以下、本発明を具体的に説明する。
なお、本明細書における各物性の測定方法は、次のとおりである。
体積抵抗率は、デジタル超絶縁計/微小電流計にて、90℃、ドライエアー雰囲気下、DC300Vで測定する。
燃料透過係数は、厚さ0.5mmのシート状試験片を作製し、SUS製容器(開放部面積1.26×10−3m2)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、上記シート状試験片を容器開放部にセットして密閉し、60℃において測定した重量変化から算出する。
引張弾性率は、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃で測定する。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠した方法で、メルトインデクサー(安田精機製作所社製)を用いて、フルオロポリマーの種類によって定められた測定温度(例えば、297℃)、荷重(例えば、5kg)において内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出する。
ムーニー粘度ML(1+10)は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、121℃において、ASTM D−1646に準拠して測定する。
本発明の積層体は、層(A)及び層(B)を含む。
層(A)は、1×100〜1×109Ω・cmの体積抵抗率を有する。上記体積抵抗率としては、1×102Ω・cm以上が好ましく、1×108Ω・cm以下が好ましい。
層(A)は、フルオロポリマー(a)を含み、フルオロポリマー(a)は、10g・mm/m2/day以下の燃料透過係数、及び、700MPa以下の引張弾性率を有する。
フルオロポリマー(a)の上記燃料透過係数としては、8g・mm/m2/day以下が好ましく、2g・mm/m2/day以下がより好ましい。
フルオロポリマー(a)の上記引張弾性率としては、600MPa以下が好ましく、500MPa以下がより好ましい。
層(B)は、フルオロポリマー(b)を含み、フルオロポリマー(b)は、7g・mm/m2/day以下の燃料透過係数、1000MPa以下の引張弾性率、及び、炭素原子106個あたり100個以上の反応性官能基を有する。
フルオロポリマー(b)の上記燃料透過係数としては、3g・mm/m2/day以下が好ましく、1g・mm/m2/day以下がより好ましい。
フルオロポリマー(b)の上記引張弾性率としては、800MPa以下が好ましく、600MPa以下がより好ましい。
フルオロポリマー(b)の反応性官能基の数としては、120個以上が好ましく、140個以上がより好ましい。上記反応性官能基の詳細は後述する。上限は、800個であってよく、300個であることがより好ましい。
フルオロポリマー(a)は、より一層優れた燃料バリア性及び柔軟性が得られることから、フッ素樹脂(a1)及びフッ素ゴム(a2)を含むことが好ましい。
フッ素樹脂(a1)とフッ素ゴム(a2)の質量比(a1/a2)としては、より一層優れた燃料バリア性及び柔軟性が得られることから、98/2〜10/90が好ましく、95/5〜20/80がより好ましい。
フッ素樹脂(a1)は、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.01〜500g/10分であることが通常である。
フッ素樹脂(a1)は、メルトフローレート(MFR)が1〜500g/10分であることがより好ましい。
フッ素樹脂(a1)は、融点が100〜323℃であることが好ましく、160〜270℃であることがより好ましい。
フッ素樹脂(a1)としては、より一層優れた燃料バリア性が得られることから、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位及びテトラフルオロエチレン(TFE)単位を含むフッ素樹脂(本明細書において、CTFE/TFE共重合体ということがある)、並びに、エチレン単位及びTFE単位を含むフッ素樹脂(本明細書において、エチレン/TFE共重合体ということがある)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記CTFE/TFE共重合体は、CTFE単位を2〜98モル%含有することが好ましく、10〜90モル%含有することがより好ましい。2モル%未満であると燃料バリア性が悪化し、また溶融加工が困難になる傾向があり、98モル%をこえると成形時の耐熱性、耐燃料性が悪化する場合がある。
上記CTFE/TFE共重合体は、TFE単位を2〜98モル%含有することが好ましく、10〜90モル%含有することがより好ましい。2モル%未満であると成形時の耐熱性、耐燃料性が悪化する場合があり、98モル%をこえると燃料バリア性が悪化し、また溶融加工が困難になる傾向がある。
また、耐ストレスクラック性の点から、さらにCTFE及びTFEと共重合可能な単量体(a)単位を含むフッ素樹脂であることが好ましい。
単量体(a)としては、CTFEおよびTFEと共重合可能な単量体であればよく特に限定されないが、エチレン、ビニリデンフルオライド(以下、VdFという)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEという)、一般式(1):
CX1X2=CX3(CF2)nX4 (1)
(式中、X1〜X3は同一または異なるものであり、それぞれ水素原子、フッ素原子または−CF3であり、X4は水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、nは1〜10の整数である)で示されるビニル単量体、一般式(2):
CF2=CF−OCH2−Rf1 (2)
(式中、Rf1は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で示されるアルキルパーフルオロビニルエーテルなどをあげることができるが、これらの中でも、エチレン、VdF、PAVEおよび一般式(1)で示されるビニル単量体からなる群から選ばれる1つ以上の単量体であることが好ましく、PAVEであることがより好ましい。
この場合のPAVEとしては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEという)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられ、これらの中でも、PMVE、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が好ましい。
一般式(1)で示されるビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという)、パーフルオロ(1,1,2−トリハイドロ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)、一般式(3):
CH2=CX3Rf2 (3)
(式中、X3は前記同様であり、Rf2は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である)で示されるパーフルオロアルキルエチレン等があげられる。
一般式(3)で示されるパーフルオロアルキルエチレンとしては、パーフルオロブチルエチレンが好ましい。
一般式(2)で示されるアルキルパーフルオロビニルエーテルとしては、Rf1が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
これらの中でも、上記CTFE/TFE共重合体としては、燃料バリア性と柔軟性が優れ、かつ成形加工性が容易になる点から、CTFE単位およびTFE単位を含む二元フッ素樹脂、または、CTFE単位、TFE単位およびPAVE単位を含む三元フッ素樹脂が好ましく、CTFE単位、TFE単位およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)単位を含む三元フッ素樹脂またはCTFE単位、TFE単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含む三元フッ素樹脂がより好ましい。
