JP6852750B2 - スプリングバック量乖離要因部位特定方法および装置 - Google Patents
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Description
成形品の下死点における内部応力がスプリングバックの挙動に影響を及ぼすため、成形品のどの部位における応力がスプリングバックに対してどのような影響を与えるのかを把握することはスプリングバック対策を講じるのに有効である。
その手法として、特許文献1に開示されるプレス成形解析方法では、有限要素法を用いた解析によって解析を行っている。
特許文献1に開示されたような手法を用いることで、実際の金型を作成する前にスプリングバック対策を検討することができ、形状精度を確保するための金型調整作業を大幅に低減することができる。
これは、プレス成形に使用した金型の形状や種々の成形条件によって、金属板に対してCAE解析で想定した成形荷重がかからなかった場合や、CAE解析が離型前の応力状態を正確に再現することができなかった場合などに起きうるもので、そのような場合にはプレス成形に用いる金型や成形条件を調整したり、CAE解析上の設定や金型形状を見直したりする必要がある。
図2に一例として示すような成形品1のプレス成形においては、プレス成形前に行うスプリングバック解析(CAE解析ともいう)によって算出されたスプリングバック量と実際にプレス成形された成形品(実パネルともいう)のスプリングバック量に差(乖離)が生じる場合があった。そして、このようなCAE解析と実パネルにスプリングバック量の乖離が生じる要因となる部位は、スプリングバックそのものが発生する要因となる部位とは異なる場合がある。そのため、スプリングバックが発生する要因となる部位に何らかの対策を施してスプリングバックを低減したとしても、CAE解析と実パネルの間に生じるスプリングバック量の乖離を低減するには至らないという問題があった。
本発明の実施の形態1に係るスプリングバック量乖離要因部位特定方法は、実パネルをプレス成形したプレス成形品とスプリングバック解析のスプリングバック量に乖離が生じる場合において、該スプリングバック量に乖離が生じる要因となる成形品形状における部位を特定するものであって、図1に示すように、成形品駆動応力分布取得ステップS1と、解析駆動応力分布取得ステップS3と、応力差分分布設定ステップS5と、応力差分スプリングバック量取得ステップS7と、変更応力差分スプリングバック量取得ステップS9と、スプリングバック量乖離要因部位特定ステップS11とを備えたものである。
本実施の形態におけるCAE解析では、図2に示すように、ダイ5とパンチ7からなる金型モデル3により被加工材(鋼板)であるブランクモデル9を挟むプレス成形解析を実施する。なお、プレス成形解析においては、図2に示すように位置決めピンにより成形過程においてブランクモデル9を固定するものとし、ブランクモデル9の要素サイズを約1mm、解析条件として、ブランクモデル9と金型モデル3との間の摩擦係数を0.15、成形下死点位置を上下金型のモデルのスキが1.45mmとなる位置とした。また、被加工材は、板厚1.4mmの980MPa級GA鋼板とした。
なお、本実施の形態における実パネルはCAE解析に設定した成形条件と同じ条件下でプレス成形を行って成形したものとする。
成形品駆動応力分布取得ステップS1は、実パネルの駆動応力分布を取得するステップである。
具体的には、上述したようなCAE解析に設定した成形条件と同じ条件でプレス成形を行って実パネルを成形し、該実パネルの離型後における表面形状を測定して取得した三次元形状測定データからプレス成形品モデルを作成し、該プレス成形品モデルを図2に示した金型モデル3によって成形下死点まで挟み込んだ状態の力学的解析を行って図4に示したような応力分布を取得するものである。
上記力学的解析として弾性有限要素解析を行い、該弾性有限要素解析により得られた応力分布は実パネルのスプリングバックに寄与した応力、すなわち、実パネルの駆動応力に相当する。
解析駆動応力分布取得ステップS3は、CAE解析(スプリングバック解析)における下死点応力分布及び離型後の残留応力をそれぞれ取得して、その差分からCAE解析における駆動応力を取得するステップである。
プレス成形品の下死点における応力がスプリングバックの挙動に影響を及ぼすものではあるが、金型から離型した後のプレス成形品にも応力が残留している。すなわち、離型前の応力のすべてがスプリングバックに寄与するわけではなく、離型後のスプリングバックが生じたプレス成形品に残留する応力はスプリングバックに寄与しなかったものと考えられる。
成形品駆動応力分布取得ステップS1で取得した駆動応力(スプリングバックに寄与した応力)との正確な比較分析を行うためにはCAE解析における駆動応力を算出する必要がある。
