以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の給水加温システム1の一実施例を示す概略図である。
本実施例の給水加温システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムであり、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク3と、この給水タンク3への給水を貯留する補給水タンク5と、この補給水タンク5から給水タンク3への給水を加温するヒートポンプ4と、このヒートポンプ4の熱源としての熱源水(たとえば廃温水)を貯留する熱源水タンク6とを備える。
ボイラ2は、蒸気ボイラであり、給水タンク3からの給水を加熱して蒸気にする。ボイラ2は、典型的には、蒸気の圧力を所望に維持するように、燃焼量を調整される。また、ボイラ2は、缶体内の水位を所望に維持するように、給水タンク3からボイラ2への給水路またはボイラ2の内部に設けたポンプ7が制御される。ボイラ2からの蒸気は、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られるが、蒸気使用設備からのドレン(蒸気の凝縮水)を給水タンク3へ戻してもよい。あるいは、蒸気使用設備からのドレンは、熱源水タンク6へ供給してもよい。
給水タンク3は、補給水タンク5から、ヒートポンプ4を介して給水路8により給水可能であると共に、ヒートポンプ4を介さずに補給水路9により給水可能である。給水路8に設けた給水ポンプ10と、補給水路9に設けた補給水ポンプ11との作動を制御することで、給水路8と補給水路9との内、一方または双方を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能である。
給水ポンプ10は、本実施例では、インバータにより回転数を制御可能とされる。給水ポンプ10の回転数を変更することで、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整することができる。一方、補給水ポンプ11は、本実施例では、オンオフ制御される。
補給水タンク5は、給水タンク3への給水を貯留する。補給水タンク5への給水として、本実施例では軟水が用いられる。すなわち、軟水器(図示省略)にて水中の硬度分を除去された軟水は、補給水タンク5に供給され貯留される。補給水タンク5の水位に基づき軟水器からの給水を制御することで、補給水タンク5の水位は所望に維持される。
ヒートポンプ4は、蒸気圧縮式のヒートポンプであり、圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14および蒸発器15が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機12は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器13は、圧縮機12からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁14は、凝縮器13からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器15は、膨張弁14からの冷媒の蒸発を図る。
従って、ヒートポンプ4は、蒸発器15において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器13において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、本実施例では、ヒートポンプ4は、蒸発器15において、熱源水から熱をくみ上げ、凝縮器13において、給水路8の水を加温する。
ヒートポンプ4は、さらに、凝縮器13と膨張弁14との間に、過冷却器16を備えるのが好ましい。過冷却器16は、凝縮器13より上流側の給水路8の水と、凝縮器13から膨張弁14への冷媒との間接熱交換器である。過冷却器16により、凝縮器13への給水で、凝縮器13から膨張弁14への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器13から膨張弁14への冷媒で、凝縮器13への給水を加温することができる。ヒートポンプ4の冷媒は、好適には、凝縮器13において潜熱を放出し、過冷却器16において顕熱を放出する。
つまり、凝縮器13において、ガス冷媒は凝縮して液冷媒となり、その液冷媒が過冷却器16に供給されて、過冷却器16において、液冷媒はさらに冷却(過冷却)される。冷媒の凝縮用と過冷却用とで熱交換器を分けることで、熱交換器の設計が容易となり、熱交換器を簡易な構造で小型化でき、コスト削減を図ることができる。また、汎用の熱交換器の利用も可能となる。
