JP6853262B2 - ネガ型平版印刷版原版及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、赤外線に対して感受性があり、赤外線によって画像形成可能であるネガ型平版印刷版原版に関する。この原版は、開始剤組成物中に2つ以上の異なるヨードニウム塩の独特の組み合わせを含む画像形成性層を含む。画像様露光後、原版は、適した現像剤を使用してオフプレスで、あるいは平版印刷インキ、湿し水、又はその両方を使用してオンプレスで加工(現像)され得る。
平版印刷では、画像部として既知のインキ受容領域が親水性表面に形成される。表面を水で湿らせて平版印刷インキを塗布すると、親水性領域は水を保持して平版印刷インキをはじき、平版印刷インキ受容領域は平版印刷インキを受容して水をはじく。平版印刷インキは、画像が複製される材料の表面に転移される。
平版印刷版を調製するのに有用な画像形成可能要素(平版印刷版原版)は、典型的には、基板の親水性表面に配置された1つ又は複数の放射感受性画像形成性層を含む。そのような放射感受性画像形成性層は、適したバインダー中に分散し得る、又はそれ自体バインダーとして働く1つ又は複数の放射感受性成分を含む。画像形成可能要素を適した放射に画像様露光させて露光領域及び非露光領域を形成した後、(1つ又は複数の)画像形成性層の露光領域又は非露光領域のいずれかが適した現像剤によって除去され、下にある基板の親水性表面を露出させる。露光領域が除去される場合、画像形成可能要素はポジ型とみなされる。逆に、非露光領域が除去される場合、画像形成可能要素はネガ型とみなされる。それぞれの場合において、残る(現像剤によって除去されない)画像形成性層の領域はインキ受容性であり、現像プロセスによって露出した親水性表面の領域は、水及び水性溶液、典型的には湿し水を受容し、インキをはじく。
直接デジタル又は熱画像化は、周囲光に対するそれらの安定性のために、印刷業界においてますます重要になっている。赤外線感受性平版印刷版の調製のための平版印刷版原版は、より一般には、コンピュータ内の画像のデジタルコピーからの信号に応じてプレートセッターを画像化する赤外レーザダイオードのサーマルヘッドを使用して露光され得る。この「コンピュータ・ツー・プレート」技術は一般に、原版の画像化にマスキングフィルムが使用された従来の技術に取って代わった。
ネガ型平版印刷版原版において使用される赤外線感受性光重合性組成物は、典型的には、重合性化合物、1つ又は複数の赤外線吸収剤、1つ又は複数のフリーラジカル開始剤及びバインダーポリマーを含む。そのような原版に望まれる様々な有用なフリーラジカル開始剤のうち、ジアリールヨードニウム塩がなかでも最も効果的である。近年、平版印刷業界において、現像前加熱工程(予熱)の省略を含む印刷版製造プロセスの簡略化が望まれてきた。また、露光した平版印刷版原版上の不要な画像形成性層材料を除去するために平版印刷インキ又は湿し水、あるいはその両方を使用するオンプレス現像(「DOP」)の提供も望まれてきた。
印刷機を汚染する潜在的リスクのために、DOP用途向けに設計された平版印刷版原版は通常、他の原版では一般的である酸素バリア層を持たず、又はそのような酸素バリア層が存在する場合、その被覆量は低い。そのような原版設計には、従来のジアリールヨードニウム塩よりもさらにいっそう効率的な(例えば、Knightらの米国特許出願公開第2006/0269873号明細書に示されている)テトラフェニルボレートアニオンを有するジアリールヨードニウム塩などの特殊なフリーラジカル開始剤、及び光重合性組成物中の高い開始剤濃度が要求される。
高濃度で使用されるそのような高効率のフリーラジカル開始剤の1つの問題は、フリーラジカル開始剤がもはや画像形成性層内の光重合性組成物の他の成分と分子接触せず、赤外線露光中、架橋密度がより低くなるような、フリーラジカル開始剤からの結晶の生成である。アリール基に結合した柔軟な長鎖を有するジアリールヨードニウム塩を使用して、結晶生成を最小限に抑える試みが行われたが、そのような試みは、赤外線への露光中のフリーラジカルの生成効率が不十分になることが明らかになった。
米国特許第6908727号明細書(Shimadaら)には、平版印刷版原版のための光重合性組成物中の2つ以上のヨードニウム塩の任意選択の使用が記載されている。以下で説明する比較例に示すように、そのようなヨードニウム混合物は、依然として光重合性組成物中での結晶化が著しい傾向を示す。米国特許第6623910号明細書(Shimadaら)にはまた、多価アニオンを有する同様のヨードニウム塩が記載されている。
米国特許出願公開第2006/0269873号明細書 米国特許第6908727号明細書 米国特許第6623910号明細書
結晶生成が回避され又は大幅に減少するネガ型平版印刷版原版、特にオンプレスで現像可能なものを提供することがまだ必要とされている。
上述の問題は、
親水性表面を有する基板、並びに、
基板の親水性表面に配置されており、
1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物と、
1つ又は複数の赤外線吸収剤と、
以下の構造(I)により表される化合物Aと、以下の構造(II)又は構造(III)により表される1つ又は複数の化合物を化合物Bとしてまとめて含む、赤外線感受性画像形成性層の赤外線への露光によってフリーラジカルを与える開始剤組成物、及び、
主ポリマーバインダー
を含む赤外線感受性画像形成性層
を含むネガ型赤外線感受性平版印刷版原版
Figure 0006853262
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、2個〜9個の炭素原子をそれぞれ有する置換又は非置換のアルキル基あるいは置換又は非置換のアルコキシ基であり、
R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、
R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
R1及びR2中の炭素原子の総数とR5及びR6中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである)
に関する本発明によって対処される。
加えて、本発明は、平版印刷版を提供するための方法を提供し、本方法は、
赤外線感受性画像形成性層内に露光領域及び非露光領域を含む露光済み原版を与えるために、請求項1に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版を赤外線に画像様露光させる工程、
露光済み原版を平版印刷機上に取り付ける工程、並びに
平版印刷版を与えるために、平版インキ、湿し水、又は平版インキ及び湿し水の両方を使用して非露光領域内の赤外線感受性画像形成性層を除去する工程
を順番に含む。
本発明の原版及び方法の両方のいくつかの実施形態において、ネガ型赤外線感受性平版印刷版原版は次の通り定義される(さらなる詳細は以下に記載される):
化合物Bは、構造(III)により表される化合物を含み、R1はR5と同じであり、R2はR6と同じであるか;又は化合物Bは、構造(II)により表される化合物を含み、R1はR2と同じであり、R3はR4と同じであり、且つR1とR3との間の炭素原子数の差は0、1又は2であり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、3個〜6個の炭素原子をそれぞれ有する置換又は非置換のアルキル基であり;
化合物A対化合物Bのモル比は20:80から80:20以下であり;
化合物A及び化合物Bの両方の重量の合計は、赤外線感受性画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%又はさらに少なくとも7重量%から15重量%以下であり;
X1はテトラアリールボレートアニオンであり、且つ任意選択でX2及びX3のそれぞれはテトラアリールボレートアニオンであり;
少なくとも1つの赤外線吸収剤は、任意選択でテトラアリールボレートアニオンを含むシアニン色素であり;且つ
主ポリマーバインダーは、スチレンから誘導される反復単位及びアクリロニトリルから誘導される反復単位を含む。
本発明は、類似しているが同一ではないヨードニウム塩の独特の組み合わせの使用に伴ういくつかの利点を提供する。これらの利点は、いずれも本明細書に記載のヨードニウム塩である少なくとも1つの化合物A及び少なくとも1つの化合物Bの開始剤組成物への取り込みによって、上述の結晶生成を最小限に抑える。
以下の議論は本発明の様々な実施形態を対象とし、いくつかの実施形態が特定の使用にとって望ましい可能性があるが、開示されている実施形態は、以下で請求される本発明の範囲を限定するものと解釈されたり、みなされたりすべきではない。加えて、以下の開示は、明示的に記載されているよりも、且つ任意の実施形態の議論よりも広範囲の用途を有することを当業者なら理解するであろう。
