JP6862694B2 - 液体吐出装置、及び、液体吐出装置の制御方法 - Google Patents

液体吐出装置、及び、液体吐出装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出装置の制御方法に関する。
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、ヘッドユニットに設けられた複数の吐出部の各々からインク等の液体を吐出させ、記録媒体に画像を形成する印刷処理を実行する。このような液体吐出装置において、吐出部内の液体の増粘等により、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。そして、吐出異常が生じると、吐出部から吐出される液体により記録媒体に形成される予定のドットを正確に形成できなくなり、印刷処理において記録媒体に形成される画像の画質が低下する。このような、吐出異常に起因する画質の低下を防止するために、一の吐出部において吐出異常が生じた場合に、当該一の吐出部からインクを吐出させる代わりに、他の吐出部からインクを吐出させてドットを形成する、所謂、補完印刷に係る技術が各種提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−174816号公報
ところで、上述のとおり、補完印刷においては、吐出異常の生じた吐出部からの液体の吐出を停止する。このため、例えば、吐出部内の液体の増粘に起因して吐出異常が生じている場合に補完印刷を実行すると、当該吐出異常の生じた吐出部内の液体の増粘の程度が進み、フラッシング等のメンテナンス処理によっても吐出異常の回復が困難になる場合があった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、補完印刷を行う場合に、メンテナンス処理によっても回復不能な吐出異常の発生を防止する技術の提供を、解決課題の一つとする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出する複数の吐出部と、前記複数の吐出部のうち第1の吐出部が設けられた第1の記録ヘッドと、前記複数の吐出部のうち第2の吐出部が設けられた第2の記録ヘッドと、前記吐出部における液体の吐出状態を判定する判定部と、前記吐出部における液体の吐出状態が異常となった場合に、当該吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復機構と、前記複数の吐出部及び前記回復機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部が、前記第1の記録ヘッドに設けられた一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、前記判定から第1の時間が経過するまでの間、前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第1の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第1の制御モードと、前記判定から第2の時間が経過するまでの間、前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第2の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第2の制御モードと、による前記複数の吐出部の制御が可能であり、前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短い、ことを特徴とする。
本発明では、吐出部における液体の吐出状態の判定から第1の時間または第2の時間に限定して補完印刷を行うため、当該判定から第1の時間または第2の時間が経過した後も補完印刷を継続する場合と比較して、一の吐出部における液体の吐出状態が悪化する可能性を低減することが可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記制御部は、前記第1の制御モードにより前記複数の吐出部を制御する場合、前記判定から前記第1の時間が経過した後、前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作を実行させるように、前記回復機構を制御し、前記第2の制御モードにより前記複数の吐出部を制御する場合、前記判定から前記第2の時間が経過した後、前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作を実行させるように、前記回復機構を制御する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、吐出部における液体の吐出状態の判定から第1の時間または第2の時間が経過した後に回復動作を行うため、当該判定から第1の時間または第2の時間が経過した後も吐出部からの液体の吐出を継続する場合と比較して、一の吐出部における液体の吐出状態が悪化する可能性を低減することが可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記回復動作は、前記回復機構が前記複数の吐出部から液体を吸引する動作である、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、一の吐出部を含む複数の吐出部から液体を吸引するため、一の吐出部において、液体の増粘に起因する吐出状態の異常が生じている場合に、当該吐出状態の異常を解消することが可能となる。
上述した液体吐出装置は、前記吐出部から液体が吐出されるように前記吐出部を駆動する第1駆動信号、及び、前記吐出部から液体が吐出されないように前記吐出部を駆動するための第2駆動信号、を生成する駆動信号生成部と、前記第1駆動信号を前記吐出部に供給するか否かを切り替え、前記第2駆動信号を前記吐出部に供給するか否かを切り替える、切替部と、を備え、前記制御部は、前記判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、前記複数の吐出部を前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードにより制御している間において、前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号が、前記一の吐出部に供給されないように、前記切替部を制御する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、一の吐出部において、液体の増粘に起因する吐出状態の異常が生じている場合に、当該増粘した液体が、一の吐出部内部で拡散されることを防止することができる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、液体を吐出する複数の吐出部と、前記複数の吐出部のうち第1の吐出部が設けられた第1の記録ヘッドと、前記複数の吐出部のうち第2の吐出部が設けられた第2の記録ヘッドと、前記吐出部における液体の吐出状態を判定する判定部と、前記吐出部における液体の吐出状態が異常となった場合に、当該吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復機構と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記判定部が、前記第1の記録ヘッドに設けられた一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、前記判定から第1の時間が経過するまでの間、前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第1の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第1の制御モードと、前記判定から第2の時間が経過するまでの間、前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第2の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第2の制御モードと、のうち、一方の制御モードにより前記複数の吐出部を制御し、前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短い、ことを特徴とする。
本発明では、吐出部における液体の吐出状態の判定から第1の時間または第2の時間に限定して補完印刷を行うため、当該判定から第1の時間または第2の時間が経過した後も補完印刷を継続する場合と比較して、一の吐出部における液体の吐出状態が悪化する可能性を低減することが可能となる。
本発明に係るインクジェットプリンター1の構成を示すブロック図である。 インクジェットプリンター1の概略的な内部構造を示す斜視図である。 吐出部Dの構造を説明するための説明図である。 吐出部Dにおけるインクの吐出動作を説明するための説明図である。 ヘッドモジュールHMにおけるノズルNの配置例を示す平面図である。 インクジェットプリンター1の動作を説明するためのフローチャートである。 ヘッドユニットHUの構成を示すブロック図である。 印刷処理及び吐出状態判定処理を説明するためのタイミングチャートである。 印刷処理及び吐出状態判定処理を説明するためのタイミングチャートである。 接続状態指定回路11の構成を示すブロック図である。 デコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。 判定情報Sttを説明するための説明図である。 通常印刷処理を説明するための説明図である。 吐出異常を説明するための説明図である。 補完印刷処理を説明するための説明図である。 補完印刷処理を説明するための説明図である。 変形例7に係るインクジェットプリンター1の構成を示すブロック図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<<A.実施形態>>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
<<1.インクジェットプリンターの概要>>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示す機能ブロック図である。また、図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
インクジェットプリンター1には、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgと、インクジェットプリンター1が形成すべき画像の印刷部数を示す情報と、が供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgの示す画像を記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。
図1に例示するように、インクジェットプリンター1は、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニットHUを具備するヘッドモジュールHMと、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御部6と、吐出部Dを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路2(「駆動信号生成部」の一例)と、ヘッドモジュールHMに対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送機構7と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定(以下、「吐出状態判定」と称する場合がある)して当該吐出状態判定の結果を示す判定情報Sttを出力する吐出状態判定回路9(「判定部」の一例)を具備する判定モジュールCMと、インクジェットプリンター1の制御プログラム及びその他の情報を記憶する記憶部5と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となった場合に当該吐出部Dのインクの吐出状態を正常に回復させるメンテナンス処理(「回復動作」の一例)を実行するメンテナンスユニット4と、を備える。
