JP2016179629A - 液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム - Google Patents

液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム Download PDF

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俊行 鈴木
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Abstract

【課題】吐出部からのインクの吐出状態の判定の精度を高める。
【解決手段】吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、M個(Mは2以上の自然数)の吐出部を具備する記録ヘッドと、M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、M個の吐出部のうち、駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、検出部の検出結果に基づいて、検出部が残留振動を検出した吐出部に対応した検出信号を生成する検出信号生成部と、記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号に基づいて、一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、一の吐出部に対応する検出信号、及び、一の吐出部に対応する第1基準信号に基づいて、一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、を備える、ことを特徴とする、液体吐出装置。
【選択図】図26

Description

本発明は、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラムに関する。
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、記録ヘッドに設けられた吐出部を駆動信号により駆動し、吐出部のキャビティ(圧力室)に充填されたインク等の液体を吐出させることで、記録媒体上に画像を形成する。このような液体吐出装置において、液体の増粘や、キャビティへの気泡混入等により、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。そして、吐出異常が生じると、吐出部から吐出される液体により媒体に形成される予定のドットを正確に形成できなくなり、液体吐出装置が形成する画像の画質が低下する。
特許文献1には、吐出部を駆動した後に吐出部に生じる残留振動に基づいて、吐出部における液体の吐出状態を判定することで、吐出異常による画質の低下を予防する技術が提案されている。
特開2004−276544号公報
ところで、吐出部に生じる残留振動の特性は、記録ヘッドにおける吐出部の位置や、吐出部の製造誤差等に起因してバラツキが生じる。このため、吐出状態の判定において用いる判定基準を、バラツキ考慮せずに定めると、例えば、吐出状態が正常な吐出部に対して、吐出異常が生じていると誤判定してしまうことがある。逆に、バラツキを許容するように、当該判定基準を緩やかにすると、例えば、吐出状態が異常な吐出部に対して、吐出状態が正常であると誤判定してしまうことがある。このように、吐出部の製造誤差等に起因する残留振動の特性のバラツキにより、吐出状態を正常に判定できないことがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、吐出部からの液体の吐出状態の判定の精度を高めることを可能とする技術を提供することを、解決課題の一つとする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、M個(Mは2以上の自然数)の前記吐出部を具備する記録ヘッドと、前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応した検出信号を生成する検出信号生成部と、前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、を備える、ことを特徴とする。
すなわち、本発明に係る液体吐出装置は、吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、M個(Mは2以上の自然数)の前記吐出部を具備する記録ヘッドと、前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応する検出信号を生成する検出信号生成部と、一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部とは異なる他の吐出部に対応する検出信号に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、ことを特徴としてもよい。
この発明によれば、吐出部毎に個別に生成される第1基準信号の示す値に基づく判定基準を用いて、各吐出部の吐出状態の判定を行うことができる。このため、残留振動の特性が吐出部間でバラつく場合であっても、当該バラツキを考慮した吐出状態の判定が可能となる。これにより、吐出部における吐出状態の判定を精度良く行うことが可能となる。
また、上述した液体吐出装置において、前記検出信号は、前記吐出部に生じる残留振動の周期に応じた値を示し、前記基準信号生成部は、前記α個の検出信号から、β個(βは2≦β≦αを満たす自然数)の検出信号を選択し、当該β個の検出信号の示す値の平均値に基づいて前記第1基準信号を生成する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、検出信号の示す値の平均として、簡易な計算により第1基準信号を生成することができる。
また、上述した液体吐出装置において、前記基準信号生成部は、前記α個の検出信号から、前記α個の検出信号の示す値の最大値との差分が所定値よりも大きい値を示す検出信号を除外することで、前記β個の検出信号を選択する、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、吐出異常が生じている可能性の高い吐出部に対応する検出信号を用いずに、第1基準信号を生成する。このため、吐出異常の生じている吐出部が存在する場合であっても、吐出異常の影響を排除して、吐出状態が正常な吐出部に生じる残留振動の特性に応じた値を示す第1基準信号を生成することができる。これにより、残留振動の特性の吐出部毎でのバラツキが生じている場合であっても、当該バラツキを考慮した吐出状態の判定が可能となる。
また、上述した液体吐出装置において、前記一の吐出部は、前記吐出状態判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が正常であると判定した場合、前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、Q個(Qは2≦Q<Mを満たす自然数)のランクのうちの何れかのランクに分類され、前記吐出状態判定部は、前記一の吐出部に対応する第1基準信号の代わりに、前記一の吐出部が属するランクに応じて定められる第2基準信号に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能である、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、ランク毎に定められる第2基準信号の示す値に基づく判定基準を用いて吐出状態の判定を行うことができるため、吐出部毎に定められる第1基準信号の示す値に基づく判定基準のみを用いて吐出状態の判定を行う場合と比較して、吐出状態の判定に要する処理負荷を軽減することが可能となる。
また、この態様によれば、第1基準信号を用いた吐出状態の判定において、吐出状態が正常であると判定された吐出部のみを対象とした、ランク分けを行う。このため、吐出異常の生じている吐出部が存在する場合であっても、吐出異常の影響を排除して、吐出状態が正常な吐出部に生じる残留振動の特性に対応した適切なランクへの割り当てか可能となる。このれにより、残留振動の特性の吐出部毎でのバラツキが生じている場合であっても、当該バラツキを考慮したランク毎の吐出状態の判定が可能となる。
また、上述した液体吐出装置は、前記吐出状態判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合に、前記一の吐出部に充填されている液体を排出させる回復機構を備え、前記吐出状態判定部は、前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定する場合、前記回復機構が、前記一の吐出部に充填されている液体を排出させ、前記一の吐出部に液体が再充填された後に、前記一の吐出部への液体の再充填後に前記検出信号生成部が生成する前記一の吐出部に対応する検出信号と、前記一の吐出部に対応する第1基準信号と、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定し、前記一の吐出部は、前記一の吐出部に液体が再充填された後に、前記吐出状態判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が正常であると判定した場合、前記一の吐出部への液体の再充填後に前記検出信号生成部が生成した前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、前記Q個のランクのうち何れかのランクに分類される、ことを特徴としてもよい。
この態様によれば、吐出異常であると判定された吐出部については、クリーニング及び液体の再充填の後に、ランクへの割り当てを行う。このため、吐出異常の影響を排除して、吐出状態が正常な吐出部に生じる残留振動の特性に対応する、適切なランクへの割り当てか可能となる。
また、本発明に係る液体吐出装置は、吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、M個(Mは2以上の自然数)の前記吐出部を具備する記録ヘッドと、前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応した検出信号を生成可能な検出信号生成部と、前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、を備え、前記一の吐出部は、前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、Q個(Qは、2≦Q<Mを満たす自然数)のランクのうちの何れかのランクに分類され、前記吐出状態判定部は、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する第1判定モードと、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部が属するランクに応じて定められる第2基準信号に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する第2判定モードと、による判定の実行が可能である、ことを特徴とする。
この発明によれば、吐出部毎に定められる第1基準信号の示す値に基づく判定基準を用いた第1判定モードによる吐出状態の判定と、ランク毎に定められる第2基準信号の示す値に基づく判定基準を用いた第2判定モードによる吐出状態の判定と、を実行可能である。このため、利用状況に応じた精度での判定が可能となり、液体吐出装置の利用者の利便性の向上を図ることができる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、液体を吐出可能なM個(Mは2以上の自然数)の吐出部を具備する記録ヘッドと、前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応して検出信号を生成可能な検出信号生成部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成し、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する、ことを特徴とする。
この発明によれば、吐出部毎に個別に生成される第1基準信号の示す値に基づく判定基準を用いて、各吐出部の吐出状態の判定を行うことができるため、残留振動の特性が吐出部間でバラつく場合であっても、当該バラツキを考慮した吐出状態の判定が可能となる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御プログラムは、液体を吐出可能なM個(Mは2以上の自然数)の吐出部を具備する記録ヘッドと、前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応して検出信号を生成可能な検出信号生成部と、コンピューターと、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、前記コンピューターを、前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する吐出状態判定部として機能させる、ことを特徴とする。
この発明によれば、吐出部毎に個別に生成される第1基準信号の示す値に基づく判定基準を用いて、各吐出部の吐出状態の判定を行うことができるため、残留振動の特性が吐出部間でバラつく場合であっても、当該バラツキを考慮した吐出状態の判定が可能となる。
本発明の実施形態に係る印刷システム100の構成を示すブロック図である。 インクジェットプリンター1の概略的な部分断面図である。 記録ヘッド3の概略的な断面図である。 記録ヘッド3におけるノズルNの配置例を示す平面図である。 駆動信号Vinを供給した時の吐出部Dの断面形状の変化を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動を表す単振動のモデルを示す回路図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。 吐出部D内部に気泡が混入した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ノズルN付近のインクが固着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 紙粉が付着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 駆動信号生成部51の構成を示すブロック図である。 デコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。 駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。 駆動信号生成部51の動作を示すタイミングチャートである。 駆動信号Vinの波形を示すタイミングチャートである。 接続部53と検出部52の接続関係を説明するための説明図である。 検出信号生成部41の動作を示すタイミングチャートである。 判定情報RSを説明するための説明図である。 個別基準情報テーブルTBL1のデータ構造を示す図である。 ランク基準情報テーブルTBL2のデータ構造を示す図である。 所属ランク情報テーブルTBL3のデータ構造を示す図である。 個別判定モードによる吐出状態判定処理を説明するための説明図である。 個別基準生成処理を示すフローチャートである。 ランク判定モードによる吐出状態判定処理を説明するための説明図である。 ランク基準生成処理を示すフローチャートである。 ランク基準生成処理を示すフローチャートである。 変形例1に係るランク判定モードによる吐出状態判定処理を説明するための説明図である。 変形例1に係るランク基準生成処理を示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<<A.実施形態>>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
