JP2016049691A - ヘッドユニット、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム - Google Patents

ヘッドユニット、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム Download PDF

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雅史 上柳
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Osamu Shinkawa
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Abstract

【課題】吐出部からのインクの吐出状態の判定の精度を高める。【解決手段】駆動信号に応じて変位する圧電素子、圧電素子の変位により内部の圧力が増減される圧力室、及び、圧力室内部の圧力の増減に応じて圧力室内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、複数の波形を有する駆動波形信号及び駆動波形信号の有する複数の波形から圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて駆動信号を生成する生成部と、生成部に対してクロック信号を供給すると共に指定信号をクロック信号に同期させて供給する供給部と、圧電素子が変位した後に吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて吐出部における液体の吐出状態を判定する判定部と、を備え、検出部は、検出期間において残留振動を検出し、供給部は、検出期間において生成部に対するクロック信号の供給を停止する、ことを特徴とする液体吐出装置。【選択図】図17

Description

本発明は、ヘッドユニット、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラムに関する。
吐出部からインクを吐出して媒体に画像を形成するインクジェットプリンター等の液体吐出装置において、インクの増粘や気泡混入等に起因して、吐出部からインクを正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。吐出部において吐出異常が生じると、当該吐出部から吐出されるインクにより形成される予定であったドットが正確に形成されず、媒体に形成される画像の画質が低下する。
このような、吐出異常に起因する画質の低下を防止するために、吐出部を駆動した後に吐出部に生じる残留振動を検出し、検出した残留振動に基づいて吐出部からのインクの吐出状態を判定することで、吐出異常を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−276544号公報
しかしながら、吐出部において生じる残留振動は、例えば、吐出部の備える圧電素子の起電力の変化を示す信号等、小振幅の信号として検出される。このため、一般的に、残留振動を示す信号は、ノイズの影響を受け易い。そして、残留振動を示す信号にノイズが重畳する場合には、残留振動を正確に検出できなくなる可能性が高くなり、吐出部におけるインクの吐出状態を正確に判定することができなくなる、という問題が存在した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、吐出部からのインクの吐出状態の判定の精度を高めることを可能とする技術を提供することを、解決課題の一つとする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、前記生成部に対してクロック信号を供給すると共に、前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給する供給部と、前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する判定部と、を備え、前記検出部は、前記単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、前記供給部は、前記単位期間のうち前記検出期間において、前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止する、ことを特徴とする。
この発明によれば、残留振動を検出する検出期間において、生成部に対するクロック信号の供給を停止する。従って、クロック信号の信号レベルの変化に伴い生じるノイズ等、クロック信号に起因するノイズが残留振動に重畳することを防止することができる。また、クロック信号の供給を停止する場合、クロック信号に同期して供給される指定信号の供給も停止される。よって、指定信号の信号レベルの変化に伴い生じるノイズ等、指定信号に起因するノイズが残留振動に重畳することを防止することができる。
このため、クロック信号の生成部への供給を、検出期間の少なくとも一部の期間において実行する場合と比較して、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、上述した液体吐出装置において、前記供給部は、前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、前記クロック信号及び前記指定信号を生成し、生成した前記指定信号を前記クロック信号に同期させて前記生成部に送信する制御を実行することで、前記生成部に対して前記クロック信号及び前記指定信号を供給し、前記検出期間において、前記クロック信号を前記生成部に送信しないように制御することで、前記生成部に対する前記クロック信号及び前記指定信号の供給を停止する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、クロック信号が生成部に供給される期間以外の期間において、吐出部に生じる残留振動を検出するため、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、上述した液体吐出装置において、前記供給部は、前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、前記クロック信号及び前記指定信号を生成し、生成した前記指定信号を前記クロック信号に同期させて前記生成部に送信する制御を実行することで、前記生成部に対して前記クロック信号及び前記指定信号を供給し、前記検出期間において、前記クロック信号を生成しないことで、前記生成部に対する前記クロック信号及び前記指定信号の供給を停止する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、クロック信号が生成部に供給される期間以外の期間において、吐出部に生じる残留振動を検出するため、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、本発明に係るヘッドユニットは、駆動信号に応じて駆動されるする圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、を備え、前記検出部は、前記単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、前記生成部は、前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、クロック信号が供給されると共に、前記指定信号が前記クロック信号に同期して供給され、前記単位期間のうち前記検出期間において、前記クロック信号の供給が停止される、ことを特徴とする。
この発明によれば、クロック信号が生成部に供給される期間以外の期間において、吐出部に生じる残留振動を検出するため、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記生成部に対してクロック信号を供給し、前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給し、前記単位期間のうち検出期間において、前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止するとともに、前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出し、前記残留振動の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する、ことを特徴とする。
この発明によれば、クロック信号が生成部に供給される期間以外の期間において、吐出部に生じる残留振動を検出するため、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御プログラムは、駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、コンピュータと、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、前記コンピュータを、前記生成部に対してクロック信号を供給すると共に、前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給する供給部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する判定部と、して機能させ、前記検出部は、前記単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、前記供給部は、前記単位期間のうち前記検出期間において、前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止する、ことを特徴とする。
この発明によれば、クロック信号が生成部に供給される期間以外の期間において、吐出部に生じる残留振動を検出するため、吐出部における液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
本発明の実施形態に係る印刷システム100の構成の概要を示すブロック図である。 インクジェットプリンター1の概略的な部分断面図である。 記録ヘッド30の概略的な断面図である。 記録ヘッド30におけるノズルNの配置例を示す平面図である。 駆動信号Vinを供給した時の吐出部Dの断面形状の変化を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動を表す単振動のモデルを示す回路図である。 吐出部Dにおける吐出状態が正常である場合の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。 吐出部D内部に気泡が混入した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部D内部への気泡が混入した状態における残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ノズルN付近のインクが固着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 ノズルN付近のインクの固着によりインクを吐出できなくなった状態における残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 ノズルNの出口付近への紙粉の付着によりインクを吐出できなくなった状態における残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 駆動信号生成部51の構成を示すブロック図である。 デコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。 駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。 駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。 駆動信号Vinの波形を表すタイミングチャートである。 残留振動検出部52と切替部53と吐出状態判定部40の構成を示すブロック図である。 計測部41の動作を示すタイミングチャートである。 判定情報RSを説明するための説明図である。 変形例1に係る駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。 変形例1に係る駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<A.実施形態>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
<1.印刷システムの概要>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。
