本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と、第1の変形例ないし第4の変形例とについて説明するが、そのうち、第2の実施の形態と第3の変形例が、特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態に係る油圧式掘削作業機械として、リールドラムに巻回されたワイヤロープの先端にクラムシェルバケットが取付けられているフロント装置を備えた油圧式掘削作業機械を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
また、本実施の形態では、油圧式掘削作業機械によって縦穴の深い場所にある掘削対象物としての土砂を掘削する場合を例示している。油圧式掘削作業機械は、油圧ショベルをベースとし、フロント装置の先端に縦穴掘削用のアタッチメントを備えている。
図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。油圧式掘削作業機械1は、自走が可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2の上側に旋回が可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられ俯仰の動作が可能な後述のフロント装置7とにより構成されている。
上部旋回体3は、メインの支持構造体を形成する旋回フレーム4と、旋回フレーム4の後部に設けられ、フロント装置7との重量バランスをとるカウンタウエイト5と、旋回フレーム4の左前部に設けられ、オペレータが搭乗するキャブ6とを備えている。キャブ6の内部には、運転席、作業用の操作レバー、走行用の操作レバー・ペダルが配設されている。
フロント装置7は、後述する縦穴26(立抗)の深い場所にある掘削対象物としての土砂26Aを掘削するものである。この縦穴掘削用のフロント装置7は、例えば、既存のブーム8、アーム9、ブームシリンダ10、アームシリンダ11を利用し、ホウバケットに換えてバケット昇降装置12とクラムシェルバケット13とを取付けることにより構成されている。このフロント装置7は、後述のブーム8、アーム9、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケット昇降装置12およびクラムシェルバケット13を備えている。
クラムシェルバケット13を含むフロント装置7の重量は、それを支える下部走行体2および上部旋回体3の重量とのバランスで制限される。一般の道路を移送される油圧ショベルは、大きさ、重量が制限されるので、フロント装置7の重量は、このことを考慮した重量になっている。
ブーム8は、基端側のフート部が上部旋回体3の旋回フレーム4の前側に俯仰の動作が可能に取付けられている。アーム9は、基端側がブーム8の先端側に回動が可能に取付けられている。ブームシリンダ10は、旋回フレーム4とブーム8との間に設けられ、上部旋回体3に対してブーム8を俯仰の動作をさせるものである。アームシリンダ11は、ブーム8とアーム9との間に設けられ、ブーム8の先端側でアーム9を回動させるものである。
バケット昇降装置12は、クラムシェルバケット13を吊下げた状態で上,下方向に移動(昇降)するものである。バケット昇降装置12は、アーム9の先端部に取付けられ、油圧モータによって回転駆動されるワイヤ用リールドラム12Aと、ワイヤ用リールドラム12Aに巻回されたワイヤロープ12Bと、油圧ホース用リールドラム(図示せず)と、油圧ホース用リールドラムに巻回された油圧ホース12Cとにより構成されている。
ワイヤ用リールドラム12Aと油圧ホース用リールドラムとは、例えば油圧モータ(図示せず)によって回転駆動され、ワイヤロープ12Bと油圧ホース12Cとの巻取り、巻出しが同調するように制御されている。
そして、ワイヤロープ12Bの先端には、後述するクラムシェルバケット13のバケット支持部材14が取付けられている。また、油圧ホース12Cの先端は、後述するクラムシェルバケット13のアクチュエータ18に接続されている。
次に、本発明の特徴部分を備えたクラムシェルバケット13の構成について詳しく述べる。
クラムシェルバケット13は、シェルプッシュ方式のバケットとして構成され、バケット昇降装置12を構成するワイヤロープ12Bの先端に吊下げられている。図2ないし図4に示すように、クラムシェルバケット13は、後述のバケット支持部材14、各バケット15,16、アクチュエータ18およびアンカ20により構成されている。本実施の形態のクラムシェルバケット13は、アンカ20の槍先部材25に引っ掛かり部25Bを設けたことにより、重量を増大することなく、1回の掘削動作で取り込むことができる土砂26Aの量、即ち、掘削量が増大されている。
