JP6857279B1 - 薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材 - Google Patents

薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性に優れる、薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材を提供する。【解決手段】本発明に係る薄型基板内蔵ハードディスクドライブ1は、中央部に貫通孔を有する円盤形状の磁気ディスク30と、磁気ディスク30の貫通孔に挿入され、磁気ディスク30を共回転可能に支持するスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20を支持するアルミニウム合金製のベースプレート10と、を備える。ベースプレート10が、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm2以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mm2である金属組織を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材に関する。
近年、コンピュータの記録装置としてハードディスクドライブ(以下「HDD」ともいう)が広く用いられている。HDDには、記録媒体用のディスクを支持及び回転させる磁気ディスク駆動装置が搭載されており、磁気ディスク駆動装置は、一般に、データを記録する1枚又は複数枚の磁気ディスク、磁気ディスクを回転させるスピンドルモータ、及び磁気ディスクの内径側部分を固定するクランプ部材を有している。HDDには、このような磁気ディスク駆動装置の他に、各磁気ディスクに対してデータ処理を行う磁気ヘッド、当該磁気ヘッドを磁気ディスクに対して移動自在に支持したアクチュエータ、当該アクチュエータを回動及び位置決めするスイングアーム等が備えられている。
ところで、近年になって、HDDには、マルチメディア等のニーズから大容量化及び密度化が求められている。また、更なる大容量化のため、記憶装置に搭載される磁気ディスクの枚数が増加しており、それに伴い磁気ディスクの薄肉化も求められている。しかしながら、磁気ディスクを薄肉化すると剛性が低下してしまう問題がある。剛性が低下すると、磁気ディスクが変形し難い程度を示す耐衝撃性が低下してしまうため、耐衝撃性の向上が求められている。
このような実情から、近年では高い剛性を有する磁気ディスクが強く望まれ、検討なされている。例えば、特許文献1では、磁気ディスク用アルミニウム合金基板に剛性向上に寄与するSiを多く含有させて、耐衝撃性を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、Siの含有量を増やして剛性を向上させる特許文献1に開示の方法は、耐衝撃性の向上には有効であるものの、製造性との兼ね合いから添加できるSi量には限りがあり、目標とする良好な耐衝撃性は得られていないのが現状であった。
国際公開第2016/068293号
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性に優れる、薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材を提供するものである。
本発明者らは、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、薄型基板内蔵ハードディスクドライブにおける磁気ディスクとベースプレートとの相関性を明らかにすることにより、磁気ディスクの耐衝撃性を向上することができる薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材を提供できることを見出した。
本発明の一態様は、中央部に貫通孔を有する円盤形状の磁気ディスクと、前記磁気ディスクの貫通孔に挿入され、前記磁気ディスクを共回転可能に支持するスピンドルモータと、当該スピンドルモータを支持アルミニウム合金製のベースプレートと、を備え、前記ベースプレートが、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有する薄型基板内蔵ハードディスクドライブである。
本発明の他の態様は、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有するアルミニウム合金製の薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材である。
