の実施形態1の電圧同期のセルグリッド系統独立状態(同期制御)の制御ブロック図であり、図4Cは、本発明の実施形態1の電圧同期のセルグリッド系統独立状態(主系統停電時)の制御ブロック図である。以下にそれぞれの状態でのブロック図とその制御方式について説明する。
[(B)主系統接続時の同期手法]
 電圧に基づく同期手法において、セルグリッドが主系統と接続しているときは、主系統の周波数に基づいた信号と、各DGR40のPLLによって検出した周波数に基づいた信号の差が小さくなるよう制御し、かつ位相角の信号も検出して加味することにより、目標の電圧Vgrid*と実電圧Vgridがほぼ一致する。この状態は図2Eで表され、GPSと時刻同期のときと同様の状態になる。
[(B)主系統接続時のブロック図による説明]
 図4Aを参照して、セルグリッド系統が主系統と接続状態である場合の協調自律分散型機器(DGR)40AにてNcyc_ref89を算出するブロック図を説明する。図4Aは、本発明の実施形態1の電圧に基づく同期制御のブロック図であり、系統連系状態の制御図となる。系統連系制御器(MGC)30A及び協調自律分散型機器(DGR)40Aとを含んでいる。系統連系制御器(MGC)30Aにおいては、系統間位相差信号φglobal演算部80にて、系統有効電力Pgrid_main測定部98と主系統無効電力Qgrid_main測定部99により測定された主系統有効電力Pgrid_main及び主系統無効電力Qgrid_mainから、主系統15とセルグリッド系統28との間の潮流を考慮して系統間位相角φglobalが生成される。
 まず、主系統周波数測定器31について説明する。主系統電圧取得部97は、主系統電圧Vgrid_mainを取得する。主系統との接続状態においては、主系統電圧とセルグリッド電圧は同一であるため、Vgrid_main=Vgrid_miniとなっている。
 PLL96は主系統電圧Vgrid_mainから主系統周波数測定値f31を算出し、MGC30を介してDGR40に信号を伝送する。系統間位相差信号φglobal80演算部は、測定された主系統とセルグリッド間を流れる主系統有効電力Pgrid_main及び主系統無効電力Qgrid_mainと、図示してはいないがそれぞれの目標値との、差に基づいて系統間位相差信号φglobalを演算し、MGC30を介してDGR40に信号を伝送される。電力の潮流がセルグリッド側に向かって流れる方向を正とすると、系統間位相差信号φglobalを大きくすると、主系統に対しセルグリッド系統の位相角が遅れるため、主系統からセルグリッド系統への電力潮流が増加する。また、系統間位相差信号φglobalを小さくすると、セルグリッド系統の位相角が進むため、セルグリッド系統から主系統への逆潮流電力が大きくなる。このようにしてDGR40の出力を変化させて、両系統間を流れる電力潮流を目標値に合わせる。なお、無効電力に関してはφglobal80ではなく、電圧補正信号をMGC30を介してDGR40に送信しているが、手法については同様であり、詳細な記述は省いている。
 協調自律分散型機器(DGR)40AのPLL83は、セルグリッド電圧Vgrid_miniから、セルグリッド系統位相角信号θpll、及びセルグリッド系統角速度信号ωpllを生成する。主系統周波数測定値取得部41は、主系統周波数測定器31により測定された主系統周波数測定値fを受け取り、主系統角速度信号ωref=2π・fを演算する。PLL83はセルグリッド電圧Vgrid_miniからセルグリッド系統角速度信号ωpllを算出する。次に比較器によって、系統間角速度誤差信号ωerr=ωref-ωpllを算出する。次に制御器kθ_ctrl85において、ωerrを入力とし、PI演算を行い、制御位相信号φsyncを演算する。kθ_ctrlは比例ゲインと積分ゲインを持つが、低周波成分についてはゲインが一定で、高周波成分についてはゲインが小さくなるようにして、周波数急変などの影響を受けにくくしている。
 加算器86において、制御位相信号φsyncに、セルグリッド系統位相角信号θpll及び系統間位相角φglobalを加算して、得られた信号を除算器により2πで除して、さらに、MOD関数による徐算による剰余を演算して、小数部のみを抽出し、鋸刃状の出力であるNcyc_ref89を得る。さらにNcyc_refに2πを乗ずることにより、セルグリッド系統回転位相角信号(以下「セルグリッド系統位相角信号」ということがある。)θref=2π・Ncyc_refが得られる。本実施形態はMOD関数を使用しているが、前述した小数部を引き出すような関数で置き替えることができる。
