以下、本発明に係るフラッシュ蒸気発生装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係るフラッシュ蒸気発生装置は、蒸気を熱媒として各種生産設備で利用する蒸気システムに組み込まれて使用される。
<蒸気システム>
図1は、本発明の実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置が組み込まれた蒸気システムの概略構成図である。図1に示すように、蒸気システム1は、蒸気ボイラ装置群10と、スチームヘッダ12と、高圧蒸気利用設備13と、低圧蒸気利用設備14と、フラッシュ蒸気発生装置30と、蒸気昇圧機15と、給水タンク40と、を備える。また、蒸気システム1は、第1蒸気ラインL11と、第2蒸気ラインL12と、第3蒸気ラインL13と、第4蒸気ラインL14と、第5蒸気ラインL15と、第1ドレンラインL21と、第2ドレンラインL22と、第3ドレンラインL23と、第4ドレンラインL24と、ボイラ給水ラインL41と、補給水ラインL52と、を備える。
蒸気ボイラ装置群10は、例えば、多管式小型貫流ボイラの構造を有する複数台の蒸気ボイラ装置11,11,…からなり、高圧蒸気S1(例えば、0.5〜2MPaの蒸気)の供給源となるものである。蒸気ボイラ装置11は、ガス燃料や油燃料をバーナーで燃焼させながら水管内のボイラ水を加熱し、高圧蒸気S1を発生させる。蒸気ボイラ装置群10においては、蒸気ボイラ装置11の運転台数及び各蒸気ボイラ装置11の燃焼状態(例えば、高燃焼状態、中燃焼状態、低燃焼状態及び停止状態)を制御することにより、蒸気供給量を調節可能に構成されている。
第1蒸気ラインL11は、蒸気ボイラ装置11で製造された高圧蒸気S1をスチームヘッダ12に供給するための管路である。スチームヘッダ12は、複数台の蒸気ボイラ装置11,11,…で製造された高圧蒸気S1を一箇所に集め、ボイラ間の蒸気圧力のばらつきを吸収させるための設備である。スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1は、複数の蒸気利用設備(負荷機器)に向けて分配される。
第2蒸気ラインL12は、スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1を高圧蒸気利用設備13に供給するための管路である。高圧蒸気利用設備13は、スチームヘッダ12から供給される高圧蒸気S1を熱媒として利用する設備である。高圧蒸気利用設備13としては、例えば、クリーニング工場の乾燥機、食品加工工場のフライヤー等の生産設備が該当する。
第3蒸気ラインL13は、スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1を減圧して低圧蒸気S2とし、この低圧蒸気S2を低圧蒸気利用設備14に供給するための管路である。第3蒸気ラインL13には、高圧蒸気S1から所要圧力の低圧蒸気S2(例えば、0.1〜0.4MPaの蒸気)を得るために、減圧弁V11が設けられている。低圧蒸気利用設備14は、減圧弁V11を介して供給される低圧蒸気S2、又は後述する蒸気昇圧機15を介して供給される低圧蒸気S2を熱媒として利用する設備である。低圧蒸気利用設備14としては、例えば、クリーニング工場の連続洗濯機、食品加工工場の蒸し器等の生産設備が該当する。
第4蒸気ラインL14は、フラッシュ蒸気発生装置30で生成したフラッシュ蒸気S3を昇圧して低圧蒸気S2とし、この低圧蒸気S2を低圧蒸気利用設備14に供給するための管路である。第4蒸気ラインL14の上流側の端部は、フラッシュ蒸気発生装置30の蒸気出口(符号省略)に接続されている。第4蒸気ラインL14の下流側の端部は、減圧弁V11の下流側の第3蒸気ラインL13と接続されている。第4蒸気ラインL14には、フラッシュ蒸気S3から所要圧力の低圧蒸気S2(例えば、0.1〜0.4MPaの蒸気)を得るために、蒸気昇圧機15が設けられている。蒸気昇圧機15としては、例えばスクリュー式圧縮機を使用することができ、この蒸気昇圧機15は、フラッシュ蒸気発生装置30の制御手段37(後述)から送信される駆動指令信号及び停止指令信号により制御される。
第4蒸気ラインL14において、蒸気昇圧機15の吸込側には、真空破壊弁V12が設けられ、蒸気昇圧機15の吐出側には、逆止弁V13が設けられている。真空破壊弁V12は、蒸気昇圧機15の吸込側が負圧になった場合に吸気作動することにより、吸込側を大気圧まで昇圧させる弁機構である。フラッシュ蒸気発生装置30の運転停止中には、第4蒸気ラインL14(及び送気ラインL31)の放熱と冷却により蒸気が凝縮し、蒸気昇圧機15の吸込側が負圧になりやすい。蒸気昇圧機15がスクリュー式圧縮機である場合、吸込側が負圧になると、低圧蒸気S2の逆流等によってスクリュー歯溝間の液シール部分に異物が噛み込むおそれがある。そこで、本実施形態では、真空破壊弁V12を設けることにより、蒸気昇圧機15の吸込側が負圧状態になるのを防止している。また、逆止弁V13は、設定方向とは逆の流れが生じた場合に閉止作動することにより、蒸気昇圧機15に対して低圧蒸気S2が逆流するのを防止する弁機構である。
低圧蒸気利用設備14に対しては、蒸気ボイラ装置群10に由来する低圧蒸気S2と、フラッシュ蒸気発生装置30に由来する低圧蒸気S2とが合流して供給される。そのため、蒸気システム1では、フラッシュ蒸気発生装置30に由来する低圧蒸気S2の供給量が多いほど、蒸気ボイラ装置群10に由来する低圧蒸気S2の供給量が少なくて済み、システム全体の省エネルギーを図ることができるようになっている。
第1ドレンラインL21は、高圧蒸気利用設備13で発生した蒸気ドレンD1を給水タンク40に回収するための管路である。高圧蒸気利用設備13の蒸気出口側には、スチームトラップ21が設けられている。このスチームトラップ21は、蒸気ドレンD1を高圧蒸気S1から分離し、自動で排出する機器である。第1ドレンラインL21は、スチームトラップ21から給水タンク40の近傍まで水平配管(又は傾斜下降配管)で敷設された後、給水タンク40の上方より垂直配管で延設され、配管の末端部分がタンクの貯水領域に水没されている。
第1ドレンラインL21は、蒸気ドレンD1を給水タンク40に回収する際には、バイパス弁V36(後述)により流路が開放される一方、蒸気ドレンD1をフラッシュ蒸気発生装置30(後述)のフラッシュタンク31に回収する際には、バイパス弁V36により流路が遮断される。そのため、第1ドレンラインL21は、フラッシュタンク31に対して蒸気ドレンD1を迂回させるバイパスラインとして機能する。
更に、給水タンク40の上方において、第1ドレンラインL21の水平配管の上面には、蒸気ドレンD1が流通する過程で発生したフラッシュ蒸気S4を取り出す排気口(符号省略)が設けられている。この排気口には、立上り配管部、水平配管部、及び立下り配管部よりなる第5蒸気ラインL15が接続されている。つまり、第5蒸気ラインL15は、第1ドレンラインL21から分岐する管路である。この第5蒸気ラインL15の水平配管部には、排気弁V14が設けられている。第5蒸気ラインL15の立下り配管部の末端は、給水タンク40の非貯水領域に接続されるか、サイレンサを介して貯水領域に接続される。後述するように、バイパス弁V33の開放と同期して排気弁V14を開放することにより、温水とフラッシュ蒸気とに二相化した蒸気ドレンD1は、温水部分が第1ドレンラインL21を通じて給水タンク40に回収される一方で、蒸気部分(S4)が第5蒸気ラインL15を通じて給水タンク40に回収される。
第2ドレンラインL22は、高圧蒸気利用設備13で発生した蒸気ドレンD1をフラッシュ蒸気発生装置30に導入させるための管路である。第2ドレンラインL22は、第1ドレンラインL21から分岐し、下流側の端部がフラッシュ蒸気発生装置30のドレン入口(符号省略)に接続されている。