定義
赤外線感受性画像形成性層及び配合物の様々な構成要素を定義するために本明細書において用いられるとき、特に記載のない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、1つ又は複数の構成要素を含む(すなわち、複数の指示対象を含む)ことを意図している。
本出願に明示的に定義されていない各用語は、当業者に一般に受け入れられている意味を有すると理解されるべきである。用語の構成が、その文脈においてその用語を無意味又は実質的に無意味にする場合、用語の定義は、その従来の意味が与えられるべきである。
本明細書に記載の様々な範囲内の数値の使用は、特に明記されていない限り、記載の範囲内の最小値及び最大値の両方の前に「約」という語が付いているかのように近似値とみなされる。このように、記載の範囲の上下のわずかな変動値を使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。加えて、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のすべての値を含む連続した範囲を意図している。
文脈により特に示されていない限り、本明細書において用いられるとき、「ネガ型赤外線感受性平版印刷版原版」、「原版」及び「平版印刷版原版」という用語は、本発明の実施形態を等しく指すことを意図する。
用語「支持体」は、本明細書において、赤外線感受性画像形成性層を含む様々な層及び任意選択の親水性オーバーコートがコーティングされる親水性表面を有する親水性物品を指す「基板」を調製するために、その後に処理又はコーティングされ得るアルミニウム含有材料(ウェブ、シート、箔又は他の形態)を指すために用いられる。
本明細書において用いられるとき、用語「赤外線吸収剤」は、赤外線の波長に対して感受性がある化合物又は材料を指す。
本明細書において用いられるとき、用語「赤外」は、最低750nm以上のλmaxを有する放射を指す。ほとんどの場合、用語「赤外」は、本明細書において最低750nmから1400nm以下と定義される電磁スペクトルの「近赤外」領域を指すために用いられる。
ポリマーに関するあらゆる用語の定義を明確にするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)により公表されている「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl.Chem.68、2287−2311(1996)を参照すべきである。しかし、本明細書に明示的に記載されている定義はすべて制限するものとみなされるべきである。
本明細書において用いられるとき、用語「ポリマー」は、多くの反応した小さいモノマーを一緒に結合することによって生成される、比較的大きな分子量を有する化合物を記述するために用いられる。ポリマー鎖が成長するとき、ポリマー鎖はそれ自体の上にランダムに折りたたまれ、コイル状構造を形成する。溶媒の選択によっては、鎖長が長くなり、溶媒中に分散したポリマー粒子になるにつれて、ポリマーは不溶性になり得る。これらの粒子の分散は、本発明における使用について記載の赤外線感受性画像形成性層内で非常に安定且つ有用になり得る。本発明において、特に記載のない限り、用語「ポリマー」は非架橋材料を指す。したがって、非架橋ポリマー粒子は、溶媒和特性が良好な特定の有機溶媒に溶解し得る一方、架橋ポリマー粒子は、膨潤し得るが、ポリマー鎖が強い共有結合によって結合されているため有機溶媒に溶解しないという点で、架橋ポリマー粒子は非架橋ポリマー粒子とは異なる。
用語「コポリマー」は、ポリマー骨格に沿って配列されている2つ以上の異なる繰り返し単位又は反復単位から構成されるポリマーを指す。
用語「骨格」は、複数のペンダント基が結合され得るポリマー内の原子鎖を指す。そのような骨格の一例は、1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全炭素」骨格である。
用語「ランダムに配列された」は、反復単位のブロックはポリマーバインダーに意図的に組み込まれないが、その反復単位は、ブロックコポリマーの生成を促進しない既知の重合手順を使用してランダムに骨格に組み込まれることを意味する。
本明細書に記載のポリマーバインダー内の反復単位は一般に、重合プロセスにおいて使用される対応するエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導され、このエチレン性不飽和重合性モノマーは、様々な商業的供給源から得たり、又は既知の化学合成法を使用して調製したりすることができる。
本明細書において用いられるとき、用語「エチレン性不飽和重合性モノマー」は、フリーラジカル重合又は酸触媒重合の反応及び条件を使用して重合可能な1つ又は複数のエチレン性不飽和(−C=C−)結合を含む化合物を指す。これらの条件下で重合可能でない不飽和−C=C−結合のみを有する化合物を指すことを意図しない。
特に記載のない限り、用語「重量%」は、組成物、配合物又は層の全固形分に基づく成分又は材料の量を指す。特に記載のない限り、その百分率は、乾燥した層あるいは配合物又は組成物の全固形分のいずれについても同じであり得る。
本明細書において用いられるとき、用語「層」又は「コーティング」は、配置又は塗布された1つの層あるいは順次配置又は塗布されたいくつかの層の組み合わせからなり得る。層が赤外線感受性及びネガ型とみなされるとき、層は、上述の通り赤外線に対して感受性があり、且つ平版印刷版の形成においてネガ型である。
使用
本発明は、以下で説明する通り、原版を画像様露光させ、且つ、適した現像剤を使用してオフプレスで、あるいは平版印刷インキ、湿し水、又は平版印刷インキ及び湿し水の両方を使用して適した印刷機上で加工することによる平版印刷版の調製に有用である。
本発明の平版印刷版原版は、以下で説明する構造及び成分を用いて調製される。
基板
原版内に存在する基板は一般に、親水性表面、すなわち少なくとも、基板の画像化面上の塗布された赤外線感受性画像形成性層よりも親水性である表面を有する。基板は、平版印刷版原版を調製するために従来使用される任意の材料から構成され得る支持体を含む。
1つの有用な基板は、物理的(機械的)粒状化、電気化学的粒状化又は化学的粒状化と、通常はその後の陽極酸化とによるいくつかのタイプの粗面化を含む、当技術分野において既知の技術を使用して処理され得るアルミニウム支持体から構成される。陽極酸化は、典型的には、リン酸又は硫酸及び従来の手順を使用して行われる。
アルミニウム支持体の硫酸陽極酸化は一般に、少なくとも1.5g/m2から5g/m2以下、より典型的には少なくとも3g/m2から4.3g/m2以下の酸化物重量(被覆量)を表面に与える。リン酸陽極酸化は一般に、少なくとも0.5g/m2から5g/m2以下、より典型的には少なくとも1g/m2から3g/m2以下の酸化物重量を表面に与える。
陽極酸化アルミニウム支持体は、酸化物の細孔を封じ、且つポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]、又はアクリル酸コポリマー、リン酸塩及びフッ化物塩の混合物、又はケイ酸ナトリウムの水性溶液中の処理など、既知の後陽極処理(PAT)プロセスを使用してその表面を親水化するためにさらに処理され得る。有用な処理プロセスは、すすぎありの液浸、すすぎなしの液浸、及び押出コーティングなどの様々なコーティング技術を含む。
基板はまた、その最も外側の表面にある柱状細孔の直径が柱状細孔の平均径の少なくとも90%になるように、その外面に柱状細孔を与えるアルカリ性又は酸性の細孔拡大溶液でも処理された、粒状化及び硫酸陽極酸化されたアルミニウム含有支持体を含み得る。この基板はさらに、粒状化され、硫酸陽極酸化され、且つ処理されたアルミニウム含有支持体上に直接配置された親水性層を含み得、親水性層は、カルボン酸側鎖を有する非架橋親水性ポリマーを含む。そのような基板及びそれらを提供するための方法についてさらに詳しくは、米国特許出願公開第2013/0052582号明細書(Hayashi)に記載されている。
基板の厚さは変化し得るが、印刷による摩耗に十分耐え、印刷版に巻き付くのに十分薄い厚さであるべきである。有用な実施形態は、少なくとも100μmから700μm以下の厚さを有する処理されたアルミ箔を含む。基板の裏面(非画像化面)は、原版の取り扱い及び「感触」を改善するために、帯電防止剤、滑り層又は艶消し層でコーティングされ得る。
赤外線感受性画像形成性層
