以下、図1(a),(b)、及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る発泡用ウィジェット100について詳細に例示説明する。
なお、本明細書において上下方向とは、図1(a),(b)の上下方向を基準とし、容器の軸線Oに沿って中央筒部14が配置される側を上方、中央柱部24が配置される側を下方とする。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る発泡用ウィジェット100は、中央筒部14を有する上側チャンバ10と、中央柱部24、及びガスを噴出させる噴出孔22aを有する下側チャンバ20とを備えている。なお、上側チャンバ10と下側チャンバ20とにより、ガスを収容する収容空間S1を形成するチャンバ1が構成されている。
上側チャンバ10は、図1(a)に示すように、中空の略半球形状を有する薄肉の外郭部12を有しており、その上端部には、下方に向けて垂下する円筒状の中央筒部14が連結されている。そして、中央筒部14の内周面には、後述する中央柱部24が下方より緩合している。ここでいう緩合とは、図1(a)に示す初期状態において、中央筒部14の内周面の内径の方が中央柱部24の外周面の外径よりも大きく、中央筒部14の内周面と中央柱部24の外周面とは接触していないか、又は部材の公差等に起因して接触があるとしても上下方向に容易に摺動可能な状態をいう。そして、両者の隙間領域には、外部(飲料用容器)から収容空間S1内にガスを供給可能な吸気流路14aが形成されている。
中央筒部14の下部の内周面には、径方向内側に突出する突出部14bが設けられている。突出部14bは、収容空間S1と外部との圧力差が無い初期状態において、図1(a)に示すように中央柱部24の上部側面に形成された凹部24c内に入り込んでいる。そして、凹部24cと突出部14bとの隙間領域もまた、収容空間S1内にガスを供給可能な吸気流路14aを構成している。
外郭部12に沿う上側チャンバ10の外周端には、上下に延びる円筒形状の周壁16が形成され、その下端部には、嵌合部13が形成されている。図1(a)に示すように、嵌合部13は、外郭部12よりも厚肉に形成されており、円筒状の内周面13aと、平面状の下面13bと、内周面13aから径方向内側に突出する係合突部13c(係合部)とを有している。そして、初期状態において、内周面13aが下側チャンバ20の嵌合段部26(嵌合部)における外周面26aに嵌合すると共に、下面13bが嵌合段部26の上面26bに当接することで、上側チャンバ10は下側チャンバ20に対して位置決めされている。本実施形態において、嵌合部13の内周面13aの内径は嵌合段部26の外周面26aの外径よりもやや大きく形成されており、嵌合部13の内周面13aと嵌合段部26の外周面26aとの嵌合は、いわゆるすきま嵌めを構成している。収容空間S1内の圧力が外部より高くなると、図1(b)に示すように、内周面13aが外周面26aに対して白抜き矢印の方向に摺動することで、上側チャンバ10は下側チャンバ20に対して上方向に移動可能に構成されている。
下側チャンバ20は、図1(a)に示すように、径方向外側に向けてやや上方に傾斜する円錐の側面形状を有する外郭部22を有しており、その中央部には、上方に延びる円柱状の中央柱部24が連結されている。中央柱部24は、その上端部中心から下方に向かって有底孔24bが形成され、有底孔24bの径方向外側は、中央筒部14との間に吸気流路14aを形成する先端部24aとなっている。また、先端部24aの直下には、径方向内側に凹み上下方向に延びる凹部24cが形成されている。図1(a)に示す初期状態において、中央筒部14の突出部14bが凹部24cに入り込み、突出部14bと凹部24cの隙間領域もまた吸気流路14aを形成している。外部(飲料用容器)から吸気流路14aを通じて導入されたガスは、収容空間S1内に充填される。
