JP6863106B2 - インクジェットヘッド、インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
また、このようなインクジェットヘッドでは、インクの流路となる部分に、例えば、保護膜としてポリパラキシリレン又はその誘導体からなる保護膜(以下、「パリレン膜」ともいう。)を設け、インク流路を構成する部材の耐インク性や絶縁性等を向上させることが知られている(特許文献1参照)。
インクを射出する複数のノズルと、
当該複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の内部に圧力変化を生じさせることにより、前記ノズルからインクを射出させる複数の圧力発生手段と、を有するヘッドチップを備えたインクジェットヘッドであって、
前記ヘッドチップは、インク導通路と、前記複数の圧力発生手段を格納する格納部を有するスペーサー基板を備え、
前記スペーサー基板のうち少なくとも前記インク導通路の流路壁面に、金属メッキ層と、ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層とが順に積層されていることを特徴とする。
前記インク導通路は、前記複数のノズルの配列方向に直交する方向に対して複数列に並ぶように設けられていることを特徴とする。
前記格納部は、前記圧力発生手段の形状の輪郭に沿うように形成された部分を有することを特徴とする。
前記金属メッキ層は、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、亜鉛及びそれらの合金からなる群から選択された金属材料を含有するメッキであることを特徴とする。
前記スペーサー基板は、42アロイ又はインバーからなる基板であることを特徴とする。
前記スペーサー基板のうち少なくとも前記インクの流路となる流路壁面に、金属メッキ形成用材料を用いて前記金属メッキ層を形成する工程と、
前記金属メッキ層表面を洗浄液で洗浄し、前記金属メッキ形成用材料の残留物を除去する洗浄工程と、
前記金属メッキ層上に、前記ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層を形成する工程と、
をこの順で有することを特徴とする。
前記洗浄液が、イソプロピルアルコールを含有することを特徴とする。
請求項1から5までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置100は、プラテン101、搬送ローラー102、ラインヘッド103,104,105,106等を備える(図1)。
プラテン101は、上面に記録媒体Mを支持しており、搬送ローラー102が駆動されると、記録媒体Mを搬送方向に搬送する。
ラインヘッド103,104,105,106は、記録媒体Mの搬送方向の上流側から下流側にかけて、搬送方向に直交する幅方向に並列して設けられている。そして、ラインヘッド103,104,105,106の内部には、後述するインクジェットヘッド1が少なくとも一つ設けられており、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、又は黒(K)のインクを記録媒体Mに向けて吐出する。
なお、ラインヘッドを用いた記録媒体の搬送のみで描画を行う1パス描画方式での実施形態を例にして説明したが、適宜の描画方式に適用可能であり、例えば、スキャン方式を用いた描画方式を採用しても良い。
インクジェットヘッド1は、ヘッドチップ2、共通インク室3、接続部材4及び駆動部5等を備えている(図2A、図2B、図3)。
ヘッドチップ2は、Z方向の下側から順にノズル基板10、接着用基板20、圧力室基板30、スペーサー基板40、配線基板50及び接着層60等によって構成されている(図4〜図8参照)。
なお、図4における流路内の矢印は、インクの流れる方向を示している。また、図6は、ヘッドチップ2内の流路構成と圧電素子の位置関係を説明する平面透視図であり、説明する都合上、流路構成に対応する部分は実線で示し、それ以外は破線で示している。
また、図5に示したノズル基板10の底面では、ノズル11が、ノズルの配列方向D1に直交する方向D2に対して4列で並ぶように設けられた例を示しているが、これに限られず、1〜3列であってもよく、5列以上であってもよい。
圧力室層31は、シリコン製の基板であり、接着用基板20の上面に積層され、接合されている。圧力室層31には、ノズル11から射出されるインクを貯留する圧力室311が形成されている。圧力室311は、貫通孔201及びノズル11の上方に設けられ、これら貫通孔201及びノズル11と連通している。また、圧力室層31には、圧力室311と連通する連通孔312が、圧力室層31の水平方向に延在するように形成されている(図4参照)。
