JP6841397B2 - B型肝炎患者の臨床経過を予測する方法 - Google Patents

B型肝炎患者の臨床経過を予測する方法 Download PDF

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Description

本発明はB型肝炎患者(典型的にはB型慢性肝炎患者)の臨床経過の予測に有用なマーカー及びその用途、並びにB型肝炎(典型的にはB型慢性肝炎)の治療効果の評価に有用なマーカー及びその用途に関する。
B型肝炎にはワクチンが有効であるが、世界中で4億人以上がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)に感染している。そして、毎年約100万人以上がHBV関連の肝硬変、肝不全や肝癌(hepatocellular carcinoma;HCC)で死亡している(非特許文献1(参考文献1))。そのため、B型肝炎の治療及び制御は世界的に重要な問題となっている。B型慢性肝炎(chronic hepatitis B;CHB)の自然経過は免疫寛容期、免疫活動期、非活動性キャリア期に分類される(参考文献2〜5)。免疫寛容期は、免疫寛容の状態、即ちHBe抗原陽性且つHBV DNA増殖が活発であるがALTは正常で肝炎の活動性がほとんどない状態が続き(無症候性キャリア)、感染力は強い。多くの例では乳幼児期における感染後、免疫寛容期が長期間持続するが、その期間は数年から20年以上まで様々である。成人に達するとHBVに対する免疫応答が活発となり、免疫活動期に入って活動性肝炎となる。免疫活動期にHBe抗原(HBeAg)のセロコンバージョンが起きるとHBV DNAとALTが低下し、臨床的に肝炎は鎮静化し良い経過を辿ることが多い。セロコンバージョン後の長期経過中にHBV DNAとALTの低下が持続し、HBs抗原が消失した場合には発癌などのリスクも低下することになり、自然経過の中で目標となる状態である(参考文献4、7、8)。しかし、セロコンバージョン後もHBVの増殖が続き(HBV DNA高値)、活動性肝炎(ALT高値)が持続し肝硬変や肝癌に進展する場合もある(HBe抗原陰性肝炎)(参考文献4、6)。また、そもそもセロコンバージョンが起きず肝炎が持続してHBe抗原陽性の状態が長期間続くと肝病変が進展する(HBe抗原陽性肝炎)。
HBVのプレコア(PC; Pre core)(G1896A)とべーサルコアプロモーター(BCP;Basal core pormotor)(A1762T/G1764A)の変異はHBe抗原のセロコンバージョンと関連している(参考文献9)。PC変異はストップコドンを作り、HBe抗原産生を減少させる(参考文献10)。他方、BCP変異はプレコアmRNAの産生率を減少させ、HBe抗原の産生を減らす。これらの変異はHBe抗原陽性患者よりセロコンバージョンしたHBe抗原陰性患者において高頻度に存在する。免疫排除期にHBe抗原陽性からHBe抗原陰性にセロコンバージョンしてHBV増殖が抑制されるとHBV DNA値が低下する。HBV DNAが低値でALT正常のHBe抗原陰性の患者では合併症のリスクが低く、一方、HBe抗原陰性患者においてHBVが再増殖しHBV DNA高値およびALT高値となり活動性肝炎が持続する場合があり、その場合は合併症のリスクも高い。セロコンバージョン後のHBe抗原陰性となった患者においてHBV DNA低値及びALT正常が持続するか否かを予測することは難しい。
現状、自然経過でHBe抗原陰性となり免疫排除期に肝炎が鎮静化していく(即ち、経過の良い症例)か、HBe抗原陰性でも活動性肝炎が持続し肝硬変や肝癌に進展する可能性があるかを判別することは難しい。B型慢性肝炎でHBV DNAとALTが高値で変動し肝硬変へ進むリスクがある場合に現在使用できる治療にはインターフェロン(IFN)治療(参考文献11、12)とエンテカビルやテノホビルのような核酸アナログ用いた治療(参考文献13〜15)がある。IFN治療は、HBV DNA増殖抑制作用とともに抗ウイルス作用、免疫賦活作用を有しており、さらにペグ化されたPeg-IFNを用いることによって治療成績が向上している。治療期間は一定期間(24〜48週間)に限定され、治療反応例では投与終了後も何ら薬剤を追加投与することなく、drug freeで治療効果が持続するという利点があり、さらに海外からは長期経過でHBs抗原が高率に陰性化すると報告されている。しかし、Peg-IFNによる治療効果が得られる症例はHBe抗原陽性の場合20〜30%、HBe抗原陰性では20〜40%にとどまる。加えて、週1回の通院が必要であり、様々な副作用もみられる。核酸アナログ治療はウイルスの逆転写酵素を阻害し、HBV DNAを低下させる。これによりALTも正常化し、肝硬変への進展を抑制することができる。しかし、一旦内服(核酸アナログの内服)を開始すると中止することが難しいことや、継続内服による耐性株発生のリスク、腎機能悪化などの副作用の問題がある。前述のように、その後に自然経過でHBV DNAとALTが持続低値となるか、或いは高値で変動し肝硬変へ進むリスクがあるかを見極めることは難しく、IFN治療や核酸アナログ治療を開始するかどうかや開始タイミングの判断は難しい。特に、核酸アナログ治療の場合、治療開始のタイミングが遅すぎると線維化が進行してしまい、十分な治療効果が期待できない。その一方で、治療開始を急ぐあまり、結果的に核酸アナログ治療の必要が無かった症例にも継続内服が行われる可能性がある。
Dienstag JL. Hepatitis B virus infection. N Engl J Med 2008;359:1486-500.