なお、吸気流路14aの流路面積は、流路の断面積のうち、最小となる部分の断面積を指すものとする。図1(a)の例では、先端部24aと中央筒部14の内周面との隙間領域の断面積、及び凹部24cと突出部14bとの隙間領域の断面積のうち、いずれか小さい方の断面積が吸気流路14aの流路面積となる。
下側チャンバ20の外郭部22における中央柱部24の径方向外側には、吸気流路14aよりも小さな流路面積を有し、収容空間S1内のガスを飲料中に噴出する噴出孔22aが設けられている。噴出孔22aは、収容空間S1経由で吸気流路14aに連通している。
図1(a)に示すように、外郭部22の外周端には、上方へと延びる周壁23が連結されている。また、周壁23の上端部には、上述のように嵌合段部26が形成されている。嵌合段部26は、図1(a)に示すように、円筒面である外周面26aと、外周面26aに直交し更に径方向外側へと延びる上面26bを有している。そして、外周面26aが上側チャンバ10の内周面13aに嵌合すると共に、上面26bが上側チャンバ10の下面13bに当接することで、嵌合段部26は嵌合部13に対して位置決めされている。
なお、嵌合段部26の外周面26aにおける上下方向中央部には、嵌合部13の係合突部13cが入り込む係合凹部26d(係合部)が形成されている。
本実施形態では、図1(a)に示すように、下側チャンバ20の各部位が上側チャンバ10と比較して厚肉に形成されており、下側チャンバ20の質量が上側チャンバ10の質量より大きい。このように下側チャンバ20の質量が上側チャンバ10の質量より大きくなるように構成することで、発泡用ウィジェット100の重心位置が下側チャンバ20寄りにシフトする。これによって、発泡用ウィジェット100を飲料中に浮かべると、下側チャンバ20が下方に位置し、噴出孔22aが飲料の液面より下方に位置することになる。従って、後述するように、飲料用容器を開栓すると、常に収容空間S1内のガスが噴出孔22aを通じて飲料中に噴射される。従って、飲料を確実に発泡化することができる。
なお、本実施形態では、上側チャンバ10よりも下側チャンバ20を厚肉に形成することにより、下側チャンバ20の質量が上側チャンバ10よりも大きくなるように構成したが、この態様には限定されず、例えば、下側チャンバ20に比重が大きな材料を用いることによって、下側チャンバ20の質量が上側チャンバ10の質量より大きくなるように構成してもよい。
本実施形態において、飲料用容器内に充填される飲料としては、ビールや炭酸飲料などの泡立つ飲料が好適であるが、これに限定されるものではなく、他の様々な液体飲料を充填することができる。
また、本実施形態では、下側チャンバ20の外郭部22が、上側チャンバ10の外郭部12よりも平坦な形状となるように構成した。これによって、発泡用ウィジェット100の浮き姿勢をより安定化することができる。また、外郭部12,22を共に半球状に形成した場合と比較して、同一の収容空間S1を確保する場合の発泡用ウィジェット100の浮き上がり高さを低くすることができる。従って、発泡用ウィジェット100を飲料用容器内に収める際のヘッドスペースの高さを小さくすることができる。
なお、上側チャンバ10及び下側チャンバ20の材質としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ナイロン等の合成樹脂を用いることができるが、これらの材質に限定されるものではない。
次に、本実施形態に係る発泡用ウィジェット100によって、飲料用容器内の飲料を発泡させる手順について図2を用いて説明する。
まず、図示しない飲料用容器内に飲料を充填する際に、本実施形態の発泡用ウィジェット100を、飲料と共に飲料用容器内に投入する(図2のステップS101)。発泡用ウィジェット100は、図1(a),(b)に示すように薄肉の合成樹脂材料で形成されることで軽量化されており、飲料用容器内に投入直後の収容空間S1内には空気が充填されている。従って、発泡用ウィジェット100は十分な浮力を得て飲料の表面に浮いた状態となる。なお、下側チャンバ20は上側チャンバ10よりも質量が大きいため、発泡用ウィジェット100は、飲料の表面で、下側チャンバ20が下方に位置する姿勢を維持することができる。ここで、飲料が炭酸飲料である場合、飲料と共に二酸化炭素ガス、又は二酸化炭素ガスと液体窒素が添加される。飲料が炭酸飲料では無い場合、例えば液体窒素が添加される。飲料用容器内に飲料、発泡用ウィジェット100及びガスが投入されると、蓋体が装着される(ステップS102)。
