JP6855067B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用接着性組成物に関する。
歯科医療分野において、齲蝕等により損傷された歯の修復には、主にコンポジットレジンと呼ばれる充填材料が用いられる。コンポジットレジンは、齲蝕で生じた窩洞に充填後、口腔内で重合硬化して使用されるのが一般的である。コンポジットレジン自体は歯質への接着性を有していないので、歯質にコンポジットレジンを接着させるために、通常、(メタ)アクリレート系重合性単量体を主成分とする重合性単量体を用いた歯科用接着材(以下単に、接着材と略する)が使用される。
歯の硬組織はエナメル質と象牙質とで構成されている。エナメル質及び象牙質は接着材に対する接着性能が相違しており、エナメル質及び象牙質の双方に対して良好な接着強度を発現するために、接着材を歯の硬組織に塗布するに先立って、2段階の前処理、即ち、エッチング処理及びプライミング処理が施されている。
エッチング処理は、歯の表面に酸性水溶液を接触させることに行われる。エッチング処理は、歯のエナメル質の表面の一部が、酸性水溶液の脱灰により溶解し、その結果、エナメル質表面が粗くなった部分に接着材を浸透させ、硬化させる役割を担っている。
また、エッチング処理により、歯の象牙質部分は、脱灰によりコラーゲン線維の網目構造が露出する。プライミング処理は、該網目構造の空隙に接着材を浸透させる役割を担っている。プライミング処理には、プライマーと呼ばれる浸透促進剤が用いられており、プライマーの成分としては、強い親水性をもつレジンモノマーである2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が挙げられる。接着材中には、HEMAが水と重合性単量体の相溶性向上及び重合性単量体の歯質浸透性向上のために配合されていることが多い。
上記のように、従来の歯の治療では、接着材を用いる前に、エッチング処理及びプライマー処理を行わなければならず、煩雑な処理が必要であった。
以上のような問題点を解決するため、歯科用接着材の操作性の簡略化が求められ、脱灰機能と浸透促進機能とを併せて持つ1液型歯科用接着材が主流となっている。即ち、エッチング処理及びプライミング処理との2段階の前処理を1段階に簡略することにより、操作性が大きく向上している(例えば、特許文献1)。
しかしながら、かかる1液型歯科用接着材は、以下(1)及び(2)に示す欠点を有している。
(1)1液型歯科用接着材にプライマー処理性能を付与するために、HEMAの配合量を多くせざるを得ないが、HEMAは高アレルギー性物質であるため、患者の口腔粘膜、患者の皮膚に炎症を引き起こし、又は歯科医療従事者の医療用手袋を通過し、皮膚に炎症を引き起こす。
(2)1液型歯科用接着材を使用する際に、親水性の歯質と相互作用し浸透させるためには、リン酸基含有ラジカル重合性単量体のリン酸基が有効であるが、単量体のリン酸基と(メタ)アクリル酸エステル構造を繋ぐスペーサーが長鎖のアルキル鎖などで疎水性になると水への溶解性が低下し、相分離が起こりやすくなる。そのため、初期接着力の低下や長期耐久性の低下が起こり、十分な接着性能を発現することができない。
このような状況下、十分な脱灰機能及び浸透促進機能を備え、並びに歯質に対して高い接着強度を有する1液型歯科用接着材の開発が強く求められている。また、接着材中のHEMAの含量を減少させると共に、接着材中の親水性部位と疎水性部位との相分離を防止することが強く求められている。
特開2003−73218号公報
上記のように、歯科医療で利用される1液型歯科用接着材は、良好な接着強度を得るために、脱灰処理、浸透促進処理などの前処理が必要であった。また、浸透促進処理のために、接着材中のHEMAの含量を多くする必要があった。さらに、接着材中の親水性部位と疎水性部位との相分離が起こりやすく、接着強度を長時間持続できなかった。
本発明の目的は、脱灰処理、浸透促進処理等の前処理を必要とせず、且つ、接着材中のHEMAの含量を減少させながらも、エナメル質及び象牙質に対して高い接着強度を有する歯科用接着性組成物を提供することにある。さらには、本発明の目的は、接着材組成が硬化前後で相分離のない均一な組成を形成することのできる歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸性基含有ラジカル重合性単量体、浸透促進剤、及び1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体等を含有する歯科用接着性組成物において、当該酸性基含有ラジカル重合性単量体として、リン酸基を有する両親媒性の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、相分離のない1液型接着システムで上記目的が達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
即ち、本発明は、以下の歯科用接着性組成物を包含する。
1. (A)下記式(1)で表されるリン酸基含有重合性単量体、
(B)架橋性の重合性単量体、
(C)光重合開始剤、
(D)水、
(E)有機溶媒、
(F)浸透促進剤、及び
(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体
を含有する、歯科用接着性組成物。
Figure 0006855067
[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。但し、R及びRは、同時にメチル基であってはならない。nは4から6の整数を示す。]
2. 更に、無機フィラーを含む請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