本実施形態では、図1に例示するように、ヘッドモジュールHMが、4個のヘッドユニットHUを備え、判定モジュールCMが、4個のヘッドユニットHUと1対1に対応する4個の吐出状態判定回路9を備える場合を想定する。
本実施形態において、各ヘッドユニットHUは、M個の吐出部Dを具備する記録ヘッドHDと、切替回路10(「切替部」の一例)と、検出回路20と、を備える(本実施形態において、Mは、2≦Mを満たす自然数)。
以下では、各記録ヘッドHDに設けられたM個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。また、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある(変数mは、1≦m≦Mを満たす自然数)。また、インクジェットプリンター1の構成要素や信号等が、吐出部D[m]の段数mに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表わすための符号に、段数mに対応していることを示す添え字[m]を付して表現することがある。
切替回路10は、駆動信号生成回路2から出力される駆動信号Comを各吐出部Dに供給するか否かを切り替える。また、切替回路10は、各吐出部Dと検出回路20とを電気的に接続するか否かを切り替える。
検出回路20は、駆動信号Comにより駆動された吐出部D[m]から検出した検出信号Vout[m]に基づいて、吐出部D[m]が駆動された後に当該吐出部D[m]において残留している振動(以下、「残留振動」と称する)を示す残留振動信号NES[m]を生成する。
吐出状態判定回路9は、残留振動信号NES[m]に基づいて、吐出部D[m]の吐出状態判定の結果を示す判定情報Stt[m]を生成する。なお、以下では、吐出状態判定回路9による吐出状態判定の対象とされる吐出部Dを、判定対象吐出部D-Hと称する場合がある。
また、吐出状態判定回路9が実行する吐出状態判定と、吐出状態判定回路9が吐出状態判定を実行するための準備処理とを含む、インクジェットプリンター1において実行される一連の処理を、吐出状態判定処理と称する。
本実施形態では、インクジェットプリンター1が、シリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、副走査方向に記録用紙Pを搬送し主走査方向にヘッドモジュールHMを移動させつつ、吐出部Dからインクを吐出することで、印刷処理を実行する。本実施形態では、図2に示すように、+Y方向及び−Y方向(以下、+Y方向及び−Y方向を「Y軸方向」と総称する)が主走査方向であり、+X方向(以下、+X方向及びその反対の−X方向を「X軸方向」と総称する)が副走査方向であることとする。
図2に例示するように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、筐体200と、筐体200内をY軸方向に往復動可能でありヘッドモジュールHMを搭載するキャリッジ100と、を備える。
搬送機構7は、印刷処理が実行される場合に、キャリッジ100をY軸方向に往復動させるとともに、記録用紙Pを+X方向に搬送することで、記録用紙PのヘッドモジュールHMに対する相対位置を変化させ、記録用紙Pの全体に対してインクが着弾することを可能とする。
具体的には、搬送機構7は、図1に示すように、キャリッジ100をY軸方向に往復動するための駆動源となる搬送モーター71と、搬送モーター71を駆動するためのモータードライバー72と、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる給紙モーター73と、給紙モーター73を駆動するためのモータードライバー74と、を具備する。また、搬送機構7は、図2に示すように、Y軸方向に延在するキャリッジガイド軸76と、搬送モーター71により回転駆動されるプーリー711と回転自在なプーリー712との間に掛け渡されY軸方向に延在するタイミングベルト710と、を具備する。キャリッジ100は、キャリッジガイド軸76によりY軸方向に往復自在に支持されるとともに、固定具101を介してタイミングベルト710の所定箇所に固定されている。このため、搬送機構7は、搬送モーター71によりプーリー711を回転駆動させることで、キャリッジ100に搭載されたヘッドモジュールHMを、キャリッジガイド軸76に沿ってY軸方向に移動させることができる。
また、図2に示すように、搬送機構7は、キャリッジ100の下側すなわち−Z方向(以下、−Z方向及びその反対の+Z方向を「Z軸方向」と総称する)に設けられたプラテン75と、給紙モーター73の駆動に応じて回転し記録用紙Pを1枚ずつプラテン75上に供給するための給紙ローラ(図示省略)と、給紙モーター73の駆動に応じて回転しプラテン75上の記録用紙Pを排紙口へと搬送する排紙ローラ730と、を備える。このため、搬送機構7は、プラテン75上において記録用紙Pを−X方向(上流側)から+X方向(下流側)へと搬送することができる。
メンテナンスユニット4は、吐出部DのノズルNが密閉されるように各ヘッドユニットHUを覆うためのキャップ40と、吐出部DのノズルN(後述する図3参照)近傍に付着した紙粉等の異物を拭き取るためのワイパー(図示省略)と、吐出部D内のインクや気泡等を吸引するためのチューブポンプ(図示省略)と、吐出部D内のインクを排出する場合に排出されたインクを受けるための排出インク受領部41と、を備える。なお、本実施形態では、キャップ40が、筐体200に取り付けられている態様を例示するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、キャップ40は、キャリッジ100に取り付けられていてもよい。
また、本実施形態では、図2に例示するように、シアン(CY)、マゼンタ(MG)、イエロー(YL)、及び、ブラック(BK)の、4色(CMYK)のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ31がキャリッジ100に格納されている場合を想定する。なお、図2は一例に過ぎず、インクカートリッジ31は、キャリッジ100の外部に設けられるものであってもよい。
また、本実施形態では、4個のヘッドユニットHUと、4個のインクカートリッジ31とが、1対1に対応して設けられる。そして、各吐出部Dは、当該吐出部Dが設けられたヘッドユニットHUに対応するインクカートリッジ31からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部Dは、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルNから吐出することができる。つまり、ヘッドモジュールHMが具備する合計4M個の吐出部Dは、全体としてCMYKの4色のインクを吐出することができる。
記憶部5は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、または、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、を含んで構成され、ホストコンピューターから供給される印刷データImg、及び、インクジェットプリンター1の制御プログラム等の各種情報を記憶する。
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。但し、制御部6は、CPUの代わりに、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
制御部6は、制御部6に設けられたCPUが、記憶部5に記憶されている制御プログラムに従って動作することで、駆動信号生成回路2とヘッドモジュールHMと搬送機構7とを制御する駆動制御部61と、メンテナンスユニット4を制御するメンテナンス制御部62(「回復制御部」の一例)と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態の判定がなされてからの時間を計時する計時部63と、して機能する。
駆動制御部61は、ヘッドモジュールHMを制御するための印刷信号SIと、駆動信号生成回路2を制御するための波形指定信号dComと、搬送機構7を制御するための信号と、を生成する。
ここで、波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路2は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComが規定する波形を有する駆動信号Comを生成する。なお、本実施形態では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとを含む場合を想定する。
また、印刷信号SIとは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する。ここで、吐出部Dの動作の種類の指定とは、例えば、吐出部Dを駆動するか否かを指定したり、吐出部Dを駆動した際に当該吐出部Dからインクが吐出されるか否かを指定したり、また、吐出部Dを駆動した際に当該吐出部Dから吐出されるインク量を指定したりすることである。
印刷処理が実行される場合、駆動制御部61は、まず、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを、記憶部5に記憶させる。次に、駆動制御部61は、記憶部5に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI、波形指定信号dCom、及び、搬送機構7を制御するための信号等の各種制御信号を生成する。そして、駆動制御部61は、各種制御信号と、記憶部5に記憶されている各種データに基づいて、ヘッドモジュールHMに対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送機構7を制御しつつ、吐出部Dが駆動されるようにヘッドモジュールHMを制御する。これにより、駆動制御部61は、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像を記録用紙Pに形成する印刷処理の実行を制御する。
上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各吐出部Dからのインクの吐出状態が正常であるか否か、すなわち、各吐出部Dにおいて吐出異常が生じていないか否か、を判定する吐出状態判定処理を実行する。
ここで、吐出異常とは、駆動信号Comにより吐出部Dを駆動して吐出部Dからインクを吐出させようとしても、駆動信号Comが規定する態様によりインクを吐出できない状態である。ここで、駆動信号Comが規定するインクの吐出態様とは、吐出部Dが駆動信号Comの波形により規定される量のインクを吐出し、吐出部Dが駆動信号Comの波形により規定される吐出速度でインクを吐出することである。すなわち、駆動信号Comが規定するインクの吐出態様によりインクを吐出できない状態とは、吐出部Dからインクを吐出できない状態の他に、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量よりも少ない量のインクが吐出部Dから吐出される状態、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出量よりも多くの量のインクが吐出部Dから吐出される状態、または、駆動信号Comにより規定されるインクの吐出速度と異なる速度でインクが吐出されるために記録用紙P上の所望の着弾位置にインクを着弾させることができない状態、等を含む。