二元フッ素樹脂である場合、その組成比(モル比)としては、CTFE/TFE=2/98〜98/2であることが好ましく、5/95〜90/10であることがより好ましく、10/90〜80/20であることがさらに好ましい。CTFE単位が2モル%未満であると燃料バリア性が悪化しまた溶融加工が困難になる傾向があり、98モル%をこえると成形時の耐熱性、耐燃料性が悪化する場合がある。
三元フッ素樹脂である場合、単量体(a)単位は0.1〜10モル%であり、CTFE単位およびTFE単位は合計で90〜99.9モル%である。単量体(a)が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性および耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると燃料バリア性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。さらに、そのCTFE単位は、上記CTFE単位と上記TFE単位の合計の10〜90モル%であることが好ましい。上記CTFE単位と上記TFE単位の合計に占めるCTFE単位が10モル%未満であると燃料バリア性が不充分となる場合があり、90モル%をこえると重合速度が急激に低下し生産性が低下するだけでなく、耐燃料性が低下したり、耐熱性が不充分となる場合がある。より好ましい下限は15モル%、さらに好ましい下限は20モル%、より好ましい上限は80モル%、さらに好ましい上限は70モル%である。
上記CTFE/TFE共重合体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、特開2005−298702号公報、国際公開第2005/100420号などに記載の方法をあげることができる。
上記エチレン/TFE共重合体において、TFE単位とエチレン単位との含有モル比は20:80〜90:10が好ましく、30:70〜80:20がより好ましく、40:60〜70:30が特に好ましい。また、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはテトラフルオロエチレンおよびエチレンと共重合可能なものであればその種類は限定されない。第3成分としては、通常、下記式
CH2=CX3Rf3、CF2=CFRf3、CF2=CFORf3又はCH2=C(Rf3)2
(式中、X3は水素原子、フッ素原子または−CF3、Rf3はフルオロアルキル基を表す)で示されるモノマーが用いられ、これらの中でも、CH2=CX3Rf3で示される含フッ素ビニルモノマーがより好ましく、Rf3の炭素数が1〜8のモノマーが特に好ましい。
前記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)があげられる。
第3成分の含有量は、全モノマー単位に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
フッ素ゴム(a2)は、より一層優れた燃料バリア性及び柔軟性が得られることから、未架橋フッ素ゴム及び上記未架橋フッ素ゴムを架橋してなる架橋フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記未架橋フッ素ゴムは、ムーニー粘度ML(1+10)が10〜100であることが好ましい。
上記未架橋フッ素ゴムとは、部分的にも架橋されておらず、架橋させた履歴のないフッ素ゴムをいう。通常、重合により得られた未架橋フッ素ゴムは、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤等と混練した後、架橋して、架橋フッ素ゴムとして利用される。しかし、層(A)は、未架橋の状態のフッ素ゴムを含むことができ、この場合、より一層優れた柔軟性が得られる。
上記未架橋フッ素ゴムは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温温度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。上記未架橋フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
上記未架橋フッ素ゴムとしては、たとえば、パーフルオロフッ素ゴム、非パーフルオロフッ素ゴム、含フッ素熱可塑性エラストマーなどがあげられる。
上記パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVE系共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという)/PAVE系共重合体などがあげられる。
上記非パーフルオロフッ素ゴムとしては、たとえば、VdF系重合体、TFE/プロピレン系共重合体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
また、上記パーフルオロフッ素ゴムや上記非パーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主モノマーの構成であり、架橋用モノマーや変性モノマー等を共重合したものも好適に用いることができる。架橋用モノマーや変性モノマーとしては、ヨウ素原子、臭素原子、二重結合を含むものなどの公知の架橋用モノマー、移動剤、公知のエチレン性不飽和化合物などの変性モノマーなどを使用することができる。
上記VdF系重合体としては、具体的には、VdF/HFP系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/TFE/プロピレン系共重合体、VdF/エチレン/HFP系共重合体、VdF/TFE/PAVE系共重合体、VdF/PAVE系共重合体、VdF/CTFE系共重合体などをあげることができる。さらに具体的には、VdF25〜85モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体75〜15モル%とからなる含フッ素共重合体であることが好ましく、より好ましくは、VdF50〜80モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなる含フッ素共重合体である。
ここで、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえば、TFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。
上記未架橋フッ素ゴムの中でも、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF単位を含むフッ素ゴムであることが好ましく、VdF単位とHFP単位とを有する未架橋フッ素ゴムであることがより好ましい。
また、圧縮永久ひずみが良好な点から、VdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴム、TFE/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムであることが好ましく、低燃料透過性の観点からVdF/TFE/HFP系フッ素ゴムであることがより好ましい。
上記パーフルオロフッ素ゴムや上記非パーフルオロフッ素ゴムは、通常の乳化重合法により製造することができる。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類や目的とするエラストマーにより適宜決定すればよい。