本発明によれば、中央部に貫通孔を有する円盤形状の磁気ディスクと、前記磁気ディスクの貫通孔に挿入され、前記磁気ディスクを共回転可能に支持するスピンドルモータと、当該スピンドルモータを支持するアルミニウム合金製のベースプレートと、を備える薄型基板内蔵ハードディスクドライブにおいて、前記ベースプレートが、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有することにより、磁気ディスクの耐衝撃性を向上することができる薄型基板内蔵ハードディスクドライブを提供することができる。
また、アルミニウム合金製の薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材が、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有することにより、磁気ディスクの耐衝撃性を向上することができる薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材を提供することができる。
図1は、本実施形態における薄型基板内蔵ハードディスクドライブの一例を示す概略図である。 図2は、最長径10μm以上の第2相粒子において、周囲長が3mm/mm以上であるベースプレートと周囲長が3mm/mm未満のベースプレートとを用いて衝撃試験を行った際の時間と基板(ディスク)の変位との関係を示す。 図3は、第2相粒子の周囲長と最長径を示す概略図である。 図4は、ベースプレート(ベースプレート部材)の厚さを測定する領域を示す概略図である。 図5は、光学顕微鏡によりベースプレートの金属組織を撮影した画像の一例である。
以下、本実施形態における薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における薄型基板内蔵ハードディスクドライブの一例を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態における薄型基板内蔵ハードディスクドライブ1は、中央部に貫通孔を有する円盤形状の磁気ディスク30と、磁気ディスク30の貫通孔に挿入され、磁気ディスク30を共回転可能に支持するスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20を支持するアルミニウム合金製のベースプレート10と、を備える。更に、薄型基板内蔵HDD1は、磁気ディスク30に対してデータ処理を行う磁気ヘッド50と、磁気ヘッド50を磁気ディスク30に対して移動自在に支持するスイングアーム70と、スイングアーム70を回動及び位置決めするアクチュエータ40と、を備えている。磁気ディスク30は1枚であってもよく、複数枚であってもよい。また、ベースプレート10がカバープレート60と結合されることにより、磁気ディスク30等の各種部品が保護される。
A.アルミニウム合金製のベースプレート(ベースプレート部材)
アルミニウム合金製のベースプレート(ベースプレート部材)が有する金属組織について説明する。尚、以下の説明において、ベースプレートの構成、特性等はベースプレート部材にも同様に適用されるものとする。
(最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長)
アルミニウム合金製のベースプレートの金属組織中には、第2相粒子として、金属間化合物や粒子等が存在する。具体的には、ベースプレートは、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上である金属組織を有する。ベースプレートの金属組織において、存在する最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であることにより、ベースプレートの耐衝撃性が向上する。これは、第2相粒子とアルミニウム合金マトリックスの界面で衝撃時の振動エネルギー等が吸収されること等が考えられる。これにより、HDD落下時等のHDDに衝撃が加わったときに、ベースプレートの耐衝撃性が高いため、ベースプレートで衝撃が緩和され、磁気ディスクに伝わる衝撃が小さくなる。その結果、磁気ディスクの耐衝撃性が向上し、磁気ディスクの変形を抑制できる。
一方、ベースプレートの金属組織において、存在する最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm未満である場合、第2相粒子とアルミニウム合金マトリックスとの界面で吸収される振動エネルギーが小さいため、耐衝撃性が向上しない。そのため、ベースプレートの金属組織中に存在する第2相粒子の周囲長は3mm/mm以上の範囲であり、5mm/mm以上の範囲であることが好ましい。尚、周囲長の上限は特に限定されるものではないが、ベースプレートの合金成分等を勘案して、1000mm/mm以下であることが好ましい。また、最長径10μm未満の第2相粒子は耐衝撃性にほとんど影響を及ぼさないため、第2相粒子の最長径の下限は10μm未満である。