吐出状態判定処理において、インクジェットプリンター1は、第1に、駆動制御部61により、各ヘッドユニットHUに設けられたM個の吐出部Dの中から判定対象吐出部D-Hを選択し、第2に、駆動制御部61による制御の下で、判定対象吐出部D-Hを駆動させることで、判定対象吐出部D-Hに残留振動を生じさせ、第3に、検出回路20により、判定対象吐出部D-Hから検出された検出信号Voutに基づいて残留振動信号NESを生成し、第4に、吐出状態判定回路9により、残留振動信号NESに基づいて判定対象吐出部D-Hを対象とする吐出状態判定を行い、当該判定の結果を示す判定情報Sttを生成し、第5に、制御部6により、判定情報Sttを記憶部5に記憶させる、という一連の処理を実行する。
上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、吐出異常となった吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常に回復させるメンテナンス処理を実行する。
より具体的には、メンテナンス処理とは、吐出部Dからインクを排出させるフラッシング処理、吐出部DのノズルN近傍に付着した紙粉等の異物をワイパーにより拭き取るワイピング処理、及び、吐出部D内のインクや気泡等をチューブポンプにより吸引するポンピング処理等、吐出部Dのインクの吐出状態を正常に戻すための処理の総称である。
フラッシング処理において、インクジェットプリンター1は、第1に、駆動制御部61による制御の下で、ヘッドモジュールHMを排出インク受領部41の上側(+Z方向)に移動させ、第2に、駆動制御部61による制御の下で、ヘッドモジュールHMに設けられた4M個の吐出部Dを駆動させることで、排出インク受領部41に対してインクを吐出させる。
また、ワイピング処理において、インクジェットプリンター1は、第1に、駆動制御部61による制御の下で、ヘッドモジュールHMをワイパーの上側に移動させ、第2に、メンテナンス制御部62による制御の下で、ワイパーを駆動させることで、各吐出部Dに付着した異物を拭き取る。
また、ポンピング処理において、インクジェットプリンター1は、第1に、駆動制御部61による制御の下で、ヘッドモジュールHMをチューブポンプの上側に移動させ、第2に、メンテナンス制御部62による制御の下で、チューブポンプを駆動させることで、ヘッドモジュールHMに設けられた4M個の吐出部D内のインクを吸引する。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、印刷処理として、吐出状態が異常となった吐出部Dの代わりに、吐出状態が正常な吐出部Dからインクを吐出させることで、記録用紙Pに印刷データImgに応じた画像を記録用紙Pに形成する補完印刷処理を実行する場合がある。
より具体的には、補完印刷処理とは、一の吐出部Dにおいて吐出異常が生じた場合に、一の吐出部Dからインクを吐出させる代わりに、一の吐出部Dとは異なる他の吐出部Dからのインクの吐出量を増加させることで、他の吐出部Dにより一の吐出部Dの役割を代替(補完)させる印刷処理である。なお、以下では、補完印刷処理以外の印刷処理、すなわち、いかなる吐出部Dも他の吐出部Dを補完することなく実行される印刷処理を、通常印刷処理と称する場合がある。
補完印刷処理において、駆動制御部61は、第1に、一の吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合に、一の吐出部Dを補完することが可能な他の吐出部Dを選択し、第2に、一の吐出部Dへの駆動信号Comの供給を停止するように切替回路10を制御するとともに、他の吐出部Dからのインクの吐出量を増加させて当該他の吐出部Dにより一の吐出部Dを補完するように切替回路10を制御する。これにより、一の吐出部Dにおいて吐出異常が生じた場合であっても、印刷処理を停止してメンテナンス処理を行うことなく、印刷処理を継続させることが可能となる。
なお、一の吐出部Dを他の吐出部Dにより補完する場合において、「他の吐出部Dからのインクの吐出量を増加させる」ことには、通常印刷処理が実行されていればインクを吐出しない予定であった他の吐出部Dが、補完印刷処理を実行することによりインクを吐出することとなる場合も含まれる。
以下では、吐出異常が生じているため、印刷処理において他の吐出部Dによる補完が必要な吐出部Dを、異常吐出部D-Fと称し、補完印刷処理において、異常吐出部D-Fを補完する吐出部Dを、補完吐出部D-Qと称する場合がある。
<<2.記録ヘッド及び吐出部の概要>>
図3乃至図5を参照しつつ、記録ヘッドHDと、記録ヘッドHDに設けられる吐出部Dについて説明する。
図3は、吐出部Dを含むように記録ヘッドHDを切断した、記録ヘッドHDの概略的な一部断面図である。
図3に示すように、吐出部Dは、圧電素子PZと、内部にインクが充填されたキャビティ320(「圧力室」の一例)と、キャビティ320に連通するノズルNと、振動板310と、を備える。吐出部Dは、圧電素子PZに駆動信号Comが供給されて当該圧電素子PZが駆動信号Comにより駆動されることにより、キャビティ320内のインクをノズルNから吐出させる。キャビティ320は、キャビティプレート340と、ノズルNが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。キャビティ320は、インク供給口360を介してリザーバ350と連通している。リザーバ350は、インク取入口370を介して、当該吐出部Dに対応するインクカートリッジ31と連通している。
本実施形態では、圧電素子PZとして、図3に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。なお、圧電素子PZは、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型等を採用してもよい。
圧電素子PZは、上部電極Zuと、下部電極Zdと、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に設けられた圧電体Zmと、を有する。そして、下部電極Zdが電位VBSに設定された給電線LHd(図7参照)に電気的に接続され、上部電極Zuに駆動信号Comが供給されることで、上部電極Zu及び下部電極Zdの間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子PZが+Z方向または−Z方向に変位し、その結果、圧電素子PZが振動する。
キャビティプレート340の上面開口部には、振動板310が設置される。振動板310には、下部電極Zdが接合されている。このため、圧電素子PZが駆動信号Comにより駆動されて振動すると、振動板310も振動する。そして、振動板310の振動によりキャビティ320の容積が変化し、キャビティ320内に充填されたインクがノズルNより吐出される。インクの吐出によりキャビティ320内のインクが減少した場合、リザーバ350からインクが供給される。
図4は、吐出部Dにおけるインクの吐出動作の一例を説明するための説明図である。図4に例示するように、駆動制御部61は、Phase-1の状態において、吐出部Dが備える圧電素子PZに対して供給される駆動信号Comの電位を変化させることで、当該圧電素子PZが+Z方向に変位するような歪を発生させ、当該吐出部Dの振動板310を+Z方向に撓ませる。これにより、図4に示すPhase-2の状態のように、Phase-1の状態と比較して、当該吐出部Dのキャビティ320の容積が拡大する。次に、駆動制御部61は、駆動信号Comの示す電位を変化させることで、当該圧電素子PZが−Z方向に変位するような歪を発生させ、当該吐出部Dの振動板310を−Z方向に撓ませる。これにより、図4に示すPhase-3の状態のように、キャビティ320の容積が急激に収縮し、キャビティ320を満たすインクの一部が、このキャビティ320に連通しているノズルNからインク滴として吐出される。圧電素子PZ及び振動板310が駆動信号Comにより駆動されてZ軸方向に変位した後、振動板310を含む吐出部Dには残留振動が生じる。
図5は、+Z方向または−Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、ヘッドモジュールHMが具備する4個の記録ヘッドHDと、当該4個の記録ヘッドHDに設けられた合計4M個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。
図5に示すように、ヘッドモジュールHMに設けられた各記録ヘッドHDには、複数のノズル列Lnが設けられる。ここで、ノズル列Lnとは、所定方向に列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、各ノズル列Lnが、M個のノズルNをX軸方向に列状に延在するように配置して構成される場合を想定する。
以下では、図5に示すように、ヘッドモジュールHMに設けられる4列のノズル列Lnを、ノズル列Ln-BK、Ln-CY、Ln-MG、Ln-YLと称する。ここで、ノズル列Ln-BKは、ブラックのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-CYは、シアンのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-MGは、マゼンタのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnであり、ノズル列Ln-YLは、イエローのインクを吐出する吐出部DのノズルNを配列したノズル列Lnである。
なお、図5は一例であり、各ノズル列Lnに属するM個のノズルNは、ノズル列Lnの延在する方向と交差する方向に所定の幅を有して配置されていてもよい。つまり、各ノズル列Lnにおいて、+X側から偶数番目のノズルNと奇数番目のノズルNのY軸方向の位置が相違するように、各ノズル列Lnに属するM個のノズルNが例えば千鳥状に配置されてもよい。また、各ノズル列LnはX軸方向とは異なる方向に延在してもよい。また、本実施形態では、各記録ヘッドHDに設けられるノズル列Lnの列数が「1」である場合を例示しているが、各記録ヘッドHDには、2列以上のノズル列Lnが設けられてもよい。
<<3.インクジェットプリンターの動作の概要>>
以下、図6を参照しつつ、インクジェットプリンター1の動作の概要について説明する。
図6は、印刷処理が実行される場合の、インクジェットプリンター1の動作の一例を示すフローチャートである。
なお、図6では、インクジェットプリンター1が、印刷処理を実行する前に、吐出状態判定処理を実行する場合を例示している。なお、印刷処理の前に吐出状態判定処理を実行する場合とは、例えば、印刷処理が、インクジェットプリンター1の電源投入後の最初の印刷処理である場合や、印刷処理が、先に実行された印刷処理から一定時間経過後に実行される場合、または、印刷処理が、吐出状態判定処理から一定時間経過後に実行される場合、等である。
図6に示す例において、インクジェットプリンター1は、印刷処理に先立ち、吐出状態判定処理を実行する(S10)。次に、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10において実行された吐出状態判定処理において、吐出異常と判定された異常吐出部D-Fが存在するか否かを判定する(S20)。そして、インクジェットプリンター1は、ステップS20の判定結果が否定である場合、つまり、異常吐出部D-Fが存在しない場合、通常印刷処理を実行し(S30)、図6に示す処理を終了させる。
他方、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS20の判定結果が肯定である場合、つまり、異常吐出部D-Fが存在する場合、補完印刷処理が可能か否かを判定する(S40)。具体的には、制御部6は、ステップS40において、例えば、異常吐出部D-Fが所定数(または所定割合)以下であって、且つ、異常吐出部D-Fを補完可能な補完吐出部D-Qが存在する場合において、補完印刷処理が可能であると判定する。そして、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS40の判定結果が否定である場合、つまり、補完印刷処理が可能ではない場合、処理をステップS80に進める。
