JP2011131209A - 酸性液の処理方法および処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】原子力発電所や火力発電所の復水脱塩装置の再生時に排出されるモノエタノールアミン含有希塩酸性液等の非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を効率的かつ経済的に処理する。
【解決手段】アニオン交換膜21によって原水室22とアルカリ溶液室23とに隔てられた中和透析装置2の原水室22に、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を通水すると共に、アルカリ溶液室23に該酸性液よりも浸透圧の高い濃厚アルカリ溶液を通水して該酸性液を中和、脱塩および減容化する。アニオン交換膜21および濃厚アルカリ溶液を用いた中和透析処理で、酸性液の中和および脱塩と減容化を行うことができ、得られた中和脱塩減容化処理液を容易に液中燃焼処理することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を、効率的に中和、脱塩および減容化する処理方法と装置に関する。詳しくは原子力発電所や火力発電所の復水脱塩装置の再生時に排出されるモノエタノールアミン含有希塩酸性液等の非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を熱分解又は液中燃焼などにより処理するに当たり、その前処理として、効率的かつ経済的に中和、脱塩および減容化する処理方法と処理装置に関する。
原子力発電や火力発電の復水工程では、モノエタノールアミン(MEA)などのアミン類が蒸気生成ラインの防食剤として用いられている。通常、これらのアミン類は、ライン中に設けられた復水脱塩装置(以下「コンデミ」と称す場合がある。)のカチオン交換樹脂に捕捉され、復水脱塩装置の再生の際に再生廃液に含まれて排出される。排出されたアミン類は、COD源や富栄養化源となって河川や湖沼を汚染するため、これを処理する必要がある。
このコンデミ再生廃液は、CODおよび窒素負荷の高い液であるため、一般に熱分解又は液中燃焼などにより処理されているが、コンデミ再生廃液をそのまま熱分解又は液中燃焼装置に供するには、廃液量が多く処理コストが高くつくことから、その減容化が望まれる。また、コンデミ再生廃液の熱分解液中燃焼では、後述の特許文献4の蒸留濃縮の場合と同様に、廃液との接液部において、廃液中のClイオンに起因する装置腐食の問題がある。
従来、モノエタノールアミンの処理方法として、電気分解(例えば、特許文献1)、生物処理、活性炭吸着、又は湿式酸化(触媒分解、熱分解)による方法が提案されているが、いずれも、反応速度が遅い、処理エネルギーコストが過大である、などの問題がある。
特許文献2,3では、貴金属担持触媒を用いてアミン化合物を接触酸化処理しているが、アミン濃度が高い場合は触媒の劣化速度も速くなり、触媒の交換頻度が増す上に、酸化剤の添加コストも莫大となり、非経済的である。また、加温下で反応させるため、加熱エネルギーコストも問題となる。
特許文献4では、アルカノールアミン含有酸性廃液を中和せずにそのまま減圧蒸留濃縮しているが、濃縮により腐食性が増すため、高価な防食処理を施した濃縮装置が必要となる。一般に、液中のCl濃度が5%を超えると、多くの材料は、耐腐食性を維持し得ず、例えばフェライト系ステンレス25CrはCl濃度5%以下では使用できるが、5%を超えると使用することができない(装置材料耐食表:化学工業社出版)。
特許文献5では、陰イオン交換膜を用いた電気透析処理でClを除去した後、湿式触媒処理でモノエタノールアミン以外の含有物質を分解処理し、その後にモノエタノールアミンを回収しているが、電気透析のコストも触媒処理のコストも莫大となるため非経済的である。特に、コンデミ再生廃液中には、イオン交換樹脂の再生に用いられた多量の塩酸が共存することにより、次のような問題がある。即ち、Hイオンとその他カチオン成分(モノエタノールアミン、アンモニア、ヒドラジンなど)ではモル電気伝導率の関係から、当量として同等であっても、電気透析で移動する移動量はHイオンが圧倒的に多い(例えば、25℃の水溶液中の無限希釈におけるモル伝導率λは、H:349.8S・cm/mol、NH :73.5S・cm/mol)。従って、このコンデミ再生廃液の処理においては、単に電気透析を用いても、Hイオンの移動ばかりに電力が消費され、エネルギーコストが過大になり、極めて非効率的である。
また、特許文献6では、廃酸から酸を除去回収するために、イオン交換膜を用いた電気透析が用いられているが、膜面積が過大になる上に、原理的に廃酸よりも高濃度な酸を得ることができず、また、水の浸透により透析廃液量のほうが原液より増大する、透析廃液の中にも廃酸が混入する、などといった制約や欠点がある。
特許文献7では、有機アミン含有再生廃液の処理に当たり、この廃液を加熱して水分を蒸発させ、得られた濃縮液から有機アミンを気化させているが、この廃液からの水分の蒸発に多大な熱エネルギーが必要となる上に、濃縮によりClイオン濃度が非常に高くなるために、装置への腐食の影響が懸念される。また、アルカリを添加して中和した後加熱蒸発させる場合には、NaOH等のアルカリの添加で塩類濃度が高くなり、塩の析出のためにメンテナンス頻度が高くなることが懸念される。
