JP6857464B2 - 複合樹脂材料、複合樹脂材料の製造装置、及び複合樹脂材料の製造方法、並びに複合樹脂材料用添加剤 - Google Patents

複合樹脂材料、複合樹脂材料の製造装置、及び複合樹脂材料の製造方法、並びに複合樹脂材料用添加剤 Download PDF

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Description

本発明は、複合樹脂材料、複合樹脂材料の製造装置、及び複合樹脂材料、並びに複合樹脂材料用添加剤の製造方法に関し、特に、シリコン微細粒子、及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を樹脂の中に含む複合樹脂材料、該複合樹脂材料の製造装置、及び該複合樹脂材料の製造方法、並びに複合樹脂材料用添加剤に関する。
従来から、シリコンの粒子を樹脂中に含有する複合材料が開示されている。具体的には、表示デバイス(特に、液晶デバイス)のシール剤の例として、フィラーとしてのシリコン微粒子を含むことにより、微小な隙間にも侵入できる程度の低い粘度と、粘度安定性を備え、かつ硬化物の耐湿性が高い樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。また、機械的特性及び電気絶縁性の向上を目的として、シリカ、アルミナ、ムライトよりなる群より選択された1以上の物質よりなるマイクロ粒子と、層状シリケート化合物、酸化物、窒化物よりなる群より選択された1以上の物質よりなるナノ粒子と、エラストマー粒子と、を含むエポキシ化合物が開示されている(特許文献2)。
一方、本願出願人は、シリコンの微細粒子についての研究を進めており、これまでに、シリコンの微細粒子を用いた水素の製造方法、及びシリコンの微細粒子を用いたリチウムイオン電池を創出している(特許文献3〜5)。
国際公開公報第WO2012/014499号パンフレット 国際公開公報第WO2013/121571号パンフレット 国際公開公報第WO2015/189926号パンフレット 国際公開公報第WO2016/056373号パンフレット 国際公開公報第WO2015/033815号パンフレット
しかしながら、樹脂中に、シリコン粒子、特に、ナノメートル・オーダーのシリコン微細粒子を含有及び/又は添加させることによって、複合樹脂材料(「樹脂組成物」ともいう。以下、総称して「複合樹脂材料」という。)としての物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めるという技術は、未だ世に知られていない。上述の特許文献2において開示されるナノ粒子の1次粒径の数値範囲は、1〜1000nmというように広範に及んでいるため、「ナノ粒子」とは呼べないものまで含まれている。加えて、該ナノ粒子の材質はシリコンではない。
上述のとおり、これまでに本願発明者らが創出したシリコン微細粒子の用途は限られている。そこで、本願発明者らは、シリコン微細粒子の未知の用途に挑戦すべく、鋭意研究を進めているが、シリコン微細粒子を活用した各種材料の開発は未だ道半ばと言える。
本願発明者らは、シリコン微細粒子のみに拘泥することなく、場合によってはシリコン微細粒子を何らかの材料に対して「縁の下の力持ち」としての役割を担わせ、物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めることも念頭においた研究と分析を重ねた。
その結果、本願発明者らは、樹脂中に、ある特徴的なシリコン微細粒子を含有及び/又は添加させることによって複合樹脂材料を形成することが、該複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めることを実現し得るとの知見を得た。本発明は、上述の視点に基づいて創出された。
本発明は、樹脂が、非常に限定されたシリコン微細粒子を含有及び/又は添加する複合樹脂材料を提供することにより、電子・電気機器分野、住宅建設分野、産業化学分野、電子デバイス分野、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野、産業機器分野、重電分野、ロボット分野、鉄道分野、自動車分野、航空宇宙分野、及び医療機器分野等を含む各種分野における各種部品、部材、及び成形物の実現に大きく貢献し得るものである。
本発明の1つの複合樹脂材料は、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を、樹脂の中に含む。
この複合樹脂材料は、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子(すなわち、シリコン微細粒子)及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む。加えて、該凝集物あるいは該集合物は、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のものを少なくとも一部含んでいる。そのため、モード径及びメジアン径が30nmを超える体積分布を有するシリコン粒子を含む場合に比較して、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料を実現することができる。なお、前述のモード径及び前記メジアン径が10nm未満の体積分布を有することは、さらに確度高く、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料を実現することができるので、好適な一態様である。
また、本発明の1つの複合樹脂材料の製造装置は、結晶性シリコンを粉砕することにより、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を、樹脂の中に混合する混合部と、を備える。