飲料用容器を蓋体により封止すると、飲料用容器内のガスにより容器内の圧力が上昇する(ステップS103)。この飲料用容器内の圧力の上昇によって、発泡用ウィジェット100の収容空間S1内の圧力より外部(飲料用容器内)の圧力の方が高くなるため、飲料用容器内のガスが、中央筒部14の上端部から吸気流路14aを経由して収容空間S1内に導入される(ステップS104)。このとき、液体である飲料が噴出孔22aを通じて収容空間S1に入る経路も存在するが、本実施形態では、噴出孔22aの流路面積は吸気流路14aの流路面積よりも小さくなるように構成されている。また、気体である飲料用容器内のガスよりも、液体である飲料の方が流路を通過する際の流動抵抗が大きい。従って、噴出孔22aから収容空間S1内に入る飲料はごく僅かであり、収容空間S1の大部分は、飲料容器内のガスが充填される。この収容空間S1内にガスが充填される過程では、発泡用ウィジェット100の収容空間S1内の圧力は飲料用容器内の圧力を越えることはない。そして、収容空間S1内の圧力と飲料用容器内の圧力は平衡状態へと収束する(ステップS105)。
次に、飲料用容器は、消費者により開栓される(ステップS106)。これによって、飲料用容器内の圧力は一気に大気圧に開放される。このとき、収容空間S1内の圧力は飲料用容器内の圧力よりも高くなる。すなわち、チャンバ1の収容空間S1に正圧が発生している状態となる。収容空間S1内の正圧によって上側チャンバ10の外郭部12は上方に押圧されるため、上側チャンバ10の嵌合部13には、嵌合段部26に対して上方に離間する方向の力が作用する。これによって、すきま嵌めで構成された嵌合部13の内周面13aと嵌合段部26の外周面26aは互いに摺動し、図1(b)に白抜き矢印で示すように、嵌合部13が嵌合段部26に対して相対的に上方に移動する。そして、係合突部13cが係合凹部26dの上端に当接したところで位置決めされる(図1(b)の状態)。このとき、上側チャンバ10の中央筒部14も、中央柱部24に対して上方に移動し、中央筒部14の突出部14bが凹部24cの上端部を押圧する。これによって、吸気流路14aが閉塞される(ステップS107)と共に、収容空間S1内の正圧がかかったガスは、噴出孔22aから飲料内に所定の流量で噴出される(ステップS108)。なお、ここでいう所定の流量は、必ずしも一定の流量の意味ではなく、噴出孔22aの流路面積により定まる、泡の形成に適した流量である。
ガスが飲料内に噴出されると、飲料が攪拌され、飲料内に溶解していたガスも気化して、多数の微細な泡が形成される(ステップS109)。これらの泡は飲料用容器のヘッドスペースに向けて上昇し、飲料の上部に泡の層を形成する(ステップS110)。
なお、本実施形態では、突出部14bを中央筒部14側に形成し、凹部24cを中央柱部24側に形成したが、この態様には限定されない。突出部を中央柱部24側に形成すると共に凹部を中央筒部14側に形成するように構成してもよい。
また、本実施形態では、上側チャンバ10側の嵌合部13に係合突部13cを形成すると共に、下側チャンバ20側の嵌合段部26に係合凹部26dを形成するように構成したが、この態様には限定されない。上側チャンバ10側の嵌合部13に係合凹部を形成すると共に、下側チャンバ20側の嵌合段部26に係合突部を形成するように構成してもよい。