第3ドレンラインL23は、フラッシュ蒸気発生装置30から排出された温水W3を給水タンク40に回収するための管路である。第3ドレンラインL23は、上流側の端部がフラッシュ蒸気発生装置30の温水出口(符号省略)に接続されており、下流側の端部が第1ドレンラインL21に合流している。
第4ドレンラインL24は、フラッシュ蒸気発生装置30からブローダウンされた温水W3や蒸気ドレンD1を排水ピット50に廃棄するための管路である。第4ドレンラインL24は上流側の端部がフラッシュ蒸気発生装置30のブロー出口(符号省略)に接続されており、下流側の端部が排水ピット50に向けて大気開放されている。
ボイラ給水ラインL41は、補給水W1と温水W3(又は蒸気ドレンD1)が混合されたボイラ給水W2を蒸気ボイラ装置11に供給するための管路である。ボイラ給水ラインL41の上流側の端部は、給水タンク40に接続されている。ボイラ給水ラインL41の下流側の端部は、分岐ラインを介して各蒸気ボイラ装置11,11,…に接続されている。給水タンク40は、蒸気ボイラ装置11に供給されるボイラ給水W2を貯留する大気開放型のタンクである。給水タンク40には、補給水ラインL42が接続されており、補給水W1(例えば、軟化水)が供給されるようになっている。
<フラッシュ蒸気発生装置>
フラッシュ蒸気発生装置30は、フラッシュタンク31と、ドレン回収ラインL31と、蒸気送気ラインL32と、ドレン排出ラインL33と、ブローラインL34と、初期ドレン排出ラインL35と、流通経路切換手段32(入口弁V31;蒸気送気弁V32;ドレン排出弁V33;ブロー弁V34;初期ドレン排出弁V35;バイパス弁V36)と、缶内水位検出手段33(第1水位検出器33A;第2水位検出器33B)と、缶内圧力検出手段34(第1圧力センサ34A;第1圧力スイッチ34B)と、ライン圧力検出手段35(第2圧力センサ35A;第2圧力スイッチ35B)と、ドレン温度検出手段36(温度センサ)と、制御手段37と、を備える。
フラッシュタンク31は、回収した蒸気ドレンD1を再蒸発させてフラッシュ蒸気S3と温水W3とに分離するための圧力容器(以下、単に「缶体」ともいう)である。フラッシュタンク31は、大気圧における沸点を超える液体を保有する容器であるので、労働安全衛生法施行令第1条第6号に定める小型圧力容器に適合するように製造されている。フラッシュタンク31の上部には、缶内圧力が異常に高まった際に、圧力を放出するための安全弁V37(逃し弁)が接続されている。
フラッシュタンク31には、缶内水位を検出する缶内水位検出手段33として、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33Bが設けられている。各水位検出器33A,33Bは、それぞれ水位検出筒を有しており、この水位検出筒の上部と下部は、それぞれ連通管を介してフラッシュタンク31の上部と下部に接続されている。2つの水位検出筒の内部には5個のフロートスイッチが高さを変えて配置されており、フラッシュタンク31の缶内水位を段階的に検出可能に構成されている。第1水位検出器33Aによって検出される設定水位は、下から順に、低水位L及び高水位Hの2段階となっている。一方、第2水位検出器33Bによって検出される設定水位は、下から順に、下限水位LL、中水位M、及び上限HHの3段階となっている。すなわち、両水位検出器33A,33Bを併用することにより、下限水位LL<低水位L<中水位M<高水位H<上限水位HHの関係となる5段階の設定水位が検出可能である。各水位検出器33A,33Bの検出水位(接点信号)は、それぞれ制御手段37へ検出信号として送信される。
また、フラッシュタンク31には、缶内圧力(気相部の圧力)を検出する缶内圧力検出手段34として、第1圧力センサ34Aと、第1圧力スイッチ34Bと、が設けられている。第1圧力センサ34Aは、フラッシュタンク31の缶内圧力を所定の測定レンジで連続的に検出する。第1圧力スイッチ34Bは、フラッシュタンク31の缶内圧力が予め設定された上限圧力に到達したか否かを検出する。第1圧力スイッチ34Bは、例えば、検出圧力が上限圧力以上の場合に接点信号がオンとなる一方で、検出圧力が上限圧力未満の場合に接点信号がオフとなる検出スイッチである。第1圧力センサ34A及び第1圧力スイッチ34Bの検出圧力(接点信号を含む)は、それぞれ制御手段37へ検出信号として送信される。なお、第1圧力スイッチ34Bによる上限圧力の検出は、例えば、送気弁V32の閉故障による缶内圧力異常のアラーム発報に利用される。
ドレン回収ラインL31は、第1ドレンラインL21から第2ドレンラインL22に流入する蒸気ドレンD1をフラッシュタンク31に回収するための管路である。ドレン回収ラインL31の上流側の端部は、装置のドレン入口(符号省略)となっている。ドレン回収ラインL31の下流側の端部は、フラッシュタンク31の胴部と接続されている。ドレン回収ラインL31には、上流側から順に、第2圧力センサ35A(ライン圧力検出手段)、温度センサ36(ドレン温度検出手段)、入口弁V31、第2圧力スイッチ35B(ライン圧力検出手段)、ストレーナ38が設けられている。
第2圧力センサ35Aは、ドレン回収ラインL31の管路内圧力を所定の測定レンジで連続的に検出する。第2圧力スイッチ35Bは、ドレン回収ラインL31の管路内圧力が予め設定された上限圧力に到達したか否かを検出する。第2圧力スイッチ35Bは、例えば、検出圧力が上限圧力以上の場合に接点信号がオンとなる一方で、検出圧力が上限圧力未満の場合に接点信号がオフとなる検出スイッチである。温度センサ36は、ドレン回収ラインL31を流通する蒸気ドレンD1の温度を所定の測定レンジで連続的に検出する。第2圧力センサ35A及び第2圧力スイッチ35Bの検出圧力(接点信号を含む)並びに温度センサ36の検出温度は、それぞれ制御手段37へ検出信号として送信される。なお、第2圧力スイッチ35Bによる上限圧力の検出は、例えば、ストレーナ38の詰まりによる管路内圧力異常のアラーム発報に利用される。
入口弁V31は、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、比例制御式電動弁)であり、制御手段37からの駆動信号により制御される。ストレーナ38は、蒸気ドレンD1に含まれる鉄錆等の固形物をろ過するための機器である。
蒸気送気ラインL32は、フラッシュ蒸気S3をフラッシュタンク31から第4蒸気ラインL14へ送気するための管路である。蒸気送気ラインL32の上流側の端部は、フラッシュタンク31の頂部と接続されている。蒸気送気ラインL32の下流側の端部は、装置の蒸気出口(符号省略)となっている。蒸気送気ラインL32には、上流側から順に、真空破壊弁V38及び蒸気送気弁V32が設けられている。
真空破壊弁V38は、フラッシュタンク31の缶内が負圧になった場合に吸気作動することにより、缶内を大気圧まで昇圧させる弁機構である。フラッシュ蒸気発生装置30の運転停止中には、フラッシュタンク31の放熱と冷却に伴うフラッシュ蒸気S3の凝縮により缶内が負圧になりやすい。蒸気送気弁V32がボール式の電動弁である場合、缶内が負圧になると、フラッシュ蒸気S3の逆流等によってシート弁座に異物が噛み込んだり、シート弁座が変形したりするおそれがある。そこで、本実施形態では、真空破壊弁V38を設けることにより、フラッシュタンク31の缶内が負圧状態になるのを防止している。蒸気送気弁V32は、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、比例制御式電動弁)であり、制御手段37からの駆動信号により制御される。