本発明の原版は、その基板上のネガ型である赤外線感受性画像形成性層を形成するための、以下で説明するネガ型赤外線感受性組成物の(上述の)適した基板への適した塗布によって形成され得る。一般に、赤外線感受性組成物(及び得られる赤外線感受性画像形成性層)は、必須成分として、1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物、1つ又は複数の赤外線吸収剤、画像化赤外線への露光によってフリーラジカルを与える開始剤組成物、及び主ポリマーバインダーを含み、これらの必須成分はすべて以下でより詳しく説明する。一般に、原版内に単一の赤外線感受性画像形成性層のみが存在する。それは一般に原版内の最外層であるが、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の赤外線感受性画像形成性層上に配置された(トップコート又は酸素バリア層としても既知の)最も外側の水溶性の親水性オーバーコートが存在し得る。
原版内に設けられた赤外線感受性画像形成性層は、当技術分野において既知のいくつかの材料から選択され得る1つ又は複数の主ポリマーバインダーを含む。例えば、いくつかの有用な主ポリマーバインダーは、米国特許第6899994号明細書(Huangら)に記載のものなどのポリアルキレンオキシドセグメントを含む側鎖を有する反復単位を含む。他の有用な主ポリマーバインダーは、特開2015−202586号公報(Kamiyaら)に記載のポリアルキレンオキシドセグメントを含む異なる側鎖を有する2つ以上のタイプの反復単位を含む。そのような主ポリマーバインダーのいくつかはさらに、米国特許第7261998号明細書(Hayashiら)に記載のもののようなペンダントシアノ基を有する反復単位を含み得る。
いくつかの有用な主ポリマーバインダーは粒子状で、すなわち、分離した粒子(非凝集粒子)の形態で存在する。そのような分離した粒子は、最低10nmから1500nm以下、又は典型的には最低80nmから600nm以下の平均粒径を有し得、一般に、赤外線感受性画像形成性層内に均一に分布している。平均粒径は、電子走査顕微鏡画像内の粒子を測定すること、及び設定数の測定値を平均することを含む様々な既知の方法によって決定され得る。
いくつかの実施形態において、主ポリマーバインダーは、赤外線感受性画像形成性層の平均乾燥厚さ(t)未満の平均粒径を有する粒子の形態で存在する。マイクロメートル(μm)単位の平均乾燥厚さ(t)は、以下の式によって計算される:
t=w/r
(式中、wは、赤外線感受性画像形成性層の乾燥コーティング被覆量(g/m2)、rは1g/cm3である。)例えば、そのような実施形態では、主ポリマーバインダーは、少なくとも0.05%から80%以下の、又は少なくとも10%から50%以下である可能性が高い赤外線感受性画像形成性層の平均乾燥厚さ(t)を備え得る。
主ポリマーバインダーはまた、複数(少なくとも2つ)のウレタン部分並びにポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を含む骨格を有し得る。
有用な主ポリマーバインダーはまた、アクリレートエステル基、メタクリレートエステル基、ビニルアリール基及びアリル基などの重合性基を含むもの、並びにカルボン酸などのアルカリ可溶基を含むものを含む。これらの有用な主バインダーのいくつかは、米国特許出願公開第2015/0099229号明細書(Simpsonら)及び米国特許第6916595号明細書(Fujimakiら)に記載されている。
主ポリマーバインダーは一般に、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン標準)によって決定される少なくとも2,000から500,000以下、又は少なくとも20,000から300,000以下の重量平均分子量(Mn)を有する。
有用な主ポリマーバインダーは、様々な商業的供給源から得られ得、又は、例えば、上述の刊行物に記載の既知の手順及び出発材料を使用して調製され得る。
全主ポリマーバインダーは一般に、赤外線感受性画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも10重量%から70重量%以下の量で、又は少なくとも20重量%から50重量%以下である可能性が高い量で赤外線感受性画像形成性層内に存在する。
赤外線感受性組成物(及び赤外線感受性画像形成性層)は、1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物を含み、そのそれぞれが、フリーラジカル開始を利用して重合され得る1つ又は複数のフリーラジカル重合性基(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上のそのような基)を含む。いくつかの実施形態において、赤外線感受性画像形成性層は、各分子内に異なる数のフリーラジカル重合性基を有する2つ以上のフリーラジカル重合性成分を含む。
有用なフリーラジカル重合性成分は、1つ又は複数の別の重合性エチレン性不飽和基(例えば、2つ以上のそのような基)を有する1つ又は複数のフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマーを含み得る。同様に、そのようなフリーラジカル重合性基を有する架橋性ポリマーもまた使用され得る。ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレートなどのオリゴマー又はプレポリマー、並びに不飽和ポリエステル樹脂が使用され得る。いくつかの実施形態において、フリーラジカル重合性成分はカルボキシル基を含む。
フリーラジカル重合性成分は、複数(2つ以上)の重合性基を有する尿素ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートを含む。各化合物が2つ以上の不飽和重合性基を有し、化合物のいくつかが3つ、4つ又はそれ以上の不飽和重合性基を有するような化合物の混合物が使用され得る。例えば、フリーラジカル重合性成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.(コネティカット州ミルフォード))をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートと反応させることによって調製され得る。有用なフリーラジカル重合性化合物には、Kowa Americanから入手できるNK Ester A−DPH(ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート)、並びにSartomer Company、Incから入手できるSartomer 399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート)及びSartomer 415[エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が含まれる。
多数の他のフリーラジカル重合性成分が当技術分野において既知であり、A Reiser著、Photoreactive Polymers:The Science and Technology of Resists、Wiley、New York、1989、p.102−177、B.M.Monroe著(Radiation Curing:Science and Technology、S.P.Pappas編、Plenum、New York、1992、p.399−440)、並びにA.B.Cohen及びP.Walker著、「Polymer Imaging」(Imaging Processes and Material、J.M.Sturgeら(編)、Van Nostrand Reinhold、New York、1989、p.226−262)を含む多数の文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル重合性成分はまた、欧州特許出願公開第1182033(A1)号明細書(Fujimakiら)に段落[0170]から、米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、米国特許第6569603号明細書(Furukawa)及び米国特許第6893797号明細書(Munnellyら)に記載されている。他の有用なフリーラジカル重合性成分には、米国特許出願公開第2009/0142695号明細書(Baumannら)に記載のものが含まれ、そのラジカル重合性成分は1H−テトラゾール基を含む。
1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物は一般に、すべて述べた層内の全固形分に基づいて、少なくとも10重量%から70重量%以下、又は典型的には少なくとも20重量%から50重量%以下の量で赤外線感受性画像形成性層内に存在する。
加えて、赤外線感受性組成物(及び画像形成性層)はまた、所望の放射感受性を与える1つ又は複数の赤外線吸収剤を含む。1つ又は複数の赤外線吸収剤の総量は、赤外線感受性組成物(又は画像形成性層)の全固形分に基づいて、少なくとも0.5重量%から30重量%以下、又は典型的には少なくとも1重量%から15重量%以下である。