 このように各協調自律分散型機器(DGR)40Aで得られたセルグリッド系統位相角信号θref=2π・Ncyc_refは、主系統電圧(=セルグリッド電圧)に対して同期がとれている。定常状態で安定したシステムの場合、PLL周波数は一定であるため、ωref=ωpllとなり、ωerr=0となるため、φsync=0となる。このため、各DGR40のPLLで作成したθpllが支配的となる。これに系統間位相角φglobalが加わり、セルグリッド系統と主系統との間の潮流及び逆潮流を制御することができる。
 系統周波数や位相が急変した場合、ωref≠ωpllとなるが伝送時間遅れが生じる。しかし、PLL83はセルグリッド電圧(=主系統電圧)を見ていてθpllを作成するので急変にも即座に(1サイクル程度)追従する。主系統とセルグリッド間の電力潮流は急変するがφglobalの伝送には時間遅れが生じる。φglobalの立ち上がり、立ち下がりには制限を設けて、急変が起こらないようにしている。このようにして両系統をつなぐ電力潮流とPLLによってセルグリッドの同期化力及び慣性力が維持される。
[(B)セルグリッド独立時]
 図4Bを参照して、セルグリッド独立状態である場合の協調自律分散型機器(DGR)40BにてNcyc_refを算出するブロック図を説明する。図4Bは、本発明の実施形態1の電圧に基づく同期制御のブロック図であり、系統と切り離されたセルグリッド独立運転状態の制御図となる。系統連系制御器(MGC)30B及び協調自律分散型機器(DGR)40Bとを含んでいる。図1から図4Aと同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。系統間位相差信号φglobal演算部80は、測定された主系統電圧Vgrid_mainとセルグリッド電圧Vgrid_miniをPLL96bで演算して両者の位相角の差を、系統間位相差信号φglobalとして算出する。
 図4Bにおけるφglobalは、図4Aの場合のφglobalと入力内容が異なる。図4Bの場合は両系統が切り離されているので、DGR40Bの電圧位相を主系統に合わせ、いつでも同期検定機能付遮断器21を投入できるようにする目的がある。そのため、図4Bでは、φglobalは両系統の電圧位相差を計算している。独立運転中で主系統もセルグリッド系統も定常状態で安定している場合、φglobal=0の信号を送ることで、両系統の電圧位相は一致しており、いつでも接続が可能な状態となっている。系統周波数や位相が急変した場合、ωref≠ωpllとなる。しかし、両系統は切り離されているので、主系統とセルグリッド間の位相角差が一旦広がるが、伝送時間遅れの時間が経過した後には再び、電圧位相が一致し、いつでも両系統の接続が可能な状態に戻る。
[(B)標準時刻信号の採用]
 以上述べてきたように、図4A,図4Bの形態では標準時刻信号は必要ではない。しかしながら、詳細については以下に述べるが、図4Cに示すように、MGC30C停止時やブラックスタート時には、電圧に基づく同期手法は使えない。目標周波数については固定値に切り替えたとしても、位相に関する共通指標φglobalを失うためである。このときには全DGR40Cに共通の位相をもつ目標電圧信号Vgrid*が必要である。これには標準時刻信号を用いれば良い。標準時刻に基づけば、全DGR40Cに共通な電圧位相の確保が可能となる。このように、電圧に基づく同期制御の場合も、標準時刻信号による内部クロック補正により、全DGR40でVgrid*を同期させることを本態様の特徴とした。
[(B)主系統停電、セルグリッド独立状態時]
 図4Cは、主系統が停止した状態において、全DGR40Cが同期運転を継続し、セルグリッド独立運転を実現する方法について説明する。主系統が停止した場合、同期検定付き遮断器は切となり、MGC30Cからの情報は失われる。この場合、主系統周波数測定値f41を従前の値を維持するか、あるいは定格値に置き換え、系統間位相差信号φglobalを従前の値を維持するか、あるいは予め用意していた固定値(ゼロも含む)に置き換えることで全DGR40Cが同期を維持したままセルグリッドの独立運転を継続することができる。
[(B)MGC30C停止時]
 主系統の電圧が失われていなくても、MGC30Cが停止することがある。その場合、前述のようにGPS時刻に準拠した電圧ベクトルと定格周波数情報を各DGR40C内部に持たせておき、その電圧ベクトルを図2EにおけるVgrid*として、定格周波数でDGR40Cを運転することで連続運転を可能にすることができる。
 MGC30Cが動作していて、全DGR40Cのうち、何台かの(容量にして20%以下)DGR40Cが、MGC30Cの情報を受け取れない状態になったときでも、残りのDGR40Cにより、セルグリッド全体としてはロバストになっているので、MGC30Cの情報を受け取れないDGR40Cは、通常の電圧に基づく同期方式に切り替えることで同期運転が継続できる。
[(B)ブラックスタートの実現]