その他、ヒートポンプ4には、圧縮機12の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機12の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器13の出口側(凝縮器13と過冷却器16との間)に受液器を設置したりしてもよい。
ところで、ヒートポンプ4は、その出力を変更可能とされてもよい。たとえば、圧縮機12のモータの電源周波数ひいては回転数をインバータで変更することで、ヒートポンプ4の出力を変更することができる。但し、以下においては、ヒートポンプ4は、圧縮機12のモータの電源周波数が一定に維持され、一定出力で運転される例について説明する。
本実施例の給水加温システム1は、さらに廃熱回収熱交換器17を備える。この廃熱回収熱交換器17は、過冷却器16より上流側の給水路8の水と、蒸発器15を通過後の熱源水との間接熱交換器である。従って、給水路8の水は、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13へと順に通されることになる。一方、熱源水タンク6の熱源水は、熱源供給路18を介して、蒸発器15を通された後、廃熱回収熱交換器17に通される。
熱源水タンク6は、ヒートポンプ4の熱源としての熱源水を貯留する。熱源水とは、たとえば廃温水(工場などから排出される温水)である。なお、熱源水タンク6には、熱源水の供給路19が設けられると共に、所定以上の水をあふれさせるオーバーフロー路20が設けられている。
熱源水タンク6の熱源水は、熱源供給路18を介して、ヒートポンプ4の蒸発器15に通された後、廃熱回収熱交換器17に通される。熱源供給路18には、蒸発器15より上流側に熱源供給ポンプ21が設けられており、この熱源供給ポンプ21を作動させることで、熱源水タンク6からの熱源水を、蒸発器15と廃熱回収熱交換器17とに順に通すことができる。
蒸発器15を先に通した後に廃熱回収熱交換器17に熱源水を通すことで、廃熱回収熱交換器17を先に通した後に蒸発器15に熱源水を通す場合と比較して、蒸発器15における冷媒の蒸発温度(つまり蒸発圧力)を高めることができ、圧縮機12の圧力比を小さくすることができ、省エネルギーを図ることができる。
給水タンク3には、水位検出器22が設けられる。この水位検出器22は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、給水タンク3には、長さの異なる複数の電極棒23〜26が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持されている。本実施例では、給水ポンプ10制御用の給水開始電極棒23と給水停止電極棒24の他、補給水ポンプ11制御用の補給水開始電極棒25と補給水停止電極棒26が、給水タンク3に挿入されている。この際、詳細は後述するが、給水停止電極棒24、補給水停止電極棒26、給水開始電極棒23、補給水開始電極棒25の順に、下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入されている。
各電極棒23〜26は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。以下において、給水開始電極棒23が検出する水位を給水開始水位H1、給水停止電極棒24が検出する水位を給水停止水位H2、補給水開始電極棒25が検出する水位を補給水開始水位H3、補給水停止電極棒26が検出する水位を補給水停止水位H4という。
熱源水タンク6には、熱源水の有無を確認するために、水位検出器27が設けられる。この水位検出器27は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、熱源水タンク6には、低水位検出電極棒28が差し込まれており、熱源水の水位が設定を下回っていないかを監視する。
給水路8には、凝縮器13の出口側に、出湯温度センサ29が設けられる。出湯温度センサ29は、凝縮器13を通過後の水温を検出する。出湯温度センサ29の検出温度に基づき、給水ポンプ10が制御される。ここでは、給水ポンプ10は、出湯温度センサ29の検出温度を目標温度に維持するようにインバータ制御される。これにより、給水路8を介した給水タンク3への給水は、出湯温度センサ29の検出温度を目標温度に維持するように、流量が調整される。
熱源供給路18には、蒸発器15の入口側に、熱源温度センサ30が設けられる。熱源温度センサ30は、蒸発器15へ供給される熱源水の温度を検出する。但し、熱源温度センサ30は、場合により、熱源水タンク6に設けられてもよい。詳細は後述するが、熱源温度センサ30の検出温度に基づき、ヒートポンプ4(より具体的には圧縮機12)の発停と、前記目標温度の変更が可能とされる。
次に、本実施例の給水加温システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。