上記含フッ素熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、フッ素樹脂との相溶性が優れる点から、少なくとも1種のエラストマー性ポリマーセグメント(p−1)と、少なくとも1種の非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)とからなり、かつエラストマー性ポリマーセグメント(p−1)と非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)のうち、少なくとも一方が含フッ素ポリマーセグメントであることが好ましい。
エラストマー性ポリマーセグメント(p−1)は、重合体に柔軟性を付与し、ガラス転移点が25℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下である。その構成単位としては、たとえば、TFE、CTFE、HFP、一般式(4):
CF2=CFO(CF2CFX1O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf4 (4)
(式中、X1は、フッ素原子または−CF3;Rf4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;pは、0〜5の整数;qは、0〜5の整数である)で表されるパーフルオロビニルエーテルなどのパーハロオレフィン;VdF、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体;架橋部位を与える任意の単量体などがあげられる。
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(5):
CX5 2=CX5−Rf5CHR1X6 (5)
(式中、X5は同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子または−CH3;Rf5は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基;R1は、水素原子または−CH3;X6は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(6):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n−X7 (6)
(式中、mは、0〜5の整数;nは、1〜3の整数;X7は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子である)で表される単量体で表されるような単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
つぎに、非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)の構成単位としては、TFE、CTFE、PAVE、HFP、一般式(7):
CF2=CF(CF2)rX8 (7)
(式中、rは、1〜10の整数;X8は、フッ素原子または塩素原子である)で表される化合物、パーフルオロ−2−ブテンなどのパーハロオレフィン;VdF、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、一般式(8):
CH2=CX9−(CF2)s−X9 (8)
(式中、X9は、水素原子またはフッ素原子;sは、1〜10の整数)で表される化合物、CH2=C(CF3)2などの部分フッ素化オレフィン;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸などの非フッ素単量体などをあげることができる。
また、これらの中でも、エラストマー性ポリマーセグメント(p−1)が、TFE/VdF/HFPの共重合体であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)が、TFE/エチレンの共重合体である含フッ素熱可塑性エラストマーが好ましく、エラストマー性ポリマーセグメント(p−1)が、TFE/VdF/HFP=0〜35/40〜90/5〜50モル%であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)が、TFE/エチレン=20〜80/80〜20モル%である含フッ素熱可塑性エラストマーがより好ましい。
上記含フッ素熱可塑性エラストマーは、1分子中にエラストマー性ポリマーセグメント(p−1)と非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)がブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが好ましく、上記含フッ素熱可塑性エラストマーが、1個のエラストマー性ポリマーセグメント(p−1)と、2個の非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)からなり、かつそのうちの少なくとも一方は含フッ素ポリマーセグメントであるトリブロックポリマーからなることが好ましい。
上記含フッ素熱可塑性エラストマーの製法としては、エラストマー性ポリマーセグメント(p−1)と非エラストマー性ポリマーセグメント(p−2)とをブロックやグラフトなどの形態でつなぎ、含フッ素多元セグメント化ポリマーとするべく、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーが得られることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
上記含フッ素熱可塑性エラストマーの好ましい製造方法としては、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法をあげることができる。たとえば、実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、上記パーハロオレフィンと、要すれば硬化部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、乳化重合を行う方法があげられる。
上記架橋フッ素ゴムは、上記未架橋フッ素ゴムを架橋してなる。上記架橋フッ素ゴムは、未架橋フッ素ゴムを、熱架橋法、スチーム架橋法、放射線架橋法等の公知の方法で、架橋することにより得られるものであってよいが、燃料バリア性が一層優れることから、フッ素樹脂(a1)の存在下、フッ素樹脂(a1)の溶融条件下にて、上記未架橋フッ素ゴムを動的に架橋処理することにより得られたものであることが好ましい。
ここで、動的に架橋処理するとは、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、上記未架橋フッ素ゴムを溶融混練と同時に動的に架橋させることをいう。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。動的に架橋処理することで、フッ素樹脂(a1)とフッ素ゴム(a2)の相構造およびフッ素ゴム(a2)の分散を制御することができる。
上記架橋フッ素ゴムは、フッ素樹脂(a1)、上記未架橋フッ素ゴム、及び、架橋剤を含む組成物から得ることができる。
上記架橋剤としては、上記未架橋フッ素ゴムの種類や溶融混練条件に応じて、適宜選択することができる。
本発明で用いられる架橋系は、上記未架橋フッ素ゴムに架橋性基(キュアサイト)が含まれる場合は、キュアサイトの種類によって、または上記積層体などの用途により適宜選択すればよい。架橋系としては、ポリオール架橋系、有機過酸化物架橋系およびポリアミン架橋系のいずれも採用できる。
ここで、ポリオール架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性も良く、シール特性に優れているという特徴がある点で好適である。
有機過酸化物架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
ポリアミン架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系を用いて架橋する場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
