JP6846992B2 - ドリルねじの施工方法 - Google Patents
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Description
ところが、下穴を設けることなくドリルねじを締結する場合には、削孔から締付完了までに時間がかかってしまう。また、締付に必要なトルクの大きさは、ドリルねじの形状(ねじ山の間隔や勾配等)、鋼板の厚さ、削孔時に生じるバリによる摩擦によって変動する。そのため、ドリルねじの施工では、インパクトドライバを用いて高トルクで作業する場合がある。
インパクトドライバ等の電動ドライバを用いたドリルねじの締結作業は、基板に衝撃を与えながら削孔を行うため、トルク管理が難く、締付トルクがドリルねじの適正トルク値よりも大きく上回ることから、ドリルねじ頭のねじ切れや基板のねじ孔の損傷によるねじの空転が発生する場合がある。このように、電動ドライバを用いたドリルねじの締結作業には、経験と技術が必要となる。一方、経験や技術は現場で評価し、客観的に施工管理することが困難であるため、施工品質のばらつきにより、ドリルねじの緩みや破断が確認されている。そのため、電動ドライバを用いたドリルねじの施工では、設計で必要とされる本数よりも多めにドリルねじを締結することで、安全性の向上を図っていた。
このような観点から、本発明は、作業員の技量に関わらず、簡易かつ安価に電動ドライバを用いてドリルねじを締結することを可能としたドリルねじの施工方法を提案することを課題とする。
本実施形態では、図1に示すように、鋼板にドリルねじを締結する本施工工程S2の事前に、ドリルねじを基板に締結する際の電動ドライバの運転モードを決定する運転モード評価工程S1を実施する。本施工工程S2では、運転モード評価工程S1で決定した電動ドライバの運転モードにより、ドリルねじの締結を行う。
戻しトルクの確率分布は、戻しトルクの測定結果を用いて、運転モード毎に仮定する。このとき、ドリルねじや鋼板の破損等により、戻しトルクが測定できないドリルねじは除外し、平均値μRおよび標準偏差σRの算出に使用しない。
破壊トルクの平均値μFおよび標準偏差σFを用いて、破壊トルク判断値XFを式1により定義する。ここでαは正の値で、好ましくは2以下の値である。
XF=μF−ασF ・・・式1
戻しトルクの確率分布における破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値が0〜15%以下、好ましくは5%以下となる運転モードを選択する。ここで「15%」は、戻しトルクの確率分布において、トルク値が平均値μRと標準偏差σRの和以上となる確率(31.7%)を、同様に「5%」は、戻しトルクの確率分布において、トルク値が平均値μRと標準偏差σRの倍数との和以上となる確率(4.55%)を目安に設定した。
なお、運転モードを複数のモードから選択する場合には、戻しトルクの確率分布における、破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値が最小の運転モードに決定すると良い。
これに対し、ビス径:4.2mmのドリルねじを、下地材(軽量形鋼60×30×10、t=2.3mm)に締結する場合の引抜保持力(鉄板にドリルねじを打ち込み、ドリルねじが鋼板から抜けるまでの荷重値)は4.46kNである。このとき、安全率を5倍とした場合のドリルねじの引抜許容耐力は4.46/5=892N(>P=405N(約2.2倍))となる。すなわち、ドリルねじの2本中1本に不具合が生じたとしても、風荷重に対して安全性を確保することができる。
以上のように、締結性能評価において、戻しトルクの確率分布における、破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値が15%以下とした場合、6本中1本(5%以下とした場合は20本中1本)が不良となる可能性があるが、前記の通り、安全性を確保することができる。よって、本発明のドリルねじの施工方法によれば、より安全な施工を行うための工具とドリルねじとの組み合わせを判定することができる。
本実施例では、まず、某社のドリルねじ(M4)の破壊トルクをPCトルクアナライザーにより測定した(破壊トルク測定作業S11)。PCトルクアナライザーは、ねじを一定の回転数にて施工し、その過程のトルク値を測定する測定装置である。この測定結果より破壊トルクの平均値μFおよび標準偏差σFを算出し、破壊トルクの確率分布をその平均値μFおよび標準偏差σFからなる正規分布と仮定した(破壊トルク確率分布仮定作業S12)。