この複合樹脂材料の製造装置によれば、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子(すなわち、シリコン微細粒子)及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む複合樹脂材料を製造することが可能となる。加えて、該凝集物あるいは該集合物は、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のものを少なくとも一部含んでいる。そのため、モード径及びメジアン径が30nmを超える体積分布を有するシリコン粒子の集合物を含む場合よりも、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができる。なお、前述のモード径及び該メジアン径が10nm未満の体積分布を有することは、さらに確度高く、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができるので、好適な一態様である。
また、本発明の1つの複合樹脂材料の製造方法は、結晶性シリコンを粉砕することにより、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を、樹脂の中に混合する混合工程と、を含む。
この複合樹脂材料の製造方法によれば、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子(すなわち、シリコン微細粒子)及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む複合樹脂材料を製造することが可能となる。加えて、該凝集物あるいは該集合物は、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のものを少なくとも一部含んでいる。そのため、モード径及びメジアン径が30nmを超える体積分布を有するシリコン粒子を含む場合に比較して、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができる。なお、前述のモード径及び該メジアン径が10nm未満の体積分布を有することは、さらに確度高く、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができるので、好適な一態様である。
ところで、上述の各発明における結晶性シリコンには、単結晶シリコンのみならず、多結晶シリコンが含まれる。また、上述の各発明における結晶性シリコンとして金属性のシリコンを選択することもできる。なお、上述の各発明の結晶性シリコンが、例えばシリコンウェハの生産過程におけるシリコンの切削加工において通常は廃棄物とされるシリコンの切粉あるいはシリコンの切削屑又は研磨屑であることは、製造コストの低減、環境への負荷の低減、資源の再利用等の多様な観点から、非常に好適な一態様である。
従って、製造コストの低減、原材料の調達の容易性、環境への負荷の低減、及び/又は資源の活用性等の観点から言えば、結晶性シリコンの切粉又は切削屑を出発材料として、上述の各発明のシリコン微細粒子を採用することは、採用し得る好適な一態様である。
さらに、上述の各発明においては、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の上述の凝集物あるいは集合物及び/又はシリコン微細粒子が、その特異的な形状を活かすことにより、より確度高く、又はより容易に、樹脂中に分散され得る。
本発明の1つの複合樹脂材料は、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む。そのため、この複合樹脂材料によれば、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料を実現することができる。また、本発明の1つの複合樹脂材料の製造装置によれば、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む複合樹脂材料を製造することが可能となる。そのため、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができる。また、本発明の1つの複合樹脂材料の製造方法によれば、樹脂中に、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する極めて微細なシリコン粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を含む複合樹脂材料を製造することが可能となる。そのため、物理的及び/又は化学的な特性を高めた複合樹脂材料の製造を実現することができる。
第1の実施形態の複合樹脂材料の製造工程を示すフロー図である。 第1の実施形態の複合樹脂材料の製造装置及び製造工程を示す概要図である。 第1の実施形態のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM像である。 第1の実施形態における、拡大されたシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM像である。 第1の実施形態における、(a)シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の他の例のSEM像、及び(b)(a)の一部の拡大図である。 第1の実施形態のシリコン微細粒子のTEM像を示す図である。 第1の実施形態のシリコン微細粒子等の結晶子径に対する、(a)個数分布における結晶子径分布と、(b)体積分布における結晶子径分布とを示すグラフである。 第1の実施形態のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果((a)広範囲,(b)限定された範囲)を示すグラフである。 他の実施形態の複合樹脂材料の製造装置及び製造工程を示す概要図である。 第1の実施形態の複合樹脂材料の、樹脂の高分子鎖とシリコン微細粒子等との関係を示す概念模式図である。