<<1.印刷システムの概要>>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成について説明する。
図1は、インクジェットプリンター1を具備する印刷システム100の構成を示す機能ブロック図である。印刷システム100は、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューター9と、インクジェットプリンター1と、を備える。
ホストコンピューター9は、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データImgと、インクジェットプリンター1が形成すべき画像の印刷部数を示す情報と、を出力する。
インクジェットプリンター1は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgの示す画像を、必要な部数だけ記録用紙Pに形成する印刷処理を実行する。なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1がラインプリンターである場合を例示して説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、インクを吐出する吐出部Dが設けられるヘッドユニット10と、吐出部Dからのインクの吐出状態を判定する判定ユニット4と、ヘッドユニット10に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送機構7と、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御部6と、インクジェットプリンター1の制御プログラムやその他の情報を記憶する記憶部60と、吐出部Dにおいて吐出異常が生じたことが検出された場合に当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常に回復させるメンテナンス処理(クリーニング)を実行する回復機構81と、液晶ディスプレイやLEDランプ等で構成されエラーメッセージ等を表示する表示部、及び、インクジェットプリンター1の利用者がインクジェットプリンター1に各種コマンド等を入力するための操作部を具備する表示操作部(図示省略)と、を備える。
なお、詳細は後述するが、本実施形態においては、インクジェットプリンター1が、複数のヘッドユニット10と、複数の判定ユニット4と、を備える場合を想定する。
図2は、インクジェットプリンター1の内部構成の概略を例示する一部断面図である。
図2に示すように、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット10を搭載する搭載機構32を備える。搭載機構32には、ヘッドユニット10の他に、4個のインクカートリッジ31が搭載されている。4個のインクカートリッジ31は、ブラック(BK)、シアン(CY)、マゼンタ(MG)、及び、イエロー(YL)の、4色(CMYK)と1対1に対応して設けられたものであり、各インクカートリッジ31には、当該インクカートリッジ31に対応する色のインクが充填されている。なお、各インクカートリッジ31は、搭載機構32に搭載される代わりに、インクジェットプリンター1の別の場所に設けられるものであってもよい。
本実施形態において、インクジェットプリンター1には、図2に示すように、4個のインクカートリッジ31と1対1に対応するように、4個のヘッドユニット10が設けられている。また、本実施形態において、インクジェットプリンター1には、4個のインクカートリッジ31と1対1に対応するように、4個の判定ユニット4が設けられている。
なお、以下では、ヘッドユニット10及び判定ユニット4について説明する場合、4個のインクカートリッジ31のうち任意の1個のインクカートリッジ31に対応して設けられた、1個のヘッドユニット10及び1個の判定ユニット4に着目して説明するが、当該説明は、他の3個のヘッドユニット10及び3個の判定ユニット4にも同様に該当することとする。
図1に示すように、搬送機構7は、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる搬送モーター71と、搬送モーター71を駆動するためのモータードライバー72と、を備える。また、搬送機構7は、図2に示すように、搭載機構32の下側(図2において−Z方向)に設けられるプラテン74と、搬送モーター71の作動により回転する搬送ローラー73と、図2においてY軸回りに回転自在に設けられたガイドローラー75と、記録用紙Pをロール状に巻き取った状態で収納するための収納部76と、を備える。搬送機構7は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合に、記録用紙Pを、収納部76から繰り出して、ガイドローラー75、プラテン74、及び、搬送ローラー73により規定される搬送経路に沿って、図において+X方向(上流側から下流側へ向かう方向)に対して搬送速度Mvで搬送する。
記憶部60は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)と、印刷処理等の各種処理を実行する際に必要なデータを一時的に格納し、あるいは印刷処理等の各種処理を実行するための制御プログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)と、インクジェットプリンター1の各部を制御するための制御プログラムを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるPROMと、を備える。
なお、記憶部60には、個別基準情報テーブルTBL1、ランク基準情報テーブルTBL2、及び、所属ランク情報テーブルTBL3、が格納されている。これら各種テーブルのについては後述する。
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)等を含んで構成され、当該CPU等が記憶部60に記憶されている制御プログラムに従って動作することで、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
そして、制御部6は、ホストコンピューター9から供給される印刷データImg等に基づいて、ヘッドユニット10及び搬送機構7を制御することにより、記録用紙Pに印刷データImgに応じた画像を形成する印刷処理の実行を制御する。
具体的には、制御部6は、まず、ホストコンピューター9から供給される印刷データImgを記憶部60に格納する。
次に、制御部6は、印刷データImg等の記憶部60に格納されている各種データに基づいて、ヘッドユニット10の動作を制御して吐出部Dを駆動させるための印刷信号SI及び駆動波形信号Com等の信号を生成する。また、制御部6は、ヘッドユニット10の動作を制御するためのクロック信号CLを生成する。
また、制御部6は、印刷信号SIや、記憶部60に格納されている各種データに基づいて、モータードライバー72の動作を制御するための信号を生成し、これら生成した各種信号を出力する。なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る駆動波形信号Comは、駆動波形信号Com-A及びCom-Bを含む。
なお、駆動波形信号Comはアナログの信号である。このため、制御部6は、図示省略したDA変換回路を含み、制御部6が備えるCPU等において生成されるデジタルの駆動波形信号を、アナログの駆動波形信号Comに変換したうえで、出力する。
このように、制御部6は、モータードライバー72の制御を介して、記録用紙Pを+X方向に搬送するように搬送モーター71を駆動し、また、ヘッドユニット10の制御を介して、吐出部Dからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を制御する。これにより、制御部6は、記録用紙Pに吐出されたインクにより形成されるドットサイズ及びドット配置を調整し、印刷データImgに対応する画像を記録用紙Pに形成する印刷処理の実行を制御する。
また、詳細は後述するが、制御部6は、各吐出部Dからのインクの吐出状態が正常であるか否か、すなわち、各吐出部Dにおいて吐出異常が生じていないか否か、を判定する吐出状態判定処理の実行を制御する。
ここで、吐出異常とは、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となること、換言すれば、吐出部Dが具備するノズルN(後述する図3及び図4を参照)からインクを正確に吐出することのできない状態の総称である。より具体的には、吐出異常とは、吐出部Dがインクを吐出できない状態、吐出部Dからインクを吐出できる場合であってもインクの吐出量が少ないために印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量のインクを吐出部Dが吐出できない状態、吐出部Dから印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量以上のインクが吐出されてしまう状態、吐出部Dから吐出されるインクが印刷データImgの示す画像を形成するために予定された着弾位置とは異なる位置に着弾する状態、等を含む。
吐出部Dにおいて吐出異常が生じた場合、回復機構81によるメンテナンス処理により、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常に回復させる。ここで、メンテナンス処理とは、吐出部Dからインクを予備的に吐出させるフラッシング処理、吐出部D内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプ(図示省略)により吸引するポンピング処理等、吐出部D内部のインクを排出して、当該吐出部Dに対してインクカートリッジ31から新たにインクを供給することにより、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常に戻す処理である。
図1に示すように、各ヘッドユニット10は、M個の吐出部Dを具備する記録ヘッド3と、記録ヘッド3が具備する各吐出部Dを駆動するヘッドドライバー5と、を備える(本実施形態において、Mは、3≦Mを満たす自然数)。なお、以下では、M個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。また、以下では、m段の吐出部Dを、吐出部D[m]と表現する場合がある(変数mは、1≦m≦Mを満たす自然数)。
M個の吐出部Dの各々は、当該M個の吐出部Dが設けられているヘッドユニット10に対応するインクカートリッジ31からインクの供給を受ける。各吐出部Dは、インクカートリッジ31から供給されたインクを内部に充填し、充填したインクを、当該吐出部Dが具備するノズルNから吐出することができる。具体的には、各吐出部Dは、搬送機構7が記録用紙Pをプラテン74上に搬送するタイミングで、記録用紙Pに対してインクを吐出することで、画像を構成するためのドットを記録用紙Pに形成する。そして、4個のヘッドユニット10に設けられている4M個の吐出部Dから全体としてCMYKの4色のインクを吐出することで、フルカラー印刷が実現される。
図1に示すように、ヘッドドライバー5は、記録ヘッド3が備えるM個の吐出部Dの各々を駆動するための駆動信号Vinを、各吐出部Dに供給する駆動信号供給部50と、吐出部Dが駆動信号Vinにより駆動された後に当該吐出部Dに生じる残留振動を検出する検出部52と、を備える。
駆動信号供給部50は、駆動信号生成部51(「駆動部」の一例)と、接続部53と、を備える。
駆動信号生成部51は、印刷信号SI、クロック信号CL、及び、駆動波形信号Com等、制御部6から供給される信号に基づいて、記録ヘッド3が備えるM個の吐出部Dの各々を駆動するための駆動信号Vinを生成する。
接続部53は、制御部6から供給される接続制御信号Swに基づいて、各吐出部Dを、駆動信号生成部51または検出部52の、いずれか一方に電気的に接続させる。駆動信号生成部51において生成された駆動信号Vinは、接続部53を介して吐出部Dに供給される。各吐出部Dは、駆動信号Vinが供給されると、供給された駆動信号Vinに基づいて駆動され、内部に充填したインクを記録用紙Pに対して吐出することができる。
検出部52は、吐出部Dが駆動信号Vinにより駆動された後に当該吐出部Dに生じる残留振動を示す残留振動信号Voutを検出する。そして、検出部52は、検出した残留振動信号Voutに対して、ノイズ成分を除去したり、信号レベルを増幅させる等の処理を施すことで、整形波形信号Vdを生成し、生成した整形波形信号Vdを出力する。なお、本実施形態において、駆動信号供給部50、及び、検出部52は、例えば、ヘッドユニット10に設けられる基板上の電子回路として実装される。
判定ユニット4は、検出部52が出力する整形波形信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RSを生成する吐出状態判定処理を実行する。なお、本実施形態において、判定ユニット4は、例えば、ヘッドユニット10とは異なる場所に設けられる基板上の電子回路として実装される。
図1に示すように、判定ユニット4は、検出信号生成部41と、吐出状態判定部42と、を備える。
検出信号生成部41は、検出部52が出力する、整形波形信号Vdと、制御部6が出力する、マスク信号Msk及び閾値電位信号SVthと、に基づいて、吐出部Dにおける残留振動の周期を示す周期信号NTcを生成し、当該周期信号NTcを、吐出部Dにおける残留振動の検出結果を示す信号として出力する。すなわち、本実施形態において、周期信号NTcは、吐出部Dの残留振動の検出結果を示す「検出信号」の一例である。
また、検出信号生成部41は、整形波形信号Vd及び閾値電位信号SVthに基づいて、整形波形信号Vdの振幅が周期信号NTcの生成のために十分な大きさの振幅を有しているか否かを判定し、当該判定の結果を示す有効性フラグFlagを生成する。
吐出状態判定部42は、検出信号生成部41が出力する、周期信号NTc及び有効性フラグFlagと、制御部6が出力する、基準信号STthと、に基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RSを生成する。
なお、以下では、吐出部D[m]における残留振動の周期を示す周期信号NTcを、周期信号NTc[m]と表現し、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を示す判定情報RSを、判定情報RS[m]と表現する場合がある。制御部6が判定ユニット4に対して供給する、閾値電位信号SVth、基準信号STth等の各種信号については後述する。
なお、詳細は後述するが、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、吐出部D毎に個別に設けられた判定基準(以下、「個別判定基準」と称する場合がある)を用いて吐出部Dの吐出状態を判定する、個別判定モード(「第1判定モード」の一例)と、M個の吐出部Dを複数のランクに区分した上でランク毎に定められる判定基準(以下、「ランク判定基準」と称する場合がある)を用いて吐出部Dの吐出状態を判定する、ランク判定モード(「第2判定モード」の一例)と、の2つの判定モードのうち、何れかの判定モードにより、吐出状態判定処理を実行することができる。