特開平9−239371号公報 特許第3739452号公報 特許第3568298号公報 特許第3083504号公報 特開2005−66544号公報 特開2007−7655号公報 特開平9−314128号公報
以上のように、コンデミの再生時に排出されるモノエタノールアミン含有希塩酸性液等の窒素化合物含有酸性液を、例えば熱分解又は液中燃焼により処理する場合、濃縮による減容化と、中和および脱塩による腐食性の低減が望まれるが、従来においては、装置の腐食やエネルギーコストの高騰といった問題を引き起こすことなく、このような窒素化合物含有酸性液を効率的に中和および脱塩すると共に減容化する技術は提供されていないのが実状である。
本発明は、コンデミの再生時に排出されるモノエタノールアミン含有希塩酸性液等の窒素化合物含有酸性液のような非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を効率的かつ経済的に中和、脱塩および減容化する方法と装置を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アニオン交換膜および高濃度のアルカリ溶液を用いた中和透析処理で、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液の中和と脱塩を行うと共に、脱水減容化が可能となることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
本発明(請求項1)の酸性液の処理方法は、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液の処理方法であって、アニオン交換膜によって一方の室と他方の室とに隔てられた該一方の室に該酸性液を通水するとともに、該他方の室に該酸性液よりも浸透圧の高いアルカリ溶液を通水して該酸性液を中和、脱塩および減容化することを特徴とする。
請求項2の酸性液の処理方法は、請求項1において、前記アルカリ溶液の酸消費総量(mg−CaCO)が、前記酸性液のアルカリ消費総量(mg−CaCO)の1倍以上であることを特徴とする。
請求項3の酸性液の処理方法は、請求項1又は2において、前記アルカリ溶液が塩を含むことを特徴とする。
請求項4の酸性液の処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記酸性液およびアルカリ溶液のアニオン交換膜表面の流速が0.1cm/sec以上であることを特徴とする。
請求項5の酸性液の処理方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記酸性液を中和、脱塩および減容化して、pH4〜10の中和脱塩減容化処理液を得ることを特徴とする。
請求項6の酸性液の処理方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記酸性液を中和、脱塩および減容化して得られる中和脱塩減容化処理液を蒸留濃縮又は正浸透処理して更に減容化することを特徴とする。
請求項7の酸性液の処理方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記酸性液とアルカリ溶液の少なくとも一方が循環通水されることを特徴とする。
本発明(請求項8)の酸性液の処理装置は、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を中和、脱塩および減容化処理する装置であって、アニオン交換膜によって一方の室と他方の室とに隔てられた前記一方の室に該酸性液を通水する酸性液通水手段と、前記他方の室に該酸性液よりも浸透圧の高いアルカリ溶液を通水するアルカリ溶液通水手段とを有することを特徴とする。
請求項9の酸性液の処理装置は、請求項8において、前記酸性液通水手段とアルカリ溶液通水手段の少なくとも一方が、循環通水手段であることを特徴とする。
本発明によれば、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液(以下、非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を「非イオン/カチオン性水溶性化合物」と称し、これを含有する酸性液を「非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液」又は「原水」と称す場合がある。)を、アニオン交換膜を介する濃厚アルカリ溶液による中和透析処理で、中和および脱塩処理すると共に減容化することができ、後工程の蒸留濃縮や熱分解又は液中燃焼装置といった後処理装置に対する腐食性を低減すると共に、液量を低減して処理コストを低減することができる(請求項1,8)。
即ち、アニオン交換膜を介したアルカリ溶液による中和透析で、非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液中のClイオンがアニオン交換膜を透過してアルカリ溶液側に移行して除去されることにより脱塩がなされ、また、このClイオンとアルカリ溶液中のOHイオンがイオン交換されてOHイオンがアニオン交換膜を透過して酸性液側に移行することにより酸性液が中和される。