ドレン排出ラインL33は、フラッシュタンク31内の温水W3(フラッシュ蒸気S3を分離後の蒸気ドレンD1)を第3ドレンラインL23へ送出するための管路である。ドレン排出ラインL33の上流側の端部は、フラッシュタンク31の底部と接続されている。ドレン排出ラインL33の下流側の端部は、装置のドレン出口(符号省略)となっている。すなわち、フラッシュタンク31で分離された温水W3は、第3ドレンラインL23及び第1ドレンラインL21を通じて給水タンク40に回収された後、ボイラ給水W2の一部として再利用されるようになっている。ドレン排出ラインL33には、上流側から順にドレン排出弁V33及び逆止弁V39が設けられている。
ドレン排出弁V33は、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、比例制御式電動弁)であり、制御手段37からの駆動信号により制御される。また、逆止弁V39は、設定方向とは逆の流れが生じた場合に閉止作動することにより、フラッシュタンク31に対して温水W3が逆流するのを防止する弁機構である。
ブローラインL34は、フラッシュタンク31内の温水W3(フラッシュ蒸気S3を分離後の蒸気ドレンD1)を第4ドレンラインL24へ送出するための管路である。ブローラインL34の上流側の端部は、ドレン排出弁V33の上流側のドレン排出ラインL33から分岐されている。ブローラインL34の下流側の端部は、装置のブロー出口(符号省略)となっている。ブローラインL34には、ブロー弁V34が設けられている。このブローV34は、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、比例制御式電動弁)であり、制御手段37からの駆動信号により制御される。
初期ドレン排出ラインL35は、ドレン回収ラインL31に流入した蒸気ドレンD1を排出するための管路である。初期ドレン排出ラインL35の上流側の端部は、温度センサ36と入口弁V31の間のドレン回収ラインL31から分岐されている。初期ドレン排出ラインL35の下流側の端部は、ブロー弁V34の下流側のブローラインL34に集合されている。ブローラインL35には、ブロー弁V35が設けられている。ブロー弁V35は、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、二位置制御式電動弁)であり、制御手段37からの駆動信号により制御される。
フラッシュタンク31に対するバイパスラインとして機能する第1ドレンラインL21において、第2ドレンラインL22の分岐位置と第5蒸気ラインL15の接続位置の間には、バイパス弁V36が設けられている。このバイパス弁V36は、フラッシュ蒸気発生装置30の外部に設けられるが、流通経路切換手段32を構成する制御弁(例えば、比例制御式電動弁)となっており、制御手段37からの駆動信号により制御される。バイパス弁V36は、スチームトラップ21から排出される蒸気ドレンD1の一部又は全部をフラッシュ蒸気発生装置30に流入させずに、給水タンク40に回収する場合に開放される。
前述の通り、流通経路切換手段32は、入口弁V31、蒸気送気弁V32、ドレン排出弁V33、ブロー弁V34、初期ドレン排出弁V35、及びバイパスV36の各制御弁からなり、装置内の流体流路を所要の状態に切り換え可能なマルチ弁機構として構成されている。
制御手段37は、センサ類より取得した系内の物理量情報(圧力,水位,温度)を使用して流通経路切換手段32、蒸気昇圧装置15、排気弁V14等を制御する。制御手段37は、例えばシーケンス制御を実行可能なプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)により構成される。PLCのメモリ領域には、各種プログラムのほか、予め入力された制御用の設定データや、センサ類による運転中の検出データが記憶される。以下、フラッシュ蒸気発生装置30の制御動作について詳細に説明する。なお、前述した通り、缶内水位の判断に使用する設定水位は、下限水位LL<低水位L<中水位M<高水位H<上限水位HHの関係である。また、缶内圧力の判断に使用する設定圧力は、第1設定圧力P1<第2設定圧力P2<第3設定圧力P3<第4設定圧力P4の関係であり、ドレン温度の判断に使用する設定温度は、第1設定温度T1<第2設定温度T2の関係である。
〔a〕運転制御
図2は、制御手段37によるフラッシュ蒸気発生装置30の運転制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33Bの検出水位を缶内水位として取得する。ステップST0は、装置の電源が投入されていないときには、バイパス弁V36が全開になっていることを示している。この状態では、スチームトラップ21から排出された蒸気ドレンD1は、第1ドレンラインL21を通じて給水タンク40に回収されるようになっている。ステップST0で電源がオンにされると、制御手段37はステップST1に移行して起動準備処理を実行する。起動準備処理では、初期ドレン排出弁V35を全閉、蒸気送気弁V32を全閉、ドレン排出弁V33を全開、ブロー弁V34を全閉、入口弁V31を全閉に制御する。通常、各弁V31〜V35のそれぞれは、装置停止時に所定の開閉状態に制御されるが、装置停止中に手動で弁操作が行われる場合を考慮して、起動準備処理により所定の開閉状態にリセットしている。なお、各弁V31〜V35の開度は、全閉が0%、全開が100%となる。ステップST1で運転スイッチがオンにされると、制御手段37はステップST2〜ST6からなる運転処理を開始する。
さて、装置の停止時間がある程度の長さに及ぶと、フラッシュタンク31の放熱と冷却により缶内蒸気が凝縮すると共に缶内圧力の降下が起こる。真空破壊弁V38の存在により缶内圧力は大気圧以上に保たれるが、凝縮水の排出圧力が低下するので、装置の起動前には缶内水位が上昇していることがある。そこで、制御手段37は、ステップST2において、缶内水位が高水位H以上か否かを判断する。ステップST2でYES(缶内水位≧H)と判断した場合、缶内の凝縮水を排出して水位を下げるため、制御手段37はステップST3に移行して待機処理を実行する。待機処理では、制御手段37は蒸気送気弁V32を全閉、ドレン排出弁V33を全開、入口弁V31を全開、バイパス弁V36を全閉に制御する。これにより、蒸気ドレンD1の導入と凝縮水の排出を促して缶内水位を下降させる。
ステップST3に続くステップST4において、制御手段37は内水位が中水位M以上か否かを判断する。ステップST5でYES(缶内水位≧M)と判断した場合、缶内水位が下降途中であるため、制御手段37はステップST3の待機処理を継続する。一方、ステップST4でNO(缶内水位<M)と判断した場合、缶内水位が十分に下がっているので待機処理を解除し、制御手段37はステップST2の処理に戻る。
ステップST2でNO(缶内水位<H)と判断した場合、制御手段37はステップST5に移行する。ステップST5では、制御手段37は後述する初期ドレン排出弁V35の制御(図3)を実行する。ステップST5に続くステップST6では、後述する蒸気送気弁V32の制御(図4)、蒸気昇圧機15の制御(図4)、ドレン排出弁V33の制御(図5,図6)、バイパス弁V36の制御(図7,図8)、ブロー弁V34の制御(図9)、入口弁V31の制御(図10)を並行して実行する。ステップST7の各制御が終了すると、制御手段37はステップST2の処理に戻る。
運転処理の実行中に運転スイッチがオフにされると、制御手段37はステップST7に移行して蒸気昇圧機15を停止させる。ステップST7に続くステップST8において、制御手段37は停止処理を実行する。停止処理では、初期ドレン排出弁V35を全閉、蒸気送気弁V32を全閉、ドレン排出弁V33を全開、ブロー弁V34を全閉、入口弁V31を全閉、バイパス弁V36を全開に制御する。ステップST8で運転スイッチがオフにされると、制御手段37はステップST0に移行してバイパス弁V36の全開を維持する。