制御部6は、個別判定モードによる吐出状態判定処理に用いられる個別判定基準を定めるための、個別基準生成処理と、ランク判定モードによる吐出状態判定処理に用いられるランク判定基準を定めるための、ランク基準生成処理と、の実行を制御する。すなわち、図1に示すように、制御部6は、制御部6のCPUが、制御プログラムに従い、個別基準生成処理の実行を制御することにより、個別基準生成部61として機能し、制御部6のCPUが、制御プログラムに従い、ランク基準生成処理の実行を制御することにより、ランク基準生成部62として機能する。なお、以下では、個別基準生成処理及びランク基準生成処理を、基準生成処理と総称する場合がある。
<<2.記録ヘッドの構成>>
図3及び図4を参照しつつ、記録ヘッド3と、記録ヘッド3に設けられる吐出部Dと、について説明する。
図3は、記録ヘッド3の、概略的な一部断面図の一例である。なお、この図では、図示の都合上、記録ヘッド3が有するM個の吐出部Dの中の1個の吐出部Dと、当該1個の吐出部Dにインク供給口360を介して連通するリザーバ350と、インクカートリッジ31からリザーバ350にインクを供給するためのインク取り入れ口370と、を示している。
図3に示すように、吐出部Dは、圧電素子300と、内部にインクが充填されたキャビティ320(「圧力室」の一例)と、キャビティ320に連通するノズルNと、振動板310と、を備える。吐出部Dは、圧電素子300が駆動信号Vinにより駆動されることにより、キャビティ320内のインクをノズルNから吐出させる。吐出部Dのキャビティ320は、凹部を有するような所定の形状に成形されたキャビティプレート340と、ノズルNが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。キャビティ320は、インク供給口360を介してリザーバ350と連通している。リザーバ350は、インク取り入れ口370を介して1個のインクカートリッジ31と連通している。
本実施形態では、圧電素子300として、例えば、図3に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。なお、圧電素子300は、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型等を採用してもよい。
圧電素子300は、下部電極301と、上部電極302と、下部電極301及び上部電極302の間に設けられた圧電体303と、を有する。そして、下部電極301の電位が所定の基準電位VSSに設定され、上部電極302に駆動信号Vinが供給されることで、下部電極301及び上部電極302の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子300が図において上下方向に撓み(変位し)、その結果、圧電素子300が振動する。
キャビティプレート340の上面開口部には、振動板310が設置され、振動板310には、下部電極301が接合されている。このため、圧電素子300が駆動信号Vinにより振動すると、振動板310も振動する。そして、振動板310の振動によりキャビティ320の容積(キャビティ320内の圧力)が変化し、キャビティ320内に充填されたインクがノズルNより吐出される。インクの吐出によりキャビティ320内のインクが減少した場合、リザーバ350からインクが供給される。また、リザーバ350へは、インクカートリッジ31からインク取り入れ口370を介してインクが供給される。
図4は、+Z方向または−Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、搭載機構32に搭載された4個の記録ヘッド3の各々に設けられたM個のノズルNの配置の一例を説明するための説明図である。
図4に示すように、各記録ヘッド3には、M個のノズルNからなるノズル列Lnが設けられている。換言すれば、インクジェットプリンター1は、4列のノズル列Lnを有する。具体的には、インクジェットプリンター1は、ノズル列Ln-BK、ノズル列Ln-CY、ノズル列Ln-MG、及び、ノズル列Ln-YL、からなる4列のノズル列Lnを有する。ここで、ノズル列Ln-BKに属する複数のノズルNの各々は、ブラック(BK)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-CYに属する複数のノズルNの各々は、シアン(CY)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-MGに属する複数のノズルNの各々は、マゼンタ(MG)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNであり、ノズル列Ln-YLに属する複数のノズルNの各々は、イエロー(YL)のインクを吐出する吐出部Dに設けられたノズルNである。また、本実施形態において、4列のノズル列Lnの各々は、平面視したときに、+Y方向または−Y方向(以下、+Y方向及び−Y方向を「Y軸方向」と総称する)に延在するように設けられている。そして、各ノズル列LnがY軸方向に延在する範囲YNLは、記録用紙P(正確には、記録用紙Pのうち、Y軸方向の幅がインクジェットプリンター1の印刷可能な最大の幅の記録用紙P)を印刷する場合に、当該記録用紙Pの有するY軸方向の範囲YP以上となる。
図4に示すように、各ノズル列Lnを構成する複数のノズルNは、図において左側(−Y側)から偶数番目のノズルNと奇数番目のノズルNのX軸方向の位置が互いに異なるように、所謂、千鳥状に配置されている。各ノズル列Lnにおいて、ノズルN間のY軸方向の間隔(ピッチ)は、印刷解像度(dpi:dot per inch)に応じて適宜設定され得る。
本実施形態では、記録ヘッド3において、M個のノズルNが、図において−Y方向から+Y方向にかけて、ノズルN[1]、N[2]、…、N[M]というように、段数の若い順番に並べられている。換言すれば、記録ヘッド3において、M個の吐出部Dが、吐出部D[1]、D[2]、…、D[M]というように、段数順に並べられている。
なお、本実施形態における印刷処理は、一例として、図4に示すように、記録用紙Pを複数の印刷領域(例えば、記録用紙PにA4サイズの画像を印刷する場合における当該A4サイズの矩形の領域や、ラベル用紙におけるラベル)と、これら複数の印刷領域のそれぞれを区画するための余白領域と、に分割したうえで、複数の印刷領域と1対1に対応する複数の画像を形成する場合を想定する。
<<3.吐出部の動作と残留振動>>
次に、吐出部Dからのインク吐出動作と、吐出部Dに生じる残留振動と、について、図5乃至図13を参照しながら説明する。
図5は、吐出部Dからのインク吐出動作を説明するための説明図である。図5(a)に示す状態において、吐出部Dが備える圧電素子300に対してヘッドドライバー5から駆動信号Vinが供給されると、当該圧電素子300において、電極間に印加された電界に応じた歪が発生し、当該吐出部Dの振動板310は図において上方向へ撓む。これにより、図5(a)に示す初期状態と比較して、図5(b)に示すように、当該吐出部Dのキャビティ320の容積が拡大する。図5(b)に示す状態において、駆動信号Vinの示す電位を変化させると、振動板310は、その弾性復元力によって復元し、初期状態における振動板310の位置を越えて図において下方向に変位し、図5(c)に示すようにキャビティ320の容積が急激に収縮する。このときキャビティ320内に発生する圧縮圧力により、キャビティ320を満たすインクの一部が、このキャビティ320に連通しているノズルNからインク滴として吐出される。
吐出部Dの振動板310は、図5に示す場合のように、駆動信号Vinにより駆動されて上下方向に変位した後に、振動する。この振動は、駆動信号Vinによる吐出部Dの駆動後も残留する。このような、駆動信号Vinによる吐出部Dの駆動後に吐出部Dに残留する残留振動は、ノズルNやインク供給口360の形状あるいはインクの粘度等による音響抵抗Resと、流路内のインク重量によるイナータンスIntと、振動板310のコンプライアンスCmと、によって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。以下、当該想定に基づく吐出部Dの振動板310に生じる残留振動の計算モデルについて説明する。
図6は、振動板310の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。このように、振動板310の残留振動の計算モデルは、音圧Prsと、上述のイナータンスInt、コンプライアンスCm及び音響抵抗Resとで表せる。そして、図6の回路に音圧Prsを与えた時のステップ応答を体積速度Uvについて計算すると、次式が得られる。
Uv={Prs/(ω・Int)}e−σt・sin(ωt)
ω={1/(Int・Cm)−γ}1/2
σ=Res/(2・Int)
この式から得られた計算結果(計算値)と、別途行った吐出部Dの残留振動の実験における実験結果(実験値)とを比較する。なお、残留振動の実験とは、インクの吐出状態が正常である吐出部Dからインクを吐出させた後に、当該吐出部Dの振動板310において生じる残留振動を検出する実験である。
図7は、残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。図7に示すグラフからも分かるように、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常である場合、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
さて、吐出部Dがインク吐出動作を行ったにもかかわらず、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常であり、当該吐出部DのノズルNからインク滴が正常に吐出されない場合、即ち吐出異常が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、(1)キャビティ320内への気泡の混入、(2)キャビティ320内のインクの乾燥等に起因するキャビティ320内のインクの増粘または固着、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着、等が挙げられる。
上述のとおり、吐出異常とは、典型的にはノズルNからインクを吐出できない状態となること、即ちインクの不吐出現象が現れ、その場合、記録用紙Pに印刷した画像における画素のドット抜けを生じる。また、上述のとおり、吐出異常の場合には、ノズルNからインクが吐出されたとしても、インクの量が過少であったり、吐出されたインク滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。
以下においては、図7に示す比較結果に基づいて、吐出部Dにおいて生じる吐出異常の原因別に、残留振動の計算値と実験値が概ね一致するように、音響抵抗Res及びイナータンスIntのうち少なくとも一方の値を調整する。
まず、吐出異常の原因の1つである、(1)キャビティ320内への気泡の混入について検討する。図8は、キャビティ320内に気泡が混入した場合を説明するための概念図である。図8に示すように、キャビティ320内に気泡が混入した場合には、キャビティ320内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスIntが低下するものと考えられる。また、気泡がノズルN付近に付着している場合には、その径の大きさだけノズルNの径が大きくなったと看做される状態となり、音響抵抗Resが低下するものと考えられる。
そこで、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Res及びイナータンスIntを小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図9のようなグラフが得られた。図7及び図9に示すように、キャビティ320内に気泡が混入して吐出異常が生じた場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。なお、音響抵抗Resの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
次に、吐出異常の原因の1つである、(2)キャビティ320内のインクの増粘または固着について検討する。図10は、キャビティ320のノズルN付近のインクが乾燥により固着した場合を説明するための概念図である。図10に示すように、ノズルN付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ320内のインクは、キャビティ320内に閉じこめられたような状況となる。このような場合、音響抵抗Resが増加するものと考えられる。
そこで、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルN付近のインクが固着または増粘した場合の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図11のようなグラフが得られた。なお、図11に示す実験値は、数日間図示しないキャップを装着しない状態で吐出部Dを放置し、ノズルN付近のインクが固着した状態における当該吐出部Dが備える振動板310の残留振動を測定したものである。図7及び図11に示すように、キャビティ320内のノズルN付近のインクが固着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な波形が得られる。これは、インクを吐出するために振動板310が+Z方向(上方)に引き寄せられることによって、キャビティ320内にリザーバからインクが流入した後に、振動板310が−Z方向(下方)に移動するときに、キャビティ320内のインクの逃げ道がないために、振動板310が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
次に、吐出異常の原因の1つである、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着について検討する。図12は、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合を説明するための概念図である。図12に示すように、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ320内から紙粉を介してインクが染み出すとともに、ノズルNからインクを吐出することができなくなる。ノズルNの出口付近に紙粉が付着し、ノズルNからインクが染み出している場合には、振動板310から見てキャビティ320内から染み出した分のインクが、吐出状態が正常の場合よりも増えることにより、イナータンスIntが増加するものと考えられる。また、ノズルNの出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗Resが増大するものと考えられる。
そこで、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、イナータンスInt及び音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルNの出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図13のようなグラフが得られた。図7及び図13のグラフから分かるように、ノズルNの出口付近に紙粉が付着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。