図2は、最長径10μm以上の第2相粒子において、周囲長が3mm/mm以上であるベースプレートと周囲長が3mm/mm未満のベースプレートとを用いて衝撃試験を行った際の時間と基板(ディスク)の変位との関係を示す。図2に示されるように、周囲長が3mm/mm以上である最長径10μm以上の第2相粒子を金属組織中に含むベースプレートの方が、周囲長が3mm/mm未満である最長径10μm以上の第2相粒子を金属組織中に含むベースプレートよりも、基板(ディスク)の最大変位、即ち、変形が小さいことがわかる。このことから、周囲長が3mm/mm以上である最長径10μm以上の第2相粒子を金属組織中に含むベースプレートの使用により、磁気ディスクに伝わる衝撃を小さくできるため、磁気ディスクの耐衝撃性を向上することができる。
第2相粒子とは、主に金属間化合物の析出物や晶出物等を意味する。具体的には、AlFe、AlFe、Al(Fe、Mn)、Al−Fe−Si、Al−Fe−Mn−Si、Al−Fe−Ni、Al−Cu−Fe等のAl−Fe系金属間化合物が挙げられる。Al−Fe系金属間化合物の他に、Mg−Si系金属間化合物(MgSi等)、Al−Mn系金属間化合物(AlMn、Al−Mn−Si等)、Al−Ni系金属間化合物(AlNi等)、Al−Cu系金属間化合物(AlCu等)、Al−Cr系金属間化合物(AlCr等)、Al−Zr系金属間化合物(AlZr等)等の金属間化合物が挙げられ、第2相粒子にはSi粒子等も含まれる。
(最長径500μm以上の第2相粒子)
ベースプレートは、最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有する。上述の通り、HDDの大容量化のため、磁気ディスクの厚さを薄くし、ディスクの搭載枚数を増加させていることが検討されているが、磁気ディスクの搭載枚数を増加させるため、ベースプレートの厚さも薄くなる傾向にある。ベースプレートの厚さが薄い場合、ベースプレートの金属組織中に粗大な第2相粒子(500μm以上)が存在すると、そこを起点に亀裂や穴が発生する恐れがある。その場合、ベースプレートの耐衝撃性が低下し、その結果、磁気ディスクの耐衝撃性の低下にも繋がると考えられる。また、ベースプレートに亀裂や穴が発生した場合、HDDの中に封入されるヘリウム等が外に漏れだす可能性もある。そのため、金属組織中に最長径500μm以上の粗大な第2相粒子が1個/mm以上存在するベースプレートは、HDDに適用するベースプレートとしては不適格である。このような観点から、ベースプレートの金属組織において、最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmであることで、磁気ディスクの耐衝撃性が向上すると考えられる。尚、500μm以上の最長径の上限は特に限定されるものではないが、合金成分等により自ずと決まり、3000μm程度である。尚、最長径500μm以上の第2相粒子の単位個/mmは、1mmに存在する最長径500μm以上の第2相粒子の個数を意味する。
ベースプレートの金属組織中に存在する第2相粒子の最長径は、図3に示されるように、光学顕微鏡で観察される第2相粒子Aの平面画像から計測される。具体的には、図3に示されるように、第2相粒子Aにおいて、まず、観察された第2相粒子Aの輪郭線上における一点と輪郭線上の他の点との直線距離を計測する。次に、この直線距離を輪郭線上における全ての点について計測し、最後に、これら全直線距離のうちから選択される最も大きな径を最長径として選択する。こうして選択された最も大きな径を第2相粒子の最長径Dmaxとして定義する。また、第2相粒子の周囲長とは、図3に示されるように、光学顕微鏡で観察される第2相粒子Aの平面画像において、観察された金属間化合物Aの輪郭線上の長さLを意味する。尚、周囲長の単位mm/mmは、1mmに存在する最長径10μm以上の第2相粒子全ての周囲長の合計を意味する。尚、光学顕微鏡による観察では、偏光フィルターを用いず撮影を行う。第2相粒子とマトリックスの区別は、光学顕微鏡で撮影した画像におけるコントラストの濃淡により行い、図5に示す通り、マトリックスよりもコントラストが濃い又は淡いものを第2相粒子とした。