図1は、インクジェットプリンター1を具備する印刷システム100の構成を示す機能ブロック図である。印刷システム100は、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューター9と、インクジェットプリンター1と、を備える。
ホストコンピューター9は、インクジェットプリンター1において形成(印刷)すべき画像を示す印刷データImgと、インクジェットプリンター1が形成すべき画像の印刷部数Wcpを示す部数情報CPと、を出力する。
インクジェットプリンター1は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgの示す画像を、部数情報CPの示す印刷部数Wcpだけ記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。以下では、インクジェットプリンター1が、印刷データImg及び部数情報CPを受信してから、当該印刷データImgの示す画像を部数情報CPの示す印刷部数Wcpだけ形成する印刷処理の実行が完了するまでの一連の処理を、印刷ジョブと称する場合がある。
なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1がラインプリンターである場合を例示して説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、インクを吐出する吐出部Dが設けられるヘッドユニット5と、吐出部Dからのインクの吐出状態を判定する吐出状態判定部40(「判定部」の一例)と、ヘッドユニット5に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送機構7と、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御部6と、インクジェットプリンター1の制御プログラムやその他の情報を記憶する記憶部60と、吐出部Dにおいて吐出異常が生じたことが検出された場合に当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常に回復させるメンテナンス処理を実行する回復機構80と、液晶ディスプレイやLEDランプ等で構成されエラーメッセージ等を表示する表示部、及び、インクジェットプリンター1の利用者がインクジェットプリンター1に各種コマンド等を入力するための操作部を具備する表示操作部82と、を備える。
ここで、吐出異常とは、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となること、換言すれば、吐出部Dが具備するノズルN(後述する図3及び図4を参照)からインクを正確に吐出することのできない状態の総称である。
より具体的には、吐出異常とは、吐出部Dがインクを吐出できない状態、吐出部Dからインクを吐出できる場合であってもインクの吐出量が少ないために印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量のインクを吐出部Dが吐出できない状態、吐出部Dから印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量以上のインクが吐出されてしまう状態、吐出部Dから吐出されるインクが印刷データImgの示す画像を形成するために予定された着弾位置とは異なる位置に着弾する状態、等を含む。
また、メンテナンス処理とは、吐出部DのノズルN近傍に付着した紙粉等の異物をワイパー(図示省略)により拭き取るワイピング処理、吐出部Dからインクを予備的に吐出させるフラッシング処理、吐出部D内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプ(図示省略)により吸引する吸引処理等、吐出部Dのインクの吐出状態を正常に戻すための処理の総称である。
図2は、インクジェットプリンター1の内部構成の概略を例示する一部断面図である。
図2に示すように、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット5を搭載するキャリッジ32を備える。キャリッジ32には、ヘッドユニット5の他に、4個のインクカートリッジ31が搭載されている。
4個のインクカートリッジ31は、ブラック(BK)、シアン(CY)、マゼンタ(MG)、及び、イエロー(YL)の、4色(CMYK)と1対1に対応して設けられたものであり、各インクカートリッジ31には、当該インクカートリッジ31に対応する色のインクが充填されている。なお、各インクカートリッジ31は、キャリッジ32に搭載される代わりに、インクジェットプリンター1の別の場所に設けられるものであってもよい。
図1に示すように、搬送機構7は、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる搬送モーター71と、搬送モーター71を駆動するためのモータードライバー72と、を備える。
また、搬送機構7は、図2に示すように、キャリッジ32の下側(図2において−Z方向)に設けられるプラテン74と、搬送モーター71の作動により回転する搬送ローラー73と、図2においてY軸回りに回転自在に設けられたガイドローラー75と、記録用紙Pをロール状に巻き取った状態で収納するための収納部76と、を備える。
搬送機構7は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合に、記録用紙Pを、収納部76から繰り出して、ガイドローラー75、プラテン74、及び、搬送ローラー73により規定される搬送経路に沿って、図において+X方向(上流側から下流側へ向かう方向)に対して搬送速度Mvで搬送する。
記憶部60は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)と、印刷処理等の各種処理を実行する際に必要なデータを一時的に格納し、あるいは印刷処理等の各種処理を実行するための制御プログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)と、インクジェットプリンター1の各部を制御するための制御プログラムを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるPROMと、を備える。
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)等を含んで構成され、当該CPU等が記憶部60に記憶されている制御プログラムに従って動作することで、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
制御部6は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImg等に基づいて、ヘッドユニット5及び搬送機構7を制御することにより、記録用紙Pに印刷データImgに応じた画像を形成する印刷処理の実行を制御する。
具体的には、制御部6は、まず、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgを記憶部60に格納する。
次に、制御部6は、印刷データImg等の記憶部60に格納されている各種データに基づいて、ヘッドユニット5の動作を制御して吐出部Dを駆動させるための印刷信号SI(「指定信号」の一例)及び駆動波形信号Com等の信号を生成する。また、制御部6は、ヘッドユニット5の動作を制御するためのクロック信号CLを生成する。
また、制御部6は、印刷信号SIや、記憶部60に格納されている各種データに基づいて、モータードライバー72の動作を制御するための信号を生成し、これら生成した各種信号を出力する。なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る駆動波形信号Comは、駆動波形信号Com-A及びCom-Bを含む。
このように、制御部6は、モータードライバー72の制御を介して、記録用紙Pを+X方向に搬送するように搬送モーター71を駆動し、また、ヘッドユニット5の制御を介して、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を制御する。これにより、制御部6は、記録用紙Pに吐出されたインクにより形成されるドットサイズ及びドット配置を調整し、印刷データImgに対応する画像を記録用紙Pに形成する印刷処理の実行を制御する。
また、詳細は後述するが、制御部6は、各吐出部Dからのインクの吐出状態が正常であるか否かを判定する吐出状態判定処理の実行を制御する。
図1に示すように、ヘッドユニット5は、M個の吐出部Dを具備する記録ヘッド30と、記録ヘッド30が具備する各吐出部Dを駆動するヘッドドライバー50と、を備える(本実施形態において、Mは4以上の自然数)。
なお、以下では、M個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。また、以下では、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と表現する場合がある(変数mは、1≦m≦Mを満たす自然数)。
M個の吐出部Dの各々は、4個のインクカートリッジ31のいずれか1つからインクの供給を受ける。各吐出部Dは、インクカートリッジ31から供給されたインクを内部に充填し、充填したインクを、当該吐出部Dが具備するノズルNから吐出することができる。そして、各吐出部Dは、搬送機構7が記録用紙Pをプラテン74上に搬送するタイミングで、記録用紙Pに対してインクを吐出することで、記録用紙Pに画像を形成する。これにより、M個の吐出部Dから全体としてCMYKの4色のインクを吐出することができ、フルカラー印刷が実現される。
ヘッドドライバー50は、駆動信号生成部51(「生成部」の一例)、残留振動検出部52(「検出部」の一例)、及び、切替部53を備える。
駆動信号生成部51は、制御部6が出力する印刷信号SI、クロック信号CL、及び、駆動波形信号Com等、制御部6から供給される信号に基づいて、記録ヘッド30が備えるM個の吐出部Dの各々を駆動するための駆動信号Vinを生成し、生成した駆動信号Vinを切替部53を介して吐出部Dに供給する。各吐出部Dは、駆動信号Vinが供給されると、供給された駆動信号Vinに基づいて駆動され、内部に充填したインクを記録用紙Pに対して吐出することができる。
残留振動検出部52は、吐出部Dが駆動信号Vinにより駆動された後に当該吐出部Dに生じる残留振動を、残留振動信号Voutとして検出する。そして、残留振動検出部52は、検出した残留振動信号Voutに対して、ノイズ成分を除去したり、信号レベルを増幅させる等の処理を施すことで、整形波形信号Vdを生成し、生成した整形波形信号Vdを、吐出部Dにおける残留振動の検出結果として出力する。
切替部53は、制御部6から供給される切替制御信号Swに基づいて、各吐出部Dを、駆動信号生成部51または残留振動検出部52のいずれか一方に電気的に接続させる。
なお、本実施形態において、駆動信号生成部51、残留振動検出部52、及び、切替部53は、ヘッドユニット5に設けられる基板上の電子回路として実装される。
図1に示すように、制御部6は、制御部6が生成する各種信号のうち、クロック信号CL及び印刷信号SIについては、ヘッドユニット5の外部に設けられた送信部83と、ヘッドユニット5に設けられた受信部84と、を介して駆動信号生成部51に供給する。また、制御部6は、制御部6が生成する各種信号のうち、クロック信号CL及び印刷信号SI以外の信号、例えば、駆動波形信号Comについては、送信部83及び受信部84を経由せずに駆動信号生成部51に供給する。
また、制御部6は、送信部83から受信部84に対してデータを送信するか否かを制御するための送信制御信号Ctr-Cを、送信部83に対して供給する。これにより、制御部6は、送信部83から受信部84に対する、クロック信号CL及び印刷信号SIの送信を制御する。
なお、本実施形態では、送信部83及び受信部84として、例えば、LVDS(Low voltage differential signaling)を用いたシリアルインタフェースを採用する。そして、送信部83及び受信部84は、クロック信号CLを、例えば、7逓倍してデータを伝送する。このため、送信部83及び受信部84の間で、高速でのデータ伝送が可能となる。
吐出状態判定部40は、残留振動検出部52が出力する整形波形信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RSを生成する。
なお、本実施形態において、吐出状態判定部40は、ヘッドユニット5とは異なる場所に設けられる基板上の電子回路として実装される。
<2.記録ヘッドの構成>
図3及び図4を参照しつつ、記録ヘッド30と、記録ヘッド30に設けられる吐出部Dと、について説明する。
図3は、記録ヘッド30の、概略的な一部断面図の一例である。なお、この図では、図示の都合上、記録ヘッド30のうち、当該記録ヘッド30が有するM個の吐出部Dの中の1個の吐出部Dと、当該1個の吐出部Dにインク供給口360を介して連通するリザーバ350と、インクカートリッジ31からリザーバ350にインクを供給するためのインク取り入れ口370と、を示している。