〔b〕初期ドレン排出弁V35の制御
図3は、制御手段37による初期ドレン排出弁V35の制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は、温度センサ36の検出温度をドレン温度として取得する。ステップST11において、制御手段37はドレン温度が第1設定温度T1(例えば、90℃)以下か否かを判断する。ステップST11でYES(ドレン温度≦T1)と判断した場合、スチームトラップ21から排出される蒸気ドレンD1が低温であるため、制御手段37はステップST12に移行して初期ドレン排出弁V35の開度を100%(全開)に制御する。
高圧蒸気利用設備13の冷態起動時に排出される蒸気ドレンD1の初流部分(初期ドレン)は、溶出物による汚染や再利用できる熱量の問題から回収によるメリットがほとんどない。そこで、制御手段37は、ドレン温度が第1設定温度T1以下であると判断した場合には、初期ドレン排出弁V35を開放して蒸気ドレンD1をフラッシュタンク31に流入させないようにする。これにより、第2ドレンラインL22を通じて流入する低温の蒸気ドレンD1は、ドレン排出ラインL35及び第4ドレンラインL24を介して排水ピット50に排出される。
ステップST11でNO(ドレン温度>T1)と判断した場合、制御手段37はステップST13に移行する。ステップST13において、制御手段37はドレン温度が第1設定温度T1よりも高い第2設定温度T2(例えば、95℃)以上か否かを判断する。ステップST13でNO(ドレン温度<T2)と判断した場合、ドレン温度が十分に高まっていないため、制御手段37はステップST14に移行して初期ドレン排出弁V35の開度を100%のまま保持する。一方、ステップST13でYES(ドレン温度≧T2)と判断した場合、ドレン温度が十分に高まっているため、制御手段37はステップST15に移行して初期ドレン排出弁V35の開度を0%(全閉)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の回収が許可されるようになる。
なお、本制御の実行時には、初期ドレン排出弁V35と入口弁V31とを連動させるように制御するのが好ましい(後述する入口弁V31の制御を参照)。ステップST12で初期ドレン排出弁V35の開度を100%(全開)に制御した場合、入口弁V31の開度を0%(全閉)に制御する。これにより、装置の運転中に、複数設置された高温蒸気利用設備13の追加起動等で低温の蒸気ドレンD1が排出されたとしても、フラッシュタンク31への流入が防止される。
また、本制御の実行時には、蒸気ドレンD1の流入量に応じてバイパス弁V36を制御するのが好ましい(後述するバイパス弁V36の制御を参照)。第2圧力センサ35Aの検出圧力が所定の設定圧力以上となった場合、バイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、装置の運転中に、複数設置された高温蒸気利用設備13の追加起動等で大量の蒸気ドレンD1が流入したとしても、その排出時間を短縮することができる。
〔c〕蒸気送気弁V32の制御;蒸気昇圧機15の制御
図4は、制御手段37による蒸気送気弁V32の制御及び蒸気昇圧機15の制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は第1圧力センサ34Aの検出圧力を缶内圧力として取得する。ステップST21において、制御手段37は缶内圧力が第2設定圧力P2(例えば、0.1MPa)以下か否かを判断する。ステップST21でYES(缶内圧力≦P2)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が確保されていない状態であるため、制御手段37はステップST22に移行して蒸気昇圧機15を停止させる。そして、制御手段37はステップST23に移行して蒸気送気弁V32の開度を0%(全閉)に制御する。これにより、缶内圧力の上昇が促進されるようになる。
本制御において、蒸気送気弁V32の閉止に伴って蒸気昇圧機15を停止させる場合、制御手段37は、ステップST22で蒸気昇圧機15に停止指令信号を送信してから所定時間後(例えば、20秒後)に、ステップST23で蒸気送気弁V32に閉止指令信号を送信するようにしている。また、運転制御においても、ステップST7及びステップST8で同様の処理を行っている。蒸気昇圧機15は、通常、停止指令信号の受信後に惰性によりスクリューローターがフリーラン停止するが、蒸気送気弁V32は、閉止指令信号の受信後に弁体が制動されながら閉止するという特性がある。そのため、停止指令信号と停止指令信号を同時に出力すると、蒸気送気弁V32が完全閉止してから蒸気昇圧機15が完全停止するまでにタイムラグが生じ、その間に蒸気昇圧機15の吸込側が負圧になってしまう。前述したように、蒸気昇圧機15がスクリュー式圧縮機である場合、吸込側が負圧になると、低圧蒸気S2の逆流等によってスクリュー歯溝間の液シール部分に異物が噛み込むおそれがある。そこで、本実施形態では、蒸気昇圧機15に停止指令信号を送信するタイミングよりも蒸気送気弁V32に閉止指令信号を送信するタイミングを遅延させることにより、蒸気昇圧機15の吸込側が負圧状態になるのを防止している。
ステップST21でNO(缶内圧力>P2)と判断した場合、制御手段37はステップST24に移行する。ステップST24において、制御手段37は缶内圧力が第2設定圧力よりも高い第3設定圧力P3(例えば、0.2MPa)以上か否かを判断する。ステップST24でYES(缶内圧力≧P3)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が十分に確保されている状態であるため、制御手段37はステップST25に移行して蒸気送気弁V32の開度を100%(全開)に制御する。そして、制御手段37はステップST26に移行して蒸気昇圧機15を駆動させる。これにより、低圧蒸気利用設備14へのフラッシュ蒸気S3の供給が許可されるようになる。
ステップST24でNO(缶内圧力<P3)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が十分に確保されない可能性を考慮して、制御手段37はステップST27に移行して蒸気送気弁V32の開度を調整する。具体的には、缶内圧力がP2とき開度0%、缶内圧力がP3のとき開度100%になるように蒸気送気弁V32の開度を比例制御し、フラッシュ蒸気S3の送気量を調整する。その結果、缶内圧力の低下が抑制され、温水W3の排出圧力が確保される。そして、制御手段37は、ステップST26に移行して蒸気昇圧機15を駆動させる。
なお、運転制御においては、ステップST2の初期ドレン排出制御を実行してから本制御を含むステップST6に移行させているので、本制御を実行する際には、必ず第2設定温度T2(例えば、95℃)以上の高温の蒸気ドレンD1がフラッシュタンク31に流入するようになっている。これにより、缶内圧力の上昇が促進され、フラッシュタンク31は速やかに温水W3の排出圧力が確保された状態になる。その結果、缶内水位を適正範囲に保つことが容易となり、温水W3のキャリーオーバーによって乾き度の低下したフラッシュ蒸気S3が送気されてしまうことを防止できる。
〔d〕ドレン排出弁V33の制御