しかも、このアルカリ溶液として、酸性液よりも浸透圧の高い濃厚アルカリ溶液を用いることによる正浸透流で、酸性液中の水がアニオン交換膜を透過して浸透圧の高い濃厚アルカリ溶液側に移動することとなり、この結果、酸性液の脱水減容化が行われる。なお、この際、酸性液とアルカリ溶液とはアニオン交換膜を介しているため、カチオン成分の移動は起こり難く、Clイオンと水のアルカリ溶液側への移動と、OHイオンの酸性液側への移動が優先する。
非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液に直接アルカリを添加して中和すると、中和を行うことはできても、Naなどのアルカリ金属イオンが添加されることで塩類濃度が上がり、また液量も増え、好ましくない。
これに対して、本発明によれば、液量を低減した上で、中和および脱塩することができる。
このようにして中和、脱塩および減容化して得られた中和脱塩減容化処理液は、腐食の原因となるClイオン濃度が低減され、またpHも上昇しているため、これを後段の濃縮装置や熱分解又は液中燃焼装置等の後処理装置に供給しても、腐食の問題を引き起こすことがない。また、その液量も低減されているため、装置設備の小型化、処理コストの低減を図ることができる。
本発明において、アルカリ溶液としては、その酸消費総量(mg−CaCO)が、非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液のアルカリ消費総量(mg−CaCO)の1倍以上であるものが好ましく、このようなアルカリ溶液を用いることで酸性液を十分に中和することができる(請求項2)。
本発明においては、アルカリ溶液を濃厚にすればするほど酸性液との浸透圧差が大きくなり、効率的な浸透脱水を行えるが、アルカリ溶液を濃厚なものとするためには、大過剰のアルカリを必要とする。すなわち、酸性液を中和するに足りるアルカリ量に加え、浸透圧差を大きくするための大過剰のアルカリを必要とし、高濃度のアルカリ溶液を調製する必要がある。しかし、高濃度のアルカリ溶液は取り扱いが難しく、安全上、危険が伴う。また、高濃度アルカリ溶液に耐えられる高耐アルカリ性のアニオン交換膜は少なく、容易に入手できない。アニオン交換膜は一般に耐酸性に作られており、耐アルカリ性を付与した製品は少ない。
これに対して、塩を添加したアルカリ溶液であれば、アルカリ濃度を高めずに酸性液に対して高い浸透圧差を得ることができる(請求項3)。
また、本発明において、非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液およびアルカリ溶液のアニオン交換膜表面の流速(膜面流速)は0.1cm/sec以上とすることが好ましく、このような高流速通水とすることにより、イオンの移動速度、正浸透移動速度を高めて、効率的な中和、脱塩および減容化を行える(請求項4)。
また、非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液の中和、脱塩および減容化処理は、得られる中和脱塩減容化処理液のpHが4〜10となるように行うことが好ましく、このようなpHとなるまで中和、脱塩および減容化処理を行うことにより腐食要因物質を十分に除去した中和脱塩減容化処理液を得ることができる(請求項5)。
非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液を中和、脱塩および減溶化して得られる中和脱塩減溶化処理液は蒸留濃縮又は正浸透処理して更に減溶化してもよい(請求項6)。
また、非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液とアルカリ溶液の一方又は双方は循環通水方式で処理することもでき、酸性液を循環通水することにより、一層高度な中和、脱塩および減溶化を行うことができ、また、アルカリ溶液を循環通水することにより、アルカリ溶液の有効利用、処理コストの低減を図ることができる(請求項7,9)。
本発明は、特に原子力発電や火力発電の復水脱塩工程から排出されるモノエタノールアミン含有希塩酸性液等のコンデミ再生廃液の処理に好適であり、本発明に従って得られた中和脱塩減容化処理液は、これを必要に応じて更に蒸留濃縮又は正浸透処理により減容化した後、或いはこのまま、熱分解又は液中燃焼処理に供することができる。
本発明の酸性液の処理方法および装置の実施の形態を示す系統図である。 実施例1で採用した中和透析装置の構成を示す系統図である。 比較例1におけるアニオン交換処理の工程図である。
以下に本発明の酸性液の処理方法および処理装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
なお、本明細書では、本発明で処理する非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液が、酸として塩酸(HCl)を含み、このような酸性液をアルカリ溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和、脱塩および減容化処理する場合を例示して、本発明を説明するが、本発明で処理対象とする酸性液に含まれる酸は、塩酸に限らず、硫酸等の他の酸であってもよい。非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液に含まれる酸が硫酸等の他の酸の場合、以下の説明において、ClイオンはSO 2−イオン等の酸のHの対となるアニオンであり、また、アルカリ溶液として水酸化ナトリウム水溶液以外のアルカリ溶液を用いた場合、以下の説明において、NaイオンはKイオン等のアルカリのOHの対となるカチオンである。