図3に示すように、吐出部Dは、圧電素子300と、内部にインクが充填されたキャビティ320(「圧力室」の一例)と、キャビティ320に連通するノズルNと、振動板310と、を備える。吐出部Dは、圧電素子300が駆動信号Vinにより駆動されることにより、キャビティ320内のインクをノズルNから吐出させる。吐出部Dのキャビティ320は、凹部を有するような所定の形状に成形されたキャビティプレート340と、ノズルNが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。キャビティ320は、インク供給口360を介してリザーバ350と連通している。リザーバ350は、インク取り入れ口370を介して1個のインクカートリッジ31と連通している。
本実施形態では、圧電素子300として、例えば、図3に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。なお、圧電素子300は、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型など、圧電素子300を変形させてインク等の液体を吐出させることができるものであれば良い。
圧電素子300は、下部電極301と、上部電極302と、下部電極301及び上部電極302の間に設けられた圧電体303と、を有する。そして、下部電極301の電位が所定の基準電位VSSに設定され、上部電極302に駆動信号Vinが供給されることで、下部電極301及び上部電極302の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子300が図において上下方向に撓み(変位し)、その結果、圧電素子300が振動する。
キャビティプレート340の上面開口部には、振動板310が設置され、振動板310には、下部電極301が接合されている。このため、圧電素子300が駆動信号Vinにより振動すると、振動板310も振動する。そして、振動板310の振動によりキャビティ320の容積(キャビティ320内の圧力)が変化し、キャビティ320内に充填されたインクがノズルNより吐出される。インクの吐出によりキャビティ320内のインクが減少した場合、リザーバ350からインクが供給される。また、リザーバ350へは、インクカートリッジ31からインク取り入れ口370を介してインクが供給される。
図4は、+Z方向または−Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、記録ヘッド30に設けられたM個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。
図4に示すように、記録ヘッド30には、複数のノズルNからなるノズル列Ln-BKと、複数のノズルNからなるノズル列Ln-CYと、複数のノズルNからなるノズル列Ln-MGと、複数のノズルNからなるノズル列Ln-YLと、からなる4列のノズル列Lnが設けられている。なお、ノズル列Ln-BKに属する複数のノズルNの各々は、ブラック(BK)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-CYに属する複数のノズルNの各々は、シアン(CY)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-MGに属する複数のノズルNの各々は、マゼンタ(MG)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-YLに属する複数のノズルNの各々は、イエロー(YL)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNである。また、4列のノズル列Lnの各々は、平面視したときに、+Y方向または−Y方向(以下、+Y方向及び−Y方向をY軸方向と総称する)に延在するように設けられている。そして、各ノズル列LnがY軸方向に延在する範囲YNLは、記録用紙P(正確には、記録用紙Pのうち、Y軸方向の幅がインクジェットプリンター1の印刷可能な最大の幅の記録用紙P)を印刷する場合に、当該記録用紙Pの有するY軸方向の範囲YP以上となる。
図4に示すように、各ノズル列Lnを構成する複数のノズルNは、図において左側(−Y側)から偶数番目のノズルNと奇数番目のノズルNのX軸方向の位置が互いに異なるように、所謂、千鳥状に配置されている。各ノズル列Lnにおいて、ノズルN間のY軸方向の間隔(ピッチ)は、印刷解像度(dpi:dot per inch)に応じて適宜設定され得る。
また、本実施形態における印刷処理では、記録用紙Pの全域に亘るような長尺状の1つの画像を形成するのではなく、図4に示すように、記録用紙Pを複数の印刷領域(例えば、記録用紙PにA4サイズの画像を印刷する場合における当該A4サイズの矩形の領域や、ラベル用紙におけるラベル)と、これら複数の印刷領域のそれぞれを区画するための余白領域と、に分割したうえで、複数の印刷領域と1対1に対応する複数の画像を形成する場合を想定する。
<3.吐出部の動作と残留振動>
次に、吐出部Dからのインク吐出動作と、吐出部Dに生じる残留振動と、について、図5乃至図13を参照しながら説明する。
図5は、吐出部Dからのインク吐出動作を説明するための説明図である。
図5(a)に示す状態において、吐出部Dが備える圧電素子300に対してヘッドドライバー50から駆動信号Vinが供給されると、当該圧電素子300において、電極間に印加された電界に応じた歪が発生し、当該吐出部Dの振動板310は図において上方向へ撓むように変位する。これにより、図5(a)に示す初期状態と比較して、図5(b)に示すように、当該吐出部Dのキャビティ320の容積が拡大する。図5(b)に示す状態において、駆動信号Vinの示す電位を変化させると、振動板310は、その弾性復元力によって復元し、初期状態における振動板310の位置を越えて図において下方向に変位し、図5(c)に示すようにキャビティ320の容積が急激に収縮する。このときキャビティ320内に発生する圧縮圧力により、キャビティ320を満たすインクの一部が、このキャビティ320に連通しているノズルNからインク滴として吐出される。
各吐出部Dの振動板310は、この一連のインク吐出動作が終了した後、次のインク吐出動作を開始するまでの間、減衰振動、すなわち、残留振動をする。吐出部Dの振動板310に生じる残留振動は、ノズルNやインク供給口360の形状あるいはインクの粘度等による音響抵抗Resと、流路内のインク重量によるイナータンスIntと、振動板310のコンプライアンスCmと、によって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。
上記想定に基づく吐出部Dの振動板310に生じる残留振動の計算モデルについて説明する。
図6は、振動板310の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。このように、振動板310の残留振動の計算モデルは、音圧Prsと、上述のイナータンスInt、コンプライアンスCm及び音響抵抗Resとで表せる。そして、図6の回路に音圧Prsを与えた時のステップ応答を体積速度Uvについて計算すると、次式が得られる。
Uv={Prs/(ω・Int)}e−σt・sin(ωt)
ω={1/(Int・Cm)−γ}1/2
σ=Res/(2・Int)
この式から得られた計算結果(計算値)と、別途行った吐出部Dの残留振動の実験における実験結果(実験値)とを比較する。なお、残留振動の実験とは、インクの吐出状態が正常である吐出部Dからインクを吐出させた後に、当該吐出部Dの振動板310において生じる残留振動を検出する実験である。
図7は、残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。図7に示すグラフからも分かるように、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常である場合、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
さて、吐出部Dがインク吐出動作を行ったにもかかわらず、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常であり、当該吐出部DのノズルNからインク滴が正常に吐出されない場合、即ち吐出異常が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、(1)キャビティ320内への気泡の混入、(2)キャビティ320内のインクの乾燥等に起因するキャビティ320内のインクの増粘または固着、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着、等が挙げられる。
上述のとおり、吐出異常とは、典型的にはノズルNからインクを吐出できない状態となること、即ちインクの不吐出現象が現れ、その場合、記録用紙Pに印刷した画像における画素のドット抜けを生じる。また、上述のとおり、吐出異常の場合には、ノズルNからインクが吐出されたとしても、インクの量が過少であったり、吐出されたインク滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。
以下においては、図7に示す比較結果に基づいて、吐出部Dにおいて生じる吐出異常の原因別に、残留振動の計算値と実験値が概ね一致するように、音響抵抗Res及びイナータンスIntのうち少なくとも一方の値を調整する。
まず、吐出異常の原因の1つである、(1)キャビティ320内への気泡の混入について検討する。図8は、キャビティ320内に気泡が混入した場合を説明するための概念図である。図8に示すように、キャビティ320内に気泡が混入した場合には、キャビティ320内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスIntが低下するものと考えられる。また、図8に例示するように、気泡がノズルN付近に付着している場合には、その径の大きさだけノズルNの径が大きくなったと看做される状態となり、音響抵抗Resが低下するものと考えられる。
従って、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Res及びイナータンスIntを小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図9のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図9に示すように、キャビティ320内に気泡が混入して吐出異常が生じた場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。なお、音響抵抗Resの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
次に、吐出異常の原因の1つである、(2)キャビティ320内のインクの増粘または固着について検討する。図10は、キャビティ320のノズルN付近のインクが乾燥により固着した場合を説明するための概念図である。図10に示すように、ノズルN付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ320内のインクは、キャビティ320内に閉じこめられたような状況となる。このような場合、音響抵抗Resが増加するものと考えられる。
従って、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルN付近のインクが固着または増粘した場合の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図11のような結果(グラフ)が得られた。なお、図11に示す実験値は、数日間図示しないキャップを装着しない状態で吐出部Dを放置し、ノズルN付近のインクが固着した状態における当該吐出部Dが備える振動板310の残留振動を測定したものである。図7及び図11に示すように、キャビティ320内のノズルN付近のインクが固着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な波形が得られる。これは、インクを吐出するために振動板310が+Z方向(上方)に引き寄せられることによって、キャビティ320内にリザーバからインクが流入した後に、振動板310が−Z方向(下方)に移動するときに、キャビティ320内のインクの逃げ道がないために、振動板310が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