したがって、上記架橋剤としては、ポリアミン架橋剤、ポリオール架橋剤、有機過酸化物架橋剤を使用することができるが、上記ポリオール架橋剤又は上記有機過酸化物架橋剤が好ましく、上記ポリオール架橋剤がより好ましい。
上記ポリアミン架橋剤としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物があげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
上記ポリオール架橋剤としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、たとえば、ポリヒドロキシ化合物、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
上記有機過酸化物架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
これらの中でも、得られる層の圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFがさらに好ましい。
また、ポリオール架橋系においては、上記ポリオール架橋剤と併用して、通常、架橋促進剤を用いる。上記架橋促進剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
上記ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bという)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCという)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
また、上記架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
上記有機過酸化物架橋系の架橋促進剤としては、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
上記架橋剤及び架橋促進剤の添加量としては、動的に架橋処理するときの温度における加硫90%完了時間T90が2〜6分になるように調整された量であることが好ましく、加硫90%完了時間T90が3〜5分になるように調整された量であることがより好ましい。最適加硫時間T90が2分未満となる量であると架橋フッ素ゴムの分散が不均一かつ粗大化する傾向があり、6分をこえる量となると未架橋フッ素ゴムが架橋するのに長時間を要し、かつ完全には架橋しなくなる傾向がある。
ここで、加硫90%完了時間T90とは、1次プレス加硫時にJSR型キュラストメータII型、およびV型を用いて、動的加硫時の温度における加硫曲線を求め、最大トルク値の90%の値に達する時間を加硫90%完了時間(T90)とする。
上記架橋剤と上記架橋促進剤の添加量を決定する具体的な方法としては、170℃における加硫90%完了時間T90が2〜6分、好ましくは3〜5分となる、フッ素ゴム100重量部に対する上記架橋剤の配合量 X重量部、上記架橋促進剤の配合量 Y重量部をまず求める。
次に、このXおよびYの量をもとに、
(i)架橋剤の量:X重量部、架橋促進剤の量:0.2Y〜0.5Y重量部、好ましくは0.3Y〜0.4Y重量部、または
(ii)架橋剤の量:2X〜5X重量部、架橋促進剤の量:0.4Y〜2.5Y重量部
が、本発明における好ましい架橋剤と架橋促進剤の添加量となる。
上記架橋促進剤が0.2Y重量部未満であると、フッ素ゴムの架橋が充分に進行せず、耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、2.5Y重量部をこえると、機械強度が低下する傾向がある。
溶融条件下とは、フッ素樹脂(a1)が溶融する温度下を意味する。溶融する温度は、フッ素樹脂(a1)のガラス転移温度および/または融点により異なるが、120〜330℃であることが好ましく、160〜270℃であることがより好ましい。温度が、120℃未満であると、フッ素樹脂(a1)とフッ素ゴム(a2)の間の分散が粗大化する傾向があり、330℃をこえると、フッ素ゴム(a2)が熱劣化する傾向がある。
層(A)において、フッ素樹脂(a1)が連続相を形成しかつフッ素ゴム(a2)としての上記架橋フッ素ゴムが分散相を形成する構造、またはフッ素樹脂(a1)とフッ素ゴム(a2)としての上記架橋フッ素ゴムが共連続を形成する構造を有することができるが、その中でも、フッ素樹脂(a1)が連続相を形成しかつフッ素ゴム(a2)としての上記架橋フッ素ゴムが分散相を形成する構造を有することが好ましい。
上記未架橋フッ素ゴムが、分散当初マトリックスを形成していた場合でも、架橋反応の進行に伴い、上記未架橋フッ素ゴムが上記架橋フッ素ゴムとなることで溶融粘度が上昇し、上記架橋フッ素ゴムが分散相になる、またはフッ素樹脂(a1)との共連続相を形成するものである。
このような構造を形成すると、層(A)は、優れた耐熱性、耐燃料性を示すと共に、燃料バリア性と柔軟性とを両立することができ、さらに良好な成形加工性を有することとなる。その際、上記架橋フッ素ゴムの平均分散粒子径は、0.01〜30μmであることが好ましい。平均分散粒子径が、0.01μm未満であると、流動性が低下する傾向があり、30μmをこえると、層(A)の強度が低下する傾向がある。
また、層(A)において、その好ましい形態であるフッ素樹脂(a1)が連続相を形成し、かつ上記架橋フッ素ゴムが分散相を形成する構造の一部に、フッ素樹脂(a1)と上記架橋フッ素ゴムとの共連続構造を含んでいてもよい。
層(A)は、導電性に優れることから、導電性材料を含むことが好ましい。
上記導電性材料としては特に限定されず、たとえば金属、炭素などの導電性単体粉末または導電性単体繊維;酸化亜鉛などの導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末などがあげられる。
上記導電性単体粉末または導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケルなどの金属粉末;鉄、ステンレススチールなどの金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル、カーボンナノチューブなどがあげられる。
上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタンなどの非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキなどがあげられる。
上記導電性材料のなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。上記導電性フィラーとしては、導電性カーボンブラック、グラファイト、表面グラファイト化カーボンブラック、有機ポリマーをグラフト化したカーボンブラック等が使用可能である。
層(A)において、上記導電性材料の含有量は、フルオロポリマー(a)に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、1〜18質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。
層(A)は、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などを、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で含んでもよい。
また、燃料バリア性を更に向上させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
層(B)は、フルオロポリマー(b)を含む。フルオロポリマー(b)は、フッ素樹脂(b1)を含むことが好ましい。
フッ素樹脂(b1)は、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.01〜500g/10分であることが通常である。