B型肝炎の治療を開始又は進めるにあたって、自然経過でHBV DNAとALT値が低下し鎮静化する症例か、経過が悪く、積極的な治療を早期に開始すべき症例かを判定することは極めて重要である。このような判定が可能になれば、症例に応じたより適切な治療方針を立てることができ、治療が必要な患者には早期且つ適切なタイミングで治療を開始でき、治療効果の増大が図られる。同時に不要な治療を回避でき、医療経済にも貢献する。
そこで本発明は、B型肝炎患者の治療方針の決定に有用な指標(特に、上記のごとき判定に利用可能なもの)となる予測マーカー及びその用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、B型慢性肝炎の鎮静化と関連する変異の同定を目指し、HBV遺伝子の変異に注目した研究を行った。まず、2年以上の経過が観察できたB型慢性肝炎(ジェノタイプC)の症例で経過中HBV DNAが5.0 log copies/mL以上、ALTが120 IU/L以上に上昇した症例(A群 n=10)、HBV DNAが5.0 log copies/mL未満、ALTが60 IU/L未満で推移した症例(B群 n=11)、HBV DNAが4.0 log copies/mL未満、ALTが30 IU/L未満で推移した症例(C群 n=12)において経過観察開始時の保存血清を用い、PCRを利用したダイレクトシークエンス法によりHBV DNAの全塩基配列を決定し比較検討した(検討1)。エンベロープ領域、コア領域、X領域、及びポリメラーゼ領域においてA群のコンセンサス配列を野生型とした場合にアミノ酸毎に各群における変異の割合がA群<B群<C群となる変異を抽出し、各群における変異の割合を比較検討した。その結果、エンベロープ領域の3カ所、コア領域の5カ所、ポリメラーゼ領域の2カ所にB群、C群で増加する変異がみられた。その中でコアI97Lの変異はA群30%、B群36.4%、C群83.3%であり、A群<B群<C群の順で高率に認められた(P=0.021)。次に、検討2として、検討1で得られた有意な変異であるコアI97L変異を82症例で測定した。コアI97L変異に追加して、コアI97L変異の周囲に認められる変異(コアP79Q変異、コアE83D変異、コアL100I変異、コアP130T変異)も考慮し、その後のHBV DNA及びALTの推移と、累積HBV DNA低値且つALT正常(少なくとも2年間持続してHBV DNA値<4.0 log copies/mL且つALT値<30 IU/Lの条件を満たしたもの)の達成率と累積HBs抗原(HBsAg)消失率を調べた。I97L変異に追加でコアP79Q変異がみられた症例(本試験の症例内ではP79Q変異のある症例では全例I97L変異がみられた)では累積HBV DNA低値且つALT正常の達成率が野生型I97で野生型P79の症例より有意に高率であった(P < 0.001)。また、I97L変異で野生型P79の症例と比較してもより有意に高率に認められた(P = 0.005)。他の4つのコア領域の変異では有意な変化はみられなかった。同様に、累積HBs抗原消失率は、野生型I97Lで野生型P79の症例に比較して、コアI97L変異とP79Q変異のある症例で有意に高率に認められた(P = 0.012)。他の4つのコア領域の変異では累積HBs抗原消失率の有意な変化はみられなかった。
以上の結果から、HBVのコア変異であるI97L変異とP79Q変異の評価がその後の臨床経過とHBs抗原消失の予測に有用であること、換言すれば、これらの二つの変異の組合せが、B型肝炎の治療方針を決定する上で極めて有用な予測マーカーになることが判明した。
一方、I97L変異に注目して更に検討した結果、HBe抗原陽性のB型慢性肝炎患者においてIFN治療によりI97L変異が誘導され、肝炎が長期的に鎮静化する症例が認められた。IFN治療は、HBV DNA増殖抑制作用とともに抗ウイルス作用、免疫賦活作用により、治療時にHBV増殖抑制および肝炎鎮静化効果をもたらすが、治療後に再びHBVが増殖し(HBV DNA高値)、活動性肝炎が持続する(ALT高値)ことがある。IFN治療によりI97L変異が誘導された患者は、治療後に長期的にHBV DNA低値、ALT正常値を維持し、肝炎が長期的に鎮静化されたことから、IFN治療によってI97L変異が誘導されればその後の臨床経過が良好になると予測できる。換言すれば、IFN治療の効果及びIFN治療後の臨床経過を予測する指標としてもI97L変異が有用であるといえる。
主として上記の成果及び考察に基づき、以下の発明が提供される。
[1]B型肝炎患者である被検者由来のB型肝炎ウイルスにおける、I97L変異及びP79Q変異の有無を指標にすること特徴とする、B型肝炎患者の臨床経過を予測する方法。
[2]以下のステップ(1)及び(2)を含む、[1]に記載の予測方法:
(1)被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異とP79Q変異の有無を調べるステップ、
(2)ステップ(1)の結果に基づき、B型肝炎患者の臨床経過を判定するステップであって、I97L変異とP79Q変異の存在は肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ。
[3]肝炎鎮静化の確率の高さに関する、以下の(a)又は(b)の基準に従いステップ(2)の判定を行う、[2]に記載の予測方法:
(a) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合又はI97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
(b) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合 < I97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
[4]以下のステップ(3)を更に含む、[2]又は[3]に記載の予測方法:
(3)判定結果に基づき、被検者の治療方針を決定又は変更するステップ。
[5]B型肝炎ウイルスの遺伝子型がC型である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の予測方法。
[6]B型肝炎患者がB型慢性肝炎患者である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の予測方法。
[7]B型肝炎ウイルスにおけるI97L変異を検出するための核酸と、B型肝炎ウイルスにおけるP79Q変異を検出するための核酸と、を含む、B型肝炎患者の臨床経過を予測するための検査キット。
[8]B型肝炎ウイルスにおける、I97L変異とP79Q変異の組合せからなる、B型肝炎患者の臨床経過を予測するためのマーカー。
[9]B型肝炎ウイルスにおける、I97L変異とP79Q変異の、B型肝炎患者の臨床経過を予測するためのマーカーとしての使用。
[10]B型肝炎患者である被検者由来のB型肝炎ウイルスにおける、I97L変異の有無を指標にすること特徴とする、インターフェロン治療後の臨床経過を予測する方法。
[11]以下のステップ(i)及び(ii)を含む、[10]に記載の予測方法:
(i)インターフェロン治療後の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異の有無を調べるステップ、
(ii)ステップ(i)の結果に基づき、インターフェロン治療後の臨床経過を予測するステップであって、I97L変異の存在はインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ。
[12]以下のステップ(I)を更に含み、ステップ(i)とステップ(I)の結果から、インターフェロン治療によってI97L変異が導入されたか否かを判断し、I97L変異が導入された場合に肝炎鎮静化の確率が高いと予測する、[11]に記載の予測方法:
(I)インターフェロン治療前の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異の有無を調べるステップ。
[13]以下のステップ(a)及び(b)を含む、インターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測する方法:
(a)インターフェロン治療前の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異の有無を調べるステップ、
(b)ステップ(a)の結果に基づき、インターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するステップであって、I97L変異の存在はインターフェロン治療の効果が高いこと、及びインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ。
[14]以下のステップ(iii)を更に含む、[11]〜[13]のいずれか一項に記載の予測方法:
(iii)予測結果に基づき、被検者の治療方針を決定又は変更するステップ。
[15]B型肝炎ウイルスの遺伝子型がC型である、[10]〜[14]のいずれか一項に記載の予測方法。
[16]B型肝炎患者がB型慢性肝炎患者である、[10]〜[15]のいずれか一項に記載の予測方法。
[17]B型肝炎ウイルスにおけるI97L変異を検出するための核酸を含む、B型肝炎患者に対するインターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するための検査キット。