いくつかの有用な赤外線吸収剤は、(典型的には最低700nmから1400nm以下の)赤外線及び(典型的には最低450nmから700nm以下の)可視放射の両方に対して感受性がある。有用な赤外線吸収剤は、米国特許第7429445号明細書(Munnellyら)に記載されている。
本発明の多くの実施形態において、本発明は、最低750nmの波長を有する近赤外線又は赤外線に対してのみ感受性がある1つ又は複数の赤外線吸収剤を含む。そのような有用な赤外線吸収剤には、アゾ色素、スクアリリウム色素、クロコネート色素、トリアリールアミン色素、チオアゾリウム色素、インドリウム色素、オキソノール色素、オキサキソリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、フタロシアニン色素、インドシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、オキサトリカルボシアニン色素、チオシアニン色素、チアトリカルボシアニン色素、クリプトシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素、カルコゲノピリロ−アリーリデン及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ピリリウム色素、ピラゾリンアゾ色素、オキサジン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノンイミン色素、メチン色素、アリールメチン色素、スクアリン色素、オキサゾール色素、クロコニン色素、ポルフィリン色素、並びに先行する色素クラスの任意の置換型又はイオン型が含まれるが、これらに限定されない。適した色素はまた、米国特許第5208135号明細書(Patelら)、米国特許第6153356号明細書(Uranoら)、米国特許第6264920号明細書(Achilefuら)、米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、米国特許第6569603号明細書(Furukawa)、米国特許第6787281号明細書(Taoら)、米国特許第7018775号明細書(Tao)、米国特許第7135271号明細書(Kawaushiら)、国際公開第2004/101280号パンフレット(Munnellyら)及び(上述の)欧州特許出願公開第1182033(A2)号明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、赤外線感受性画像形成性層内の少なくとも1つの赤外線吸収剤が、テトラフェニルボレートアニオンなどのテトラアリールボレートアニオンを含むシアニン色素であることが望ましい。
低分子量IR吸収色素に加えて、ポリマーに結合したIR色素発色団も同様に使用され得る。さらに、IR色素カチオンも同様に使用され得、すなわち、このカチオンは、側鎖内にカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基又はホスホノ基を含むポリマーとイオン相互作用する色素塩のIR吸収部分である。
赤外線感受性画像形成性層はまた、上述の利点を実現するために、化合物Aと、以下で説明する化合物Bと総称される1つ又は複数の化合物とを含む開始剤組成物を含む。これらの必須化合物は、画像化赤外線への露光によって、上述の様々なフリーラジカル重合性化合物の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを個別に、及び共同で生成することができる。したがって、開始剤組成物は一般に、例えば、最低750nmから1400nm以下又は最低750nmから1250nm以下の電磁放射に対して感受性がある。開始剤組成物は、述べた赤外線露光のいずれか、又は複数の赤外線露光に使用され得る。
化合物Aは、下に示す構造(I)により表され、化合物Bと総称される1つ又は複数の化合物は、構造(II)又は(III)のいずれかにより下に表される:
Figure 0006853262
これらの構造(I)、(II)及び(III)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、置換又は非置換のアルキル基あるいは置換又は非置換のアルコキシ基であり、これらアルキル基又はアルコキシ基のそれぞれが、2個〜9個の炭素原子(又は特に3個〜6個の炭素原子)を有する。これらのアルキル及びアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖の形態を有し得る。したがって、様々な異性体も有用である。いくつかの特に有用である置換又は非置換のアルキル基には、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−ペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、2−エチルヘキシル基及びn−ノニル基が含まれるが、これらに限定されない。有用な置換又は非置換のアルコキシ基には、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基及びn−オクチルオキシ基が含まれるが、これらに限定されない。
多くの有用な実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、3個〜6個の炭素原子を有する独立して選ばれた置換又は非置換のアルキル基などの置換又は非置換のアルキル基である。
構造(I)、(II)及び(III)の他の必須の特徴は以下を含む:
R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、
R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0〜4(すなわち、0、1、2、3又は4)であり;
R1及びR2中の炭素原子の総数(合計)とR5及びR6中の炭素原子の総数(合計)との間の差は0〜4(すなわち、0、1、2、3又は4)であり;且つ
X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである。
有用なアニオンには、ClO4 、PF6 、BF4 、SbF6 、CH3SO3 、CF3SO3 、C6H5SO3 、CH3C6H4SO3 、HOC6H4SO3 、ClC6H4SO3 、及び以下の構造(IV)により表されるボレートアニオンが含まれるが、これらに限定されない:
B(R1)(R2)(R3)(R4
(V)
(式中、R1、R2、R3及びR4は独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む。)、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の複素環基を表し、あるいはR1、R2、R3及びR4のうちの2つ以上が一緒に結合されて、ホウ素原子を持つ置換もしくは非置換の複素環を形成し得、そのような環は、最大7個の炭素原子、窒素原子、酸素原子又は窒素原子を有する)。R1、R2、R3及びR4上の任意選択の置換基は、クロロ基、フルオロ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基及びアセトキシ基を含み得る。いくつかの実施形態において、R1、R2、R3及びR4はすべて、置換もしくは非置換のフェニル基など、同じか、又は異なる置換もしくは非置換のアリール基であり、あるいは、これらの基はすべて非置換のフェニル基である可能性が高い。多くの実施形態において、X1、X2及びX3のうちの少なくとも1つが、同じか又は異なるアリール基を含むテトラアリールボレートアニオンであり、あるいは特に有用である実施形態において、1つもしくは複数がテトラフェニルボレートアニオンであり、又はX1、X2及びX3のそれぞれがテトラフェニルボレートアニオンである。
有用な実施形態は、化合物Bが、構造(III)により表される化合物を含み、R1がR5と同じであり、R2がR6と同じである開始剤組成物を含む平版印刷版原版であることが明らかになっている。これらの実施形態のいくつかにおいて、R1はR2と同じであり、例えば、R1及びR2の両方がiso−プロピル基、iso−ブチル基又はt−ブチル基であり得る。
他の実施形態において、開始剤組成物中の化合物Bは、構造(II)により表される化合物を含み、R1はR2と同じであり、R3はR4と同じである。例えば、そのような実施形態では、R1及びR2の両方がiso−プロピル基、iso−ブチル基又はt−ブチル基であり得る。そのような実施形態では、R1とR3との間の炭素原子数の差は0、1又は2である。
希望するならば、構造(II)又は(III)により表される化合物Bの化合物の混合物が使用され得る。
当業者なら上述の教示を用いて化合物A及び化合物Bを含む有用な開始剤組成物を容易に設計し得、そのような化合物の代表例は下に示す作業例に示される。構造(I)、(II)及び(III)により表される多くの有用な化合物は、Sigma−Aldrichなどの商業的供給源から得たり、又は、既知の合成法及び容易に入手できる出発材料を使用して調製したりすることができる。