次に、吐出異常の原因の1つである、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着について検討する。図12は、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合を説明するための概念図である。図12に示すように、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ320内から紙粉を介してインクが染み出してしまうとともに、ノズルNからインクを吐出することができなくなる。ノズルNの出口付近に紙粉が付着し、ノズルNからインクが染み出している場合には、振動板310から見てキャビティ320内から染み出した分のインクが、吐出状態が正常の場合よりも増えることにより、イナータンスIntが増加するものと考えられる。また、ノズルNの出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗Resが増大するものと考えられる。
従って、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、イナータンスInt及び音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルNの出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図13のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図13のグラフから分かるように、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。
なお、図11及び図13に示すグラフから、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着の場合は、(2)キャビティ320内のインクの増粘の場合と比較して、残留振動の周波数が高いことが分かる。
ここで、(2)インクの増粘の場合と、(3)ノズルNの出口付近への紙粉付着の場合とでは、いずれも、インクの吐出状態が正常である場合に比べて残留振動の周波数が低くなっている。これら2つの吐出異常の原因は、残留振動の波形、具体的には、残留振動の周波数または周期を、予め定められた閾値を持って比較することで、区別することができる。
以上の説明から明らかなように、各吐出部Dを駆動したときに生じる残留振動の波形、特に、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dの吐出状態を判定することができる。より具体的には、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dにおける吐出状態が正常であるか否かについて、及び、各吐出部Dにおける吐出状態が異常である場合に当該吐出異常の原因が上述した(1)〜(3)のうち何れに該当するかについて、判定することができる。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、残留振動を解析して吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する。
<4.ヘッドドライバーの構成及び動作>
次に、図14乃至図21を参照しつつ、ヘッドドライバー50(駆動信号生成部51、残留振動検出部52、及び、切替部53)と、吐出状態判定部40とについて説明する。
<4.1.駆動信号生成部>
図14は、ヘッドドライバー50のうち駆動信号生成部51の構成を示すブロック図である。
図14に示すように、駆動信号生成部51は、シフトレジスタSR、ラッチ回路LT、デコーダーDC、並びに、トランスミッションゲートTGa及びTGbからなる組を、M個の吐出部Dに1対1に対応するようにM個有する。以下では、これらM個の組を構成する各要素を、図において上から順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。
駆動信号生成部51には、制御部6から、クロック信号CL、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、駆動波形信号Com(Com-A、Com-B)が供給される。
駆動波形信号Com(Com-A、Com-B)は、吐出部Dを駆動するための波形を複数含む信号である。
駆動信号生成部51は、印刷信号SIに基づいて、駆動波形信号Comの有する複数の波形から各吐出部Dに供給すべき波形を選択し、選択した波形を有する駆動信号Vinを生成して、生成した駆動信号Vinを各吐出部Dに対して供給する。
ここで、印刷信号SIは、駆動波形信号Comの有する複数の波形から各吐出部Dに供給すべき波形を指定する信号である。具体的には、印刷信号SIは、各吐出部Dに供給すべき駆動波形信号Comの波形を、上位ビットb1及び下位ビットb2の2ビットで指定するデジタルの信号であり、制御部6からクロック信号CLに同期して、駆動信号生成部51に例えばシリアルで供給される。
以下では、印刷信号SIのうち、吐出部D[m]に供給すべき駆動波形信号Comの波形を指定する2ビット分の信号を、印刷信号SI[m]と称する。また、以下では、駆動信号Vinのうち、印刷信号SI[m]による指定に基づいて生成され、吐出部D[m]に対して供給される駆動信号Vinを、駆動信号Vin[m]と称する。
すなわち、駆動信号生成部51は、駆動波形信号Comの有する複数の波形の中から、印刷信号SI[m]が指定に基づいて、吐出部D[m]に供給すべき波形を選択し、当該選択した波形に基づいて、駆動信号Vin[m]を生成し、生成した駆動信号Vin[m]を吐出部D[m]に供給する。
上述のとおり、吐出部D[m]は、駆動信号Vin[m]により駆動される。そして、駆動信号Vin[m]の波形は、印刷信号SI[m]による指定に基づいて、駆動波形信号Comの有する波形から選択された波形である。つまり、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、吐出部D[m]がインクを吐出する場合のインク量、その他の吐出部D[m]の駆動の態様は、印刷信号SI[m]により規定される。
具体的には、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合、印刷信号SI[m]は、吐出部D[m]が画像の1ドットを形成するにあたり、吐出部D[m]から吐出させるインク量を規定する。印刷信号SI[m]により、吐出部D[m]から吐出されるインク量を制御することで、記録用紙Pの各ドットにおいて、非記録、小ドット、中ドット、及び、大ドットの4階調を表現することが可能となる。
また、インクジェットプリンター1が吐出状態判定処理を実行する場合、印刷信号SIは、吐出状態判定処理の対象となる吐出部D[m]に対して供給される駆動信号Vin[m]の波形として、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態の判定を可能とする残留振動を生じさせるような波形を指定する。
シフトレジスタSRは、シリアルで供給された印刷信号SI(SI[1]〜SI[M])を、各吐出部Dに対応する2ビット毎に一旦保持する構成を有する。具体的には、シフトレジスタSRは、M個の吐出部Dに1対1に対応する、1段、2段、…、M段のM個のシフトレジスタSRが互いに縦続接続されるとともに、シリアルで供給された印刷信号SIが、クロック信号CLに従って順次後段に転送される。そして、M個のシフトレジスタSRの全てに印刷信号SIが転送されると、M個のシフトレジスタSRのそれぞれが、印刷信号SIのうち自身に対応する2ビット分のデータを保持した状態を維持する。以下では、m段のシフトレジスタSRをシフトレジスタSR[m]と称する場合がある。
M個のラッチ回路LTのそれぞれは、ラッチ信号LATが立ち上がるタイミングで、M個のシフトレジスタSRのそれぞれに保持された、各段に対応する2ビット分の印刷信号SI[m]を一斉にラッチする。すなわち、m段のラッチ回路LTは、シフトレジスタSR[m]により保持された印刷信号SI[m]をラッチする。
ところで、インクジェットプリンター1が、印刷処理、及び、吐出状態判定処理のうち、少なくとも一方の処理を実行する期間である動作期間は、複数の単位期間Tuから構成される。
また、本実施形態において、単位期間Tuは、印刷処理が実行される単位期間Tuである単位印刷動作期間Tu-P(図16参照)と、吐出状態判定処理が実行される単位期間Tuである単位判定動作期間Tu-T(図17参照)と、の2種類の単位期間Tuに分類される。
上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、長尺状の記録用紙Pを複数の印刷領域と、複数の印刷領域のそれぞれを区画するための余白領域と、に分割したうえで、各印刷領域に対して1つの画像を形成する。
具体的には、制御部6は、動作期間を構成する複数の単位期間Tuのうち、記録ヘッド30の下側(−Z側)に記録用紙Pの印刷領域の少なくとも一部が位置する期間を、単位印刷動作期間Tu-Pに分類し、当該単位印刷動作期間Tu-Pにおいて印刷処理が実行されるようにインクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
一方、制御部6は、動作期間を構成する複数の単位期間Tuのうち、記録ヘッド30の下側(−Z側)に、記録用紙Pの余白領域のみが位置する期間を、単位判定動作期間Tu-Tに分類し、当該単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理が実行されるようにインクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
制御部6は、駆動信号生成部51に対して単位期間Tu(単位印刷動作期間Tu-P、単位判定動作期間Tu-T)毎に印刷信号SIを供給するとともに、単位期間Tu毎にラッチ回路LTが印刷信号SI[1]、SI[2]、…、SI[M]をラッチするようなラッチ信号LATを供給する。すなわち、制御部6は、M個の吐出部Dに対して単位期間Tu毎に駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部51を制御する。
より具体的には、制御部6は、複数の単位期間Tuのうち、印刷処理が実行される単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、各吐出部D[m]に対して、各吐出部D[m]が、印刷データImgに応じた量のインクを記録用紙Pに吐出して記録用紙P上に印刷データImgに対応する画像を形成する印刷処理を実行するための印刷処理用の駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部51を制御する。
また、制御部6は、複数の単位期間Tuのうち、吐出状態判定処理が実行される単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出状態判定処理の対象となる吐出部D[m]に対して、当該吐出部D[m]において吐出異常が生じているか否かを判定する吐出状態判定処理を実行するための吐出状態判定処理用の駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部51を制御する。
なお、本実施形態において、制御部6は、チェンジ信号CHにより、単位期間Tuのうち単位印刷動作期間Tu-Pを、制御期間Ts1とこれに後続する制御期間Ts2とに区分する。制御期間Ts1及びTs2は、互いに等しい時間長を有する。
デコーダーDCは、ラッチ回路LTによってラッチされた2ビット分の印刷信号SI[m]をデコードし、選択信号Sa及びSbを出力する。
図15は、各単位期間TuにおいてデコーダーDCが行うデコードの内容を示す説明図である。このうち、図15(A)は、印刷処理が実行される単位印刷動作期間Tu-PにおいてデコーダーDCが行うデコードの内容を示し、図15(B)は、吐出状態判定処理が実行される単位判定動作期間Tu-TにおいてデコーダーDCが行うデコードの内容を示している。
図15(A)に示すように、各デコーダーDCは、単位印刷動作期間Tu-Pにおいては、制御期間Ts1及びTs2のそれぞれにおいて、選択信号Sa及びSbを出力する。例えば、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、印刷信号SI[m]の示す内容が、(b1、b2)=(1、0)である場合、m段のデコーダーDCは、制御期間Ts1において、選択信号SaをハイレベルHに設定するとともに選択信号SbをローレベルLに設定し、制御期間Ts2において、選択信号SbをハイレベルHに設定するとともに選択信号SaをローレベルLに設定する。
また、図15(B)に示すように、各デコーダーDCは、単位判定動作期間Tu-Tにおいては、各単位期間Tuにおいて、単一の選択信号Sa及びSbを出力する。例えば、単位期間Tuにおいて、印刷信号SI[m]の示す内容が、(b1、b2)=(1、1)である場合、m段のデコーダーDCは、当該単位期間Tuにおいて、選択信号SaをハイレベルHに維持するとともに選択信号SbをローレベルLに維持する。