[18]B型肝炎ウイルスにおけるI97L変異からなる、B型肝炎患者に対するインターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するためのマーカー。
[19]B型肝炎ウイルスにおけるI97L変異の、B型肝炎患者に対するインターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するためのマーカーとしての使用。
各患者群のベースライン(観察開始時の)臨床的特徴(検討1)。*P < 0.05, **P < 0.005。ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原 べーサルコアプロモーター変異とプレコア変異の発生率の比較。BCP:べーサルコアプロモーター 全遺伝子配列解析から得られた各領域における変異の発生率の比較。 A群、B群、C群の患者における、コア領域(アミノ酸変異残基61から130)のアミノ酸の変異。2番目の行(Co)はA群のコンセンサス配列(配列番号1)を示す。その下の二つの行は他のジェノタイプCウイルス株の配列(既報)を示す。ダッシュはA群のコンセンサス配列に一致することを表す。 ベースライン(観察開始時の)臨床的特徴(検討2)。HBe抗原の状態で区分けした。HBeAg:B型肝炎ウイルスe抗原、ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原 臨床的特徴(検討2)。I97L変異の有無で区分けした。ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原、HBeAg:B型肝炎ウイルスe抗原 臨床的特徴(検討2)。I97L変異及びP79Qの有無で区分けした。*P < 0.05, #P < 0.05。ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原、HBeAg:B型肝炎ウイルスe抗原 I97L変異のある患者と野生型I97の患者のHBV DNA値(A)及びALT値(B)の48ヶ月間の変動。I97変異とP79Q変異のある患者、I97L変異で野生型P79の患者、及び野生型I97で野生型P79の患者のHBV DNA値(C)及びALT値(D)の48ヶ月間の変動。 A:I97L変異のある患者と野生型I97の患者の持続HBV DNA低値とALT正常の累積発現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。B:I97L変異の患者と野生型I97患者のHBs抗原消失の累積出現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。C:I97変異とP79Q変異のある患者、I97L変異で野生型P79の患者、及び野生型I97で野生型P79の患者の持続HBV DNA低値とALT正常の累積発現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。野生型I97, P79 vs. I97L変異+野生型P79 P = 0.038; 野生型I97, P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P < 0.001; I97L変異+野生型P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.005。D:I97変異とP79Q変異のある患者、I97L変異で野生型P79の患者、及び野生型I97で野生型P79の患者のHBs抗原消失の累積出現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。野生型I97, P79 vs. I97L変異+野生型P79 P = 0.023; 野生型I97, P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.012; I97L変異+野生型P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.597。 HBe抗原陰性患者のベースライン(観察開始時の)臨床的特徴(検討2)。I97L変異の有無で区分した。ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原 HBe抗原陰性患者の臨床的特徴(検討2)。I97L変異及びP79Qの有無で区分けした。*P < 0.05, #P < 0.05。ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、T.Bil:総ビリルビン量、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原 I97L変異のあるHBe抗原陰性患者と野生型I97のHBe抗原陰性患者のHBV DNA値(A)及びALT値(B)の48ヶ月間の変動。I97変異とP79Q変異のあるHBe抗原陰性患者、I97L変異で野生型P79のHBe抗原陰性患者、及び野生型I97で野生型P79のHBe抗原陰性患者のHBV DNA値(C)及びALT値(D)の48ヶ月間の変動。 A:I97L変異のあるHBe抗原陰性患者と野生型I97のHBe抗原陰性患者の持続HBV DNA低値とALT正常の累積発現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。B:I97L変異のあるHBe抗原陰性患者と野生型I97のHBe抗原陰性患者のHBs抗原消失の累積出現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。C:I97変異とP79Q変異のあるHBe抗原陰性患者、I97L変異で野生型P79のHBe抗原陰性患者、及び野生型I97で野生型P79のHBe抗原陰性患者の持続HBV DNA低値とALT正常の累積発現率。野生型I97, P79 vs. I97L変異+野生型P79 P = 0.164; 野生型I97, P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.001; I97L変異+野生型P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.011。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。D:I97変異とP79Q変異のあるHBe抗原陰性患者、I97L変異で野生型P79のHBe抗原陰性患者、及び野生型I97で野生型P79のHBe抗原陰性患者のHBs抗原消失の累積出現率。各時点における、各群の発症リスクのある患者の数をグラフの下に示した。野生型I97, P79 vs. I97L変異+野生型P79 P = 0.050; 野生型I97, P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.037; I97L変異+野生型P79 vs. I97L変異+P79Q変異 P = 0.603。
1.B型肝炎患者の臨床経過の予測方法
本発明の第1の局面はB型肝炎患者の臨床経過を予測する方法(以下、「本発明の予測方法」と呼ぶことがある)に関する。本発明における「臨床経過」は肝炎の病態ないし症状の変化を表すものである。典型的には、「臨床経過」は、肝炎が鎮静化(症例によってはHBs抗原が消失)と、活動性肝炎が持続(肝硬変や肝癌に進展することが多い)の二つに大別される。「臨床経過」は、HBV DNA値、ALT値又はHBs抗原、或いはこれらの中の二つ以上の組合せによって評価なし把握することができる。例えば、HBV DNAが低値(例えば4 log copies/mL未満)且つALTが正常値(例えば30 IU/L以下)が持続する場合、肝炎が鎮静化した状態であると評価される。HBs抗原が消失すれば、臨床的に更に予後の良い状態に至ったと評価できる。一方、HBV DNAが高値(例えば4 log copies/mL以上)且つALTが高値(例えば30 IU/Lを超える)が継続する場合、活動性肝炎が持続している状態と評価される。
本発明の予測方法では、B型肝炎ウイルスに(HBV)おけるI97L変異及びP79Q変異の有無を指標としてB型肝炎患者の臨床経過を予測する。即ち、B型肝炎患者の臨床経過を予測するためのマーカーとして、B型肝炎ウイルスにおけるI97L変異及びP79Q変異の組合せを用いる。I97L変異はHBVのコア領域に認められる変異であり、自然経過中に起こる最も頻度の高い変異である(参考文献21、22)。I97L変異は、通常、HBVゲノムDNAの2189位塩基A(アデニン)がC(シトシン)に置換されることによって生ずる。従って、I97L変異の有無を調べるためには当該2189位塩基を標的とした検出を行えばよい(検出法の詳細は後述する)。P79Q変異もHBVのコア領域に認められる変異である。P79Q変異は、通常、HBVゲノムDNAの2136位塩基C(シトシン)がA(アデニン)に置換されることによって生ずる。従って、P79Q変異の有無を調べるためには当該2136位塩基を標的とした検出を行えばよい(検出法の詳細は後述する)。尚、B型肝炎ウイルス(C型)のゲノムDNAの配列の代表例を配列番号23(DEFINITION: HBV genotype C DNA, complete genome, isolate: BRJT2014-1A. ACCESSION:LC064754)に示す。当該配列では、1901位塩基〜2452塩基(配列番号24)がコア領域(DEFINITION: core protein [HBV genotype C]. ACCESSION: BAU25814)(配列番号25)をコードする。