バケット支持部材14は、クラムシェルバケット13の芯となる構造体である。バケット支持部材14は、上,下方向に延びる円柱体からなるロッド部14Aと、ロッド部14Aの下端部に直交して延びるように設けられた横梁部14Bとにより逆T字状の構造体として形成されている。
ロッド部14Aは、後述するアクチュエータ18のロッドを兼ねるもので、長さ方向の途中には、アクチュエータ18のピストン18C(図2参照)が一体的に取付けられている。ロッド部14Aの外周側には、ピストン18Cを取囲むように、アクチュエータ18のチューブ18Aが上,下方向に移動可能に設けられている。また、ロッド部14Aの上部には、バケット昇降装置12のワイヤロープ12Bが取付けられるワイヤ取付部14Cが設けられている。
一方、図4、図5に示すように、例えば、横梁部14Bは、横方向に延びる角筒体として形成され、その両端部には、長さ方向と直交する横方向に離間して2個のバケット取付部14Dがそれぞれ設けられている。各バケット取付部14Dには、連結ピン17を用いて各バケット15,16の連結部15D,16Dが回動が可能に連結されている。
さらに、横梁部14Bには、長さ方向の中間部、詳しくは、ロッド部14Aと上,下方向の反対側となる下面に位置し、2枚を1組として2組のアンカ取付板14Eが設けられている。各アンカ取付板14Eは、横梁部14Bの長さ方向と直交しつつ、下向きに延びた板体からなり、例えば、上縁部が溶接手段を用いて横梁部14Bに固着されている。
また、各アンカ取付板14Eの長さ方向に離間した位置には、ボルト挿通孔14E1が横梁部14Bの長さ方向に貫通してそれぞれ設けられている(それぞれ1個のみ図示)。各ボルト挿通孔14E1は、後述のアンカ20を構成する取付部材21の各ボルト挿通孔21Cに対応して配置されている。
一対のバケット15,16は、バケット支持部材14の横梁部14Bを挟んで対称に配置されている。バケット15は、外周側が円弧をなす扇状の板体からなり、横梁部14Bの長さ方向で対面した一対の側面板15Aと、各側面板15Aの外周側に固着された長方形状の湾曲板からなる底面板15Bとを備えている。
ここで、図3に示すように、バケット15の各側面板15Aには、開口15Cが対向した状態で当該開口15Cの上側に位置して連結部15Dが設けられている。この連結部15Dは、バケット支持部材14(横梁部14B)に対する回動支点となるもので、連結ピン17を用いてバケット支持部材14のバケット取付部14Dに上,下方向に回動(開閉)が可能に取付けられている。
また、各側面板15Aには、開口15Cと反対側で、連結部15Dと底面板15Bとの間に位置してリンク取付部15Eがそれぞれ設けられている。このリンク取付部15Eには、後述するリンク19の下側部位が連結ピン17を用いて回動が可能に取付けられている。さらに、図4に示すように、開口15Cとなる底面板15Bの先端側には、横梁部14Bの長さ方向に間隔をもって3個の掘削爪15Fが取付けられている。
一方、バケット16は、掘削爪16Fの本数を除き、バケット15と横梁部14Bを挟んで対称形状となっている。即ち、バケット16は、側面板16A、底面板16B、開口16C、連結部16D、リンク取付部16Eと2本の掘削爪16Fとにより構成されている。バケット16は、連結部16Dが連結ピン17を用いてバケット支持部材14のバケット取付部14Dに上,下方向に回動(開閉)が可能に取付けられている。
アクチュエータ18は、バケット支持部材14と一対のバケット15,16との間に設けられた両ロッド式の油圧シリンダとして構成されている。アクチュエータ18は、各バケット15,16を上側に回動して開口15C,16Cが互いに離間した開位置(図2の位置)と、各バケット15,16を下側に回動して開口15C,16Cが互いに接近した閉位置(図3の位置)との間で開閉するものである。
アクチュエータ18は、前述したバケット支持部材14のロッド部14Aと、ロッド部14Aの外周側に上,下方向に移動可能に設けられた円筒状のチューブ18Aと、チューブ18A内に上側油室と下側油室とを画成するようにロッド部14Aに一体的に取付けられたピストン18Cと、上側油室に連通するようにロッド部14Aに設けられた油路18Dと、下側油室に連通するようにロッド部14Aに設けられた油路18Eとにより構成されている。各油路18D,18Eには、バケット昇降装置12の油圧ホース12C(図1参照)が接続されている。
