JP6853661B2 - アミン含有排水の処理方法及び処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アミン含有排水を蒸発濃縮してアミン処理するアミン含有排水の処理方法及び処理装置の技術に関する。
有機窒素化合物であるアミンは、塩基または配位子として工業的に広く利用されている。アミンには様々な物質があり、例えば、エタノールアミン類等の脂肪族アミンやピペラジン類等の複素環式アミン等が挙げられる。エタノールアミン類やピペラジン類等は、その高い沸点と高い塩基性を有することから、酸性ガスの洗浄液などに用いられたり、あるいは塩基または配位子となる性質から金属キレート剤や金属配管等の防食剤などとして用いられたりしている。
エタノールアミン類は、例えば、モノエタノールアミン(2−アミノエタノール)、ジエタノールアミン(2,2−イミノジエタノール)、トリエタノールアミン、2,2−メチルイミノジエタノールなどがある。例えば、エタノールアミンは防食剤として、発電所の蒸気生成配管に添加される場合がある。また、近年では、化石燃料燃焼時に発生する二酸化炭素の排出を抑制する観点から、エタノールアミン類を各種配合した二酸化炭素吸収剤(例えば、特許文献1参照)に排ガスを接触させ排ガス中の二酸化炭素を吸収させることも行われている。
ピペラジン類は、例えば、ピペラジン、1−メチルピペラジン、2−メチルピペラジンなどがあり、酸性ガスの洗浄に使われたり(例えば、特許文献2)、エポキシ樹脂の硬化剤、キレート剤等に使われたりしている。
上記アミンは、例えば、使用時または使用後に水に混入し、アミン含有排水として排出される。排水中のアミンは、炭素、窒素、酸素、水素原子で構成され、炭素及び窒素はCOD源や富栄養化源となって河川や湖沼を汚染する。
アミンの用途によっては、排水中のアミン濃度が非常に高くなることもあり、高い場合には、有機物濃度として0.1w/v%以上となる場合がある。また、高濃度のアミン含有排水は、中和のための酸(塩酸、硫酸など)が多量に注入されない限り、概ねpH9以上のアルカリ性を示す。
そして、高濃度アミン含有排水は、高いCODや全窒素(T−N)を示すため、これらを低減する処理を行った上で、環境中に放流される。環境中に放流する場合、日本においては排水基準でCODMn120mg/L以下(日間平均)、全窒素60mg/L以下(日間平均)に低減する必要がある。
アミン含有排水の処理方法として、蒸発濃縮法を用いる方法がある。例えば、特許文献3には、高濃度のエタノールアミン含有排水をpH8以下に調整した後、蒸発濃縮装置で蒸留し、凝縮水に移行したエタノールアミンを、触媒を用いて酸化分解する方法が提案されている。この方法によれば、エタノールアミン含有排水をpH8以下にして蒸発濃縮することで、エタノールアミンの蒸発量を低減し、残留アミンが比較的少ない凝縮水を得ることが可能となる。
特開2015−24374号公報 特許5679995号公報 特開平10−272478号公報
しかし、アミン含有排水の原水を直接蒸発濃縮する特許文献3の方法では、所望の濃縮倍率まで原水を蒸発濃縮するには、多量の原水が必要となるため、原水を蒸発濃縮するのに必要な熱エネルギーが多大となる。その結果、エネルギーコストが増大するという問題が生じる。
そこで、本発明は、蒸発濃縮法によるアミン含有排水の処理において、蒸発濃縮に掛かる熱エネルギーを抑えながら、残留アミンの少ない処理水を得ることができるアミン含有排水の処理方法及び処理装置を提供することを目的としてなされたものである。
本発明のアミン含有排水の処理方法は、pH9以上〜9.9以下のアミン含有排水を逆浸透膜に通水し、第1透過水と、前記第1透過水のアミン濃度より高い第1濃縮水とに分離する第1逆浸透膜処理工程と、前記第1透過水を逆浸透膜に通水し、第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2逆浸透膜処理工程と、前記第1濃縮水を蒸発濃縮する蒸発濃縮工程と、前記蒸発濃縮工程で発生した蒸気を凝縮する凝縮工程と、前記凝縮工程で得られた凝縮水を前記アミン含有排水に返送する凝縮水返送工程と、を有し、前記アミン含有排水中のアミン濃度は、全有機炭素濃度換算で2000mg/L〜35000mg/Lであることを特徴とする。