また、本発明に係るスペーサー基板40の表面には、後述するとおり耐インク性等を有する保護膜としてパリレン膜46が形成されているので、スペーサー基板40の材料は耐インク性の低い材料でも用いることができる。スペーサー基板40としては、例えば、安価で加工性の高い42アロイやインバー等の材料を好適に用いることができる。
また、ヘッドチップ2全体の反りを低減する観点からは、スペーサー基板40の材料として、圧力室層31、ノズル基板10及び配線基板50と熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
圧電素子42には、上面に第1電極としての電極421が設けられ、圧電素子42の第1電極が設けられている側とは反対側である下面に電極422が設けられており、このうち下面側の電極422が第2電極としての共通電極43を介して、振動板32に接続されている。ここで、第1の電極としての電極421は、駆動部5から、接続部材4、個別配線58及び個別配線56を介して入力された駆動電位を圧電素子42に供給する。また、第2電極としての共通電極43は、ヘッドチップ2内の接地電極部(図示省略)に電気的に接続され、グランド電位を圧電素子42に供給している。
また、共通電極43は、ヘッドチップ2をより簡易な構成とする観点から、共通電極43と振動板32とを同一部材により構成してもよい。この構成では、例えば、共通電極43を、例えば不純物を高濃度にドープしたシリコンで形成することで、共通電極43を振動板として用いることができる。
金属メッキ層45を設けることで、スペーサー基板40の表面を均質化することができる。これにより、スペーサー基板40に対するパリレン膜46の密着性が向上し、かつ金属メッキ層45上に積層するパリレン膜46剥離の起点となるような箇所の発生を防ぐことができたので、パリレン膜46が剥離しにくくなるという効果が得られたと考えられる。
また、金属メッキ層45は、本発明の効果を有効に得る観点から、0.1〜10μmの範囲内とすることが好ましい。
パリレン膜の層厚は、優れた絶縁性及び耐インク性の効果を得る観点から、5〜20μmの範囲内とすることが好ましい。
ポリパラキシリレン誘導体としては、ベンゼン環に塩素原子が一つ置換したパリレンC(日本パリレン株式会社製の商品名)、ベンゼン環の2位と5位に塩素原子が置換したパリレンD(日本パリレン株式会社製の商品名)、ベンゼン環を結ぶメチレン基の水素原子をフッ素原子で置換したパリレンHT(日本パリレン株式会社製の商品名)が挙げられる。
本実施形態のポリパラキシリレン及びポリパラキシリレンの誘導体としては、これらの中でも、上述した層厚で優れた絶縁性及び耐インク性の効果を得る観点から、パリレンN又はパリレンCを用いることが好ましい。
また、水性インクに浸漬後、それぞれのパリレン膜表面を観察したところ、(1)の構成ではパリレン膜にひびが生じている箇所や剥離している箇所はなかったが、(2)の構成ではパリレン膜にひびが生じている箇所が複数存在し、剥離している箇所が一部存在することがわかった。したがって、(2)の構成では、ひびが生じている箇所や一部剥離した箇所から、インクが侵入することで、スペーサー基板が腐食したものと考えられる。
また、本発明に係る(1)の構成では、スペーサー基板40に対するパリレン膜46の密着性が高く、ひびが生じているような剥離の起点となるような箇所も存在しないため、剥離しにくくなるという効果が得られたものと考えられる。
また、金属メッキ層45及びパリレン膜46は、少なくともインク導通路401の流路壁面に設けられていればよく、例えば、図4に示すようにスペーサー基板40の全面を被覆するように設けてもよい。また、これに限られず、例えば、金属メッキ層45及びパリレン膜46を、スペーサー基板40のインク導通路401の流路壁面と、スペーサー基板40の配線基板50側の表面にのみ設けることとしてもよい。
また、金属メッキ層45表面を洗浄する洗浄液としては、速乾性を有し、かつ金属メッキ層45との反応性が低い洗浄液を用いることが好ましい。このような洗浄液としては、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール系洗浄液を用いることが好ましい。また、その他の洗浄液として、炭化水素系洗浄液及びフッ素系洗浄液等も好適に用いることができる。
蒸着法やスパッタリング法等の気相メッキ法を用いてもよく、メッキ浴に浸漬して電解又は無電解メッキする方法を用いてもよい。
また、図7に示すように、スペーサー基板40において圧電素子42を格納する格納部41は、圧電素子42の形状の輪郭に沿うように形成された部分を有することが好ましい。これにより、スペーサー基板40の強度を保ちつつ、圧電素子42を高密度に配置することができる。