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の複合樹脂材料の製造工程を示すフロー図である。また、図2は、本実施形態の複合樹脂材料の製造装置及び製造工程を示す概要図である。
本実施形態の複合樹脂材料の製造方法、及びその製造方法によって製造される複合樹脂材料は、例えば、半導体製品に使用されるシリコンウェハの生産過程におけるシリコンの切削加工において通常は廃棄物とされるシリコンの切粉あるいはシリコンの切削屑又は研磨屑(以下、「シリコンの切粉等」又は「切粉等」ともいう)を出発材料の一例とした、各種の工程を備える。また、切粉等には、廃棄対象となったシリコンウェハを公知の粉砕機によって粉砕した微細な屑も含まれる。
図1に示すように、本実施形態の複合樹脂材料の製造方法は、以下の(1)、(2)、及び(4)の工程を含む。また、本実施形態の複合樹脂材料の製造方法は、採用し得る他の一態様として、以下の(3)の工程をさらに含むことができる。
(1)洗浄工程(S1)
(2)粉砕工程(S2)
(3)酸化膜除去工程(S3)
(4)複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)
また、図2に示すように、本実施形態の複合樹脂材料の製造装置100は、主として、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10、粉砕機20、乾燥機(図示しない)、ロータリーエバポレータ40、及びシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物(以下、代表して「シリコン微細粒子等」とも表現する)を樹脂と混合することによって複合樹脂材料を形成する複合樹脂材料形成部(「混合部」とも表現する)70を備える。
また、本実施形態の複合樹脂材料の製造装置100は、採用し得る他の一態様として、酸化膜除去槽50、遠心分離機58を備えることができる。なお、上記の粉砕機20のみ、あるいは洗浄機10及び粉砕機20を、本実施形態における形成部(代表的には、粉砕部)という。
(1)洗浄工程(S1)
本実施形態の洗浄工程(S1)においては、例えば、単結晶又は多結晶のシリコン、すなわち、結晶性シリコンの塊又はインゴット(n型の結晶性シリコンの塊又はインゴット)の切削過程において形成されるシリコンの切粉等が洗浄される。代表的なシリコンの切粉等は、シリコンのインゴットが公知のワイヤ等(代表的には、固定砥粒ワイヤ)によって削り出される切粉等である。従って、本実施形態においては、従来、云わば廃材とされてきたシリコンの切粉等を出発材料として、複合樹脂材料の添加剤を構成するシリコン微細粒子等を形成するため、製造コストの低減、原材料の調達の容易性、環境への負荷の低減、及び/又は資源の活用性の観点で優れている。
本実施形態の洗浄工程(S1)は、主として、上述のシリコンの切粉等の形成過程において付着する有機物、代表的には、切削過程で使用するクーラント剤及び添加剤等の有機物の除去を目的とする。本実施形態においては、図2に示すように、まず、洗浄対象となる切粉等1を秤量した後、その切粉等1と所定の第1液体、並びにボール11が、有底円筒形のポット13a内に導入される。蓋13bを用いてポット13a内を密閉にした後、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10であるボールミル機が有する円柱状の2本の回転体15を回転させることによって、回転体15上のポット13aを回転させる。その結果、ポット13a内において、洗浄対象となる切粉等1を第1液体中に分散させることにより切粉等1の洗浄、及び予備的な粉砕処理が行われる。
ここで、本実施形態のボールミル機は、ポット13a及び蓋13bに収められた鋼球、磁器製ボール、玉石及びその類似物をボール11(粉砕媒体)とし、ポット13a及び蓋13bを回転させることによって物理的な衝撃力を与える粉砕機である。また、上述の第1液体の好適な例は、脂肪酸ナトリウムを含む水である。また、より具体的な一態様においては、例えば、シリコンの切粉等の30グラム(g)に対して純水150ミリリットル(mL)及び脂肪酸ナトリウム0.1gを添加し、ボールミル機(本実施形態においては、MASUDA社製、Universal BALL MILL)の回転体15上に乗せられたポット13a及び蓋13b内で約30分撹拌することにより、シリコンの切粉等を該脂肪酸ナトリウムを含む該水中に分散させた。なお、ボールミル機のボール種は、粒径φ10ミリメートル(mm)のアルミナボールと粒径φ20mmのアルミナボールであった。なお、本実施形態の洗浄工程(S1)においては、ボールミル機内において、シリコンの切粉等を第1液体中で予備粉砕及び撹拌することによって分散処理を行っている。従って、単に第1液体に浸漬させるだけの処理よりも、洗浄効率を格段に高めることになるため、本実施形態の洗浄工程(S1)は、複合樹脂材料内に含まれる添加剤の不純物の低減に貢献し得る。
洗浄工程(S1)の後、蓋13bを開けてシリコン粒子を第1液体とともに排出した後、公知の減圧濾過手段により、第1液体は吸引ろ過にて除去されて廃液となる。一方、残ったシリコン粒子は、公知の乾燥機内において乾燥される。なお、必要に応じて、乾燥処理後に得られたシリコン粒子を、同一工程によって再び洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10内において予備粉砕及び洗浄が行われる。なお、洗浄工程(S1)において採用され得る他の洗浄方法の例は、水(純水を含む)又はエタノール等の有機溶媒を用いた洗浄である。
(2)粉砕工程(S2)
その後、粉砕工程(S2)においては、洗浄されたシリコン粒子に所定の第2液体を添加して、ビーズミル機内においてシリコン粒子の粉砕処理が行われる。従って、本実施形態においては、前述のボールミル機の後に、換言すれば、前述のボールミル機による粉砕の後に用いられるビーズミル機によって、洗浄工程(S1)を経たシリコン粒子がさらに細かく粉砕されることになる。