 主系統の電圧が失われる際に、同期検定付き遮断器を切り離したとしても、セルグリッド内の電圧はゼロになる可能性がある。ゼロ電圧からのセルグリッド復帰は、いわゆるブラックスタートに当たる。本願発明では、前述のようにGPS時刻に準拠した基準電圧ベクトルを各DGR40C内部に持たせておき、ブラックスタート時にはその基準電圧ベクトルを図2EにおけるVgrid*としてDGR40Cを運転することでブラックスタートを可能にすることができる。
[実施形態2]
 本発明の実施形態2に係る協調自律分散型系統連系システムについて、図5A~図5Nを参照して説明する。図5A~図5Nは、本発明の実施形態2のセルグリッド接続形態の第1状態~第14状態の説明図である。図1~4Cと共通の構成については、同一の符号を用い、その説明は省略する。セルグリッド20の構成は、実施形態1と同一である。実施形態2では、セルグリッド系統28が、複数の主系統15に接続される例である。
 図5A~図5Nは、変電所Aに接続された主系統15a1及び主系統15a2からなる主系統15a、及び、変電所Bに接続された主系統15b1及び主系統15b2とからなる主系統15bの両方に、それぞれ同期検定機能付遮断器21a及び21bを介してセルグリッド20が接続されている。このように2つの主系統15a及び15bに接続されるセルグリッド20の接続は、「中抜き系統」ということがある。
 実施形態1と同様に、セルグリッド20内には複数の協調自律分散型機器(DGR)40が設けられており、各DGR40は系統連系制御器(MGC)30からの制御信号により制御され、主系統15a又は15bと系統連系可能である。同期検定機能付遮断器21a及び21bもMGC30からの制御信号により制御され、セルグリッド系統28と、主系統15a及び主系統15bとの接続及切断がMGC30からの制御信号により制御される。なお、MGC30は物理的には同期検定機能付き遮断器と一体の部分もある。セルグリッド20には2つの同期検定機能付遮断器21a及び21bが設けられており、一方の同期検定機能付遮断器21aは、変電所A13aの系統である主系統15aに接続され、他方の同期検定機能付遮断器21bは、変電所B13bの系統である主系統15bに接続されている。
 主系統15aにおいて、同期検定機能付遮断器21aと変電所A13aとの間には、電力会社区分開閉器16aが設けられており、同期検定機能付遮断器21aと区分開閉器16aとの間には主系統15a1が設けられ、区分開閉器16aと変電所A13aとの間には主系統15a2が設けられている。
 主系統15bにおいて、同期検定機能付遮断器21bと変電所B13bとの間には、電力会社区分開閉器16bが設けられており、同期検定機能付遮断器21bと区分開閉器16bとの間には主系統15b1が設けられ、区分開閉器16bと変電所B13bとの間には主系統15b2が設けられている。
[主系統15aの事故からの復旧制御]
 図5A~図5Kを参照して、系統15a2に事故が生じてから、事故が復旧して元のとおりの給電が行われるまでの状態を説明する。系統15a2に事故が生じた場合にもセルグリッド系統28はセルグリッド20内の発電設備23によって常に給電が継続される。
 図5Aの状態では、同期検定機能付遮断器21a及び21bがいずれも開となり、セルグリッド20が独立運転を行っている。
 図5Bの状態では、同期検定機能付遮断器21a及び21bがいずれも開となり、セルグリッド20が独立運転を行っている。区分開閉器16aは閉とされており、系統15a1には、系統15a2を経由し、変電所A13aの電力が供給されており、系統15a1及び系統15a2は、いずれも変電所A13aの電力により充電されている。同じく、区分開閉器16bは閉とされており、系統15b1には、系統15b2を経由し、変電所B13bの電力が供給されており、系統15b1及び系統15b2は、いずれも変電所B13bの電力により充電されている。
 図5Cの状態では、系統15a2に事故、例えば短絡事故等が発生している。系統15a2に事故が発生したことが特定されると、図5Dの状態のように、すぐに区分開閉器16aが開となる。
 図5Dの状態では、区分開閉器16aが開となるので、系統15a1には電力が供給されない。この場合でも、同期検定機能付遮断器21a及び21bは開となっており、セルグリッド20が独立運転しているため、セルグリッド系統28はセルグリッド20内の発電設備により給電が継続されている。
 図5Dの状態では、系統15a1には異常がないので、系統15a1に変電所B13bの電力を給電するような制御をMGC30が電力会社の給電部門と一緒に計画する。まず、セルグリッド系統28を、系統15b1と同期連系できるように、周波数及び位相の同期制御を行う。
 図5Eの状態では、セルグリッド系統28が、系統15b1との同期が取れた後に、同期検定機能付遮断器21bを閉とし、系統15b1と同期連系を行う。
 図5Fの状態では、セルグリッド系統28が、系統15b1と連系運転されることにより、変電所B13bの電力を系統15b2、系統15b1、及び同期検定機能付遮断器21bを介して、セルグリッド系統28に給電することが可能となる。これにより、セルグリッド系統28を、変電所B13bの電力により充電することが可能となる。