図14に示すように、駆動信号生成部51は、トランスミッションゲートTGa及びTGbの組をM個備える。M個のトランスミッションゲートTGa及びTGbの組は、M個の吐出部Dに1対1に対応するように設けられる。トランスミッションゲートTGaは、選択信号SaがHレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフする。トランスミッションゲートTGbは、選択信号SbがHレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフする。
例えば、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、印刷信号SI[m]の示す内容が、(b1、b2)=(1、0)である場合には、制御期間Ts1においてトランスミッションゲートTGaがオンするとともにトランスミッションゲートTGbがオフし、また、制御期間Ts2においてトランスミッションゲートTGbがオンするとともにトランスミッションゲートTGaがオフする。
図14に示すように、トランスミッションゲートTGaの一端には駆動波形信号Com-Aが供給され、トランスミッションゲートTGbの一端には駆動波形信号Com-Bが供給される。また、トランスミッションゲートTGa及びTGbの他端は、切替部53への出力端OTNに共通接続されている。
図15からも明らかなように、トランスミッションゲートTGa及びTGbは排他的にオンするように制御される。従って、動作期間の各タイミングにおいて、m段のトランスミッションゲートTGa及びTGbは、駆動波形信号Com-A及びCom-Bのうち何れか一方を、m段の出力端OTNに出力する。すなわち、駆動信号生成部51は、印刷信号SI[m]に基づいて生成する選択信号Sa及びSbにより、m段のトランスミッションゲートTGa及びTGbのオンオフを制御することで、駆動波形信号Com-AまたはCom-Bを選択し、選択した駆動波形信号Comを、駆動信号Vin[m]として吐出部D[m]に供給する。
<4.2.駆動波形信号>
図16及び図17は、各単位期間Tuにおいて制御部6が駆動信号生成部51に供給する各種信号と、各単位期間Tuにおける駆動信号生成部51の動作と、を説明するためのタイミングチャートである。
このうち、図16は、印刷処理が実行される単位印刷動作期間Tu-Pにおける、駆動信号生成部51に供給される信号及び駆動信号生成部51の動作の一例を示し、図17は、吐出状態判定処理が実行される単位判定動作期間Tu-Tにおける、駆動信号生成部51に供給される信号及び駆動信号生成部51の動作の一例を示す。
なお、図16及び図17では、図示の都合上、M=4の場合を例示している。
図16及び図17に示すように、制御部6が出力するラッチ信号LATは、単位期間Tuを規定するためのパルスPls-Lを含む。
また、図16に示すように、制御部6が出力するチェンジ信号CHは、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、制御期間Ts1及びTs2を区分するためのパルスPls-Cを含む。
図16及び図17に示すように、制御部6は、各単位期間Tuのうち印刷信号転送期間Tfwにおいて、印刷信号SIをクロック信号CLに同期させて駆動信号生成部51に供給する。そして、シフトレジスタSRは、印刷信号転送期間Tfwにおいて、制御部6から供給された印刷信号SI[m]をクロック信号CLに従って、順次後段に転送する。
より具体的には、図16及び図17に示すように、制御部6は、印刷信号転送期間Tfwにおいて、まず、送信部83に供給する送信制御信号Ctr-Cの電位を、送信部83から受信部84にデータを送信することを指定する電位Vonに設定する。これにより、制御部6は、クロック信号CL及び印刷信号SIを、送信部83及び受信部84を介して駆動信号生成部51に供給可能な状態となるように、送信部83を制御する。
次に、制御部6は、印刷信号転送期間Tfwにおいて、クロック信号CLの周期毎に、印刷信号SIを、SI[M]→SI[M-1]→・・・→SI[2]→SI[1]の順番で、シフトレジスタSR[1]に供給する。そして、シフトレジスタSR[1]に供給された印刷信号SI[m]は、クロック信号CLの周期毎に、シフトレジスタSR[1]→SR[2]→・・・→SR[m]の順番で転送される。このため、制御部6が、単位期間Tuにおいて駆動信号生成部51に供給すべき印刷信号SI(SI[1]〜SI[M])の供給を完了させた印刷信号転送期間Tfwの終了時において、シフトレジスタSR[1]〜SR[M]は、印刷信号SI[1]〜SI[M]を保持する。その後、ラッチ回路LTは、ラッチ信号LATとしてパルスPls-Lが供給されるタイミングで、シフトレジスタSR[1]〜SR[M]が保持する印刷信号SI[1]〜SI[M]をラッチする。
一方、制御部6は、単位期間Tuのうち印刷信号転送期間Tfw以外の期間においては、印刷信号SI及びクロック信号CLを駆動信号生成部51に対して供給しない。
より具体的には、図16及び図17に示すように、制御部6は、印刷信号転送期間Tfw以外の期間において、送信部83に供給する送信制御信号Ctr-Cの電位を、送信部83から受信部84にデータを送信しないことを指定する電位Voffに設定する。これにより、制御部6は、印刷信号転送期間Tfw以外の期間において、駆動信号生成部51に対するクロック信号CL及び印刷信号SIの供給を停止する。
図16及び図17に示すように、本実施形態において、制御部6が出力する駆動波形信号Com-Aの波形は、単位印刷動作期間Tu-Pと単位判定動作期間Tu-Tとで異なる。制御部6は、記憶部60に記憶される設定パラメータ(図示省略)を参照する等して、駆動波形信号Com-Aの波形を選択する。
以下では、駆動波形信号Com-Aのうち、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて制御部6が出力する信号を、印刷用駆動波形信号Com-AP(図16参照)と称する。また、駆動波形信号Com-Aのうち、単位判定動作期間Tu-Tにおいて制御部6が出力する信号を、判定用駆動波形信号Com-AT(図17参照)と称する。
図16に例示するように、単位印刷動作期間Tu-Pに制御部6が出力する印刷用駆動波形信号Com-APは、制御期間Ts1に設けられた波形PA1と、制御期間Ts2に設けられた波形PA2と、を有する信号である。
波形PA1は、波形PA1の信号が駆動信号Vinとして吐出部Dに供給されると当該吐出部Dから中ドットに相当する中程度の量のインクが吐出されるような波形である。
波形PA2は、波形PA2の信号が駆動信号Vinとして吐出部Dに供給されると当該吐出部Dから小ドットに相当する小程度の量のインクが吐出されるような波形である。
例えば、波形PA1の最低電位Va11と最高電位Va12との電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも大きくなるように定められている。
図16及び図17に例示するように、単位期間Tu(単位印刷動作期間Tu-P及び単位判定動作期間Tu-T)に制御部6が出力する駆動波形信号Com-Bは、波形PB(「微振動波形」の一例)を有する信号である。波形PBは、波形PBの信号が駆動信号Vinとして吐出部Dに供給された場合にも当該吐出部Dからインクが吐出されないような波形である。つまり、波形PBは、吐出部D内部のインクに微振動を与えてインクの増粘を防止するための波形である。例えば、波形PBの最低電位Vb11と最高電位(この図では基準電位V0)との電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも小さくなるように定められている。
図17に例示するように、単位判定動作期間Tu-Tにおいて、制御部6が出力する判定用駆動波形信号Com-ATは、波形PTを有する信号である。
本実施形態において、波形PTは、吐出部D[m]に残留振動を生じさせるように吐出部D[m]を駆動する波形PT1と、吐出部D[m]が波形PT1を有する駆動信号Vin[m]により駆動された後に吐出部D[m]に生じる残留振動を維持するための波形PT2とを含む。
波形PT1は、波形PT1を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給された場合に、吐出部D[m]からインクを吐出させないような波形である。例えば、波形PT1の最低電位VcLと最高電位である検出電位VcTとの電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも小さくなるように定められている。つまり、本実施形態に係る吐出状態判定処理は、インクを吐出させないように吐出部Dを駆動したときに当該吐出部Dにおいて生じる残留振動に基づいて吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する、所謂「非吐出検査」である場合を想定する。
但し、波形PT1は、波形PT1を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給された場合に、吐出部D[m]からインクが吐出されるような波形であってもよい。つまり、吐出状態判定処理は、「吐出検査」として実行されるものであってもよい。
波形PT2は、検出電位VcTに保たれた平坦な波形である。当該波形PT2を供給することで、吐出部D[m]に残留振動が生じた後に、当該残留振動に対して駆動信号Vin[m]に起因する振動がノイズとして重畳することを防止し、波形PT1により生じた残留振動を正確に検出することが可能となる。
残留振動検出部52は、判定用駆動波形信号Com-ATとして波形PT2の信号が供給されている期間のうちの一部の期間である検出期間Tdにおいて、吐出部D[m]に生じた残留振動を残留振動信号Voutとして検出する。なお、検出期間Tdは、本実施形態では、検出期間指定信号Tsigが所定の検出期間指定電位VHighである期間として規定される。
また、図16及び図17に示すように、単位期間Tuのうち検出期間Tdの終了から単位期間Tuの終了までの期間を、検出後期間Tlt(「第1期間」の一例)と称し、単位期間Tuのうち単位期間Tuの開始から検出期間Tdの開始までの期間を、検出前期間Tpr(「第2期間」の一例)と称する。
この図に示すように、本実施形態に係る印刷信号転送期間Tfwは、検出後期間Tltに含まれるように設けられる。換言すれば、制御部6は、各単位判定動作期間Tu-Tにおいて、駆動信号生成部51に対して、印刷信号転送期間Tfwの終了後に印刷信号SIを供給する。
また、本実施形態では、波形PBは、検出後期間Tltに設けられる。
<4.3.駆動信号>
次に、図18を参照しつつ、単位期間Tuにおいて駆動信号生成部51が出力する駆動信号Vinについて説明する。
単位印刷動作期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(b1、b2)=(1、1)である場合、制御期間Ts1において選択信号SaがHレベルとなり、トランスミッションゲートTGaがオンして駆動波形信号Com-Aが選択され、波形PA1が駆動信号Vin[m]として出力される。同様に、制御期間Ts2においても、駆動波形信号Com-Aが選択され、波形PA2が駆動信号Vin[m]として出力される。よって、印刷信号SI[m]が(b1、b2)=(1、1)である場合、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PA1及び波形PA2を含むこととなる。この結果、吐出部D[m]は、波形PA1に基づく中程度の量のインクと、波形PA2に基づく小程度の量のインクと、を吐出し、これら2度にわたり吐出されたインクが合体して、記録用紙P上に大ドットを形成する。
単位印刷動作期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(b1、b2)=(1、0)である場合、制御期間Ts1において駆動波形信号Com-Aが選択され、制御期間Ts2において駆動波形信号Com-Bが選択されるため、吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PA1及び波形PBを含む。この結果、吐出部D[m]は、波形PA1に基づく中程度の量のインクを吐出し、記録用紙P上に中ドットを形成する。
単位印刷動作期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(b1、b2)=(0、1)である場合、制御期間Ts1において駆動波形信号Com-Bが選択され、制御期間Ts2において駆動波形信号Com-Aが選択されるため、吐出部D[m]に供給される印刷処理用の駆動信号Vin[m]は、波形PA2を含む。この結果、吐出部D[m]は、波形PA2に基づく小程度の量のインクを吐出し、記録用紙P上に小ドットを形成する。
