JP6853919B1 - シリコーンゴム基材へのインクジェット印刷 - Google Patents
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Abstract
Description
シリコーンゴム基材に対する高い接着力は、シリカハイブリッドインクを用いることで得られる。シリカハイブリッド硬化膜には、親水性であるシラノール基を有するシリカが含まれるからである。産業界では、シリコーンゴム組成物を樹脂成形体表面に十分に接着させるために接着付与剤が用いられているが、接着付与剤の中で結合のために働く官能基が、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、シラノール基などである。本発明のインクが、他の種類のインクを超える強接着力が得られる理由である。シリカハイブリッドインクを用いた直接印刷なら、従来手法で必要とされたシリコーンゴム組成物と画像層を接着させるための接着層を不要に出来る。ただし、シリコーンゴムの表面改質処理も、高い接着性を得るためには必須である。
表面改質処理で得られる高い濡れ性は、画像品質向上にも有効である。表面改質処理面上では付着後のインクの分離凝縮が起こり難くなり、さらに基材表面を一定温度以上に保ちながら印刷を行なってインク中の溶剤を急速に蒸発させるなら、シリコーンゴムであっても、正常な画像濃度が得られるようになる。一定温度以上とは、生産性を考えた標準的なインクジェット印刷速度なら、好ましくは55℃以上、より好ましくは70℃以上である。印刷速度を極端に落として基材表面付着インクに乾燥する時間を与えられるなら、この温度はさらに下げることも可能である。基材表面を一定温度以上に保つ方法としては、基材をプリンタ載置前に十分高い温度に温めておく方法、プリンタ載置後に温める目的のプリンタテーブル加熱装置や基材加熱用熱線照射装置、熱風送風装置などを用いて印刷しながら加熱する方法、のいずれか、又はそれらを合わせた方法が採れる。
表面改質処理としては、フレーム処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸化ケイ素微粉を付着させるイトロ処理などが有効である。なお、本発明で言うシリコーンゴム基材とは、シリコーンゴム基材そのものだけでなく、表面にシリコーンゴム層がコートされた部材も含んだ意味である。
転写シートは、水溶性層を形成した水転写紙、水溶性層から成る水圧転写フィルム、フッ素樹脂などの非シリコーン系剥離層を形成した剥離フィルム、ポリエチレン樹脂などの基材自体が剥離性を持つフィルム、を用いることが出来る。シリカハイブリッドインクは、一定温度以上に保ってインク中の溶剤を急速に蒸発させながら印刷するなら、これらの転写シートへ鮮明な画像を印刷できる。この一定温度については、第一の課題解決手段に記したので、ここでは省略する。
シリカハイブリッドインク印刷画像がシリコーンゴム基材へ強く接着する理由についても第一の課題解決手段に記したが、第二の課題解決手段のシリコーンゴム皮膜層形成は、画像層の乾燥硬化完了前に行なうことが好ましい。理由は、乾燥硬化後のシリカハイブリッド硬化膜は疎水性で表面濡れ性が低くなる傾向があり、シリコーンゴム皮膜層の画像層への接着力を低下させるからである。
なお、第一の課題解決手段に記した表面改質処理は、難接着性の加硫済みシリコーンゴム基材表面の改質目的である。第二の課題解決手段においては、画像層に触れるのはシリコーンゴム基材に十分な接着力を持つ液状シリコーンからなる接着層なので、シリコーンゴム基材の表面改質処理が不要になる。転写時に、あるいは転写後に加硫硬化される皮膜層は、画像と基材双方に強接着する。
画像の視認性のためにはシリコーンゴム皮膜層は透明が良い。ただし、下地のシリコーンゴム基材を透明にして下地側から画像を見る場合なら、シリコーンゴム皮膜層を白色にすれば画像背景に出来る。第二の課題解決手段に理由を記したが、シリコーンゴム皮膜層形成は、画像層乾燥硬化完了前に行なうのが好ましい。皮膜層は、液状シリコーンを用いてスクリーン印刷、塗装、転写などの手法で形成出来、形成後の加熱処理で皮膜層が加硫硬化される。