アクチュエータ18には、チューブ18Aの上側位置から径方向に突出するように、リンク取付ブラケット18Bが対称的に設けられている。そして、バケット支持部材14には、各油路18D,18Eに接続された油圧ホース12Cから各油室に作動油(圧油)が給排される。これにより、アクチュエータ18は、バケット支持部材14のロッド部14Aに対してチューブ18Aを上,下方向に移動することができる。
リンク19は、各バケット15,16とアクチュエータ18との間にそれぞれ設けられている。例えば、リンク19は、チューブ18A側(上側)が狭幅となり、バケット15,16側(下側)が広幅となる三角形状の構造体として形成されている。各リンク19は、上側部位がアクチュエータ18のリンク取付ブラケット18Bに連結ピン17を用いて回動が可能に連結されている。一方、各リンク19の下側部位は、バケット15,16の一対のリンク取付部15E,16Eに連結ピン17を用いて回動が可能に連結されている。
従って、アクチュエータ18のチューブ18Aをロッド部14Aに沿って上側に移動させたときには、各リンク19は、各バケット15,16を図2に示す開位置に向けて回動させることができる。一方、チューブ18Aを下側に移動させたときには、各リンク19は、各バケット15,16を図3に示す閉位置に向けて回動させることができる。
次に、本発明の特徴部分となる杭棒としてのアンカ20の構成および掘削作業時の機能について、図5ないし図8を参照して説明する。アンカ20は、地面26Bに差し込まれる下端側に設けられた槍先部材25により、引き抜き方向に対する抵抗力を大きくする機能(アンカ機能)を有している。
アンカ20は、縦穴26の土砂26Aを掘削するために、クラムシェルバケット13が地面26Bに押付けられたときに、地面26B(土砂26A)に差し込まれるものである(図8参照)。アンカ20は、バケット支持部材14の横梁部14Bに下向きに延びて設けられている。そして、図6、図7に示すように、アンカ20は、後述の取付部材21、棒状体24および槍先部材25により構成されている。
アンカ20の取付部材21は、バケット支持部材14の横梁部14Bの下面と対面する矩形状の板体からなるベース板21Aと、ベース板21Aの上面から上向きに突出した板体からなる2枚のブラケット21Bと、各ブラケット21Bに板厚方向に貫通して設けられた2個のボルト挿通孔21Cとにより構成されている。ベース板21Aの下面の中央には、後述の棒状体24が一体的に取付けられている。
2枚のブラケット21Bは、それぞれバケット支持部材14の各アンカ取付板14E間に挟まれるものである。また、2個のボルト挿通孔21Cは、ブラケット21Bが各アンカ取付板14E間に挟まれた取付位置で、各アンカ取付板14Eのボルト挿通孔14E1と連通する位置に形成されている。
そして、取付部材21は、各ブラケット21Bをバケット支持部材14の各アンカ取付板14E間に配置する。この状態で、取付部材21のボルト挿通孔21Cとアンカ取付板14Eのボルト挿通孔14E1とに亘ってボルト22を挿入し、このボルト22の先端にナット23を螺着する。これにより、取付部材21は、バケット支持部材14の横梁部14Bに対し、強固かつ取付け、取外し可能に取付けることができる。
棒状体24は、取付部材21の下側に下向きに延びて設けられている。棒状体24は、上,下方向に延びる円柱体からなり、その上端が取付部材21を介して一対のバケット15,16間に位置してバケット支持部材14に設けられている。詳しくは、棒状体24の上端は、嵌合、溶接等を用いてベース板21Aの下面の中央に一体的に固着されている。また、棒状体24の上部とベース板21Aとの間には、ベース板21Aに対する棒状体24の取付強度(剛性)を高めるための補強板24Aが複数枚、例えば4枚設けられている。
さらに、棒状体24は、各バケット15,16の開位置(図2に示す位置)で、槍先部材25の引っ掛かり部25Bが各バケット15,16の開口15C,16Cよりも下側に配置されるように、長さ寸法が設定されている。即ち、棒状体24は、各バケット15,16の開口15C,16Cが地面26Bに当接する前に、後述の槍先部材25を地面26Bに深く差し込むことができる。