図5は、制御手段37によるドレン排出弁V33の制御に係るフローチャートである。図6は、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33Bにおけるフロートスイッチのオンオフ状態と水位判定の関係、並びにドレン排出弁V33の開度設定値を示すテーブルである。本制御において、制御手段37は両水位検出器33A,33Bの検出水位を缶内水位Wとして取得する。また、本制御を実行するに当たり、制御手段37に記憶されている各水位に応じた開度設定値を利用する。
図6の上段に示すように、5つフロートスイッチ全てがオフのときには、水位判定はW<LLとなり、制御手段37は缶内水位Wが下限水位LL未満であると認識する。「0%(固定)」の表記は、開度が0%(全閉)に固定されることを示している。最下方のフロートスイッチのみがオンのときには、水位判定はLL≦W<Lとなり、制御手段37は缶内水位Wが下限水位LLであると認識する。「10%(LL)」の表記は、下限水位LLの開度設定値が10%であることを示している。下方から2つのフロートスイッチがオンのときには、水位判定はL≦W<Mとなり、制御手段37は缶内水位Wが低水位Lであると認識する。「50%(L)」の表記は、低水位Lの開度設定値が50%であることを示している。下方から3つのフロートスイッチがオンのときには、水位判定はM≦W<Hとなり、制御手段37は缶内水位Wが中水位Mであると認識する。「100%(M)」の表記は、中水位Mの開度設定値が100%であることを示している。下方から4つのフロートスイッチがオンのときには、水位判定はH≦W<HHとなり、制御手段37は缶内水位Wが高水位Hであると認識する。「100%(H)」の表記は、高水位Hの開度設定値が100%であることを示している。5つフロートスイッチ全てがオンのときには、水位判定はHH≦Wとなり、制御手段37は缶内水位Wが上限水位HH超過であると認識する。「100%(固定)」の表記は、開度が100%(全開)に固定されることを示している。
図5のフローチャートは水位上昇時のものであり、ステップST31において、制御手段37は缶内水位Wが下限水位LL以上か否かを判断する。ステップST31でNO(W<LL)と判断した場合、制御手段37はステップST32へと進み、缶内水位W<LLの状態で第1設定時間t1(例えば、10秒)が経過したか否かを判断する。ステップST32でYES(W<LLのままt1経過)と判断した場合、制御手段37はステップST33に移行してドレン排出弁V33の開度を0%(固定)に制御する。一方、ステップST32でNO(t1経過せずにW≧LLに復帰)と判断した場合、制御手段37はステップST34に移行してドレン排出弁V33の開度を10%(LL)に制御する。
ステップST31でYES(W≧LL)と判断した場合、制御手段37はステップST35に移行し、缶内水位Wが低水位L以上か否かを判断する。ステップST35でNO(W<L)と判断した場合、制御手段37はステップST36に移行してドレン排出弁V33の開度を10%(LL)に制御する。
ステップST35でYES(W≧L)と判断した場合、制御手段37はステップST37に移行し、缶内水位Wが中水位M以上か否かを判断する。ステップST37でNO(W<M)と判断した場合、制御手段37はステップST38に移行してドレン排出弁V33の開度を50%(L)に制御する。
ステップST37でYES(W≧M)と判断した場合、制御手段37はステップST39に移行し、缶内水位Wが高水位H以上か否かを判断する。ステップST39でNO(W<H)と判断した場合、制御手段37はステップST40に移行してドレン排出弁V33の開度を100%(M)に制御する。
ステップST39でYES(W≧H)と判断した場合、制御手段37はステップST41に移行し、缶内水位Wが上限水位HH以上か否かを判断する。ステップST41でNO(W<HH)と判断した場合、制御手段37はステップST42に移行してドレン排出弁V33の開度を100%(H)に制御する。続いて、制御手段37はステップST43へと進み、W≧Hの状態で第2設定時間t2(例えば、10秒)が経過したか否かを判断する。ステップST43でYES(W≧Hのままt2経過)と判断した場合、制御手段37はステップST3(図2)に移行して待機処理を実行する。一方、ステップST43でNO(t2経過せずにW<Hに変化)と判断した場合、制御手段37は処理を終了する。
ステップST41でYES(W≧HH)と判断した場合、制御手段37はステップST44に移行してドレン排出弁V33の開度を100%(固定)に制御する。続いて、制御手段37はステップST45へと進み、缶内水位W≧HHの状態で第3設定時間t3(例えば、10秒)が経過したか否かを判断する。ステップST45でYES(W≧HHのままt3経過)と判断した場合、制御手段37はステップST46に移行してアラームを発報し、ステップST7(図2)に進む。すなわち、缶内水位Wが上限水位HHを超える状態が継続した場合には、制御手段37は装置を停止させるように制御する。一方、ステップST45でNO(t3経過せずにW<HHに変化)と判断した場合、制御手段37は処理を終了する。
ステップST43から待機処理に移行した後は、ドレン排出弁V33が全開に制御されることにより缶内水位が下降する。図6の下段に示すように、下方から3つのフロートスイッチがオン(水位判定M≦W<H)になると、制御手段37は缶内水位Wが中水位Mであると認識し、ドレン排出弁V33の開度を100%(M)に制御する。その後、更に温水W3の排出が進んで下方から2つのフロートスイッチがオン(水位判定L≦W<M)になると、ステップST4でNOと判断され、ドレン排出弁V33の開度が100%(M)に制御された状態で待機が解除される。
待機の解除後に缶内水位が上昇し、水位判定がM≦W<Hとなった場合には、ドレン排出弁V33の開度がそのまま100%(M)に制御される。逆に、待機の解除後に缶内水位が下降し、水位判定がLL≦W<Lとなった場合には、ドレン排出弁V33の開度は一段階低い50%(L)に制御される。ドレン排出弁V33の開度が50%(L)に制御された状態で缶内水位が上昇し、水位判定がL≦W<Mとなった場合には、ドレン排出弁V33の開度がそのまま50%(L)に制御される。一方、ドレン排出弁V33の開度が50%(L)に制御された状態で缶内水位が下降し、水位判定がW<LLとなった場合には、ドレン排出弁V33の開度が0%(固定)に制御される。
上記した通り、本制御では、缶内水位Wが高水位H以上の状態で第2設定時間t2が経過したと判断した場合(ステップST43でYES)、待機処理(図3のステップST3)を実行するようになっている。待機処理では、蒸気送気弁V32が全閉に制御されるため、缶内水位の上昇により温水W3のキャリーオーバーが起きやすい状態になっていても、乾き度の低下したフラッシュ蒸気S3が送気されてしまうことを防止できる。
また、本制御では、缶内水位Wが低水位L未満と判断した場合(ステップST35でNO)、制御手段37はドレン排出弁V33の開度を0%としないで10%に制御するようになっている。さらに、本制御では、第1設定時間t1を経過せずに缶内水位Wが下限水位LL以上に復帰した判断した場合(ステップST32でNO)にも、ドレン排出弁V33の開度を0%としないで10%に制御するようになっている。つまり、本制御においては、特別な状況を除いてドレン排出弁V33の開度を全閉にならない最小設定開度以上の範囲で制御し、温水W3の排出が継続的に行われるようにしている。これにより、缶内水位の上昇が抑えられ、温水W3のキャリーオーバーが防止される。また、蒸気ドレンD1の流入量が急増して缶内水位が上昇したとしても、最小設定開度10%を起点としてドレン排出弁V33の開度を段階的に増やすことになるので、短時間で缶内水位を適正範囲まで下降させることができる。