また、基板層51には、スペーサー基板40のインク導通路401と連通してZ方向に貫通するインレット512が形成されている。このインレット512は、例えばZ方向の上から下に断面積が小さくなるテーパー形状に形成され、下面の断面積がインク導通路401とほぼ同じ大きさとなっている。なお、絶縁膜52及び絶縁層54のうちインレット512近傍を被覆する各部分は、インレット512よりも大きい開口径に形成されている。
以上、本実施の形態によれば、インクジェットヘッド1は、インクを射出する複数のノズル11と、当該複数のノズル11にそれぞれ連通する複数の圧力室311と、複数の圧力室311の内部に圧力変化を生じさせることによりノズルからインクを射出させる複数の圧力発生手段(圧電素子42)と、を有するヘッドチップ2を備えている。また、ヘッドチップ2は、インク導通路401と、複数の圧力発生手段(圧電素子42)を格納する格納部41を有するスペーサー基板40を備え、スペーサー基板40のうち少なくともインク導通路401の流路壁面に、金属メッキ層45と、ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層46とが順に積層されている。これにより、スペーサー基板40に対するパリレン膜46の密着性が向上し、かつ金属メッキ層45上に積層するパリレン膜46剥離の起点となるような箇所の発生を防ぐことができたので、パリレン膜46が剥離しにくくなるという効果が得られたと考えられる。
以上で説明した本発明の実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。すなわち、本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
2 ヘッドチップ
3 共通インク室
4 接続部材
5 駆動部
10 ノズル基板
11 ノズル
30 圧力室基板
311 圧力室
32 振動板
40 スペーサー基板
401 インク導通路
41 格納部
42 圧電素子
45 金属メッキ層
46 ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層(パリレン膜)
50 配線基板
100 インクジェット記録装置
Claims (8)
- インクを射出する複数のノズルと、
当該複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の内部に圧力変化を生じさせることにより、前記ノズルからインクを射出させる複数の圧力発生手段と、を有するヘッドチップを備えたインクジェットヘッドであって、
前記ヘッドチップは、インク導通路と、前記複数の圧力発生手段を格納する格納部を有するスペーサー基板を備え、
前記スペーサー基板のうち少なくとも前記インク導通路の流路壁面に、金属メッキ層と、ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層とが順に積層されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記インク導通路は、前記複数のノズルの配列方向に直交する方向に対して複数列に並ぶように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記格納部は、前記圧力発生手段の形状の輪郭に沿うように形成された部分を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記金属メッキ層は、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、亜鉛及びそれらの合金からなる群から選択された金属材料を含有するメッキであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
- 前記スペーサー基板は、42アロイ又はインバーからなる基板であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1から5までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記スペーサー基板のうち少なくとも前記インクの流路となる流路壁面に、金属メッキ形成用材料を用いて前記金属メッキ層を形成する工程と、
前記金属メッキ層表面を洗浄液で洗浄し、前記金属メッキ形成用材料の残留物を除去する洗浄工程と、
前記金属メッキ層上に、前記ポリパラキシリレン又はその誘導体を含有する層を形成する工程と、
をこの順で有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記洗浄液が、イソプロピルアルコールを含有することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項1から5までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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