給水タンク3への給水は、給水タンク3に設けた水位検出器22の検出信号に基づき、給水ポンプ10と補給水ポンプ11とを制御することでなされる。つまり、給水路8を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を下回ると開始し、この給水開始水位H1よりも高い給水停止水位H2を上回ると停止する。また、補給水路9を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が補給水開始水位H3を下回ると開始し、この補給水開始水位H3よりも高い補給水停止水位H4を上回ると停止する。ここで、補給水開始水位H3は、給水開始水位H1よりも低く設定され、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低く設定される。
このような構成であるから、いま、給水停止電極棒24が水位を検知しているとすると、給水タンク3の水位が十分にあるとして、給水ポンプ10を停止すると共に、補給水ポンプ11も停止している。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、給水開始電極棒23が水位を検知しなくなると、給水ポンプ10を作動させる。これにより、給水路8を介して給水タンク3に給水されるが、給水停止電極棒24が水位を検知すると、給水ポンプ10を停止する。一方、給水ポンプ10を作動させても、給水タンク3の水位を回復できず、給水タンク3の水位がさらに下がり、補給水開始電極棒25が水位を検知しなくなると、補給水ポンプ11も作動させる。これにより、補給水路9を介しても給水タンク3に給水されるが、給水タンク3の水位が回復して、補給水停止電極棒26が水位を検知すると、補給水ポンプ11を停止し、さらに水位が回復して、給水停止電極棒24が水位を検知すると、給水ポンプ10を停止する。なお、給水ポンプ10を作動させて、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源供給ポンプ21も作動させる。
本実施例では、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低く設定される。その結果、給水開始水位H1と給水停止水位H2との間の水位域と、補給水開始水位H3と補給水停止水位H4との間の水位域とは、一部が重複することになる。そのため、給水開始水位H1と給水停止水位H2との水位差や、補給水開始水位H3と補給水停止水位H4との水位差を、それぞれ確保し易い。これに伴い、給水ポンプ10や補給水ポンプ11の発停回数を従来技術に比べて少なくすることができる。さらに、従来技術と比べて補給水停止水位H4が比較的高いので、給水タンク3への給水速度を速めることができると共に、給水タンク3には比較的多めの水を貯留できる。よって、給水タンク3内の貯水量が不足するおそれはなく、最も重要なボイラ2やその蒸気使用設備の稼働を優先することができる。また、給水タンク3を空の状態から満水にするまでの時間を短縮することができる。
ところで、給水開始水位H1と補給水開始水位H3との水位差は、給水開始水位H1と給水停止水位H2との水位差よりも小さく設定するのが好ましい。給水開始水位H1と補給水開始水位H3とを近づけることで、給水路8を介した給水と補給水路9を介した給水との双方を実行させ易くすることができる。これにより、給水タンク3への給水速度を速めることができる。
ヒートポンプ4は、後述するように、所定の場合に作動する。ヒートポンプ4は、その圧縮機12の作動の有無により、運転と停止が切り替えられる。ヒートポンプ4の運転中、圧縮機12は、モータの電源周波数が一定に維持され、一定出力を維持される。
給水ポンプ10は、作動中、出湯温度センサ29の検出温度を目標温度に維持するように、回転数をインバータ制御される。後述するように、状況に応じて、目標温度は変更される。
前述したように、本実施例の給水加温システム1では、給水タンク3内の水位に基づき、給水路8を介した給水タンク3への給水が制御されるが、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ30により蒸発器15への熱源流体温度を監視し、その温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるのがよい。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路8を介して給水タンク3へ給水する。
より詳細には、本実施例では、次のように制御される。すなわち、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ30の検出温度が設定温度(たとえば60℃)未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、出湯温度センサ29の検出温度を第一目標温度(たとえば75℃)に維持するように、給水ポンプ10をインバータ制御して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する(第一制御)。なお、ここでは、第一目標温度は、前記設定温度よりも高い温度とされる。