 図5Gの状態では、同期検定機能付遮断器21aを閉とすることにより、セルグリッド系統28を、正常な系統であり、かつ停電している系統15a1に接続する。
 図5Hの状態では、同期検定機能付遮断器21aが閉とされ、系統15a1が、セルグリッド系統28を介して、変電所B13bから給電されるので、系統15b2、系統15b1、セルグリッド系統28、及び系統15a1が、変電所B13bの電力により充電される。
 図5Iの状態では、事故が起こっていた系統15a2が復旧し、系統15a2に変電所A13aからの電力が供給されている。ここで、MGC30は電力会社の給電部門と協力して、セルグリッド系統28を介して変電所B13bから給電していた系統15a1に、元のとおり、変電所A13aから給電するように制御することを計画する。
 図5Jの状態では、同期検定機能付遮断器21a及び21bが開とされる。同期検定機能付遮断器21a及び21bが開とされることにより、セルグリッド20は独立運転を行う。このとき系統15a1にはいずれの変電所13a、13bからも給電されていない。
 図5Kの状態では、区分開閉器16aが閉となることにより、系統15a1には、変電所A13aからの電力が、系統15a2を介して給電されることにより、系統15a2で発生した事故による停電が復旧される。
[独立運転時にセルグリッド内での事故発生時の復旧制御]
 図5L~図5Nを参照して、セルグリッド20の独立運転時に、セルグリッド20内での事故が発生した時の、復旧制御について説明する。
 図5Lの状態では、セルグリッドは独立運転状態である。セルグリッド20内の各DGR40は、系統15a1と同期を取るように同期制御を行っている。この時にセルグリッド20内で事故が発生したとする。セルグリッドが独立運転の場合、セルグリッド内で短絡事故などの事故が発生した時に事故点における保護継電器を遮断させるほど大きな短絡電流がセルグリッド内の発電設備から事故点に供給されない可能性がある。保護継電器の保護レベルが、主系統に合わせて設定されている場合等に保護継電器が動作できず、事故点の切り離しがなされないことが起こり得る。一定時間事故が継続し、電圧が復帰しない場合、図5Mの状態に移行する。
 図5Mの状態では、セルグリッド系統28と系統15a1とは同期がとれているので、すぐに同期検定機能付遮断器21aを閉にすることができる。同期検定機能付遮断器21aを閉とすることにより、セルグリッド内の事故点に主系統から短絡電流を供給する。事故点に対して、遮断レベル以上の短絡電流が供給された場合には、事故点における保護継電器が動作し、事故点を切り離す。
 図5Nの状態では、セルグリッド20内の事故点が遮断されたので、電圧が復帰する。このまま系統連系運転を継続することもできるし、再び同期検定機能付遮断器21aを開にすることにより、セルグリッド20を独立運転することもできる。
 ここでは、セルグリッド系統28と系統15a1とを系統連系することにより、セルグリッド20内の事故点に短絡電流を供給して事故点の保護継電器を遮断するものとして説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、系統15a1の替わりに、セルグリッド系統28と系統15b1とを系統連系することにより、セルグリッド20内の事故点に短絡電流を供給して事故点の保護継電器を遮断するようにしてもよい。
[実施形態3]
 本発明の実施形態3に係る協調自律分散型系統連系システムについて、図6を参照して説明する。図1-5Nと共通する構成には同一の符号を用い、その説明は省略する。図6は、本発明の実施形態3の協調自律分散型系統連系システムのブロック図である。
 協調自律分散型機器(DGR)40は、共通ユニット120及び個別ユニット130により構成されており、系統連系制御器(MGC)30との間でモバイル回路により通信している。MGC30は、共通ユニット用クラウドとして、クラウド上に設けられている。また、MGC30の一部は同期検定機能付遮断器21の制御部に内蔵されている。MGC30は、個別ユニット用クラウド110と通信することにより、個別ユニット130の各種情報を取得することができる。
 共通ユニット120は、全てのDGR40において同一の構成となっている。共通ユニット120に設けられている共通サブユニット121は、DGRコントローラ122及びマザーボード123とから構成されており、DGRコントローラ122とマザーボード123との間では、LANによる通信をしている。マザーボード123は、CPUとFPGA(Field Programmable Gate Array)とを備えている。FPGAはMGC30からプログラミングできるLSIであり、書き換えが可能であるため、共通ユニット120は、あらゆる種類のDGR40に共通に使用可能である。