以上述べたように、本実施形態では、ガスの収容空間S1を形成するチャンバ1と、チャンバ1の下部に形成された噴出孔22aとを備え、チャンバ1内の正圧によって、中央筒部14が中央柱部24に対して上方に移動することで、中央柱部24の外周面の一部(凹部24cの上端部)に中央筒部14の内周面の一部(突出部14b)が当接して吸気流路14aが閉塞されるように構成した。これによって、飲料用容器を開栓するだけで、飲料をグラス等に注がなくても飲料内に泡を発生させることができる。また、飲料をグラス等に注いだときには、樽から注ぎ出したのと同様な外観の泡を形成することができる。特に、本実施形態では、噴出孔22a側に弁を設けず、噴出孔22aの流路面積が吸気流路14aの流路面積よりも小さくなるように構成した。従って、噴出孔22a側に弁を設けた場合のように、飲料用容器の開栓時に弁の開放により収容空間S1内のガスが一気に噴出してしまうことがない。よって、噴出孔22aの流路面積に対応した、泡の発生に適した流量でガスを噴出させることができる。
また、本実施形態では、チャンバ1が、中央筒部14を有する上側チャンバ10と、中央柱部24を有する下側チャンバ20とを備えるように構成した。これによって、チャンバ1の設計の自由度が高まり、チャンバ1の重心位置や、吸気流路14a及び噴出孔22aの形状、配置等を任意に設定することができる。
また、本実施形態では、中央柱部24の外周面に、吸気流路14aを形成する、凹部24cを形成するように構成した。これによって、可動弁体を設けなくても、収容空間S1内の圧力変動による上側チャンバ10の移動によって、吸気流路14aの開閉を行うことができる。
また、本実施形態では、中央筒部14の内周面に、対向する中央柱部24の外周面に当接して吸気流路14aを閉塞する突出部14bが形成されるように構成した。これによって、チャンバ1の収容空間S1内に正圧が生じた時に、吸気流路14aを確実に閉塞して収容空間S1内のガスを噴出孔22aから噴出させることができる。
また、本実施形態では、上側チャンバ10及び下側チャンバ20は、各々の外郭部12,22において互いに摺動可能に嵌合する一対の嵌合部(嵌合部13及び嵌合段部26)を有し、チャンバ1内の正圧によって上側チャンバ10側の嵌合部13が、下側チャンバ20側の嵌合段部26に対して上方に移動することで、中央筒部14が中央柱部24に対して上方に移動するように構成した。これによって、一対の嵌合部の他に可動部を設けることなく、収容空間S1内の圧力変動によって吸気流路14aの開閉を行うことができる。従って、部品点数を削減し、発泡用ウィジェット100を安価に提供することができる。
また、本実施形態では、一対の嵌合部が、上側チャンバ10の上方への移動を規制する係合部(係合突部13c及び係合凹部26d)を有するように構成した。これによって、収容空間S1内の正圧によって一対の嵌合部が制限無く摺動して、一方が他方から脱落するのを抑制することができる。
次に、図3(a)〜(c)を参照して、本発明の第2実施形態に係る発泡用ウィジェット200について詳細に例示説明する。
図3(a)に示すように、本実施形態に係る発泡用ウィジェット200は、中央筒部44を有する上側チャンバ40と、中央柱部54、及びガスを噴出させる噴出孔52aを有する下側チャンバ50とを備えている。なお、上側チャンバ40と下側チャンバ50とにより、ガスを収容する収容空間S2を形成するチャンバ31が構成されている。
上側チャンバ40は、図3(a)に示すように、中空の略半球形状を有する薄肉の外郭部42を有しており、その上端部には、下方に向けて垂下する円筒状の中央筒部44が連結されている。そして、中央筒部44の内周面には、後述する中央柱部54が下方より嵌合している。
中央筒部44の下部の内周面には、径方向内側に突出する突出部44bが設けられている。突出部44bは、収容空間S2と外部との圧力差が無い初期状態において、図3(b)に示すように中央柱部54の側面に形成された凹部54c内に入り込んでいる。そして、凹部54cと突出部44bとの隙間領域は、収容空間S2内にガスを供給可能な吸気流路44aを構成している。