なお、図11及び図13に示すグラフから、(3)ノズルNの出口付近への紙粉等の異物の付着の場合は、(2)キャビティ320内のインクの増粘の場合と比較して、残留振動の周波数が高いことが分かる。
ここで、(2)インクの増粘の場合と、(3)ノズルNの出口付近への紙粉付着の場合とでは、いずれも、インクの吐出状態が正常である場合に比べて残留振動の周波数が低くなっている。これら2つの吐出異常の原因は、残留振動の波形、具体的には、残留振動の周波数または周期を、予め定められた閾値を持って比較することで、区別することができる。
以上の説明から明らかなように、吐出部Dを駆動したときに生じる残留振動の波形、特に、残留振動の周波数または周期に基づいて、吐出部Dの吐出状態を判定することができる。より具体的には、残留振動の周波数または周期に基づいて、吐出部Dにおける吐出状態が正常であるか否かについて、及び、吐出部Dにおける吐出状態が異常である場合に当該吐出異常の原因が上述した(1)〜(3)のうち何れに該当するかについて、判定することができる。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、残留振動を解析して吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する。
<<4.ヘッドドライバー及び判定ユニットの構成及び動作>>
次に、図14乃至図21を参照しつつ、ヘッドドライバー5(駆動信号生成部51、検出部52、及び、接続部53)と、判定ユニット4とについて説明する。
<<4.1.駆動信号生成部>>
図14は、ヘッドドライバー5のうち駆動信号生成部51の構成を示すブロック図である。
図14に示すように、駆動信号生成部51は、シフトレジスタSR、ラッチ回路LT、デコーダーDC、並びに、切替部TXからなる組を、M個の吐出部Dに1対1に対応するようにM個有する。以下では、これらM個の組を構成する各要素を、図において上から順番に、1段、2段、…、M段と称することがある。
駆動信号生成部51には、制御部6から、クロック信号CL、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、駆動波形信号Com(Com-A、Com-B)が供給される。
駆動波形信号Com(Com-A、Com-B)は、吐出部Dを駆動するための波形を複数含む信号である。
印刷信号SIは、各吐出部Dに対して供給すべき駆動波形信号Comの波形を指定し、これにより、各吐出部Dからのインクの吐出の有無、及び、各吐出部Dが吐出すべきインク量を指定するデジタルの信号である。印刷信号SIは、印刷信号SI[1]〜SI[M]を含む。このうち、印刷信号SI[m]は、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、及び、吐出部D[m]が吐出すべきインク量を、上位ビットb1及び下位ビットb2の2ビットで指定する。
具体的には、印刷信号SI[m]は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行している場合には、吐出部D[m]に対して、大ドットに相当する量のインクの吐出、中ドットに相当する量のインクの吐出、小ドットに相当する量のインクの吐出、または、インクの非吐出、のうちいずれか1つを指定する(図15(A)参照)。一方、印刷信号SI[m]は、インクジェットプリンター1が吐出状態判定処理を実行している場合には、吐出部D[m]における吐出状態の検査のための残留振動の発生、または、吐出部D[m]におけるインクの増粘防止のための微振動の発生のうちいずれか1つを指定する(図15(B)参照)。
駆動信号生成部51は、吐出部D[m]に対して、印刷信号SI[m]により指定された波形を有する駆動信号Vinを供給する。以下では、駆動信号Vinのうち、印刷信号SI[m]により指定された波形を有し、吐出部D[m]に供給される駆動信号Vinを、駆動信号Vin[m]と称する。
シフトレジスタSRは、シリアルで供給された印刷信号SI(SI[1]〜SI[M])を、各吐出部Dに対応する2ビット毎に一旦保持する。具体的には、シフトレジスタSRは、M個の吐出部Dに1対1に対応する、1段、2段、…、M段のM個のシフトレジスタSRが互いに縦続接続された構成を有し、シリアルで供給された印刷信号SIを、クロック信号CLに従って順次後段に転送する。そして、M個のシフトレジスタSRの全てに印刷信号SIが転送されると、M個のシフトレジスタSRのそれぞれが、印刷信号SIのうち自身に対応する2ビット分のデータを保持した状態を維持する。以下では、m段のシフトレジスタSRをシフトレジスタSR[m]と称する場合がある。
M個のラッチ回路LTのそれぞれは、ラッチ信号LATが立ち上がるタイミングで、M個のシフトレジスタSRのそれぞれに保持された、各段に対応する2ビット分の印刷信号SI[m]を一斉にラッチする。すなわち、m段のラッチ回路LTは、シフトレジスタSR[m]により保持された印刷信号SI[m]をラッチする。
ところで、インクジェットプリンター1が、印刷処理及び吐出状態判定処理のうち少なくとも一方の処理を実行する期間である動作期間は、複数の単位期間Tuから構成される。また、本実施形態において、単位期間Tuは、印刷処理が実行される単位期間Tuである単位印刷期間Tu-P(図16参照)と、吐出状態判定処理が実行される単位期間Tuである単位判定期間Tu-T(図17参照)と、の2種類の単位期間Tuに分類される。
上述のとおり、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、長尺状の記録用紙Pを複数の印刷領域と、複数の印刷領域のそれぞれを区画するための余白領域と、に分割したうえで、各印刷領域に対して1つの画像を形成する。
具体的には、制御部6は、動作期間を構成する複数の単位期間Tuのうち、記録ヘッド3の下側(−Z側)に記録用紙Pの印刷領域の少なくとも一部が位置する期間を、単位印刷期間Tu-Pに分類し、当該単位印刷期間Tu-Pにおいて印刷処理が実行されるようにインクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
一方、制御部6は、動作期間を構成する複数の単位期間Tuのうち、記録ヘッド3の下側(−Z側)に、記録用紙Pの余白領域のみが位置する期間を、単位判定期間Tu-Tに分類し、当該単位判定期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理が実行されるようにインクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
また、制御部6は、駆動信号生成部51に対して、単位期間Tu毎に、印刷信号SIを供給するとともに、単位期間Tu毎に、ラッチ回路LTが印刷信号SI[m]をラッチするようなラッチ信号LATを供給する。
具体的には、制御部6は、単位印刷期間Tu-Pにおいて、各吐出部D[m]に対して、印刷処理を実行するための印刷処理用の駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部51を制御する。ここで、印刷処理用の駆動信号Vinとは、吐出部Dが、大ドットに相当する量のインクの吐出、中ドットに相当する量のインクの吐出、小ドットに相当する量のインクの吐出、または、インクの非吐出、のうちいずれかを実行するように、当該吐出部Dを駆動させるための駆動信号Vinである。
また、制御部6は、単位判定期間Tu-Tにおいて、各吐出部D[m]に対して、吐出状態判定処理を実行するための吐出状態判定処理用の駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部51を制御する。ここで、吐出状態判定処理用の駆動信号Vinとは、吐出部Dにおいて残留振動または微振動が発生するように、当該吐出部Dを駆動させるための駆動信号Vinである。
なお、本実施形態において、制御部6は、チェンジ信号CHにより、単位期間Tuを、制御期間Ts1と制御期間Ts2とに区分する。制御期間Ts1及びTs2は、互いに等しい時間長を有する。以下では、制御期間Ts1及びTs2を、制御期間Tsと総称することがある。
デコーダーDCは、ラッチ回路LTによってラッチされた印刷信号SI[m]をデコードし、選択信号Sa[m]及びSb[m]を出力する。
図15は、各単位期間TuにおけるデコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。このうち、図15(A)は、単位印刷期間Tu-Pにおける、m段のデコーダーDCによるデコード内容を示し、図15(B)は、単位判定期間Tu-Tにおける、m段のデコーダーDCによるデコード内容を示している。
図15(A)及び(B)に示すように、単位印刷期間Tu-P及びTu-Tにおいて、m段のデコーダーDCは、制御期間Ts1及びTs2のそれぞれにおいて、選択信号Sa[m]及びSb[m]を出力する。例えば、単位印刷期間Tu-Pにおいて、印刷信号SI[m]が、(b1、b2)=(1,0)である場合(図15(A2)参照)、m段のデコーダーDCは、制御期間Ts1において、選択信号Sa[m]をハイレベルHに、選択信号Sb[m]をローレベルLにそれぞれ設定し、制御期間Ts2において、選択信号Sb[m]をハイレベルHに、選択信号Sa[m]をローレベルLにそれぞれ設定する。
図14に示すように、駆動信号生成部51は、M個の吐出部Dと1対1に対応するように、M個の切替部TXを備える。m段の切替部TX[m]は、選択信号Sa[m]がHレベルのときにオンし、LレベルのときにオフするトランスミッションゲートTGa[m]と、選択信号Sb[m]がHレベルのときにオンし、LレベルのときにオフするトランスミッションゲートTGb[m]と、を備える。
例えば、単位印刷期間Tu-Pにおいて、印刷信号SI[m]が(1,0)を示す場合(図15(A2)参照)、制御期間Ts1において、トランスミッションゲートTGa[m]がオンし、トランスミッションゲートTGb[m]がオフし、制御期間Ts2において、トランスミッションゲートTGa[m]がオフし、トランスミッションゲートTGb[m]がオンする。
図14に示すように、トランスミッションゲートTGa[m]の一端には駆動波形信号Com-Aが供給され、トランスミッションゲートTGb[m]の一端には駆動波形信号Com-Bが供給される。また、トランスミッションゲートTGa[m]及びTGb[m]の他端は、m段の出力端OTNに電気的に接続されている。
また、図15に示すように、各制御期間Tsにおいて、切替部TX[m]は、トランスミッションゲートTGa[m]及びTGb[m]の一方がオンとなり他方がオフとなるように制御される。つまり、各制御期間Tsにおいて、切替部TX[m]は、m段の出力端OTNを介して、駆動波形信号Com-AまたはCom-Bのいずれか一方を、駆動信号Vin[m]として吐出部D[m]に供給する。
<<4.2.駆動波形信号>>
図16及び図17は、各単位期間Tuにおいて制御部6が駆動信号生成部51に供給する各種信号と、各単位期間Tuにおける駆動信号生成部51の動作と、を説明するためのタイミングチャートである。このうち、図16は、単位印刷期間Tu-Pにおける、駆動信号生成部51の動作、及び、駆動信号生成部51に供給される信号の一例であり、図17は、単位判定期間Tu-Tにおける、駆動信号生成部51の動作、及び、駆動信号生成部51に供給される信号の一例である。なお、図16及び図17では、図示の都合上、M=4の場合を例示している。
図16及び図17に示すように、単位期間Tuは、制御部6の出力するラッチ信号LATに含まれるパルスPls-Lにより区分され、また、制御期間Ts1及びTs2は、制御部6の出力するチェンジ信号CHに含まれるパルスPls-Cにより区分される。
制御部6は、各単位期間Tuの開始に先立って、印刷信号SIをクロック信号CLに同期させて駆動信号生成部51に供給する。そして、駆動信号生成部51のシフトレジスタSRは、供給された印刷信号SI[m]をクロック信号CLに従って、順次後段に転送する。
図16及び図17に示すように、本実施形態において、制御部6が出力する駆動波形信号Com-Aの波形は、単位印刷期間Tu-Pと単位判定期間Tu-Tとで異なる。
以下では、駆動波形信号Com-Aのうち、単位印刷期間Tu-Pにおいて制御部6が出力する信号を、印刷用駆動波形信号Com-AP(図16参照)と称する。また、駆動波形信号Com-Aのうち、単位判定期間Tu-Tにおいて制御部6が出力する信号を、判定用駆動波形信号Com-AT(図17参照)と称する。
図16に例示するように、単位印刷期間Tu-Pに制御部6が出力する印刷用駆動波形信号Com-APは、制御期間Ts1に設けられた吐出波形PA1(以下「波形PA1」と称する)と、制御期間Ts2に設けられた吐出波形PA2(以下「波形PA2」と称する)と、を有する。
波形PA1は、波形PA1を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給されると、吐出部D[m]から中ドットに相当する中程度の量のインクが吐出されるような波形である。
波形PA2は、波形PA2を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給されると、吐出部D[m]から小ドットに相当する小程度の量のインクが吐出されるような波形である。
例えば、波形PA1の最低電位Va11と最高電位Va12との電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも大きくなるように定めらる。
図16及び図17に例示するように、単位印刷期間Tu-P及び単位判定期間Tu-Tの双方の単位期間Tuにおいて制御部6が出力する駆動波形信号Com-Bは、微振動波形PB(以下「波形PB」と称する)を有する。
波形PBは、波形PBを有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給された場合に、吐出部D[m]からインクが吐出されないような波形である。つまり、波形PBは、吐出部D内部のインクに微振動を与えてインクの増粘を防止するための波形である。例えば、波形PBの最低電位Vb11と最高電位(この例では基準電位V0)との電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも小さくなるように定められる。
図17に例示するように、単位判定期間Tu-Tに制御部6が出力する判定用駆動波形信号Com-ATは、検査波形PT(以下「波形PT」と称する)を有する。
波形PTは、吐出部Dを振動させるための波形PT1と、波形PT1により駆動された後の吐出部Dの残留振動を維持するための波形PT2と、を含む。
波形PT1は、波形PT1を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給された場合に、吐出部D[m]からインクが吐出されないような波形である。例えば、波形PT1の最低電位VcLと最高電位(この例では検出電位VcH)との電位差は、波形PA2の最低電位Va21と最高電位Va22との電位差よりも小さくなるように定めらる。つまり、本実施形態に係る吐出状態判定処理は、インクを吐出させないように吐出部Dを駆動したときに当該吐出部Dにおいて生じる残留振動に基づいて吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する、所謂「非吐出検査」である場合を想定する。但し、波形PT1は、波形PT1を有する駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給された場合に、吐出部D[m]からインクが吐出されるような波形であってもよい。つまり、吐出状態判定処理は、「吐出検査」として実行されるものであってもよい。