図1は、本発明の実施の形態を示す系統図であり、この装置は、原水槽1、中和透析装置2、蒸留濃縮装置3、液中燃焼装置4、および触媒酸化装置5で主に構成される。
本発明の処理対象となる非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液としては、特に制限はないが、例えば、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1) 窒素化合物含有酸性液
(2) 金属イオン含有酸性液
(3) 界面活性剤、洗浄剤含有酸性液
(1)窒素化合物含有酸性液としては、例えば火力発電所や加圧水型原子力発電所などにおいて、防食剤としてモノエタノールアミン(MEA)やモルホリンなどの有機アミンを添加した復水の脱塩装置(コンデミ)に用いられるカチオン交換樹脂を再生した酸性廃液(以下「コンデミ再生酸性廃液」と称す場合がある。)を挙げることができる。
カチオン交換樹脂の再生には、塩酸や硫酸等の酸が用いられるため、このコンデミ再生酸性廃液には脱着した有機アミン(正確には有機アミンの酸塩)と再生薬品としての塩酸や硫酸などの酸のほか、微量の銅イオン、鉄イオン、また有機アミンの分解物であるアンモニアなどが含まれている。
このようなコンデミ再生酸性廃液の有機アミンやその他の水質成分の濃度やpHは、その廃液の種類によって異なるが、例えば以下のような水質である。
Figure 2011131209
(2)金属イオン含有酸性液としては、製鉄工場や金属材加工工場などにおける揮発性酸による酸洗工程から排出される金属溶解酸排液などが挙げられる。
(3)界面活性剤、洗浄剤含有酸性液としては、例えば、半導体製造プラントから排出されるリンス排水などが挙げられる。
即ち、半導体製造プラントからは、pH2.5〜3.5、H22濃度10〜30ppmで、TOC成分として界面活性剤、アセトン、イソプロパノール、酢酸等のカルボン酸などを1〜3ppm含有するリンス排水が排出される。従来、このような半導体リンス排水は、第1の活性炭吸着塔、弱塩基性アニオン交換樹脂塔、強酸性カチオン交換樹脂塔、強塩基性アニオン交換樹脂塔、逆浸透膜処理装置、高圧紫外線照射装置、第2の活性炭吸着塔、真空脱気塔、混床式イオン交換樹脂塔に順次通水して処理されているが、このような従来の半導体リンス排水の処理方法においては、pH2.5〜3.5の酸性のリンス排水を処理するため、第1の活性炭吸着塔の性能が経時により低下して、第1の活性炭吸着塔のH22分解性能が低下し、活性炭吸着塔から流出したH22が、弱塩基性アニオン樹脂塔の樹脂をH22による酸化で劣化させ、弱塩基性アニオン交換樹脂塔の性能を低下させる;第1の活性炭吸着塔のH22分解性能が低下すると、リンス排水中の界面活性剤の吸着性能も低下し、後段の強塩基性アニオン交換樹脂塔の性能低下を引き起こす;といった問題があったが、本発明によれば、このような酸性液を効率的に処理することができる。
本発明においては、アニオン交換膜によって一方の室と他方の室とに隔てられた一方の室に非イオン/カチオン性水溶性化合物含有酸性液(原水)を通水すると共に、他方の室にアルカリ溶液を通水して原水を中和、脱塩および減容化する。
この原水の中和、脱塩および減容化処理に用いる装置としては、アニオン交換膜を用いた中和透析装置(拡散透析装置)2が好適に使用される。
図1は、原水の中和、脱塩および減容化処理に、中和透析装置(拡散透析装置)2を用いた例を示し、原水槽1内の原水は、ポンプPにより、プレフィルター11で微粒子成分が除去された後、内部がアニオン交換膜21で原水室22とアルカリ溶液室23とに仕切られた中和透析装置2の原水室22に導入される。ここでプレフィルター11は必要に応じて設けられるものである。一方、アルカリ溶液室23には、アルカリ溶液貯槽24から、ポンプPによりアルカリ溶液が導入される。
このアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム等の溶解性アルカリ化合物の水溶液を用いることができる。
一般に、コンデミに用いられる樹脂比率はアニオン交換樹脂よりもカチオン交換樹脂の方が高く、コンデミ再生廃液としてはカチオン交換樹脂の再生酸性廃液よりも、NaOHを含むアニオン交換樹脂の再生廃液(以下「コンデミ再生アルカリ廃液」と称す場合がある。)の方が過剰となっている。
また、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混床樹脂を分離するために、16重量%のNaOH水溶液を用いてアニオン交換樹脂、16重量%NaOH水溶液、カチオン交換樹脂の比重差を利用して分離する技術を用いている現場では、別途、この分離に用いたアルカリ廃液が排出される。
このようにコンデミの再生現場では、アルカリ廃液が過剰に排出されるため、本発明においては、このようなコンデミ再生アルカリ廃液等のアルカリ廃液をアルカリ溶液として用いることもできる。
アルカリ溶液としては、更に他の施設から排出されるアルカリ廃液を用いてもよい。
