以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。図2、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向である。図6、及び後述する一部では、Z方向の軸(Z軸)を回転軸とする回転の方向であるθ方向が示される。
まず図1〜4を参照して、部品実装装置1の構成を説明する。なお図2は、図1におけるA−A断面を部分的に示している。部品実装装置1は、部品供給部から供給された部品を基板に実装する部品実装作業を実行する機能を有する。基台1aの中央には、基板搬送機構2がX方向に配設されている。基板搬送機構2は、上流側から搬送された基板3を、実装作業位置に搬入して位置決め保持する。また、基板搬送機構2は、部品実装作業が完了した基板3を下流側に搬出する。
基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4が配置されている。それぞれの部品供給部4には、複数のテープフィーダ5が並列に装着されている。テープフィーダ5は、部品を収納するポケットが形成されたキャリヤテープを部品供給部4の外側から基板搬送機構2に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、以下に説明する部品装着部の実装ヘッドによって部品が取り出される部品供給位置5a(図2参照)に部品を供給する。すなわち、テープフィーダ5は、部品供給位置5aを有し、部品供給位置5aから部品を供給する部品供給装置となる。
基台1a上面においてX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸ビーム6がY方向に沿って配設されている。Y軸ビーム6には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸ビーム7が、Y方向に移動自在に結合されている。X軸ビーム7はX方向に沿って配設されている。2基のX軸ビーム7には、それぞれ実装ヘッド8がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド8は、部品を吸着保持して昇降可能な複数の吸着ユニット8aを備える。吸着ユニット8aのそれぞれの下端部には、部品を吸着保持する吸着ノズル8b(図2参照)が装着されている。
図1において、Y軸ビーム6、X軸ビーム7を駆動することにより、実装ヘッド8はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド8は、それぞれ対応した部品供給部4に配置されたテープフィーダ5の部品供給位置5aから部品を吸着ノズル8bによって吸着して取り出して、基板搬送機構2に位置決めされた基板3の実装点に装着する。すなわち、Y軸ビーム6、X軸ビーム7および実装ヘッド8は、複数の吸着ノズル8b(ノズル)を有し、複数の吸着ノズル8bにより複数のテープフィーダ5(部品供給装置)の部品供給位置5aから部品を吸着して基板3に装着する部品装着部9を構成する。
部品供給部4と基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ10が配設されている。部品供給部4から部品を取り出した実装ヘッド8が部品認識カメラ10の上方を移動する際に、部品認識カメラ10は実装ヘッド8に保持された状態の部品を撮像して部品の保持姿勢を認識する。実装ヘッド8が取り付けられたプレート7aには基板認識カメラ11が取り付けられている。基板認識カメラ11は、実装ヘッド8と一体的に移動する。
実装ヘッド8が移動することにより、基板認識カメラ11は基板搬送機構2に位置決めされた基板3の上方に移動し、基板3に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板3の位置を認識する。また、基板認識カメラ11はテープフィーダ5の部品供給位置5aの上方に移動し、部品供給位置5a付近のキャリヤテープの状態を認識する。実装ヘッド8による基板3への部品実装動作においては、部品認識カメラ10による部品の認識結果と、基板認識カメラ11による基板位置の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
図2に示すように、部品供給部4にはフィーダベース12aに予め複数のテープフィーダ5が装着された状態の台車12がセットされる。基台1aに設けられた固定ベース(図示省略)に対して、フィーダベース12aをクランプ機構12bによってクランプすることにより、部品供給部4において台車12の位置が固定される。台車12には、部品Dを保持したキャリヤテープ13を巻回状態で収納するテープリール14が保持されている。テープリール14から引き出されたキャリヤテープ13は、テープフィーダ5によって吸着ノズル8bによる部品供給位置5aまでピッチ送りされる。