また、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS40の判定結果が肯定である場合、ステップS10における判定(吐出状態判定)からの経過時間のカウント(計時)を開始する(S50)。ここで、吐出状態判定からの経過時間とは、制御部6が、4M個の吐出部Dに対応する4M個の判定情報Sttを判定モジュールCMから取得する時刻のうち、最初の判定情報Sttを取得した時刻からの経過時間であってもよいし、最後の判定情報Sttを取得した時刻からの経過時間であってもよいし、4M個の判定情報Sttを取得する平均時刻からの経過時間であってもよい。また、吐出状態判定からの経過時間とは、判定モジュールCMが、4M個の吐出部Dに対応する4M個の判定情報Sttを出力したと推定される時刻のうち、最初の判定情報Sttを出力したと推定される時刻からの経過時間であってもよいし、最後の判定情報Sttを出力したと推定される時刻からの経過時間であってもよいし、4M個の判定情報Sttを出力したと推定される平均時刻からの経過時間であってもよい。
そして、インクジェットプリンター1は、ステップS50の後に、補完印刷処理を実行する(S60)。
また、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定からの経過時間が、所定時間を経過したか否かを判定する(S70)。なお、ステップS70の処理は、ステップS60の処理と並列的に実行されてもよい。制御部6は、ステップS50及びステップS70の処理を実行することにより、計時部63として機能する。
そして、インクジェットプリンター1は、ステップS70の判定結果が肯定である場合、メンテナンス処理を実行する(S80)。具体的には、インクジェットプリンター1は、ステップS80において、駆動制御部61により、フラッシング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
但し、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、ステップS80において、駆動制御部61及びメンテナンス制御部62により、ワイピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御してもよいし、駆動制御部61及びメンテナンス制御部62により、ポンピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御してもよい。
また、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS80において、フラッシング処理、ワイピング処理、及び、ポンピング処理のうち、ステップS10の処理結果に応じた1または複数の処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御してもよい。例えば、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において、インクの増粘に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合には、ステップS80において、フラッシング処理またはポンピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御すればよい。また、例えば、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において、気泡の混入に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合には、ステップS80において、フラッシング処理またはポンピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御すればよい。例えば、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において、異物の付着に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合には、ステップS80において、ワイピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御すればよい。
また、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において吐出異常であると判定された異常吐出部D-Fの個数、または、インクジェットプリンター1に設けられた4M個の吐出部Dに対する異常吐出部D-Fの割合に応じて、ステップS80において実行すべき処理を決定してもよい。例えば、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において、インクの増粘に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合であって、当該異常吐出部D-Fの個数が第1基準数未満の場合、または、異常吐出部D-Fの割合が第1基準値未満の場合、ステップS80において、フラッシング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御し、当該異常吐出部D-Fの個数が第1基準数以上の場合、または、異常吐出部D-Fの割合が第1基準値以上の場合、ステップS80において、ポンピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御してもよい。また、例えば、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS10における吐出状態判定処理において、気泡の混入に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合であって、当該異常吐出部D-Fの個数が第2基準数未満の場合、または、異常吐出部D-Fの割合が第2基準値未満の場合、ステップS80において、フラッシング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御し、当該異常吐出部D-Fの個数が第2基準数以上の場合、または、異常吐出部D-Fの割合が第2基準値以上の場合、ステップS80において、ポンピング処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御してもよい。
そして、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS70の判定結果が否定である場合、処理をステップS60に進めて、補完印刷処理を継続させる。
そして、インクジェットプリンター1の制御部6は、ステップS80の後に、印刷データImgに基づく印刷処理が終了したか否かを判定する(S90)。そして、インクジェットプリンター1は、ステップS90の判定結果が肯定である場合、図6に示す処理を終了させ、他方、ステップS90の判定結果が否定である場合、処理をステップS10に進める。
<<4.ヘッドユニットの構成>>
以下、図7を参照しつつ、各ヘッドユニットHUの構成について説明する。
図7は、ヘッドユニットHUの構成の一例を示すブロック図である。上述のように、ヘッドユニットHUは、記録ヘッドHDと、切替回路10と、検出回路20と、を備える。また、ヘッドユニットHUは、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Aが供給される内部配線LHaと、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Bが供給される内部配線LHbと、吐出部Dから検出される検出信号Voutを検出回路20に供給するための内部配線LHsと、を備える。
図7に示すように、切替回路10は、M個のスイッチSWa(SWa[1]〜SWa[M])と、M個のスイッチSWb(SWb[1]〜SWb[M])と、M個のスイッチSWs(SWs[1]〜SWs[M])と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路11と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
接続状態指定回路11は、制御部6から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、期間指定信号Tsigの少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]〜SWa[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]〜SLa[M]と、スイッチSWb[1]〜SWb[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]〜SLb[M]と、スイッチSWs[1]〜SWs[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLs[1]〜SLs[M]と、を生成する。
スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]に応じて、内部配線LHbと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
なお、駆動信号Com-A及びCom-Bのうち、スイッチSWa[m]またはSWb[m]を介して、吐出部D[m]の圧電素子PZ[m]に実際に供給される信号を、供給駆動信号Vin[m]と称する場合がある。
スイッチSWs[m]は、接続状態指定信号SLs[m]に応じて、内部配線LHsと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWs[m]は、接続状態指定信号SLs[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
検出回路20には、判定対象吐出部D-Hとして駆動された吐出部D[m]の圧電素子PZ[m]から出力される検出信号Vout[m]が、内部配線LHsを介して供給される。そして、検出回路20は、当該検出信号Vout[m]に基づいて残留振動信号NESを生成する。
<<5.ヘッドユニットの動作>>
以下、図8〜図11を参照しつつ、各ヘッドユニットHUの動作について説明する。
本実施形態において、インクジェットプリンター1の動作期間は、1または複数の単位期間Tuを含む。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各単位期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動と、吐出状態判定処理における判定対象吐出部D-Hの駆動及び残留振動の検出と、の一方を実行する場合を想定する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、各単位期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動と、吐出状態判定処理における判定対象吐出部D-Hの駆動及び残留振動の検出と、の両方を実行可能であってもよい。
なお、一般的に、インクジェットプリンター1は、連続的または間欠的な複数の単位期間Tuに亘り印刷処理を繰り返し実行して各吐出部Dから1または複数回ずつインクを吐出させることで、印刷データImgの示す画像を形成する。また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、連続的または間欠的に設けられたM個の単位期間Tuにおいて、M回の吐出状態判定処理を実行することで、M個の吐出部D[1]〜D[M]の各々を判定対象吐出部D-Hとした吐出状態判定処理を実行する。