HBVは9種類(A型〜H型とJ型)の遺伝子型(ゲノムタイプ)に分類されている。地域によって遺伝子型の分布は異なり、例えばアジア諸国ではB型とC型が、ヨーロッパ諸国ではA型とD型が主流である。日本では90%以上がC型、10数%がB型、数%がA型である。本発明におけるHBVの遺伝子型は特に問わないが、好ましくはC型又はB型、更に好ましくはC型である。換言すれば、本発明は、好ましくはC型又はB型HBVを保有する患者、更に好ましくはC型HBVを保有する患者を被検者とする。「HBVを保有する患者」とは「HBV持続感染者」と同義であり、これらの用語は交換可能に使用される。本発明の適用範囲は日本人に限られない。即ち、日本人以外のモンゴロイドやその他の人種(コーカサイド等)に対しても本発明を適用可能である。
I97L変異及びP79Q変異がHBe抗原陽性の患者よりもHBe抗原陰性の患者に多く見られたことと(後述の実施例)、HBe抗原陰性の患者を対象とした詳細な検討の結果、I97L変異及びP79Q変異が持続HBV DNA低値とALT正常、更にはHBs抗原の消失に関連していた事実(後述の実施例)を考慮すれば、HBe抗原陰性の患者、即ちHBe抗原セロコンバージョンを経たB型肝炎患者が特に好適な被検者となる。
本発明の予測方法は具体的には以下のステップ(1)及び(2)を行う。
(1)被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異とP79Q変異の有無を調べるステップ
(2)ステップ(1)の結果に基づき、B型肝炎患者の臨床経過を判定するステップであって、I97L変異とP79Q変異の存在は肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ
ステップ(1)では、B型肝炎患者である被検者が保有するB型肝炎ウイルスの特定の変異、即ちI97L変異とP79Q変異の有無を調べる。B型急性肝炎患者を被検者としてもよいが、好ましくは、B型慢性肝炎患者を被検者とする。B型肝炎ウイルス遺伝子サンプルは、被検者が保有するB型肝炎ウイルスのゲノムDNAを含むものであり、例えば、被検者の血液から調製される。B型肝炎ウイルスのゲノムDNAを含む限り、B型肝炎ウイルス遺伝子サンプルを調製するための材料(生体試料)は血液に限定されるものではない。例えば、肝組織からB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルを調製することも可能である。B型肝炎ウイルス遺伝子サンプルの調製方法(抽出、精製など)は常法に従えばよい。検出対象の変異(I97L変異とP79Q変異)位置をコードする領域を含むものであれば、任意の長さのゲノムDNAをB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルとして用いることができる。B型肝炎ウイルス遺伝子サンプル(核酸検体)は予め用意しておけばよい。従って、サンプル調製のために必要な患者の処置(採血など)をステップ(1)は含むものではない。
I97L変異とP79Q変異の有無は、被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、対応する遺伝子変異(詳細は上記を参照)を検出ないし測定することによって決定することができる。
変異の検出法(測定法)は特に限定されるものではなく、例えばアレル特異的プライマー(及びプローブ)を用い、PCR法による増幅、及び増幅産物の変異を蛍光又は発光によって検出する方法や、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita,M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770(1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature, 324, 163-166(1986)等)、TaqMan(登録商標、Roche Molecular Systems社)-PCR法(Livak, KJ, Genet Anal,14,143(1999),Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol.,34,2933(1996))に代表されるリアルタイムPCR法、Invader(登録商標、Third Wave Technologies社)法(Lyamichev V et al., Nat Biotechnol,17,292(1999))、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した方法(Heller, Academic Press Inc, pp. 245-256(1985)、Cardullo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8790-8794(1988)、国際公開第99/28500号パンフレット、特開2004-121232号公報など)、ASP-PCR(Allele Specific Primer-PCR)法(国際公開第01/042498号公報など)、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP, Genome Res 7,378(1997))、RCA(rolling cycle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19,225(1998))、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077(1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern,E., J. Mol. Biol. 98, 503-517(1975))等、公知の方法を採用できる。さらに、検出対象の変異位置を直接シークエンスすることにしてもよい。尚、これらの方法を任意に組み合わせて変異を検出してもよい。また、PCR法又はPCR法を応用した方法などの核酸増幅法により核酸試料を予め増幅(核酸試料の一部領域の増幅を含む)した後、上記いずれかの検出法を適用することもできる。
多数の核酸検体を検出する場合にはアレル特異的PCR法、アレル特異的ハイブリダイゼーション法、TaqMan(登録商標)-PCR法、Invader法、FRETを利用した方法、ASP-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法、RCA(rolling cycle amplification)法、又はDNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法等、多数の検体を比較的短時間で検出可能な検出法を用いることが特に好ましい。
以上の方法では、各方法に応じたプローブやプライマー等の核酸(本発明において「変異検出用核酸」ともいう)が使用される。プローブとして利用される変異検出用核酸の例としては、検出対象の変異位置を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に特異的にハイブリダイズする核酸を挙げることができる。例えば、検出対象の変異が、I97L変異をもたらす2136位の塩基であれば、当該塩基を含む部分ゲノムDNAを標的としてプローブを設計すればよい。ここでの「部分ゲノムDNA」の長さは、例えば16〜500塩基長、好ましくは18〜200塩基長である。また、当該核酸は好ましくは部分ゲノムDNAに相補的な配列を有するが、特異的なハイブリダイゼーションに支障のない限り、多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。ここでの「特異的なハイブリダイゼーション」とは、核酸プローブによる検出の際に通常採用されるハイブリダイゼーション条件(好ましくはストリンジェントな条件)の下、標的の核酸(部分ゲノムDNA)に対してハイブリダイズする一方で、他の核酸との間にクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。尚、当業者であれば例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)を参考にしてハイブリダイゼーション条件を容易に設定可能である。