光学顕微鏡による観察以外に、SEM(走査電子顕微鏡)でも第2相粒子の周囲長や最長径を算出することができる。SEMの場合、第2相粒子とマトリックスの区別は、COMP像(組成像)におけるコントラストの濃淡により可能である。マトリックスよりもコントラストが濃い又は淡いものを第2相粒子として識別している。SEM観察は、日立製FlexSEM100(走査電子顕微鏡、オペレーションVer.1.9)を用い、加速電圧:15kv、倍率:1000倍、スキャンの解像度:1024ピクセル、スキャンのデュエルタイム:35μs、視野面積:0.07mm以上の条件にて行う。その後、粒子解析ソフトA像くん(商品名、旭化成エンジニアリング社製)を用いて第2相粒子の周囲長(mm/mm)及び最長径(個/mm)を算出する。SEMを使用する場合、粒子解析ソフトと組み合わせて第2相粒子の周囲長や最長径を算出することができる。粒子解析ソフトはOxford製AZtec(Ver.3.3 SPI)を用い、マトリックスよりもコントラストが濃い又は淡い第2相粒子を1つずつEDS(エネルギー分散型X線分析)にて分析を行い、第2相粒子の周囲長(mm/mm)及び最長径(個/mm)を算出する。検出した第2相粒子1つあたりのEDSによる分析時間は2秒とする。
ベースプレートはアルミニウム合金で構成され、好ましくはアルミニウム合金からなる。アルミニウム合金は、Fe(鉄)とMn(マンガン)とNi(ニッケル)の含有量の合計が、0.05質量%以上7.0質量%以下であり、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる。アルミニウム合金は、任意に、Si(ケイ素):0質量%以上24.0質量%以下、Zn(亜鉛):0質量%以上7.0質量%以下、Cu(銅):0質量%以上5.0質量%以下、Mg(マグネシウム):0質量%以上3.5質量%以下、Be(ベリリウム):0質量%以上0.0015質量%以下、Cr(クロム):0質量%以上0.30質量%以下、Zr(ジルコニア):0質量%以上0.15質量%以下、Sr(ストロンチウム):0質量%以上0.1質量%以下、Na(ナトリウム):0質量%以上0.1質量%以下、及びP(リン):0質量%以上0.1質量%以下を更に含有していてもよく、好ましくは、Ti(チタン)、B(ホウ素)及びV(バナジウム)の含有量の合計が、0質量%以上0.500質量%以下である。
(鉄、マンガン、ニッケル)
Feは、主として第2相粒子(Al−Fe系金属間化合物等)として存在すると共に、一部はマトリックスに固溶して存在する。第2相粒子の生成とマトリックスへの固溶により、Feはベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果を発揮する。Mn及びNiも、主として第2相粒子(Al−Mn系金属間化合物、Al−Ni系金属間化合物等)として存在すると共に、一部はマトリックスに固溶して存在する。第2相粒子の生成とマトリックスへの固溶により、Mn及びNiもベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果を発揮する。しかしながら、FeとMnとNiの含有量の合計が0.05質量%未満である場合、第2相粒子の形成が不十分であり、耐衝撃性が低下してしまうおそれがある。一方、FeとMnとNiの含有量の合計が7.0質量%を超えると、粗大な第2相粒子が生成して、耐衝撃性が低下するおそれがある。従って、FeとMnとNiの含有量の合計は0.05質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。
(ケイ素)
アルミニウム合金がSiを含む場合、Siは、主として第2相粒子(Si粒子等)として存在し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、24.0質量%以下のSiが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のSiの含有量が24.0質量%以下であることによって、粗大なSi粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。アルミニウム合金中がSiを含む場合、第2相粒子の形成を促進させ、耐衝撃性の向上作用を十分に発揮させるため、Siの含有量は5.0質量%以上であることが好ましい。
(亜鉛)
アルミニウム合金がZnを含む場合、Znは、他の添加元素と第2相粒子を形成し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、7.0質量%以下のZnが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のZnの含有量が7.0質量%以下であることによって、粗大な第2相粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。
(銅)
アルミニウム合金がCuを含む場合、Cuは、主として第2相粒子(Al−Cu系金属間化合物等)として存在し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、5.0質量%以下のCuが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のCuの含有量が5.0質量%以下であることによって、粗大な第2相粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。