図3において、実装ヘッド8による部品実装動作では、実装ヘッド8に備えられた複数の吸着ノズル8b(j)のいずれかによって、部品供給部4に配列された複数のテープフィーダ5(i)のいずれかから部品Dを取り出して基板3に実装する。この部品実装動作においては、吸着ノズル8b(j)とテープフィーダ5(i)との組み合わせが、実装ヘッド8が基板3と部品供給部4との間を1往復する1実装ターン毎に、実装シーケンスデータによって指定される。
図4(a)において、テープフィーダ5(i)の上部には、キャリヤテープ13を上方からガイドする押え部材15が配設されている。押え部材15には、部品供給位置5aに位置して開口部15aが設けられている。図4(b)は、部品供給位置5a付近のキャリヤテープ13を上方から見た状態を示しており、押え部材15は図示省略している。キャリヤテープ13のベーステープ13aには、部品Dを収納する凹形状のポケット13bと、キャリヤテープ13をピッチ送りするスプロケット(図示省略)が係合する送り穴13cが等間隔に形成されている。部品Dを収納したポケット13bの上面には、カバーテープ13dが貼着されている。
図4(a)において、カバーテープ13dは開口部15aの縁部15b(剥離部)で剥離されて折り返されている。これによって、部品供給位置5aを含む下流側(図4(a)の右側)のポケット13bの上方が開放されている。ここで、基板認識カメラ11による、部品供給位置5aにピッチ送りされたポケット13b(以下、「対象ポケット13b*」と称する。)の撮像について説明する。基板認識カメラ11は、Y軸ビーム6、X軸ビーム7を駆動することによって部品供給位置5aの上方に移動して(矢印a)、開口部15aを通して部品供給位置5aの対象ポケット13b*を撮像する。
次に、図5を参照して、基板認識カメラ11によって撮像された対象ポケット13b*のポケット撮像画像の一例を説明する。基板認識カメラ11による対象ポケット13b*の撮像は、テープフィーダ5(i)の部品供給部4への装着後や、キャリヤテープ13のテープフィーダ5(i)への装着後に、吸着ノズル8bによる部品Dの吸着位置を補正するティーチングのためなどに実行される。
ティーチングによって、テープフィーダ5(i)を部品供給部4に装着した際の位置ずれや、キャリヤテープ13の加工精度に起因する送り穴13cとポケット13bの相対的な位置ずれ、後述するY軸ビーム6、X軸ビーム7の熱変形に起因する実装ヘッド8の位置ずれなど、部品Dが吸着される対象ポケット13b*の基板認識カメラ11の初期位置からの相対的な位置ずれが補正される。
図5(a)には、対象ポケット13b*、部品D、基板認識カメラ11に相対的な位置ずれがない例が示されている。すなわち、初期位置に移動した基板認識カメラ11の撮像視野11a(図4(b)も参照)の中心11cが、対象ポケット13b*のポケット中心Cp、部品Dの部品中心Cdと一致している。撮像視野11aには、X方向の中心線11xとY方向の中心線11yが重ねて表示されている。対象ポケット13b*のポケット中心Cpと部品Dの部品中心Cdは、撮像視野11aの中心11c(X方向の中心線11xとY方向の中心線11yの交点)にそれぞれ一致している。
図5(b)には、初期位置に移動した基板認識カメラ11の撮像視野11aの中心11cが、対象ポケット13b*のポケット中心Cpから位置ずれしている例が示されている。撮像された対象ポケット13b*のポケット撮像画像を認識処理部32(図11参照)によって認識処理することにより、ポケット中心Cpが抽出され、さらに、撮像視野11aの中心11cからのポケット中心CpのX方向、Y方向の位置ずれ量を示すポケット位置ずれ量ΔXp,ΔYpが算出される。ティーチングでは、算出されたポケット位置ずれ量ΔXp,ΔYpに基づいて、吸着ノズル8b(j)が部品Dを吸着する際の実装ヘッド8の位置が補正される。なお、図5(b)では、便宜上、対象ポケット13b*に収納される部品Dの表示が省略されている。
次に、図6を参照して、部品認識カメラ10による部品認識について説明する。実装ヘッド8による部品実装動作においては、図6(a)に示すように、吸着ノズル8b(j)によって部品Dを吸着保持した実装ヘッド8を、部品認識カメラ10の上方を所定方向に移動させるスキャン動作が行われる。これにより、吸着ノズル8b(j)に吸着保持された状態の部品Dの画像が取得される。
図6(b)に、ティーチング後に位置することが期待される正規状態の吸着ノズル8b(j)*の中心位置であるノズル中心Cn*が、部品認識画像10aの中心10cと一致するように実装ヘッド8を移動させて撮像した部品認識画像10aの一例を示す。部品認識画像10aには、X方向の中心線10xとY方向の中心線10yが重ねて表示されており、X方向の中心線10xとY方向の中心線10yの交点が部品認識画像10aの中心10cとなる。