槍先部材25は、棒状体24の下端に一体的に設けられている。図8に示すように、槍先部材25は、各バケット15,16が開位置で、縦穴26の地面26B(土砂26A)に押付けられたときに、地面26Bに差し込まれるものである。ここで、図6、図7に示すように、槍先部材25は、下端位置で棒状体24の横断面積よりも小さい横断面積を有する尖端部25Aと、尖端部25Aよりも上側位置で棒状体24の横断面積よりも大きい横断面積を有した引っ掛かり部25Bとを備えている。この引っ掛かり部25Bは、槍先部材25を地面26Bから引き抜くときに、土砂26Aとの間で大きな抵抗力を発生するものである。
具体的には、槍先部材25は、下端の尖端部25Aが尖り、上端の引っ掛かり部25Bが棒状体24よりも大きな直径寸法をもった円形状をなし、尖端部25Aと引っ掛かり部25Bとの間が滑らかなテーパ面25Cとなっている。即ち、槍先部材25は、最大直径寸法が棒状体24の直径寸法よりも大きな円錐体として形成されている。
ここで、図2に示すように、槍先部材25の引っ掛かり部25Bは、棒状体24の長さ寸法を調整したことにより、各バケット15,16の開位置で、各バケット15,16の開口15C,16Cよりも下側に配置することができる。これにより、図1、図8に示すように、開状態のクラムシェルバケット13を地面26Bに降ろしただけで、各バケット15,16の開口15C,16Cが地面26Bに当接する前に、槍先部材25の引っ掛かり部25Bを地面26Bに深く差し込むことができる。
しかも、槍先部材25を地面26Bに深く差し込んだ状態では、アンカ20の周囲の土砂26Aが崩れ落ちて引っ掛かり部25B上に堆積する。この堆積した土砂26Aと引っ掛かり部25Bの段差をもった鉤形状とによって、引き抜きに対する抵抗力が増大する。これにより、各バケット15,16を閉じるときに上向きに作用する力に抗して、各バケット15,16の浮き上がりを抑制することができる。
一方で、図3に示すように、アンカ20は、各バケット15,16の閉位置で各バケット15,16内に収まる長さ寸法に設定されている。これにより、土砂26Aを掘削したときには、地面26Bからアンカ20を引き抜くことなく、アンカ20の周囲の土砂26Aごと容易に引き上げることができる。
図1に示すように、油圧式掘削作業機械1は、深い縦穴26を掘削する場合に用いられるものである。この深い縦穴26では、その底部に掘削対象物となる土砂26Aを有している。この土砂26Aによる上面が地面26Bとなっている。地面26Bは、平坦に図示したが、実際には多くの凹凸が存在しているのが一般的である。
本実施の形態によるクラムシェルバケット13を備えた油圧式掘削作業機械1は、上述の如き構成を有するもので、以下、深い縦穴26を掘削する作業について説明する。
まず、油圧式掘削作業機械1を深い縦穴26の近傍まで走行させた後、フロント装置7のブーム8、アーム9を前側に延ばし、掘削する位置の上方にクラムシェルバケット13を配置する。
そして、図1に示すように、各バケット15,16を開位置に保持した状態でバケット昇降装置12のワイヤロープ12Bおよび油圧ホース12Cを延ばし、縦穴26の地面26Bにクラムシェルバケット13を上方から押付ける。このときには、図8に示すように、各バケット15,16の開口15C,16Cよりも下側に延びて配置されたアンカ20の槍先部材25が地面26Bに深く差し込まれる。これにより、槍先部材25の引っ掛かり部25B上には、土砂26Aが堆積するから、この堆積した土砂26Aによって当該土砂26Aとアンカ20との引抜き抵抗が増大する。
そして、地面26Bにアンカ20を差し込んだ状態で、アクチュエータ18のチューブ18Aを下側に移動し、各バケット15,16を閉位置に回動させる。図8に示すように、各バケット15,16が矢示B方向に閉じ始めると、各バケット15,16間の土砂26Aは、矢示Cで示すように、当該各バケット15,16によってアンカ20側に押し込まれるから、引っ掛かり部25B上に堆積する土砂26Aの量が増える上に、堆積した土砂26Aが締め固められることにより、アンカ20の引抜き抵抗がさらに増大する。
これにより、槍先部材25の引っ掛かり部25Bが大きな抵抗力を発生するから、各バケット15,16は浮き上がることなく、地面26Bに深く押し入れることができ、多くの土砂26Aを取り込むことができる。
各バケット15,16によって土砂26Aを取り込んだら、バケット昇降装置12のワイヤロープ12Bおよび油圧ホース12Cを巻取り、クラムシェルバケット13を縦穴26から外れた土砂26Aの廃棄場所に移動させる。この廃棄場所では、アクチュエータ18のチューブ18Aを上側に移動し、各バケット15,16を開位置に回動させ、取り込んだ土砂26Aを排出する。