3. 上記式(1)で表される(A)リン酸基含有重合性単量体と(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体との質量比が、前者:後者=1:1〜1:20である、項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
本発明の歯科用接着性組成物によれば、脱灰処理、浸透促進処理等の前処理を必要とせず、接着材中のHEMAの含量を減少させながらも、歯質と歯科用修復物とを高い接着強度で接着することが可能となり、且つ、接着材組成が硬化前後で相分離のない均一な組成を形成することが可能となる。
以下、本発明の歯科用接着性組成物について詳細に説明する。
本発明の歯科用接着性組成物は、(A)リン酸基含有重合性単量体と、(B)架橋性の重合性単量体と、(C)光重合開始剤と、(D)水と、(E)有機溶媒と、(F)浸透促進剤と、及び(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体とを混合して得られ、必要に応じて、無機フィラー、その他の成分を含む。
以下、これらの各成分について説明する。
[(A)リン酸基含有重合性単量体]
本発明の歯科用接着性組成物の成分である(A)リン酸基含有重合性単量体は、下記式(1)で表される。
Figure 0006855067
[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。但し、R及びRは、同時にメチル基であってはならない。nは4から6の整数を示す。]
(A)リン酸基含有重合性単量体(以下、(A)成分ともいう)は、上記式(1)で表されるようにリン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、水と自由に溶解し、水と混合しない有機溶媒にも可溶な両親媒性のラジカル重合性単量体である。(A)成分は、接着材に用いた際に歯質を脱灰するため、且つ、接着材と歯質の相互作用のために用いられる。
(A)成分は、分子中のリン酸基と(メタ)アクリル酸エステル構造とを繋ぐスペーサー(連結基)として、上記式(1)に示したような構造を有する。上記式(1)において、テトラエチレングリコール鎖(n=4)、ペンタエチレングリコール鎖(n=5)、又はヘキサエチレングリコール鎖(n=6)を含み両親媒性とすることで、リン酸基による歯質の良好な脱灰及び歯質との相互作用の維持並びに、両親媒性のエチレングリコール鎖による接着材組成の相分離を防止することができる。高純度の(A)成分を含有する歯科用接着性組成物の使用により、十分な初期接着強さと、口腔内での使用を想定した長期水中保存における接着耐久性とを長時間持続させることができる。
また、上記式(1)に示すように、リン酸基と(メタ)アクリル酸エステル構造とを繋ぐスペーサー(連結基)が、エチレングリコール鎖又はプロピレングリコール鎖構造であることにより、(A)成分は接着性モノマーとしての脱灰作用だけではなく、歯質に対する浸透性モノマーとしての機能を有する。よって、(A)成分のリン酸基含有重合性単量体に、部分的にHEMAの機能性を担わせることが可能となるため、本発明の歯科用接着性組成物に含有させるHEMAの含有量を減量させることができる。
(A)成分の具体的な化合物としては、11−メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(MTEGP)、14−メタクリロイルオキシペンタエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(M5EGP)、17−メタクリロイルオキシヘキサエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(M6EGP)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール300ジハイドロジェンホスフェート(MPEG300P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=300である上記式(1)で示した構造を持つリン酸基含有重合性単量体を複数含有する混合物)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート(MPEG400P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=400である上記式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール600ジハイドロジェンホスフェート(MPEG600P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=600である上記式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、メタクリロイルオキシポリプロピレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート(MPPG400P:ポリプロピレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=400である上記式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)等が挙げられる。これらの中でも、歯質の良好な脱灰性及び浸透性並びに接着性を得る観点から、MTEGP、M5EGP、M6EGPが好ましく、特にMTEGPが好ましい。
なお、MTEGPを用いた歯科接着材について、歯質との反応ならびに接着強さが報告されている文献として、以下の参考文献1〜3が挙げられる。