プライマーとして利用される変異検出用核酸の例としては、検出対象の変異位置を含むゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に相補的な配列を有し、当該変異部分を含むDNAフラグメントを特異的に増幅できるように設計された核酸を挙げることができる。プライマーとして利用される変異検出用核酸の他の例として、検出対象の変異位置がいずれかの塩基である場合にのみ当該変異位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計されたプライマーペアを挙げることができる。より具体的には、検出対象の変異位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計されたプライマーペアであって、変異位置がいずれかの塩基であるアンチセンス鎖の当該変異位置を含むゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域(変異位置の近傍領域)に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなるプライマーペアを例示することができる。ここで、増幅されるDNAフラグメントの長さはその検出に適した範囲で適宜設定され、例えば15〜1000塩基長、好ましくは20〜500塩基長、更に好ましくは30〜200塩基長である。尚、プローブの場合と同様、プライマーとして利用される変異検出用核酸についても、増幅対象(鋳型)に特異的にハイブリダイズし、目的のDNAフラグメントを増幅することができる限り、鋳型となる配列に対して多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。
変異検出用核酸(プローブ、プライマー)には、検出法に応じて適宜DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:Peptide nucleic acid:)等が用いられる。変異検出用核酸の塩基長はその機能が発揮される長さであればよく、プローブとして用いられる場合の塩基長の例としては15〜500塩基長、好ましくは16〜100塩基長である。他方、プライマーとして用いられる場合の塩基長の例としては10〜70塩基長、好ましくは15〜60塩基長、更に好ましくは20〜50塩基長である。
変異検出用核酸(プローブ、プライマー)はホスホジエステル法など公知の方法によって合成することができる。尚、変異検出用核酸の設計、合成等に関しては成書(例えばMolecular Cloning,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New YorkやCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))を参考にすることができる。
本発明における変異検出用核酸を予め標識物質で標識しておくことができる。このような標識化核酸を用いることにより、例えば、増幅産物の標識量を指標として変異を検出することができる。また、変異型の遺伝子における部分DNA領域に特異的なプローブと、野生型の遺伝子における部分DNA領域に特異的なプローブを異なる標識物質で標識しておけば、増幅産物から検出される標識物質及び標識量によって、変異の有無を判別できる。
変異検出用核酸の標識に用いられる標識物質としてはFAMTM(6-carboxyfluorescein)、VICTM、TETTM(tetrachlorofluorescein)、NEDTM、HEXTM、CAL Fluor Gold 540、CAL Fluor Orange 560(CFO)、CAL Fluor Red 590、CAL Fluor Red 610、CAL Fluor Red 635、Quasar 570、Quasar 670、Quasar 705、T(JOETM)、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin(APC)、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、テキサスレッド(Texas Red(登録商標))、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC-CyTM7、オレゴングリーン(Oregon Green)、FAMTM、VIC(登録商標)、ABY(登録商標)、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドットなどの蛍光色素、32P、131I、125Iなどの放射性同位元素、ビオチンを例示でき、標識方法としてはアルカリフォスファターゼ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いた5'末端標識法、T4 DNAポリメラーゼやKlenow断片を用いた3'末端標識法、ニックトランスレーション法、ランダムプライマー法(Molecular Cloning,Third Edition,Chapter 9,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)などを例示できる。
変異検出用核酸を不溶性支持体に固定化した状態で用いることもできる。固定化に使用する不溶性支持体をチップ状、ビーズ状などに加工しておけば、これら固定化核酸を用いて変異の検出をより簡便に行うことができる。
ステップ(1)に続くステップ(2)では、変異の検出結果に基づき、B型肝炎患者の臨床経過を判定する。ここでの判定は、「I97L変異とP79Q変異の存在は肝炎鎮静化の確率が高いことを表す」という、客観的な判定基準から明らか通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
I97L変異とP79Q変異が存在する場合、即ち、I97L変異とP79Q変異の両者が検出されたのであれば、典型的には、被検者の肝炎は鎮静化する確率が高いと判定する。そして、当該判定結果に基づき、肝炎が自然経過で鎮静化する可能性は高い、或いは肝炎が自然経過で鎮静化する、と予測することになる。上記の場合以外であれば、典型的には、被検者の肝炎は鎮静化する確率が高くない(低い)と判定され、この結果を受けて、肝炎が自然経過で鎮静化する可能性は低い、或いは肝炎が自然経過ではしばらく鎮静化しない、と予測する。
ステップ(2)の判定において、I97L変異とP79Q変異の片方のみが認められる場合も考慮した以下の基準(a)又は(b)を採用してもよい。
<肝炎鎮静化の確率の高さに関する基準の例>
(a) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合又はI97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
(b) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合 < I97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
判定結果は、今後の治療方針を検討する上で有用な情報を提供する。そこで本発明の一態様では、判定結果に基づき、被検者の治療方針を決定又は変更する(ステップ(3))。治療方針は、判定結果に基づく予測、即ち、「肝炎が自然経過で鎮静化する可能性」に応じて設計ないし選択される。典型的には、肝炎が自然経過で鎮静化する可能性が高いと予測された(自然経過で鎮静化すると予測された場合も含む)被検者には経過観察(定期的な検診)が推奨されることになる。換言すれば、より重篤な副作用の発生などが懸念されるIFN製剤或いは長期内服による耐性などのある核酸アナログ製剤による治療の適用は推奨されない。他方、肝炎が自然経過で鎮静化する可能性は低いと予測された(自然経過では鎮静化しないと予測された場合も含む)被検者には、早期且つ積極的な治療介入が望まれることから、IFN製剤(PegIFN治療を含む)によるI97L変異の誘導或いは核酸アナログ製剤による治療の開始が推奨され、また、高頻度且つ定期的な受診も推奨される。尚、I97L変異が認められる場合であってもHBV DNAやALTが十分に低値でない患者に対しては、例えばPegIFN治療を適用してHBV DNA及びALTを低下させ、HBs抗原消失を目指すことも想定される。
以上のように、本発明によれば患者毎により適切な治療方針を立てることができる。その結果、不要な治療を行わずに済み、患者の負担軽減、副作用の回避、医療費削減等の利益が得られる。核酸アナログ製剤による治療を躊躇していた症例に対しては、より早く治療介入でき、治療効果(例えば、肝炎の進行ないし増悪の阻止)の増大を図ることができる。尚、治療開始後、或いは治療方針決定後に本発明を実施した場合には、判定結果を治療方針の変更(見直し)に利用することができる。
2.B型肝炎患者の臨床経過を予測するための検査キット
本発明は、B型肝炎患者の臨床経過を予測するための検査キットも提供する。当該検査キットを利用すれば、本発明の予測方法を簡便に実施することができる。本発明の検査キットは、I97L変異検出用の核酸試薬と、P79Q変異検出用の核酸試薬を必須の要素として含む。以下、各核酸試薬の例を示す。
<I97L変異検出用の核酸試薬>
(1)I97L変異をもたらす2189位の塩基がA(アデニン)である、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(2)I97L変異をもたらす2189位の塩基がC(シトシン)である、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(3)(1)と(2)の両者(即ち、組合せ)
(4)I97L変異をもたらす2189位の塩基がA(アデニン)である場合にのみ、該塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セット