本実施形態の第2液体の好適な例は、エタノールである。粉砕工程の前処理として、第2液体と洗浄工程(S1)で得られたシリコン粒子をポット13a内に、重量比で、第2液体が80%に対してシリコン粒子を20%となるように収めた後、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10のポット13aおよび蓋13bを回転させることによって予備粉砕処理が行われる。予備粉砕処理されたシリコン粒子を含むスラリーを開口部180ミクロンのメッシュに通すことによって比較的粗い粒子が取り除かれた後、得られたシリコン粒子を含むスラリーを、粉砕機20のビーズミル(本実施形態においては、アシザワ・ファインティング社製、スターミルLMZ015)を用いてさらに微粉砕処理する。より具体的には、粒子径180ミクロン以上のシリコン切粉が除去されたシリコン切粉を含むスラリーを、粉砕機20の導入口21へ投入し、粉砕機20で微粉砕処理を行いながら又は該処理後に、排出口24側のフィルタ25へと導く。また、この処理によって微粉砕化が不十分な場合には、ポンプ28を用いてスラリーを粉砕機20の導入口21側へ戻して再度の微粉砕処理を行えるように循環させることによって、微粉砕処理を行うこともできる。具体的なビーズミル機のビーズ種の一例は、粒径φ0.5mmのジルコニアビーズである。微粉砕処理されたシリコン粒子を含むスラリーを回収した後、減圧蒸留を自動で行うロータリーエバポレータ40を用いて第2液体を除去することにより、微粉砕処理された結果物としてのシリコン微細粒子等が得られる。
なお、本実施形態においては、粒径φ0.5mmのジルコニアビーズを約450g導入し、回転数2900rpm、4時間の微粉砕処理が行われることによって、シリコン微細粒子等を得ることができる。また、粉砕工程(S2)においては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、衝撃波粉砕機の群からなる粉砕機のうちの上述以外のいずれか、又は2種以上の組み合わせによって粉砕処理を行うことも、採用し得る他の一態様である。また、粉砕工程(S2)において用いられる粉砕機として、自動の粉砕機のみならず手動の粉砕機が採用されても良い。但し、確度高く、後述する複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の、シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を形成する観点から言えば、ビーズミルによる処理からなる粉砕工程(S2)、又はビーズミルによる処理を含む粉砕工程(S2)が採用されることが好ましい。後者の具体的な一例は、ボールミル機による粉砕の後にビーズミル機によって粉砕する処理である。
また、公知のライカイ機(代表的なライカイ機として、株式会社石川工場社製、型式20D型)を用いて、上述の粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等をさらに解砕することは、採用し得る他の好適な一態様である。
(3)酸化膜除去工程(S3)
本実施形態においては、他の一態様として酸化膜除去工程(S3)が行われる。ただし、この酸化膜除去工程(S3)が行われなくても、本実施形態の効果が奏される。
本実施形態の酸化膜除去工程(S3)においては、粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液に接触させる処理が行われる。粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液中に浸漬することにより分散させる。具体的には、酸化膜除去槽50において、シリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液55中に撹拌器57を用いて分散させることによりシリコン微細粒子等2の表面の酸化物(主として、酸化シリコン)が除去される。なお、酸化膜除去工程(S3)においては、酸化膜が除去されたシリコンの表面が形成されるため、シリコン表面層に適宜、官能基を付与することも可能となる点は、特筆に値する。
その後、遠心分離機58によって、表面の酸化物の一部又は全部が除去されたシリコン微細粒子等とフッ化水素酸水溶液とが分離される。その後、シリコン微細粒子等をエタノール溶液等の第3液体中に浸漬する。第3液体を除去することにより、当初形成されていた表面の酸化物(又は酸化膜)の一部又は全部が除去されたシリコン微細粒子等が得られる。なお、シリコン微細粒子等2の表面に存在し得る酸化物の除去処理を行わない場合は、シリコン微細粒子等は、後述する複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)による処理が行われる。
(4)複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)
上述のとおり、粉砕工程(S2)の後、又は酸化膜除去工程(S3)の後に、複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)が行われる。本実施形態の複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)は、シリコン微細粒子等2を樹脂と混合するによって、該樹脂の中にシリコン微細粒子等2を含む複合樹脂材料を形成する工程である。
具体的には、まず、シリコン微細粒子等2と、樹脂とが、複合樹脂材料形成部(混合部)70内に導入される。なお、本実施形態において採用される樹脂の種類は特に限定されないが、代表的には、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂の群から選択される1種又は複数種の樹脂である。加えて、他の代表例として、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート(PC)、フッ素樹脂、エチレン酸ピコポリマー、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂の群から選択される1種又は複数種の樹脂である。なお、上述の各種の樹脂は、公知の方法において開示される方法によって形成され得る。