なお、ドレン排出弁V33を全閉にしないように操作することで、蒸気ドレンD1の缶内保有量が最小限に保たれるが、これは第1ドレンラインL21の振動抑制にも効果がある。第1ドレンラインL21の振動が起こりやすい事例は、フラッシュタンク31の缶内水位を強制的に下げるために、バイパス弁V36を全閉状態から全開状態に制御して蒸気ドレンD1の回収量を制限する場合(図7に示す2位置制御例)である。この事例では、バイパス弁V36が開放された瞬間に、スチームトラップ21から排出された蒸気ドレンD1の再蒸発に加えて、フラッシュタンク31内の蒸気ドレンD1の再蒸発が同時に起こり、大量のフラッシュ蒸気が給水タンク40に向かって一気に流れ出ようとする。そうすると、フラッシュ蒸気が高流速で流通することによって第1ドレンラインL21が激しく振動し、衝撃により配管の破損を招くおそれがあった。そこで、蒸気ドレンD1の缶内保有量を最小限に保つように操作し、フラッシュタンク31内での再蒸発量を低減させるようにする。これにより、バイパス弁V36を全閉から全開に制御した際に生じるフラッシュ蒸気の急激な流出が緩和されるので、第1ドレンラインL21の振動が抑制される。
〔e〕バイパス弁V36の制御(2位置制御例)
図7は、制御手段37によるバイパス弁V36の制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は第1圧力センサ34Aの検出圧力を缶内圧力として取得すると共に、制御手段37は両水位検出器33A,33Bの検出水位を缶内水位として取得する。また、制御手段37は第2圧力センサ35Aの検出圧力をライン圧力として取得する。ステップST51において、制御手段37は初期ドレン排出弁V35の制御状態が開度100%であるか否かを判断する。ステップST51でYES(初期ドレン排出弁V35が全開)と判断した場合、蒸気ドレンD1の流入量を評価するため、制御手段37はステップST52に移行する。
ステップST52において、制御手段37はライン圧力が設定圧力PL以上か否かを判断する。ステップST52でYES(ライン圧力≧PL)と判断した場合、初期ドレン排出ラインL35からのドレン排出が追い付いていない可能性があるため、制御手段37はステップST54に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、蒸気ドレンD1の排出ルートが追加される。
ステップST52でNO(ライン圧力<PL)と判断した場合、制御手段37はステップST53に進み、缶内水位が高水位H未満か否かを判断する。ステップST53でNO(缶内水位≧H)と判断した場合、温水W3のキャリーオーバーによって乾き度の低下したフラッシュ蒸気S3が送気されてしまう可能性があるため、制御手段37はステップST54に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が減少し、缶内水位の下降が促進される。
ステップST53でYES(缶内水位<H)と判断した場合、制御手段37はステップST55に進み、缶内圧力が第3設定圧力よりも高い第4設定圧力P4(例えば、0.44MPa)未満か否かを判断する。ステップST55でNO(缶内圧力≧P4)と判断した場合、フラッシュタンク31の最高使用圧力付近まで缶内圧力が高まっているため、制御手段37はステップST54に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が減少し、缶内圧力の下降が促進される。
ステップST55でYES(缶内圧力<P4)と判断した場合、制御手段37はステップST56に進み、缶内水位が中水位M未満か否かを判断する。ステップST56でNO(缶内水位≧M)と判断した場合、缶内水位の下降を促進するため、制御手段37はステップST57に移行してバイパス弁V36の開度を100%のまま保持する。
ステップST56でYES(缶内水位<M)と判断した場合、制御手段37はステップST58に進み、缶内圧力が第3設定圧力P3(例えば、0.34MPa)未満か否かを判断する。ステップST58でNO(缶内圧力≧P3)と判断した場合、缶内圧力の下降を促進するため、制御手段37はステップST57に移行してバイパス弁V36の開度を100%のまま保持する。一方、ステップST58でYES(缶内圧力<P3)と判断した場合、缶内圧力及び缶内水位が適正範囲にあるため、制御手段37はステップST59に移行してバイパス弁V36の開度を0%(全閉)に制御する。
ところで、本制御のようにバイパス弁V36を全閉状態から全開状態に制御して蒸気ドレンD1の回収量を制限する場合、前述した原因により、第1ドレンラインL21の振動が発生する懸念がある。そこで、バイパス弁V36の開度を100%に制御する場合には、同時に第5蒸気ラインL15の排気弁V14を開放するのが好ましい。蒸気ドレンD1の降圧により発生したフラッシュ蒸気の一部を第5蒸気ラインL15に逃すことにより、第1ドレンラインL21から蒸気ドレンD1が円滑に排出されるので、第1ドレンラインL21の振動が効果的に抑制される。
〔e´〕バイパス弁V36の制御(比例制御例)
制御手段37によるバイパス弁V36の制御は、図7に示した2位置制御以外に比例制御を採用することもできる。図8は、バイパス弁V36の比例制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は第1圧力センサ34Aの検出圧力を缶内圧力として取得する。また、制御手段37は両水位検出器33A,33Bの検出水位を缶内水位として取得する。ステップST61において、制御手段37は初期ドレン排出弁V35の制御状態が開度100%であるか否かを判断する。ステップST61でYES(初期ドレン排出弁V35が全開)と判断した場合、蒸気ドレンD1の流入量を評価するため、制御手段37はステップST62に移行する。
ステップST62において、制御手段37はライン圧力が設定圧力PL以上か否かを判断する。ステップST62でYES(ライン圧力≧PL)と判断した場合、初期ドレン排出ラインL35からのドレン排出が追い付いていない可能性があるため、制御手段37はステップST64に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、蒸気ドレンD1の排出ルートが追加される。
ステップST62でNO(ライン圧力<PL)と判断した場合、制御手段37はステップST63に進み、缶内水位が高水位H未満か否かを判断する。ステップST63でNO(缶内水位≧H)と判断した場合、温水W3のキャリーオーバーによって乾き度の低下したフラッシュ蒸気S3が送気されてしまう可能性があるため、制御手段37はステップST64に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が減少し、缶内水位の下降が促進される。なお、この開度100%は、比例制御の最大設定開度(ハイセレクト)でもある。
ステップST63でYES(缶内水位<H)と判断した場合、制御手段37はステップST65に進み、缶内水位が下限水位LL未満か否かを判断する。ステップST63でYES(缶内水位<LL)と判断した場合、蒸気ドレンD1の流入量を増やすため、制御手段37はステップST66に移行してバイパス弁V36の開度を20%に制御する。これにより、缶内水位が回復すると共にフラッシュ蒸気S3の発生が促進される。なお、この開度20%は、比例制御の最小設定開度(ローセレクト)でもある。
ステップST65でNO(缶内水位≧LL)と判断した場合、制御手段37はステップST67に進み、缶内圧力が第4設定圧力P4(例えば、0.44MPa)未満か否かを判断する。ステップST67でNO(缶内圧力≧P4)と判断した場合、フラッシュタンク31の最高使用圧力付近まで缶内圧力が高まっているため、制御手段37はステップST64に移行してバイパス弁V36の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が減少し、缶内圧力の下降が促進される。
