JP6843370B2 - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなPTC特性を有する素子(以下、PTC素子と呼ぶ)は、PTC素子に過剰電流が流れることで、そのPTC素子の温度自体がある温度T0(変曲点)に達した場合、又は機器の環境温度が上昇し、PTC素子の温度がT0に達した場合、PTC素子は急激に高抵抗(トリップ状態)となることにより、素子に流れる電流が遮断され、PTC素子が組み込まれた電気回路を保護する、保護回路として用いられている。
ポリマーPTC組成では、その特性を得るのに適する凝集したニッケル粉末が求められている。
また、ニッケル還元工程での温度上昇の途中で、混合水溶液を40℃まで冷却してしまうと、凝集体を得ることはできるが、その凝集体は、ニッケルにまで還元されておらず、ニッケルの化合物である。
先ず、下記に説明する水溶液I、水溶液II、水溶液IIIの3種類の水溶液を調製する。
水溶液Iは、ニッケル塩の水溶液の水溶液である。水溶液Iにはニッケルの化学種が含まれる。
水溶液IIはアルカリ性の水溶液である。
水溶液IIIは、ニッケルの化学種に対して還元作用を有する水溶液である。
第一の方法として、水溶液IIと水溶液Iを予め混合し、その後水溶液IIIを混合して混合水溶液を調製する。
第二に、水溶液IIと水溶液IIIを予め混合し、その後、水溶液Iを混合して混合水溶液を調製する。
第三に、水溶液IIを分割し、水溶液Iおよび水溶液IIIに混合した後に、水溶液IIを混合した水溶液Iと水溶液IIを混合した水溶液IIIを混合して混合水溶液を調製する。
すなわち、最終的に水溶液Iと水溶液IIIが混合されれば良く、両者の混合で所定の混合水溶液を形成できる。
水溶液I、水溶液II、水溶液IIIを混合して得られる混合水溶液で、ニッケル粉末が合成される際にニッケルの化学種と錯イオンを形成する錯化剤が含まれば、錯化剤の目的は達成される。
この錯化剤を含むことで、ニッケル粉末の形状を制御できる。錯化剤を添加しない場合、ニッケルの化学種から生成するニッケル粉末はウニの様なとげを多方向に伸ばした局所的に成長した粉末となる。ニッケルの化学種が錯化剤とニッケルの錯イオンを形成していれば、錯化剤の配位の効果によりニッケル粉末の成長が全方向に略一定となる。
このニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属として、金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銅等の各元素が挙げられる。異種金属は、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銅等のうち、少なくとも1種類以上含まれていることが望ましい。
生成した異種金属の微粒子は、ニッケルの化学種が還元されて得られるニッケル粉末の生成の核となる。
使用する保護コロイド剤としては、異種金属の微粒子からなるコロイド粒子(例えば、パラジウムからなるコロイド粒子)を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与するものであればよく、特にゼラチンが好ましいが、その他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどを用いることもできる。
その保護コロイド剤の添加量は、ニッケル質量100%に対して、保護コロイド剤が0.0025〜0.2質量%が望ましい。理由としては、ニッケル中に有機化合物である分散剤が不純物として残留しやすいためである。
この加温する理由としては、保護コロイド剤のゼラチンの絡み合った高分子鎖が解され、所望の保護コロイド効果を発揮させやすいからである。また極力撹拌する理由としては、十分に撹拌されていない場合、微細な核が得られず、ニッケルの化学種が還元されて得られるニッケル粉末の粒径が所望レベルで制御できないためである。
なお、異種金属微粒子のコロイド水溶液をあらかじめ作製し、コロイド水溶液を水溶液I、水溶液II、水溶液IIIにいずれかに加えてもよい。
この加温する理由としては、加温することでニッケルの化学種が還元されニッケル粉末となる還元反応が始まるためである。さらに、加温保持する理由としては、加温保持することでニッケル粉末への還元反応が促進されるためである。
なお、本還元反応は、発熱反応であるため、還元反応が始まると、加温保持による熱量と反応に伴う熱量により、水溶液I、II、IIIの混合液は加温保持の温度よりも高い温度となり、還元反応が終了すると、放熱効果により、加温保持の温度まで低下する。
すなわち、水溶液I、II、IIIの混合水溶液の初期の加温保持温度が50〜85℃、もしくは混合前の各水溶液が50〜85℃であれば混合直後に、還元反応が進行し始め、還元反応が終了するまで加温保持温度よりも混合液の温度は徐々に高くなり、発熱反応が終了し最高温度に到達したら、放熱により初期の加温保持温度まで低下することになる。
なお、混合水溶液の最高到達温度TMAXは、初期の加温保持温度以上にはなるが、還元による発熱量を加味しても熱力学的に100℃を越えることはない。