 個別ユニット130は、個別サブユニット131、BMU(Battery Management Unit)ボード136、及びバッテリユニット137から構成されている。個別ユニット130には、個別サブユニット131が複数、例えば3個設けられており、個別サブユニット131は、それぞれマザーボード123との間でLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ケーブルにより接続されている。
 個別サブユニット131は、ADC(Analog-to-Digital Converter)ボード132、パワーボード133、補助電源ボード134、及び、AC又はDCフィルタ135から構成されている。ADCボード132は、LVDSケーブルにより伝達されたスイッチングパルス信号をパワーボード133に出力する。パワーボード133は、ADCボード132とFLATケーブルにより接続されている。パワーボード133は、補助電源ボード134から電力を制御電源として、ADCボード132からのスイッチングパルス信号に応じて、スイッチングパルスを出力し、AC又はDCフィルタ135を介して、電力インターフェイス140へ、スイッチングパルスを供給する。
 電力インターフェイス140で検出された電圧値及び電流値は、AC又はDCフィルタ135、パワーボード133を介してADCボード132に入力され、ADCボード132では、検出された電圧値及び電流値をデジタル信号として、LVDSケーブルを介して、マザーボード123へと入力する。
 BMUボード136は、マザーボード123とCAN(Controller Area Network)により通信を行っている。個別ユニット130には、バッテリユニット137が複数、例えば11個設けられている。BMUボード136と各バッテリユニット137とはケーブルにより接続されている。
 バッテリユニット137はCMU(Cell Management Unit)138及びバッテリサブユニット139により構成されている。BMUボード136は、マザーボード123からの指令信号に基づき、各バッテリユニット137の状態を監視及び制御する。CMU138は、BMUボード136と通信してバッテリサブユニット139の制御及び保護を行う。BMUボード136は、CMU138ごとの情報に基づきバッテリユニット全体の制御及び異常監視を行い、例えば、リチウムイオンバッテリ等の発火事故を防止することができる。なお、BMUボード136及びバッテリユニット137は、DGR40と一体として設けることもできるし、別体として設けることもできる。
 DGR40においては、共通ユニット120のマザーボード123が、全ての制御演算を集中的に行っており、個別ユニット130は、マザーボード123の制御演算により出力される制御信号に基づいて、ハードウエアを駆動している。
 マザーボード123は、スイッチングパルスを、LVDSケーブルを介してADCボード132に出力し、ADCボード132は、LVDSケーブルのスイッチングパルスを含む制御信号を、FLATケーブルを介してパワーボード133に供給する。パワーボード133は、補助電源ボード134を制御電源として、マザーボード123において演算されたスイッチングパルス等に基づき、AC又はDCフィルタ135を介して、電力インターフェイス140へスイッチングパルスを供給する。また、電力インターフェイス140において検出された電圧値及び電流値等の情報は、AC又はDCフィルタ135及びパワーボード133を介してADCボード132へ送信され、ADCボード132においてデジタル信号に変換されて、LVDSケーブルによる通信によってマザーボード123に収集され、制御演算に利用される。
 マザーボード123は、バッテリユニット137の制御演算も集中的に行っている。すなわち、BMUボード136は、マザーボード123において演算された制御信号に応じて、CMU138を介して全てのバッテリサブユニット139の制御・保護・監視を行っている。
 また、マザーボード123の上のFPGAおよびCPUは、MGC30からプログラムを自由に書き換えることが可能である。このため、DGR40は、クラウド経由で自由に設定変更可能であり、例えば、三相用の設定、単相用の設定、電圧380Vの設定、電圧200Vの設定、太陽光用直流の設定、蓄電池用直流の設定、燃料電池用直流の設定等、様々な設定が可能である。このため、同じハードウエアであってもクラウド経由でソフトウエアを変更することによって、異なるユニットを実現でき、これによりDGR40は、国内各所はもちろん、世界各地でも使用可能となる。