外郭部42に沿う上側チャンバ40の外周端には、上下に延びる円筒形状の周壁46が形成され、その下端部には、嵌合部43が形成されている。図3(a)に示すように、嵌合部43は、外郭部42よりも厚肉に形成されており、円筒状の内周面43aと、平面状の下面43bと、内周面43aから径方向内側に突出する係合突部43c(係合部)とを有している。そして、初期状態において、内周面43aが下側チャンバ50の嵌合段部56(嵌合部)における外周面56aに嵌合すると共に、下面43bが嵌合段部56の上面56bに当接することで、上側チャンバ40は下側チャンバ50に対して位置決めされている。本実施形態において、嵌合部43の内周面43aの内径は嵌合段部56の外周面56aの外径よりもやや大きく形成されており、嵌合部43の内周面43aと嵌合段部56の外周面56aとの嵌合は、いわゆるすきま嵌めを構成している。収容空間S2内の圧力が外部より高くなると、図3(c)に示すように、内周面43aが外周面56aに対して白抜き矢印の方向に摺動することで、上側チャンバ40は下側チャンバ50に対して上方向に移動可能に構成されている。
下側チャンバ50は、図3(a)に示すように、径方向外側に向けてやや上方に傾斜する円錐の側面形状を有する外郭部52を有しており、その中央部には、上方に延びる円柱状の中央柱部54が連結されている。中央柱部54は、その上端部が略円錐形状を有している。また、中央柱部54の側面における、突出部44bと対向する位置には、径方向内側に凹み上下方向に延びる凹部54cが形成されている(図3(b)参照)。図3(a)に示す初期状態において、中央筒部44の突出部44bが凹部54cに入り込み、突出部44bと凹部54cの隙間領域は、図3(b)に詳細に示すように吸気流路44aを形成している。外部(飲料用容器)から吸気流路44aを通じて導入されたガスは、収容空間S2内に充填される。
なお、吸気流路44aの流路面積は、流路の断面積のうち、最小となる部分の断面積を指すものとする。
下側チャンバ50の外郭部52における中央柱部54の径方向外側には、吸気流路44aよりも小さな流路面積を有し、収容空間S2内のガスを飲料中に噴出する噴出孔52aが設けられている。噴出孔52aは、収容空間S2経由で吸気流路44aに連通している。
図3(a)に示すように、外郭部52の外周端には、上方へと延びる周壁53が連結されている。また、周壁53の上端部には、上述のように嵌合段部56が形成されている。嵌合段部56は、図3(a)に示すように、円筒面である外周面56aと、外周面56aに直交し更に径方向外側へと延びる上面56bを有している。そして、外周面56aが上側チャンバ40の内周面43aに嵌合すると共に、上面56bが上側チャンバ40の下面43bに当接することで、嵌合段部56は嵌合部43に対して位置決めされている。
なお、嵌合段部56の外周面56aにおける上下方向中央部には、嵌合部43の係合突部43cが入り込む係合凹部56d(係合部)が形成されている。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、図3(a)に示すように、下側チャンバ50の各部位が上側チャンバ40と比較して厚肉に形成されており、下側チャンバ50の質量が上側チャンバ40の質量より大きい。このように下側チャンバ50の質量が上側チャンバ40の質量より大きくなるように構成することで、発泡用ウィジェット200を飲料中に浮かべると、噴出孔52aが飲料の液面より下方に位置することになる。従って、飲料用容器を開栓すると、常に収容空間S2内のガスが噴出孔52aを通じて飲料中に噴射され、飲料を確実に発泡化することができる。
また、飲料用容器内に充填される飲料としては、第1実施形態と同様に、ビールや炭酸飲料などの泡立つ飲料が好適である。また、本実施形態においても下側チャンバ50の外郭部52が、上側チャンバ40の外郭部42よりも平坦な形状となるように構成することによって、発泡用ウィジェット200を飲料用容器内に収める際のヘッドスペースの高さを小さくすることができる。
本実施形態に係る発泡用ウィジェット200によって、飲料用容器内の飲料を発泡させる手順については、図2のステップS104及びS107を除いて第1実施形態と近似している。従って、ここでは、第1実施形態との差異点と中心に説明する。