中和透析装置2では、原水室22に導入された原水中のClイオンがアニオン交換膜21を透過してアルカリ溶液室23に移動することにより脱塩され、一方、アルカリ溶液室23内のOHイオンがアニオン交換膜21を透過して原水室22に移動することにより原水が中和される。アルカリ溶液の浸透圧が高い場合には、同時に、原水室22側から、浸透圧の高いアルカリ溶液室23側へ水が移行することで、原水の脱水、減容化が行われる。原水室22の流出液は原水槽1に返送され、原水は循環処理される。一方、アルカリ溶液室23からの流出液もアルカリ溶液貯槽24に返送されて循環される。
このような中和透析装置2による中和、脱塩および減容化処理においては、次のような態様を採用することが好ましい。
(1) アニオン交換膜21としては、耐酸性、耐アルカリ性に優れた膜を用いる。また、中和透析装置2の接液面も、耐腐食性に優れた材料で構成されていることが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂でライニングしたものが好ましい。
(2) アニオン交換膜膜面には濃度分極層が形成され、これが物質の拡散律速となり、Clイオン、OHイオンおよび水の透過移動速度が制限されるため、これを防止して透過移動速度を高めるために、アニオン交換膜面近傍の濃度分極を低減するべく、膜面流速を高めることが好ましく、具体的には、原水室22側およびアルカリ溶液室23側の膜面流速をそれぞれ0.1cm/sec以上、例えば1〜8cm/secとすることが好ましい。膜面流速が低いとClイオン、OHイオンおよび水の移動速度を速くすることができず、所望の中和脱塩減容化処理液を得るために長時間を要するようになる。ただし、膜面流速を過度に高くすることは、装置構成上現実的ではない。このような膜面流速を得るために、原水ポンプPおよびアルカリ溶液ポンプPとしては、高流速送液が可能なダイヤフラムポンプ等を用いることが好ましい。
(3) アルカリ溶液としては、原水よりも浸透圧の高いものを用いる。
また、アルカリ溶液としては、中和に必要な酸消費の総量(mg−CaCO)が、前記酸性液のアルカリ消費の総量(mg−CaCO)の1倍以上であればよい。
なお、アニオン交換膜でのClとOHの移動速度は、極限モル伝導率で示されるイオンの移動のしやすさで決定され、ClとOHの極限モル伝導率はそれぞれ198.3Scm・mol−1、76.35Scm・mol−1である。したがって、OHはClの2.6倍移動しやすいことが分かる。このことより、酸性液からのClのアルカリ溶液側への移動速度を高く維持するには、アルカリ溶液のOH濃度は少なくとも酸性液のCl濃度の1/2.6倍以上とすることが望ましい。
基本的にアルカリ(NaOH)の濃度を高くすることでアルカリ溶液の浸透圧を原水の浸透圧よりも高くするためには、アルカリ溶液の炭酸カルシウム換算の酸消費量(mg−CaCO/L)(アルカリ度)が、原水の炭酸カルシウム換算のアルカリ消費量(mg−CaCO/L)(酸度)に対して1倍以上、特に2〜6倍程度、とりわけ3〜4倍の濃厚アルカリ溶液であることが好ましい。このアルカリ溶液のアルカリ濃度が低いと、効率的な減容化処理を行えない。原水の酸濃度に対するアルカリ溶液のアルカリ濃度が高い程、水の移動が円滑に進行し、原水の濃縮効率が向上するが、アルカリ溶液は、その取り扱い性等の面で、上記濃度以下とすることが好ましい。
従って、前述のコンデミ再生アルカリ廃液等のアルカリ廃液をアルカリ溶液として用いる場合において、アルカリ濃度が不足する場合には、必要に応じてNaOH等のアルカリを添加してその濃度を調整することが好ましい。
(4) アルカリ溶液のアルカリ濃度を高濃度とすることにより、原水との浸透圧差を十分に大きくして、効率的な減溶化を行えるが、過度に高濃度のアルカリ溶液は、その取り扱い性、用いるアニオン交換膜の入手の面で問題がある。
従って、本発明においては、アルカリ溶液に、塩を溶解させて、アルカリ濃度を過度に高めることなく、原水との浸透圧差を高めることも好ましく採用される。
この場合、アルカリ溶液に添加する塩類としては、安価に入手できる塩類であればよく、特にNaCl、NaSO、KCl、KSO、MgCl、MgSOなどの塩類やその混合物が挙げられる。これらの塩類は、排水基準の対象物質とならず、また食品向けなどに適さず産廃処分とされている塩でもあり、安価に入手できるため好適である。
アルカリ溶液への塩類の添加量には特に制限はなく、アルカリ溶液の塩類濃度が、原水である酸性液の全溶解性物質濃度よりも高く、塩類を溶解できる上限濃度まで用いることができる。塩類を含むアルカリ溶液の塩類濃度には特に制限はなく、用いる塩類の種類によっても異なるが、通常10〜30重量%程度である。
塩類を含むアルカリ溶液は、アルカリ溶液に予め塩類を溶解させて調製してもよく、また、処理の途中でアルカリ溶液に連続的に又は間欠的に塩類を添加して調製してもよい。
(5) 中和、脱塩および減容化処理は、得られる中和脱塩減容化処理液(原水室22からの流出液)のpHが中性、例えば4〜10程度になるまで行うことが好ましい。
この中和脱塩減容化処理液のpHが3未満では、中和、脱塩および減容化処理が不十分であり、本発明の効果を十分に得ることができない。中和脱塩減容化処理液のpHを過度に上げると、アルカリ溶液室23側からアニオン交換膜21を透過して原水室22側に移行するNaイオン量および原水室22側からアニオン交換膜21を透過してアルカリ溶液室23に移行する非イオン/カチオン性水溶性化合物量が増え(以下に記載するように、アニオン交換膜であっても若干量のカチオン成分や非イオン成分の透過がある。)、好ましくない。