さらに、離型後の残留応力がほぼ無視できるような小さな値であった場合には、解析下死点の応力分布の全てがスプリングバックに寄与するとみなし、下死点における応力分布を解析駆動応力分布としてもよい。
応力差分分布設定ステップS5は、図5に示すように、解析駆動応力分布取得ステップS3で算出した応力分布(図3、図5(a))と成形品駆動応力分布取得ステップS1で算出した応力分布(図4、図5(b))との差分を応力差分分布として算出し(図5(c))、算出した応力差分分布を、CAE解析の下死点形状における応力分布に設定するステップである。
なお、図5に示す各応力分布は応力の大きさの違いが色の濃淡で示されているが、図5(c)は、図5(a)及び図5(b)よりも色表示のレンジ幅を小さく設定したものである。このようにすることで、応力差が大きい部分(黒または白に近い部分)と応力差が小さい部分(図中右側のグレースケール中間色に近い部分)をより区別しやすくしている。
応力差分スプリングバック量取得ステップS7は、応力差分分布設定ステップS5で設定した応力差分分布を用いてスプリングバック解析を行い、そこで生じるスプリングバック量を算出するステップである。
変更応力差分スプリングバック量取得ステップS9は、応力差分分布設定ステップS5で設定した応力差分分布のうち、成形品1における一部分のある部位の応力差分の値を変更し、変更した応力差分分布(変更応力差分分布)から、スプリングバック解析を行い、そこで生じるスプリングバック量を算出するステップである。
ある領域の値を消去した後、スプリングバック解析を行って、スプリングバック量として図8に示した首振り量とはね量をそれぞれ算出する。
スプリングバック量乖離要因部位特定ステップS11は、応力差分スプリングバック量取得ステップS7及び変更応力差分スプリングバック量取得ステップS9で算出したスプリングバック量に基づいて、CAE解析と実パネルでスプリングバック量に乖離が生じる要因となる部位を特定するステップである。
同様に、応力消去領域が領域A〜Fの首振り量をみると、領域D及び領域Eが他の領域に比べてbaseからの変化が大きいことがわかる。
上述した領域2及び領域D、Eにおいても変化が大きかったことからもこれは妥当な結果であり、領域D−2及び領域E−2が、CAE解析と実パネルの首振り量に乖離を生じさせる部位であると特定することができる。
応力差分を変更しない場合のはね量(base)は、4.2mmである。これに対し、応力消去領域が領域1〜3のはね量をみると、領域2(-8.3mm)のみ領域1(4.8mm)、領域3(7.5mm)に比べてbaseからの変化が大きいことがわかる。
同様に、応力消去領域が領域A〜Fのはね量をみると、領域D(-2.9mm)及び領域F(-0.9mm)が他の領域に比べてbaseからの変化が大きいことがわかる。
領域2及び領域Fにおいてもはね量の変化が大きかったことからもこれは妥当な結果であり、領域F−2が、CAE解析と実パネルのはね量に乖離を生じさせる部位であると特定することができる。
これは、領域D−2における応力差分を消去することで、当該領域がはね量をさらに乖離させやすい部位であることを示すものである。すなわち、領域D−2は応力差分があることによってはね量の乖離を抑制する部位であり、乖離を生じさせる部位ではないと判断される。
そこで、CAE解析によって得られた駆動応力分布(図3参照)における、前記特定された各部位の駆動応力を、これに対応する実パネルの各部位の駆動応力分布に置換して、スプリングバック解析を行い、スプリングバック量の乖離が低減するかどうかについて検証した。
図16はCAE解析における首振り量から実パネルにおける首振り量を差し引いた結果(乖離量)をグラフにしたものであり、縦軸が乖離量を、横軸が応力置換領域をそれぞれ示している。横軸における「なし」は、応力置換領域が無い場合であり、この場合には、乖離量はCAE解析と実パネルの差である-11.6mmとなっている。また、「ALL」は、CAE解析の駆動応力分布の全ての領域を実パネルの駆動応力分布に置換した場合であり、この場合には、乖離量はほぼゼロとなる。
これらに対して、本実施の形態で特定された領域D−2または領域E−2のみに実パネルの応力分布を置き換えた場合は、図16の「D−2」「E−2」に示されるように、いずれにおいても実パネルとの首振り乖離量が減少した。
さらに、「D−2/E−2」に示されるように、領域D−2、E−2の両方に実パネルの応力分布を置き換えることで、実パネルとの首振り乖離量をより低減できることが示された。
このようにスプリングバック量乖離の要因となる部位を特定することで、CAE解析と実パネルの離型後形状を近づけるために行っていた金型や成形条件などの調整作業を効率的に行うことができる。