フッ素樹脂(b1)は、メルトフローレート(MFR)が1〜500g/10分であることがより好ましい。
フッ素樹脂(b1)は、融点が100〜323℃であることが好ましく、160〜270℃であることがより好ましい。
フッ素樹脂(b1)としては、より一層優れた燃料バリア性が得られることから、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位及びテトラフルオロエチレン(TFE)単位を含むフッ素樹脂(本明細書において、CTFE/TFE共重合体ということがある)、並びに、エチレン単位及びTFE単位を含むフッ素樹脂(本明細書において、エチレン/TFE共重合体ということがある)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記CTFE/TFE共重合体は、上述した個数の反応性官能基を有することを除き、フッ素樹脂(a1)の好ましいフッ素樹脂として説明した上記CTFE/TFE共重合体と同様である。また、上記エチレン/TFE共重合体は、上述した個数の反応性官能基を有することを除き、フッ素樹脂(a1)の好ましいフッ素樹脂として説明した上記エチレン/TFE共重合体と同様である。
フルオロポリマー(b)は、上述した個数の反応性官能基を有し、従って、層(B)は他の層と強固に接着する。
上記反応性官能基としては、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。上記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(−C(=O)O−)、酸無水物結合(−C(=O)O−C(=O)−)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルバモイル基(NH2−C(=O)−)、カルバモイルオキシ基(NH2−C(=O)O−)、ウレイド基(NH2−C(=O)−NH−)、オキサモイル基(NH2−C(=O)−C(=O)−)など、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基などにおいては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基などの炭化水素基で置換されていてもよい。
上記反応性官能基は、導入が容易である点、フルオロポリマー(b)が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
なかでも、国際公開第99/45044号に記載のカーボネート基および/またはカルボン酸ハライド基を有するものが特に好ましい。
フルオロポリマー(b)は、ポリマーの主鎖末端または側鎖のいずれかに反応性官能基を有する重合体からなるものであってもよいし、主鎖末端および側鎖の両方に反応性官能基を有する重合体からなるものであってもよい。主鎖末端に反応性官能基を有する場合、主鎖の両方の末端に有していてもよいし、いずれか一方の末端にのみ有していてもよい。上記反応性官能基は、エーテル結合も有する場合、該反応性官能基をさらに主鎖中に有するものであってもよい。
フルオロポリマー(b)は、主鎖末端に反応性官能基を有する重合体からなるものが、機械特性、耐薬品性を著しく低下させない理由で、または、生産性、コスト面で有利である理由で好ましい。
上記反応性官能基の数は、積層する層の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力と隣接する層との接着方法などの違いにより適宜選択すればよい。
上記末端の反応性官能基の数は、フルオロポリマー(b)の粉末をその融点より50℃高い成形温度、5MPaの成形圧力にて圧縮成形することにより得られる厚み0.25〜0.30mmのフィルムシートを、赤外分光光度計を用いて赤外吸収スペクトル分析し、既知のフィルムの赤外吸収スペクトルと比較して反応性官能基の特性吸収の種類を決定し、各差スペクトルから次式により算出する個数である。
末端基の個数(主鎖炭素数1×106個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルム厚(mm)
対象となる末端反応性官能基の補正係数を表1に示す。
表1の補正係数は、主鎖炭素数1×106個あたりの末端基を計算するためにモデル化合物の赤外吸収スペクトルから決定された値である。
上記反応性官能基を主鎖および/または側鎖の末端に導入する方法としては、反応性官能基含有の単量体(β)を共重合して導入する方法、反応性官能基を有するまたは生ずる化合物を重合開始剤として用いる方法、反応性官能基を有するまたは生ずる化合物を連鎖移動剤として用いる方法、フッ素ポリマーに高分子反応で反応性官能基を導入する方法、これらの方法を併用する方法などが例示できる。
共重合で反応性官能基を導入する場合の反応性官能基含有の単量体(β)としては、フルオロポリマー(b)を与える単量体と共重合可能な単量体で上記反応性官能基を有するものであれば、特に制限されない。具体的には、たとえばつぎのものが例示できる。
上記単量体(β)の第1としては、国際公開第2005/100420号に記載の脂肪族不飽和カルボン酸類があげられる。脂肪族不飽和カルボン酸類は、重合性の炭素−炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも1個有し、かつ、カルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)を1分子中に少なくとも1個有するものが好ましい。
上記脂肪族不飽和カルボン酸としては、脂肪族不飽和モノカルボン酸であってもよいし、カルボキシル基を2個以上有する脂肪族不飽和ポリカルボン酸であってもよい。脂肪族不飽和モノカルボン酸としては、たとえば(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの炭素数3〜6の不飽和脂肪族モノカルボン酸類があげられる。
上記脂肪族不飽和ポリカルボン酸としては、たとえばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物またはシトラコン酸無水物などの炭素数3〜6の不飽和脂肪族ポリカルボン酸類があげられる。
上記単量体(β)の第2としては、式:
CX7 2=CY1−(Rf4)n−Z1
(式中、Z1は、上記反応性官能基;X7およびY1は、同一または異なって、水素原子もしくはフッ素原子;Rf4は、炭素数1〜40のアルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、エーテル結合を有する炭素数2〜40の含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を有する炭素数2〜40の含フッ素オキシアルキレン基;nは、0または1)で表される不飽和化合物があげられる。
共重合により導入される反応性官能基含有の単量体(β)単位の含有率は、0.05モル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましい。多すぎると、加熱溶融時にゲル化や加硫反応が発生しやすいため、官能基含有モノマーの上限としては5モル%が好ましく、3モル%がさらに好ましく、2モル%が特に好ましい。
上記フッ素樹脂は、ポリマーの主鎖末端または側鎖末端にヘテロ環基またはアミノ基を有するものであってもよい。
ヘテロ環基とは、そのヘテロ環部位の環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。ヘテロ環基の中では、オキサゾリル基が好ましい。
アミノ基とは、アンモニア、第一級または第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である。アミノ基としては、式:
−NR4R5