また、前記アミン含有排水の処理方法において、前記第2濃縮水を前記アミン含有排水に返送する濃縮水返送工程を有することが好ましい。
また、前記アミン含有排水の処理方法において、前記第1透過水をpH8以下に調整するpH調整工程を有することが好ましい。
また、本発明のアミン含有排水の処理装置は、逆浸透膜を備え、pH9以上〜9.9以下のアミン含有排水を前記逆浸透膜に通水し、第1透過水と、前記第1透過水のアミン濃度より高い第1濃縮水とに分離する第1逆浸透膜手段と、逆浸透膜を備え、前記第1透過水を前記逆浸透膜に通水し、第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2逆浸透膜手段と、前記第1濃縮水を蒸発濃縮する蒸発濃縮手段と、前記蒸発濃縮手段で発生した蒸気を凝縮する凝縮手段と、前記凝縮手段で得られた凝縮水を前記アミン含有排水に返送する凝縮水返送手段と、を有し、前記アミン含有排水中のアミン濃度は、全有機炭素濃度換算で2000mg/L〜35000mg/Lであることを特徴とする。
また、前記アミン含有排水の処理装置において、前記第2濃縮水を前記アミン含有排水に返送する濃縮水返送手段を有することが好ましい。
また、前記アミン含有排水の処理装置において、前記第1透過水をpH8以下に調整するpH調整手段を有することが好ましい。
本発明によれば、蒸発濃縮法によるアミン含有排水の処理において、蒸発濃縮に掛かる熱エネルギー又は使用する薬品量を抑えながら、残留アミンの少ない処理水を得ることができるアミン含有排水の処理方法及び処理装置を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係るアミン含有排水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るアミン含有排水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す排水処理装置1は、原水槽10、第1逆浸透膜モジュール12(第1逆浸透膜処理手段)、第2逆浸透膜モジュール14(第2逆浸透膜処理手段)、蒸発濃縮機16(蒸発濃縮手段)、濃縮水槽18、凝縮器20(凝縮手段)、pH調整装置(pH調整手段)を備えている。
蒸発濃縮機16は、蒸発缶22、熱媒体供給配管24を備えている。pH調整装置は、混合器26、pHセンサ28、pH調整剤添加配管30を備えている。混合器26は、例えば、インラインミキサー等である。また、例えば、内部に撹拌機を設置した混合槽等でもよい。
以下に、図1に示す排水処理装置1の配管構成について説明する。図1に示す配管構成は一例であって、これに制限されるものではない。
排水流入配管32の一端は原水槽10の排水出口に接続され、他端はポンプ34aを介して第1逆浸透膜モジュール12の入口に接続されている。第1透過水配管36の一端は、第1逆浸透膜モジュール12の透過水出口に接続され、他端は混合器26を介して第2逆浸透膜モジュール14の入口に接続されている。第1透過水配管36には、pH調整剤添加配管30が接続され、また、pHセンサ28が設置されている。第2逆浸透膜モジュール14の透過水出口には第2透過水配管38が接続されている。第2濃縮水配管42(濃縮水返送手段)の一端は、第2逆浸透膜モジュール14の濃縮水出口に接続され、他端は原水槽10の排水入口に接続されている。第2濃縮水配管42にはポンプやバルブ等が設置されていてもよい。第1濃縮水配管40の一端は、第1逆浸透膜モジュール12の濃縮水出口に接続され、他端は蒸発缶22側面の排水入口に接続されている。熱媒体供給配管24は、蒸発缶22内部に設けられた伝熱管44に接続されている。伝熱管44の一端は、前述したように熱媒体供給配管24に接続され、他端は蒸発缶22の外部に設けられたドレン部46に接続されている。ドレン配管48の一端は、ドレン部46に接続され、他端はポンプ34bを介して例えば系外に設けられた水槽に接続されている。循環配管50の一端は蒸発缶22の下部出口に接続され、他端はポンプ34cを介して蒸発缶22の上部入口に接続されている。濃縮水回収配管52の一端は循環配管50に接続され、他端は濃縮水槽18に接続されている。蒸気回収配管54の一端は蒸発缶22の側面上部口に接続され、他端は凝縮器20の蒸気入口に接続されている。凝縮器20内には、冷却水配管56が設置されている。凝縮水配管58(凝縮水返送手段)の一端は凝縮器20の凝縮水出口に接続され、他端は原水槽10の凝縮水入口に接続されている。凝縮水配管58にはポンプやバルブが設置されていてもよい。