波形PT2は、検出電位VcHに保たれた平坦な波形である。吐出部D[m]が、波形PT1を有する駆動信号Vin[m]により駆動された直後に、波形PT2を有する駆動信号Vin[m]を供給することで、波形PT1による駆動に起因して吐出部D[m]に生じる残留振動を維持することが可能となり、当該残留振動の正確な検出が可能となる。
検出部52は、吐出部D[m]に判定用駆動波形信号Com-ATが供給される単位判定期間Tu-Tのうち、吐出部D[m]に対して波形PT2が供給され、駆動信号Vin[m]が検出電位VcHを維持している期間に含まれる検出期間Tdにおいて、吐出部D[m]に生じている残留振動を、残留振動信号Voutとして検出する。
本実施形態において、検出期間Tdは、図17に示すように、制御部6の出力する検出期間指定信号Tsigが所定の電位VHighである期間として規定される。なお、本実施形態では、検出期間Tdは、クロック信号CLが供給されてシフトレジスタSRが印刷信号SI[m]を転送する期間の開始前に設けられる。
<<4.3.駆動信号>>
次に、単位期間Tuにおいて駆動信号生成部51が出力する駆動信号Vinについて説明する。
まず、図18を参照しつつ、単位印刷期間Tu-Pにおいて駆動信号生成部51が出力する印刷処理用の駆動信号Vinについて説明する。
単位印刷期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(1,1)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1において駆動波形信号Com-Aを選択して波形PA1を有する駆動信号Vin[m]を出力し、制御期間Ts2において駆動波形信号Com-Aを選択して波形PA2を有する駆動信号Vin[m]を出力する(図15(A1)参照)。よって、この場合、図18に示すように、単位印刷期間Tu-Pにおいて吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PA1及び波形PA2を含む。この結果、吐出部D[m]は、当該単位印刷期間Tu-Pにおいて、波形PA1に基づく中程度の量のインクと、波形PA2に基づく小程度の量のインクと、を吐出し、これら2度にわたり吐出されたインクにより、記録用紙P上に大ドットを形成する。
また、単位印刷期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(1,0)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1において駆動波形信号Com-Aを選択して波形PA1を有する駆動信号Vin[m]を出力し、制御期間Ts2において駆動波形信号Com-Bを選択して波形PBを有する駆動信号Vin[m]を出力する(図15(A2)参照)。よって、この場合、図18に示すように、単位印刷期間Tu-Pにおいて吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PA1及び波形PBを含む。この結果、吐出部D[m]は、当該単位印刷期間Tu-Pにおいて、波形PA1に基づく中程度の量のインクを吐出し、記録用紙P上に中ドットを形成する。
また、単位印刷期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(0,1)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1において駆動波形信号Com-Bを選択して波形PBを有する駆動信号Vin[m]を出力し、制御期間Ts2において駆動波形信号Com-Aを選択して波形PA2を有する駆動信号Vin[m]を出力する(図15(A3)参照)。よって、この場合、図18に示すように、単位印刷期間Tu-Pにおいて吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PA2を含む。この結果、吐出部D[m]は、当該単位印刷期間Tu-Pにおいて、波形PA2に基づく小程度の量のインクを吐出し、記録用紙P上に小ドットを形成する。
また、単位印刷期間Tu-Pにおいて供給される印刷信号SI[m]が(0,0)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1及びTs2において駆動波形信号Com-Bを選択して波形PBを有する駆動信号Vin[m]を出力する(図15(A4)参照)。つまり、この場合、図18に示すように、単位印刷期間Tu-Pにおいて吐出部D[m]に供給される駆動信号Vin[m]は、波形PBを含む。この結果、吐出部D[m]は、当該単位印刷期間Tu-Pにおいて、インクを吐出せず、記録用紙P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
次に、単位判定期間Tu-Tにおいて駆動信号生成部51が出力する吐出状態判定処理用の駆動信号Vinについて説明する。
まず、単位判定期間Tu-Tにおいて供給される印刷信号SI[m]が(1,1)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1及びTs2において駆動波形信号Com-Aを選択して、吐出部D[m]に対して、波形PTを有する駆動信号Vin[m]を供給する(図15(B1)参照)。
また、単位判定期間Tu-Tにおいて供給される印刷信号SI[m]が(0,0)を示す場合、切替部TX[m]は、制御期間Ts1及びTs2において駆動波形信号Com-Bを選択して、吐出部D[m]に対して、波形PBを有する駆動信号Vin[m]を供給する(図15(B2)参照)。
制御部6は、一の単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]を吐出状態判定処理の対象とする場合、当該一の単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]に対して波形PTを有する駆動信号Vin[m]が供給されるように、印刷信号SI[m]の値を(1,1)に設定する。
また、制御部6は、吐出部D[m]を、一の単位判定期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理の対象としない場合、当該一の単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]に対して波形PBを有する駆動信号Vin[m]が供給されるように、印刷信号SI[m]の値を(0,1)に設定する。
<<4.4.接続部>>
図19は、接続部53の構成を例示するブロック図である。
図19に例示するように、接続部53は、M個の吐出部Dに1対1に対応する1段〜M段のM個の接続回路Ux(Ux[1]、Ux[2]、…、Ux[M])を備える。m段の接続回路Ux[m]は、吐出部D[m]の圧電素子300の上部電極302を、駆動信号生成部51が備えるm段の出力端OTN、または、検出部52のいずれか一方に電気的に接続する。
以下では、接続回路Ux[m]が、吐出部D[m]と駆動信号生成部51のm段の出力端OTNとを電気的に接続している状態を第1の接続状態と称する。また、接続回路Ux[m]が、吐出部D[m]と検出部52とを電気的に接続している状態を第2の接続状態と称する。
制御部6は、各接続回路Uxの接続状態を制御するための接続制御信号Swを、各接続回路Uxに対して出力する。
具体的には、制御部6は、単位印刷期間Tu-Pにおいて、接続回路Ux[m]が単位印刷期間Tu-Pの全期間に亘って第1の接続状態を維持するような接続制御信号Sw[m]を、接続回路Ux[m]に供給する。このため、吐出部D[m]には、単位印刷期間Tu-Pの全期間に亘って、駆動信号生成部51から駆動信号Vin[m]が供給される。
また、制御部6は、単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]が、吐出状態判定処理の対象となる場合、接続回路Ux[m]が、当該単位判定期間Tu-Tのうち、検出期間Td以外の期間において第1の接続状態となり、検出期間Tdにおいて第2の接続状態となるような接続制御信号Sw[m]を、接続回路Ux[m]に供給する。このため、単位判定期間Tu-Tにおいて吐出部D[m]が吐出状態判定処理の対象である場合、当該単位判定期間Tu-Tのうち検出期間Td以外の期間において、駆動信号生成部51から吐出部D[m]に対して駆動信号Vin[m]が供給され、当該単位判定期間Tu-Tのうち検出期間Tdにおいて、吐出部D[m]から検出部52に対して残留振動信号Voutが供給される。
また、制御部6は、単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出部D[m]が吐出状態判定処理の対象ではない場合、接続回路Ux[m]が、当該単位判定期間Tu-Tの全期間に亘って第1の接続状態を維持するような接続制御信号Sw[m]を、接続回路Ux[m]に供給する。
なお、本実施形態では、図19に示すように、インクジェットプリンター1が、M個の吐出部Dに対して、1個の検出部52を備え、また、各検出部52は、1つの単位期間Tuにおいて、1個の吐出部Dに生じる残留振動のみを検出可能である場合を想定する。すなわち、本実施形態に係る制御部6は、1つの単位判定期間Tu-Tにおいて、M個の吐出部Dの中から1個の吐出部Dを吐出状態判定処理の対象として選択し、選択された吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定するようにインクジェットプリンター1の各部を制御する。
このため、制御部6は、各単位判定期間Tu-Tにおいて、吐出状態判定処理の対象として選択された吐出部Dを、当該単位判定期間Tu-Tの検出期間Tdにおいて第2の接続状態として、検出部52に電気的に接続するように、接続制御信号Swを生成する。
<<4.5.検出部>>
図19に示す検出部52は、上述のとおり、残留振動信号Voutに基づいて整形波形信号Vdを生成する。上述の通り、整形波形信号Vdとは、残留振動信号Voutの振幅を増幅し、また、残留振動信号Voutからノイズ成分を除去することで、残留振動信号Voutを、判定ユニット4における処理に適した波形に整形した信号である。
検出部52は、例えば、残留振動信号Voutを増幅させるための負帰還型のアンプと、残留振動信号Voutの高域周波数成分を減衰させるためのローパスフィルターと、インピーダンスを変換してローインピーダンスの整形波形信号Vdを出力するボルテージフォロアと、を含む構成等であってもよい。
<<4.6.判定ユニット>>
判定ユニット4は、検出部52の出力する整形波形信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定の結果を示す判定情報RSを生成する。
図1において説明したように、判定ユニット4は、検出信号生成部41と、吐出状態判定部42と、を備える。以下、検出信号生成部41及び吐出状態判定部42の詳細について説明する。
図1において説明したように、検出信号生成部41には、検出部52から、整形波形信号Vdが供給され、また、制御部6から、閾値電位信号SVth及びマスク信号Mskが供給される。
ここで、閾値電位信号SVthは、整形波形信号Vdの振幅中心レベルの電位である閾値電位Vth1を示す信号と、閾値電位Vth1よりも高電位の閾値電位Vth2を示す信号と、閾値電位Vth1よりも低電位の閾値電位Vth3を示す信号と、を含む(図20参照)。
図20は、検出信号生成部41の動作を示すタイミングチャートである。この図に示すように、検出信号生成部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth1とを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth1以上となる場合にハイレベルとなり、閾値電位Vth1未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp1を生成する。また、検出信号生成部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth2とを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth2以上となる場合にハイレベルとなり、閾値電位Vth2未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp2を生成する。また、検出信号生成部41は、整形波形信号Vdの示す電位と閾値電位Vth3とを比較して、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth3未満となる場合にハイレベルとなり、閾値電位Vth3以上となる場合にハイレベルとなる比較信号Cmp3を生成する。
検出信号生成部41は、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後において、整形波形信号Vdの示す電位が最初に閾値電位Vth1と等しくなるタイミングである時刻t1から、整形波形信号Vdの示す電位が2度目に閾値電位Vth1と等しくなるタイミングである時刻t2までの時間Tcを計測し、当該時間Tcを示す周期信号NTcを出力する。なお、マスク信号Mskとは、検出部52からの整形波形信号Vdの供給が開始されてから所定の期間Tmskの間だけハイレベルとなる信号である。また、検出信号生成部41は、時刻t1から時刻t2までの期間のうち、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth2以上となり、比較信号Cmp2がハイレベルである時間Taを計測する。また、検出信号生成部41は、時刻t1から時刻t2までの期間のうち、整形波形信号Vdの示す電位が閾値電位Vth3未満となり、比較信号Cmp3がハイレベルである時間Tbを計測する。
検出信号生成部41は、時間Taが「Ta0≦Ta」を充足し、且つ、時間Tbが「Tb0≦Tb」を充足する場合に、有効性フラグFlagの値を、整形波形信号Vdの振幅が所定の範囲に含まれることを示す値、例えば「1」に設定する。ここで、Ta0は「0<Ta0」を満たす実数であり、Tb0は「0<Tb0」を満たす実数である。他方、検出信号生成部41は、時間Taが「Ta<Ta0」となる場合、または、時間Tbが「Tb<Tb0」となる場合には、有効性フラグFlagの値を、整形波形信号Vdの振幅が所定の範囲に含まれていないことを示す値、例えば「0」に設定する。
図21の破線Vd´で例示すように、吐出部Dにおいて駆動信号Vinに応じた振幅の残留振動が生じずに、整形波形信号Vdの振幅が小さい場合、その原因として、キャビティ320からのインクの染み出し、または、吐出部Dの故障等、吐出部Dにおいて何らかの不具合が生じていることが想定される。
本実施形態では、整形波形信号Vdが適正な振幅を有するか否かを示す有効性フラグFlagを生成する。このため、吐出部Dの故障等に起因して吐出部Dに生じる吐出異常を把握することが可能となる。
また、本実施形態では、マスク信号Mskがハイレベルである期間Tmskの経過後を対象として、時間Ta、時間Tb、及び、時間Tcを計測する。このため、残留振動の開始直後に重畳するノイズ成分の影響を少なくすることができ、精度の高い周期信号NTcを得ることができる。
吐出状態判定部42は、検出信号生成部41から供給される、周期信号NTc[m]及び有効性フラグFlagと、制御部6から供給される、基準信号STthの示す3つの基準値Tth1、Tth2、及び、Tth3と、に基づいて、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を示す判定情報RS[m]を生成する。