開始剤組成物は、赤外線感受性画像形成性層内に、すべて赤外線感受性画像形成性層内の全固形分に基づいて、少なくとも3重量%から30重量%以下、又は典型的には少なくとも5重量%から18重量%以下、又はさらに少なくとも7重量%から15重量%以下の化合物A及び化合物Bの総(累積)量を与えるのに十分存在する。
加えて、化合物A対化合物Bのモル比は一般に、10:90から90:10以下であり、又は20:80から80:20以下である可能性が高く、又はさらには30:70から70:30以下である。
本発明に必須ではないが、赤外線感受性画像形成性層はまた、1つ又は複数の第2のポリマーバインダー(架橋又は非架橋)を含み得る。そのような材料の例は当技術分野において既知であり、上で言及した米国特許及び特許出願公開に記載されている。
いくつかの実施形態において、第2のポリマーバインダーは主ポリマーバインダーよりも親水性である。そのような親水性の第2のポリマーバインダーの例には、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、及び様々なけん化度のポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、そのような第2のポリマーバインダーは、例えば、(Savariar−Hauckらによって2015年3月10日に出願された)米国特許出願第14/642863号明細書に記載の架橋疎水性材料である。
存在するとき、第2のポリマーバインダーは、赤外線感受性画像形成性層の全固形分に基づいて、少なくとも1重量%から20重量%以下の量で存在し得る。第2のポリマーバインダーの量は一般に、主ポリマーバインダーの量より少ない。
赤外線感受性画像形成性層への別の添加剤は、当技術分野において既知である色素前駆体及び発色現像剤を含み得る。
有用な色素前駆体には、米国特許第6858374号明細書(Yanaka)に記載のものなどの、酸解離特性を持つラクトン骨格を有するフタリド色素及びフルオランロイコ色素が含まれるが、これらに限定されない。
赤外線感受性画像形成性層は、例えば、(Hayakawaらによって2015年3月10日に出願された)米国特許出願第14/642876号明細書及び米国特許第8383319号明細書(Huangら)及び米国特許第8105751号明細書(Endoら)に記載の少なくとも3μmから20μm以下の平均粒径を有する架橋ポリマー粒子を含み得る。
赤外線感受性画像形成性層はまた、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、被覆性もしくは他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー改質剤、又はこれらの組み合わせ、あるいは平版技術において従来の量で一般に使用されるその他の任意の追加物を含むがこれらに限定されない様々な他の任意選択の化合物を含み得る。赤外線感受性画像形成性層はまた、米国特許第7429445号明細書(Munnellyら)に記載の一般に250を超える分子量を有するホスフェート(メタ)アクリレートを含み得る。
親水性オーバーコート
本発明のいくつかの実施形態において、赤外線感受性画像形成性層は、その上に配置された層がない最外層であるが、赤外線感受性画像形成性層上に直接配置された親水性オーバーコート(又は酸素バリア層又はトップコート)(これら2層の間に中間層はない。)を有する原版を設計することが可能である。そのような原版は、以下で説明する任意の適した現像剤を使用してオンプレス並びにオフプレスで現像され得る。
存在するとき、この親水性オーバーコートは一般に最外層であり、したがって、他の原版が積層されるとき、ある原版の親水性オーバーコートは、そのすぐ上にある原版の基板の裏面と接触するであろう。
そのような親水性オーバーコートは、親水性オーバーコートの全乾燥重量に基づいて、少なくとも60重量%から98重量%以下の量の1つ又は複数の膜形成水溶性ポリマーバインダーを含み得る。そのような膜形成水溶性(又は親水性)ポリマーバインダーは、少なくとも30%、又は少なくとも75%、又は少なくとも90%から99.9%以下のけん化度を有する修飾又は非修飾ポリ(ビニルアルコール)を含み得る。
さらに、1つ又は複数の酸修飾ポリ(ビニルアルコール)が、親水性オーバーコート内の膜形成水溶性(又は親水性)ポリマーバインダーとして使用され得る。例えば、少なくとも1つの修飾ポリ(ビニルアルコール)は、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、ホスホン酸基及びリン酸エステル基からなる群から選択される酸基で修飾され得る。そのような材料の例には、スルホン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)、カルボン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)、及び四級アンモニウム塩修飾ポリ(ビニルアルコール)、グリコール修飾ポリ(ビニルアルコール)、又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
任意選択の親水性オーバーコートはまた、例えば、(Hayakawaらによって2015年3月10日に出願された)米国特許出願第14/642876号明細書及び米国特許第8383319号明細書(Huangら)及び米国特許第8105751号明細書(Endoら)に記載の少なくとも3μmから20μm以下の平均粒径を有する架橋ポリマー粒子を含み得る。
存在するとき、親水性オーバーコートは、少なくとも0.1g/m2から4g/m2未満の乾燥コーティング被覆量、典型的には少なくとも0.15g/m2から2.5g/m2以下の乾燥コーティング被覆量で設けられる。いくつかの実施形態において、オフプレス現像又はオンプレス現像の間の容易な除去のために親水性オーバーコート層が比較的薄くなるように、乾燥コーティング被覆量は、0.1g/m2から1.5g/m2以下、又は少なくとも0.1g/m2から0.9g/m2以下という低さである。
親水性オーバーコートは、任意選択で、例えば、米国特許出願公開第2013/0323643号明細書(Balbinotら)に記載の1つ又は複数の膜形成水溶性(又は親水性)ポリマーバインダー内に一般に均一に分散した有機ワックス粒子を含み得る。
ネガ型赤外線感受性平版印刷版原版
上述のネガ型赤外線感受性組成物は、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラコーティング又は押出ホッパーコーティングなどの任意の適した装置及び手順を使用して、コーティング液中の溶液又は分散物として基板に塗布され得る。また、適した支持体上に吹付により塗布され得る。典型的には、ネガ型赤外線感受性組成物が塗布及び乾燥されて赤外線感受性画像形成性層を形成する。
そのような製造方法は、適した有機溶媒又はその混合物[メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、iso−プロピルアルコール、アセトン、γ−ブチロラクトン、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、及び当技術分野において容易に分かるその他のもの、並びにこれらの混合物など]中で画像化化学に必要な様々な成分を混合する工程、得られる溶液を基板に塗布する工程、及び適した乾燥条件下の蒸発により(1つ又は複数の)溶媒を除去する工程を含み得る。適切な乾燥後、赤外線感受性画像形成性層の乾燥コーティング被覆量は一般に、少なくとも0.1g/m2から4g/m2以下、又は少なくとも0.4g/m2から1.8g/m2以下である。
別個の非画像形成性層もまた、現像性を向上させるために、又は断熱層として働くために赤外線感受性画像形成性層の下に存在し得、親水性基板上に直接配置され得る。しかし、親水性オーバーコート層が存在しない限り、赤外線感受性画像形成性層上に配置される層は存在しない。
上で述べたように、いくつかの実施形態において、(上述の)適した水性の親水性オーバーコート配合物は、乾燥した赤外線感受性画像形成性層に適した方法で塗布され得、次いで、適した方法で乾燥され得る。
画像化(露光)条件
使用時、本発明のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版は、最低750nmから1400nm以下、又は最低800nmから1250nm以下の波長における特異的な感受性を与える赤外線感受性画像形成性層内に存在する赤外線吸収剤に応じて、適切なエネルギー源を使用して適した露光放射源に露光され得る。