このような第一制御中、熱源温度センサ30の検出温度が設定温度(たとえば60℃)以上になると、第二制御に切り替える。第二制御では、ヒートポンプ4を停止させる。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路8を介して給水タンク3へ給水するが、凝縮器13の出口側水温の制御目標温度を下げるのが好ましい。つまり、出湯温度センサ29の検出温度を第一目標温度よりも低い第二目標温度(たとえば60℃)に維持するように、給水ポンプ10をインバータ制御して、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する。なお、ここでは、第二目標温度は、前記設定温度と同一温度とされるが、場合により、前記設定温度よりも低い温度とされてもよい。
このように、蒸発器15への熱源流体温度が設定温度未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、凝縮器13の出口側水温を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整することで、給水源の水温や熱源流体の温度に拘わらず、所望温度の温水を得ることができる。一方、蒸発器15への熱源流体温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるので、圧縮機12の保護を図ることができる。但し、その場合でも、廃熱回収熱交換器17において、給水と熱源流体とを熱交換して、熱源流体からの熱回収を図ることができる。しかも、凝縮器13の出口側水温の制御目標温度を、第一目標温度よりも低い第二目標温度に切り替えることで、給水路8を介した給水タンク3への給水流量をある程度以上に確保して、熱源流体からの熱回収を有効に図ることができる。
第二制御から第一制御への切替えは、次のように行われる。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ29の検出温度を第二目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、熱源温度センサ30の検出温度が設定温度未満を設定時間(たとえば60秒)継続した場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ29の検出温度を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
但し、第二制御から第一制御への切替えは、次のように行ってもよい。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ29の検出温度を第二目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、熱源温度センサ30の検出温度が設定温度よりも低い所定温度(たとえば58℃)未満になった場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ29の検出温度を第一目標温度に維持するように、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
いずれにしても、蒸発器15への熱源流体温度が所定に下がると、ヒートポンプ4を停止させた第二制御から、ヒートポンプ4を稼働させた第一制御に戻すことができる。このようにして、蒸発器15への熱源流体温度に応じて、第一制御と第二制御との切り替えが行われる。
但し、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ30の検出温度が前記設定温度よりも高い上限温度(たとえば65℃)以上になると、給水加温システム1の稼働を停止するのがよい。具体的には、ヒートポンプ4を停止すると共に、熱源供給ポンプ21を停止して蒸発器15への熱源流体の供給も停止する。さらに、給水ポンプ10も停止するのがよい。このようにして、蒸発器15への熱源流体温度が過度に上昇した場合には、給水加温システム1の稼働を停止することで、給水加温システム1の保護を図ることができる。なお、ここでは、上限温度は、前記設定温度よりも高いが、前記第一目標温度よりも低い温度とされる。
その他、ヒートポンプ4の運転中、熱源水タンク6の水位が下がり、低水位検出電極棒28が水位を検知しなくなると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ21を停止して蒸発器15への熱源水の供給を停止するのがよい。これにより、ヒートポンプ4を無駄に運転するのが防止される。また、同様に、給水路8を介した給水タンク3への給水中、万一、給水路8を通る給水の量が設定を下回ると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ21を停止して蒸発器15への熱源水の供給を停止するのがよい。