また、特定した部位を中心にCAE解析上の設定や金型形状を見直すことで、スプリングバック解析の再現性を向上させることができ、CAE解析を用いたスプリングバック対策の有用性を担保することができる。
実施の形態1で説明したスプリングバック量乖離要因部位特定方法は、予め設定されたプログラムをPC(パーソナルコンピュータ)に実行させることで実現できる。そのような装置の一例を本実施の形態にて説明する。
本実施の形態に係るスプリングバック量乖離要因部位特定装置11は、図18に一例を示すような、表示装置13と、入力装置15と、主記憶装置17と、補助記憶装置19と、演算処理部21を有している。演算処理部21には、表示装置13、入力装置15、主記憶装置17及び補助記憶装置19が接続され、演算処理部21の指令によって各機能を行う。
補助記憶装置19には少なくとも、三次元形状測定データ23、金型モデル25等のCAE解析に必要な各種データが記憶されている。
よって、特定した部位に基づいてCAE解析と実パネルの離型後形状を近づけるための各種調整作業を効率的に行うことができ、さらにスプリングバック対策の有用性を担保することができる。
3 金型モデル
5 ダイ
7 パンチ
9 ブランクモデル
11 スプリングバック量乖離要因部位特定装置
13 表示装置
15 入力装置
17 主記憶装置
19 補助記憶装置
21 演算処理部
23 三次元形状測定データ
25 金型モデル
27 成形品駆動応力分布取得手段
29 解析駆動応力分布取得手段
31 応力差分分布設定手段
33 応力差分スプリングバック量取得手段
35 変更応力差分スプリングバック量取得手段
37 スプリングバック量乖離要因部位特定手段
Claims (6)
- 実パネルをプレス成形したプレス成形品に生ずるスプリングバック量と、前記プレス成形品と同形状の解析モデルについてスプリングバック解析を行った際のスプリングバック量に乖離が生ずる場合において、該乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定方法であって、
前記プレス成形品の離型後における表面形状を測定して取得した三次元形状測定データからプレス成形品モデルを作成し、該プレス成形品モデルを金型モデルによって下死点まで挟み込んだ状態の力学的解析を行い、成形下死点における応力分布を前記プレス成形品のスプリングバックに寄与した駆動応力分布として取得する成形品駆動応力分布取得ステップと、
前記スプリングバック解析における下死点応力分布及び離型後の残留応力分布を取得し、該下死点応力分布と離型後の残留応力分布の差分をスプリングバック解析における駆動応力分布として取得する解析駆動応力分布取得ステップと、
該解析駆動応力分布取得ステップで取得した解析駆動応力分布と前記成形品駆動応力分布取得ステップで取得した成形品駆動応力分布の差分から応力差分分布を取得して、前記スプリングバック解析における下死点の成形品形状に前記応力差分分布を設定する応力差分分布設定ステップと、
該設定した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する応力差分スプリングバック量取得ステップと、
前記応力差分分布設定ステップで設定した前記応力差分分布のうち、一部の領域の応力差分の値を変更して、該変更した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する変更応力差分スプリングバック量取得ステップと、
該変更応力差分スプリングバック量取得ステップ及び前記応力差分スプリングバック量取得ステップで取得したスプリングバック量を比較して変化量を求め、該変化量に基づいて前記プレス成形品と前記スプリングバック解析のスプリングバック量に乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定ステップと、を備えていることを特徴とするスプリングバック量乖離要因部位特定方法。 - 前記変更応力差分スプリングバック量取得ステップにおける応力差分の値の変更は、前記応力差分分布に対して少なくとも1方向の成分を、消去する、定数倍する、定数を加算する、定数乗する、被加工材の板厚方向の平均値に置き換える、被加工材の板厚方向の中央値に置き換える、のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のスプリングバック量乖離要因部位特定方法。
- 実パネルをプレス成形したプレス成形品に生ずるスプリングバック量と、前記プレス成形品と同形状の解析モデルについてスプリングバック解析を行った際のスプリングバック量に乖離が生ずる場合において、該乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定装置であって、