 個別ユニット130は、マイクロコンピュータ等の主制御装置が全く無く、全ての制御演算はマザーボード123により行われて、個別ユニット130は、マザーボード123からの制御信号により駆動される。例えば、3個の個別サブユニット131の各3個のハーフブリッジ、すなわち合計9個のハーフブリッジに対して、マザーボード123で演算されたスイッチングパルス信号が供給される。これらのユニット数やハーフブリッジ数は増減可能である。また、マザーボード123側では、LDVSケーブルによって各地点の電力インターフェイス140からの電圧値・電流値等の検出信号をデジタルデータとして取得し、DGR40の全ての制御演算を行う。
 共通ユニット120を共通化し、ボード間インターフェイスを標準化しておくことにより、個別ユニット130は様々な応用製品として提供可能である。システムの運用は、全てMGC30により、クラウドで実現可能となる。しかも、マザーボード123のソフトウエアをMGC30によりクラウド経由で更新することにより、常に最新のソフトウエアを利用することができる。
 DGRコントローラ122は、マザーボード123から電力や電圧などの情報に加えて、ハーフブリッジに接続されている太陽光や発電機等の情報やバッテリ情報を抽出してクラウドに送り、総合的に利用することも可能である。面的に分散したDGR40の情報は、気象情報なども活用可能となる。また、必要な情報は暗号化を行ってブロックチェーン台帳に送信するなどにより、地域通貨などの基盤も作ることが可能である。
 マザーボード123におけるスイッチングパルスの演算には、ヒステリシス制御を用いることが望ましい。以下、図2B及び図2Cを参照して、ヒステリシス制御について説明する。ヒステリシス制御は一般に普及しているPWM制御とは異なる、ヒステリシス電流制御方式による電流制御である。PWM制御では、セルグリッド単独運転時に短絡事故が起こると、瞬間的に過電流が流れるため、過電流保護のためにインバータが停止される。これに対して、ヒステリシス制御では、電流を制御するため、短絡事故が発生した場合にも電流を抑制することができる。
 下記式(2)によって、目標電圧Vrefを達成するような目標電流Irefを演算する。

Figure JPOXMLDOC01-appb-I000001

 ここで、Tsw=1/fswは、スイッチング周期である。Idgrはセルグリッドの負荷に流れる電流であり、負荷電流Idgrに応じて目標電流Irefが変化する。また、右辺第2項は、目標電圧Vrefを達成するための補正電流であり、ΔI=C・dV/dtに対応している。
 ヒステリシス制御によれば、電流を直接制御すると共に、Vdgrを目標電圧Vrefに追従させることができる。すなわち、ILをヒステリシス制御により目標電流Irefに追従させ、さらに、Vdgrが目標電圧Vrefとなるように制御することにより、DGR40において目標電力が得られる。
 ヒステリシス制御では、目標電流Irefの上下にそれぞれ上側バンドΔib及び下側バンド-Δibを設けて、ILが上側バンドΔibを超えると上側アームのスイッチをオフにして、下側アームのスイッチをオンにし、ILが下側バンド-Δibを下回ると下側アームのスイッチをオフにして、上側アームのスイッチをオンにする動作を繰り返す。
 図2Cにおいて、時刻t0では、ILが下側バンド-Δibを下回るので、下側アームのスイッチをオフにして、上側アームのスイッチをオンにするので、Lfilerには+Vdcが印加される。次に、時刻t1では、ILが上側バンドΔibを超えると上側アームのスイッチをオフにして、下側アームのスイッチをオンにするので、Lfilerには-Vdcが印加される。次に、時刻t2では、ILが下側バンド-Δibを下回るので、下側アームのスイッチをオフにして、上側アームのスイッチをオンにするので、Lfilerには+Vdcが印加される。時刻t0からt2までの時間がスイッチング周期Tswである。
 この時、Lfilterの両端の電圧差に応じてILの傾きが変化することに伴い、スイッチング周波数が変動する。そこで、スイッチング周波数の変動を抑えるために、上側バンドΔib及び下側バンド-Δibのバンド幅を下記(3)式に従って変化させる。

Figure JPOXMLDOC01-appb-I000002
 スイッチング周波数が常に変動し、その帯域が広い場合には、EMCフィルタの設計が難しい。可変バンド幅制御によれば、スイッチング周波数をfswに収束させることができるため、EMCフィルタの設計がしやすくなる。
 以上説明した各実施形態は、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、各実施形態を適宜変更したり、各実施形態を適宜組み合わせたりすることもできる。
10        発電所
11        特別高圧変電所
12        送電設備
13        変電所
15        主系統
16a、16b        区分開閉器
17        人工衛星
20        セルグリッド
21        同期検定機能付遮断器