また、本実施形態においては、粉砕工程(S2)が行われているため、モード径及びメジアン径が30nm以下(より狭義には、10nm未満)の体積分布を有する非常に微細なシリコン微細粒子、及び/又はシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物(シリコン微細粒子等2)が形成される。加えて、該凝集物あるいは該集合物は、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物である。そのような非常に微細なシリコン微細粒子等2が採用されるため、シリコン微細粒子等2と上述の樹脂とを混合することによって、樹脂組成物としての複合樹脂材料を得ることができる。
なお、シリコン微細粒子等2と上述の樹脂とを混合する複合樹脂材料形成工程(混合工程)、又は複合樹脂材料形成部(混合部)70の一例として、液状の、又は流動し得る程度に低い粘度の状態の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)中に、シリコン微細粒子等2を混合する方法、又は混合した上で混錬する方法、あるいはそのような各装置を採用することができる。代表的な混合及び/又は混錬装置の例は、該樹脂及びシリコン微細粒子等2を収容する容器自身が回転する方法を採用する容器回転型の装置、あるいは、該樹脂及びシリコン微細粒子等2を収容する容器は固定されているが、該容器内に設けられた羽根によって混合・混錬する方法を採用する装置である。なお、上述の2種類の方法が併用される装置も、採用し得る他の一態様である。また、分散性を高めるために、上述の各種の混合方法・装置において、超音波を付与しつつ混合することも採用し得る他の一態様である。この複合樹脂材料形成工程の後、公知の硬化剤を付与して混合する硬化剤添加工程によって複合樹脂材料である固形物が得られる。硬化剤の一例は、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、酸無水物、フェノールノボラック樹脂等である。
また、上述の樹脂中におけるシリコン微細粒子等2の分散性を高める観点から、複合樹脂材料形成工程(混合工程)、又は複合樹脂材料形成部(混合部)70においては、シリコン微細粒子等2を有機溶剤(例えば、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、及びケトン系溶剤の群から選択される少なくとも一種など)中に含有させ、及び/又は混合させた後に、液状の、又は流動し得る程度に低い粘度の状態の樹脂と混合する方法、又は混合した上で混錬する方法、あるいはそのような各装置を採用することも、好適な他の一態様である。加えて、複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性をさらに高める観点から、上述の複合樹脂材料形成工程又は又は複合樹脂材料形成部(混合部)70において、シリコン微細粒子等2に加えて、例えば、充填材及び/又は強化材を上述の樹脂とを混合することも、採用し得る好適な他の一態様である。ここで、充填材の例は、シリカ、アルミナ、及び顔料の群から選択される少なくとも一種などである。また、強化材の例は、ガラス繊維、カーボン繊維、及びセルロース繊維の群から選択される少なくとも一種などである。
なお、シリコン微細粒子等2と上述の樹脂とを混合する際の、シリコン微細粒子等2と上述の樹脂との好適な混合比は、シリコン微細粒子、及び/又は該凝集物あるいは該集合物(つまり、シリコン微細粒子等2)と樹脂との総質量を1としたときの、該シリコン微細粒子、及び該凝集物あるいは該集合物(つまり、シリコン微細粒子等2)の質量が、0超0.4未満である。この範囲であれば、より確度高く、複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めることに大きく寄与し得る。なお、シリコン微細粒子等2の添加量が上述の0.4より少ない場合であっても、本実施形態の効果が奏され得る。また、本願における機械的強度の一例は、引張り強さ(伸度)、圧縮強さ、せん断強さ、硬度、粘度、又は滑り難さ、のうちの一つを意味する。
また、特に、シリコン微細粒子、及び/又は複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のシリコン微細粒子等2は、その形状の特異性、並びにモード径及びメジアン径が30nm以下(より狭義には、10nm未満)という極めて微細化が実現されたことと相俟って、樹脂との混合及び/又は混錬が促進されやすいと考えられる。より具体的には、シリコン微細粒子等2が樹脂の中に分散したときに、物理的に樹脂の高分子鎖にシリコン微細粒子等2が絡まることになるため、樹脂の高分子鎖80とシリコン微細粒子等2との関係を概念的に示す図8に示すような、複合樹脂材料としての物理的強度の向上が図られ得る。
さらに、シリコン微細粒子等2の樹脂への添加によって、空孔部分が減少し樹脂の密度が高くなることによって、製造される複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めることに大きく寄与し得る。なお、後述する図6に示すように、本実施形態におけるシリコン微細粒子等2は、ダングリングボンドが多く現れると言える(111)面が形成されているため、樹脂中に存在したときに、該樹脂の高分子鎖との化学的結合が形成され易い環境を形成し得ることになる。例えば、シリコン微細粒子等2を用いることによって、シリコン微細粒子等2が有するシリコン微細粒子自身が有するダングリングボンドや水酸基と、上述の樹脂の例えば水酸基又は水素基とが化学的に結合し得るため、複合樹脂材料としての化学的特性を高め得る。その結果、シリコン微細粒子等2の表面に樹脂の高分子鎖が集まり易くなる効果が期待される。従って、物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高める観点からも、シリコン微細粒子等2を複合樹脂材料の一部として採用することは、好適な一態様である。