ところで、給水加温システム1の冷態起動時(たとえば給水加温システム1の休止時間が所定よりも長い場合や、熱源水タンク6内の熱源水が常温程度まで冷えた場合など)は、給水タンク3内の水位に基づき、給水路8を介した給水が開始されると共に、熱源供給ポンプ21の作動により蒸発器15への熱源流体の供給が開始される際、次のように制御するのが好ましい。つまり、熱源温度センサ30の検出温度が下限温度(たとえば35℃)未満であれば、ヒートポンプ4を停止しておき、下限温度以上になれば、ヒートポンプ4を起動して、前記第一制御を実行する。冷態起動時、蒸発器15への熱源流体温度が下限温度以上になるまで、ヒートポンプ4を停止しておくことで、圧縮機12の保護を図ることができる。なお、下限温度は、前記設定温度や前記各目標温度よりも低い温度とされる。
なお、ヒートポンプ4を一旦起動後は、給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源温度センサ30の検出温度が下限温度未満になっても、給水路8を介した給水タンク3への給水が継続する限り、ヒートポンプ4の作動を継続するのが好ましい。ヒートポンプ4を一旦起動後は、ヒートポンプ4の冷媒は冷態起動時よりも加温されているから、ヒートポンプ4の作動を継続しても、圧縮機12を損傷するおそれはない。なお、制御器は、熱源温度センサ30の検出温度が下限温度未満になった旨を表示手段などに出力して、ユーザにお知らせするのが好ましい。
本発明の給水加温システム1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、給水路8を介した給水タンク3への給水が、給水開始水位H1を下回ると開始し、給水開始水位H1よりも高い給水停止水位H2を上回ると停止し、補給水路9を介した給水タンク3への給水が、給水開始水位H1よりも低い補給水開始水位H3を下回ると開始し、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低い補給水停止水位H4を上回ると停止するのであれば、その他の構成および制御は適宜に変更可能である。たとえば、前記実施例において、過冷却器16と廃熱回収熱交換器17の内、一方または双方の設置を省略してもよい。また、前記実施例において、出湯温度センサ29や熱源温度センサ30による各種制御を省略してもよい。さらに、前記実施例において、給水路8を介した給水タンク3への給水は、給水ポンプ10を設置してこれを制御することに代えてまたはこれに加えて、給水路8に弁を設置してこれを制御することで行ってもよいし、補給水路9を介した給水タンク3への給水は、補給水ポンプ11を設置してこれを制御することに代えてまたはこれに加えて、補給水路9に弁を設置してこれを制御することで行ってもよい。
また、実施例では、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整するために、給水ポンプ10をインバータ制御したが、給水ポンプ10をオンオフ制御しつつ、給水路8に設けた弁の開度を調整してもよい。つまり、出湯温度センサ29の検出温度などに基づき給水路8を介した給水の流量を調整可能であれば、その流量調整方法は適宜に変更可能である。
また、前記実施例の場合、給水タンク3に、凝縮器13を介して給水路8により給水可能であると共に、凝縮器13を介さずに補給水路9により給水可能であれば、給水路8や補給水路9の具体的構成は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、給水路8と補給水路9とは、それぞれ補給水タンク5と給水タンク3とを接続するように並列に設けたが、給水路8と補給水路9との一端部(補給水タンク5側の端部)と他端部(給水タンク3側の端部)の一方または双方は、共通の管路としてもよい。言い換えれば、補給水路9の一端部は、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路8から分岐するように設けてもよいし、補給水路9の他端部は、給水タンク3に接続するのではなく、給水タンク3の手前において給水路8に合流するように設けてもよい。補給水路9の一端部を、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路8から分岐するように設ける場合、その分岐部より下流において、給水路8に給水ポンプ10を設ける一方、補給水路9に補給水ポンプ11を設ければよいが、分岐部よりも上流側の共通管路にのみポンプを設けて、分岐部より下流の給水路8および/または補給水路9に設けた弁の開度を調整することで、給水路8や補給水路9を通る流量を調整してもよい。
また、前記実施例では、給水タンク3への給水を貯留するために補給水タンク5を設置したが、場合により補給水タンク5の設置を省略して、給水源から直接に給水路8および補給水路9に水を通してもよい。