参考文献1:V. P. Feitosa, S. Sauro, F. A. Ogliari, A. O. Ogliari, K. Yoshihara, C. H. Zanchi, L. Correr-Sobrinho, M. A. Sinhoreti, A. B. Correr, T . F. Watson, B. Van Meerbeek, J. Dent. Res., 2014, 93, 201-206.
参考文献2:V. P. Feitosa, S. Sauro, F. A. Ogliari, J. W. Stansbury, G. H. Carpenter, T. F. Watson, M. A. Sinhoreti, A. B. Corre, J. Dent., 2014, 42, 565-574.
参考文献3:V. P. Feitosa, S. Sauro, F. A. Ogliari, A. O. Ogliari, K. Yoshihara, C. H. Zanchi, L. Correr-Sobrinho, M. A. Sinhoreti, A. B. Correr, T . F. Watson, B. Van Meerbeek, Dent. Mater., 2014, 30, e317-e323.
本発明の歯科用接着性組成物における(A)成分の配合量は、特に制限されるものではなく、広い範囲から適宜決定すればよい。歯質の良好な脱灰性及び浸透性並びに接着性を得る観点から、(A)成分が[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として、0.45〜25質量部配合することが好ましく、0.90〜15質量部配合することがより好ましく、1.5〜9.5質量部配合することがさらに好ましい。
[(B)架橋性の重合性単量体]
(B)架橋性の重合性単量体(以下、(B)成分ともいう)は、(A)成分のリン酸基含有重合性単量体とは区別されたものである。(B)成分の架橋性の重合性単量体としては、架橋性である限り限定されないが、架橋性の二官能性重合性単量体が好ましい。架橋性の二官能性重合性単量体の例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(Bis−GMA)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。
さらに、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TEGDMA)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)等が挙げられる。
なお、上記の架橋性の二官能性重合性単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分としては、接着強さ向上の観点から、上記の中でもBis−GMA、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレートが好ましく、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート、TEGDMA、グリセロールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、特にBis−GMA、TEGDMAが好ましい。
(B)成分の配合量は、特に限定されるものではない。本発明の歯科用接着性組成物における(B)成分の配合量は、(B)成分の合計が[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として、20〜70質量部であることが好ましく、25〜55質量部であることがより好ましい。(B)成分の配合量を上記範囲とすることにより、接着性組成物の接着強度をより一層高めることができ、また接着材組成が硬化前後で相分離のない均一な組成を形成することができるという本発明の効果を一段と発現できる。
[(C)光重合開始剤]
(C)光重合開始剤(以下、(C)成分ともいう)の例としては、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル、2,4−ジエトキシチオキサントン、2−クロロチオキサントン、メチルチオキサントン等のチオキサントン化合物、ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,2,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物、さらには、アリールボレート化合物と色素と光酸発生剤とを組み合わせた系(以下、アリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系ともいう)が挙げられる。これらの中でも、α−ジケトンの光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイドの光重合開始剤、及びアリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系からなる光重合開始剤が好ましい。