飲料用容器への蓋体の装着(図2のステップS102)により飲料用容器内の圧力が上昇すると(ステップS103)、発泡用ウィジェット200の収容空間S2内の圧力より外部(飲料用容器内)の圧力の方が高くなるため、飲料用容器内のガスが、中央筒部44の上端部から吸気流路44aを経由して収容空間S2内に導入される(ステップS104)。このとき、液体である飲料が噴出孔52aを通じて収容空間S2に入る経路も存在するが、本実施形態では、噴出孔52aの流路面積は吸気流路44aの流路面積よりも小さくなるように構成されている。また、気体である飲料用容器内のガスよりも、液体である飲料の方が流路を通過する際の流動抵抗が大きい。従って、噴出孔52aから収容空間S2内に入る飲料はごく僅かであり、収容空間S2の大部分は、飲料容器内のガスが充填される。
飲料用容器が消費者により開栓されると(ステップS106)、飲料用容器内の圧力は一気に大気圧に開放される。このとき、収容空間S2内の圧力は飲料用容器内の圧力よりも高くなり、チャンバ31の収容空間S2に正圧が発生している状態となる。収容空間S2内の正圧によって上側チャンバ40の外郭部42は上方に押圧されるため、図3(c)に白抜き矢印で示すように、嵌合部43が嵌合段部56に対して相対的に上方に移動する。そして、係合突部43cが係合凹部56dの上端に当接したところで位置決めされる(図3(c)の状態)。このとき、上側チャンバ40の中央筒部44も、中央柱部54に対して上方に移動し、中央筒部44の突出部44bが凹部54cの上方における中央柱部54の側面に当接する(図3(c)参照)。これによって、吸気流路44aが閉塞される(ステップS107)と共に、収容空間S2内の正圧がかかったガスは、噴出孔52aから飲料内に所定の流量で噴出される(ステップS108)。なお、突出部44bと中央柱部54の側面との嵌合は、中央柱部54の側面の直径よりも突出部44bの内周面の直径の方が大きく、小さい摺動抵抗で互いに上下に摺動可能なすきま嵌めで構成されている。従って、図3(c)の状態において、突出部44bと中央柱部54の側面との間のごく僅かな隙間からガスが漏出する可能性はあるものの、収容空間S2内の殆ど全てのガスが、噴出孔52aから飲料内に噴出される。
なお、本実施形態では、突出部44bを中央筒部44側に形成し、凹部54cを中央柱部54側に形成したが、この態様には限定されない。突出部を中央柱部54側に形成すると共に凹部を中央筒部44側に形成するように構成してもよい。
次に、図4(a)、(b)を参照して、本発明の第3実施形態に係る発泡用ウィジェット300について詳細に例示説明する。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る発泡用ウィジェット300は、中央筒部74を有する上側チャンバ70と、中央柱部84、及びガスを噴出させる噴出孔82aを有する下側チャンバ80とを備えている。なお、上側チャンバ70と下側チャンバ80とにより、ガスを収容する収容空間S3を形成するチャンバ61が構成されている。
上側チャンバ70は、図4(a)に示すように、径方向外側に向かって下方に階段状に傾斜する薄肉の外郭部72を有しており、その上端部には、下方に向けて垂下する円筒状の中央筒部74が連結されている。そして、中央筒部74の内周面には、後述する中央柱部84が下方より緩合している。ここでいう緩合とは、図4(a)に示す初期状態において、中央筒部74の内周面の内径の方が中央柱部84の外周面の外径よりも大きく、中央筒部74の内周面と中央柱部84の外周面とは接触していないか、又は部材の公差等に起因して接触があるとしても上下方向に容易に摺動可能な状態をいう。そして、両者の隙間領域には、外部(飲料用容器)から収容空間S3内にガスを供給可能な吸気流路74aが形成されている。
外郭部72は、収容空間S3内外の圧力差によって容易に変形可能である。例えば、収容空間S3内に正圧が発生すると、嵌合部73を基準として、外郭部72は径方向内側ほど上方に大きく変位する。これによって、中央筒部74は中央柱部84に対して上方に移動可能である。