(マグネシウム)
アルミニウム合金がMgを含む場合、Mgは、他の添加元素と第2相粒子を形成し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、3.5質量%以下のMgが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のMgの含有量が3.5質量%以下であることによって、粗大な第2相粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。
(ベリリウム)
アルミニウム合金がBeを含む場合、Beは、溶湯時において優先的に酸化するため、他の添加元素の酸化を抑制することが可能、即ち、他の添加元素が第2相粒子を形成しやすくなるため、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、0.0015質量%以下のBeが任意に添加されてもよい。但し、Beが0.0015質量%を超過して含まれていてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。
(クロム)
アルミニウム合金がCrを含む場合、Crは、主として第2相粒子(Al−Cr系金属間化合物等)として存在し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、0.30質量%以下のCrが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のCrの含有量が0.30質量%以下であることによって、粗大な第2相粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。
(ジルコニウム)
アルミニウム合金がZrを含む場合、Zrは、主として第2相粒子(Al−Zr系金属間化合物等)として存在し、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、0.15質量%以下のZrが任意に添加されてもよい。アルミニウム合金中のZrの含有量が0.15質量%以下であることによって、粗大な第2相粒子が生成することを抑制する。これにより、ベースプレートの耐衝撃性を一層向上させる効果を得ることができる。
(ナトリウム、ストロンチウム、リン)
アルミニウム合金がNa、Sr及びPの少なくとも一種を含む場合、Na、Sr及びPは、ベースプレート中の第2相粒子(主にSi粒子)のサイズの不均一性を小さくし、ベースプレートの耐衝撃性のバラつきを低減させる効果がある。そのため、アルミニウム合金中に、0.1質量%以下のNa、0.1質量%以下のSr、及び0.1質量%以下のPからなる群から選択された1又は2以上の元素が任意に添加されてもよい。但し、Na、Sr及びPのそれぞれが0.1質量%を超過して含まれていてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。
(チタン、ホウ素、バナジウム)
アルミニウム合金がTi、B及びVの少なくとも一種を含む場合、Ti、B及びVは、ベースプレート中の第2相粒子のサイズの不均一性を小さくし、ベースプレートの耐衝撃性のバラつきを低減させる効果がある。そのため、Ti、B及びVの少なくとも一種を添加する場合、Ti、B及びVの含有量の合計は、0.500質量%以下の範囲が好ましい。但し、Ti、B及びVの含有量の合計が、0.500質量%を超過して含まれていてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。
(不可避不純物等のその他の元素)
アルミニウム合金製のベースプレートは、前述した成分以外の不可避的不純物となる元素が含まれていてもよい。これらの元素としては、Ga、Ca等が挙げられ、その含有量は、各元素について0.10質量%以下、合計で0.30質量%以下であれば本発明の作用効果を損なわない。
(ベースプレートの厚さ)
ベースプレートの厚さは0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。ベースプレートの厚さが0.5mm未満であると、HDDの取り付け時などに落下させた際にベースプレートが変形するおそれがある。また、ベースプレートの厚さが2.0mmより大きいとHDD内に搭載できる磁気ディスク枚数が減ってしまうため好適ではない。そのため、ベースプレートの厚さは好ましくは0.5mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下である。