上記α−ジケトンとしてはカンファーキノン(CQ)及びベンジルが好ましく、また、アシルホスフォンオキサイドとしては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,2,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。なお、α−ジケトン及びアシルホスフィンオキサイドは単独でも光重合活性を示すが、これらをp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(EDMAB)、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸ラウリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の3級アミン化合物と併用することがより高い活性を得られて好ましい。α−ジケトン3級アミン化合物とジフェニルヨードニウム塩化合物を併用した3成分系開始剤ではさらに高い光重合の開始活性が得られる。3級アミン化合物以外では、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール(MBO)、及び2−メルカプトベンズチイミダアゾールとそれらの置換体である異節環芳香族チオールと併用することでより高い活性を得られて好ましい。
例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール等の芳香族メルカプト基を有するベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等の芳香族メルカプト基を有するベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の芳香族メルカプト基を有するベンゾイミダゾールが報告されている文献として、以下の参考文献4が挙げられる。
参考文献4:E. Andrzejewska, D. Zych-Tomkowiak, M. Andrzejewski, G. L. Hug, B. Marciniak, Heteroaromatic Thiols as Co-initiators for Type II Photoinitiating Systems Based on Camphorquinone and Isopropylthioxanthone, Macromolecules, 2006, 39, 3777-3785.
また、アリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系の光重合開始剤については特開平9−3109号公報等に記されているものが好適に用いられる。具体的には、テトラフェニルホウ素ナトリウム塩等のアリールボレート化合物を、色素として3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(4−シアノ−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン系の色素を、光酸発生剤として、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基置換−s−トリアジン化合物、またはジフェニルヨードニウム塩化合物を用いたものが特に好適に使用できる。
(C)成分はそれぞれ単独で配合するのみならず、必要に応じて複数の種類を組み合わせて配合することもできる。(C)成分としては、特にCQ、EDMAB、MBOが好ましい。(C)成分の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、調製する硬化性組成物の用途及び目的に応じ適宜決定すれば良い。例えば、(C)成分としてα−ジケトン又はアシルホスフィンオキサイドを使用する場合には、[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として、(C)成分の配合量は0.01〜5.0質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましい。また、必要に応じて、アミン化合物あるいは異節環芳香族化合物を0.01質量部加えることができる。さらに、(C)成分としてアリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系の光重合開始剤を使用する場合には、色素が0.001〜1質量部、光酸発生剤が0.01〜10質量部であることが好ましい。
[(D)水]
(D)水(以下、(D)成分ともいう)は、(A)成分に歯質脱灰作用を持たせるために使用される。(D)成分は、保存安定性、生体適合性及び接着性に有害な不純物を実質的に含まないことが好ましく、脱イオン水、蒸留水等が挙げられる。
本発明の歯科用接着性組成物における(D)成分の配合量は、特に限定されるものではなく適宜設定すればよい。(D)成分の配合量は、[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として、通常は40質量部以下であり、1〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。(D)成分の配合量を上記範囲にすることにより、歯質の良好な脱灰性を得ることができ、また、接着材の硬化体の機能的強度を一層向上させることができる。
[(E)有機溶媒]
本発明の歯科用接着性組成物の均一性を保つために、(A)〜(D)成分を溶解する(E)有機溶媒(以下、(E)成分ともいう)を使用する。(E)成分としては揮発性が高く水溶性で(A)〜(D)成分を溶解する有機溶媒である限り、公知の有機溶媒が使用できる。水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることをいう。揮発性とは、室温でのエアーブローで容易に蒸発することをいう。(E)成分としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンが挙げられる。(E)成分は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する為害性を考慮すると、エタノール、プロパノール又はアセトンが好ましく、特にエタノールが好ましい。
(E)成分の配合量は、[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として10〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。