22        電力需要設備
22a        家庭設備
22b        蓄電装置
22c        電気自動車充放電装置
22d        電気自動車
23        発電設備
23a        風力発電装置
23b        太陽光発電装置
23c        蓄電装置
23d        内燃機関発電装置
28        セルグリッド系統
30        系統連系制御器(MGC)
31        主系統周波数測定値取得器
32        GPS受信器
33        乗算器
34        主系統回転位相角
35        減算器
36        演算ブロック
37        floor関数
38        減算器
39        位相同期信号
40        協調自律分散型機器(DGR)
41        系統周波数測定値取得部
42        GPS受信器
43        乗算器
44        調整値取得器
45        位相同期信号
46        加算器
47        加算器
50        演算ブロック
51        floor関数
52        減算器
53        減算器
54        加算器
55        演算ブロック
56        floor関数
57        減算器
58        加算器
59        乗算器
60        リミッタ
61        積分器
62        出力系統位相角
80        演算部
81        乗算器
82        セルグリッド系統電圧検出器
83        PLL
84        減算器
85        制御器
86        加算器
87        乗算器
88        剰余演算
89        系統位相角信号
90        セルグリッド系統負荷
91、92        GPS受信器
93、94、95
96        PLL
97        系統電圧取得部
97b        PLL
98        系統有効電力
99        系統無効電力
110        個別ユニット用クラウド
120        共通ユニット
121        共通サブユニット
122        DGRコントローラ
123        マザーボード
130        個別ユニット
131        個別サブユニット
132        ADCボード
133        パワーボード
134        補助電源ボード
135        DCフィルタ
136        BMUボード
137        バッテリユニット
138        CMU
139        バッテリサブユニット
140        電力インターフェイス

Claims (11)

  1.  主系統とセルグリッド系統とを接続ないし分離可能な同期検定機能付遮断器と、
     前記主系統の電力情報及び前記セルグリッド系統の電力情報を検出する系統連系制御器と、
     前記セルグリッド系統内に1個以上接続され、互いに同期連系するように電力変換する協調自律分散型機器と、
    を備える協調分散型系統連系システムであって、
     前記系統連系制御器及び各前記協調自律分散型機器が、標準時刻信号を取得する標準時刻信号取得装置を備え、
     前記標準時刻信号に基づいて前記系統連系制御器から発信される周波数情報と位相情報、又は周波数情報と位相情報との合成信号を、各前記協調自律分散型機器が受信し、
     前記同期検定付遮断器が開のときには、各前記協調自律分散型機器が前記セルグリッド系統の電圧位相を前記主系統の電圧位相に同期させるように制御し、
     前記同期検定付遮断器が閉のときには、各前記協調自律分散型機器が前記主系統と前記セルグリッド系統との間を流れる電力潮流を制御することを特徴とする協調分散型系統連系システム。
  2.  前記系統連系制御器が、系統間位相差信号を生成して、各前記協調自律分散型機器へ送信し、
     前記同期検定機能付遮断器が閉の時には、各前記協調自律分散型機器が前記系統間位相差信号を用いて潮流及び逆潮流を制御し、
     前記同期検定機能付遮断器が開で、かつ、系統連系制御器からの情報を受信できない場合にも、各前記協調自律分散型機器が前記標準時刻信号に基づき、前記セルグリッド系統を同期制御することができることを特徴とする請求項1に記載の協調分散型系統連系システム。
  3.  前記標準時刻信号取得装置は、第1標準時刻信号を取得する第1標準時刻取得部、及び第2標準時刻信号を取得する第2標準時刻取得部を含み、