ベースプレートの厚さは、図4に示されるように、ディスクの中心Cから半径r25mm〜半径r30mmで囲まれる領域のうち、ディスクの片面側の領域、すなわち、塗りつぶしで示される領域において、任意の箇所にてベースプレート10の厚さを測定し、その測定値をベースプレート10の厚さとして定義する。この領域におけるベースプレート10は、厚さが薄くベースプレートの変形に影響を与えるため、この領域におけるベースプレート10の厚さを制御することにより上述の作用を発揮し得る。ベースプレート10の厚さは、例えば、マイクロメータを用いて測定される。
B.アルミニウム合金製のベースプレートの製造方法
ベースプレートは、一般的にダイキャストや鋳造等の一般的な方法により製造することができる。ベースプレートを作製する際、原料となるアルミニウム合金基材を溶解し、溶湯を作製してから溶湯をダイキャストや鋳造によってベースプレートの形状とする。溶湯を作製・鋳造する工程において、溶湯を保持・鋳造する際に溶湯温度が550〜700℃の範囲にある時間が0.1〜1時間であることが好ましい。550〜700℃の範囲にある時間が0.1〜1時間であることで、粗大な第2相粒子の生成を抑制し、微細な第2相粒子が多数生成する。そのため、第2相粒子の周囲長が長くなり、ベースプレートの耐衝撃性を向上させる効果がある。
C.磁気ディスク
磁気ディスクの基材は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム合金製又はガラス製の基材であることが好ましい。また、磁気ディスクの厚さは0.20mm以上0.58mm以下であることが好ましく、0.48mm以下であることがより好ましい。磁気ディスクの厚さが0.20mm未満であると、HDDの取り付け時に磁気ディスクを落下させた場合、磁気ディスクが変形又は割れが生じるおそれがある。一方、磁気ディスクの厚さが0.58mmより大きいと耐衝撃性は改善するものの、HDD内に搭載できる磁気ディスク枚数が減ってしまうため、磁気ディスクの薄肉化を推進する上で好適ではない。尚、磁気ディスクは、アルミニウム合金基板、ガラス基板等の磁気ディスク用基板を用いて作製することができる。
磁気ディスク用基板は、例えば、アルミニウム合金で構成されたアルミニウム合金基板を用いることができる。以下、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の合金組成及びその製造方法について、それぞれの詳細に説明する。
(アルミニウム合金の合金組成)
磁気ディスク用アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金は、従来から使用されているMg、Cu、Zn、Cr等の元素を含有することが好ましい。また、剛性を向上させることができるFe、Mn、Ni等の元素を含有することもできる。
具体的には、一実施形態において、アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金は、必須元素であるMgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有し、更に、任意に、Cu:0質量%以上0.070質量%以下、Zn:0質量%以上0.60質量%以下、Fe:0質量%以上0.50質量%以下、Si:0質量%以上0.50質量%以下、Cr:0質量%以上0.20質量%以下、Mn:0質量%以上0.50質量%以下、Zr:0質量%以上0.20質量%以下、Be:0質量%以上0.0020質量%以下含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる。
また、他の実施形態において、アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金は、必須元素であるFeと、任意の元素であるMn及びNiのうち1種又は2種を含有し、Fe、Mn及びNiの含有量の合計が1.0質量%以上7.0質量%以下であり、更に、任意に、Si:0質量%以上14.0質量%以下、Zn:0質量%以上0.7質量%以下、Cu:0質量%以上1.0質量%以下、Mg:0質量%以上4.5質量%以下、Cr:0質量%以上0.30質量%以下、Zr:0質量%以上0.20質量%以下、Be:0質量%以上0.0015質量%以下、Sr:0質量%以上0.1質量%以下、Na:0質量%以上0.1質量%以下、P:0質量%以上0.1質量%以下含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる。
アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金には、上述した必須成分及び任意成分以外の不可避的不純物となる元素が含まれていてもよい。これらの元素としては、Ti、V、Ga等が挙げられ、それらの含有量は、各元素について0.10質量%以下、合計で0.30質量%以下であればよい。また、Siを任意成分として積極的に添加することもできるが、添加しない場合もある。Siは、一般的な純度の地金はもとより、Alの純度が99.9%以上である高純度の地金にも不可避的不純物として含まれる。このように、Siが不可避的不純物として含まれる場合は、Siの含有量は0.10質量%以下であることが好ましい。
(磁気ディスク用アルミニウム基板の製造方法)
以下に、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造工程の各工程及びプロセス条件の一例を説明する。
まず、上述の成分組成を有するアルミニウム合金素材の溶湯を、常法に従って加熱・溶融することによって調製する。次に、調製されたアルミニウム合金素材の溶湯を、半連続鋳造(DC鋳造)法、連続鋳造(CC鋳造)法等により鋳造して、アルミニウム合金素材を鋳造する。DC鋳造されたアルミニウム合金鋳塊については、必要に応じて均質化処理を実施する。次に、均質化処理を施した又は均質化処理を施していないアルミニウム合金鋳塊(DC鋳造)を熱間圧延し板材とする。次に、熱間圧延した圧延板又はCC鋳造法で鋳造した鋳造板を冷間圧延してアルミニウム合金板とする。冷間圧延の前又は冷間圧延の途中において、冷間圧延加工性を確保するために焼鈍処理を施してもよい。次いで冷間圧延により得られたアルミニウム合金板を円環状に打ち抜き、円環状アルミニウム合金板とする。円環状アルミニウム合金板は、加圧平坦化処理によってディスクブランクとなる。ディスクブランクには、ジンケート処理等の前に、切削加工・研削加工と必要に応じて加熱処理を行う。次に、ディスクブランク表面を脱脂、エッチングして、ジンケート処理(Zn置換処理)を施す。ジンケート処理では、ディスクブランク表面にジンケート皮膜が形成される。更に、ジンケート処理したディスクブランク表面に、磁性体付着の下地処理として無電解Ni−Pめっき処理を施す。無電解Ni−Pめっき処理後のめっき表面に、平滑化のための研磨を行う。こうして、めっき処理後の表面研磨により、磁気ディスク用アルミニウム基板が製造される。
(磁気ディスク用ガラス基板)
磁気ディスク用基板は、例えば、ガラス材料で構成されたガラス基板を用いることもできる。以下、磁気ディスク用ガラス基板について、適用されるガラス材料とガラス基板の製造方法について、それぞれの詳細に説明する。
(ガラス材料)
磁気ディスク用基板に用いられるガラスは、主成分として55質量%以上75質量%以下のSiOを含み、更に、Al:0.7質量%以上25質量%以下、LiO:0.01質量%以上6質量%以下、NaO:0.7質量%以上12質量%以下、KO:0質量%以上8質量%以下、MgO:0質量%以上7質量%以下、CaO:0質量%以上10質量%以下、ZrO:0質量%以上10質量%以下、TiO:0質量%以上1質量%以下を含むガラスが知られている。このようなガラスには、粘性を下げ、溶解性と清澄性を高めるB(アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラスに必須成分として含有される)、高温粘性を低下させ、溶解性及び清澄性、成形性を向上すると共に、ヤング率の向上効果を示すSrO、BaO、イオン交換性能を向上させると共に低温粘性を低下させずに高温粘性を低下させるZnO、清澄性とイオン交換性能を向上させるSnO、着色剤であるFe等の他、清澄剤としてAs、Sbが更に含まれていてもよい。また、微量元素として、La、P、Ce、Sb、Hf、Rb、Y等の酸化物を含んでいてもよい。
(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法)
次に、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所定の化学成分に調製したガラス素材を溶解し、ダイレクトプレス法で、その溶融塊を両面からプレス成形して、所望の厚さを有するガラス元板を作製する。ガラス元板の作製はダイレクトプレス法に限定されず、フロート法、フュージョン法、リドロー法などであってもよい。次に、このガラス元板を円環状にコアリングし、更に内径部と外径部を研磨加工し、所望の内径寸法、外径寸法、面取り長さを有する円環状ガラス板とする。その後、この円環状ガラス板両面の表面を研削加工機で研削し(以下、ラッピング加工)、所望の板厚、平坦度を有する円環状ガラス基板とする。更に、この円環状ガラス基板両面の表面を、研磨加工機で研磨し、所望の厚さのディスク、すなわちガラス基板を作製する。研磨加工の途中に、硝酸ナトリウム溶液、硝酸カリウム溶液等による化学強化処理を行ってもよい。こうして、表面研磨により、磁気ディスク用ガラス基板が製造される。