次に、本実施形態に係る排水処理装置1の動作について説明する。
アミン含有排水は、通常、pH9以上のアルカリ性を呈しているので、原水槽10内のアミン含有排水は、pH調整されることなく、ポンプ34aにより、排水流入配管32に送液され、第1逆浸透膜モジュール12に供給される。アミン含有排水は、第1逆浸透膜モジュール12内の逆浸透膜により、アミンがある程度除去された第1透過水と、アミンが濃縮された第1濃縮水とに分離される(第1逆浸透膜処理工程)。
第1透過水は第1透過水配管36を通り混合器26に導入され、また、pH調整剤は、pH調整剤添加配管30から第1透過水配管36を通り混合器26に導入される。そして、第1透過水とpH調整剤とは、混合器26により混合され、第2逆浸透膜モジュール14に供給される。具体的には、第1透過水のpHをpHセンサ28により計測し、その計測値に応じて設定された量のpH調整剤が添加され、混合器26を通る過程で、第1透過水のpHが8以下に調整され、第2逆浸透膜モジュール14に供給される(pH調整工程)。なお、残留アミンを含む第1透過水のpHは、通常、アルカリ性を呈するため、pH調整剤としては、硫酸、塩酸等の酸剤が用いられる。
第1透過水は、第2逆浸透膜モジュール14内の逆浸透膜により、残留アミンが除去された第2透過水と、残留アミンが濃縮された第2濃縮水とに分離される(第2逆浸透膜処理工程)。第2透過水は、第2透過水配管38から排出され、処理水として回収される。また、第2濃縮水は第2濃縮水配管42から原水槽10へ返送される(濃縮水返送工程)。
このように、第1逆浸透膜モジュール12で処理した第1透過水をさらに第2逆浸透膜モジュール14で処理することにより、残留アミンの少ない処理水(第2透過水)が得られる。特に、第1透過水のpHを8以下にして、第2逆浸透膜モジュール14で処理することにより、残留アミンをより低減させることが可能となり、より良好な水質の処理水を得ることができる。さらに、第1逆浸透膜モジュール12で処理した第1透過水に含まれるアミンの濃度は、処理条件にもよるが、例えば、原水(アミン含有排水)の1/10以下となる。したがって、第1逆浸透膜モジュール12で処理した第1透過水のpHを8以下にした方が、原水のpHを8以下にする場合と比較して、使用するpH調整剤の量を顕著に削減することができる(例えば、1/10以下)。例えば、特許文献3のようなアミン含有排水の原水をpH8以下に調整して蒸発濃縮する方法と比較して、薬品の使用量を顕著に削減することが可能となる。また、第2濃縮水は回収してもよいが、通常、原水(アミン含有排水)のアミン濃度よりも低いため、第2濃縮水配管42から原水槽10へ返送することが好ましい。これにより、処理水(第2透過水)の回収率を向上させることが可能となる。
ところで、第1逆浸透膜モジュール12から排出された第1濃縮水は、第1濃縮水配管40を通って蒸発濃縮機16の蒸発缶22に供給される。また、蒸気等の熱媒体が、熱媒体供給配管24から伝熱管44に供給され、伝熱管44が加熱される。そして、ポンプ34cが稼働され、蒸発缶22の底部に貯留した第1濃縮水が循環配管50を通り、蒸発缶22の上部から、蒸気等の加熱媒体により加熱された伝熱管44に向けて噴射される。噴射された第1濃縮水は、伝熱管44からの熱により加熱され、一部は蒸発し、残部はアミン濃縮水として蒸発缶22の底部に貯留される(蒸発濃縮工程)。蒸発濃縮工程で所定の濃縮倍率に濃縮されたアミン濃縮水は、蒸発缶22から排出され、循環配管50、濃縮水回収配管52を通り濃縮水槽18に貯留される。濃縮水槽18に貯留されたアミン濃縮水は、産業廃棄物などとして処分される。なお、伝熱管44を通過した蒸気等の熱媒体は、ドレン部46に貯留され、必要に応じてポンプ34bを稼働させることで、ドレン配管48から系外へ排出される。また、蒸発缶22で蒸発した蒸気は、蒸気回収配管54を通り凝縮器20に供給される。凝縮器20に供給された蒸気は、凝縮器20内の冷却水配管56を流れる冷却液と熱交換されて凝縮され、凝縮水となる(凝縮工程)。凝縮水は、凝縮水配管58から原水槽10へ返送される(凝縮水返送工程)。