部品認識画像10aを認識処理部32によって認識処理することにより、部品Dの中心位置である部品中心Cdが抽出され、さらに、部品認識画像10aの中心10cからの部品中心CdのX方向、Y方向、θ方向の位置ずれ量を示す吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdが算出される。吸着位置ずれは、テープフィーダ5(i)によってピッチ送りされるキャリヤテープ13(対象ポケット13b*)の停止位置のばらつき、対象ポケット13b*内の部品Dの位置や姿勢のばらつき、吸着ノズル8bが部品Dを吸着する際の吸着位置のばらつき、後述するY軸ビーム6、X軸ビーム7の熱変形に起因する実装ヘッド8の位置ずれや回転などに起因して発生する。
次に、図7を参照して、Y軸ビーム6、X軸ビーム7の熱変形に起因する実装ヘッド8の位置ずれ、回転について説明する。Y軸ビーム6、X軸ビーム7には、実装動作を連続して行う過程においてリニア駆動機構などが発熱することに起因して経時的に変形が生じる。図7は、熱変形しているX軸ビーム7がX方向に移動する実装ヘッド8に与える影響を模式的に表している。図7において、部品供給部4にはX方向にn台のテープフィーダ5(i)が並列に装着されている。X方向に延びる直線15yは、各テープフィーダ5(i)の開口部15aのY方向の中心位置を示している。
図7において、X軸ビーム7は、テープフィーダ5(n)(図面右側)からテープフィーダ5(1)(図面左側)に向かって、正規の位置から部品実装装置1の内側(基板搬送機構2側)に向かって湾曲(変形)している。そのため、X軸ビーム7に沿って実装ヘッド8と一体的に移動する(図中に白丸で模式的に示す)基板認識カメラ11の撮像視野11aの中心11cの軌跡7bも、X軸ビーム7に沿って湾曲している。
図7には、X軸ビーム7が変形していない場合に、基板認識カメラ11が図面左端のテープフィーダ5(1)、中央付近のテープフィーダ5(i)、図面右端のテープフィーダ5(n)の開口部15aを撮像するように制御されて停止した実装ヘッド8が模式的に表示してある。実装ヘッド8に装着される吸着ノズル8b(j)の位置を図中に黒丸で模式的に示し、X軸ビーム7から遠い側の4本を吸着ノズル8b(1),8b(2),8b(3),8b(4)、近い側の4本を吸着ノズル8b(5),8b(6),8b(7),8b(8)と番号を付してある。また、実装ヘッド8の中心をヘッド中心Chとして表示してある。
図7において、テープフィーダ5(i)の開口部15aを撮像する基板認識カメラ11の撮像視野11aの中心11cと開口部15aの中心との位置ずれは、テープフィーダ5(n)では小さいが、テープフィーダ5(1)に向かうに従って、X軸ビーム7の変形(湾曲)に沿うように大きくなっている。また、実装ヘッド8のθ方向の回転具合も、テープフィーダ5(1)に向かうに従って大きくなっている。
これらのずれのうち、撮像視野11aの中心11cと開口部15aの中心(ポケット中心Cp)とのずれ(ポケット位置ずれ量ΔXp、ΔYp)は、ティーチングによって補正することができる。しかしながら、基板認識カメラ11を用いたティーチングのみでは、実装ヘッド8のθ方向の回転に起因するヘッド中心Chと開口部15aの中心(ポケット中心Cp)との相対的な位置ずれ、および、各吸着ノズル8b(j)とポケット中心Cpとの相対的な位置ずれを完全に補正することはできない。
ここで、図8を参照して、実装ヘッド8のθ方向の回転の影響について説明する。図8には、破線で示す位置ずれなどがない正規状態の実装ヘッド8*と、ティーチングによってX方向、Y方向の位置ずれを補正した後の実装ヘッド8を重ねて表示している。すなわち、実装ヘッド8の基板認識カメラ11の位置が正規状態の基板認識カメラ11の位置と一致するように補正(ティーチング)してある。しかし、実装ヘッド8のθ方向の回転の影響によって、実装ヘッド8のヘッド中心Chは、ティーチング後であっても正規状態のヘッド中心Ch*とは一致せず、X方向、Y方向にヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)だけ位置ずれしている(矢印b)。
図8には、正規状態の吸着ノズル8b(8)*を、X方向、Y方向にヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)だけシフトさせた(矢印c)仮想的な吸着ノズル8b(8)@の位置が2点鎖線で表示されている。θ方向に回転した実装ヘッド8の現実の吸着ノズル8b(8)の位置は、ヘッド中心Chから吸着ノズル8b(8)までの距離に起因して、シフトさせた仮想的な吸着ノズル8b(8)@からX方向、Y方向にさらにノズル別位置ずれ量ΔX(8b(8)),ΔY(8b(8))(第2の補正値Vc2)だけ位置ずれしている。
すなわち、θ方向に回転した実装ヘッド8の吸着ノズル8b(8)の位置は、正規状態からのヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)にノズル別位置ずれ量ΔX(8b(8)),ΔY(8b(8))(第2の補正値Vc2)を加算した位置ずれ量だけ位置ずれすることなる。そのため、吸着ノズル8b(8)が部品Dを吸着する際の吸着位置を適正に補正するためには、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2を基に算出する吸着位置補正値Vcaを使用する必要がある。