中央筒部74の下部の内周面には、径方向内側に突出する突出部74bが設けられている。突出部74bは、収容空間S3と外部との圧力差が無い初期状態において、図4(a)に示すように中央柱部84の上部側面に形成された凹部84c内に入り込んでいる。そして、凹部84cと突出部74bとの隙間領域もまた、収容空間S3内にガスを供給可能な吸気流路74aを構成している。
外郭部72に沿う上側チャンバ70の外周端には、上下に延びる円筒形状の周壁76が形成され、その下端部には、嵌合部73が形成されている。図4(a)に示すように、嵌合部73は、外郭部72よりも厚肉に形成されており、円筒状の内周面73aと、平面状の下面73bと、内周面73aから径方向内側に突出する係合突部73c(係合部)とを有している。そして、内周面73aが下側チャンバ80の嵌合段部86(嵌合部)における外周面86aに嵌合すると共に、下面73bが嵌合段部86の上面86bに当接することで、上側チャンバ70は下側チャンバ80に対して固定されている。本実施形態において、嵌合部73の内周面73aの内径は嵌合段部86の外周面86aの外径よりもやや小さく形成されており、嵌合部73の内周面73aと嵌合段部86の外周面86aとの嵌合は、いわゆる締り嵌めを構成している。また、上側チャンバ70の係合突部73cは下側チャンバ80の係合凹部86d(係合部)の上端部にアンダーカット係合している。これらの構成によって、上側チャンバ70は下側チャンバ80に対して強固に固定されている。
下側チャンバ80は、図4(a)に示すように、径方向外側に向けてやや上方に傾斜する円錐の側面形状を有する外郭部82を有しており、その中央部には、上方に延びる円柱状の中央柱部84が連結されている。中央柱部84は、その上端部中心から下方に向かって有底孔84bが形成され、有底孔84bの径方向外側は、中央筒部74との間に吸気流路74aを形成する先端部84aとなっている。また、先端部84aの直下には、径方向内側に凹み上下方向に延びる凹部84cが形成されている。図4(a)に示す初期状態において、中央筒部74の突出部74bが凹部84cに入り込み、突出部74bと凹部84cの隙間領域もまた吸気流路74aを形成している。外部(飲料用容器)から吸気流路74aを通じて導入されたガスは、収容空間S3内に充填される。
なお、吸気流路74aの流路面積は、流路の断面積のうち、最小となる部分の断面積を指すものとする。図4(a)の例では、先端部84aと中央筒部74の内周面との隙間領域の断面積、及び凹部84cと突出部74bとの隙間領域の断面積のうち、いずれか小さい方の断面積が吸気流路74aの流路面積となる。
下側チャンバ80の外郭部82における中央柱部84の径方向外側には、吸気流路74aよりも小さな流路面積を有し、収容空間S3内のガスを飲料中に噴出する噴出孔82aが設けられている。噴出孔82aは、収容空間S3経由で吸気流路74aに連通している。
図4(a)に示すように、外郭部82の外周端には、上方へと延びる周壁83が連結されている。また、周壁83の上端部には、上述のように嵌合段部86が形成されている。嵌合段部86は、図4(a)に示すように、円筒面である外周面86aと、外周面86aに直交し更に径方向外側へと延びる上面86bを有している。そして、上述のように、外周面86aが上側チャンバ70の内周面73aに嵌合すると共に、上面86bが上側チャンバ70の下面73bに当接し、更に上側チャンバ70の係合突部73cが下側チャンバ80の係合凹部86dの上端部にアンダーカット係合することで嵌合段部86は嵌合部73に対して強固に固定されている。