また、前記実施例では、給水路8および/または補給水路9を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能としたが、これら給水は、軟水器から直接に行ってもよい。たとえば、図1において、給水路8および補給水路9の基端部をまとめて軟水器に接続し、給水ポンプ10の設置を省略する代わりに給水路8に設けた電動弁(モータバルブ)の開度を調整し、補給水ポンプ11の設置を省略する代わりに補給水路9に設けた電磁弁の開閉を制御すればよい。
また、前記実施例では、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムについて説明したが、給水タンク3の貯留水の利用先は、ボイラ2に限らず適宜に変更可能である。
また、前記実施例では、ヒートポンプ4の熱源として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ4の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。
また、前記実施例では、ヒートポンプ4を運転する際、圧縮機12のモータの電源周波数を一定に維持したが、場合により、圧縮機12の吐出圧を所定に維持するように制御してもよい。あるいは、給水タンク3内の水位または蒸発器15への熱源流体温度に基づき、圧縮機12の出力を調整してもよい。
また、ヒートポンプ4は、単段に限らず複数段とすることもできる。ヒートポンプ4を複数段にする場合、隣接する段のヒートポンプ同士は、間接熱交換器を用いて接続されてもよいし、直接熱交換器(中間冷却器)を用いて接続されてもよい。後者の場合、低段ヒートポンプの圧縮機からの冷媒と高段ヒートポンプの膨張弁からの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器を備え、この中間冷却器が低段ヒートポンプの凝縮器であると共に高段ヒートポンプの蒸発器とされる。このように、複数段(多段)のヒートポンプには、一元多段のヒートポンプの他、複数元(多元)のヒートポンプ、あるいはそれらの組合せのヒートポンプが含まれる。
また、前記実施例では、ヒートポンプ4の圧縮機12は、電気モータにより駆動されたが、圧縮機12の駆動源は特に問わない。たとえば、圧縮機12は、電気モータに代えてまたはそれに加えて、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ(蒸気エンジン)に駆動されたり、ガスエンジンにより駆動されたりしてもよい。
さらに、前記実施例では、給水加温システム1は、ヒートポンプ4を一台備えたが、ヒートポンプ4を複数台備えてもよい。以下、複数台のヒートポンプ4を備える給水加温システム1について説明する。その際、前記実施例と異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。また、前記実施例と同様の箇所については、説明を省略する。
図2は、複数台のヒートポンプ4を備える給水加温システム1の一例を示す概略図である。この給水加温システム1も、前記実施例と同様に、給水タンク3への給水を、ヒートポンプ4を備えた加温ユニット31で加温できるシステムであるが、加温ユニット31を並列に複数備える点で、前記実施例と異なる。ここで、各加温ユニット31は、図1において二点鎖線で囲まれた領域の構成であり、ヒートポンプ4と廃熱回収熱交換器17とを備える。
図2の給水加温システム1は、補給水タンク5から給水タンク3への給水路8が、少なくとも一部で並列に構成されている。具体的には、補給水タンク5と給水タンク3とは、基本的には並列な複数の給水路8で接続されるが、図示例のように、補給水タンク5側と給水タンク3側との双方または片方において、共通管路に構成されてもよい。
いずれにしても、並列に配置された各給水路8に、加温ユニット31が設けられる。並列に配置された給水路8の数、言い換えれば加温ユニット31の数は、特に問わず、図示例では四つとされているが、二つもしくは三つ、または五つ以上であってもよい。各加温ユニット31の構成は、典型的には互いに同一とされる。
各給水路8を介した給水タンク3への給水の有無、言い換えれば各加温ユニット31の通水の有無は、各給水路8に設けた給水ポンプ10により制御される。なお、図示例では、給水ポンプ10は、加温ユニット31外に設けられているが、場合により加温ユニット31内に設けられてもよい。つまり、加温ユニット31が給水ポンプ10を含む構成であってもよい。
各加温ユニット31には、熱源水タンク6からの熱源水が並列に供給可能とされる。熱源水タンク6の熱源水は、各熱源供給路18を介して各加温ユニット31へ供給され、各加温ユニット31において、ヒートポンプ4の蒸発器15に通された後、廃熱回収熱交換器17に通される。各熱源供給路18には、蒸発器15より上流側に熱源供給ポンプ21が設けられており、この熱源供給ポンプ21を作動させることで、熱源水タンク6からの熱源水を、その熱源供給ポンプ21より下流に設けた蒸発器15と廃熱回収熱交換器17とに順に通すことができる。