次に、図9、図10を参照して、第1の補正値Vc1(ヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch))および第2の補正値Vc2(ノズル別位置ずれ量ΔX(8b(*)),ΔY(8b(*)))の算出方法の一例について説明する。この例では、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2は、部品認識カメラ10による部品認識の結果(吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθd)を用いて算出している。
吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdには、補正によって除去することができない無作為に発生するばらつきであるランダム成分と、補正によって除去することができるシステマティック成分が含まれている。ランダム成分は、テープフィーダ5(i)における対象ポケット13b*の停止位置のばらつき、対象ポケット13b*内の部品Dの位置や姿勢のばらつき、吸着ノズル8b(j)が部品Dを吸着する際の吸着位置のばらつきなどに起因する。システマティック成分は、Y軸ビーム6、X軸ビーム7の熱変形に起因する実装ヘッド8の位置ずれやθ方向の回転、吸着ノズル8b(j)の歪みなどに起因する。
システマティック成分(補正値)の算出には、吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdのうち、X方向、Y方向の位置ずれ量(以下、「位置ずれ量ΔXd,ΔYd」と称す)が使用される。システマティック成分の算出では、複数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdが収集されて、その平均がそれぞれ計算される。複数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを平均することで、ランダム成分が除去される。
第1の補正値Vc1(ヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch))の算出には、テープフィーダ5(i)毎に収集された複数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdが用いられる。図9(a)に、一のテープフィーダ5(i)(例えば、図7のテープフィーダ(1))について収集された位置ずれ量ΔXd,ΔYdの例を示す。ここでは、吸着ノズル8b(j)の吸着位置の正規位置を原点として、吸着ノズル8b(j)毎に凡例を変えた位置ずれ量ΔXd,ΔYdを重ねてX―Yグラフに表示してある。位置ずれ量ΔXd,ΔYdのX方向とY方向の平均値が、ヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)となる。
図9(b)は、位置ずれ量ΔXd,ΔYdをヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)だけシフトさせたX―Yグラフである。すなわち、第1の補正値Vc1でのみ補正した場合の、位置ずれ量ΔXd,ΔYdを表している。図9(b)に示すX方向のレンジRx1(X方向の最大値と最小値の差)、Y方向のレンジRy1(Y方向の最大値と最小値の差)には、位置ずれ量ΔXd,ΔYdのランダム成分に各吸着ノズル8b(j)のノズル別位置ずれ量ΔX(8b(j)),ΔY(8b(j))が加算されている。
第2の補正値Vc2(ノズル別位置ずれ量ΔX(8b(j)),ΔY(8b(j)))の算出には、テープフィーダ5(i)毎に収集された複数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを、さらに吸着ノズル8b(j)別に分別したデータが用いられる。図10(a)に、一のテープフィーダ5(i)について収集された位置ずれ量ΔXd,ΔYdを第1の補正値Vc1で補正した後に、吸着ノズル8b(j)別にX―Yグラフでプロットした例を示す。
図10(a)の各グラフにおいて、位置ずれ量ΔXd,ΔYdのX方向とY方向の平均値が、それぞれノズル別位置ずれ量ΔX(8b(j)),ΔY(8b(j))(第2の補正値Vc2)となる。図10(b)は、各吸着ノズル8b(j)の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを、それぞれノズル別位置ずれ量ΔX(8b(j)),ΔY(8b(j))(第2の補正値Vc2)だけシフト(補正)したX―Yグラフである。すなわち、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2に基づく吸着位置補正値Vcaによって補正した後の、位置ずれ量ΔXd,ΔYdを表している。