かくして、本実施の形態によれば、クラムシェルバケット13のアンカ20は、上端が一対のバケット15,16間に位置してバケット支持部材14に設けられた棒状体24と、棒状体24の下端に設けられ、各バケット15,16が開位置で地面26Bに押付けられたときに地面26Bに差し込まれる槍先部材25とを有している。
この上で、アンカ20の槍先部材25は、下端位置で棒状体24の横断面積よりも小さい横断面積を有する尖端部25Aと、尖端部25Aよりも上側位置で棒状体24の横断面積よりも大きい横断面積を有し槍先部材25を土砂26Aから引き抜くときに抵抗を与える引っ掛かり部25Bとにより構成している。
これにより、槍先部材25を地面26Bに差し込んだ状態では、アンカ20(棒状体24)の周囲の土砂26Aが崩れ落ち、段差をもった鉤形状の引っ掛かり部25B上に堆積する。しかも、各バケット15,16が閉じるときには、土砂26Aをアンカ20の周囲に押し込むと共に、引っ掛かり部25B上に堆積した土砂26Aを締め固め、アンカ20の引抜き抵抗を増大させる。
従って、各バケット15,16を閉じる方向に回動させたときには、引っ掛かり部25B上に堆積した土砂26Aと引っ掛かり部25Bの鉤形状とによって、アンカ20の引き抜きに対して大きな抵抗力を発生することができる。
この結果、縦穴26の地面26Bにアンカ20を差し込むだけで、各バケット15,16の浮き上がりに対して大きな抵抗力を得ることができる。これにより、クラムシェルバケット13による土砂26Aの掘削量を増大することができ、縦穴26の掘削効率を向上することができる。
また、アンカ20の槍先部材25は、下端が尖った尖端部25Aとなる円錐体として形成しているから、開状態のクラムシェルバケット13を地面26Bに降ろしただけで、槍先部材25の引っ掛かり部25Bを地面26Bに深く差し込むことができる。これにより、クラムシェルバケット13を高所から落下させるような技術を必要とすることなく、簡単な操作で効率のよい掘削作業を行うことができる。
アンカ20は、クラムシェルバケット13を構成するバケット支持部材14の横梁部14Bに対して取付け、取外し可能に取付けられている。従って、アンカ20が損傷した場合には、新たなアンカ20に容易に交換することができる。また、縦穴26の地面26B(土砂26A)が硬くてアンカ20が刺さり難い場合、地面26Bが軟らかくてアンカ20を必要としなう場合には、クラムシェルバケット13からアンカ20を簡単に取外すことができ、現場の状況に応じた最良の形態とすることができる。
アンカ20は、各バケット15,16の閉位置で各バケット15,16内に収まる長さ寸法に設定されている。これにより、槍先部材25の引っ掛かり部25Bによってアンカ20の引き抜きに対する抵抗力を増大させた場合でも、地面26Bからアンカ20を引き抜くことなく、アンカ20の周囲の土砂26Aごと容易に引き上げることができる。
さらに、棒状体24は、図2に示す各バケット15,16の開位置で、槍先部材25の引っ掛かり部25Bが各バケット15,16の開口15C,16Cよりも下側に配置されるように、長さ寸法を設定している。従って、槍先部材25の引っ掛かり部25Bは、各バケット15,16の開口15C,16Cが地面26Bに当接する前に、地面26Bに深く差し込むことができる。これにより、槍先部材25の引っ掛かり部25Bを、土砂26Aに確実に引っ掛けることができる。
次に、図9、図10は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、杭棒の棒状体の上端側を取囲む位置には、棒状体の周囲を下向きに延びる押圧部材が設けられ、押圧部材は、杭棒が掘削対象物に差し込まれたときに、杭棒の周囲に位置する掘削対象物を押圧して掘削対象物を槍先部材の引っ掛かり部の上側に移動する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、第2の実施の形態による杭棒としてのアンカ31は、前述した取付部材21、棒状体24、槍先部材25と後述の押圧部材32とにより構成されている。なお、第2の実施の形態では、棒状体24に補強板24Aは設けられていない。
押圧部材32は、取付部材21のベース板21Aの下面に設けられている。具体的には、押圧部材32は、アンカ31の棒状体24の上端側を取囲む位置で、棒状体24の周囲を下向きに延びる円筒体として形成されている。また、押圧部材32は、下面32Aで地面26Bを確実に押圧することができるように、径方向に十分な厚さ寸法を有している。