(式中、R4およびR5は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の1価の有機基である。)で表される基が挙げられる。アミノ基の具体例としては、−NH2、―NH(CH3)、−N(CH3)2、―NH(CH2CH3)、―N(C2H5)2、―NH(C6H5)などがあげられる。
フルオロポリマー(b)は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。上記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、上記フッ素樹脂の組成や量に応じて適宜設定することができる。
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカーボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。これらのなかでも、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)が好ましい。
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1〜4の水溶性アルコール、炭素数1〜4の炭化水素及び炭素数1〜4のフッ化炭化水素、及び過硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記連鎖移動剤は、メタン、エタン、n−ブタン、イソブタン、メタノール、n−プロピルアルコール、HFC−134a、HFC−32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、n−プロピルアルコール、メタノール及びイソブタンからなる群より選択される少なくとも1つであることが更に好ましい。
層(B)は、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などを、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で含んでもよい。
また、燃料バリア性を更に向上させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
本発明の積層体は、更に、層(C)を含むことができる。
層(C)は、1000MPa以下の引張弾性率、及び、10〜80当量/106gのアミン価を有するポリアミド系樹脂を含むことが好ましい。
上記ポリアミド系樹脂の上記引張弾性率としては、800MPa以下が好ましく、600MPa以下がより好ましい。
上記ポリアミド系樹脂が高いアミン価を有することにより、層(C)が他の層と強固に接着する。
上記アミン価は、好ましくは15〜75当量/106gであり、より好ましくは20〜70当量/106g、更に好ましくは25〜60当量/106gである。
上記ポリアミド系樹脂は、接着力の観点から、酸価が80当量/106g以下であることが好ましい。上記酸価は、好ましくは70当量/106g以下、より好ましくは60当量/106g以下、更に好ましくは40当量/106g以下である。
上記ポリアミド系樹脂は、融点が130℃以上であることが好ましい。好ましくは、150〜300℃であり、更に好ましくは、150〜270℃である。
上記ポリアミド系樹脂とは、分子内に繰り返し単位としてアミド結合−NHCO−を有する結晶性高分子をいう。このようなものとしては、例えば、アミド結合の過半が脂肪族、あるいは脂環族構造と結合している樹脂、所謂ナイロン樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン1012、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン46及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸の重合体、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12T、並びに、これらのブレンド物等を挙げることができる。
上記ポリアミド系樹脂は、アミド結合を繰り返し単位として有しない構造が一部にブロック又はグラフト結合されているものであってもよい。このような樹脂としては、例えば、ナイロン6/ポリエステル共重合体、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、ナイロン12/ポリエステル共重合体、ナイロン12/ポリエーテル共重合体等の所謂ポリアミド樹脂エラストマー等を挙げることができる。これらのポリアミド樹脂エラストマーは、ナイロン樹脂オリゴマーとポリエステル樹脂オリゴマーあるいはポリエーテル樹脂オリゴマーとが、エステル結合又はエーテル結合を介してブロック共重合されたものである。上記ポリエステル樹脂オリゴマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート等を、ポリエーテル樹脂オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等をそれぞれ例示できる。特に好ましい態様としては、ナイロン6/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体等である。
上記ポリアミド系樹脂としては、なかでも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン1012、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン6/ポリエステル共重合体、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、ナイロン12/ポリエステル共重合体、ナイロン12/ポリエーテル共重合体、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12T、及び、これらのブレンド物からなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
上記ポリアミド系樹脂は、成形性及び機械特性を考慮して、相対粘度で表される分子量が1.8以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。上記相対粘度は、JIS K 6810に準じて測定される。
上記ポリアミド系樹脂としては、これをチューブ、ホース成形体に使用する場合等のように強靱性が要求される場合にあっては、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、又は、ナイロン12/ポリエーテル共重合体のいずれかを主成分(50重量%以上)として含むものを好適に使用することができる。これらのうち、ナイロン11、ナイロン12又はナイロン612が一層好ましい。
層(C)は、可塑剤や他の樹脂等を含んでいてもよい。上記可塑剤は、層(C)を柔軟にし、特に積層体(例えば、チューブ又はホース)の低温機械特性を向上させることができる。また、他の樹脂を配合することで、例えば、積層体(例えば、チューブ又はホース)の耐衝撃性を向上させることができる。
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシレングリコール、グリセリン、β−ナフトール、ジベンジルフェノール、オクチルクレゾール、ビスフェノールA等のビスフェノール化合物、p−ヒドロキシ安息香酸オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ペプチル、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクトン、フェノール類のリン酸エステル化合物、N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド等を挙げることができる。