図10(c)は、図10(b)に示す吸着ノズル8b(j)別の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを、一つのグラフに重ねて表示している。すなわち、吸着位置補正値Vcaによって補正された、全ての吸着ノズル8b(j)の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを表している。図10(c)に示すグラフにおけるX方向のレンジRx2、Y方向のレンジRy2は、位置ずれ量ΔXd,ΔYdのランダム成分の大きさを表している。図10(c)のレンジRx2、レンジRy2は、図9(b)の第1の補正値Vc1でのみ補正された場合のレンジRx1、レンジRy1よりも小さい。すなわち、吸着ノズル8b(j)別に吸着位置補正値Vcaによって補正することによって、位置ずれ量ΔXd,ΔYdを小さくすることができる。
次に図11を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。制御部30は部品実装装置1の全体制御装置であり、記憶部31に記憶された処理プログラムを実行して、基板搬送機構2、部品供給部4、部品装着部9、入力部33、表示部34の各部を制御する。入力部33は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時に用いられる。表示部34は液晶パネルなどの表示装置であり、各種データなどを表示する。
記憶部31には、実装データ31a、ポケット位置ずれ量データ31b、吸着位置ずれ量データ31c、第1の補正値データ31d、第2の補正値データ31e、吸着位置補正値データ31fなどの部品実装作業及び吸着位置の補正に使用される各種データが記憶されている。実装データ31aは、実装される部品Dの部品種や基板3における実装点などのデータであり、生産対象の基板種ごとに記憶される。
制御部30は、内部処理機能として認識処理部32、実装制御部30a、補正値算出部30bを備えている。実装制御部30aは、吸着位置補正値データ31fに含まれる吸着位置補正値Vcaに基づいて吸着位置を補正し、基板搬送機構2、部品供給部4、部品装着部9の各部を制御することにより、部品Dを部品供給部4から取り出して基板3に装着する部品実装作業を制御する。
図11において、認識処理部32は、基板認識カメラ11によって撮像された対象ポケット13b*のポケット撮像画像を認識処理することにより、ポケット位置ずれ量ΔXp,ΔYpを算出する。算出されたポケット位置ずれ量ΔXp,ΔYpは、ポケット位置ずれ量データ31bとして記憶部31に記憶される。また、認識処理部32は、部品認識カメラ10によって撮像された部品認識画像10aを認識処理することにより、吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdを算出する。算出された吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdは、吸着位置ずれ量データ31cとして記憶部31に記憶される。
部品認識カメラ10による吸着ノズル8b(j)が吸着した部品Dの撮像は、部品装着部9が部品供給部4のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)の部品供給位置5aから部品Dを吸着して基板搬送機構2が保持する基板3に装着する1ターンの動作毎に実行されて、その都度、吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdが算出されて記憶される。すなわち、吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdは、吸着ノズル8b(j)(ノズル)により部品供給位置5aから部品Dを吸着した際の吸着位置の正規位置からの位置ずれ量であり、記憶部31は、位置ずれ量ΔXd,ΔYdを生産中に継続して記憶する位置ずれ量記憶部となる。
図11において、補正値算出部30bは、吸着位置ずれ量データ31cに記憶されている位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、吸着ノズル8b(j)によって部品Dを吸着する際の吸着位置補正値Vcaを算出する。より具体的には、補正値算出部30bは、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)毎に第1の補正値Vc1(ヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch))をそれぞれ算出する。算出された第1の補正値Vc1は、第1の補正値データ31dとして記憶部31に記憶される。
また、補正値算出部30bは、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数の吸着ノズル8b(j)(ノズル)と複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)との組み合わせ毎に第2の補正値Vc2(ノズル別位置ずれ量ΔX(8b(j)),ΔY(8b(j)))をそれぞれ算出する。算出された第2の補正値Vc2は、第2の補正値データ31eとして記憶部31に記憶される。