図8は、インクジェットプリンター1の単位期間Tuにおける動作を説明するためのタイミングチャートである。
図8に示すように、制御部6は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATと、パルスPlsCを有するチェンジ信号CHと、を出力する。これにより、制御部6は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、単位期間Tuを規定する。また、制御部6は、パルスPlsCにより、単位期間Tuを2つの制御期間Tu1及びTu2に区分する。
印刷信号SIは、各単位期間Tuにおける吐出部D[1]〜D[M]の駆動の態様を指定する個別指定信号Sd[1]〜Sd[M]を含む。そして、制御部6の駆動制御部61は、単位期間Tuにおいて印刷処理及び吐出状態判定処理の少なくとも一方が実行される場合、図8に示すように、当該単位期間Tuの開始に先立って、個別指定信号Sd[1]〜Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路11に供給する。この場合、接続状態指定回路11は、当該単位期間Tuにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、SLs[m]を生成する。
なお、本実施形態に係る個別指定信号Sd[m]は、各単位期間Tuにおいて、吐出部D[m]に対して、大ドットに相当する量(大程度の量)のインクの吐出(「大ドットの形成」と称する場合がある)、中ドットに相当する量(中程度の量)のインクの吐出(「中ドットの形成」と称する場合がある)、小ドットに相当する量(小程度の量)のインクの吐出(「小ドットの形成」と称する場合がある)、インクの非吐出、及び、吐出状態判定処理における判定対象としての駆動(「判定対象吐出部D-Hとしての駆動」と称する場合がある)、の5つの駆動態様のうち、何れか一つの駆動態様を指定する信号である。なお、本実施形態では、一例として、個別指定信号Sd[m]が、3ビットのデジタル信号である場合を想定する(図11参照)。
図8に示すように、駆動信号生成回路2は、制御期間Tu1に設けられた波形PXと、制御期間Tu2に設けられた波形PYと、を有する駆動信号Com-Aを出力する。本実施形態では、波形PXの最高電位VHXと最低電位VLXとの電位差が、波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも大きくなるように、波形PX及び波形PYを定める。具体的には、波形PXを有する駆動信号Com-Aにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から中程度の量のインクが吐出されるように、波形PXの波形を定める。また、波形PYを有する駆動信号Com-Aにより吐出部D[m]を駆動する場合、吐出部D[m]から小程度の量のインクが吐出されるように、波形PYの波形を定める。なお、波形PX及び波形PYは、開始時及び終了時の電位が基準電位V0に設定されている。
そして、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、大ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1及びTu2においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、単位期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、制御期間Tu1において波形PXの駆動信号Com-Aにより駆動されて中程度の量のインクを吐出し、また、制御期間Tu2において波形PYの駆動信号Com-Aにより駆動されて小程度の量のインクを吐出する。これにより、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて、合計で大程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには大ドットが形成される。
また、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、中ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1においてハイレベルに、制御期間Tu2においてローレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、単位期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて中程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには中ドットが形成される。
また、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、小ドットの形成を指定する場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[m]を、制御期間Tu1においてローレベルに、制御期間Tu2においてハイレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLb[m]及びSLs[m]を、単位期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて小程度の量のインクを吐出し、記録用紙Pには小ドットが形成される。
また、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]に対して、インクの非吐出を指定する場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[m]とSLb[m]とSLs[m]とを、単位期間Tuにおいてローレベルに設定する。この場合、吐出部D[m]は、単位期間Tuにおいて、インクを吐出せず、記録用紙Pにドットを形成しない。
図8に示すように、駆動信号生成回路2は、単位期間Tuに設けられた波形PSを有する駆動信号Com-Bを出力する。本実施形態では、波形PSの最高電位VHSと最低電位VLSとの電位差が、波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも小さくなるように、波形PSを定める。具体的には、波形PSを有する駆動信号Com-Bを吐出部D[m]に供給する場合、吐出部D[m]からインクが吐出されない程度に吐出部D[m]が駆動されるように、波形PSの波形を定める。なお、波形PSは、開始時及び終了時の電位が基準電位V0に設定されている。
また、制御部6は、パルスPlsT1及びパルスPlsT2を有する期間指定信号Tsigを出力する。これにより、制御部6は、単位期間Tuを、パルスPlsLの開始からパルスPlsT1の開始までの制御期間TSS1と、パルスPlsT1の開始からパルスPlsT2の開始までの制御期間TSS2と、パルスPlsT2の開始から次のパルスPlsLの開始までの制御期間TSS3と、に区分する。
そして、個別指定信号Sd[m]が吐出部D[m]を、判定対象吐出部D-Hとして指定する場合、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[m]を、単位期間Tuにおいてローレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m]を、制御期間TSS1及びTSS3においてハイレベルに、制御期間TSS2においてローレベルに、それぞれ設定し、接続状態指定信号SLs[m]を、制御期間TSS1及びTSS3においてローレベルに、制御期間TSS2においてハイレベルに、それぞれ設定する。
この場合、判定対象吐出部D-Hは、制御期間TSS1において波形PSの駆動信号Com-Bにより駆動される。具体的には、判定対象吐出部D-Hが有する圧電素子PZは、制御期間TSS1において波形PSの駆動信号Com-Bにより変位させられる。その結果、判定対象吐出部D-Hにおいて振動が生じ、この振動は、制御期間TSS2においても残留する。そして、制御期間TSS2において、判定対象吐出部D-Hの圧電素子PZが有する上部電極Zuは、判定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動に応じて電位を変化させる。換言すれば、制御期間TSS2において、判定対象吐出部D-Hの圧電素子PZが有する上部電極Zuは、判定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動に起因する圧電素子PZの起電力に応じた電位を示す。そして、当該上部電極Zuの電位は、制御期間TSS2において、検出信号Voutとして検出することができる。
図9は、単位期間Tuにおける切替回路10の動作を説明するための説明図である。なお、以下では、判定対象吐出部D-Hに対応して設けられるスイッチSWa、SWb、SWsを、それぞれ、スイッチSWa-H、SWb-H、SWs-Hと称することがある。また、以下では、印刷処理において駆動される吐出部Dを印刷駆動吐出部D-Pと称し、印刷駆動吐出部D-Pに対応して設けられるスイッチSWa、SWb、SWsを、それぞれ、スイッチSWa-P、SWb-P、SWs-Pと称することがある。
図9に示すように、単位期間Tuにおいて吐出部D[m]が印刷駆動吐出部D-Pとして動作する場合、吐出部D[m]は個別指定信号Sd[m]に従って駆動され、印刷処理の用に供されることになる。
図9に示すように、単位期間Tuにおいて吐出部D[m]が判定対象吐出部D-Hとして動作する場合、スイッチSWa-HであるスイッチSWa[m]は単位期間Tuに亘りオフし、スイッチSWb-HであるスイッチSWb[m]は制御期間TSS1及び制御期間TSS3においてオンし、スイッチSWs-HであるスイッチSWs[m]は制御期間TSS2においてオンする。この場合、制御期間TSS1において判定対象吐出部D-Hである吐出部D[m]が具備する圧電素子PZ[m]が駆動信号Com-Bにより駆動されて変位し、制御期間TSS2において吐出部D[m]に残留振動が生じている状態が作り出される。そして、制御期間TSS2において、吐出部D[m]における残留振動に基づく検出信号Vout[m]が、内部配線LHsを介して検出回路20に供給される。
図10は、本実施形態に係る接続状態指定回路11の構成をの一例を示す図である。図10に示すように、接続状態指定回路11は、接続状態指定信号SLa[1]〜SLa[M]、SLb[1]〜SLb[M]、及び、SLs[1]〜SLs[M]を生成する。
具体的には、接続状態指定回路11は、吐出部D[1]〜D[M]と1対1に対応するように、転送回路SR[1]〜SR[M]と、ラッチ回路LT[1]〜LT[M]と、デコーダーDC[1]〜DC[M]と、を有する。このうち、転送回路SR[m]には、個別指定信号Sd[m]が供給される。なお、この図では、個別指定信号Sd[1]〜Sd[M]がシリアルで供給され、例えば、m段に対応する個別指定信号Sd[m]が、転送回路SR[1]から転送回路SR[m]へと、クロック信号CLに同期して順番に転送される場合を例示している。また、ラッチ回路LT[m]は、ラッチ信号LATのパルスPlsLがハイレベルに立ち上がるタイミングにおいて、転送回路SR[m]に供給された個別指定信号Sd[m]をラッチする。また、デコーダーDC[m]は、個別指定信号Sd[m]、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、期間指定信号Tsigに基づいて、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]を生成する。
図11は、デコーダーDC[m]における接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]の生成を説明するための説明図である。デコーダーDC[m]は、図11に従って、個別指定信号Sd[m]をデコードし、接続状態指定信号SLa[m]、SLb[m]、及び、SLs[m]を生成する。