この理由を記述する。ハイブリッド溶媒の有機ポリマーとしては、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ケトン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、エポキシ樹脂など、熱硬化性、熱可塑性の多くの樹脂が使用可能である。ただし、第二の課題解決手段の作業手順では、画像を覆う皮膜層となる液状シリコーンは、ハイブリッドインクの完全硬化前に塗布される。塗布される液状シリコーンは、架橋触媒になる硬化剤との混合状態になっている。即ちこの作業手順は、ハイブリッドインクから成る画像層の硬化が、液状シリコーン架橋触媒の存在下で進められることを意味する。ハイブリッドインクの有機ポリマーは、架橋触媒の存在下で、確実に硬化出来る樹脂でなければならない。架橋触媒の存在下で、熱硬化する熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、液状シリコーン側への影響を考えれば、シリコーンゴム硬化を阻害しない樹脂が好ましい。この両方の条件を満たす有機ポリマーとして、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂の三種を選択できる。これらは、樹脂として1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
コロナ放電表面改質処理を施した2mm厚さのシリコーンゴムシート基材を55℃に温めたテーブルに載せ、印刷表面温度が70℃になる程度に遠赤外線照射しながら4色画像を印刷した。画像は滲み無く印刷され、正常な濃度が得られた。印刷後は130℃設定の乾燥炉に1時間入れて硬化処理を行なった。乾燥炉から取り出したシリコーンゴムシートの基材長さを二倍にする引き延ばし変形を10回加えた後に碁盤目セロテープ剥離を試した。剥がれて脱落した画像部分は無かった。爪での耐摩耗性はシリコーンインク画像には及ばないが、商品用途によっては、オーバーコート無しで実用できるレベルであった。さらに、画像層の上にスクリーン印刷でシリコーンゴム皮膜層を形成して加硫硬化させた。この場合は、シリコーンインク画像と同レベルの耐摩耗レベルに達した。
EUVインクは、UVインクの中では柔軟性が高い方だが、爪での耐摩耗試験結果も不十分だったが、実施例1同様にシリコーンゴムシート基材引き延ばし変形を10回を加えた後の碁盤目セロテープ剥離では大部分が脱落した。基材との接着力が十分得られないようである。表面改質処理をイトロ処理に代えても結果は同じだった。
Claims (6)
- 乾燥硬化後にシリカハイブリッド硬化膜が得られる有機・無機ハイブリッド組成物を含有した有機溶媒をインクとして用いて、表面改質処理を施したシリコーンゴム基材表面を一定温度以上に保ちながらインクジェットプリンタで画像層を印刷形成すること、
を特徴とするシリカハイブリッドインク画像層をシリコーンゴム基材に形成する方法。 - 乾燥硬化後にシリカハイブリッド硬化膜が得られる有機・無機ハイブリッド組成物を含有した有機溶媒をインクとして用いて、表面を一定温度以上に保った転写シートにインクジェットプリンタで画像層を印刷形成した後に、該画像層に液状シリコーンを被せて、該画像層とその転写対象であるシリコーンゴム基材との間の接着層として働くシリコーンゴム皮膜層を形成して前記画像を転写すること、
を特徴とするシリカハイブリッドインク画像層をシリコーンゴム基材に形成する方法。 - シリコーンゴム基材に形成された画像層を液状シリコーンで覆い、シリコーンゴム皮膜層を形成すること、
を特徴とする請求項1、又は2のいずれかに記載のシリカハイブリッドインク画像層をシリコーンゴム基材に形成する方法。 - 前記有機・無機ハイブリッド組成物の有機ポリマーとして、熱硬化型の不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂の単独、又は二種以上の樹脂が含まれていること、
を特徴とする請求項1〜3記載のいずれかのシリカハイブリッドインク画像層をシリコーンゴム基材に形成する方法。 - 熱硬化型の不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂の単独、又は二種以上の樹脂を有機ポリマーとして含有するシリカハイブリッド硬化膜から成る画像層の表側、又は裏側の少なくとも一方の側にシリコーンゴムが接着していることを特徴とする画像印刷物。
- 前記シリカハイブリッド硬化膜に単一粒子径が1〜100nmの範囲のシリカが10重量%〜50重量%の濃度で分散されていることを特徴とする請求項5の画像印刷物。
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