(5)I97L変異をもたらす2189位の塩基がC(シトシン)である場合にのみ、該塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セット
(6)(4)の核酸セットと(5)の核酸セットの両者(即ち、組合せ)
(7)I97L変異をもたらす2189位の塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、2189位の塩基がA(アデニン)である、当該塩基位置を含むB型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー、及び/又は2189位の塩基がC(シトシン)である、当該塩基位置を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、当該部分ゲノムDNAの近傍領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット
<P79Q変異検出用の核酸試薬>
(1)P79Q変異をもたらす2136位の塩基がC(シトシン)である、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(2)P79Q変異をもたらす2136位の塩基がA(アデニン)である、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に相補的な配列を有する非標識又は標識核酸
(3)(1)と(2)の両者(即ち、組合せ)
(4)P79Q変異をもたらす2136位の塩基がC(シトシン)である場合にのみ、該塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セット
(5)P79Q変異をもたらす2136位の塩基がA(アデニン)である場合にのみ、該塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セット
(6)(4)の核酸セットと(5)の核酸セットの両者(即ち、組合せ)
(7)P79Q変異をもたらす2136位の塩基を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)を特異的に増幅するように設計された核酸セットであって、2136位の塩基がC(シトシン)である、当該塩基位置を含むB型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマー、及び/又は2136位の塩基がA(アデニン)である、当該塩基位置を含む、B型肝炎ウイルスのゲノムDNA領域(部分ゲノムDNA)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、当該部分ゲノムDNAの近傍領域に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーと、からなる核酸セット
核酸試薬(I97L変異検出用、P79Q変異検出用)を使用する際(即ち変異の検出の際)に必要な試薬(各種酵素、緩衝液、標識試薬、発色試薬等)や容器、器具等を本発明のキットに含めてもよい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
3.インターフェロン治療の効果/インターフェロン治療後の臨床経過を予測する方法
本発明の別の局面は、インターフェロン治療の効果及びインターフェロン治療後の臨床経過を予測する指標としてもI97L変異が有用であるとの知見に基づき、インターフェロン治療(PegIFN治療含む)の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測する方法(以下、「本IFN治療予測方法」と呼ぶことがある)を提供する。本IFN治療予測方法ではI97L変異の有無を指標としてインターフェロン治療の効果及びインターフェロン治療後の臨床経過を予測する。即ち、インターフェロン治療の効果及びインターフェロン治療後の臨床経過を予測するためのマーカーとしてI97L変異を用いる。以下、本IFN治療予測方法の詳細を述べるが、上記の第1の局面と同一の用語や構成などについては、対応する説明を援用することとし、重複する説明を省略する。
「インターフェロン治療」には、いわゆる従来型IFN(ペグ化していないもの)を使用した治療とPegIFN(例えばPegIFNα-2a)を使用した治療が該当する。いずれかのIFN治療又は両方を受ける又は受けたB型肝炎患者が、本IFN治療予測方法の被検者となる。
I97L変異の有無を調べるため、B型肝炎ウイルスゲノムDNAにおける、I97L変異をもたらす塩基を標的とした検出を行う(検出法の詳細は上述の通りである)。即ち、本発明の一態様では、インターフェロン治療後の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異の有無を調べる(ステップ(i))。次に、ステップ(i)の結果に基づき、インターフェロン治療後の臨床経過を予測するステップであって、I97L変異の存在はインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップを行う。
ステップ(i)は、本発明の第1の局面におけるステップ(1)と同様であるため(但し、検出対象がI97L変異に限られる点で相違する)、その説明を省略する。ステップ(ii)では、変異の検出結果に基づき、インターフェロン治療後の臨床経過を予測する。ここでの予測は、「I97L変異の存在はインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いことを表す」という、客観的な判定基準から明らかな通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
好ましい一態様では、インターフェロン治療前の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについてもI97L変異の有無を調べ(ステップ(I))、その結果とインターフェロン治療後の検出(即ちステップ(i))の結果に基づき、インターフェロン治療によってI97L変異が導入されたか否かを判断し、I97L変異が導入された場合にインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いと予測する。この態様によれば、インターフェロン治療によってI97L変異が導入されたか否かをより確実に把握でき、インターフェロン治療後の臨床経過の予測精度(確度)が高められる。
本発明の別の一態様では、以下のステップ(a)及び(b)を行い、インターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測する。尚、この態様の場合、インターフェロン治療の効果、又はインターフェロン治療後の臨床経過、或いはこれらの両者を予測することになる。
(a)インターフェロン治療前の被検者由来のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異の有無を調べるステップ
(b)ステップ(a)の結果に基づき、インターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するステップであって、I97L変異の存在はインターフェロン治療の効果が高いこと、及びインターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ
予測結果は、今後の治療方針を検討する上で有用な情報を提供する。そこで本発明の一態様では、予測結果に基づき、被検者の治療方針を決定又は変更する(ステップ(iii))。インターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率が高いと予測された場合には、例えば、インターフェロン治療の継続、経過観察等の治療方針が採用される。他方、インターフェロン治療後の肝炎鎮静化の確率は高くないと予測された場合には、例えば、インターフェロン治療の中止、より長期のインターフェロン治療の実施(インターフェロン治療が不十分と判定した場合)、或いは核酸アナログ製剤等による代替治療の早期の開始、等の治療方針が採用される。
以上のように、本発明によれば患者毎により適切な治療方針を立てることができる。その結果、第1の局面の場合と同様に、患者の負担軽減、副作用の回避、医療費削減等の利益が得られる。また、核酸アナログ製剤による治療を躊躇していた症例に対しては、より早く治療介入でき、治療効果(例えば、肝炎の進行ないし増悪の阻止)の増大を図ることができる。尚、治療開始後、或いは治療方針決定後に本発明を実施した場合には、予測結果を治療方針の変更(見直し)に利用することができる。
4.インターフェロン治療の効果/インターフェロン治療後の臨床経過を予測するための検査キット
本発明は、B型肝炎患者に対するインターフェロン治療の効果及び/又はインターフェロン治療後の臨床経過を予測するための検査キットも提供する。当該検査キットを利用すれば、本IFN治療予測方法を簡便に実施することができる。本発明の検査キットはI97L変異検出用の核酸試薬を必須の要素として含む。I97L変異検出用の核酸試薬の構成は上記の通りであるため、その説明を省略する。
核酸試薬(I97L変異検出用)を使用する際(即ち変異の検出の際)に必要な試薬(各種酵素、緩衝液、標識試薬、発色試薬等)や容器、器具等を本発明のキットに含めてもよい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