図11に示すように、本実施形態に係る個別指定信号Sd[m]は、大ドットの形成を指定する値(1,1,0)、中ドットの形成を指定する値(1,0,0)、小ドットの形成を指定する値(0,1,0)、インクの非吐出を指定する値(0,0,0)、または、判定対象吐出部D-Hとしての駆動を指定する値(1,1,1)の何れかの値を示す。そして、デコーダーDC[m]は、個別指定信号Sd[m]が(1,1,0)を示す場合、制御期間Tu1及びTu2において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(1,0,0)を示す場合、制御期間Tu1において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(0,1,0)を示す場合、制御期間Tu2において接続状態指定信号SLa[m]をハイレベルとし、個別指定信号Sd[m]が(1,1,1)を示す場合、制御期間TSS1及びTSS3において接続状態指定信号SLb[m]をハイレベルとするとともに、制御期間TSS2において接続状態指定信号SLs[m]をハイレベルとし、以上に該当しない場合において各信号をローレベルとする。
検出回路20は、上述のとおり、検出信号Voutに基づいて残留振動信号NESを生成する。残留振動信号NESとは、検出信号Voutの振幅を増幅し、また、検出信号Voutからノイズ成分を除去する等することで、検出信号Voutを吐出状態判定回路9における処理に適した波形に整形した信号である。
検出回路20は、例えば、検出信号Voutを増幅させるための負帰還型のアンプと、検出信号Voutの高域周波数成分を減衰させるためのローパスフィルターと、インピーダンスを変換してローインピーダンスの残留振動信号NESを出力するボルテージフォロアと、を含む構成等であってもよい。
<<6.吐出状態判定回路>>
次に、吐出状態判定回路9について説明する。
一般的に、吐出部Dに生じる残留振動は、ノズルNの形状、キャビティ320に充填されたインクの重量、及び、キャビティ320に充填されたインクの粘度、等により決定される固有振動周波数を有する。
また、一般的に、吐出部Dのキャビティ320に気泡が混入しているために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合には、キャビティ320に気泡が混入していない場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。また、一般的に、吐出部DのノズルN付近に紙粉等の異物が付着しているために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合には、異物が付着していない場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。また、一般的に、吐出部Dのキャビティ320に充填されたインクが増粘しているために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合には、インクが増粘していない場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。また、一般的に、吐出部Dのキャビティ320に充填されたインクが増粘しているために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合には、吐出部DのノズルN付近に紙粉等の異物が付着している場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。また、一般的に、吐出部Dのキャビティ320にインクが充填されていないために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合や、圧電素子PZが故障して変位できないために吐出部Dにおいて吐出異常が生じている場合には、残留振動の振幅が小さくなる。
上述のとおり、残留振動信号NESは、判定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動に応じた波形を示す。具体的には、残留振動信号NESは、判定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動の周波数に応じた周波数を示し、判定対象吐出部D-Hにおいて生じている残留振動の振幅に応じた周波数を示す。このため、吐出状態判定回路9は、残留振動信号NESに基づいて、判定対象吐出部D-Hにおけるインクの吐出状態を判定する吐出状態判定を行うことができる。
吐出状態判定回路9は、吐出状態判定において、残留振動信号NESの1周期の時間長NTcを測定し、当該測定結果を示す周期情報Info-Tを生成する。
また、吐出状態判定回路9は、吐出状態判定において、残留振動信号NESが所定の振幅を有しているか否かを示す振幅情報Info-Sを生成する。具体的には、吐出状態判定回路9は、残留振動信号NESの1周期の時間長NTcを測定している期間において、残留振動信号NESの電位が、残留振動信号NESの振幅中心レベルの電位Vth-Cよりも高電位の閾値電位Vth-O以上となり、且つ、電位Vth-Cよりも低電位の閾値電位Vth-U以下となるか否かを判定する。そして、当該判定の結果が肯定の場合には、振幅情報Info-Sに、残留振動信号NESが所定の振幅を有していることを示す値、例えば「1」を設定し、当該判定の結果が否定の場合には、振幅情報Info-Sに、残留振動信号NESが所定の振幅を有していないことを示す値、例えば「0」を設定する。
そして、吐出状態判定回路9は、周期情報Info-T及び振幅情報Info-Sに基づいて、判定対象吐出部D-Hにおけるインクの吐出状態の判定結果を示す判定情報Sttを生成する。
図12は、吐出状態判定回路9における、判定情報Sttの生成を説明するための説明図である。
この図に示すように、吐出状態判定回路9は、周期情報Info-Tの示す時間長NTcを、閾値Tth1、閾値Tth2、閾値Tth3の一部または全部と比較することで、判定対象吐出部D-Hにおける吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定情報Sttを生成する。
ここで、閾値Tth1は、判定対象吐出部D-Hの吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期の時間長と、キャビティ320に気泡が混入した場合における残留振動の1周期の時間長と、の境界を示すための値である。また、閾値Tth2は、判定対象吐出部D-Hの吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期の時間長と、ノズルN付近に異物が付着した場合における残留振動の1周期の時間長と、の境界を示すための値である。また、閾値Tth3は、判定対象吐出部D-HのノズルN付近に異物が付着した場合における残留振動の1周期の時間長と、キャビティ320内のインクが増粘した場合における残留振動の1周期の時間長と、の境界を示すための値である。なお、閾値Tth1〜閾値Tth3は、「Tth1<Tth2<Tth3」を満たすこととする。
図12に示すように、本実施形態では、振幅情報Info-Sの値が「1」であり、且つ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth1≦NTc≦Tth2」を満たす場合には、判定対象吐出部D-Hにおけるインクの吐出状態が正常であると看做す。そして、この場合、吐出状態判定回路9は、判定情報Sttに、判定対象吐出部D-Hの吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。
また、振幅情報Info-Sの値が「1」であり、且つ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「NTc<Tth1」を満たす場合には、判定対象吐出部D-Hにおいて気泡による吐出異常が生じていると看做す。そして、この場合、吐出状態判定回路9は、判定情報Sttに、判定対象吐出部D-Hにおいて気泡による吐出異常が発生していることを示す値「2」を設定する。
また、振幅情報Info-Sの値が「1」であり、且つ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth2<NTc≦Tth3」を満たす場合には、判定対象吐出部D-Hにおいて異物付着による吐出異常が生じていると看做す。そして、この場合、吐出状態判定回路9は、判定情報Sttに、判定対象吐出部D-Hにおいて異物付着による吐出異常が発生していることを示す値「3」を設定する。
また、振幅情報Info-Sの値が「1」であり、且つ、周期情報Info-Tの示す時間長NTcが「Tth3<NTc」を満たす場合には、判定対象吐出部D-Hにおいて増粘による吐出異常が生じていると看做す。そして、この場合、吐出状態判定回路9は、判定情報Sttに、判定対象吐出部D-Hにおいて増粘による吐出異常が発生していることを示す値「4」を設定する。
また、振幅情報Info-Sの値が「0」の場合においても、判定対象吐出部D-Hにおいて吐出異常が生じていると看做す。そして、この場合、吐出状態判定回路9は、判定情報Sttに、判定対象吐出部D-Hにおいて吐出異常が発生していることを示す値「5」を設定する。
以上のように、吐出状態判定回路9は、周期情報Info-Tと振幅情報Info-Sとに基づいて、判定情報Sttを生成する。
そして、制御部6は、吐出状態判定回路9が生成する判定情報Sttを、当該判定情報Sttに対応する判定対象吐出部D-Hの段数mと対応付けて、記憶部5に記憶させる。これにより、制御部6は、吐出部D[1]〜D[M]に対応する判定情報Stt[1]〜Stt[M]を管理する。
なお、本実施形態では、判定情報Sttが「1」から「5」までの5値の情報である場合を例示しているが、判定情報Sttは、時間長NTcが「Tth1≦NTc≦Tth2」を満たすか否かを示す2値の情報であってもよい。少なくとも、判定情報Sttは、判定対象吐出部D-Hにおけるインクの吐出状態が正常であるか否かを示す情報を含めばよい。
<<7.通常印刷処理及び補完印刷処理>>
以下、図13〜図16を参照しつつ、補完印刷処理について説明する。
図13では、ノズル列Ln-BKに属するノズルNを有する5個の吐出部D[1]〜D[5]の吐出状態が正常である場合において、通常印刷処理が実行され、当該5個の吐出部D[1]〜D[5]により5個の中ドットDt1〜Dt5を形成する場合を例示している。
図14では、図13に例示するような通常印刷処理を実行し、5個の吐出部D[1]〜D[5]により5個の中ドットDt1〜Dt5を形成しようとしたものの、吐出部D[3]が異常吐出部D-Fであり、吐出部D[3]からのインクの吐出に失敗し、吐出部D[3]から吐出されるインクにより形成される予定であった中ドットDt3が形成されない場合を例示している。
図15は、図14に示す例において、通常印刷処理の代わりに補完印刷処理を実行する場合を例示している。具体的には、
図15に示す補完印刷処理では、異常吐出部D-Fである吐出部D[3]を補完する補完吐出部D-Qとして、異常吐出部D-Fと同一のノズル列Lnに属するノズルNを有し、異常吐出部D-Fと隣り合う吐出部Dである吐出部D[2]及び吐出部D[4]を採用する。換言すれば、図15に例示する補完印刷処理では、異常吐出部D-Fと副走査方向(本実施形態では、X軸方向)において隣り合う吐出部Dを、補完吐出部D-Qとして採用する。そして、図15に示す補完印刷処理では、図14に示す通常印刷処理と比較して、補完吐出部D-Qである吐出部D[2]及び吐出部D[4]からのインクの吐出量を増加させ、且つ、異常吐出部D-Fである吐出部D[3]への駆動信号Comの供給を停止して吐出部D[3]の駆動を停止させる。これにより、図15に示す補完印刷処理では、図14に示す通常印刷処理において形成される中ドットDt2及び中ドットDt4の代わりに、大ドットDtQ2及び大ドットDtQ4が形成されることになる。このため、図15に示す補完印刷処理では、図14に示す通常印刷処理と比較して、ドットDt3の形成に失敗してドット抜けが生じた場合であっても、図13に示す本来形成すべき複数のドットDtと近い態様でのドットDtの形成が可能となり、吐出異常に伴う画質の劣化の程度を低減することが可能となる。