ここで、破壊トルク判断値XFの算定におけるα値はα=2と設定した。
中モードでは、戻しトルクの確率分布における破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値(面積A1)が13%程度となった(図2(a))。一方、弱モードでは、戻しトルクの確率分布における破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値(面積A2)が0%程度であった(図2(b))。さらに、Pモードでは、戻しトルクの確率分布における破壊トルク判断値XF以下となる領域の積分値(面積A3)が27%程度となった(図2(c))。
この結果から、マキタ社製インパクトドライバを用いて、某社ドリルねじ(M4)を厚さt=1.6mmの鋼板に対して締結する際の運転モードは、弱モードが最適であると評価される。したがって、本施工工程S2におけるドリルねじ締結の運転モードは弱モードに決定できる。
前記実施形態では、電動ドライバの複数の運転モードに対して、それぞれ締結性能を確認する場合について説明したが、締結性能の確認は、所定の運転モードに対して行えばよく、必ずしも複数の運転モードに対して行う必要はない。
また、締結性能評価・モード決定作業S15における締結性能の評価基準は、前記実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、破壊トルクと戻しトルクの確率分布から両者の差の確率分布を仮定し、0以下となる領域の積分値により評価してもよい。
前記実施形態では、α=2の場合の破壊トルク判断値XFで評価を行ったが、αの値はこれに限定されるものではなく、例えばα=1であってもよい。
戻しトルクを測定する場合において試験板に締結させるドリルねじの本数は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。このとき、試験板には、各運転モードにより所定数のドリルねじを締結する。また、戻しトルクの測定個所および測定装置は限定されるものではなく、現場において実施してもよい。
S11 破壊トルク測定作業
S12 破壊トルク確率分布仮定作業
S13 戻しトルク測定作業
S14 戻しトルク確率分布仮定作業
S15 締結性能評価・モード決定作業
S2 本施工工程
31 パネル
32 ドリルねじ
Claims (5)
- 電動ドライバを用いて、ドリルねじを基板に締結するドリルねじの施工方法であって、
前記ドリルねじを前記基板に締結する際の前記電動ドライバの運転モードを事前に決定する運転モード評価工程を備えており、
前記運転モード評価工程では、
前記ドリルねじの破壊トルクを測定する作業と、
前記基板と同種の試験板に対して、前記電動ドライバの所定の運転モードにより締結させた複数のドリルねじの戻しトルクを測定する作業と、
前記破壊トルクの確率分布を仮定する作業と、
前記戻しトルクの確率分布を仮定する作業と、
前記破壊トルクの確率分布と前記戻しトルクの確率分布との関係から前記所定の運転モードによる締結性能を評価し、前記ドリルねじ締結時の運転モードを決定する作業と、
を行うことを特徴とする、ドリルねじの施工方法。 - 前記電動ドライバの複数の運転モードに対して前記締結性能の評価をそれぞれ行い、各運転モードによる締結性能の評価結果に基づいて最適の運転モードを決定することを特徴とする、請求項1に記載のドリルねじの施工方法。
- 前記破壊トルクの平均値μFおよび標準偏差σFを用いた式1により算出した破壊トルク判断値XFと、前記戻しトルクの確率分布との比較により締結性能を評価することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のドリルねじの施工方法。
XF=μF−ασF ・・・式1
ここで、αは正の値である。 - 前記戻しトルクの確率分布における前記破壊トルク判断値XF以上となる領域の積分値が0〜15%以下となる運転モードに決定することを特徴とする、請求項3に記載のドリルねじの施工方法。
- 前記電動ドライバが、インパクトドライバであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のドリルねじの施工方法。
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