混合水溶液をポンプ等で送り出し、混合水溶液の周囲を冷媒で冷却する冷却ゾーンに通過させることで温度低下させてもよい。また40℃以下の状態を保ちながら純水中に混合水溶液を添加するような方法で純水と混合水溶液とを混合させてもよい。
冷却は、ニッケルの化学種のニッケル粉末への還元による発熱反応及び加温によってもたらされる混合水溶液の温度上昇を停止させた温度、すなわち最高到達温度TMAXを基準に、混合水溶液が放置状態において降温する温度が2℃低下する時間t1以内に完了することが望ましい。
水溶液IIは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどで強アルカリ性を有していればよい。
水溶液IIIであるニッケルの化学種に対して還元作用を有する水溶液は、水加ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムであることが望ましく、更には水加ヒドラジンであることが望ましい。水素化ホウ素ナトリウムは、ニッケル中にホウ素が残りやすく、自己温度調整型樹脂抵抗体にした際に所望の効果を発現しにくくなることが懸念される。
還元反応による発熱によって、混合水溶液の温度は上昇して最高到達温度TMAXに到達する。この際の混合水溶液はpH11〜12であった。なお、最高到達温度は、同じ反応を事前に行い、温度履歴を入手することで把握した。
冷却後の混合水溶液の温度は33℃であった。すなわち、実施例1において未冷却である冷却前の混合水溶液の温度は85℃、この最高温度TMAX=85℃からΔT=0.6℃低下する間に冷却工程が完了したことになる。
粒子の状態、XRDのピークの帰属、冷却開始時の反応液の色の状態を表1に示す。得られた凝集体のSEM像を図1に示す。
塩化ニッケル水溶液を添加するステップまで実施例1と同様の操作を行った。混合液が最高温度に到達してから実施例1と同様にローラーポンプで吸い出す時間を5分とした。
粒子の状態、XRDのピークの帰属、冷却開始時の反応液の色の状態を表1に示す。得られた凝集体のSEM像を図2に示す。
塩化ニッケル水溶液を添加するステップまで実施例1と同様の操作を行い、混合液が還元処理可能温度範囲に到達してから最高温度に到達する間に、混合水溶液をローラーポンプで吸い出し、最高温度に到達する前に全て吸い出し、冷水に浸漬されたチューブゾーンを通過させ40℃以下まで冷却した。
塩化ニッケル水溶液を添加するステップまで実施例1と同様の操作を行った。その後、冷却処置は行わず、混合水溶液が透明になるまで加温保持した後に静置沈降し、上澄み液を除去した後に5Lの純水を添加してレパルプ洗浄して、ヌッチェにて固液分離を行い、500mLの掛け水洗浄をした。その後、100℃で24時間、大気乾燥した。
Claims (7)
- ニッケルの化学種と、前記ニッケルの化学種に対して還元作用を有する水溶液との混合水溶液を外部から加温して得られるニッケル粉末の製造方法において、
前記得られるニッケル粉末が、ネッキング粒子の凝集体状のニッケル粉末であり、
前記混合水溶液中での前記ニッケルの化学種に対する還元作用によって生じた発熱と外部からの加温処理による前記混合水溶液の温度Tの上昇を、50℃以上の還元処理可能温度における温度TMAXで停止させた後、前記混合水溶液が放置状態において降温する温度Tが2℃低下する時間t 1 以内に、前記混合水溶液をTCL=40℃以下に冷却する冷却工程を行うことを特徴とするニッケル粉末の製造方法。 - 前記混合水溶液が、ニッケルの化学種を含む溶液に前記ニッケルの化学種と錯イオンを形成する錯化剤を加えて調製されることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記混合水溶液が、ニッケルよりもイオン化傾向の小さい異種金属の異種金属イオンを加えられて調製されることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記異種金属イオンが、パラジウムイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオン、銅イオンのうち、少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項3に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記混合水溶液が、アルカリ性であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケルの化学種が、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルのいずれかのニッケル塩の水溶液に含まれるニッケルの化学種であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
- 前記還元作用を有する水溶液が、還元剤であるヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムのいずれかの水溶液であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
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