なお、図15に示す補完印刷処理では、異常吐出部D-FのノズルN及び補完吐出部D-QのノズルNが、ノズル列Ln-BKに属する場合を例示したが、これは一例に過ぎず、異常吐出部D-FのノズルN及び補完吐出部D-QノズルNは、ノズル列Ln-BK以外のノズル列Lnに属していてもよい。
また、図15に示す補完印刷処理では、異常吐出部D-Fと同一のノズル列Lnに属するノズルNを有する吐出部Dであって、異常吐出部D-Fと隣り合う2個の吐出部Dを、補完吐出部D-Qとして採用したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、補完吐出部D-Qは1個であってもよいし、また、補完吐出部D-Qは、異常吐出部D-Fとは異なるノズル列Lnに属するノズルNを有する吐出部Dであってもよい。
図16は、図14に示す例において、通常印刷処理の代わりに補完印刷処理を実行する場合を例示している。具体的には、図16に示す補完印刷処理では、ノズル列Ln-BKに対応する異常吐出部D-Fである吐出部D[3]を補完する補完吐出部D-Qとして、異常吐出部D-Fとは異なるノズル列Lnに属するノズルNを有する吐出部Dである、ノズル列Ln-CYに対応する吐出部D[6]と、ノズル列Ln-MGに対応する吐出部D[7]と、ノズル列Ln-YLに対応する吐出部D[8]と、が採用される場合を例示している。換言すれば、図16に例示する補完印刷処理では、異常吐出部D-Fからみて主走査方向またはその逆方向(本実施形態では、Y軸方向)に位置する吐出部Dを、補完吐出部D-Qとして採用する。そして、図16に示す補完印刷処理では、図14に示す通常印刷処理と比較して、補完吐出部D-Qである吐出部D[6]、吐出部D[7]、吐出部D[8]からのインクの吐出量を増加させ、且つ、異常吐出部D-Fである吐出部D[3]への駆動信号Comの供給を停止して吐出部D[3]の駆動を停止させる。これにより、図16に示す補完印刷処理では、本来、ブラックのインクにより形成されるべき中ドットDt3の代わりに、シアンのインクにより形成される中ドットDtQ6と、マゼンタのインクにより形成される中ドットDtQ7と、イエローのインクにより形成される中ドットDtQ8と、が形成されることになる。このため、図16に示す補完印刷処理では、図14に示す通常印刷処理と比較して、ドットDt3の形成に失敗する場合であっても、図13に示す本来形成すべきドットDtと近い態様でドットDtの形成が可能となり、吐出異常に伴う画質の劣化の程度を低減することが可能となる。
<<8.実施形態の結論>>
以上において説明したように、本実施形態によれば、吐出異常の吐出部Dが存在する場合であっても、補完印刷処理を実行することができるため、吐出異常の検出後において補完印刷処理を実行することなく直ちにメンテナンス処理を実行する場合と比較して、インクジェットプリンター1の利用者の利便性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、吐出異常の吐出部Dが存在する場合に、補完印刷処理が実行される時間を、所定時間以下に制限するため、例えば、インクの増粘に起因して吐出異常が生じている吐出部Dにおいて、インクの増粘の程度が進んでインクが固着する等、メンテナンス処理によっても回復不能となるような深刻な吐出異常の発生を防止することができる。
<<B.変形例>>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
<<変形例1>>
上述した実施形態において、制御部6は、吐出状態判定から所定時間を経過した場合に、メンテナンス処理を実行するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、制御部6は、吐出状態判定処理の処理結果に応じて、吐出状態判定からメンテナンス処理の開始までの時間を決定してもよい。
例えば、制御部6は、インクの増粘に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fが検出された場合には、気泡の混入に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fのみが検出された場合、及び、異物の付着に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fのみが検出された場合と比較して、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間を長くしてもよい。また、例えば、制御部6は、インクの増粘に起因する吐出異常が生じている異常吐出部D-Fの個数(または割合)が、第1基準数以上(または第1基準値以上)の場合には、第1基準数未満(または第1基準値未満)の場合と比較して、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間を長くしてもよい。
<<変形例2>>
上述した実施形態及び変形例において、駆動信号Comは、吐出部Dからインクを吐出させるように吐出部Dを駆動するための吐出波形である波形PX及び波形PYを含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、駆動信号Comは、吐出部Dからインクが吐出しない程度に吐出部Dを駆動するための非吐出波形である微振動波形PBSを含んでいてもよい。
この場合、本変形例に係る制御部6(駆動制御部61)は、通常印刷処理の各単位期間Tuにおいて、波形PXまたは波形PYが供給されない吐出部Dに対して、微振動波形PBSを供給してもよい。また、本変形例に係る制御部6(駆動制御部61)は、補完印刷処理の各単位期間Tuにおいて、波形PXまたは波形PYが供給されない吐出部Dのうち、異常吐出部D-F以外の吐出部Dに対して、微振動波形PBSを供給してもよい。すなわち、本変形例に係る制御部6(駆動制御部61)は、補完印刷処理の各単位期間Tuにおいて、異常吐出部D-Fに対しては、波形PX、波形PY、及び、微振動波形PBSのいずれの波形も供給されないように、切替回路10を制御することが好ましい。
なお、駆動信号Comのうち、波形PX及び波形PY等の吐出波形を含む信号は、「第1駆動信号」の一例であり、駆動信号Comのうち、微振動波形PBS等の非吐出波形を含む信号は、「第2駆動信号」の一例である。
<<変形例3>>
上述した実施形態及び変形例において、制御部6は、吐出状態判定から所定時間を経過した場合、または、吐出状態判定から吐出状態判定処理の処理結果に応じた時間が経過した場合に、メンテナンス処理を実行するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、制御部6は、異常吐出部D-FのノズルNと、補完吐出部D-QのノズルNとが、同一のノズル列Lnに属するか否かに応じて、吐出状態判定からメンテナンス処理の開始までの時間を決定してもよい。
例えば、制御部6は、異常吐出部D-FのノズルNと、補完吐出部D-QのノズルNとが、同一のノズル列Lnに属する場合に、異なるノズル列Lnに属する場合と比較して、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間を短くしてもよい。この態様によれば、例えば、異常吐出部D-Fにおいてインクの増粘に起因する吐出異常が生じている場合に、同一のノズル列Ln(同一の記録ヘッドHD)内で隣り合う補完吐出部D-Qの駆動に伴う振動が、異常吐出部D-Fに伝播することで、異常吐出部D-Fに充填されている増粘したインクが、異常吐出部D-Fの深部へと拡散し、更には、当該増粘したインクが、インク供給口360を介してリザーバ350へと拡散することを防止することができる。
なお、制御部6は、記録用紙Pに形成される画像の色の正確性よりも、記録用紙Pに形成される画像の位置または形状の正確性を優先するための形状優先印刷モードと、記録用紙Pに形成される画像の位置または形状の正確性よりも、記録用紙Pに形成される画像の色の正確性を優先するための色優先印刷モードと、による印刷処理の制御が可能であってもよい。
そして、制御部6は、補完印刷処理を、形状優先印刷モードにより実行する場合には、補完吐出部D-Qは、異常吐出部D-Fと異なるノズル列Lnに属するノズルNを有する吐出部Dから選択することが好ましい。また、補完印刷処理を、色優先印刷モードにより実行する場合には、補完吐出部D-Qは、異常吐出部D-Fと同一のノズル列Lnに属するノズルNを有する吐出部Dから選択することが好ましい。
さらに、制御部6は、補完印刷処理が色優先印刷モードにより実行される場合、補完印刷処理が形状優先印刷モードにより実行される場合と比較して、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間を短くしてもよい。これにより、補完印刷処理が色優先印刷モードにより実行される場合であって、異常吐出部D-Fにおいてインクの増粘に起因する吐出異常が生じている場合において、同一のノズル列Lnで隣り合う補完吐出部D-Qの駆動に伴う振動が異常吐出部D-Fに伝播することによる、増粘インクの拡散を防止することができる。
なお、補完印刷処理のうち、補完吐出部D-QのノズルNと異常吐出部D-FのノズルNとが同一のノズル列Lnに属する場合、例えば、補完吐出部D-Qと異常吐出部D-Fとが同一の記録ヘッドHDに設けられる場合を、同列補完モード(「第1の制御モード」の一例)による補完印刷処理と称する。
また、補完印刷処理のうち、補完吐出部D-QのノズルNと異常吐出部D-FのノズルNとが異なるノズル列Lnに属する場合、例えば、補完吐出部D-Qと異常吐出部D-Fとが異なる記録ヘッドHDに設けられる場合を、他列補完モード(「第2の制御モード」の一例)による補完印刷処理と称する。
そして、本変形例において、制御部6は、同列補完モードにより補完印刷処理が実行される場合に、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間である、第1の時間が、他列補完モードにより補完印刷処理が実行される場合に、吐出状態判定から、メンテナンス処理の開始までの時間である、第2の時間よりも、短くなるように制御する。
<<変形例4>>
上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1は、4個のヘッドユニットHUと、4個のインクカートリッジ31と、が1対1に対応するように設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、1個以上のヘッドユニットHUと、1個以上のインクカートリッジ31と、を備えていればよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1には、4個のヘッドユニットHUに1対1に対応して4個の吐出状態判定回路9が設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1には、複数のヘッドユニットHUに対して1個の吐出状態判定回路9が設けられてもよく、1個のヘッドユニットHUに対して複数の吐出状態判定回路9が設けられてもよい。
<<変形例5>>
上述した実施形態及び変形例において、吐出状態判定回路9は、制御部6とは別個の回路として設けられるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、吐出状態判定回路9のうちの一部または全部は、制御部6のCPU等が制御プログラムに従って動作することにより実現される機能ブロックとして実装されてもよい。
<<変形例6>>