このように、第1逆浸透膜モジュールで処理した第1濃縮水を蒸発濃縮することにより、蒸発濃縮する水量を減らして、所望の濃縮倍率のアミン濃縮水を得ることができる。したがって、アミン含有排水の原水を直接蒸発濃縮して、所望の濃縮倍率のアミン濃縮する場合と比較して、蒸発濃縮する水量が減るため、蒸発濃縮に必要な熱エネルギー(例えば、蒸気の供給量等)を抑えることが可能となり、エネルギーコストを削減することができる。また、凝縮工程で得られる凝縮水は、残留アミンが含まれるため、酸化触媒で酸化分解して系外へ排出してもよいが、凝縮水配管58から原水槽10へ返送することが好ましい。これにより、薬品使用量を削減すること、処理水(第2透過水)の回収率を向上させることが可能となる。
以下に、アミン含有排水の処理条件について説明する。
本実施形態の処理対象であるアミンは、特に制限されるものではないが、大気圧下での沸点が130℃以上であり、25℃水溶液での酸解離定数pKaが8.5以上である物質等が挙げられ、例えば、モノエタノールアミン(例えば、2−アミノエタノール[HOCHCHNH])、ジエタノールアミン(例えば、2,2−イミノジエタノール[(HOCHCH)NH])、トリエタノールアミン(例えば、[(HOCHCH)N])、2,2−メチルイミノジエタノール、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2−メチルピペラジン等が挙げられる。
アミン含有排水中のアミン濃度は、例えば、全有機炭素濃度換算で30000mg/L以下であることが好ましく、2000mg/L〜30000mg/Lの範囲であることがより好ましい。アミン濃度が、30000mg/Lを超える排水に対しても処理は可能であるが、30000mg/Lを超える場合、アミンの種類にもよるがそれを含む排水の浸透圧が概ね3MPa以上と高くなり、濃縮水の浸透圧はさらにその2倍以上となるため、ろ過にかける圧力が逆浸透膜の耐圧を超えたり、高圧の通液ポンプが必要になると共に、高い透過流束が得られず多大な膜面積が必要になったりする場合がある。また、処理水においても排水基準を下回る良好な処理水質を得ることが困難となる場合がある。アミン濃度が全有機炭素濃度換算で2000mg/L未満の排水に対しても処理は可能であるが、pHを8以下にした逆浸透膜1段処理でも良好な処理水質が得られ、かつ、酸使用量低減の効果も少ないため、2000mg/L以上の排水を対象にすることが好ましい。
アミン含有排水は、通常、pH9以上のアルカリ性を呈し、pH11を超える場合もある。但し、逆浸透膜には、適用pH上限値があるため、アミン含有排水のpHが逆浸透膜の適用pH上限値を超える場合には、pH9以上〜逆浸透膜の適用pH上限値未満にpH調整することが好ましい。また、排水中に含まれる酸解離定数(pKa)が8.5〜9.8のアミンの場合、pHを解離定数以下に下げるとすると、pH調整に必要な酸が多量に必要になるため、含まれるアミンの解離定数に応じて、上記pH範囲の間で、酸添加量の少ないpHとするのが良い。また、アミン含有排水にあらかじめ酸等が多量に混入して、pH9未満となっている場合には、アルカリ剤を加えて、pH9以上とする。具体的なpH調整は、例えば、原水槽10に設置されたpHセンサにより、原水槽10内のアミン含有排水のpHが測定され、その測定値に基づいて、原水槽10に接続されたpH調整剤添加配管からpH調整剤(酸剤、アルカリ剤)が添加されることにより行われる。
本実施形態の処理では、アミン含有排水にシリカが含有される場合でも、シリカの溶解度が高くなるpH9以上の排水を、第1逆浸透膜モジュール12に通水しているため、逆浸透膜面上でのシリカの析出を抑制することができる。なお、大部分のシリカは第1濃縮水中に含まれる。