例えば、画像化は、赤外線発生レーザ(又はそのようなレーザのアレイ)による画像化又は露光放射を使用して実施され得る。画像化はまた、希望するならば複数の波長で同時に画像化放射を使用して実施され得る。原版の露光に使用されるレーザは、ダイオードレーザシステムの信頼性及び低メンテナンス性のために、通常はダイオードレーザであるが、気体レーザ又は固体レーザなどの他のレーザもまた使用され得る。赤外線レーザ画像化の出力、強度及び露光時間の組み合わせは、当業者には容易に明らかになるであろう。
画像化装置は、フラットベッドレコーダとして、あるいはドラムレコーダとして、ドラムの円筒形の内面又は外面に取り付けられたネガ型赤外線感受性平版印刷版原版と共に構成され得る。有用な画像化装置の一例は、約830nmの波長の近赤外線を発するレーザダイオードを含むKODAK(登録商標)Trendsetterプレートセッター(Eastman Kodak Company)のモデルとして入手できる。他の適した画像化装置には、810nmの波長で動作するScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズプレートセッター(Screen USA(イリノイ州シカゴ)から入手可能)が含まれる。
赤外線による画像化は、赤外線感受性画像形成性層の感受性に応じて、少なくとも30mJ/cm2から500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2から300mJ/cm2以下の画像化エネルギーで一般に実施され得る。
加工(現像)及び印刷
画像様露光させた後、赤外線感受性画像形成性層内に露光領域及び非露光領域を有する露光したネガ型赤外線感受性平版印刷版原版は、非露光領域(及びそのような領域上のすべての親水性オーバーコート)を除去するために適した方法で加工される。
上で述べたように、加工は、同じか、又は異なる加工溶液の1つ又は複数の連続する塗布(処理工程又は現像工程)において任意の適した現像剤を使用してオフプレスで実施され得る。そのような1つ又は複数の連続する加工処理は、赤外線感受性画像形成性層の非露光領域を除去して基板の親水性表面を露出させるには十分な時間だが、同じ層内で硬化した露光領域を大量に除去するには十分長くない時間、露光原版を使用して実施され得る。平版印刷時、露出した親水性基板表面はインキをはじくが、残りの露光領域は平版印刷インキを受容する。
そのようなオフプレス加工の前に、露光原版に「予熱」プロセスを施して、赤外線感受性画像形成性層内の露光領域をさらに硬化し得る。そのような任意選択の予熱は、任意の既知のプロセス及び装置を使用して、一般に少なくとも60℃から180℃以下の温度で実施され得る。
この任意選択の予熱の後、又は予熱の代わりに、露光済み原版を洗浄して(すすいで)、存在するすべての親水性オーバーコートを除去し得る。そのような任意選択の洗浄(又はすすぎ)は、任意の適した水性溶液(水又は界面活性剤の水性溶液など)を適した温度で、当業者には容易に明らかになるであろう適した時間使用して実施され得る。
有用な現像剤は通常の水であり得、又は配合され得る。配合される現像剤は、界面活性剤、有機溶媒、アルカリ剤及び表面保護剤から選択される1つ又は複数の成分を含み得る。
有用な有機溶媒には、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドとのフェノールの反応生成物[エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)など]、ベンジルアルコール、6個以下の炭素原子を有する酸とエチレングリコール又はプロピレングリコールのエステル、並びに6個以下の炭素原子を有するアルキル基とエチレングリコール、ジエチレングリコール、又はプロピレングリコールのエーテル(2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールなど)が含まれる。
場合によっては、非露光領域を除去することによって画像化された原版を現像し、或いは、画像化及び現像(加工)された原版印刷表面全体にわたって保護層又はコーティングを設けるために水性の加工溶液がオフプレスで使用され得る。本実施形態において、水性のアルカリ溶液は、印刷版上の平版画像を汚染又は損傷から(例えば、酸化、指紋、ダスト又は擦り傷から)保護(又は「ガム引き」)できるガムのようにある程度振る舞う。
記載のオフプレス加工及び任意選択の乾燥の後、得られる平版印刷版は、別の溶液又は液体と接触することなく印刷機上に取り付けられ得る。ブランケット、あるいはUV又は可視放射へのフラッド様露光あり、又はなしでの平版印刷版のさらなるベークは任意選択である。
オフプレス現像の後、印刷は、露光及び加工した平版印刷版を適した印刷機上に置くことによって実施され得る。印刷は、平版印刷インキ及び湿し水を平版印刷版の印刷表面に、適した方法で塗布することによって実施され得る。湿し水は、露光工程及び加工工程により露出した親水性基板の表面に吸収され、平版インキは、画像形成性層の残りの(露光)領域に吸収される。次いで、平版インキは、適した受容材料(布、紙、金属、ガラス又はプラスチックなど)に転移され、その上に画像の所望の刷りを与える。希望するならば、平版インキを平版印刷版から受容材料(例えば、用紙)に転移させるために中間の「ブランケット」ローラが使用され得る。
オンプレス現像及び印刷:
あるいは好ましくは、画像化されたネガ型赤外線感受性平版印刷版原版が印刷機上に取り付けられ、印刷操作が始まる。赤外線感受性画像形成性層内の非露光領域は、初期の印刷刷りが行われるとき、適した湿し水、平版印刷インキ、又はその両方の組み合わせによって除去される。水性の湿し水の典型的な原料には、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶媒、殺生物剤、発泡防止剤並びに金属イオン封鎖剤が含まれる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W+Varn PAR(アルコール代替)(Varn International(イリノイ州アディソン)から入手可能)である。
枚葉印刷機での典型的な印刷機の立ち上げにおいて、湿しローラがまず係合して取り付けられた画像化された原版に湿し水を供給し、少なくとも非露光領域内の露光した赤外線感受性画像形成性層を膨潤させる。数回転した後、インキローラが係合して(1つ又は複数の)平版印刷インキを供給し、平版印刷版の印刷表面全体を覆う。典型的には、インキローラが係合してから5〜20回転以内で印刷シートが供給され、生成されたインキ壺のエマルションを使用して、赤外線感受性画像形成性層並びに存在する場合はブランケット胴上の材料の非露光領域を除去する。
本発明は、少なくとも以下の実施形態及びこれらの組み合わせを提供するが、当業者なら本開示の教示から理解するように、特徴の他の組み合わせは本発明内とみなされる:
1.親水性表面を有する基板、
基板の親水性表面に配置されており、
1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物と、
1つ又は複数の赤外線吸収剤と、
以下の構造(I)により表される化合物Aと、以下の構造(II)又は構造(III)により表される1つ又は複数の化合物を化合物Bとしてまとめて含む、赤外線感受性画像形成性層の赤外線への露光によってフリーラジカルを与える開始剤組成物、及び、
主ポリマーバインダー
を含む赤外線感受性画像形成性層と
を含むネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
Figure 0006853262
Figure 0006853262
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、2個〜9個の炭素原子をそれぞれ有する置換又は非置換のアルキル基あるいは置換又は非置換のアルコキシ基であり、
R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、
R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
R1及びR2中の炭素原子の総数とR5及びR6中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである)
2.化合物Bが、構造(III)により表される化合物を含み、R1がR5と同じであり、R2がR6と同じである、実施形態1に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
3.R1がR2と同じである、実施形態2に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
4.化合物Bが、構造(II)により表される化合物を含み、R1がR2と同じであり、R3がR4と同じである、実施形態1から3のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