図21は、吐出状態判定部42における判定の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、吐出状態判定部42は、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]を、3つの基準値Tth1、Tth2、及び、Tth3、または、これら3つの基準値うちの一部の基準値と比較する。
ここで、基準値Tth1とは、キャビティ320内部に気泡が発生して残留振動の周波数が高くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、基準値Tth2とは、基準値Tth1よりも長い時間長を表す値であって、ノズルN出口付近に紙粉等の異物が付着して残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、基準値Tth3とは、基準値Tth2よりも長い時間長を表す閾値であって、ノズルN付近におけるインクの増粘または固着により、紙粉等の異物が付着する場合よりもさらに残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、ノズルN出口付近に紙粉等の異物が付着した場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。以下では、基準値Tth1、Tth2、及び、Tth3を、基準値Tthと総称する場合がある。
図21に示すように、吐出状態判定部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が「Tth1≦Tc[m]≦Tth2」を満たす場合には、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態が正常であると判定し、判定情報RS[m]に、吐出状態が正常であることを示す値、例えば「1」を設定する。
また、吐出状態判定部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が「Tc[m]<Tth1」を満たす場合には、キャビティ320に生じた気泡により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RS[m]に、気泡による吐出異常が発生していることを示す値、例えば「2」を設定する。
また、吐出状態判定部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が「Tth2<Tc[m]≦Tth3」を満たす場合には、ノズルN出口付近に付着した紙粉等の異物により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RSに、紙粉等の異物の付着による吐出異常が発生していることを示す値、例えば「3」を設定する。
また、吐出状態判定部42は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が「Tth3<Tc[m]」を満たす場合には、キャビティ320内のインクの増粘により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RSに、インクの増粘による吐出異常が発生していることを示す値、例えば「4」を設定する。
また、吐出状態判定部42は、有効性フラグFlagの値が「0」である場合には、判定情報RS[m]に、インクの染み出しまたは吐出部Dの故障等吐出部Dに何らかの不具合が生じていることを示す値、例えば「5」を設定する。
以上のように、吐出状態判定部42は、周期信号NTc[m]及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部D[m]における吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RS[m]を生成する。
制御部6は、吐出状態判定部42が出力する判定情報RS[m]を、当該判定情報RS[m]に対応する吐出部D[m]の段数mと対応付けて、記憶部60に記憶させる。このため、M個の吐出部Dの中で、どの吐出部Dにおいて吐出異常が生じているかを把握することが可能となる。これにより、吐出異常の生じている吐出部Dの個数や、吐出異常の生じている吐出部Dの位置等を考慮して、メンテナンス処理を適切なタイミングで実行することが可能となる。従って、印刷処理において形成される画質が、吐出部Dにおける吐出異常に起因して劣化することを防止することが可能となる。
<<5.基準信号>>
以下、吐出状態判定処理が実行される場合に、制御部6が吐出状態判定部42に対して供給する基準信号STthと、当該基準信号STthの示す基準値Tthについて説明する。
本実施形態において、吐出状態判定部42が供給する基準信号STthの示す基準値Tthは、吐出状態判定処理が個別判定モードにより実行される場合には、M個の吐出部Dのそれぞれに対応するように吐出部D毎に個別に定められる。つまり、個別判定モードにおいて、制御部6が出力する基準信号STthの示す基準値Tthは、記録ヘッド3に設けられるM個の吐出部D[1]〜D[M]に対して1対1に対応して定められるである個別判定基準である。以下では、個別判定モードにおいて、吐出部D[m]の吐出状態の判定に用いられる基準値Tthを、基準値TthM[m]と表現する。また、以下では、基準値TthM[m]を示す基準信号STthを、個別基準信号STthM[m](「第1基準信号」の一例。以下、単に「基準信号STthM[m]」と称する場合がある)と表現する。
また、基準値Tthは、吐出状態判定処理が、ランク判定モードにより実行される場合には、各吐出部D[m]が属するランクに応じてランク毎に定められる。つまり、ランク判定モードにおいて、制御部6が出力する基準信号STthの示す基準値Tthは、記録ヘッド3に設けられるM個の吐出部D[1]〜D[M]が振り分けられるQ個(Qは、2≦Q<Mを満たす自然数)のランク対して1対1に対応して定められるランク判定基準である。以下では、ランク判定モードにおいて、ランクqに属する吐出部D[m]の吐出状態の判定に用いられる基準値Tthを、基準値TthQ[q]と表現する(qは、1≦q≦Qを満たす自然数)。また、以下では、基準値TthQ[q]を表す基準信号STthを、ランク基準信号STthQ[q](「第2基準信号」の一例。以下、単に「基準信号STthQ[q]」と称する場合がある)と表現する。
制御部6は、個別判定モードにより吐出状態判定処理が実行される場合には、記憶部60に記憶されている個別基準情報テーブルTBL1を参照して、基準信号STthM[m]を生成する。
図22は、個別基準情報テーブルTBL1のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、個別基準情報テーブルTBL1は、吐出部D[m]の段数mと、吐出部D[m]に対応する基準値TthM[m]と、を関連付けて記憶している。ここで、基準値TthM[m]には、吐出部D[m]の判定に用いる基準値Tth1である基準値TthM1[m]、吐出部D[m]の判定に用いる基準値Tth2である基準値TthM2[m]、及び、吐出部D[m]の判定に用いる基準値Tth3である基準値TthM3[m]を含む。
制御部6は、個別判定モードによる吐出状態判定処理において、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を行う場合には、個別基準情報テーブルTBL1から、段数mに対応する基準値TthM[m](TthM1[m]、TthM2[m]、TthM3[m])を取得し、取得した基準値TthM[m]を有する基準信号STthM[m]を吐出状態判定部42に供給する。
制御部6は、ランク判定モードにより吐出状態判定処理が実行される場合には、記憶部60に記憶されている、ランク基準情報テーブルTBL2及び所属ランク情報テーブルTBL3を参照して、基準信号STthQ[q]を生成する。
図23は、ランク基準情報テーブルTBL2のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、ランク基準情報テーブルTBL2は、ランクの番号qと、ランク番号qに対応する基準値TthQ[q]と、を関連付けて記憶している。ここで、基準値TthQ[q]には、ランクqに属する吐出部Dの判定に用いる基準値Tth1である基準値TthQ1[q]、ランクqに属する吐出部Dの判定に用いる基準値Tth2である基準値TthQ2[q]、及び、ランクqに属する吐出部Dの判定に用いる基準値Tth3である基準値TthQ3[q]を含む。
図24は、所属ランク情報テーブルTBL3のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、所属ランク情報テーブルTBL3は、吐出部D[m]の段数mと、当該吐出部D[m]の属するランクの番号qと、を関連付けて記憶している。
制御部6は、ランク判定モードによる吐出状態判定処理において、吐出部D[m]におけるインクの吐出状態を行う場合には、まず、所属ランク情報テーブルTBL3から、吐出部D[m]の属するランクの番号qを取得し、次に、ランク基準情報テーブルTBL2から、吐出部D[m]の属するランクqに対応する基準値TthQ[q](TthQ1[q]、TthQ2[q]、TthQ3[q])を取得し、そして、取得した基準値TthQ[q]を有する基準信号STthQ[q]を、吐出状態判定部42に対して供給する。
<<6.基準生成処理及び吐出状態判定処理>>
以下、吐出状態判定処理及び基準生成処理について説明する。
<<6.1.個別基準生成処理及び吐出状態判定処理>>
以下、個別基準生成処理と、個別基準生成処理により生成された個別判定基準(基準値TthM[m])を用いた吐出状態判定処理(つまり、個別判定モードによる吐出状態判定処理)と、について説明する。
図25は、個別判定モードによる吐出状態判定処理と、当該吐出状態判定処理において用いられる基準値TthM[m]と、について説明するための説明図である。なお、この図では、段数mを横軸とし時間Tcを縦軸として、吐出部D[1]〜D[M]に対応する時間Tc[1]〜Tc[M]をプロットしている。
図25に示すように、制御部6は、個別判定モードにより吐出状態判定処理を実行する場合には、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]の移動平均TcAve[m]から、所定の幅ΔTM1を減算した値を基準値TthM1[m]とする。また、移動平均TcAve[m]に、所定の幅ΔTM2を加算した値を基準値TthM2[m]とする。
そして、吐出状態判定部42は、周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が、「TthM1[m]≦Tc[m]≦TthM2[m]」を充足する場合に、当該周期信号NTc[m]に対応する吐出部D[m]の吐出状態が正常であると判定する。
なお、この図では、吐出状態が正常な吐出部D[m]に対応する時間Tc[m]を、丸印でプロットし、吐出状態が異常な吐出部D[m]に対応する時間Tc[m]を、三角印でプロットしている。
図26は、個別基準生成処理が実行される場合における、制御部6の動作の一例を示すフローチャートである。
この図に示すように、個別基準生成処理において、制御部6は、まず、段数mを「1」に初期化する(S100)。次に、制御部6は、周期信号NTc[1]〜NTc[M]を取得する(S110)。
そして、制御部6は、吐出部D[m]の周辺吐出部Dα[m]を選択する(S120)。ここで、吐出部D[m]の周辺吐出部Dα[m]とは、記録ヘッド3において、吐出部D[m]を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部Dのことである。具体的には、本実施形態では、α個の吐出部D[m-α1]〜D[m+α2]を、吐出部D[m]の周辺吐出部Dα[m]として特定する。ここで、α1及びα2は、「1≦α1<α」、「1≦α2<α」、且つ、「α1+α2+1=α」、を満たす自然数である。なお、「m-α1<1」となる場合には、「m-α1」を「1」に読み替えることで、吐出部D[1]〜D[m+α2]を周辺吐出部Dα[m]として特定し、「m+α2>M」となる場合には、「m+α2」を「M」に読み替えることで、吐出部D[m-α1]〜D[M]を周辺吐出部Dα[m]として特定すればよい。
制御部6は、周辺吐出部Dα[m]に含まれるα個の吐出部D[m-α1]〜D[m+α2]に対応する、α個の周期信号NTc[m-α1]〜NTc[m+α2]からなる周辺周期信号NTα[m]から、不適切な周期信号NTcを除外することで、β個(βは、2≦β≦αを満たす自然数)の対象周期信号NTβ[m]を選択する(S130)。
具体的には、制御部6は、ステップS130において、まず、周辺周期信号NTα[m]に含まれるα個の周期信号NTc[m-α1]〜NTc[m+α2]の示す、α個の時間Tc[m-α1]〜Tc[m+α2]の最大値TαMax[m]を特定する。次に、制御部6は、α個の周期信号NTc[m-α1]〜NTc[m+α2]の中から、最大値TαMax[m]との差分が所定の閾値ΔTαよりも大きい時間Tcを示す周期信号NTcを、不適切な周期信号NTcとして特定する。そして、制御部6は、周辺周期信号NTα[m]から、不適切な周期信号NTcを除外することで、対象周期信号NTβ[m]を選択する。
制御部6は、対象周期信号NTβ[m]を選択後、選択した対象周期信号NTβ[m]の示すβ個の時間Tcの平均値を示す値として、移動平均TcAve[m]を生成する(S140)。
そして、制御部6は、移動平均TcAve[m]に基づいて、基準値TthM[m]を生成する(S150)。具体的には、制御部6は、移動平均TcAve[m]から所定の幅ΔTM1を減算した値を基準値TthM1[m]とし、移動平均TcAve[m]に所定の幅ΔTM2を加算した値を基準値TthM2[m]とし、基準値TthM2[m]に所定の幅ΔTM3を加算した値を基準値TthM3[m]とする。
そして、制御部6は、「m≧M」を充足するか否かを判定し(S160)、判定結果が肯定である場合には、個別基準生成処理を終了させ、判定結果が否定である場合には、mに「1」を加算したうえで(S170)、処理をステップS120に進める。
以上のように、個別基準生成処理では、M個の吐出部D[1]〜D[M]に対して、M個の基準値TthM[1]〜TthM[M]を生成する。このため、吐出部Dに生じる残留振動の特性が、記録ヘッド3における吐出部Dの位置や、吐出部Dの製造誤差等に起因してバラつく場合であっても、当該バラツキを考慮した上で、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定することができる。これにより、誤判定を防止した正確な判定を実行することができる。
なお、制御部6は、図26に示す個別基準生成処理、つまり、ステップS100〜S170の処理を実行することにより、個別基準生成部61として機能する。
<<6.2.ランク基準生成処理及び吐出状態判定処理>>
以下、ランク基準生成処理と、ランク基準生成処理により生成されたランク判定基準(基準値TthQ[q])を用いた吐出状態判定処理(つまり、ランク判定モードによる吐出状態判定処理)と、について説明する。
図27は、ランク判定モードによる吐出状態判定処理と、当該吐出状態判定処理において用いられる基準値TthQ[q]と、について説明するための説明図である。なお、この図も、図25と同様に、段数mを横軸とし時間Tcを縦軸として、吐出部D[1]〜D[M]に対応する時間Tc[1]〜Tc[M]をプロットしている。