さらに、押圧部材32の軸方向寸法(上,下方向の長さ寸法)は、開状態の各バケット15,16の開口15C,16Cよりも押圧部材32が下側に突出する寸法に設定されている。これにより、押圧部材32は、棒状体24の周囲の土砂26Aを確実に押圧することができる。
図10に示すように、押圧部材32は、アンカ31が地面26Bに差し込まれたときに、棒状体24の周囲の土砂26Aを押圧して径方向の内側に移動させる。これにより、アンカ31を地面26Bに差し込んだときには、アンカ31の周囲に位置する土砂26Aを押圧して土砂26Aを槍先部材25の引っ掛かり部25Bの上側に移動すると共に土砂26Aを締め固めることができる。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、アンカ31の棒状体24の上端側を取囲む位置には、棒状体24の周囲を下向きに延びる押圧部材32が設けられている。これにより、アンカ31を地面26Bに差し込んだときに、押圧部材32は、アンカ31の周囲に位置する土砂26Aを槍先部材25の引っ掛かり部25Bの上側に移動すると共に土砂26Aを締め固めることができる。この結果、掘削作業時にアンカ31が抜かれないように大きな抵抗力を発生することができ、土砂26Aの掘削量を増大することができる。
次に、図11は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、杭棒の槍先部材は、棒状体に対して取付け、取外し可能に取付けられていることにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11において、第3の実施の形態による杭棒としてのアンカ41は、前述した取付部材21と、後述の棒状体42、槍先部材43、固定ボルト44とにより構成されている。
棒状体42は、取付部材21の下側に下向きに延びて設けられている。棒状体42は、上,下方向に延びる円柱体からなり、その上端が取付部材21を介して一対のバケット15,16間に位置してバケット支持部材14に設けられている。一方、棒状体42の下端部には、直径方向の対称位置が平行に切欠かれた小判状の嵌合凸部42Aが設けられている。さらに、棒状体42の軸中心には、取付部材21のベース板21Aを含んで長さ方向に貫通したボルト挿通孔42Bが設けられている。
槍先部材43は、棒状体42と別個に設けられ、棒状体42の下端に取付け、取外し可能に取付けられるものである。槍先部材43は、尖端部43A、引っ掛かり部43Bおよびテーパ面43Cを備えた円錐体として形成されている。また、槍先部材43には、引っ掛かり部43B側の上面中央に、棒状体42の嵌合凸部42Aが回り止め状態で嵌合する小判状の嵌合凹部43Dが設けられている。さらに、嵌合凹部43Dの底面中央には、ねじ穴43Eが設けられている。
槍先部材43は、嵌合凹部43Dを棒状体42の嵌合凸部42Aに嵌合し、この状態で、棒状体42のボルト挿通孔42Bに上側から挿通した固定ボルト44をねじ穴43Eに螺着させる。これにより、槍先部材43は、棒状体42に対して取付け、取外し可能に取付けることができる。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、アンカ41の槍先部材43は、棒状体42に対して取付け、取外し可能に取付けられている。これにより、槍先部材43が摩耗したり損傷したりした場合には、固定ボルト44を緩めるだけで槍先部材43を容易に交換することができる。また、交換するのは先端の槍先部材43だけなので、予備部品の管理を簡略化することができる。さらに、掘削する地面26Bの状態に応じ、槍先部材43に代えて、他の形状の槍先部材を取付けることもできる。
次に、図12は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、杭棒は、バケット支持部材に対して複数本設けられたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図12において、第4の実施の形態によるバケット支持部材51は、第1の実施の形態によるバケット支持部材14と同様に、ロッド部(図示せず)、横梁部51A、ワイヤ取付部(図示せず)、バケット取付部51B、アンカ取付板51Cを備えている。しかし、第4の実施の形態によるバケット支持部材51は、2本のアンカ52A,52Bを取付けられるように、アンカ取付板51Cが横梁部51Aの長さ方向に合計8枚(2枚1組で4組)設けられている点で、第1の実施の形態によるバケット支持部材14と相違している。