5.R1とR3との間の炭素原子数の差が0、1又は2である、実施形態4に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
6.R1、R2、R3、R4、R5及びR6が独立して、置換又は非置換のアルキル基である、実施形態1から5のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
7.R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが独立して3個〜6個の炭素原子を有する、実施形態1から6のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
8.化合物A対化合物Bのモル比が10:90から90:10以下である、実施形態1から7のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
9.化合物A及び化合物Bの両方の合計が、赤外線感受性画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも5重量%から18重量%以下である、実施形態1から8のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
10.X1、X2及びX3のうちの少なくとも1つが、同じか又は異なるアリール基を含むテトラアリールボレートアニオンである、実施形態1から9のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
11.X1、X2及びX3のそれぞれがテトラフェニルボラートである、実施形態1から10のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
12.少なくとも1つの赤外線吸収剤が、テトラアリールボレートアニオンを含むシアニン色素である、実施形態1から11のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
13.主ポリマーバインダーが粒子状で存在する、実施形態1から12のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
14.主ポリマーバインダーが、スチレンから誘導される反復単位及びアクリロニトリルから誘導される反復単位を含む、実施形態1から13のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
15.主ポリマーバインダーが、ポリアルキレンオキシドセグメントを含む反復単位及びペンダントシアノ基を含む反復単位を含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
16.化合物Bが、構造(III)により表される化合物を含み、R1がR5と同じであり、R2がR6と同じであるか;又は化合物Bが、構造(II)により表される化合物を含み、R1がR2と同じであり、R3がR4と同じであり、且つR1とR3との間の炭素原子数の差が0、1又は2であり;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が独立して、3個〜6個の炭素原子をそれぞれ有する置換又は非置換のアルキル基であり;
化合物A対化合物Bのモル比が20:80から80:20以下であり;
化合物A及び化合物Bの両方の重量の合計が、赤外線感受性画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも7重量%から15重量%以下であり;
X1がテトラフェニルボレートアニオンであり、且つ任意選択でX2及びX3のそれぞれがテトラアリールボレートアニオンであり;
少なくとも1つの赤外線吸収剤が、テトラアリールボレートアニオンを含むシアニン色素であり;且つ
主ポリマーバインダーが存在し、スチレンから誘導される反復単位及びアクリロニトリルから誘導される反復単位を含む
実施形態1から15のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
17.赤外線感受性画像形成性層内に露光領域及び非露光領域を含む露光済み原版を与えるために、実施形態1から16のいずれか1つに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版を赤外線に画像様露光させる工程、
露光済み原版を平版印刷機上に取り付ける工程、並びに
平版印刷版を与えるために、平版インキ、湿し水、又は平版インキ及び湿し水の両方を使用して非露光領域内の赤外線感受性画像形成性層を除去する工程
を順番に含む、平版印刷版を提供するための方法。
以下の実施例は、本発明の実施を示すために提示されており、いかなる意味においても限定することを意図しない。
0.4μmの平均粗さ(Ra)を得るために塩酸溶液中で電解粗面化処理を施したアルミニウム板から構成される基板を使用してネガ型赤外線感受性平版印刷版原版を調製した。次いで、アルミニウム板に水性リン酸溶液中で陽極酸化処理を施して1.1g/m2の酸化膜を形成し、次いで、ポリ(アクリル酸)の後処理水性溶液でコーティングして0.03g/m2の乾燥厚さを得た。
この基板のサンプル上に、以下の表Iに示す配合物を使用して赤外線感受性画像形成性層を形成した。各配合物は、以下の表IIに示す化合物A及び化合物Bの特定の組み合わせを含んでいた。バーコーターを使用して各配合物を基板上にコーティングし、110℃で40秒間乾燥し、次いで、35℃まで冷却して、得られた赤外線感受性画像形成性層の1.0g/m2の乾燥コーティング重量を得、こうして、各配合物を有するネガ型赤外線感受性平版印刷版原版を形成した。
Figure 0006853262
1ウレタンアクリレート1は、ヘキサメチレンジイソシアネート及びジペンタエリトリトールペンタアクリレートの反応生成物である。
2グラフトコポリマー1は、米国特許第7592128号明細書(27段の下部)においてポリマーAに使用されるプロセスにしたがって調製される、重量比70:10:20のアクリロニトリル、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート及びスチレンから誘導されるコポリマーのn−プロパノール/水の80/20混合物中の21重量%分散物である。
3ヒドロキシプロピルメチルセルロース1は、20℃の2%水性溶液中で5mPa秒の粘度を有する、30%のメトキシル化、10%ヒドロキシプロピル化セルロースポリマーである。
4アクリレートエステル1は、平均エトキシ鎖長が5であるエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレートである。
Figure 0006853262
5IR色素1は以下の式により表される:
6BYK(登録商標)336は、BYK Chemie(コネティカット州ウォリングフォード)から入手できる25%キシレン/酢酸メトキシプロピル溶液中の修飾ジメチルポリシロキサンコポリマーである。
Figure 0006853262
Figure 0006853262
このように調製したネガ型赤外線感受性平版印刷版原版をKodak Magnus 800イメージセッターでそれぞれ画像様露光させて固体領域内に線量150mJ/cm2を照射し、こうして、赤外線感受性画像形成性層内に露光領域及び非露光領域の両方を有する露光済み原版を形成した。
ネガ型赤外線感受性平版印刷版原版のそれぞれを以下のように評価した。
結晶化試験:
エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)ゴムシートを使用して、ネガ型赤外線感受性平版印刷版原版のそれぞれに318kg/m2の圧力で擦り傷を3回付け、40℃及び相対湿度80%で7日老化させた。この老化プロセスの後、上述のプロセスを使用して各原版を赤外線に露光させ、擦り傷を付けた領域内の結晶生成が原因の固体露光領域内の損傷レベルを評価した。老化させた平版印刷版原版はまた、KEYENCE VE−8800走査電子顕微鏡(SEM)を使用して検査し、生成した結晶の量を確認した。結晶のUlvac−Phi TRIFT−II ToF−SIM分析は、対応するヨードニウムカチオン及びテトラフェニルボレートアニオンの存在を明らかにした。固体領域内の損傷レベル及びSEM像内に観察された結晶の量により、以下の尺度にしたがって結晶化傾向を格付けした:
A:固体露光領域に結晶生成が原因の損傷はなく、SEM像内に観察される結晶はない;
B:固体露光領域に結晶生成が原因のほんのわずかな損傷があり、SEM像内に観察される結晶はほとんどない;
C:固体露光領域に結晶生成が原因のわずかな損傷があり、SEM像内に結晶が容易に観察される;
D:固体露光領域に結晶生成が原因の中程度の損傷があり、SEM像内に多数の結晶が観察される;及び