本実施形態で用いられる逆浸透膜は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアミド系、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、セルロースアセテート(CA)等の有機膜、セラミック製の無機膜等が挙げられる。また、逆浸透膜の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、中空糸膜、管状膜、平膜、スパイラル等が挙げられる。また、逆浸透膜の通水方式は、内圧型、外圧型等のあらゆる通水方式が適用可能である。
pH9以上のアミン含有排水を第1逆浸透膜モジュール12に通水する際には、使用する逆浸透膜の特性に応じた圧力をかけ、通水する量の一定の割合を第1濃縮水として取り出すことが望ましい。第1濃縮水として排出される水の量は、逆浸透膜の特性や流入する水質によって変わるが、概ね、逆浸透膜に流入する水量の10〜50%であることが好ましい。逆浸透膜に通水する際の圧力は、膜の特性にもよるが、例えば、数kg/cm〜70kg/cmの範囲である。
第1逆浸透膜モジュール12により得られた第1透過水のpHは、8以下に調整されるのが好ましく、6.5〜7.5の範囲に調整されるのがより好ましい。第1透過水のpHを8以下とすることで、第1透過水中のアミンイオン化物質(例えばR−NH )の割合を増加させることができるため、後段の第2逆浸透膜モジュール14により、効率的にアミンを除去することが可能となる。なお、第1透過水のpHを酸性側にし過ぎると(例えば、pH2以下)、装置内が腐食される虞がある。
第1透過水を第2逆浸透膜モジュール14に通水する際には、使用する膜の特性に応じた圧力をかけ、通水する量の一定の割合を第2濃縮水として取り出すことが望ましい。第2濃縮水として排出される水の量は、逆浸透膜の特性や流入する水質によって変わるが、概ね、膜に流入する水量の70〜90%であることが好ましい。逆浸透膜に通水する際の圧力は、逆浸透膜の特性にもよるが、例えば、数kg/cm〜40kg/cmの範囲である。
第1逆浸透膜モジュール12により得られる第1濃縮水の濃縮倍率は、例えば、2倍〜20倍の範囲が好ましく、2.5倍〜10倍の範囲がより好ましい。第1濃縮水の濃縮倍率が2倍未満であると、蒸発濃縮する水量が多く、上記範囲を満たす場合と比較して、所望の濃縮倍率を得るための蒸発濃縮に必要な熱エネルギーが高くなる場合がある。また、第1濃縮水の濃縮倍率が20倍を越えると、逆浸透膜モジュール内部で塩の析出が起こる場合がある。
第2逆浸透膜モジュール14により得られる第2濃縮水中のアミン濃度は、原水よりも希薄であるため(全有機炭素濃度換算で、例えば、数百〜数千mg/L程度)、第2濃縮水を回収又は蒸発濃縮するより、アミン含有排水に返送することが好ましい。これにより、処理水の回収率を上げることが可能となる。
本実施形態で用いた蒸発缶22は、アミン含有排水を加熱して蒸発させると共に、アミン含有排水を濃縮することができる構造を有していれば特に制限されるものではなく、例えば、自然循環式蒸発缶、強制循環式蒸発缶、液膜式蒸発缶、真空蒸発缶等の従来公知の蒸発缶を使用することができる。これらの中では、蒸発濃縮に掛かるエネルギーコストの点で、真空蒸発缶が好ましい。真空蒸発缶は、蒸発缶内を減圧する真空ポンプを備えており、例えば、真空ポンプで蒸発缶内を−0.05〜−0.02MPa(ゲージ圧)に減圧させる。これにより、高い沸点を有するアミン含有排水に対して、低い加熱温度(例えば、60〜90℃)で蒸発させることが可能となるため、熱エネルギーの増加を抑制し、エネルギーコストを抑えることが可能となる。
蒸発濃縮工程におけるアミン濃縮水の濃縮倍率は、廃棄処分を考慮すれば、アミン濃縮水の水量が少なくなるように高めに設定することが望ましいが、その一方で、濃縮倍率が上がると、凝縮水に含まれるアミンが増加する。そうすると、アミン濃度の高い凝縮水を原水槽に返送することになり、第1逆浸透膜モジュール12に流入するアミン含有排水のアミン濃度及び浸透圧が高くなるため、第1逆浸透膜モジュール12に対して高い圧力を掛ける必要があったり、処理水の水質が悪化したり、処理水回収率が低下したりする場合がある。したがって、処理水質の悪化を抑える点で、蒸発濃縮工程におけるアミン濃縮水の濃縮倍率は、凝縮水のアミン濃度が原水(アミン含有排水)の濃度を超えない範囲であることが好ましく、例えば、15倍〜25倍の範囲である。なお、アミン濃縮水の濃縮倍率は、アミン含有排水に対する倍率である。すなわち、3倍濃縮の第1濃縮水を蒸発濃縮して5倍濃縮した場合、アミン濃縮液の濃縮倍率は15倍(3×5)となる。