[(F)浸透促進剤]
(F)浸透促進剤(以下、(F)成分ともいう)は、本発明の歯科用接着性組成物による接着強度の安定した発現のため、上記(A)〜(D)成分の混和性を向上させ、歯質への浸透を促進するために添加される。(F)成分としては、本発明の歯科用接着性組成物と均一に混合でき歯質への浸透性に優れる限り、公知の浸透促進剤を広く使用できるが、水溶性ラジカル重合性単量体等が特に好適に用いられる。
該水溶性ラジカル重合性単量体としては、分子中に1つのラジカル重合性不飽和基を有し、且つ、水溶性であれば既存のものが制限なく使用できる。例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の多価アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
上記の中でも、本発明の歯科用接着性組成物の調製が容易であり、水と任意の割合で混合可能であり、さらに象牙質への接着力を考慮すると、HEMAが好適に使用される。本発明の歯科用接着性組成物における(F)成分の配合量は、配合される各成分が均一となる程度であればよいが、[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として2.5〜30質量部が好ましく、3.5〜25質量部がより好ましく、4.5〜20質量部がさらに好ましい。
[(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体]
(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体(以下、(G)成分ともいう)とは、分子中にカルボキシル基又は加水分解により容易にカルボキシル基を生成する有機基を2個以上有する重合性単量体である。当該有機基としては、エステル基、酸ハライド基、酸無水物基、ヒドロキシエチル基、アルデヒド基、アミド基等が挙げられる。
(G)成分は、歯質(特に、象牙質)に対して、過度にならない程度の酸エッチング効果を有し、重合可能であるので本発明の歯科用接着性組成物に脱灰作用と硬化作用とを付与し、特に象牙質の接着に対して効果的である。
(G)成分は、(A)成分と組み合わせて配合することで、エナメル質及び象牙質に対して強力に再現性よく接着する組成物を得ることができる。
(G)成分としては、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(4−MET)、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルペンタヒドロフタル酸などが挙げられる。これらの中でも、4−METが接着性の点から特に好ましい。また、(G)成分は、1種単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の歯科用接着性組成物における(G)成分の配合量は、[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計を100質量部として1〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
また、本発明の歯科用接着性組成物では、接着強さ向上の観点から、(A)成分と(G)成分との質量比が、前者:後者=1:1〜1:20であることが好ましく、前者:後者=1:1〜1:4であることがさらに好ましい。
[(H)無機フィラー]
本発明の歯科用接着性組成物には、(H)無機フィラー(以下、(H)成分ともいう)を更に含むことができる。(H)成分としては、例えば球状フィラーが挙げられる。歯科用接着性組成物の粘性を調製し、歯質に対する歯科用接着性組成物の付着性及びぬれ性を付与することにより、歯質に密着した接着膜を形成することができる。これにより、歯科用接着性組成物の接着強さを向上させることができる。
さらに、本発明の歯科用接着性組成物に無機フィラーを増粘剤として用いた場合に、エナメル質に対する接着性を向上させられるという利点もある。ここで球状フィラーとは、アモルファスのガラス状で球状の細孔のないシリカゲルの一次粒子であり、一次粒子径が5nmから200nm程度までの表面が親水性フィラーでも、カップリング剤によりメチル基などの有機基を反応させた疎水性フィラーでもよい。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは5〜50nmである。平均粒子径が50nm以下である場合には、歯科用接着性組成物の沈降及び相分離が起こらないため、接着力が低下しない。
(H)成分を本発明の歯科用接着性組成物に添加する場合、(H)成分の配合量は[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計100質量部に対して0〜9質量部が好ましく、0〜7質量部がさらに好ましい。
[その他の成分]
本発明の歯科用接着性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の他の成分、例えば、(A)成分及び(B)成分とは区別される特別な官能基を有しないラジカル重合性単量体、無機充填材、有機充填材、無機−有機複合充填材等の充填材、紫外線吸収剤、重合禁止剤、重合抑制剤、染料、顔料等が配合されていてもよい。これらの他の成分の配合量は、本発明の歯科用接着性組成物[(A)〜(B)と(D)〜(G)]成分の合計100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の歯科用接着性組成物の製造方法に従えばよく、一般的には、赤色光などの不活性光下に、配合される全成分を秤取り、均一溶液になるまでよく混合すればよい。無機フィラーの分散性の観点から、(H)以外を均一に混合した後、(H)を最後に添加することが望ましい。