<第1の実施形態において得られたシリコン微細粒子等の分析結果>
1.SEM像及びTEM像よるシリコン微細粒子等の解析
図3Aは、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。また、図3Bは、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後における、拡大されたシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM像を示す図である。また、図3Cは、第1の実施形態における、(a)シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の他の例のSEM像を示す図、及び(b)(a)の一部の拡大図である。加えて、図4は、第1の実施形態のシリコン微細粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
図3Aに示すように、個別のシリコン微細粒子のみならず、Y1及びY2に示すシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物が確認された。大変興味深いことに、さらに詳細に分析をすると、図3B、並びに図3C(a),(b)のZ部分に示すように、シリコン微細粒子又はその凝集物は、いわば薄層状のシリコン微細粒子が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の凝集物あるいは集合物であることが確認できた。なお、より詳しく観察すれば、例えば、1つ又は一群の鱗片状のシリコン微細粒子の幅(短径)を1としたときの長さ(長径)の範囲は、3.3〜12.9であった。
また、個別のシリコン微細粒子等に着目した図4に示すTEM像から、もう一つの興味深い知見が得られた。具体的には、図4における白線で囲っている領域が示す個別のシリコン微細粒子等は、結晶性、すなわち単結晶シリコンであることが確認できた。加えて、シリコン微細粒子等の少なくとも一部は、断面視において約2nm〜約10nmの大きさの不定形の多角形の結晶子であることが確認できた。なお、図4においては、白線で囲っている各領域に、結晶の面方位が示されている。
2.X線回折法によるシリコン微細粒子等の結晶子径分布の解析
図5は、第1の実施形態のシリコン微細粒子等のSi(111)方向の結晶子径に対する、(a)個数分布における結晶子径分布と、(b)体積分布における結晶子径分布とを示すグラフである。図5は、粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子等の結晶子径分布を、X線回折法を用いて解析することによって得られた結果を示している。図5(a)及び図5(b)は、いずれも、横軸が結晶子径(nm)を表し、縦軸は、頻度を表している。
図5(a)及び図5(b)の結果から、個数分布においては、モード径が1.6nm、メジアン径(50%結晶子径)が2.6nmであった。また、体積分布においては、モード径が6.3nm、メジアン径が9.9nmであった。従って、個数分布においてはモード径であってもメジアン径であっても5nm以下であり、より詳細には3nm以下の値が実現されていることが確認された。なお、体積分布においては、モード径であってもメジアン径であっても少なくとも50nm以下であり、特に30nm以下、より狭義には20nm以下であることが確認されたことは特筆に値する。さらに、図5を見れば、体積分布において、モード径であってもメジアン径であっても10nm未満という極めて小さい値が実現されていることが確認される。
図5(a)及び図5(b)の結果より、ビーズミル法を用いた粉砕工程(S2)後に得られるシリコン微細粒子等は、モード径及びメジアン径が約20nm以下、より具体的には、10nm未満を実現する、約9.8nmであることが確認できた。なお、酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子等の結晶子径分布も、図5とほぼ同様である。
図5(a)及び図5(b)の結果より、ビーズミル法を用いた粉砕工程(S2)後に得られるシリコン微細粒子等は、平均の結晶子径が約20nm以下、より具体的には、10nm未満を実現する、約9.8nmであることが確認できた。なお、酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子等の結晶子径分布も、図5とほぼ同様である。
従って、図5の結果と、図3A〜Cの各図の結果とを合わせて解析すれば、少なくとも粉砕工程(S2)後又は酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子等2の凝集物あるいは集合物は、いわば長径約100nm以下の範囲のいわば薄層状のシリコン微細粒子等が、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態であるといえる。また、シリコン微細粒子等は、図4及び図5から分かるように、主として長径が10nm以下(より狭義には、10nm未満)の結晶子から構成されている。
また、本実施形態のシリコン微細粒子等は、図5に示すように、1nm以下の結晶子径のシリコン微細粒子等を含んでいることが分かる。また、興味深いことに、本実施形態のシリコン微細粒子等の体積分布におけるメジアン径は、約10nmであることも確認された。この数値は、非常に小さい値であるといえる。また、上述のとおり、さらに調査を進めることによって、そのシリコン微細粒子等の見かけの体積径が約100nm以下の範囲にあることが確認された。特に、長径が5nm以下の結晶子径の、極微細なシリコン粒子を多数含むことによって、より確度高く、複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高め得ると考えられる。上述のとおり、シリコン微細粒子等2の樹脂への添加によって、空孔部分が減少し樹脂の密度が高くなることによって、製造される複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性を高めることに大きく寄与し得る。