1.B型慢性肝炎患者の持続HBV DNA低値及びHBs抗原消失に対する、コアI97L変異と追加のP79Q変異の関連(研究1)
AASLD(参考文献3)やEASL(参考文献5)のガイドラインによると、HBe抗原陰性のB型慢性肝炎患者はHBV DNAが4 log copies/mLより高く、ALT値が正常範囲の上限を超える場合には治療すべきとしている。日本におけるガイドラインではHBV DNAが4 log copies/mLより高く、ALT値が31 IU/Lより高い場合に、HBe抗原陰性B型慢性肝炎患者の治療開始が推奨される(参考文献16)。しかしながら、これらの患者の一部は治療しなくても自然に鎮静化し、結果的にHBV DNA低値且つALT正常の望ましい状態になり、症例によってはHBs抗原の消失がみられる。そのため、その後の臨床的な経過の予測に有用なファクター/指標(遺伝子の変異など)を見つけることが望まれる。本発明者らは、B型慢性肝炎患者におけるHBV DNA低値、ALT正常、HBs抗原消失を予測可能な遺伝子変異を明らかにするため、全遺伝子配列の解析を行った。この研究の目的はHBe抗原陰性B型慢性肝炎患者における、肝炎の鎮静化と関連する遺伝子変異を決定することである。この目的を達成するため、まず、少なくとも2年間の臨床経過に基づき分類したHBe抗原陰性B型慢性肝炎患者について、観察開始時のHBV DNAの全塩基配列を比較した。次に、少なくとも2年間、HBV DNA低値とALT正常の持続する状態への累積達成率を調べた。加えて、Kaplan-Meier法を用い、HBe抗原陰性B型慢性肝炎患者とHBe抗原陽性B型慢性肝炎患者の両方について、HBs抗原の累積消失率と、同定された変異の有無との関係を検討した。
<方法>
検討1:全ウイルス遺伝子配列の比較
ジェノタイプCのHBV DNAを持つ患者を、2年以上の経過観察におけるHBV DNA値とALT値により3つの群に分類した。A群:HBV DNA値 ≧ 5.0 log copies/mL、ALT値 ≧ 120 IU/Lで持続。B群:HBV DNA値 < 5.0 log copies/mL、ALT値 < 60 IU/Lで持続。C群:HBV DNA値 < 4.0 log copies/mL、ALT値 < 30 IU/Lで持続。A群、B群、C群に該当する33名のB型慢性肝炎患者の血清を、名古屋大学附属病院の連続するB型慢性肝炎患者(A群 n=10、B群 n=11、C群 n=12)からレトロスペクティブに入手した。A群では患者の意志により少なくとも2年間、核酸アナログ治療は行われなかった。33人のB型慢性肝炎患者の中に、C型ウイルス肝炎やアルコール多飲、脂肪肝などの肝疾患の合併を認める者はいなかった。超音波検査及び/又はダイナミックCT検査と採血で肝硬変と診断された患者は除外した。HBVウイルスの全核酸配列はネスティッド(nested)PCRとダイレクトシークエンス法により決定した。HBV DNAはQIAamp(登録商標) Circulating Nucleic Acid kit (Qiagen, Hilden, Germany)を使用して200μlの血清から抽出した。最初のPCR(1stPCR)は、Guntherら(参考文献17)によって設計された以下のプライマーを使用した。
FullS (5’-CCG GAA AGC TTG AGC TCT TCT TTT TCA CCT CTG CCT AAT CA-3’, nt 1821-1841)(配列番号2)
FullAS (5’-CCG GAA AGC TTG AGC TCT TCA AAA AGT TGC ATG GTG CTG G-3’, nt 1823-1806) (配列番号3)
二回目目のPCR(2nd PCR)反応には、互いに重複するHBV DNA断片を得るため3セットのプライマーを使用した。即ち、Kanadaら(参考文献18)が以前に設計した以下のプライマーを使用した。
BF1s (5’-TTT TTC ACC TCT GCC TAA TCA-3’, nt 1821-1841)(配列番号4)
BR5 (5’-AAC TGG AGC CAC CAG CAG GA-3’, nt 74-55)(配列番号5)
BF4 (5’-GTC ACC ATA TTC TTG GGA AC-3’, nt 2816-2835)(配列番号6)
BR7 (5’-GGG TTC AAA TGT ATA CCC AA-3’, nt 839-820)(配列番号7)
BF7 (5’-TAT TGG GGG CCA AGT CTG TA-3’, nt 752-771)(配列番号8)
BR1s (5’-AAA AAG TTG CAT GGT GCT GG-3’, nt 1825-1806)(配列番号9)
全てのPCR反応にTaKaRa Ex TaqTM Hot Start Version system (Takara Bio, Otsu, Japan)を使用した。精製後、genomeLabTM Dye Terminator Cycle Sequencing with the Quick Start Kit及びCEQ8000 DNA sequencer (Beckman Coulter, Tokyo, Japan)を使用してDNAの断片をシークエンスした。シークエンス反応には以前に報告された以下のプライマーと、前述したBF1s、BF4、BF7、BR5、BR7及びBR1sを用いた(参考文献18)。
BF2 (5’-CAG ACA ACT ATT GTG GTT TC-3’, nt 2191-2210)(配列番号10)
BF3 (5’-TCT TTA ATC CTG AGT GGC AA-3’, nt 2512-2531)(配列番号11)
BF5 (5’-AAG AGA CAG TCA TCC TCA GG-3’ nt 3183-3202)(配列番号12)
BF6 (5’-CCT CCA ATT TGT CCT GGC TA-3’, nt 350-369)(配列番号13)
BF8 (5’-TTT ACC CCG TTG CCC GGC A-3’, nt 1142-1160)(配列番号14)
BR2 (5’-CAG AAT AGC TTG CCT GAG TG-3’, nt 2080-2061)(配列番号15)
BR3 (5’-TTC CCG AGA TTG AGA TCT TC-3’, nt 2440-2421)(配列番号16)
BR4 (5’-GAC CAA ATG CTC CCG CTC CT-3’, nt 3040-3021)(配列番号17)
BR6 (5’-GAG CAG GGG TCC TAG GAA TC-3’ nt 193-174)(配列番号18)
この改善されたシークエンス法で2.1〜9 log copies/mLのHBV濃度の変異を検出することが可能になった。プレコア(PC)変異(G1896A)とべーサルコアプロモーター(BCP)変異(A1762T/G1764A)のある患者の割合を群間で比較した。また、A群のコンセンサスシークエンスを基準に各群における変異の割合を比較した。その後、A群における頻度<B群における頻度<C群における頻度、となる重要な変異を選出した。エンベロープ領域、コア(プレコアを含む)領域、X領域、及びポリメラーゼ領域について、変異の頻度を群間で比較した。
検討2: 同定された変異の特徴、臨床的経過、及び持続HBV DNA低値とHBs抗原消失の累積発現率
C型慢性肝炎、アルコール摂取、脂肪肝などの肝疾患を合併しないジェノタイプCの123名のB型肝炎患者をレトロスペクティブに評価した。20名は超音波検査及び/又はダイナミックCT検査と採血で肝硬変と診断され、除外した。21名は経過観察期間が2年以内のため除外した。82名のジェノタイプC B型慢性肝炎患者について、検討1で同定した変異の有病率などを調べた。コア領域のアミノ酸配列をネスティッド(nested)PCRのダイレクトシークエンスにより決定した。PCRの手順は検討1と同様であるが、コア領域のみを対象とするため、より増幅効果のよいシークエンスプライマーを2nd PCRに使用した。この2nd PCR用プライマーが、検討1で使用したプライマーと同様の結果をもたらすことを確認した。この2nd PCR用プライマー(以下に示す)はEhataら(参考文献19)が以前報告したものである。
CF1 (5’-GGG AGG AGA TTA GGT TAA-3’, nt 1618-1635)(配列番号19)
CF3R (5’-ACC TTA TGA GTC CAA GGG AT-3’, nt 2347-2328)(配列番号20)
PCR反応は検討1と同様とした。シークエンス反応には以前の研究で設計された(参考文献18、19)以下のプライマーを使用した。
CS4 (5’-GCA CTC AGG CAA GCT ATT CT-3’, nt 1934-1953)(配列番号21)
CS5R (5’-AGA ACA GTT TCT CTT CCA A-3’, nt 2121-2103)(配列番号22)
検討1で見出されたコア領域の他の変異が、同定された変異と連動してHBV DNAレベルに影響する可能性があるため、同定された変異の周囲に存在する、コア領域の追加の変異が、持続するHBV DNA低値及びALT正常の累積発生率に有意差をもたらすか否かも評価した。