そして、補正値算出部30bは、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2とに基づいて、複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)のいずれか一つから、複数の吸着ノズル8b(j)(ノズル)のうちのいずれか一つにより部品Dを吸着する際の吸着位置補正値Vcaを算出する。算出された吸着位置補正値Vcaは、吸着位置補正値データ31fとして記憶部31に記憶される。
次に、図12のフローに沿って、部品実装装置1における部品実装方法について説明する。まず、実装制御部30aは部品供給部4と部品装着部9を制御して、部品装着部9が有する吸着ノズル8b(j)によりテープフィーダ5(i)が部品供給位置5aに供給する部品Dを吸着する(ST1:吸着工程)。部品装着部9は、複数の吸着ノズル8b(j)により部品供給部4の複数のテープフィーダ5(i)から部品Dを吸着する。そして、部品Dを吸着する際は、吸着位置補正値データ31fに記憶される吸着位置補正値Vcaに基づいて、部品Dを供給するテープフィーダ5(i)とその部品Dを吸着する吸着ノズル8b(j)の組合せに応じた吸着位置の補正がなされる。
次いで認識処理部32は、部品認識カメラ10によって各吸着ノズル8b(j)が吸着する部品Dを下方からそれぞれ撮像する(ST2:部品撮像工程)。次いで認識処理部32は、部品撮像工程(ST2)において撮像された部品認識画像10aを認識処理して、吸着ノズル8b(j)毎に吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdを算出する(ST3:吸着位置ずれ量算出工程)。すなわち、吸着ノズル8b(j)(ノズル)により部品供給位置5aから部品Dを吸着した際の吸着位置の正規位置からの吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθd(位置ずれ量ΔXd,ΔYd)が算出される。算出された吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdは、吸着位置ずれ量データ31cとして記憶される。
次いで実装制御部30aは部品装着部9を制御して、部品装着部9の吸着ノズル8b(j)が吸着している部品Dを基板搬送機構2が保持する基板3に装着する(ST4:部品装着工程)。その際、吸着位置ずれ量算出工程(ST3)において算出された吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdに基づいて、部品Dの装着位置が補正される。次いで補正値算出部30bは、テープフィーダ5(i)から部品Dを吸着して基板3に装着する1ターンの動作が終了したか否かを判断する(ST5)。
1ターンの動作が終了すると(ST5においてYes)、補正値算出部30bは、吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,ΔθdのうちのX方向、Y方向の位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)毎に第1の補正値Vc1をそれぞれ算出する(ST6:第1の補正値算出工程)。算出された第1の補正値Vc1は、第1の補正値データ31dとして記憶される。1ターンの動作が終了していない場合は(ST5においてNo)、第1の補正値算出工程(ST6)は実行されずに次工程(ST7)に進む。
図12において、次いで補正値算出部30bは、吸着ノズル8b(j)毎にランダム成分の除去に必要な所定数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdが集まったか否かを判断する(ST7)。所定数のデータが集まると(ST7においてYes)、補正値算出部30bは、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数の吸着ノズル8b(j)(ノズル)と複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)との組み合わせ毎に第2の補正値Vc2をそれぞれ算出する(ST8:第2の補正値算出工程)。算出された第2の補正値Vc2は、第2の補正値データ31eとして記憶される。
所定数のデータが集まっていない場合は(ST7においてNo)、第2の補正値算出工程(ST8)は実行されずに次工程(ST9)に進む。次いで補正値算出部30bは、吸着ノズル8b(j)とテープフィーダ5(i)の組合せ毎に吸着位置補正値Vcaを算出する(ST9:吸着位置補正値算出工程)。すなわち、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2とに基づいて、複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)のいずれか一つから複数の吸着ノズル8b(j)((ノズル)のうちのいずれか一つにより部品Dを吸着する際の吸着位置補正値Vcaを算出する。