3.X線回折法によるシリコン微細粒子等の結晶子の面方位の解析
図6(a)は、第1の実施形態の粉砕工程(S2)前のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果(P)及び粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果(Q)を、広い角度範囲において解析した結果である。また、図6(b)は、図6(a)の結果(P)の一部を拡大したものであり、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果を限定された角度範囲において解析した結果(R)である。なお、図6(b)内に示されたC(002)面及びC(003)面の各ピーク強度は、約1wt%〜約3wt%のグラファイトの微粒子がシリコン微細粒子群又はシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物内に含まれていることを示している。また、一例としてのC(002)面のグラファイトの微粒子の大きさは、約50nm以下、より具体的には、約35nmであり、C(003)面のグラファイトの微粒子の大きさは、約100nm以下、より具体的には、約75nmであった。
図6(a)及び(b)に示すように、第1の実施形態の粉砕工程(S2)前の2θ=28.4°付近のSiの結晶面(111)に帰属する回折ピークに比べて、粉砕工程(S2)後のSi(111)に帰属する回折ピークは、その半値幅が大きくなっていることが確認された。なお、粉砕工程(S2)後のSi(111)ピークの半値幅から、シェラーの式を用いて計算された平均結晶子径は、9.8nmであった。また、大変興味深いことに、粉砕工程(S2)後の2θ=28.4°付近のSi(111)に帰属する回折ピークの強度は、その他の回折ピークの強度(例えば、Si(220)又はSi(311)のピーク強度)よりも大きいことが明らかとなった。なお、粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子の結晶格子のSi(111)の配列間隔は、図4に示したとおり、0.31nm(3.1Å)である。
上記の各解析結果を踏まえると、本実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子等については、少なくとも面方位が(111)を有する結晶性のシリコン微細粒子等が、複層花弁状又は鱗片状に多重に折重なった状態の凝集物あるいは集合物であるといえる。
上述のシリコン微細粒子、及び/又は複層花弁状又は鱗片状に多重に折重なった状態の凝集物あるいは集合物を含むシリコン微細粒子2が樹脂中に含まれることが、本実施形態の複合樹脂材料の密度を増加させる結果、複合樹脂材料の物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高め得ることは大変興味深い。上述のとおり、本実施形態においては、シリコン微細粒子等2は、樹脂の中に混合するための、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を含む、複合樹脂材料用添加剤である。
ところで、本実施形態においては、極めて微細なシリコン微細粒子等2が採用されているため、シリコン微細粒子等2のバンドギャップは、通常のシリコンのバンドギャップ(1.1eV)よりも広がっている。従って、比較的短波長の光であっても、樹脂中のシリコン微細粒子等2によって吸収され得る。その結果、そのような比較的短波長の光によって樹脂への影響を和らげることができるため、複合樹脂材料の対候性が高められること、あるいは光照射による劣化の防止となる。
<第1の実施形態の変形例>
第1の実施形態のうち、洗浄工程(S1)のみが行われた結果として得られるシリコンの切粉等(より具体的には、結晶性シリコンの切粉又は切削屑)を、粉砕工程(S2)を行うことなく、一例として複合樹脂材料形成部(混合部)70を用いた複合樹脂材料形成工程(混合工程)(S4)によって複合樹脂材料を形成する処理を行うことは、採用し得る変形例の一つである。なお、第1の実施形態と同様に、酸化膜除去工程(S3)が洗浄工程(S1)の後に行われ得る。
この変形例が採用された場合であっても、第1の実施形態の効果と同様の、又は少なくとも一部の効果が奏され得る。
<その他の実施形態(1)>
ところで、上述の各実施形態においては、出発材として、単結晶又は多結晶のシリコンの塊又はインゴットの切削過程において形成されるシリコンの切粉等を例示しているが、その他の形態のシリコンの切粉等を出発材とすることも採用し得る他の一態様である。具体的には、シリコンの切粉等は、半導体製品の生産過程におけるシリコンのインゴットの切削加工において必然的に形成されるものに限らず、予め選定した結晶性シリコンのインゴットを切削機で一様に又はランダムに切削して作製することも可能である。また、通常は廃棄物とされるシリコンの切粉やシリコンの研磨屑等のいわゆるシリコン廃材が、上述の各実施形態のシリコン微細粒子等の出発材となり得るが、該シリコン廃材には、ウェハの破片、廃棄ウェハ等を粉砕することによって得られる微細な屑も含まれ得る。さらに、金属性のシリコンの切粉又は金属性のシリコンの研磨屑、あるいは金属性のその他の粒子状のシリコンといった材料を出発材料として用いるシリコン微細粒子等も、採用し得る。
<その他の実施形態(2)>
また、上述の各実施形態におけるn型結晶性シリコンの不純物濃度は特に限定されない。また、n型のみならず、p型の結晶性シリコンを採用することもできる。さらに、真正半導体である結晶性シリコンも、上述の各実施形態における結晶性シリコンとして採用し得る。
<その他の実施形態(3)>