上記ポリアミド系樹脂に配合する上記他の樹脂としては、相溶性に優れるものが好ましく、例えば、エステル及び/又はカルボン酸変性オレフィン樹脂、アクリル樹脂(特に、グルタルイミド基を有するアクリル樹脂)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリフェニレンオキサイド等を挙げることができる。
上記ポリアミド系樹脂は、また、着色剤、各種添加剤等を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、強化剤(フィラー)等を挙げることができる。
本発明の積層体のうち、層(A)が、フッ素ゴム(a2)として、上記架橋フッ素ゴムを含む積層体は、例えば、
上記未架橋フッ素ゴム及び上記架橋剤を含む組成物(a1)を得る工程、
組成物(a1)とフッ素樹脂(a1)とをフッ素樹脂(a1)の融点以上の温度で混練することにより、フッ素樹脂(a1)と、上記架橋フッ素ゴムとを含む組成物(a2)を得る工程、及び、
組成物(a2)及びフルオロポリマー(b)をそれぞれ成形して、層(A)及び層(B)を含む積層体を得る工程
を含む製造方法により、製造できる。
組成物(a2)を得るための混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用することにより行うことができる。この混練において、未架橋フッ素ゴムが動的に架橋され、フッ素樹脂(a1)及び架橋フッ素ゴムを含む組成物(a2)を得ることができる。
本発明の積層体のうち、層(A)が、フッ素ゴム(a2)として、上記未架橋フッ素ゴムを含む積層体は、例えば、
フッ素樹脂(a1)と上記未架橋フッ素ゴムとを、上記未架橋フッ素ゴムが架橋しない条件で、上記フッ素樹脂の融点以上で混練することにより、フッ素樹脂(a1)と、上記未架橋フッ素ゴムとを含む組成物(a3)を得る工程、
組成物(a3)及びフルオロポリマー(b)をそれぞれ成形して、層(A)及び層(B)を含む積層体を得る工程
を含む製造方法により、製造できる。
上記未架橋フッ素ゴムが架橋しない条件としては、上記架橋剤、上記架橋助剤及び上記架橋促進剤が存在しない条件等が挙げられる。
組成物(a3)は、上記架橋剤、上記架橋助剤及び上記架橋促進剤を含まないことが好ましい。組成物(a3)は、受酸剤を含まないことも好ましい。これらの成分を含まないことにより、組成物(a3)は、フッ素樹脂及びフッ素ゴムに必要とされる通常の成形条件により成形しても、上記未架橋フッ素ゴムを架橋させることなく、積層体を得ることが可能である。
上記成形の方法としては、加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。上記成形には通常用いられるフルオロポリマーの成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置などが使用でき、シート状、チューブ状など、各種形状の積層体を製造することが可能である。また、多層押出成形、多層ブロー成形、多層射出成形などの成形方法により、多層チューブ、多層ホース、多層タンクなどの積層体とすることができる。
上記成形の際にポリアミド系樹脂を成形すれば、層(A)及び層(B)に加えて、更に層(C)を含む積層体を製造できる。
上記積層体は、チューブ又はホースとして好適に利用可能である。上記チューブ又は上記ホースにおいて、層(A)を内層として使用することが好ましい。内層、特に最内層として、層(A)を有するチューブ又はホースは、上記チューブ又は上記ホースに燃料が流通しても、静電気が蓄積しにくいので、高い安全性が得られる。
上記積層体が層(C)を有する場合、より一層優れた燃料バリア性及び柔軟性が得られることから、層(A)、層(B)及び層(C)の順に積層されていることが好ましい。
更に、内層として層(A)、中間層として層(B)及び外層として層(C)を有するチューブ又はホースは、静電気の蓄積をより一層抑制でき、燃料バリア性及び柔軟性にも優れることから、好ましい。
上記積層体は、層(A)、層(B)及び層(C)を、それぞれ、2層以上有するものであってもよい。また、上記積層体は、層(A)、層(B)及び層(C)以外の他の層を有するものであってもよい。他の層としては、ゴム層、樹脂層等が挙げられる。
上記ゴム層としては、上記未架橋フッ素ゴムを架橋することにより得られる層、未架橋の非フッ素ゴムを架橋することにより得られる層等が挙げられる。
上記非フッ素ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)又はその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、塩素化ポリエチレン(CPE)、アクリロニトリル−ブタジエンゴムと塩化ビニルのポリブレンド(PVC−NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴムのターモノマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムを構成するモノマーが好ましい。
上記樹脂層としては、上記フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂などの機械的強度に優れた樹脂や、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド(PPA)などの燃料や気体の透過性が低い樹脂を含む樹脂層が挙げられる。
上記積層体は、また、金属層を備えてもよいし、接着剤層を備えてもよいし、各層に表面処理を行ってもよい。各層の厚さ、形状などは、使用目的、使用形態などによって適宜選定すればよい。
上記積層体は、燃料バリア性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性に優れており、また、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系など、駆動系のトランスミッション系など、シャーシのステアリング系、ブレーキ系など、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線などとして好適な特性を備えている。
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材など。
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなど。
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシールなど。
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットなどや、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなど。
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブなど、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホースなどの燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウントなど、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リングなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類など、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホースなど、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラムなど。
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキンなど、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホースなど、BPTのダイヤフラムなど、ABバルブのアフターバーン防止バルブシートなど、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシールなど。