ステップST67でYES(缶内圧力<P4)と判断した場合、制御手段37はステップST68に進み、缶内圧力が第3設定圧力P3(例えば、0.34MPa)未満か否かを判断する。ステップST68でYES(缶内圧力<P3)と判断した場合、缶内圧力が適正範囲にあるため、制御手段37はステップST66に移行してバイパス弁V36の開度を20%に制御する。一方、ステップST68でNO(缶内圧力≧P3)と判断した場合、缶内圧力の下降を促進するため、制御手段37はステップST69に移行してバイパス弁V36の開度を調整する。具体的には、缶内圧力が第3設定圧力P3とき開度20%、缶内圧力が第4設定圧力P4のとき開度100%になるようにバイパス弁V36の開度を缶内圧力に基づいて比例制御し、蒸気ドレンD1の流入量を調整する。その結果、缶内圧力が適正範囲に維持され、乾き度の高い高品質のフラッシュ蒸気S3を安定して送気可能になる。
比例制御における開度の範囲は、給水タンク40に連通する第1ドレンラインL21の振動抑制を考慮して設定する。図7に示した2位置制御のようにバイパス弁V36を全閉状態から全開状態に制御して蒸気ドレンD1の回収量を制限する場合、前述した原因により、第1ドレンラインL21の振動が発生する懸念がある。そこで、バイパス弁V36を下限設定開度以上で制御するようにしておき、蒸気ドレンD1から少量のフラッシュ蒸気を発生させながら、第1ドレンラインL21に常時流通させておく。これにより、バイパス弁V36を全開状態に制御した際に生じるフラッシュ蒸気の急激な流出が緩和されるので、第1ドレンラインL21の振動が抑制される。
〔f〕ブロー弁V34の制御
図9は、制御手段37によるブロー弁V34の制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は第1圧力センサ34Aの検出圧力を缶内圧力として取得する。また、制御手段37は両水位検出器33A,33Bの検出水位を缶内水位として取得する。ステップST71において、制御手段37は缶内水位が中水位M未満か否かを判断する。ステップST71でYES(缶内水位<M)と判断した場合、温水W3のキャリーオーバーによって乾き度の低下したフラッシュ蒸気S3が送気されてしまう可能性はないため、制御手段37はステップST72に移行してブロー弁V34の開度を0%(全閉)に制御する。
ステップST71でNO(缶内水位≧M)と判断した場合、制御手段37はステップST73に進み、缶内圧力が第2設定圧力P2(例えば、0.1MPa)未満か否かを判断する。ステップST73でNO(缶内圧力≧P2)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が十分に確保されている状態であるため、制御手段37はステップST72に移行してブロー弁V34の開度を0%(全閉)に制御する。
ステップST73でYES(缶内圧力<P2)と判断した場合、制御手段37はステップST74に進み、缶内水位が高水位H未満か否かを判断する。ステップST74でYES(缶内水位<H)と判断した場合、温水W3のキャリーオーバーが起こる可能性はないため、制御手段37はステップST75に移行してブロー弁V34の開度を0%(全閉)のまま保持する。
ステップST74でNO(缶内水位≧H)と判断した場合、制御手段37はステップST76に進み、缶内圧力が第2設定圧力P2よりも低い第1設定圧力P1(例えば、0.05MPa)未満か否かを判断する。ステップST76でNO(缶内圧力≧P1)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が十分に確保されている状態であるため、制御手段37はステップST75に移行してブロー弁V34の開度を0%(全閉)のまま保持する。
ステップST76でYES(缶内圧力<P1)と判断した場合、フラッシュタンク31からの温水W3の排出圧力が十分に確保されていない状態であるため、制御手段37はステップST77に移行してブロー弁V34の開度を100%(全開)に制御する。これにより、ドレン排出弁V33からの温水W3の排出に加えてブロー弁V34からも温水W3が排出され、缶内水位を適正範囲に保つことができる。
〔g〕入口弁V31の制御(缶内圧力に基づく比例制御例)
図10は、制御手段37による入口弁V31の缶内圧力に基づく比例制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は第1圧力センサ34Aの検出圧力を缶内圧力として取得する。ステップST81において、制御手段37は初期ドレン排出弁V35の制御状態が開度100%であるか否かを判断する。ステップST81でYES(初期ドレン排出弁V35が全開)と判断した場合、低温の蒸気ドレンD1をフラッシュタンク31に流入させないようにするため、制御手段37はステップST83に移行して入口弁V31の開度を0%(全閉)に制御する。
ステップST81でNO(初期ドレン排出弁V35が全閉)と判断した場合、制御手段37はステップST82に進み、缶内圧力が第2設定圧力(例えば、0.1MPa)以上か否かを判断する。ステップST82でYES(缶内圧力≧P2)と判断した場合、フラッシュ蒸気S3の送気圧力が蒸気昇圧機15の吸込上限圧力を上回るおそれがあるため、制御手段37はステップST83に移行して入口弁V31の開度を0%(全閉)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入が中断され、缶内圧力ひいてはフラッシュ蒸気S3の送気圧力の下降が促進される。
ステップST82でNO(缶内圧力<P2)と判断した場合、制御手段37はステップST84に移行する。ステップST83において、制御手段37は缶内圧力が第1設定圧力P1(例えば、0.05MPa)以下か否かを判断する。ステップST84でYES(缶内圧力≦P1)と判断した場合、フラッシュ蒸気S3の送気圧力が蒸気昇圧機15の吸込下限圧力を下回るおそれがあるため、制御手段37はステップST85に移行して入口弁V31の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が最大化され、缶内圧力ひいてはフラッシュ蒸気S3の送気圧力の上昇が促進される。
ステップST84でNO(缶内圧力>P1)と判断した場合、蒸気昇圧機15に対するフラッシュ蒸気S3の送気圧力を安定させるため、制御手段37はステップST86に移行して入口弁V31の開度を調整する。具体的には、缶内圧力が第1設定圧力P1とき開度0%、缶内圧力が第2設定圧力P2のとき開度100%になるように入口弁V31の開度を缶内圧力に基づいて比例制御し、フラッシュ蒸気S3の送気圧力を調整する。その結果、蒸気昇圧機15の吸込圧力が適正範囲に維持され、安定した低圧蒸気S2の供給が可能になる。
〔g´〕入口弁V31の制御(缶内水位に基づく比例制御例)
制御手段37による入口弁V36の制御は、蒸気昇圧機15の設置がある場合には、その吸込圧力を適正範囲に維持するため、図10に示した缶内圧力に基づく制御が望ましい。しかし、蒸気昇圧機15の設置がない場合には、缶内水位に基づく制御を採用することもできる。この制御を採用する場合、両水位検出器33A,33Bは、缶内水位を連続的に検出可能な水位センサ(例えば、静電容量式レベルセンサ)に変更するのがよい。
図11は、制御手段37による入口弁V31の缶内水位に基づく比例制御に係るフローチャートである。本制御において、制御手段37は水位センサの検出水位を缶内水位として取得する。ステップST91において、制御手段37は初期ドレン排出弁V35の制御状態が開度100%であるか否かを判断する。ステップST91でYES(初期ドレン排出弁V35が全開)と判断した場合、低温の蒸気ドレンD1をフラッシュタンク31に流入させないようにするため、制御手段37はステップST92に移行して入口弁V31の開度を0%(全閉)に制御する。