また、上述の第1の実施形態における図2に示す複合樹脂材料の製造装置100の代替的な装置として、図7に示す複合樹脂材料の製造装置200が採用されても良い。具体的には、設備の簡素化及び/又は製造コストの低減の観点から、複合樹脂材料の製造装置200においては、シリコンの切削過程で形成されるシリコンの切粉等を洗浄する洗浄機10が、洗浄されたシリコンの切粉等を粉砕することによってシリコン微細粒子等2を形成する粉砕機20を兼ねている態様である。従って、図7に示す装置/方法においては、例えば、洗浄工程においては比較的大きな径のビーズを用い、粉砕工程においては比較的小さい径のビーズを用いることによって、複合樹脂材料として用いるシリコン微細粒子等2を得ることになる。但し、より確度高く、第1の実施形態において説明したシリコン微細粒子等2を得るためには、第1の実施形態のように、ボールミル機を用いて処理した後のビーズミル機によって、シリコン微細粒子等2を形成することが好ましい。なお、さらに製造コストを削減する観点から言えば、水洗等の公知の洗浄がされたシリコンの切粉あるいはシリコンの切削屑又は研磨屑を、シリコン微細粒子等2として活用することも採用し得る一態様である。
<その他の実施形態(4)>
ところで、上述の各実施形態において用いたシリコン微細粒子等2の代わりに、シリコン微細粒子等2におけるシリコン表面を改質したものを採用することができる。具体的には、シリコン微細粒子等2におけるシリコン自身が有するダングリングボンドを水素基、水酸基、及び/又は官能基によって終端したものを採用することによって、物理的及び/又は化学的な特性(例えば、機械的強度、耐候性、耐光性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐火性、熱伝導性、電気伝導性、比重密度など)を高めることは、採用し得る他の一態様である。なお、この態様においては、第1の実施形態における酸化膜除去工程(S3)を行ったシリコン微細粒子等2を採用することも採用し得る。
上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の複合樹脂材料は、例えば、電子・電気機器分野、住宅建設分野、産業化学分野、電子デバイス分野、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野、産業機器分野、重電分野、ロボット分野、鉄道分野、自動車分野、航空宇宙分野、及び医療機器分野等を含む各種分野において採用され得る。
1 切粉等
2 シリコン微細粒子等
10 洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)
11 ボール
13a ポット
13b 蓋
15 回転体
20 粉砕機
21 導入口
22 処理室
24 排出口
25 フィルタ
40 ロータリーエバポレータ
50 酸化膜除去槽
55 フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液
57 撹拌器
58 遠心分離機
70 複合樹脂材料形成部(混合部)
80 樹脂の高分子鎖
100,200 複合樹脂材料の製造装置

Claims (9)

  1. 脂肪酸ナトリウムを含む水中に分散させることによって洗浄された結晶性シリコンを粉砕することにより、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は前記シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の前記凝集物あるいは前記集合物を形成する粉砕工程と、
    前記シリコン微細粒子、及び/又は前記凝集物あるいは前記集合物を、樹脂の中に混合する混合工程と、を含む、
    複合樹脂材料の製造方法。
  2. 前記モード径及び前記メジアン径が10nm未満の体積分布を有する、
    請求項1に記載の複合樹脂材料の製造方法。
  3. 前記シリコン微細粒子、及び/又は前記凝集物あるいは前記集合物が、シリコン切粉を含む、
    請求項1又は請求項2に記載の複合樹脂材料の製造方法。
  4. 前記結晶性シリコンをボールミル機による粉砕の後にビーズミル機によって粉砕することにより、前記シリコン微細粒子、及び/又は前記凝集物あるいは前記集合物を形成する、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合樹脂材料の製造方法。
  5. 前記結晶性シリコンは、固定砥粒ワイヤによって削り出される切粉又は切削屑である、
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合樹脂材料の製造方法。
  6. 脂肪酸ナトリウムを含む水中に分散させることによって洗浄された結晶性シリコンを粉砕して、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子、及び/又は前記シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも一部が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の前記凝集物あるいは前記集合物を形成する粉砕工程を含む、
    複合樹脂材料用シリコン微細粒子の製造方法。
  7. 前記モード径及び前記メジアン径が10nm未満の体積分布を有する、
    請求項6に記載の複合樹脂材料用シリコン微細粒子の製造方法。
  8. 前記シリコン微細粒子、及び/又は前記凝集物あるいは前記集合物が、シリコン切粉を含む、
    請求項6又は請求項7に記載の複合樹脂材料用シリコン微細粒子の製造方法。
  9. 前記結晶性シリコンは、固定砥粒ワイヤによって削り出される切粉又は切削屑である、
    請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の複合樹脂材料用シリコン微細粒子の製造方法。
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