単位印刷動作期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(b1、b2)=(0、0)である場合、制御期間Ts1及びTs2において駆動波形信号Com-Bが選択され、吐出部D[m]に供給される印刷処理用の駆動信号Vin[m]は、波形PBを含む。この結果、吐出部D[m]からはインクの吐出がなされず、記録用紙P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
一方、制御部6が単位判定動作期間Tu-Tにおいて出力する印刷信号SI[m]は、(b1、b2)=(1、1)または(0、0)である。より具体的には、制御部6は、吐出部D[m]を単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理の対象とする場合には、印刷信号SI[m]を(1、1)とし、吐出部D[m]を単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理の対象としない場合には、印刷信号SI[m]を(0、0)とする。
よって、単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、吐出部D[m]が単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理の対象となる場合には、判定用駆動波形信号Com-ATとなり、吐出部D[m]が単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理の対象とならない場合には、駆動波形信号Com-Bとなる。
<4.4.切替部及び残留振動検出部>
図19は、ヘッドドライバー50に設けられた切替部53及び残留振動検出部52の構成の一例と、吐出状態判定部40の構成の一例と、を示すブロック図である。
図19に例示するように、切替部53は、M個の吐出部Dに1対1に対応する1段〜M段のM個の切替回路Ux(Ux[1]、Ux[2]、…、Ux[M])を備える。
m段の切替回路Ux[m]は、吐出部D[m]の圧電素子300の上部電極302を、駆動信号生成部51が備えるm段の出力端OTN、または、残留振動検出部52のいずれか一方に電気的に接続する。
以下では、切替回路Ux[m]が、吐出部D[m]と駆動信号生成部51のm段の出力端OTNとを電気的に接続している状態を第1の接続状態と称する。また、切替回路Ux[m]が、吐出部D[m]と残留振動検出部52とを電気的に接続している状態を第2の接続状態と称する。
制御部6は、各切替回路Uxの接続状態を制御するための切替制御信号Swを、各切替回路Uxに対して出力する。
具体的には、制御部6は、印刷処理が実行される単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、切替回路Ux[m]が単位印刷動作期間Tu-Pの全期間に亘って第1の接続状態を維持するような切替制御信号Sw[m]を、切替回路Ux[m]に供給する。このため、吐出部D[m]には、単位印刷動作期間Tu-Pの全期間に亘って、駆動信号生成部51から駆動信号Vin[m]が供給される。
また、制御部6は、吐出状態判定処理が実行される単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]が、吐出状態判定処理の対象となる場合、切替回路Ux[m]が、当該単位判定動作期間Tu-Tのうち、検出期間Td以外の期間において第1の接続状態となり、検出期間Tdにおいて第2の接続状態となるような切替制御信号Sw[m]を、切替回路Ux[m]に供給する。
このため、単位判定動作期間Tu-Tにおいて吐出部D[m]が吐出状態判定処理の対象である場合、当該単位判定動作期間Tu-Tのうち検出期間Td以外の期間において、駆動信号生成部51から吐出部D[m]に対して駆動信号Vin[m]が供給され、当該単位判定動作期間Tu-Tのうち検出期間Tdにおいて、吐出部D[m]から残留振動検出部52に対して残留振動信号Voutが供給される。
他方、制御部6は、単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]が吐出状態判定処理の対象ではない場合、切替回路Ux[m]が、当該単位判定動作期間Tu-Tの全期間に亘って第1の接続状態を維持するような切替制御信号Sw[m]を、切替回路Ux[m]に供給する。
このため、単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]が吐出状態判定処理の対象ではない場合、吐出部D[m]には、単位判定動作期間Tu-Tの全期間に亘って、駆動信号生成部51から駆動信号Vin[m]が供給される。
なお、本実施形態では、図19に示すように、インクジェットプリンター1が、M個の吐出部Dに対して、1個の残留振動検出部52のみを備え、また、各残留振動検出部52は、1つの単位期間Tuにおいて、1個の吐出部Dに生じる残留振動のみを検出可能である場合を想定する。すなわち、本実施形態に係る制御部6は、1つの単位判定動作期間Tu-Tにおいて、M個の吐出部Dの中から1個の吐出部Dを吐出状態判定処理の対象として選択し、選択された吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定するようにインクジェットプリンター1の各部を制御する。
このため、制御部6は、各単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出状態判定処理の対象として選択された吐出部Dを、当該単位判定動作期間Tu-Tの検出期間Tdにおいて第2の接続状態として、残留振動検出部52に電気的に接続するように、切替制御信号Swを生成する。
図19に示す残留振動検出部52は、上述のとおり、残留振動信号Voutに基づいて整形波形信号Vdを生成する。ここで、整形波形信号Vdとは、残留振動信号Voutからノイズ成分を除去し、更に、ノイズ成分が除かれた残留振動信号Voutの振幅を吐出状態判定部40における処理に適した振幅に調整した信号である。
残留振動検出部52は、例えば、ハイパスフィルターやローパスフィルター等を備え、残留振動信号Voutの周波数範囲を限定しノイズ成分を除去した整形波形信号Vdを出力可能な構成を含む。また、残留振動検出部52は、残留振動信号Voutの振幅を調整するための負帰還型のアンプや、残留振動信号Voutのインピーダンスを変換してローインピーダンスの整形波形信号Vdを出力するためのボルテージフォロアなどを含む構成であってもよい。
<4.5.吐出状態判定部>
図19に示す吐出状態判定部40は、残留振動検出部52の出力する整形波形信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定情報RSを生成する。
吐出状態判定部40は、図19に示すように、計測部41と、判定情報生成部42と、を備える。計測部41は、残留振動検出部52の出力する整形波形信号Vdに基づいて、吐出部Dに生じる残留振動の1周期分の時間長を計測し、当該計測結果を示す計測信号Tcを生成する。また、計測部41は、生成した計測信号Tcが有効な値であるか否かを示す有効性フラグFlagを生成する。判定情報生成部42は、計測部41の出力する計測信号Tc及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態の判定結果を示す判定情報RSを出力する。
図19に示すように、計測部41には、残留振動検出部52が出力する整形波形信号Vdと、制御部6が生成するマスク信号Mskと、整形波形信号Vdの振幅中心レベルの電位に定められた閾値電位Vth-Cと、閾値電位Vth-Cよりも高電位に定められた閾値電位Vth-Oと、閾値電位Vth-Cよりも低電位に定められた閾値電位Vth-Uと、が供給される。
図20は、計測部41の動作を示すタイミングチャートである。
この図に示すように、計測部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth-Cとを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-C以上となる場合にハイレベルとなり、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-C未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp1を生成する。また、計測部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth-Oとを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-O以上となる場合にハイレベルとなり、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-O未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp2を生成する。また、計測部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth-Uとを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-U未満となる場合にハイレベルとなり、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth-U以上となる場合にハイレベルとなる比較信号Cmp3を生成する。
マスク信号Mskは、残留振動検出部52からの整形波形信号Vdの供給が開始されてから所定の期間Tmskの間だけハイレベルとなる信号である。本実施形態では、整形波形信号Vdのうち、期間Tmskの経過後の整形波形信号Vdのみを対象として計測信号Tcを生成することで、残留振動の開始直後に重畳するノイズ成分を除去した精度の高い計測信号Tcを得ることができる。
計測部41は、カウンタ(図示省略)を備える。当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、整形波形信号Vdの示す電位が最初に閾値電位Vth-Cと等しくなるタイミングである時刻t1において、クロック信号(図示省略)のカウントを開始する。すなわち、当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、比較信号Cmp1が最初にハイレベルに立ち上がるタイミング、または、比較信号Cmp1が最初にローレベルに立ち下がるタイミングのうち、早い方のタイミングである時刻t1において、カウントを開始する。
そして、当該カウンタは、カウントを開始した後において、整形波形信号Vdの示す電位が、2度目に閾値電位Vth-Cとなるタイミングである時刻t2においてクロック信号のカウントを終了させて、得られたカウント値を計測信号Tcとして出力する。すなわち、当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、比較信号Cmp1が2度目にハイレベルに立ち上がるタイミング、または、比較信号Cmp1が2度目にローレベルに立ち下がるタイミングのうち、早い方のタイミングである時刻t2において、カウントを終了する。このように、計測部41は、時刻t1から時刻t2までの時間長を、整形波形信号Vdの1周期分の時間長として計測することで、計測信号Tcを生成する。
ところで、図20において破線で示すように整形波形信号Vdの振幅が小さい場合には、正確に計測信号Tcを計測できない可能性が高くなる。また、整形波形信号Vdの振幅が小さい場合には、仮に計測信号Tcの結果のみに基づいて吐出部Dの吐出状態が正常であると判断される場合であっても、実際には吐出異常が生じている可能性が存在する。例えば、整形波形信号Vdの振幅が小さい場合、キャビティ320にインクが注入されていないことによりインクを吐出できない状態であること等が考えられる。
そこで、本実施形態は、整形波形信号Vdの振幅が、計測信号Tcの計測のために十分な大きさを有しているか否かを判定し、当該判定の結果を有効性フラグFlagとして出力する。
具体的には、計測部41は、カウンタによりカウントが実行されている期間、つまり、時刻t1から時刻t2までの期間において、整形波形信号Vdの示す電位が、閾値電位Vth-Oを超え、且つ、閾値電位Vth-Uを下回る場合に、有効性フラグFlagの値を、計測信号Tcが有効であることを示す値「1」に設定し、それ以外の場合には「0」に設定したうえで、当該有効性フラグFlagを出力する。より詳細には、計測部41は、時刻t1から時刻t2までの期間において、比較信号Cmp2がローレベルからハイレベルに立ち上がった後再びローレベルに立下り、且つ、比較信号Cmp3がローレベルからハイレベルに立ち上がった後再びローレベルに立下る場合に、有効性フラグFlagの値を「1」に設定し、それ以外の場合に、有効性フラグFlagの値を「0」に設定する。
このように、本実施形態に係る計測部41は、整形波形信号Vdの1周期分の時間長を示す計測信号Tcを生成するのに加え、整形波形信号Vdが計測信号Tcの計測のために十分な大きさの振幅を有しているか否かを示す有効性フラグFlagを生成するため、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