第4の実施の形態による杭棒としてのアンカ52A,52Bは、バケット支持部材51に対して複数本、例えば2本設けられている。第4の実施の形態によるアンカ52A,52Bは、前述した第1の実施の形態によるアンカ20と同様に、取付部材21、棒状体24、槍先部材25により構成されている。そして、アンカ52A,52Bは、ボルト22、ナット23を用いてそれぞれ横梁部51Aに取付け、取外し可能に取付けられている。
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、アンカ52A,52Bは、バケット支持部材51の横梁部51Aに対して2本設ける構成としている。これにより、2本のアンカ52A,52Bは、掘削作業時に抜かれないように大きな抵抗力を発生することができる。
次に、図13は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、杭棒の棒状体には、周面から突出し、掘削対象物に差し込まれることにより、引き抜き時に抵抗を与える追加抵抗部が設けられたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図13において、第5の実施の形態による杭棒としてのアンカ61は、前述した取付部材21、棒状体24と、後述の槍先部材62、追加抵抗部63とにより構成されている。
第5の実施の形態による槍先部材62は、第1の実施の形態による槍先部材25と同様に、尖端部62A、引っ掛かり部62Bおよびテーパ面62Cを備えている。しかし、第5の実施の形態による槍先部材62は、尖端部62Aの先端が平坦面となり、全体として円錐台形状に形成されている点で、第1の実施の形態による槍先部材25と相違している。
追加抵抗部63は、棒状体24の外周側に複数個設けられている(3個のみ図示)。各追加抵抗部63は、棒状体24の周面から径方向外側に突出した突起(ビット)として形成されている。これにより、各追加抵抗部63は、アンカ61を地面26Bに差し込んで引き抜くときに、引っ掛かりの数、引抜き抵抗を増大させ、より大きな抵抗を与えることができる。
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態によれば、槍先部材62の尖端部62Aの先端は、平坦面として形成している。これにより、地面26Bの硬さに応じて槍先部材62を使い分けることができる。しかも、棒状体24の外周側には、アンカ61を地面26Bに差し込んで引き抜くときに、抵抗を与える複数個の追加抵抗部63を設けているから、引抜き抵抗を大きくすることができ、掘削効率を向上することができる。
次に、図14は本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、杭棒を板体によって形成したことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図14において、第6の実施の形態による杭棒としてのアンカ71は、前述した取付部材21と、後述の棒状体72、槍先部材73、追加抵抗部74とにより構成されている。
棒状体72は、取付部材21の下側に下向きに延びて設けられている。棒状体72は、上,下方向に延びる板体からなり、その上端が取付部材21のベース板21Aの下面に一体的に固着されている。また、棒状体72の上部とベース板21Aとの間には、棒状体72を板厚方向で挟んだ対称位置に2枚の補強板72Aが設けられている。
第6の実施の形態による槍先部材73は、尖端部73A、引っ掛かり部73Bおよび傾斜面73Cを備えている。また、槍先部材73には、板厚方向で挟んだ対称位置に2個の追加抵抗部74が設けられている。ここで、槍先部材73の尖端部73Aは、棒状体72の横断面積よりも小さい横断面積を有し、引っ掛かり部73Bは、尖端部73Aよりも上側位置で棒状体72の横断面積よりも大きい横断面積を有している。
かくして、このように構成された第6の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第6の実施の形態によれば、アンカ71を板体によって形成することができる。また、槍先部材73には、2個の追加抵抗部74を設けているから、引抜き抵抗を大きくすることができる。