このpH管理の目的で、中和透析装置2の原水室22の流出配管に通液型pH計を設置して、原水室22の流出液のpHを監視し、このpH値が所定値に達したら、原水室22の流出液の送液を、原水槽1から蒸留濃縮装置3に切り換えるようにしても良い。
アニオン交換膜21であってもカチオン成分や非イオン成分を透過することは一般的に知られており、上述のような中和、脱塩および減容化処理で、アルカリ溶液23側から原水室22へのカチオン成分(例えばNaOHのNaイオン)や非イオン成分の移動が、また、原水室22側からアルカリ溶液室23への非イオン/カチオン性水溶性化合物由来のカチオン成分や非イオン成分の移動がある。
従って、原水の中和、脱塩および減容化処理に使用されたアルカリ溶液(以下、「アルカリ廃液」と称す場合がある)は、原水から透析したClイオンを含み、原水の中和(原水室へのOHイオンの透析)と原水からの水の移動でpHが低下すると共に液量が増加した弱アルカリ性の液であると共に、原水室22からアニオン交換膜21を透過した若干量の非イオン/カチオン性水溶性化合物を含むものである。ただし、この非イオン/カチオン性水溶性化合物濃度は低いことから、このアルカリ廃液は、図1に示す如く触媒酸化装置5等で窒素化合物等の非イオン/カチオン性水溶性化合物を分解した後、酸で中和して放流することができる。
なお、中和透析装置2における原水室22の原水流通方向とアルカリ溶液室23のアルカリ溶液の流通方向は、並流であっても向流であってもよいが、酸性液のアルカリ消費量とアルカリ性液の酸消費量に差をつけて、出口水質を中性に近づけるには、図1に示すように向流通水であることが好ましい。
また、原水およびアルカリ溶液は一過式で通水することも可能であるが、一般的には、一過式の通水では十分な中和、浸透透析を行えないことから、図1に示すような循環通水とすることが好ましい。
バッチ式ではなく、連続処理を行う場合には、原水槽1に原水を導入すると共に、中和透析装置2の原水室22から返送された中和脱塩減容化処理液を原水槽1に受け、この原水槽1から槽内液の一部を取り出して次の蒸留濃縮処理等に供することが好ましい。
図1において、中和透析装置2には、1枚のアニオン交換膜21により原水室22とアルカリ溶液室23とがそれぞれ1室ずつ形成されているが、中和透析装置2の構成はこれに何ら限定されず、後掲の図2に示されるように、アルカリ溶液室/アニオン交換膜/原水室/アニオン交換膜/アルカリ溶液室/アニオン交換膜/原水室というように、複数枚のアニオン交換膜により、複数の原水室とアルカリ溶液室とが交互に形成されたものであってもよい。
本発明によれば、このような中和透析装置を用いた中和、脱塩および減容化処理により、前述の如く、pH4〜10の中性に中和すると共に、好ましくはClイオン濃度が原水のClイオン濃度の20〜50%にまで低減し、また、液量が原水に対して40〜80%に減容化された中和脱塩減容化処理液を得ることができる。
原水の中和脱塩減容化処理液(中和透析装置2の原水室22から流出する処理液)は、次いで、液中の窒素化合物等の非イオン/カチオン性水溶性化合物の分解処理に供するが、それに先立ち、必要に応じて、この中和脱塩減容化処理液を更に濃縮して、非イオン/カチオン性水溶性化合物の濃度を高めても良い。この場合の濃縮手段としては特に制限はないが、図1に示すように蒸留濃縮装置3、特に減圧蒸留濃縮装置を用いるのが濃縮効率の面で有利である。
また、原水の中和脱塩減容化処理液は、正浸透処理により濃縮することもできる。
この中和脱塩減容化処理液の濃縮の程度は、特に制限はないが、得られる濃縮液中の窒素化合物濃度が25重量%以上、例えば40〜95重量%程度となるように濃縮することが好ましい。なお、非イオン/カチオン性水溶性化合物がモノエタノールアミンである場合、濃度が70重量%を超えると引火点を有する化合物となるため、その取り扱いの点から上限を70重量%とすることが好ましい。
なお、中和脱塩減容化処理液の蒸留濃縮で得られる凝縮水は、アルカリ溶液調製のための純水として用いることができる。
図1においては、蒸留濃縮装置3で濃縮された濃縮液は、次いで液中燃焼装置4に送給して常法に従って窒素化合物等の非イオン/カチオン性水溶性化合物を分解処理する。
この非イオン/カチオン性水溶性化合物の分解処理は、高温の酸化性もしくは還元性雰囲気下で分解し、燃焼ガスを廃液中に直接噴射して熱交換を行う液中燃焼処理の他、流動床内に濃縮液を供給して、流動床の表面で濃縮液を蒸発、分解させる流動床燃焼処理、助燃剤を用いた、もしくは用いない直接燃焼処理等で行うこともできる。