前記プレス成形品の離型後における表面形状を測定して取得した三次元形状測定データからプレス成形品モデルを作成し、該プレス成形品モデルを金型モデルによって下死点まで挟み込んだ状態の力学的解析を行い、成形下死点における応力分布を前記プレス成形品のスプリングバックに寄与した駆動応力分布として取得する成形品駆動応力分布取得手段と、
前記スプリングバック解析における下死点応力分布及び離型後の残留応力分布を取得し、該下死点応力分布と離型後の残留応力分布の差分をスプリングバック解析における駆動応力分布として取得する解析駆動応力分布取得手段と、
該解析駆動応力分布取得手段で取得した解析駆動応力分布と前記成形品駆動応力分布取得手段で取得した成形品駆動応力分布の差分から応力差分分布を取得して、前記スプリングバック解析における下死点の成形品形状に前記応力差分分布を設定する応力差分分布設定手段と、
該設定した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する応力差分スプリングバック量取得手段と、
前記応力差分分布設定手段で設定した前記応力差分分布のうち、一部の領域の応力差分の値を変更して、該変更した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する変更応力差分スプリングバック量取得手段と、
該変更応力差分スプリングバック量取得手段及び前記応力差分スプリングバック量取得手段で取得したスプリングバック量を比較して変化量を求め、該変化量に基づいて前記プレス成形品と前記スプリングバック解析のスプリングバック量に乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定手段と、を備えていることを特徴とするスプリングバック量乖離要因部位特定装置。 - 前記変更応力差分スプリングバック量取得手段における応力差分の値の変更は、前記応力差分分布に対して少なくとも1方向の成分を、消去する、定数倍する、定数を加算する、定数乗する、被加工材の板厚方向の平均値に置き換える、被加工材の板厚方向の中央値に置き換える、のいずれかであることを特徴とする請求項3記載のスプリングバック量乖離要因部位特定装置。
- 実パネルをプレス成形したプレス成形品に生ずるスプリングバック量と、前記プレス成形品と同形状の解析モデルについてスプリングバック解析を行った際のスプリングバック量に乖離が生ずる場合において、該乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定プログラムであって、
コンピュータの演算処理部で実行されることにより、
前記プレス成形品の離型後における表面形状を測定して取得した三次元形状測定データからプレス成形品モデルを作成し、該プレス成形品モデルを金型モデルによって下死点まで挟み込んだ状態の力学的解析を行い、成形下死点における応力分布を前記プレス成形品のスプリングバックに寄与した駆動応力分布として取得する成形品駆動応力分布取得手段と、
前記スプリングバック解析における下死点応力分布及び離型後の残留応力分布を取得し、該下死点応力分布と離型後の残留応力分布の差分をスプリングバック解析における駆動応力分布として取得する解析駆動応力分布取得手段と、
該解析駆動応力分布取得手段で取得した解析駆動応力分布と前記成形品駆動応力分布取得手段で取得した成形品駆動応力分布の差分から応力差分分布を取得して、前記スプリングバック解析における下死点の成形品形状に前記応力差分分布を設定する応力差分分布設定手段と、
該設定した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する応力差分スプリングバック量取得手段と、
前記応力差分分布設定手段で設定した前記応力差分分布のうち、一部の領域の応力差分の値を変更して、該変更した応力差分分布に基づいてスプリングバック解析を行ってスプリングバック量を取得する変更応力差分スプリングバック量取得手段と、
該変更応力差分スプリングバック量取得手段及び前記応力差分スプリングバック量取得手段で取得したスプリングバック量を比較して変化量を求め、該変化量に基づいて前記プレス成形品と前記スプリングバック解析のスプリングバック量に乖離が生ずる要因となる成形品形状における部位を特定するスプリングバック量乖離要因部位特定手段と、を実現することを特徴とするスプリングバック量乖離要因部位特定プログラム。 - 前記変更応力差分スプリングバック量取得手段における応力差分の値の変更は、前記応力差分分布に対して少なくとも1方向の成分を、消去する、定数倍する、定数を加算する、定数乗する、被加工材の板厚方向の平均値に置き換える、被加工材の板厚方向の中央値に置き換える、のいずれかであることを特徴とする請求項5記載のスプリングバック量乖離要因部位特定プログラム。
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