蒸発濃縮工程により得られるアミン濃縮水は、例えば、廃棄物として処分しても良いし、あるいは燃焼装置において酸素を吹込みながら、高温でアミンを燃焼させ、二酸化炭素と窒素に分解しても良い。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1−1〜1−3>
アミン含有排水として、上記例示したアミン類のうち広範に使用される2−アミノエタノール6g/L、2,2−イミノジエタノール6g/L、ピペラジン6g/L、及び2−メチルピペラジン6g/Lを、工業用水に溶解した合成排水を調製した(有機物濃度24g/L)。この合成排水のpHは11.3、シリカ濃度(SiO)は60mg/Lであった。この合成排水のpHを塩酸(35%)で7.1に調整して測定した、全有機炭素濃度(TOC)は11,500mg/L、全窒素濃度(TN)は6,200mg/L、CODMnは13,000 mg/Lであった。なお、合成排水におけるTOC、TNは、島津製全有機炭素・窒素測定装置で測定したが、中性付近で測定する必要があるため、上記のような塩酸でのpH調整を行った。以下の排水処理では、pH調整していない合成排水(pH11.3)を用いている。
表1に、合成排水中の各アミンの沸点(760mmHg)とpKa(25℃)を示す。
Figure 0006853661
合成排水(pH11.3)に塩酸を添加し、pHを9.9に調整した。耐圧容器(内部容量300mL)の底部に逆浸透膜(日東電工製、LFC3−LD)を配し、容器内に、上記pH調整済み合成排水を導入して密閉し、撹拌翼を回転させながら、容器内部に圧縮窒素を導入して内部圧力を2.0MPaとし、第1透過水が180mL(回収率60%)、第1濃縮水が120mLとなるまでろ過を継続した(第1逆浸透膜処理工程)。ろ過時の水温は25℃であった。同様の操作を4回行い、得られた第1透過水(合計720mL)及び第1濃縮水(合計480mL)の水質(pH、TOC、TN、CODMn、SiO)を測定した。
第1透過水を180mL×3個に分け、塩酸を添加し、pH6.7、8.0、10.0に調整した(実施例1−1、1−2、1−3)。
次に、耐圧容器(内部容量300mL)の底部に逆浸透膜(日東電工製、LFC−3)を配し、容器内に、上記pH調整済みの第1透過水180mLを導入して密閉し、撹拌翼を回転させながら、容器内部に圧縮窒素を導入して内部圧力を1.1MPaとし、第2透過水が156mL(回収率87%、7.5倍濃縮)、第2濃縮水が24mLとなるまでろ過を継続した(第2逆浸透膜処理工程)。ろ過時の水温は25℃であった。得られた第2透過水及び第2濃縮水の水質(pH、TOC、TN、CODMn、SiO)を測定した。
次に、第1濃縮水300mLを、pH調整剤を加えることなく、ロータリーエバポレータの濃縮部フラスコに導入し、この濃縮部フラスコが80℃の湯浴に底部から半分程度まで浸漬した状態で濃縮部フラスコを回転させた。凝縮部に22℃の冷却水を通水しながら、真空ポンプを稼働し、濃縮部フラスコを含むエバポレータ内部の圧力が−0.07MPaとなるように調整した。凝縮部で冷却された凝縮水を底部の凝縮水フラスコで集水し、凝縮水が255mL、アミン濃縮水が45mLとなるまで濃縮した(濃縮倍率6.7倍、凝縮水回収率85%)。この操作で得られた凝縮水及びアミン濃縮水の水質(pH、TOC、TN、CODMn)を測定した。
表2に、第1透過水、第1濃縮水、第2透過水、及び第2濃縮水の水質結果を示す。また、表3に、凝縮水及びアミン濃縮水の水質結果を示す。
Figure 0006853661