上述した実施形態及び変形例において、計時部63は、制御部6が制御プログラムに従って動作することで実現される機能ブロックとして実装されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、計時部63は、制御部6とは別個の回路またはハードウェアとして実装されてもよい。
例えば、計時部63は、制御部6とは別個に、ヘッドモジュールHMの外部に設けられ、吐出状態判定回路9が判定情報Sttを出力するタイミングまたは吐出状態判定回路9に対して残留振動信号NESが供給されるタイミングからの時間を計時してもよい。そして、計時が開始された時刻を基準として、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来したか否かを判定し、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した場合には、その旨を、制御部6に通知すればよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1は、1個の計時部63を備えるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、例えば、4個のヘッドユニットHUまたは4個の吐出状態判定回路9と1対1に対応するように、4個の計時部63を具備していてもよい。
例えば、計時部63は、ヘッドモジュールHMの内部にヘッドユニットHU毎に設けられてもよい。例えば、4個のヘッドユニットHUの各々が、計時部63を備えていてもよい。この場合、ヘッドモジュールHMに設けられた4個の計時部63の各々は、例えば、検出回路20が残留振動信号NESを出力するタイミングを基準として、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した否かを判定し、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した場合には、その旨を、制御部6に通知すればよい。この場合、検出回路20が残留振動信号NESを出力するタイミングを、吐出状態判定回路9が判定情報Sttを出力するタイミングと看做してもよい。
また、例えば、計時部63は、判定モジュールCMの内部に吐出状態判定回路9毎に設けられてもよい。すなわち、4個の吐出状態判定回路9の各々が、計時部63を備えていてもよい。この場合、判定モジュールCMに設けられた4個の計時部63の各々は、例えば、吐出状態判定回路9が判定情報Sttを出力するタイミングまたは吐出状態判定回路9に対して残留振動信号NESが供給されるタイミングを基準として、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した否かを判定し、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した場合には、その旨を、制御部6に通知すればよい。
これらの場合、メンテナンス処理のタイミングを、ヘッドユニットHU毎に個別に決定することができるため、各ヘッドユニットHUにおいて、メンテナンス処理によっても回復不能となるような深刻な吐出異常が発生する可能性を提言させることが可能となる。
<<変形例7>>
上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1は、図17に示すように、時計630を備えていてもよい。具体的には、時計630は、例えば、電波時計であり、RTC(real-time clock)と、インクジェットプリンター1の外部から時刻に関する情報を入手し当該入手した情報に基づいてRTCの時刻を修正するための機能と、を備え、時刻に関する情報を生成しうるものであってもよい。ここで、時刻に関する情報とは、例えば、標準時刻等のように、インクジェットプリンター1の外部において用いられている時刻に関する情報であってもよい。また、インクジェットプリンター1の外部から時刻に関する情報を入手する機能とは、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から時刻に関する情報を受信する機能や、インターネットから時刻に関する情報を取得する機能、等を適宜採用すればよい。
また、本変形例において、計時部63は、吐出状態判定が実行されたタイミングで、時計630を参照し、その後、周期的に時計630を参照することで、メンテナンス処理を開始すべきタイミングが到来した否かを判定すればよい。つまり、計時部63は、吐出状態判定がなされた時刻を基準として、当該基準となる時刻と、現在時刻との差分に基づいて、メンテナンス処理を開始すべき時刻が到来したか否かを判定し、メンテナンス処理を開始すべき時刻が到来した場合には、その旨を、制御部6に通知すればよい。
また、図17では、時計630が、計時部63とは別個に設けられる場合を例示しているが、時計630は、計時部63に設けられていてもよい。つまり、計時部63は、時計630を具備するものであってもよい。
<<変形例8>>
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、ヘッドモジュールHMにおいて、複数のノズルNが記録用紙Pの幅よりも広く延在するように設けられた、所謂ラインプリンターであってもよい。
1…インクジェットプリンター、2…駆動信号生成回路、4…メンテナンスユニット、5…記憶部、6…制御部、7…搬送機構、9…吐出状態判定回路、10…切替回路、20…検出回路、61…駆動制御部、62…メンテナンス制御部、63…計時部、CM…判定モジュール、D…吐出部、HD…記録ヘッド、HM…ヘッドモジュール、HU…ヘッドユニット。

Claims (4)

  1. 液体を吐出する複数の吐出部と、
    前記複数の吐出部のうち第1の吐出部が設けられた第1の記録ヘッドと、
    前記複数の吐出部のうち第2の吐出部が設けられた第2の記録ヘッドと、
    前記吐出部における液体の吐出状態を判定する判定部と、
    前記吐出部における液体の吐出状態が異常となった場合に、
    当該吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復機構と、
    前記複数の吐出部及び前記回復機構を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記判定部が、前記第1の記録ヘッドに設けられた一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、
    前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第1の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第1の制御モードと、
    前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第2の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第2の制御モードと、
    による前記複数の吐出部の制御が可能であり、
    前記第1の制御モードによる前記複数の吐出部の制御を、前記判定から第1の時間が経過したときに終了させ、
    前記第2の制御モードによる前記複数の吐出部の制御を、前記判定から第2の時間が経過したときに終了させ、
    前記第1の制御モードにより前記複数の吐出部を制御している場合、
    前記判定から前記第1の時間が経過したときに、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作が開始されるように、前記回復機構を制御し、
    前記第2の制御モードにより前記複数の吐出部を制御している場合、
    前記判定から前記第2の時間が経過したときに、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作が開始されるように、前記回復機構を制御し、
    前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短い、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記回復動作は、
    前記回復機構が前記複数の吐出部から液体を吸引する動作である、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記吐出部から液体が吐出されるように前記吐出部を駆動する第1駆動信号、及び、
    前記吐出部から液体が吐出されないように前記吐出部を駆動するための第2駆動信号、
    を生成する駆動信号生成部と、
    前記第1駆動信号を前記吐出部に供給するか否かを切り替え、
    前記第2駆動信号を前記吐出部に供給するか否かを切り替える、切替部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、
    前記複数の吐出部を前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードにより制御している間において、
    前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号が、前記一の吐出部に供給されないように、
    前記切替部を制御する、
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
  4. 液体を吐出する複数の吐出部と、
    前記複数の吐出部のうち第1の吐出部が設けられた第1の記録ヘッドと、
    前記複数の吐出部のうち第2の吐出部が設けられた第2の記録ヘッドと、
    前記吐出部における液体の吐出状態を判定する判定部と、
    前記吐出部における液体の吐出状態が異常となった場合に、
    当該吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復機構と、
    を備える液体吐出装置の制御方法であって、
    前記判定部が、前記第1の記録ヘッドに設けられた一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合、
    前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第1の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第1の制御モードと、
    前記一の吐出部から液体を吐出させる代わりに前記第2の吐出部から液体を吐出させるように、前記複数の吐出部を制御する第2の制御モードと、
    のうち、一方の制御モードにより前記複数の吐出部を制御し、
    前記第1の制御モードによる前記複数の吐出部の制御は、前記判定から第1の時間が経過したときに終了し、
    前記第2の制御モードによる前記複数の吐出部の制御は、前記判定から第2の時間が経過したときに終了し、
    前記第1の制御モードにより前記複数の吐出部を制御している場合、
    前記判定から前記第1の時間が経過したときに、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作が開始されるように、前記回復機構を制御し、
    前記第2の制御モードにより前記複数の吐出部を制御している場合、
    前記判定から前記第2の時間が経過したときに、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を正常に回復させる回復動作が開始されるように、前記回復機構を制御し、
    前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短い、
    ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
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