なお、図示例では、熱源供給ポンプ21は、加温ユニット31外に設けられているが、場合により加温ユニット31内に設けられてもよい。つまり、加温ユニット31が熱源供給ポンプ21を含む構成であってもよい。
図3は、図2に示される給水タンク3の具体的構成を示す概略図である。ここでは、各給水ポンプ10制御用の複数本(加温ユニット31の数と対応しており図示例では四本)の給水開始電極棒23と、それと同数の給水停止電極棒24の他、補給水ポンプ11制御用の補給水開始電極棒25と補給水停止電極棒26とが、給水タンク3に挿入されている。
各給水開始電極棒23は、その下端部の高さ位置を設定間隔(典型的には一定間隔)で低くなるように、給水タンク3に挿入されている。これにより、給水開始水位H1として、段階的に異なる複数の水位が設定される。
各給水停止電極棒24は、その下端部の高さ位置を設定間隔(典型的には一定間隔)で低くなるように、給水タンク3に挿入されている。これにより、給水停止水位H2として、段階的に異なる複数の水位が設定される。
各給水停止水位H2は、各給水開始水位H1よりも高く設定されている。つまり、各給水停止電極棒24の下端部は、各給水開始電極棒23の下端部よりも高くなるよう配置されている。
また、補給水開始水位H3は、複数の給水開始水位H1の内の最も下方の給水開始水位H1よりも低く設定されている。つまり、補給水開始電極棒25の下端部は、最も下方の給水開始電極棒23の下端部よりも低く配置されている。
さらに、補給水停止水位H4は、複数の給水開始水位H1の内の最も上方の給水開始水位H1よりも高いが、複数の給水停止水位H2の内の最も下方の給水停止水位H2よりも低く設定されている。つまり、補給水停止電極棒26の下端部は、最も上方の給水開始電極棒23の下端部よりも高いが、最も下方の給水停止電極棒24の下端部よりも低く配置されている。
各加温ユニット31には、前記実施例と同様に、凝縮器13の出口側の給水路8に、出湯温度センサ29が設けられ、蒸発器15の入口側の熱源供給路18に、熱源温度センサ30が設けられる。但し、熱源温度センサ30は、場合により、熱源水タンク6に設けられてもよいし、熱源水タンク6から各加温ユニット31へ熱源水を供給するために複数の熱源供給路18に分岐する前の熱源水タンク6側の共通管路に設けられてもよい。
次に、本実施例の給水加温システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。
給水タンク3への給水は、給水タンク3に設けた水位検出器22の検出信号に基づき、各給水ポンプ10と補給水ポンプ11とを制御することでなされる。基本的には前記実施例と同様であるが、給水タンク3内の水位が段階的に設定された複数の各給水開始水位H1を下回るごとに、通水されるヒートポンプ4の数を増加させる一方、給水タンク3内の水位が段階的に設定された複数の各給水停止水位H2を上回るごとに、通水されるヒートポンプ4の数を減少させる点が異なる。
複数の給水開始水位H1の内、最も上方の給水開始水位H1を下回ることで起動される給水ポンプ10の停止は、複数の給水停止水位H2の内、最も上方の給水停止水位H2を上回ることで行われ、複数の給水開始水位H1の内、上方から二番目の給水開始水位H1を下回ることで起動される給水ポンプ10の停止は、複数の給水停止水位H2の内、上方から二番目の給水停止水位H2を上回ることで行われるというように、複数の給水開始水位H1の内、上方からの順序と、複数の給水停止水位H2の内、上方からの順序とが、どの給水ポンプ10を制御するかについて対応づけられている。言い換えれば、複数の給水開始電極棒23は、下端部の高さが上方から下方へ行くに従って、一台目の給水ポンプ10起動用、二台目の給水ポンプ10起動用、三台目の給水ポンプ10起動用というように対応しており、複数の給水停止電極棒24は、下端部の高さが上方から下方へ行くに従って、一台目の給水ポンプ10停止用、二台目の給水ポンプ10停止用、三台目の給水ポンプ10停止用というように対応している。
このような構成であるから、いま、すべての給水停止電極棒24と補給水停止電極棒26とが水位を検知しているとすると、給水タンク3の水位が十分にあるとして、各給水ポンプ10を停止すると共に、補給水ポンプ11も停止している。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、最も上方の給水開始電極棒23が水位を検知しなくなると、一台目の給水ポンプ10を作動させる。これにより、一つの給水路8を介して給水タンク3に給水されるが、最も上方の給水停止電極棒24が水位を検知すると、一台目の給水ポンプ10を停止する。一方、一台目の給水ポンプ10を作動させても、給水タンク3の水位を回復できず、給水タンク3の水位がさらに下がり、上から二番目の給水開始電極棒23が水位を検知しなくなると、二台目の給水ポンプ10を作動させ、上から三番目の給水開始電極棒23が水位を検知しなくなると、三台目の給水ポンプ10を作動させるというように、給水タンク3内の水位が段階的に設定された各給水開始水位H1を下回るごとに、通水される加温ユニット31の数を増加させていく。