図19に示す判定情報生成部42は、計測部41が出力する計測信号Tc及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RSを生成する。
図21は、判定情報生成部42における判定の内容を説明するための説明図である。
この図に示すように、判定情報生成部42は、計測信号Tcの示す時間長を、閾値Tth1、閾値Tth1よりも長い時間長を表す閾値Tth2、及び、閾値Tth2よりも更に長い時間長を表す閾値Tth3の3つの閾値(または、これら3つの閾値うちの一部の閾値)と比較する。
ここで、閾値Tth1は、キャビティ320内部に気泡が発生して残留振動の周波数が高くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。
また、閾値Tth2は、ノズルN出口付近に紙粉等の異物が付着して残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。
また、閾値Tth3は、ノズルN付近におけるインクの増粘または固着により、紙粉等の異物が付着する場合よりもさらに残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、ノズルN出口付近に紙粉等の異物が付着した場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。
図21に示すように、判定情報生成部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、計測信号Tcが「Tth1≦Tc≦Tth2」を満たす場合には、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常であると判定し、判定情報RSに、吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。
また、判定情報生成部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、計測信号Tcが「Tc<Tth1」を満たす場合には、キャビティ320に生じた気泡により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RSに、気泡による吐出異常が発生していることを示す値「2」を設定する。
また、判定情報生成部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、計測信号Tcが「Tth2<Tc≦Tth3」を満たす場合には、ノズルN出口付近に付着した紙粉等の異物により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RSに、紙粉等の異物の付着による吐出異常が発生していることを示す値「3」を設定する。
また、判定情報生成部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、計測信号Tcが「Tth3<Tc」を満たす場合には、キャビティ320内のインクの増粘により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RSに、インク増粘による吐出異常が発生していることを示す値「4」を設定する。
また、判定情報生成部42は、有効性フラグFlagの値が「0」である場合には、判定情報RSに、インクが注入されていない等のなんらかの原因により吐出異常が発生していることを示す値「5」を設定する。
以上のように、判定情報生成部42は、計測信号Tc及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部Dにおける吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RSを生成する。
制御部6は、判定情報生成部42が出力する判定情報RSを、当該判定情報RSに対応する吐出部Dの段数と対応付けて、記憶部60に記憶させる。このため、M個の吐出部Dの中で、どの吐出部Dにおいて吐出異常が生じているかを把握することが可能となる。これにより、吐出異常の生じている吐出部Dの個数や、吐出異常の生じている吐出部Dの位置等を考慮して、メンテナンス処理を適切なタイミングで実行することが可能となる。従って、印刷処理において形成される画質が、吐出部Dにおける吐出異常に起因して劣化することを防止することが可能となる。
<5.実施形態の結論>
上述のとおり、印刷信号SIは、クロック信号CLに同期して供給され、クロック信号CLの周期毎に後段のシフトレジスタSRに転送される。このため、各段のシフトレジスタSRの電位は、クロック信号CLの周期で変動する。また、制御部6から駆動信号生成部51に印刷信号SIを供給するための配線の電位や、制御部6から駆動信号生成部51にクロック信号CLを供給するための配線の電位も、クロック信号CLの周期で変動する。このような、クロック信号CL及び印刷信号SIの供給に伴う電位の変動は、寄生容量等を介して、ヘッドドライバー50の各部にノイズとして伝播する可能性がある。
一方、クロック信号CL及び印刷信号SIが供給される駆動信号生成部51と、残留振動信号Voutが供給される残留振動検出部52と、残留振動信号Voutを残留振動検出部52に伝送する切替部53とは、いずれもヘッドユニット5のヘッドドライバー50に設けられている。このため、クロック信号CL及び印刷信号SIの供給に伴い生じるノイズが、駆動信号生成部51から残留振動検出部52または切替部53へと伝播し、残留振動信号Voutに重畳する場合がある。
残留振動信号Voutは、圧電素子300が振動することによる圧電素子300の起電力の変化を示す信号であり、例えば駆動波形信号Com等に比べると小振幅の信号である。よって、残留振動信号Voutにノイズが重畳した場合、残留振動信号Voutは、吐出部Dにおいて生じる残留振動を正確に表せなくなる可能性があり、このようなノイズが重畳した残留振動信号Voutに基づいて生成された判定情報RSは、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に表すものではない可能性が高くなる。
これに対して、本実施形態では、吐出部Dにおいて生じる残留振動を検出するための検出期間Td以外の期間において、クロック信号CL及び印刷信号SIを駆動信号生成部51に供給する。このため、クロック信号CL及び印刷信号SIを駆動信号生成部51に供給することに伴いノイズが生じる場合であっても、当該ノイズが残留振動信号Voutに重畳することを防止することができる。これにより、残留振動信号Voutが吐出部Dに生じる残留振動を正確に表すことが可能となり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、本実施形態に係る駆動波形信号Comが有する波形PBは、単位期間Tuのうち、検出期間Tdよりも後の検出後期間Tltに設けられる。このため、単位判定動作期間Tu-Tにおいて、吐出部Dに波形PBを供給して、当該吐出部Dに微振動を生じさせた場合であっても、吐出状態判定処理の対象となる吐出部Dに対して当該微振動の影響が及ぶことを排除することができる。
これにより、吐出状態判定処理の対象となる吐出部Dにおいて、波形PT1による吐出部Dを駆動することで生じる残留振動のみの検出が可能となり、残留振動自体にノイズが重畳することを防止することが可能となる。このため、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
なお、制御部6は、クロック信号CL及び印刷信号SIを駆動信号生成部51に供給する処理と、送信制御信号Ctr-Cを送信部83に供給する処理と、のうち少なくとも一方を実行することで「供給部」として機能する。
<B.変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。
なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
<変形例1>
上述した実施形態において、制御部6は、単位判定動作期間Tu-Tのうち、検出期間Tdよりも後の期間である検出後期間Tltに印刷信号転送期間Tfwを設け、当該印刷信号転送期間Tfwにおいてクロック信号CL及び印刷信号SIを駆動信号生成部51に供給するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、印刷信号転送期間Tfwは、検出期間Td以外の任意の期間に設けられるものであればよい。
例えば、図22に例示するように、検出前期間Tprに印刷信号転送期間Tfwを設けてもよい。図22に例示するような、検出前期間Tprに印刷信号転送期間Tfwを設ける場合、検出後期間Tltに印刷信号転送期間Tfwを設ける場合(図17参照)と比較して、単位期間Tuの開始から検出期間Tdの開始までの時間長を長くすることができる。このため、一の単位期間Tuにおいて吐出部D[m]の残留振動を検出する場合、当該一の単位期間Tuに先行する単位期間Tuに吐出部D[m]が駆動されて振動が生じても、一の単位期間Tuの検出期間Tdの開始(または、吐出部D[m]に対する波形PT1の供給が開始される時刻)までに、先行する単位期間Tuにおいて吐出部D[m]に生じた振動を小さく抑えることができる。よって、図22に示す態様によれば、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが容易となる。
また、例えば、図23に示すように、検出前期間Tprと検出後期間Tltとの両方に、印刷信号転送期間Tfwを設けてもよい。具体的には、制御部6は、検出前期間Tprに設けられた印刷信号転送期間Tfw1と、検出後期間Tltに設けられた印刷信号転送期間Tfw2と、の双方の期間において、クロック信号CL及び印刷信号SIを供給してもよい。
検出前期間Tpr及び検出前期間Tprの両方に印刷信号転送期間Tfwを設ける場合、検出前期間Tprまたは検出前期間Tprの何れか一方に印刷信号転送期間Tfwを設ける場合と比較して、印刷信号転送期間Tfwの時間長を長くすることができる。このため、例えば、吐出部Dの個数が多く印刷信号SIの供給に要する時間が長い場合や、印刷速度が速く単位期間Tuの時間長が短い場合であっても、印刷信号SIの供給が容易となる。つまり、図23に示す態様によれば、吐出部Dの個数の増加や印刷速度の高速化に対応した印刷信号SIの供給が可能となる。
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例において、制御部6(供給部)は、印刷信号転送期間Tfw以外の期間において、送信制御信号Ctr-Cを電位Voffに設定して、送信部83から受信部84へのデータ送信が行われないように送信部83を制御することで、クロック信号CL及び印刷信号SIの駆動信号生成部51への供給を停止したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、制御部6は、印刷信号転送期間Tfw以外の期間において、クロック信号CLを生成しないことで、クロック信号CLと、クロック信号CLに同期して送信される印刷信号SIと、の駆動信号生成部51への供給を停止してもよい。
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例では、単位判定動作期間Tu-Tにおいてのみ吐出状態判定処理を実行し、単位印刷動作期間Tu-Pにおいては吐出状態判定処理を実行しないが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、単位印刷動作期間Tu-Pにおいて吐出状態判定処理を実行してもよい。
例えば、図16に示す単位印刷動作期間Tu-Pにおいて、印刷用駆動波形信号Com-APとして波形PA1が供給され、印刷用駆動波形信号Com-APの電位が最高電位Va12を維持する期間のうちの一部の期間を検出期間Tdとし、当該検出期間Tdにおいて吐出部Dの残留振動を検出してもよい。この場合、印刷信号転送期間Tfwは、検出期間Td以外の期間、例えば、印刷用駆動波形信号Com-APとして波形PA2が供給されている期間に設ければよい。
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、1個の残留振動検出部52と、1個の吐出状態判定部40と、を備え、1つの単位期間Tuに1個の吐出部Dを対象とした吐出状態判定処理を実行するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、1つの単位期間Tuに2個以上の吐出部Dを対象とした吐出状態判定処理を実行できる構成を有するものであってもよい。