(その他の構成)
磁気ディスクは、磁気ディスク用アルミニウム合金基板又は磁気ディスク用ガラス基板の他に、これらの基板上に積層された磁性体層を更に有していてもよい。更に、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素系材料からなり、磁性体層上に積層された保護層と、潤滑油からなり、保護層上に塗布された潤滑層等を有していてもよい。
以上、本実施形態に係る薄型基板内蔵ハードディスクドライブ及び薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づき、各種の変形及び変更が可能である。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
<アルミニウム合金製のベースプレート部材の作製>
以下の方法により、実施例及び比較例における評価に使用するアルミニウム合金製のベースプレート部材を作製した。
各実施例及び比較例について、溶解炉・保持炉において、表1に示す化学成分を有する溶湯を調製した。次に、溶解炉・保持炉内の溶湯を、モールドに供給することで厚さ1.5mm用のベースプレート部材(試験材)を作製した。溶湯温度が550〜700℃の範囲にある時間を表1に示す。
各試験材における第2相粒子の周囲長と最長径の測定方法及び耐衝撃性の評価方法について以下に説明する。
<第2相粒子の周囲長と最長径の測定方法>
ベースプレート部材の表面を研磨したのち、光学顕微鏡により偏光フィルターを用いず、400倍で0.07mm以上の視野で観察し、粒子解析ソフトA像くん(商品名、旭化成エンジニアリング社製)を用いて第2相粒子の周囲長(mm/mm)及び最長径を測定した。第2相粒子とマトリックスの区別は、光学顕微鏡で撮影した画像におけるコントラストの濃淡により行い、マトリックスよりもコントラストが濃い又は淡いものを第2相粒子とした。尚、ベースプレートを用い測定を行う場合、図4に示されるディスクの中心Cから半径r25mm〜半径r30mmで囲まれる領域のうち、ディスクの片面側の領域、すなわち、塗りつぶしで示される領域において、任意の箇所にて表面を研磨し、測定を行った。
Figure 0006857279
表1に示すように、実施例1〜4の試験材では、試験材の表面に露出した最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmであった。図2に示されるように、ベースプレートの金属組織において、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であれば、磁気ディスクに伝わる衝撃を小さくできると評価できる。そのため、図2を引用して、これらの試験材は、磁気ディスクの耐衝撃性を高めることができると評価できる。
一方、比較例1の試験材については、溶湯温度が550〜700℃の範囲にある時間が1.5時間であり、最長径500μm以上の第2相粒子が多く生成した。そのため、最長径500μm以上の第2相粒子が1個/mmであり、当該試験材はベースプレート部材としては不適格であった。
また、比較例2の試験材については、第2相粒子の周囲長が1.6mm/mmであり、短すぎたため、図2を引用して、当該試験材は実施例1〜4の各試験材から作製されたベースプレート部材に比べて耐衝撃性特性が劣っていると評価できる。
1 薄型基板内蔵ハードディスクドライブ(HDD)
10 ベースプレート
20 スピンドルモータ
30 磁気ディスク
40 アクチュエータ
50 磁気ヘッド
60 カバープレート
70 スイングアーム

Claims (4)

  1. 中央部に貫通孔を有する円盤形状の磁気ディスクと、前記磁気ディスクの貫通孔に挿入され、前記磁気ディスクを共回転可能に支持するスピンドルモータと、当該スピンドルモータを支持するアルミニウム合金製のベースプレートと、を備え、前記ベースプレートが、最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有することを特徴とする薄型基板内蔵ハードディスクドライブ。
  2. 前記ベースプレートの厚さが0.5mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄型基板内蔵ハードディスクドライブ。
  3. 最長径10μm以上の第2相粒子の周囲長が3mm/mm以上であり、かつ最長径500μm以上の第2相粒子が0個/mmである金属組織を有することを特徴とするアルミニウム合金製の薄型基板内蔵ハードディスクドライブ用ベースプレート部材。
  4. 厚さが0.5mm以上2.0mm以下である請求項3に記載のベースプレート部材。
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