     前記系統連系制御器が、前記第1標準時刻取得部を備え、前記周波数情報と位相情報との合成信号として、主系統周波数及び主系統回転位相角に前記第1標準時刻信号を作用させることにより位相同期信号を生成して、前記協調自律分散型機器に出力し、
     前記協調自律分散型機器が、前記第2標準時刻取得部を備え、前記系統連系制御器が出力した前記位相同期信号と前記主系統周波数に前記第2標準時刻信号を作用させることにより、前記主系統回転位相角と同期するセルグリッド系統回転位相角信号を復調することを特徴とする請求項1又は2に記載の協調分散型系統連系システム。
  4.  前記系統連系制御器が、前記主系統の電力情報及び/又は前記セルグリッド系統の電力情報を入力とし、主系統周波数測定値を測定すると共に、系統間位相差信号を生成して、前記協調自律分散型機器に出力し、
     前記協調自律分散型機器が、前記セルグリッド系統電圧からセルグリッド系統位相角信号及びセルグリッド系統角速度信号を生成し、前記セルグリッド系統位相角信号、前記セルグリッド系統角速度信号、前記主系統周波数測定値、及び前記系統間位相差信号から、セルグリッド系統回転位相角信号を演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の協調自律分散型系統連系システム。
  5.  前記系統連系制御器が、第1位相同期回路により前記主系統周波数測定値を測定し、
     前記協調自律分散型機器が、第2位相同期回路により前記セルグリッド系統位相角信号及び前記セルグリッド系統角速度信号を生成し、
     前記標準時刻信号取得装置は、前記第1位相同期回路に第1標準時刻を入力する第1標準時刻取得部、及び前記第2位相同期回路に第2標準時刻を入力する第2標準時刻取得部を含むことを特徴とする請求項4に記載の協調自律分散型系統連系システム。
  6.  前記セルグリッド系統が前記同期検定機能付遮断器を介して複数の前記主系統に接続可能であり、前記主系統の中の第1主系統に異常が発生した場合には、前記セルグリッド系統が、前記第1主系統以外の第2主系統と系統連系すると共に、前記第1主系統の中で異常が発生していないエリアへの送電が可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の協調自律分散型系統連系システム。
  7.  前記同期検定機能付遮断器が閉で、かつ、前記主系統が停電した場合には、前記同期検定機能付遮断器が閉から開にされると共に、各前記協調自律分散型機器が前記セルグリッド系統を独立運転し、
     前記同期検定機能付遮断器が開で、かつ、前記セルグリッド系統内で事故が発生した場合には、前記同期検定機能付遮断器を閉にすると共に、電力潮流を制御して事故点に対して事故電流を供給して、前記事故点の保護継電器を動作させて事故点を切り離すことを特徴とする請求項1又は2に記載の協調分散型系統連系システム。
  8.  前記協調自律分散型機器がマザーボードを有する共通ユニットと、1つ以上の個別ユニットとを含み、前記マザーボードがパルス波生成を含む制御演算を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の協調分散型系統連系システム。
  9.  前記マザーボードにおけるパルス波生成の演算にヒステリシス制御が用いられることを特徴とする請求項8に記載の協調分散型系統連系システム。
  10.  主系統とセルグリッド系統とを接続ないし分離可能な同期検定機能付遮断器と、
     前記主系統の電力情報及び前記セルグリッド系統の電力情報を検出する系統連系制御器と、
     前記セルグリッド系統内に1個以上接続され、互いに同期連系するように電力変換する協調自律分散型機器と、
    を備える協調分散型系統連系システムによる系統連系方法であって、
     前記系統連系制御器及び各前記協調自律分散型機器が、標準時刻信号を取得するステップと、
     前記標準時刻信号に基づいて前記系統連系制御器から発信される周波数情報と位相情報、又は周波数情報と位相情報との合成信号を、各前記協調自律分散型機器が受信するステップと、
     前記同期検定機能付遮断器が開のときには、各前記協調自律分散型機器が前記セルグリッド系統の電圧位相を前記主系統の電圧位相に同期させるように制御するステップと、
     前記同期検定機能付遮断器が閉のときには、各前記協調自律分散型機器が前記主系統と前記セルグリッド系統との間を流れる電力潮流を制御するステップと、
    を備えることを特徴とする協調分散型系統連系システムによる系統連系方法。
  11.  請求項10に記載の協調自律分散型系統連系システムによる系統連系方法の各ステップをコンピュータによって実行することを特徴とするプログラム。
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