例えば、インクジェットプリンター1は、複数の残留振動検出部52を具備し、各単位期間Tuにおいて、複数の吐出部Dからの残留振動信号Voutを同時に検出可能な構成を有していてもよい。そして、この場合、吐出状態判定部40は、複数の残留振動検出部52が出力する複数の整形波形信号Vdに基づいて、複数の吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定することができる構成であることが好ましい。例えば、吐出状態判定部40は、複数の残留振動検出部52に対応する、複数の計測部41及び複数の判定情報生成部42を具備するものであればよい。
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例において、吐出状態判定部40は電子回路として実装されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、吐出状態判定部40の一部または全部は、制御部6がインクジェットプリンター1の制御プログラムを実行することにより実現される機能ブロックとして実装されてもよい。
具体的には、吐出状態判定部40の全部、つまり、計測部41及び判定情報生成部42を、制御部6により実現される機能ブロックとして実装してもよい。また、例えば、吐出状態判定部40のうち判定情報生成部42を、制御部6により実現される機能ブロックとして実装してもよい。これらの場合、制御部6は、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する「判定部」として機能する。
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、範囲YNLが範囲YPを含むようにノズル列Lnが設けられるラインプリンターであるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、記録ヘッド30が、Y軸方向に往復動して印刷処理を実行するシリアルプリンターであってもよい。
<変形例7>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合に、例えば、1枚の長尺状の記録用紙Pを、Wcp個の印刷領域と、印刷領域同士を区分する余白領域とに分割し、Wcp個の印刷領域に1対1に対応するWcp個の画像を形成するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、記録用紙Pの全体に1つの画像を形成してもよい。
この場合、例えば、記録用紙Pは、A4サイズの用紙のように、矩形の形状を有するものであってもよい。そして、この場合、印刷処理において、搬送機構7が、複数の記録用紙Pを間欠的にプラテン74上に供給し、プラテン74上に供給されている1枚の記録用紙Pに対して1つの画像が形成すればよい。また、この場合、インクジェットプリンター1は、一の記録用紙Pがプラテン74から搬出されてから、当該一の記録用紙Pの後に最初に他の記録用紙Pがプラテン74上に供給されるまでの期間(つまり、プラテン74上に記録用紙Pが存在しない期間)において、吐出状態判定処理を実行することが好ましい。
<変形例8>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、CMYKの4色のインクを吐出可能であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、少なくとも1色以上のインクを吐出可能であればよく、またインクの色もCMYK以外の色であってもよい。
また、上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、記録ヘッド30において少なくとも4個の吐出部Dを具備する(つまり、M≧4である)が、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、少なくとも1個の吐出部Dを具備すればよい(つまり、Mは1以上の自然数であればよい)。
<変形例9>
上述した実施形態及び変形例において、駆動波形信号Comは、駆動波形信号Com-A及びCom-Bを含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、駆動波形信号Comは、1つの信号、例えば、駆動波形信号Com-Aのみを含む信号でもよく、3以上の信号、例えば、駆動波形信号Com-A、Com-B、Com-Cを含む信号でもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、駆動波形信号Comは、複数の波形を含む信号であるが、少なくとも1つの波形を含む信号であればよい。例えば、駆動波形信号Comが駆動波形信号Com-Aのみからなり、また、駆動波形信号Com-Aが波形PA1のみを有するような態様でもよい(図16参照)。
また、駆動信号生成部51は、吐出部Dからインクを吐出させる場合や、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する場合には、駆動信号Vinとして駆動波形信号Comを吐出部Dに供給し、吐出部Dからインクを吐出させない場合には、駆動波形信号Comを選択しないことにより、吐出部Dに供給される駆動信号Vinの電位を一定の電位に保つように動作するものであってもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、印刷信号SI[m]は2ビットの信号であるが、印刷信号SI[m]のビット数は、表示すべき階調や、単位期間Tuに含まれる制御期間Tsの個数、駆動波形信号Comに含まれる信号の個数等に応じて適宜決定すればよい。
<変形例10>
上述した実施形態及び変形例において、ヘッドドライバー50は、1個の駆動信号生成部51を具備し、当該駆動信号生成部51には、単一の種類の駆動波形信号Comが供給されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、ヘッドドライバー50は、例えば、吐出部Dが吐出するインク色毎に設けられた複数の駆動信号生成部51を備え、制御部6は、ヘッドドライバー50に対して、これら複数の駆動信号生成部51に1対1に対応する複数種類の駆動波形信号Comを供給してもよい。
1・・・インクジェットプリンター、5・・・ヘッドユニット、6・・・制御部、7・・・搬送機構、9・・・ホストコンピューター、30・・・記録ヘッド、40・・・吐出状態判定部、50・・・ヘッドドライバー、51・・・駆動信号生成部、52・・・残留振動検出部、53・・・切替部、60・・・記憶部、71・・・搬送モーター、72・・・モータードライバー、80・・・回復機構、82・・・表示操作部、83・・・送信部、84・・・受信部、100・・・印刷システム、300・・・圧電素子、320・・・キャビティ、D・・・吐出部、N・・・ノズル。

Claims (6)

  1. 駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、
    1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、
    前記生成部に対してクロック信号を供給すると共に、前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給する供給部と、
    前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する判定部と、
    を備え、
    前記検出部は、
    単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、
    前記供給部は、
    前記単位期間のうち前記検出期間において、前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止する、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記供給部は、
    前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、
    前記クロック信号及び前記指定信号を生成し、生成した前記指定信号を前記クロック信号に同期させて前記生成部に送信する制御を実行することで、前記生成部に対して前記クロック信号及び前記指定信号を供給し、
    前記検出期間において、
    前記クロック信号を前記生成部に送信しないように制御することで、前記生成部に対する前記クロック信号及び前記指定信号の供給を停止する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記供給部は、
    前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、
    前記クロック信号及び前記指定信号を生成し、生成した前記指定信号を前記クロック信号に同期させて前記生成部に送信する制御を実行することで、前記生成部に対して前記クロック信号及び前記指定信号を供給し、
    前記検出期間において、
    前記クロック信号を生成しないことで、前記生成部に対する前記クロック信号及び前記指定信号の供給を停止する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  4. 駆動信号に応じて駆動されるする圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、
    1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、
    前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、
    を備え、
    前記検出部は、
    単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、
    前記生成部は、
    前記単位期間のうち前記検出期間以外の期間の一部または全部において、クロック信号が供給されると共に、前記指定信号が前記クロック信号に同期して供給され、
    前記単位期間のうち前記検出期間において、前記クロック信号の供給が停止される、
    ことを特徴とするヘッドユニット。
  5. 駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、
    1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、
    を備える液体吐出装置の制御方法であって、
    前記生成部に対してクロック信号を供給し、
    前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給し、
    検出期間において、
    前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止するとともに、前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出し、
    前記残留振動の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する、
    ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
  6. 駆動信号に応じて変位する圧電素子、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室、及び、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出可能なノズル、を具備する吐出部と、
    1または複数の波形を有する駆動波形信号、及び、前記駆動波形信号の有する1または複数の波形から前記圧電素子に供給すべき波形を指定する指定信号に基づいて、前記駆動信号を生成する生成部と、
    前記圧電素子が前記駆動信号に応じて変位した後に前記吐出部に生じる残留振動を検出する検出部と、
    コンピュータと、
    を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
    前記コンピュータを、
    前記生成部に対してクロック信号を供給すると共に、前記生成部に対して前記指定信号を前記クロック信号に同期させて供給する供給部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて前記吐出部における前記液体の吐出状態を判定する判定部と、
    して機能させ、
    前記検出部は、
    単位期間のうち検出期間において、前記残留振動を検出し、
    前記供給部は、
    前記単位期間のうち前記検出期間において、
    前記生成部に対する前記クロック信号の供給を停止する、
    ことを特徴とする液体吐出装置の制御プログラム。

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