なお、本実施形態では、外周面86aと内周面73aとが締り嵌めにより固定されるように構成したが、この態様には限定されない。例えば、上側チャンバ70と下側チャンバ80とが、ホットプレートによる溶着又は超音波による溶着によって互いに接合されるように構成してもよい。また、チャンバ61は、当初から一体成形されていてもよい。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、図4(a)に示すように、下側チャンバ80の各部位が上側チャンバ70と比較して厚肉に形成されており、下側チャンバ80の質量が上側チャンバ70の質量より大きい。このように下側チャンバ80の質量が上側チャンバ70の質量より大きくなるように構成することで、発泡用ウィジェット300を飲料中に浮かべると、噴出孔82aが飲料の液面より下方に位置することになる。従って、飲料用容器を開栓すると、常に収容空間S3内のガスが噴出孔82aを通じて飲料中に噴射される。従って、飲料を確実に発泡化することができる。
また、飲料用容器内に充填される飲料としては、第1実施形態と同様に、ビール等の炭酸飲料が好適である。また、本実施形態においても下側チャンバ80の外郭部82が、上側チャンバ70の外郭部72よりも平坦な形状となるように構成することによって、発泡用ウィジェット300を飲料用容器内に収める際のヘッドスペースの高さを小さくすることができる。
本実施形態に係る発泡用ウィジェット300によって、飲料用容器内の飲料を発泡させる手順については、図2のステップS104及びS107を除いて第1実施形態と近似している。従って、ここでは、第1実施形態との差異点と中心に説明する。
飲料用容器への蓋体の装着(図2のステップS102)により飲料用容器内の圧力が上昇すると(ステップS103)、発泡用ウィジェット300の収容空間S3内の圧力より外部(飲料用容器内)の圧力の方が高くなるため、飲料用容器内のガスが、中央筒部74の上端部から吸気流路74aを経由して収容空間S3内に導入される(ステップS104)。このとき、液体である飲料が噴出孔82aを通じて収容空間S3に入る経路も存在するが、本実施形態では、噴出孔82aの流路面積は吸気流路74aの流路面積よりも小さくなるように構成されている。また、気体である飲料用容器内のガスよりも、液体である飲料の方が流路を通過する際の流動抵抗が大きい。従って、噴出孔82aから収容空間S3内に入る飲料はごく僅かであり、収容空間S3の大部分は、飲料容器内のガスが充填される。
飲料用容器が消費者により開栓されると(ステップS106)、飲料用容器内の圧力は一気に大気圧に開放される。このとき、収容空間S3内の圧力は飲料用容器内の圧力よりも高くなり、チャンバ61の収容空間S3に正圧が発生している状態となる。収容空間S3内の正圧によって上側チャンバ70の外郭部72は上方に押圧されるが、上述のように嵌合部73は下側チャンバ80に対して強固に固定されている。そのため、図4(b)に白抜き矢印で示すように、外郭部72の弾性変形によって外郭部72の径方向内側部分が上方に移動する。これによって、上側チャンバ70の中央筒部74も、中央柱部84に対して上方に移動し、中央筒部74の突出部74bが凹部84cの上端部を押圧する。これによって、吸気流路74aが閉塞される(ステップS107)と共に、収容空間S3内の正圧がかかったガスは、噴出孔82aから飲料内に所定の流量で噴出される(ステップS108)。
以上述べたように、本実施形態では、チャンバ61内の正圧によって、チャンバ61の上方の外郭部72が上方に弾性変形することで、中央筒部74が中央柱部84に対して上方に移動するように構成した。これによって、発泡用ウィジェット300の摺動部を減らすことができるので、発泡用ウィジェット300の動作時の信頼性を高めることができる。
また、本実施形態では、チャンバ61の上方の外郭部72が、径方向外側に向かって下方に階段状に傾斜するように構成した。これによって、外郭部72に所定の剛性を確保しつつ、各階段状の部分の角度が開くことで中央筒部74に連なる径方向内側部分を上方向に移動し易くすることができる。従って、外郭部72に過大な応力を発生させることなく、中央筒部74を上方に変位させて吸気流路74aを閉塞することができる。
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。