図27に示すように、制御部6は、ランク判定モードにより吐出状態判定処理を実行する場合には、ランク毎に定められたランク最小値TqMin[q]から、所定の余裕値ΔTQ1を減算した値を、基準値TthQ1[q]とする。また、ランク毎に定められたランク最大値TqMax[q]に、所定の余裕値ΔTQ2を加算した値を、基準値TthQ2[q]とする。また、基準値TthQ2[q]に、所定の余裕値ΔTQ3を加算した値を、基準値TthQ3[q]とする。
そして、吐出状態判定部42は、ランクqに属する吐出部D[m]から検出される周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]が、「TthQ1[q]≦Tc[m]≦TthQ2[q]」を充足する場合に、当該吐出部D[m]の吐出状態が正常であると判定する。
なお、本実施形態では、M個の吐出部Dを、各吐出部Dから検出される周期信号NTcの示す時間Tcと、記録ヘッド3における吐出部Dの位置(段数m)と、に基づいてランク分けを行う場合を想定する。
記録ヘッド3の端部と中央部との間において、キャビティプレート340等の吐出部Dのコンプライアンスが相違することがある。このため、図27に示すように、記録ヘッド3の端部に近い吐出部D、例えば、吐出部D[1]やD[M]等において検出される周期信号NTcの示す時間Tcは、記録ヘッド3の中央部の吐出部Dにおいて検出される周期信号NTcの示す時間Tcよりも、長くなる傾向がある。つまり、吐出部Dに生じる残留振動の特性は、一般的には、吐出部Dの位置に応じて変化する。
このため、本実施形態のように、吐出部Dの位置を示す段数mに応じてランク分けを行うことにより、吐出部Dに生じる残留振動の特性のバラツキを考慮したランクの設定と、吐出部Dに生じる残留振動の特性のバラツキを考慮した基準値TthQ[q]の設定と、が可能となる。
なお、図27においては、図25に示す個別判定モードにおける吐出状態判定処理において、吐出状態が正常と判定された吐出部D[m]に対応する時間Tc[m]を、丸印または二重丸印でプロットし、吐出状態が異常と判定された吐出部D[m]に対応する時間Tc[m]を、三角印でプロットしている。
例えば、これらの図において三角印で示す時間Tc[m1]に対応するm1段の吐出部D[m1]のように、図25に示す、個別判定モードによる吐出状態判定処理では、吐出状態が異常であると判定されるのにもかかわらず、図27に示す、ランク判定モードによる吐出状態判定処理では、吐出状態が正常であると判定される場合がある。これは、ランク判定モードによる吐出状態判定処理において用いられる基準値TthQ[q]が、複数の吐出部Dが属するランクの単位で定められるのに対して、個別判定モードによる吐出状態判定処理において用いられる基準値TthM[m]が、1個の吐出部D[m]の単位で細やかに定められるためである。すなわち、個別判定モードでは、吐出部Dに生じる残留振動の特性のバラツキを細やかに反映して吐出状態判定処理を行うことができるため、ランク判定モードの場合と比べ、誤判定の発生する可能性を小さく抑えることができる。
他方、ランク判定モードにおいては、記録ヘッド3に設けられた吐出部Dの個数Mよりも小さい、Q個のランクの各々に対して基準値Tthを定めればよいため、吐出状態判定処理に係る処理負荷を小さくすることができる。
図28及び図29は、ランク基準生成処理と、ランク基準生成処理を実行する前提として実行されるランク決定準備処理と、が実行される場合における、制御部6の動作の一例を示すフローチャートである。
図28に示すように、ランク決定準備処理とは、吐出状態判定処理と、メンテナンス処理とを含む処理である。
この図に示すように、ランク決定準備処理において、制御部6は、まず、個別判定モードによる吐出状態判定処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する(S200)。次に、制御部6は、ステップS200における吐出状態判定処理において、吐出異常の吐出部Dが存在するか否かを判定する(S210)。
制御部6は、ステップS210の判定結果が肯定である場合、メンテナンス処理が実行されるようにインクジェットプリンター1の各部を制御する(S220)。そして、制御部6は、ステップS220におけるメンテナンス処理の実行後、再び、個別判定モードによる吐出状態判定処理が実行されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する(S230)。そして、制御部6は、ステップS230の終了後、処理をステップS300に進め、ランク基準生成処理を開始させる。
一方、制御部6は、ステップS210の判定結果が否定である場合、処理をステップS300に進め、ランク基準生成処理を開始させる。
なお、制御部6は、ステップS200で実行された吐出状態判定処理、または、ステップS230で実行された吐出状態判定処理のうち、最後に実行された吐出状態判定処理において、検出信号生成部41が出力する周期信号NTc[1]〜NTc[M]の示す時間Tc[1]〜Tc[M]と、吐出状態判定部42が出力する判定情報RS[1]〜RS[M]と、を記憶部60に記憶させる。
図28に示すように、制御部6は、ランク基準生成処理において、まず、段数mを「1」に初期化し、また、ランクの番号qを「1」に初期化する(S300)。
次に、制御部6は、各ランクにおける時間Tcの最大値を表すための変数である最大時間jMaxと、各ランクにおける時間Tcの最小値を表すための変数である最小時間jMinと、を初期化する(S310)。具体的には、最大時間jMaxの初期値として、時間Tcのとり得る値よりも十分に小さい値、例えば「0」を設定し、最小時間jMinの初期値として、時間Tcのとり得る値よりも十分に大きい値、例えば検出期間Tdの時間長を設定する。
図29に示すように、制御部6は、記憶部60に記憶されている判定情報RS[m]が、吐出部D[m]の吐出状態が正常なことを示す値「1」であるか否かを判定する(S320)。換言すれば、制御部6は、ステップS200またはS230で実行された吐出状態判定処理において、吐出部D[m]の吐出状態が正常であると判定されたか否か、について判定する。
制御部6は、ステップS320における判定結果が肯定である場合、つまり、吐出部D[m]の吐出状態が正常と判定された場合、記憶部60に記憶されている時間Tc[m]が、最大時間jMaxよりも大きいか否かを判定する(S330)。そして、制御部6は、ステップS330における判定結果が肯定である場合、最大時間jMaxを時間Tc[m]により更新する(S340)。また、制御部6は、記憶部60に記憶されている時間Tc[m]が、最小時間jMinよりも小さいか否かを判定する(S350)。そして、制御部6は、ステップS350における判定結果が肯定である場合、最小時間jMinを時間Tc[m]により更新する(S360)。
その後、制御部6は、最大時間jMaxと最小時間jMinとの差分値が、各ランクに対して定められた所定のランク幅ΔTq以下であるか否かを判定する(S370)。
制御部6は、ステップS370の判定結果が肯定である場合、つまり、最大時間jMaxと最小時間jMinとの差分値がランク幅ΔTq以下である場合、ランクqにおける時間Tc[m]の最大値であるランク最大値TqMax[q]に、最大時間jMaxを設定し、ランクqにおける時間Tc[m]の最小値であるランク最小値TqMin[q]に、最小時間jMinを設定する(S380)。また、制御部6は、吐出部D[m]に「ランクq」を割り当てる(S390)。そして、制御部6は、段数mが、「M」と等しいか否かを判定し(S400)、ステップS400の判定結果が肯定である場合には、処理をステップS460に進め、ステップS400の判定結果が否定である場合には、段数mに「1」を加算したうえで、処理をステップS320に進める(S410)。
制御部6は、ステップS320における判定結果が否定である場合、つまり、吐出部D[m]の吐出状態が異常であると判定された場合、吐出部D[m]をランクの割り当て対象外とすること、つまり、吐出部D[m]に対して何れのランクも割り当てないことを決定する(S420)。すなわち、図27において三角印で示すような、個別判定モードによる吐出状態判定処理において、吐出状態が異常と判定された吐出部D[m]を、ランクの割り当ての対象外とする。このため、吐出状態が異常と判定された吐出部D[m]を考慮する場合と比較して、誤判定の可能性を低くするようなランクの割り当てと、誤判定の可能性を低くするような基準値TthQ[q]の設定と、を可能とする。
その後、制御部6は、段数mが、「M」と等しいか否かを判定し(S430)、ステップS430の判定結果が肯定である場合には、処理をステップS460に進め、ステップS430の判定結果が否定である場合には、段数mに「1」を加算したうえで、処理をステップS320に進める(S440)。
制御部6は、ステップS370における判定結果が否定である場合、つまり、吐出部D[m]に対応する時間Tc[m]を、最大時間jMaxまたは最小時間jMinに代入したときに、最大時間jMaxと最小時間jMinとの差分がランク幅ΔTqを超えることとなった場合、ランクqに割り当てられる吐出部Dを、吐出部D[m-1]までに留めることとし、吐出部D[m]を、新たなランク(q+1)に割り当てることとする(S450)。すなわち、図27において二重丸印で示す(m2)段のように、吐出部D[m2]をランクqに割り当てると仮定すると、ランクqにおけるランク最小値TqMin[q]及びランク最大値TqMax[q]の間隔が、ランク幅ΔTqを超えてしまう場合には、当該吐出部D[m2]を、新たなランク(q+1)に割り当てる。
制御部6は、ステップS450の処理を実行して、吐出部D[m]に対して新たなランクを割り当てた場合、または、ステップS400若しくはS430における判定の結果が肯定であり、吐出部D[M]に対するランクの割り当て等が完了した場合には、ランク最大値TqMax[q]及びランク最小値TqMin[q]に基づいて、基準値TthQ[q]を算出する(S460)。具体的には、制御部6は、上述の通り、ランク最小値TqMin[q]から余裕値ΔTQ1を減算した値を基準値TthQ1[q]とし、ランク最大値TqMax[q]に余裕値ΔTQ2を加算した値を基準値TthQ2[q]とし、基準値TthQ2[q]に余裕値ΔTQ3を加算した値を基準値TthQ3[q]とする。
その後、制御部6は、段数mが、「M」と等しいか否かを判定し(S470)、ステップS470の判定結果が肯定である場合には、ランク基準生成処理を終了させる。
なお、制御部6は、ステップS450の処理を実行した場合であって、且つ、ステップS470の判定結果が肯定である場合、つまり、吐出部D[M]に対して新たなランク(q+1)を割り当てた場合には、ランク基準生成処理を終了させる前に、当該新たなランク(q+1)に対応する基準値TthQ[q+1]を算出してもよい。
制御部6は、ステップS470の判定結果が否定である場合には、ランク(q+1)に係る最大時間jMax及び最小時間jMinに対して、時間Tc[m]を代入することで初期化し(S480)、さらに、段数mに「1」を加算し、また、ランクの番号qに「1」を加算したうえで(S490)、処理をステップS320に進める。
このように、制御部6は、記録ヘッド3における吐出部D[m]の位置を示す段数mと、吐出部D[m]から検出される周期信号NTc[m]の示す時間Tc[m]と、に基づいて、吐出部D[m]に対するランクの割り当てと、各ランクの基準値TthQ[q]の生成と、を実行する処理である、ランク基準生成処理を実行する。
なお、制御部6は、図28及び図29に示すランク基準生成処理、つまり、ステップS300〜S490のうち少なくとも一部を実行することにより、ランク基準生成部62として機能する。
<<7.実施形態の結論>>
以上において説明したように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、吐出部D[m]の単位で基準値Tthを定め、吐出部Dに生じる残留振動の特性のバラツキを細やかに反映した判定を行うための、個別判定モードによる吐出状態判定処理と、ランクの単位で基準値Tthを定め、処理負荷の小さい判定を行うための、ランク判定モードによる吐出状態判定処理と、の2つの判定モードによる吐出状態判定処理を実行可能である。このため、インクジェットプリンター1の利用状況に応じて判定モードを選択して吐出状態判定処理を実行することが可能となり、インクジェットプリンター1の利用者の利便性の向上、及び、利用者の要求レベルに応じた印刷品質の担保が可能となる。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1では、ランク基準生成処理の前提となるランク決定準備処理として、個別判定モードによる吐出状態判定処理を実行する。このため、吐出状態が異常な吐出部Dから検出される周期信号NTcに基づいて基準値TthQ[q]が生成される可能性を低減させることができる。これにより、ランク判定モードによる吐出状態判定処理における誤判定の発生確率を低く抑えることができる。
また、本実施形態に係る個別基準生成処理では、周辺周期信号NTα[m]から不適切な周期信号NTcを除外した対象周期信号NTβ[m]に基づいて、移動平均TcAve[m]を生成し、当該移動平均TcAve[m]に基づいて、吐出部D[m]毎の基準値TthM[m]を生成する。時間Tcの短い不適切な周期信号NTcが検出される吐出部Dは、当該吐出部Dのキャビティ320に気泡が混入している可能性が高く、吐出状態が異常である可能性が高い。本実施形態では、このような吐出状態が異常な吐出部Dから検出される周期信号NTcに基づいて基準値TthM[m]が生成される可能性を低減させることができる。これにより、個別判定モードによる吐出状態判定処理における誤判定の発生確率を低く抑えることができる。
<<B.変形例>>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。
なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
<変形例1>
上述した実施形態では、ランク基準生成処理において、吐出部D[m]から検出される周期信号NTc[m]の時間Tc[m]と、吐出部D[m]の位置を示す段数mと、に基づいて、M個の吐出部Dの各々に対するランクの割り当てを行うが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、吐出部D[m]の位置を考慮せずに、吐出部D[m]から検出される周期信号NTcの時間Tc[m]に基づいて、各吐出部Dに対するランクの割り当てを行ってもよい。
図30は、本変形例に係るランク判定モードによる吐出状態判定処理と、当該吐出状態判定処理において用いられる基準値TthQ[q]と、を説明するための図である。なお、この図も、図25と同様に、段数mを横軸とし時間Tcを縦軸として、吐出部D[1]〜D[M]に対応する時間Tc[1]〜Tc[M]をプロットしている。
また、図31は、本変形例に係るランク基準生成処理と、当該ランク基準生成処理の前提のランク決定準備処理と、が実行される場合における制御部6の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本変形例に係るランク決定準備処理は、上述した実施形態に係るランク決定準備処理と同様である。
図31に示すように、本変形例に係る制御部6は、ランク決定準備処理(S200〜S230)の完了後、記憶部60に記憶されている時間Tc[1]〜Tc[M]の中から、吐出状態が正常であることを示す判定情報RSに対応する時間Tcの最大値TcMaxと、吐出状態が正常であることを示す判定情報RSに対応する時間Tcの最小値TcMinと、を特定する(S500)。なお、ステップS500の処理においては、図30において三角印で示すような、吐出状態が異常であることを示す判定情報RSに対応する時間Tcを、最大値TcMax及び最小値TcMinの算出の対象から除外する。