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第1逆浸透膜処理により得られた第1透過水の水質は、排水基準を満たしていないが、その第1透過水をpH8.0以下に調整して、第2逆浸透膜処理を行った実施例1−1〜1−2では、排水基準(CODMn120mg/L、全窒素濃度(TN)60mg/L)を十分満たす水質の処理水(第2透過水)が得られた。実施例1−3では、全窒素は排水基準より若干高かったが、CODMnは排水基準を満たす水質の処理水(第2透過水)が得られたので、残留アミンの少ない処理水が得られたと言える。
第1逆浸透膜処理により得られた第1濃縮水のシリカ濃度は148mg/Lであった。pH9.9におけるシリカの溶解度(25℃)は156mg/Lであるので、第1濃縮水中でシリカは析出していないと言える。なお、合成排水に添加した塩酸は564mgHCl/300mL、第1透過水に添加した塩酸は28〜218mgHCl/180mLであり、合計592〜782mgHClであった。
蒸発濃縮工程では、第1濃縮水300mLを凝縮水255mL、濃縮水45mLになるまで濃縮した(濃縮倍率6.7倍)。したがって、合成排水に対する濃縮倍率は16.7倍(2.5×6.7倍)であり、凝縮水の水量は合成排水の34%であった。
実施例における第1濃縮水の水量は、合成排水の40%であるので、合成排水を直接蒸発濃縮して、16.7倍まで濃縮する場合より、少ない水量で16.7倍まで濃縮することができる。したがって、蒸発濃縮に掛かる熱エネルギーを削減することができる。
凝縮水の水質はTOC1,610mg/L、TN853mg/L、CODMn1,690mg/Lであった。これは合成排水の水質より良好であった。
第2逆浸透膜処理により得られた第2濃縮水、及び蒸発濃縮処理により得られた凝縮水はいずれも合成排水よりもアミン含有量が少なかった。したがって、これらを合成排水に混合して逆浸透膜処理をしても、処理水(第2透過水)の水質は、表2の第2透過水の水質よりも高くなることはないと言える。
<比較例1>
前記合成排水300mLに塩酸を添加して、pH8.1に調整した。耐圧容器(内部容量300mL)の底部に逆浸透膜(日東電工製、LFC3−LD)を配し、容器内に、上記pH調整済み合成排水を導入して密閉し、撹拌翼を回転させながら、容器内部に圧縮窒素を導入して内部圧力を2.0MPaとして、ろ過を行った。実施例の第1逆浸透膜処理と同様に、透過水が180mL、濃縮水が120mLとなるまでろ過を行おうとしたが、透過水が165mL(排水の55%)、濃縮水が135mL(45%)となった時点で透過水が得られなくなったため、ろ過を終了し、透過水及び濃縮水の水質(pH、TOC、TN、CODMn、SiO)を測定した。なお、ろ過時の水温は25℃であった。
表4に透過水及び濃縮水の水質結果を示す。
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透過水の水質は排水基準(CODMn120mg/L、全窒素(TN)60mg/L)よりも高かった。また、合成排水のpHを調整するのに要した塩酸は、排水300mLあたり2,480mgHClであった。これは、実施例1−1で要した塩酸量の3.2倍であった。
濃縮水の溶存シリカは130mg/Lであり、pH8.0におけるシリカの溶解度128mg/Lとほぼ同等であった。そして、透過水にシリカはほとんどないこと、排水量の45%の濃縮水では、全シリカ濃度は計算上133mg/Lとなり、pH8.0におけるシリカ溶解度を超えていることから、一部のシリカは逆浸透膜面上に析出したと考えられる。
比較例1において、実施例と同じ圧力で、実施例よりも少ない透過水しか得られなかったのは、塩酸を実施例よりも多量に加えて排水の浸透圧が上昇したこと、膜面上でシリカの析出が生じたこと等が考えられる。また、比較例1の濃縮水を蒸発濃縮処理する場合、濃縮水の水量は実施例の第1濃縮水の水量よりも多いため、その分、所望の濃色倍率を得るために必要な熱エネルギーが多くなる。
<比較例2>