原水の中和脱塩減容化処理液を正浸透処理により濃縮する場合は、例えば、図1に示す中和透析装置2において、アルカリ溶液室23に通水する液をアルカリ溶液から高塩類濃度溶液に切り換えて、そのまま循環通水を行うことにより原水の中和脱塩減容化処理液を更に濃縮することができる。この場合、高塩類濃度溶液に用いる塩類としては、前述のアルカリ溶液に添加する塩類として例示したものを用いることができるが、その他、炭酸アンモニウムのような脱気により液から分離できる塩類も好適に用いることができる。すなわち、炭酸アンモニウムを高濃度に溶解した高塩類濃度溶液を通水すると、浸透圧により酸性液(原水の中和脱塩減容化処理液)側から水が高塩類濃度液側に移動する。その後、原水の中和脱塩減容化処理液の正浸透処理に伴い、水の移動で希釈された液中の炭酸アンモニウムは脱気膜でガスとして容易に分離が可能であり、再度、高塩類濃度溶液の調製に利用することが可能である。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下において、中和透析装置による中和、脱塩および減容化処理は、原水およびアルカリ溶液の全量を循環通水することによって行われているが、本発明における中和、脱塩および減容化処理は何ら全量循環通水処理に限定されるものではなく、原水、アルカリ溶液の一部のみを循環通水するものであってもよく、また、全量を一過式で通水するものであってもよい。
〔塩類を含まないアルカリ溶液を用いた実施例および比較例〕
原水としては、下記表2に示す水質のコンデミ再生酸性模擬廃液を用いた。
Figure 2011131209
<実施例1>
コンデミ再生酸性模擬廃液を、図2に示す中和透析装置30で、中和、脱塩および減容化処理した。
この中和透析装置30は、隔膜として膜面積2dmのアニオン交換膜31を5枚用いて原水室32とアルカリ溶液室33とを交互にそれぞれ3室ずつ形成したものである。アニオン交換膜31同士の距離は0.75mmとして、膜間スペーサーとしてポリプロピレン製メッシュスペーサーを各室に装填した。アニオン交換膜21としては、耐酸、耐アルカリ性に優れた(株)アストム製アニオン交換膜「ネオセプタAHA」を用いた。この中和透析装置30の接液面はポリテトラフルオロエチレンでコーティングされている。
原水槽35内の原水をポンプPで各原水室32にそれぞれ導入した後、原水槽35に循環通水する一方で、アルカリ溶液貯槽34内のアルカリ溶液をポンプPで各アルカリ溶液室33にそれぞれ循環通水して、以下の条件で中和、脱塩および減容化処理を行った。
コンデミ再生酸性模擬廃液10Lを原水槽35に入れて各原水室32に1L/minの流量で循環通水し、一方、アルカリ溶液としては、表3に示す水質の濃厚アルカリ溶液(2NのNaOH水溶液)を、原水と等量の10L準備し、中和透析装置2の各アルカリ溶液室33に1L/minの流量で導入し、アルカリ溶液貯槽34を経て循環通水した。
原水循環ポンプPおよびアルカリ溶液循環ポンプPとしては、ダイヤフラムポンプを用いて、原水室32およびアルカリ溶液室33の膜面流速をいずれも1cm/secとした。
この処理中に、原水槽35内の液pHを測定し、16時間後、pHが10.1になったときに、循環通水を停止した。
この処理における中和脱塩減容化処理液(中和、脱塩および減容化処理後の原水槽35内の処理液)の水質および液量と、中和、脱塩および減容化処理後のアルカリ溶液(アルカリ廃液)の水質および液量を調べ、原水であるコンデミ再生酸性模擬廃液の水質および液量と共に、結果を表3に示した。
Figure 2011131209
<実施例2>
実施例1において、アルカリ溶液として、表4に示す水質の濃厚アルカリ溶液(4NのNaOH水溶液)を用い、原水槽35内の液pHが7.8になるまで、6時間、中和、脱塩および減容化処理を行ったこと以外は同様にして処理を行い、同様に中和脱塩減容化処理液の水質および液量と、中和、脱塩および減容化処理後のアルカリ溶液(アルカリ廃液)の水質および液量を調べ、原水であるコンデミ再生酸性模擬廃液の水質および液量と共に、結果を表4に示した。
Figure 2011131209
表3,4より次のことが分かる。
1NのNaOH水溶液を使用した実施例1では、原水のCl濃度54000mg/Lから中和脱塩減容化処理液のCl濃度19100mg/Lに脱塩しながら、液量は80%に減容化された。
また、2NのNaOH水溶液を使用した実施例2では、原水のCl濃度54000mg/Lから中和脱塩減容化処理液のCl濃度21300mg/Lに脱塩しながら、液量は67%に減容化された。
実施例2では、アルカリ廃液のMEA濃度は3480mg/Lと実施例1に比べて高くなったが、このアルカリ廃液についてもコバルト触媒酸化処理を行うことで硝酸イオンにまで分解することができ、中和放流することができた。
<比較例1>
コンデミ再生酸性模擬廃液をアニオン交換処理してClの脱塩処理を行う実験を行った。
処理フローを図3に示す。
アニオン交換樹脂5Lを充填したカラムに、コンデミ再生酸性模擬廃液を5L通水し、流出液をアニオン交換処理水として回収した(工程a)。その後、エアー押し出した後(工程b)、2NのNaOH水溶液を1L通水してアニオン交換樹脂を再生した後(工程c)、エアー押し出しし(工程d)、更に純水通水(洗浄)(工程e)を行った。工程b〜eの流出液は押出水として回収した。
上記の工程a〜eを一度終えた後、再度、工程a〜eを行い、アニオン交換処理水、押出水を採取し、アニオン交換処理水は蒸留濃縮に供し、押出水は触媒酸化処理に供した。
この処理におけるコンデミ再生酸性模擬廃液の水質と、アニオン交換処理水の水質と、工程bの流出液の水質を表5に示した。
Figure 2011131209
表5より、次のことが分かる。