ステップST91でNO(初期ドレン排出弁V35が全閉)と判断した場合、制御手段37はステップST93に進み、缶内水位が中水位M以上か否かを判断する。ステップST93でYES(缶内水位≧M)と判断した場合、缶内水位が上昇傾向にあるため、制御手段37はステップST94に移行して入口弁V31の開度を10%に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が低減され、温水W3のキャリーオーバーが防止される。なお、この開度10%は、比例制御の最小設定開度(ローセレクト)でもある。
ステップST93でNO(缶内水位<M)と判断した場合、制御手段37はステップST95に移行する。ステップST95において、制御手段37は缶内水位が下限水位LL未満か否かを判断する。ステップST95でYES(缶内水位<LL)と判断した場合、蒸気ドレンD1の貯留量がなくなるおそれがあるため、制御手段37はステップST96に移行して入口弁V31の開度を100%(全開)に制御する。これにより、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が最大化され、フラッシュ蒸気S3の発生が促進される。なお、この開度100%は、比例制御の最小設定開度(ハイセレクト)でもある。
ステップST95でNO(缶内水位≧LL)と判断した場合、蒸気ドレンD1の流入量を安定させるため、制御手段37はステップST97に移行して入口弁V31の開度を調整する。具体的には、缶内水位が中水位Mとき開度10%、缶内水位が下限水位LLのとき開度100%になるように入口弁V31の開度を缶内水位に基づいて比例制御し、蒸気ドレンD1の流入量を調整する。その結果、缶内水位が適正範囲に維持され、安定した流量のフラッシュ蒸気S3の供給が可能になる。
本実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置30によれば、以下の効果を発揮することができる。
本実施形態のフラッシュ蒸気発生装置30において、制御手段37は、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33B(缶内水位検出手段33)の検出水位が下限水位LL以上の場合には、第1圧力センサ34A(缶内圧力検出手段34)の検出圧力に基づいてバイパス弁V36の開度を全閉とならない最小設定開度以上の範囲で比例制御する。これにより、蒸気ドレンD1の逃げ道が確保されつつ、フラッシュ蒸気S3が所定の圧力で供給される。その結果、蒸気ドレンD1の排出に伴う第1ドレンラインL21の振動を抑制することができると共に、高品質のフラッシュ蒸気S3を安定して送気可能になる。
また、本実施形態のフラッシュ蒸気発生装置30において、制御手段37は、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33B(缶内水位検出手段33)の検出水位が下限水位LL未満の場合には、バイパス弁の開度V36を最小設定開度に制御する。これにより、蒸気ドレンD1の逃げ道が確保されつつ、フラッシュタンク31への蒸気ドレンD1の流入量が増加される。その結果、第1ドレンラインL21の振動を抑制することができると共に、缶内水位を速やかに回復させてフラッシュ蒸気S3の発生を促進することができる。
また、本実施形態のフラッシュ蒸気発生装置30において、制御手段37は、第1水位検出器33A及び第2水位検出器33B(缶内水位検出手段33)の検出水位に基づいてドレン排出弁V33の開度を全閉とならない最小設定開度以上の範囲で制御する。これにより、蒸気ドレンD1の缶内保有量が最小限となるので、バイパス弁V36が開放されたときのフラッシュタンク31内での再蒸発量が低減される。その結果、フラッシュタンク31からのフラッシュ蒸気の急激な流出が緩和され、第1ドレンラインL21の振動が効果的に抑制される。
また、本実施形態のフラッシュ蒸気発生装置30において、制御手段37は、バイパス弁V36を開放する場合には、第1ドレンラインL21(バイパスライン)から分岐する第5蒸気ラインL15に設けられた排気弁V14を開放する。これにより、蒸気ドレンD1の降圧により発生したフラッシュ蒸気の一部を第5蒸気ラインL15に逃すことができ、第1ドレンラインL21から蒸気ドレンD1が円滑に排出される。その結果、第1ドレンラインL21の振動が効果的に抑制される。
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。以下にフラッシュ蒸気発生装置30の変形例について述べるが、本願発明は、上記実施形態ないし変形例でサポートされるものである。
<温度センサの位置変更>
温度センサ36(ドレン温度検出手段)は、フラッシュタンク31に流入する前の蒸気ドレンD1の温度を検出できるのであれば、ドレン回収ラインL31に変えて他の位置に設置することもできる。例えば、温度センサ36は、スチームトラップ21近傍の第1ドレンラインL21や第2ドレンラインL22に設置してもよい。ドレン回収ラインL31に流入する前の蒸気ドレンD1の温度を検出する場合でも、初期ドレン排出弁V35の制御を支障なく実施することができる。
<温水排出弁の簡素化と水位制御の省略>
上記したバイパス弁V36の比例制御(図8)により、フラッシュタンク31の缶内水位を所定範囲(下限水位LL〜高水位H)に保つことができる場合には、ドレン排出弁V33を制御弁に替えて手動弁とすることもできる。ドレン排出弁V33を手動弁に替えることにより、ドレン排出弁V33による水位制御を省略することができる。この場合、手動弁としたドレン排出弁V33は、比例制御のローセレクトである最小設定開度(例えば、20%)に相当する弁開度に調節して使用する。
<蒸気昇圧機の省略>
低圧蒸気利用設備14で使用する蒸気量が比較的少なく、フラッシュタンク31でのフラッシュ率(蒸気ドレン1kgから発生するフラッシュ蒸気の重量)を低く保てる場合には、フラッシュ蒸気S3の圧力を高めることができるので、蒸気昇圧機15を省略した構成とすることもできる。蒸気昇圧機15を省略する場合、その保護に用いる真空破壊弁V12も省略してよい。また、図10に示した缶内圧力に基づく入口弁V31の比例制御も不要となる。
<その他の変形例>
上記実施形態では、流通経路切換手段32は、入口弁V31、蒸気送気弁V32、ドレン排出弁V33、ブロー弁V34、初期ドレン排出弁V35、及びバイパス弁V36からなる5つの制御弁で構成されているが、発明の趣旨を逸脱しない範囲で制御弁の数を増減することもできる。例えば、蒸気昇圧機15がなく吸込圧力を調整する必要がない場合には、入口弁V31を削減してもよい。
上記実施形態では、缶内水位検出手段33として、5個のフロートスイッチが組み込まれた水位検出器33A,33Bについて説明した。しかし、缶内水位検出手段33として、水位を連続的に検出する水位検出器(例えば、静電容量式水位センサや超音波式水位センサ)を備えていても良く、段階検出方式の水位検出器及び連続検出方式の水位検出器の両方を備えていても良い。
上記実施形態では、フラッシュ蒸気発生装置30は、1個のフラッシュタンク31を備えているが、フラッシュタンク31は1個に限定されず、複数個のフラッシュタンクを備えていても良い。その場合、初期ドレン排出ラインL35及び初期ドレン排出弁V35は、フラッシュタンク毎に設けられても良く、また、フラッシュ蒸気発生装置全体に対してそれぞれ1つずつ設けられても良い。