前記合成排水500mLに塩酸を添加して、pH8.0に調整した後、ロータリーエバポレータの濃縮部フラスコに導入し、この濃縮部フラスコが80℃の湯浴に底部から半分程度まで浸漬した状態で濃縮部フラスコを回転させた。凝縮部に冷却水22℃の冷却水を通水しながら、真空ポンプを稼働し、濃縮部フラスコを含むエバポレータ内部の圧力が−0.07MPaとなるよう調整した。凝縮部で冷却された凝縮水を冷却部底部の凝縮水フラスコで集水し、凝縮水が470mL、濃縮水が30mLとなるまで濃縮した(16.7倍濃縮)。得られた凝縮水及び濃縮水の水質(pH、TOC、TN、CODMn)を測定した。
表5に、凝縮水及び濃縮水の水質結果を示す。
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凝縮水の水質は、排水基準(CODMn120mg/L、全窒素(TN)60mg/L)を十分に満たすものであった。しかしながら、排水をpH調整するのに要した塩酸は、排水500mLあたり4170mgHCl(排水300mLあたりでは2500mgHCl)であり、実施例1−2で要した塩酸量の3.3倍であった。
合成排水を16.7倍まで濃縮するのに蒸発させた水量は、実施例では102mL(300mLあたり)であるのに対し、比較例2では282mL(300mLあたり)である。したがって、実施例の方が、所望の濃縮倍率を得るのに必要な熱エネルギーを削減することができることを示している。
1 排水処理装置、10 原水槽、12 第1逆浸透膜モジュール、14 第2逆浸透膜モジュール、16 蒸発濃縮機、18 濃縮水槽、20 凝縮器、22 蒸発缶、24 熱媒体供給配管、26 混合器、28 pHセンサ、30 pH調整剤添加配管、32 排水流入配管、34a〜34c ポンプ、36 第1透過水配管、38 第2透過水配管、40 第1濃縮水配管、42 第2濃縮水配管、44 伝熱管、46 ドレン部、48 ドレン配管、50 循環配管、52 濃縮水回収配管、54 蒸気回収配管、56 冷却水配管、58 凝縮水配管。

Claims (6)

  1. pH9以上〜9.9以下のアミン含有排水を逆浸透膜に通水し、第1透過水と、前記第1透過水のアミン濃度より高い第1濃縮水とに分離する第1逆浸透膜処理工程と、
    前記第1透過水を逆浸透膜に通水し、第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2逆浸透膜処理工程と、
    前記第1濃縮水を蒸発濃縮する蒸発濃縮工程と、
    前記蒸発濃縮工程で発生した蒸気を凝縮する凝縮工程と、
    前記凝縮工程で得られた凝縮水を前記アミン含有排水に返送する凝縮水返送工程と、を有し、
    前記アミン含有排水中のアミン濃度は、全有機炭素濃度換算で2000mg/L〜35000mg/Lであることを特徴とするアミン含有排水の処理方法。
  2. 前記第2濃縮水を前記アミン含有排水に返送する濃縮水返送工程を有することを特徴とする請求項1に記載のアミン含有排水の処理方法。
  3. 前記第1透過水をpH8以下に調整するpH調整工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアミン含有排水の処理方法。
  4. 逆浸透膜を備え、pH9以上〜9.9以下のアミン含有排水を前記逆浸透膜に通水し、第1透過水と、前記第1透過水のアミン濃度より高い第1濃縮水とに分離する第1逆浸透膜手段と、
    逆浸透膜を備え、前記第1透過水を前記逆浸透膜に通水し、第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2逆浸透膜手段と、
    前記第1濃縮水を蒸発濃縮する蒸発濃縮手段と、
    前記蒸発濃縮手段で発生した蒸気を凝縮する凝縮手段と、
    前記凝縮手段で得られた凝縮水を前記アミン含有排水に返送する凝縮水返送手段と、を有し、
    前記アミン含有排水中のアミン濃度は、全有機炭素濃度換算で2000mg/L〜35000mg/Lであることを特徴とするアミン含有排水の処理装置。
  5. 前記第2濃縮水を前記アミン含有排水に返送する濃縮水返送手段を有することを特徴とする請求項に記載のアミン含有排水の処理装置。
  6. 前記第1透過水をpH8以下に調整するpH調整手段を有することを特徴とする請求項又はに記載のアミン含有排水の処理装置。
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