なお、第1の実施の形態では、アンカ20を構成する槍先部材25の尖端部25Aは、尖端を尖らせて形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図15に示す第1の変形例のように形成してもよい。即ち、図15に示す杭棒としてのアンカ81のように、槍先部材82の尖端部82Aを平坦面として形成してもよい。この構成は他の実施の形態にも適用することができる。
第5の実施の形態では、アンカ61を構成する棒状体24の周面に突起状の追加抵抗部63を複数個設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図16に示す第2の変形例のように形成してもよい。即ち、図16に示す杭棒としてのアンカ91のように、棒状体24の全周に亘って円環状の追加抵抗部92を1個設ける構成としてもよい。この構成は他の実施の形態にも適用することができる。
第2の実施の形態では、アンカ31の棒状体24の上端側を取囲む位置に、棒状体24の周囲を下向きに延びる円筒状をした1個の押圧部材32を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図17に示す第3の変形例のように形成してもよい。即ち、図17に示す杭棒としてのアンカ101のように、押圧部材102を複数本の円柱体102Aを円環状に並べて形成する構成としてもよい。
第1の実施の形態では、アンカ20の槍先部材25は、先端が尖った円錐体として形成した場合を例に挙げて説明している。また、第5の実施の形態では、アンカ61の槍先部材62は、先端が平坦な円錐台として形成した場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれらの構成に限るものではない。例えば、槍先部材は、角錐体や角錐台として形成してもよい。この構成は他の実施の形態にも適用することができる。
第1の実施の形態では、クラムシェルバケット13は、上,下方向に延びるバケット支持部材14の下部に一対のバケット15,16を開閉可能に設け、バケット支持部材14を兼ねるアクチュエータ18のチューブ18Aにリンク19を介して各バケット15,16をそれぞれ連結することにより、1本のアクチュエータ18で各バケット15,16を回動動作(開閉動作)させる構成としている。そして、バケット支持部材14の下部にアンカ20を取付けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図18に示すクラムシェルバケット111にアンカ20を取付ける構成としてもよい。この構成は他の実施の形態にも適用することができる。
即ち、図18において、クラムシェルバケット111は、上,下方向に延びるバケット支持部材112の下部に一対のバケット113,114を開閉可能に設ける構成としている。また、バケット支持部材112とバケット113との間にはアクチュエータ115が設けられると共に、バケット支持部材112とバケット114との間にはアクチュエータ116が設けられている。これにより、クラムシェルバケット111は、2本のアクチュエータ115,116によって各バケット113,114を回動動作(開閉動作)することができる。この上で、バケット支持部材112の下部には、アンカ20を取付ける構成としている。
各実施の形態では、掘削対象物として土砂26Aを例示し、この土砂26Aからなる地面26Bをクラムシェルバケット13によって掘削した場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、掘削対象物として土砂26Aに近い硬さをもった鉱物等を掘削する場合に用いてもよい。
各実施の形態では、フロント装置7の既存のブーム8、アーム9等を利用し、アーム9の先端に、ワイヤロープ12Bが巻回されたワイヤ用リールドラム12Aと油圧ホース12Cが巻回された油圧ホース用リールドラムとからなるバケット昇降装置12を設けている。この上で、ワイヤロープ12Bの先端にクラムシェルバケット13を取付ける構成とした場合を例に挙げて説明している。
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ブーム8の先端にテレスコピック式の伸縮構造をもったバケット昇降装置を設け、このテレスコピック式のバケット昇降装置にクラムシェルバケット13を取付けて昇降させる構成としてもよい。
各実施の形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧式掘削作業機械1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の下部走行体を備えた油圧式掘削作業機械に適用してもよい。