このように、補正値算出部30bは、部品装着部9が複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)から部品Dを吸着して基板3へ装着する1ターンの動作毎に、第1の補正値Vc1を算出して吸着位置補正値Vcaを更新している。また、補正値算出部30bは、吸着ノズル8b(j)(ノズル)毎に所定数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdが集まる毎に、新しい第2の補正値Vc2を算出して吸着位置補正値Vcaを更新している。これにより、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに含まれるランダム成分を適正に除去することが可能となり、吸着位置補正値Vcaの算出精度を向上させることができる。
図12において、吸着位置補正値算出工程(ST9)において吸着位置補正値Vcaの算出がされると、吸着工程(ST1)に戻って次の部品装着のための部品Dの吸着が実行される。その際、新たに算出された吸着位置補正値Vcaを用いた吸着位置の補正がなされる。このように、部品実装装置1では、吸着ノズル8b(j)によってテープフィーダ5(i)から部品Dを吸着する際に、吸着ノズル8b(j)とテープフィーダ5(i)の組合せに対応する吸着位置補正値Vcaを使って吸着位置を補正している。
そして、部品認識カメラ10によって撮像された部品認識画像10aを認識処理して吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdを算出し、算出された吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdに基づいて装着位置を補正して部品Dを基板3に装着すると共に、算出された位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて吸着位置補正値Vcaを算出している。すなわち、部品Dを基板3に補正して装着するための吸着位置ずれ量ΔXd,ΔYd,Δθdのうちの、X方向とY方向の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを算出している。これにより、吸着位置補正値Vcaを算出するために、測定を追加する必要がない。
なお、部品実装装置1で生産する実装基板の基板種を変更するためにテープフィーダ5(i)を交換すると、交換したテープフィーダ5(i)の部品供給位置5aが変動する可能性があるため、改めてティーチングが行われる。その後、交換したテープフィーダ5(i)に対応する吸着位置補正値Vcaを算出するために、ランダム成分を適正に除去できるデータ数の位置ずれ量ΔXd,ΔYdを収集する必要がある。
新たな位置ずれ量ΔXd,ΔYdが収集されるまでは、経験や実績で決まる所定の吸着位置補正値Vcaを使用しても良い。また、テープフィーダ5(i)(部品供給装置)を交換した直後には、交換直前の吸着位置補正値Vcaを使用してもよい。実装ヘッド8や吸着ノズル8b(j)を交換しない場合は、ヘッド位置ずれ量ΔX(Ch),ΔY(Ch)(第1の補正値Vc1)とノズル別位置ずれ量ΔX(8b(8)),ΔY(8b(8))(第2の補正値Vc2)には変動がないことが期待される。そのため、交換直前の吸着位置補正値Vcaを使用することにより、所定の吸着位置補正値Vcaよりも、部品吸着位置を精度良く補正できることが期待できる。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装装置1は、部品供給位置5aから部品Dを供給する複数のテープフィーダ5(i)(部品供給装置)と、複数の吸着ノズル8b(j)(ノズル)を有し、複数のノズルにより複数の部品供給装置の部品供給位置5aから部品Dを吸着して基板3に装着する部品装着部9を備えている。そして、ノズルにより部品供給位置5aから部品Dを吸着した際の吸着位置の正規位置からの位置ずれ量ΔXd,ΔYdを算出し(ST3)、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数の部品供給装置毎に第1の補正値Vc1をそれぞれ算出し(ST6)、位置ずれ量ΔXd,ΔYdに基づいて、複数のノズルと複数の部品供給装置との組み合わせ毎に第2の補正値Vc2をそれぞれ算出している(ST8)。
そして、第1の補正値Vc1と第2の補正値Vc2とに基づいて、複数の部品供給装置のいずれか一つから複数のノズルのうちのいずれか一つにより部品Dを吸着する際の吸着位置補正値Vcaを算出している(ST9)。これによって、吸着ノズル8b(j)が部品Dを吸着する吸着位置の位置ずれを精度良く補正することができる。