E:著しい損傷があり、SEM像内に多数の結晶が観察される。
オンプレス現像性:
露光した平版印刷版原版のそれぞれを現像せずにRoland R−201印刷機の版胴上に取り付けた。体積比1/1/98のPresarto WS100(DIC Graphicsから販売)/イソプロピルアルコール/水の湿し水、及びFusion G Magenta N平版印刷インキ(DIC Graphicsから販売)を使用して、印刷速度9,000枚/時間で印刷機を運転した。湿し水のみ供給して版胴を、10回、回転し、次いで、湿し水及び平版印刷インキの両方を供給してさらに、10回、回転した後、印刷可能な紙を内部に供給した。平版印刷版がそれ以上インキを非露光領域内に転移しなくなるまでに印刷された用紙の数により、各原版のオンプレス現像性を以下の通り格付けした。
A:印刷版は、最初の刷りはオンプレスで現像可能であった(顧客受容可能);
B:印刷版は、5刷以内はオンプレスで現像可能であった;(顧客受容可能);
C:印刷版は、10刷以内はオンプレスで現像可能であった(顧客受容不可);
D:印刷版は、20刷以内はオンプレスで現像可能であった(顧客受容不可);及び
E:印刷版は、オンプレスで現像可能ではなかった(顧客受容不可)。
印刷機の寿命:
平版印刷版原版のそれぞれを上述の通り露光し、Komori S−26印刷機上に取り付けた。体積比1/1/98のPresarto WS100(DIC Graphicsから販売)/イソプロピルアルコール/水から構成される湿し水及びFusion G Magenta N平版印刷インキ(DIC Graphicsから販売)を供給し、印刷速度9,000枚/時間で印刷を実施した。この印刷試験は10,000刷まで実施される。連続印刷によって印刷された用紙の数が増加したとき、平版印刷版の画像形成性層の露光領域が徐々に摩耗し、インキ受容性が悪化した。したがって、印刷された用紙上のインキ濃度は低下した。その上のインキ濃度(反射濃度)が印刷を開始したときの90%以下まで低下したときの印刷された用紙の数により、印刷機の寿命を下に示す通り評価した。
A:印刷機の寿命が10,000刷を超えることが確認された;
B:印刷機の寿命が少なくとも5,000〜10,000刷の範囲であることが確認された;
C:印刷機の寿命が少なくとも2,000〜5,000刷の範囲であることが確認された;
D:印刷機の寿命が少なくとも1,000〜2,000刷の範囲であることが確認された;及び
E:画像形成性層コーティングが1,000刷以内で失われた。
3つの試験の評価の結果を以下の表IIIに示す。
Figure 0006853262
表IIIのデータは、本発明のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版が、赤外線感受性画像形成性層内の結晶生成の減少(格付け「A」)、優れたオンプレス現像性(格付け「A」)及び良好な印刷機の寿命(格付け「A」又は「B」)を示したことを示す。
比較例1、2、3及び4による平版印刷版原版はすべて、単一のヨードニウム塩を含んでいた。比較例1、2及び3において使用された原版は、望ましくない結晶生成を示した。ヨードニウムカチオンがそのフェニル環上にアルキル置換基を含んでいなかったため、著しい結晶生成が比較例3において観察された。比較例4において使用された原版は、ヨードニウムベンゼン環上の長く柔軟なアルキル鎖のために結晶生成を示さなかったが、非常に不十分な印刷機の寿命を示した。
比較例5、6、7、8及び9による平版印刷版原版はすべて、2つのヨードニウム塩を含んでいたが、これらの原版は1つ又は複数の評価試験で不合格であった。比較例5において使用されたヨードニウム塩は、各ヨードニウムベンゼン上に1つの置換基の代わりに2つの置換基を含み、各置換基は炭素を1個のみ有していた。比較例5の原版は著しいブルーミングを示した。比較例6の原版は、R3及びR4のうちの少なくとも1つがR1又はR2とは異なるヨードニウム塩を含んでいた。比較例6の原版は、より短い印刷機の寿命及びより悪い(受け入れられない)結晶生成を示した。比較例7及び8において、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、ヨードニウム塩中に2個未満の炭素を有する。比較例7及び8の原版は、より悪い(受け入れられない)結晶化を示した。比較例9の原版において、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは9個を超える炭素を有していた。比較例9の原版は結晶化を示さなかったが、不十分な印刷機の寿命を示した。

Claims (10)

  1. 親水性表面を有する基板、並びに、
    前記基板の前記親水性表面に配置されており、
    1つ又は複数のフリーラジカル重合性化合物と、
    1つ又は複数の赤外線吸収剤と、
    以下の構造(I)により表される化合物Aと、以下の構造(II)又は構造(III)により表される1つ又は複数の化合物を化合物Bとしてまとめて含む、赤外線感受性画像形成性層の赤外線への露光によってフリーラジカルを与える開始剤組成物、及び、
    主ポリマーバインダー
    を含む赤外線感受性画像形成性層
    を含むネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
    Figure 0006853262
    Figure 0006853262
    (式中、
    R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、2個〜9個の炭素原子をそれぞれ有する置換又は非置換のアルキル基あるいは置換又は非置換のアルコキシ基であり、
    R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり、
    R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
    R1及びR2中の炭素原子の総数とR5及びR6中の炭素原子の総数との間の差は0〜4であり、
    X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである)
  2. 化合物Bが、構造(III)により表される化合物を含み、R1がR5と同じであり、R2がR6と同じである、請求項1に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  3. R1がR2と同じである、請求項2に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  4. 化合物Bが、構造(II)により表される化合物を含み、R1がR2と同じであり、R3がR4と同じである、請求項1乃至3のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  5. R1とR3との間の炭素原子数の差が0、1又は2である、請求項4に記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  6. R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれが独立して3個〜6個の炭素原子を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  7. 化合物A及び化合物Bの両方の合計が、前記赤外線感受性画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも5重量%から18重量%以下である、請求項1乃至6のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  8. X1、X2及びX3のそれぞれがテトラフェニルボラートである、請求項1乃至7のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  9. 前記主ポリマーバインダーが粒子状で存在する、請求項1乃至8のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版。
  10. 前記赤外線感受性画像形成性層内に露光領域及び非露光領域を含む露光済み原版を与えるために、請求項1乃至9のいずれかに記載のネガ型赤外線感受性平版印刷版原版を赤外線に画像様露光させる工程、
    前記露光済み原版を平版印刷機上に取り付ける工程、並びに
    平版印刷版を与えるために、平版インキ、湿し水、又は平版インキ及び湿し水の両方を使用して前記非露光領域内の前記赤外線感受性画像形成性層を除去する工程
    を順番に含む、平版印刷版を提供するための方法。
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