そして、最も下方の給水開始電極棒23も水位を検知しなくなり、全ての給水ポンプ10を作動させても水位を回復できず、補給水開始電極棒25が水位を検知しなくなると、補給水ポンプ11も作動させる。これにより、補給水路9を介しても給水タンク3に給水されるが、給水タンク3の水位が回復して、補給水停止電極棒26が水位を検知すると、補給水ポンプ11を停止する。その後、最も下方の給水停止電極棒24が水位を検知すると、一台の給水ポンプ(ここでは四台目の給水ポンプ)10を停止させ、下から二番目の給水停止電極棒24が水位を検知すると、もう一台の給水ポンプ(ここでは三台目の給水ポンプ)10を停止させるというように、給水タンク3内の水位が段階的に設定された各給水停止水位H2を上回るごとに、通水される加温ユニット31の数を減少させていく。最も上方の給水停止電極棒24が水位を検知すると、すべての給水ポンプ10が停止した状態となる。なお、各加温ユニット31について、その加温ユニット31への給水ポンプ10を作動中、その加温ユニット31への熱源供給ポンプ21も作動させる。
以上の例では、給水タンク3の水位の低下に伴い、給水ポンプ10を一台目、二台目、三台目…と順次に起動し、給水タンク3の水位の回復に伴い、最後に起動した給水ポンプ10から順次に停止する。たとえば三台の給水ポンプ10の運転中からの水位回復時には、前記三台目、前記二台目、前記一台目と順次に停止させることになる。但し、給水タンク3内の水位の回復に伴い、最初に起動した給水ポンプ10から順次に停止させてもよい。たとえば三台の給水ポンプ10の運転中からの水位回復時には、前記一台目、前記二台目、前記三台目と順次に停止させてもよい。いずれにしても、水位回復時の給水ポンプ10の停止制御について、下端部の高さが最も上方の給水停止電極棒24から数えて、現在稼働中の給水ポンプ10の台数と対応した数の給水停止電極棒24が使用される。たとえば、三台の給水ポンプ10の運転中からの水位回復時には、図3において四本ある給水停止電極棒24の内、最も下方の給水停止電極棒24は制御には使用されない。つまり、三台の給水ポンプ10の運転中からの水位回復時には、複数の給水停止水位H2の内、上方から三番目の給水停止水位H2を上回ると、前記三台目の給水ポンプ10を停止させ、上方から二番目の給水停止水位H2を上回ると、前記二台目の給水ポンプ10を停止させ、最上方の給水停止水位H2を上回ると、前記一台目の給水ポンプ10を停止させる。
また、上述のような一連の制御において、複数の給水ポンプ10の内、どの給水ポンプ10を優先的に運転するかは、予め設定されており、制御器により自動で選択される。但し、優先的に稼働する給水ポンプ10を、制御器にユーザが手動で設定可能としておいてもよい。いずれの場合も、制御器は、いずれかの加温ユニット31の故障を検知した場合、その加温ユニット31を抜いた状態で制御を継続するのがよい。
図2の給水加温システム1でも、各給水ポンプ10は、作動中、出湯温度センサ29の検出温度を目標温度に維持するように、回転数をインバータ制御される。また、各給水路8を介した給水タンク3への給水中、それによる通水中の加温ユニット31では、熱源温度センサ30により蒸発器15への熱源流体温度を監視し、その温度が設定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるのがよい。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路8を介して給水タンク3へ給水する。このような一連の制御に際し、通水中の加温ユニット31では、前記実施例と同様に第一制御か第二制御かが行われ、その制御の切替えも前記実施例で述べたのと同様に行うことができる。
ところで、前記実施例について述べた変形例は、図2の給水加温システム1にも同様に適用可能である。たとえば、各加温ユニット31において、過冷却器16と廃熱回収熱交換器17の内、一方または双方の設置を省略してもよい。廃熱回収熱交換器17の設置を省略する場合、加温ユニット31は、ヒートポンプ4そのものと捉えることができる。その場合、ヒートポンプ4を停止した状態で廃熱回収熱交換器17における給水の加温ができないのであるから、熱源流体温度によるヒートポンプ4の発停制御は別途必要ではなくなる。よって、給水タンク3内の水位に基づき給水ポンプ10を作動させる場合、それにより通水されるヒートポンプ4を連動して起動させ、給水タンク3内の水位に基づき給水ポンプ10を停止させる場合、それによる通水停止されるヒートポンプ4を連動して停止させればよい。
また、以上では、段階的な給水開始水位H1を下回るごとに一台ずつ給水ポンプ10を起動し、段階的な給水停止水位H2を上回るごとに一台ずつ給水ポンプ10を停止したが、場合により、複数台ずつ起動または停止を制御してもよい。