次に、制御部6は、ランクの個数Qと、各ランクにおける時間Tc[m]の幅であるランク幅ΔTqと、を決定する(S510)。なお、ランクの個数Q及びランク幅ΔTqのうち少なくとも一方は、予め設定された値であってもよい。例えば、ランクの個数Qが予め定められた値である場合、制御部6は、最大値TcMaxから最小値TcMinを減算した結果を、ランクの個数Qにより除算した値を、ランク幅ΔTqとして決定すればよい。
次に、制御部6は、最大値TcMaxと、最小値TcMinと、ランクの個数Q及びランク幅ΔTqの少なくとも一方と、に基づいて、ランク最大値TqMax[q]と、ランク最小値TqMin[q]と、を決定する(S520)。
具体的には、制御部6は、ステップS520において、図30に例示するように、まず、
最大値TcMaxを、ランク最大値TqMax[1]とし、最小値TcMinを、ランク最小値TqMin[M]とする。次に、制御部6は、ランク最大値TqMax[q+1]とランク最小値TqMin[q]とを等しい値としたうえで、ランク最大値TqMax[1]、TqMax[2]、…、TqMax[M]が、ランク幅ΔTqで並び、ランク最小値TqMin[1]、TqMin[2]、…、TqMin[M]が、ランク幅ΔTqで並ぶように、ランク最大値TqMax[q]及びランク最小値TqMin[q]を定めればよい。
次に、制御部6は、各ランクに対応するランク最大値TqMax[q]と、ランク最小値TqMin[q]とに基づいて、各ランクに対応する基準値TthQ[q]を算出する(S530)。なお、ステップS530における基準値TthQ[q]の算出は、ステップS460と同様に行えばよい。
そして、制御部6は、吐出部D[m]を、当該吐出部D[m]から検出される周期信号NTc[m]に対応する時間Tc[m]が、「TqMin[q]≦Tc[m]≦TqMax[q]」を充足するようなランクqに割り当てる(S540)。
このように、本変形例に係る制御部6は、ランク決定準備処理として実行される、個別判定モードによる吐出状態判定処理により特定された、吐出異常である可能性の高い吐出部Dを除外したうえで、最大値TcMax及び最小値TcMinを特定する。このため、ランク判定モードによる吐出状態判定処理における誤判定の発生確率を低く抑えることが可能となる。
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター1は、個別基準生成部61と、ランク基準生成部62とを備えるが、インクジェットプリンター1は、個別基準生成部61、及び、ランク基準生成部62のうち、少なくとも一方を備えていればよい。例えば、個別基準生成部61が、インクジェットプリンター1の制御部6として設けられる一方で、ランク基準生成部62が、インクジェットプリンター1と通信可能な外部装置に設けられる構成であってもよい。
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例では、単位判定期間Tu-Tにおいて吐出状態判定処理を実行するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、単位印刷期間Tu-Pにおいて吐出状態判定処理を実行してもよい。すなわち、印刷処理と吐出状態判定処理とを同一の単位期間Tuにおいて実行してもよい。
例えば、図16に示す単位印刷期間Tu-Pにおいて、印刷用駆動波形信号Com-APの有する波形PA1に、残留振動を検出するための役割(波形PTとしての役割)を担わせてもよい。この場合、波形PA1の電位が最高電位Va12に維持される期間の一部を検出期間Tdとすることで、波形PA1による駆動により生じた吐出部Dの残留振動を検出するものであってもよい。
また、残留振動を検出するための波形は、波形PA1または波形PA2のように、インクを吐出させるための波形であってもよいし、波形PBのように、インクを吐出させない波形であってもよい。
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、4個の記録ヘッド3に対して、4個の検出部52と、4個の判定ユニット4と、を備えるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、4個の記録ヘッド3に対して、5個以上の検出部52と、5個以上の判定ユニット4と、を備えてもよいし、逆に、4個の記録ヘッド3に対して、3個以下の検出部52と、3個以下の判定ユニット4とを備える構成であってもよい。
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、範囲YNLが範囲YPを含むようにノズル列Lnが設けられるラインプリンターであるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、記録ヘッド3が、Y軸方向に往復動して印刷処理を実行するシリアルプリンターであってもよい。
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、CMYKの4色のインクを吐出可能であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター1は、少なくとも1色以上のインクを吐出可能であればよく、またインクの色もCMYK以外の色であってもよい。
また、上述した実施形態及び変形例に係るインクジェットプリンター1は、4列のノズル列Lnを備えるが、少なくとも1列以上のノズル列Lnを備えるものであればよい。
<変形例7>
上述した実施形態及び変形例において、駆動波形信号Comは、駆動波形信号Com-A及びCom-Bの2系統の信号を含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、駆動波形信号Comは、1以上の系統の信号を含むものであればよい。つまり、駆動波形信号Comは、1系統の信号、例えば、駆動波形信号Com-Aのみを含む信号でもよく、3系統以上の信号、例えば、駆動波形信号Com-A、Com-B、Com-Cを含む信号でもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、単位期間Tuは2つの制御期間Ts1及びTs2を含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、単位期間Tuは、単一の制御期間Tsからなるものであってもよいし、3以上の制御期間Tsを含むものであってもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、印刷信号SI[m]は2ビットの信号であるが、印刷信号SI[m]のビット数は、表示すべき階調や、単位期間Tuに含まれる制御期間Tsの個数、駆動波形信号Comに含まれる信号の系統数等に応じて適宜決定すればよい。
<変形例8>
上述した実施形態及び変形例において、吐出状態判定部42は、電子回路として実装されるが、制御部6のCPUが、制御プログラムに従って動作することにより実現される機能ブロックとして実装されてもよい。
1…インクジェットプリンター、3…記録ヘッド、4…判定ユニット、5…ヘッドドライバー、6…制御部、7…搬送機構、9…ホストコンピューター、10…ヘッドユニット、50…駆動信号供給部、41…検出信号生成部、42…吐出状態判定部、51…駆動信号生成部、52…検出部、53…接続部、60…記憶部、61…個別基準生成部、62…ランク基準生成部、81…回復機構、100…印刷システム、300…圧電素子、320…キャビティ、D…吐出部、N…ノズル、TX…切替部。

Claims (8)

  1. 吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、
    M個(Mは2以上の自然数)の前記吐出部を具備する記録ヘッドと、
    前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、
    前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応した検出信号を生成する検出信号生成部と、
    前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、
    前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、
    を備える、
    ことを特徴とする、液体吐出装置。
  2. 前記検出信号は、
    前記吐出部に生じる残留振動の周期に応じた値を示し、
    前記基準信号生成部は、
    前記α個の検出信号から、β個(βは2≦β≦αを満たす自然数)の検出信号を選択し、当該β個の検出信号の示す値の平均値に基づいて前記第1基準信号を生成する、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記基準信号生成部は、
    前記α個の検出信号から、前記α個の検出信号の示す値の最大値との差分が所定値よりも大きい値を示す検出信号を除外することで、前記β個の検出信号を選択する、
    ことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記一の吐出部は、
    前記吐出状態判定部が、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態が正常であると判定した場合、
    前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、
    Q個(Qは2≦Q<Mを満たす自然数)のランクのうちの何れかのランクに分類され、
    前記吐出状態判定部は、
    前記一の吐出部に対応する第1基準信号の代わりに、
    前記一の吐出部が属するランクに応じて定められる第2基準信号に基づいて、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能である、
    ことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
  5. 前記吐出状態判定部が、前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定した場合に、前記一の吐出部に充填されている液体を排出させる回復機構を備え、
    前記吐出状態判定部は、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態が異常であると判定する場合、
    前記回復機構が、前記一の吐出部に充填されている液体を排出させ、
    前記一の吐出部に液体が再充填された後に、
    前記一の吐出部への液体の再充填後に前記検出信号生成部が生成する前記一の吐出部に対応する検出信号と、前記一の吐出部に対応する第1基準信号と、に基づいて、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定し、
    前記一の吐出部は、
    前記一の吐出部に液体が再充填された後に、
    前記吐出状態判定部が、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態が正常であると判定した場合、
    前記一の吐出部への液体の再充填後に前記検出信号生成部が生成した前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、前記Q個のランクのうち何れかのランクに分類される、
    ことを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 吐出部から液体を吐出する液体吐出装置であって、
    M個(Mは2以上の自然数)の前記吐出部を具備する記録ヘッドと、
    前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、
    前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応した検出信号を生成可能な検出信号生成部と、
    前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、
    前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定可能な吐出状態判定部と、
    を備え、
    前記一の吐出部は、
    前記一の吐出部に対応する検出信号に基づいて、
    Q個(Qは、2≦Q<Mを満たす自然数)のランクのうちの何れかのランクに分類され、
    前記吐出状態判定部は、
    前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する第1判定モードと、
    前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部が属するランクに応じて定められる第2基準信号に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する第2判定モードと、
    による判定の実行が可能である、
    ことを特徴とする、液体吐出装置。
  7. 液体を吐出可能なM個(Mは2以上の自然数)の吐出部を具備する記録ヘッドと、
    前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、
    前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応して検出信号を生成可能な検出信号生成部と、
    を備える液体吐出装置の制御方法であって、
    前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成し、
    前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する、
    ことを特徴とする、液体吐出装置の制御方法。
  8. 液体を吐出可能なM個(Mは2以上の自然数)の吐出部を具備する記録ヘッドと、
    前記M個の吐出部を駆動可能な駆動部と、
    前記M個の吐出部のうち、前記駆動部により駆動された吐出部に生じる残留振動を検出可能な検出部と、
    前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出部が残留振動を検出した吐出部に対応して検出信号を生成可能な検出信号生成部と、
    コンピューターと、
    を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
    前記コンピューターを、
    前記記録ヘッドにおいて一の吐出部を含む所定の範囲に設けられたα個(αは、2≦α<Mを満たす自然数)の吐出部に1対1に対応するα個の検出信号の少なくとも一部に基づいて、前記一の吐出部に対応する第1基準信号を生成する基準信号生成部と、
    前記一の吐出部に対応する検出信号、及び、前記一の吐出部に対応する第1基準信号、に基づいて、前記一の吐出部における液体の吐出状態を判定する吐出状態判定部と、
    して機能させる、
    ことを特徴とする、液体吐出装置の制御プログラム。
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