本発明の歯科用接着性組成物の使用方法もまた、公知の歯科用接着性組成物の使用方法に従えばよく、一般的には、齲蝕部を取り除くなどした被着体となる歯質に本発明の接着材を塗布し、5〜60秒程度放置後に、必要であれば圧縮空気などを軽く吹きつけて揮発性成分を揮発させ、ついで歯科用照射器を用いて可視光を照射し重合、硬化させればよい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではなく、当業者に自明な範囲で適宜調製したものも本発明に含まれる。なお、実施例及び比較例の製造に用いた各成分並びにその略称及び略号については、以下の通りである。
(各成分並びにその略称及び略号)
[(A)成分]
MTEGP:11−メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート
M5EGP:14−メタクリロイルオキシペンタエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート
M6EGP:17−メタクリロイルオキシヘキサエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート
MPEG300P:メタクリロイルオキシポリエチレングリコール300ジハイドロジェンホスフェート
MPEG400P:メタクリロイルオキシポリエチレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート
MPEG600P:メタクリロイルオキシポリエチレングリコール600ジハイドロジェンホスフェート
MPPG400P:メタクリロイルオキシポリプロピレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート
[(A)成分以外のリン酸基含有重合性単量体]
M2P:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
M4P:4−メタクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート
M6P:6−メタクリロイルオキシへキシルジハイドロジェンホスフェート
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
M2EGP:6−メタクリロイルオキシジエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート
M3EGP:8−メタクリロイルオキシトリエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート
[(B)成分]
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
[(C)成分]
CQ:カンファーキノン
EDMAB:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
MBO:2-メルカプトベンゾオキサゾール
[(E)成分]
EtOH:エタノール
[(F)成分]
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
[(G)成分]
4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
[(H)成分]
AEROSIL:アエロジルR972(日本アエロジル社製)
[その他の成分]
MEHQ:ヒドロキノンモノメチルエーエテル
BHT:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
<(A)成分の作製方法>
本発明の(A)成分は以下の方法により作製した。禁水条件下、室温にてオキシ塩化リン(153g)をTHF(1.0L)溶液とし、得られた溶液を−30℃に冷却した後、この溶液にテトラエチレングリコールモノメタクリレート(210g)、トリエチルアミン(101g)及びTHF(1.0L)の混合溶液を滴下した。得られた溶液を0℃で1時間攪拌後、これに水(43g)、トリエチルアミン(162g)及びTHF(0.2L)の混合溶液を滴下し、室温へ戻し一夜攪拌した。不溶物を吸引ろ過した後、ろ液を濃縮した。濃縮物に水(2.0L)を加え、ジクロロメタン(1.5L)で3回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(1.0L)、水(1.0L)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(300g)上で3時間以上乾燥した。乾燥剤をろ別し、ろ液に重合禁止剤のMEHQ(100mg)を添加し、濃縮した後、重合禁止剤のBHT(150mg)を加えて、目的の(A)成分を淡黄色油状物(114g)として収率41.7%で得た。
HPLCで確認した純度は95%以上純度であり、1H−NMRで構造を確認した。なお、上記(A)成分の作製方法は、以下の参考文献5に記載の方法を参照した。
参考文献5:F. A. Ogliari, E. de O. da Silva, G. da S. Lima, F. C. Madruga, S. Henn, M. Bueno, M. A. Ceschi, C. L. Petzhold, E. Piva, Synthesis of phosphate monomers and bonding to dentin: Esterification methods and use of phosphorus pentoxide, J. Dent., 2008, 36, 171-177.