アニオン交換処理では、中和透析に特有なNaのリークがなく、Cl濃度も54000mg/Lから16400mg/Lに低減することはできたが、アニオン交換樹脂中の表面細孔にMEA、NH が水溶液ごと吸着してしまうため、樹脂中に残された液をエアー押し出しした際に、これらの窒素化合物が検出された。つまり、工程bからの最初の押出水のMEA濃度だけでも7600mg/Lとなってしまい、さらには、MEAはアニオン交換樹脂に残留するため、2NのNaOH再生液にも1500mg/L、純水洗浄時にも500mg/LのMEAが検出されており、後段の触媒酸化処理が高負荷となり経済的に合わないことが分かる。
<実施例3,4>
実施例1において、原水室32およびアルカリ溶液室33の膜面流速をいずれも表6に示す流速とし、原水槽35内の液pHが7になるまで中和、脱塩および減容化処理を行ったこと以外は同様にして処理を行い、原水槽35内の液pHが7になるまでに要する時間を対比して、結果を表6に示した。
Figure 2011131209
表6より、膜面流速を上げることにより、中和、脱塩および減容化に要する処理時間を短縮することができ、従って、処理時間が同等の場合には、膜面流速を上げることにより、所要膜面積を低減して装置コストを削減することができることが分かる。
〔塩類を含むアルカリ溶液を用いた実施例および参考例〕
原水としては、Cl濃度:60g/L、アミン濃度:10g/L、NH−N濃度:5.6g/Lの酸性液を用いた。
<実施例5>
原水として、上記酸性液5Lと表7に示す濃度でNaOHとNaClを含む塩含有アルカリ溶液2Lとを用い、それぞれ循環通水したこと以外は実施例1と同様の条件で処理を行った。
ただし、酸性液とアルカリ溶液とは、並流通水とした。
pH7になるまで中和処理した後の原水の中和脱塩減容化処理液側液量とアルカリ溶液側液量を調べ、その濃縮倍率(処理前の原水量/処理後の中和脱塩減容化処理液側液量)を求め結果を表7に示した。
<参考例1>
実施例5において、塩を含まない表7に示すNaOH濃度のアルカリ溶液を用いたこと以外は同様にして処理を行い、結果を表7に示した。
<参考例2>
実施例5において、塩を含まない表7に示すNaOH濃度のアルカリ溶液を1L用いたこと以外は同様にして処理を行い、結果を表7に示した。
Figure 2011131209
表7より、アルカリ溶液に塩を添加することにより、酸性液を高濃縮することができることが分かる。塩を添加していないアルカリ溶液を用いた参考例1では、濃縮倍率が低い。アルカリ溶液のアルカリ濃度を参考例1よりも高くした参考例2では、濃縮倍率を上げることができるが、アルカリ溶液に塩を添加した実施例1よりも低く、この参考例2では、高濃度アルカリ溶液の取り扱い性、アニオン交換膜の劣化が問題となる。
1 原水槽
2 中和透析装置
3 蒸留濃縮装置
4 液中燃焼装置
5 触媒酸化装置
21 アニオン交換膜
22 原水室
23 アルカリ溶液室
24 アルカリ溶液貯槽
30 中和透析装置
31 アニオン交換膜
32 原水室
33 アルカリ溶液室
34 アルカリ溶液貯槽
35 原水槽

Claims (9)

  1. 非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液の処理方法であって、アニオン交換膜によって一方の室と他方の室とに隔てられた該一方の室に該酸性液を通水するとともに、該他方の室に該酸性液よりも浸透圧の高いアルカリ溶液を通水して該酸性液を中和、脱塩および減容化することを特徴とする酸性液の処理方法。
  2. 請求項1において、前記アルカリ溶液の酸消費総量(mg−CaCO)が、前記酸性液のアルカリ消費総量(mg−CaCO)の1倍以上であることを特徴とする酸性液の処理方法。
  3. 請求項1又は2において、前記アルカリ溶液が塩を含むことを特徴とする酸性液の処理方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記酸性液およびアルカリ溶液のアニオン交換膜表面の流速が0.1cm/sec以上であることを特徴とする酸性液の処理方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記酸性液を中和、脱塩および減容化して、pH4〜10の中和脱塩減容化処理液を得ることを特徴とする酸性液の処理方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記酸性液を中和、脱塩および減容化して得られる中和脱塩減容化処理液を蒸留濃縮又は正浸透処理して更に減容化することを特徴とする酸性液の処理方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記酸性液とアルカリ溶液の少なくとも一方が循環通水されることを特徴とする酸性液の処理方法。
  8. 非イオン性又はカチオン性の水溶性化合物を含有する酸性液を中和、脱塩および減容化処理する装置であって、アニオン交換膜によって一方の室と他方の室とに隔てられた前記一方の室に該酸性液を通水する酸性液通水手段と、前記他方の室に該酸性液よりも浸透圧の高いアルカリ溶液を通水するアルカリ溶液通水手段とを有することを特徴とする酸性液の処理装置。
  9. 請求項8において、前記酸性液通水手段とアルカリ溶液通水手段の少なくとも一方が、循環通水手段であることを特徴とする酸性液の処理装置。
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