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなど、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類など。
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホースなど。
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホースなど、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラムなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類など。
基本電装部品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシースなど、ハーネス外装部品のチューブなど。
制御系電装部品の、各種センサー線の被覆材料など。
装備電装部品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレードなど。
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレードなどへの用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片などが食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
また、医療用用途としては、薬栓、ボトルのキャップシール、缶シール、薬用テープ、薬用パッド、注射器シリンジパッキン、経皮吸収薬用基材、ほ乳びん等の吸い口、医療用バッグ、カテーテル、輸液セット、混注管、キャップライナー、真空採血管のキャップ、シリンジ用ガスケット、輸液チューブ、医療機器のガスケット・キャップ、シリンジチップ、グロメット、採血管キャップ、キャップシール、バッキング、O−リング、シースイントロデューサー、ダイレーター、ガイディングシース、血液回路、人工心肺回路、ロ−タブレーター用チューブ、留置針、インフュージョンセット、輸液チューブ、閉鎖式輸液システム、輸液バッグ、血液バッグ、血液成分分離バッグ、血液成分分離バッグ用チューブ、人工血管、動脈カニューレ、ステント、内視鏡処置具保護チューブ、内視鏡スコープチューブ、内視鏡トップオーバーチューブ、咽頭部通過用ガイドチューブ、冠動脈バイパス術用チューブ、イレウスチューブ、経皮経肝胆道ドレナージ術用チューブ、電気メス外装チューブ、超音波メス外装チューブ、剥離鉗子外装チューブ、細胞培養用バッグ等が挙げられる。
また、本発明の積層体が適用できるオフショア用積層体としては、海底油田用チューブ若しくはホース(インジェクションチューブ、原油移送チューブ含む)が挙げられる。
これらの中でも、特に本発明の積層体は、耐熱性、燃料バリア性の点で、燃料配管チューブ又は燃料配管ホースに用いられることが好ましい。
本発明の積層体からなる燃料配管チューブ又は燃料配管ホースは通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。また、上記燃料配管チューブ又は燃料配管ホースには、コルゲートチューブ又はコルゲートホースも含まれる。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
ポリマーの組成
19F−NMR分析により測定した。
体積抵抗率
デジタル超絶縁計/微小電流計にて、90℃、ドライエアー雰囲気下、DC300Vで測定した。
燃料透過係数
実施例及び比較例で使用したポリマーを金型にセットし、ヒートプレス機により、270〜300℃にて15〜30分保持し、ポリマーを溶融させた後、3MPaの負荷を1分間与え圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状試験片を作製した。SUS製容器(開放部面積1.26×10−3m2)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、上記シート状試験片を容器開放部にセットして密閉することで、試験体とした。該試験体を恒温装置(60℃)に入れ、試験体の重量を測定し、単位時間あたりの重量減少が一定となったところで下記の式により燃料透過係数を求めた。
引張弾性率
実施例及び比較例で使用したポリマーを金型にセットし、ヒートプレス機により、270〜300℃にて15〜30分保持し、ポリマーを溶融させた後、3MPaの負荷を1分間与え圧縮成形し、厚さ2mmのシート状試験片を作製した。シート状試験片を打ち抜いて、ASTM D638 TypeV型ダンベルを用いて標線間距離3.18mmのダンベル状試験片を得た。得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所社製AGS−J 5kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃で引張弾性率を測定した。
カーボネート基の数
実施例及び比較例で使用したポリマーを室温にて圧縮成形し、厚さ0.05〜0.2mmの均一なフィルムを作成した。このフィルムの赤外吸収スペクトル分析によって、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基に由来するピークが1809cm−1(νC=O)の吸収波長に現れるので、そのνC=Oピークの吸光度を測定した。下記式によって主鎖炭素数106個当たりのカーボネート基の個数(N)を算出した。
N=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のνC=Oピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のνC=Oピークのモル吸光度係数〔l・cm−1・mol−1〕。モデル化合物からε=170とした。
W:モノマー組成から計算される単量体の平均分子量
d:フィルムの密度〔g/cm3〕
f:フィルムの厚さ〔mm〕
なお、赤外吸収スペクトル分析は、Perkin−Elmer FTIRスペクトロメーター1760X(パーキンエルマー社製)を用いて40回スキャンして行った。得られたIRスペクトルをPerkin−Elmer Spectrum for Windows(登録商標) Ver. 1.4Cにて自動でベースラインを判定させ1809cm−1のピークの吸光度を測定した。また、フィルムの厚さはマイクロメーターにて測定した。
アミン価
ポリアミド系樹脂1gをm−クレゾール50mlに加熱溶解し、これを1/10規定p−トルエンスルホン酸水溶液を用いて、チモールブルーを指示薬とし滴定し、ポリアミド系樹脂106gに存在するアミノ基量を求めた。
接着性
オートグラフ(島津製作所社製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(加硫ゴムの接着試験方法)に準拠し、25℃において50mm/分の引張速度で剥離試験を行い、接着強度を測定し、得られたN=3のデータの平均値を算出した。
実施例1
マルチマニホールドダイを装着した3種3層のチューブ押出し装置を用いて、チューブの外層がポリアミド12(ダイセルデグサ社製ダイアミドX7297)、中間層が表2に記載のフッ素樹脂を含む層、内層が、押出機によりカーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製)を13%混練りした表3に記載のフッ素樹脂及び動的に架橋処理することにより得られた架橋フッ素ゴムを含む層となるように、押出し装置に各材料を供給して、外径8mm、内径6mmのチューブを連続して成形した。成形条件及び得られたチューブの評価結果を表4に示した。