(歯科用接着性組成物)
<実施例1〜24及び比較例1〜15>
以下の表1に示す組成に従い、各成分を混合後、これらが均一になるまで攪拌して実施例1に係る歯科用接着性組成物を製造した。
また、以下の表1〜5に記載の組成に基づいて製造したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜24及び比較例1〜15に係る各歯科用接着性組成物を製造した。
製造された各歯科用接着性組成物を以下のように評価した。
試験例1(エナメル質及び象牙質に対する接着強度の測定)
先ず、屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、流水下、P600の耐水研磨紙で研磨し、唇面と平行になるようにエナメル質平面及び象牙質平面を削り出した。次に、これらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた後、これらの面に直径3mmの円孔の開いた両面テープをそれぞれ固定し、接着面積を規定した。次に、直径5mmの孔の開いた厚さ2.0mmのシリコンゴム型を、該孔が上記両面テープの円孔と同一中心となる位置で両面テープ上に貼り付けて模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に実施例1〜24及び比較例1〜15に係る各歯科用接着性組成物を塗布し、20秒間放置した後、約10秒間圧縮空気を吹き付けて乾燥させた。
次いで、可視光線照射器(製品名:ペンキュアー2000、製造販売元:モリタ製作所)を用いて10秒間光照射し、歯科用接着性組成物を硬化させた。更に、その上に歯科用コンポジットレジン(製品名:クリアフィルAP−X A3シェード、製造販売元:クラレノリタケデンタル)を充填し、可視光線照射器を用いて30秒間光照射して接着試験片を作製した。
上記接着試験片を24時間、37℃の水中に浸漬させた後、引張り試験機(製品名:オートグラフ、製造販売元:島津製作所)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/minの条件で引張り試験を行い、上記エナメル質平面及び上記象牙質平面に対する実施例1〜24及び比較例1〜15に係る各歯科用接着材の接着強さを測定した。1試験当り、5本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を初期接着強さとしたものであり、また、標準偏差についても算出した。
試験例2(相分離の有無)
プラスチックトレー上に各試料を一滴採取後、遮光下で10分間放置し、目視で相分離が起こっているか確認した。
各測定結果を表1〜5に併せて示す。
Figure 0006855067
Figure 0006855067
Figure 0006855067
Figure 0006855067
Figure 0006855067
以上の結果より、実施例1〜24では、比較例1〜15に比べ、より高い接着強度を示すことが明らかとなった。
また、表3に示すように、実施例4では、相分離が確認できず、比較例6〜11では、相分離が確認された。
また、表5に示すように、実施例1、23及び24では、比較例13〜15に比べ、より高い接着強度を示すことが明らかとなった。さらに、実施例1では、実施例23及び24に比べ、(F)成分の量が大きく減少しているにも関わらず、実施例23及び24と接着強度が同等であった。
本発明の歯科用接着性組成物は、接着材中のHEMAの含量を減少させながらも、歯質と歯科用修復物とを高い接着強度で接着することが可能となり、且つ、接着材組成が硬化前後で相分離のない均一な組成を形成することが可能となるので、歯科に関する産業において好適に利用することができる。

Claims (3)

  1. (A)下記式(1)で表されるリン酸基含有重合性単量体、
    (B)架橋性の重合性単量体、
    (C)光重合開始剤、
    (D)水、
    (E)有機溶媒、
    (F)浸透促進剤、及び
    (G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体
    を含有する、歯科用接着性組成物[但し、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)を除く]
    Figure 0006855067
    [式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。但し、R及びRは、同時にメチル基であってはならない。nは4から6の整数を示す。]
  2. 更に、無機フィラーを含む請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. (A)前記式(1)で表されるリン酸基含有ラジカル重合性単量体と(G)1分子中にカルボキシル基を複数個有するか又は水と反応して1分子中にカルボキシル基を複数個生じる重合性単量体との質量比が、前者:後者=1:1〜1:20である、請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
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