これらの患者のベースライン(観察開始時)の特徴を、HBe抗原の状態と同定された変異の有無で比較した。加えて、観察期間中の診察時のHBV DNAレベルとALTレベルを評価した。その後、持続HBV DNA低値且つALT正常(少なくとも2年間持続してHBV DNA値<4.0 log copies/mL且つALT値<30 IU/Lとの条件を満たしたもの)の累積発現率を調べた。同様に、Kaplan-Meier法によりHBs抗原消失率を調べた。尚、この研究は名古屋大学附属病院の倫理委員会で承認された。
血清学的解析
HBs抗原(Architect HBsAg QT; Abbott Laboratories, Abbott Park, IL, USA)、HBe抗原(Architect HBsAg QT; Abbott Laboratories)、及び抗HBe抗体(Architect HBsAg QT; Abbott Laboratories)は化学発光法又は酵素免疫アッセイで測定した。HBV DNAはPCRベースのアッセイ(COBAS TaqMan HBV auto v2.0; Roche Molecular, Pleasanton, NJ, USA; detection limit from 2.1-9.0 log copies/mL)で定量的に検出した。
統計解析
結果は中央値(1/4-3/4)か平均値(±標準偏差)で表した。平均の定量値における群間の違いはStudent’s t-testで解析した。また、ノンパラメトリックデータおいて群間の違いはMann-Whitney U testで測定した。比率における違いはカイ二乗検定で検定した。持続HBV DNA低値且つALT正常、並びにHBs抗原消失とHCCの累積発生率はKaplan-Meier法で決定した。統計解析にはSPSS software version 22.0 (SPSS Japan, Tokyo, Japan)を使用した。すべてのP値は両側検定で求め、P<0.05を統計的有意とした。
<結果>
検討1の患者背景
各群の観察開始時の患者背景を図1に示す。ALTの中央値はA群、B群及びC群でそれぞれ70.5 IU/L、26.0 IU/L及び17.5 IU/Lであった。ALT値はA群よりB群とC群で有意に低かった(それぞれP = 0.024, 0.006)。HBV DNAの中央値はA群、B群及びC群でそれぞれ6.2 log copies/mL、3.8 log copies/mL及び3.4 log copies/mLであった。HBV DNA量はA群よりB群とC群で有意に低かった(それぞれP = 0.007, 0.001)。性差、年齢、T.Bil、アルブミン、血小板値及びHBs抗原については群間で有意な差は見られなかった。2年のフォローアップ後、A群の10人中5人にエンテカビル(entecavir)による治療が行われた。他の5人は経過観察を希望した。B群において、11人中1人に対して4年のフォローアップ後にエンテカビルによる治療が行われた。他の10名は治療が必要ではなかった。C群ではフォローアップ中に治療が必要になったものはいなかった。
べーサルコアプロモーター変異とプレコア変異の比較
BCP(A1762T)変異のある患者の割合はA群、B群及びC群において100%、90.9%及び58.3%であり、群間に有意な違いは見られなかった。PC(G1896A)変異のある患者の割合はA群、B群及びC群において50.0%、63.6%及び75.0%であった。この割合はA群、B群、C群の順で増加したが、有意な差は見られなかった。PC(G1899A)変異のある患者の割合はA群、B群及びC群において10.0%、9.1%及び25.0%であった(図2)。
全遺伝子配列解析から得られた各領域における変異の発生率の比較
方法の欄で定義した重要な変異がエンベロープ領域で3カ所(E A60V、E R189K、E I244T)、コア領域で5カ所(C P79Q、C E83D、C I97L、C L100I、C P130T)、ポリメラーゼ領域で2カ所(P I617L、P R715Q)検出された。これらの中でコアI97L変異の発生率だけが群間で有意に異なっていた(A群は30%、B群は36.4%、C群は83.3%)(P = 0.021)(図3)。コア領域におけるアミノ酸変異残基61から130までを図4に示す。
検討2における患者の背景
HBe抗原の状態で区分した、ベースラインの患者背景を図5に示す。ALT値はHBe抗原陰性患者よりHBe抗原陽性患者で有意に高値であった(P = 0.004)。HBs抗原値とHBV DNA量はHBe抗原陰性患者と比較してHBe抗原陽性患者において有意に高かった(P = 0.022 と P < 0.001)。I97L変異率はHBe抗原陰性の61名の患者において検討1と同様であった。I97L変異はHBe抗原陰性患者により多く認められた(50.8% vs. 14.3%。P = 0.002。HBe抗原陽性患者ではI/L=18/3、HBe抗原陰性患者ではI/L/F/L+F/I+F =25/31/2/1/2。コア領域の97番残基にはI97LとI97Fなどのアミノ酸置換が見られた。2つの変異が混在する場合にはI97L+Fのように表した)。
I97L変異に追加のP79Q変異は持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発現率に有意に影響した。検討1で見つかった他のコア領域変異は持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発現率には有意には影響しなかった。P79Q変異はHBe抗原陰性患者7人(11.5%)のみに観察された。性差、年齢、T.Bil、アルブミン、血小板値及び観察期間に有意な差は見られなかった。I97L変異の有無、又はP79Q変異の有無で区分した臨床背景を図6と図7に示した(I97 F/L+F/I+F/ I+F = 2/1/2の5名の患者は除外した)。I97L変異のある患者のHBs抗原値とHBV DNA量はI97L変異のない患者より有意に低値であった(P = 0.047、0.001)。
I97L変異とP79Q変異のある患者のHBs抗原値は、野生型I97の患者、I97L変異で野生型P79の患者より有意に低値であった(P = 0.022、0.007)。I97L変異で野生型P79の患者、及びI97L変異とP79Q変異のある患者のHBV DNA値は、野生型I97の患者と比べ有意に低値であった(P = 0.005、0.018)(図7)。
I97L変異のある患者ではHBV DNA値は3〜5 log copies/mLで変動し、徐々に減少した。一方、野生型I97の患者では6 log copies/mL付近で観察期間(4年)の間変動した(図8A)。I97L変異のある患者ではALT値が2.5年間30〜60 IU/Lで変動し、その後1.5年は20 IU/L前後で安定した。対照的に野生型I97の患者ではALT値が40〜80 IU/L前後で4年にわたり変動した(図8B)。追加のコアP79Q変異を考慮した場合、I97L変異とP79Q変異のある患者ではHBV DNA値が2〜4 log copies/mLで変動し、徐々に減少した。一方、野生型I97の患者では6 log copies/mL前後で観察期間(4年)の間、変動した(図8C)。I97L変異とP79Q変異のある患者では2.5年間ALT値が20〜50 IU/Lで変動し、その後1.5年は20 IU/Lより低く安定した。対照的に野生型I97でP79Q変異の患者ではALT値が4年にわたって30〜60 IU/Lで変動した(図8D)。I97L変異のある患者において持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発現率(HBV DNA < 4 log copies/mL且つALT < 30 IU/Lを少なくとも2年)は野生型I97の患者より有意に高かった(P = 0.003)(図9A)。更に、HBs抗原消失の累積出現率はI97L変異のある患者で有意に高かった(P = 0.016)(図9B)。コアP79Q変異を考慮に入れた場合、I97L変異とP79Q変異のある患者でHBV DNA低値且つALT正常の累積発現率は、野生型I97で野生型P79の患者、I97L変異で野生型P79の患者より有意に高かった(P < 0.001, P =0.005)。I97L変異で野生型P79の患者における持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者より有意に高かった(P = 0.038)(図9C)。更に、I97L変異とP79Q変異のある患者ではHBs抗原消失の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者より有意に高率であった(P = 0.012)。そして、I97L変異で野生型P79の患者ではHBs抗原消失の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者より有意に高率であった(P = 0.023)(図9D)。
HBe抗原陰性患者の特徴
I97L変異と追加のP79Q変異はHBe抗原陽性患者よりもHBe抗原陰性患者に多くみられる。そこで、I97L変異とP79Q変異の有無に基づき、HBe抗原陰性患者の特徴を比較した。I97L変異の有無で区分したベースラインの臨床背景を図10に示す。一方、I97L変異とP79Q変異の有無で区分したものを図11に示す。I97L変異のある患者は野生型I97の患者より有意に若かった(P = 0.046)。性差、ALT、T.Bil、アルブミン、血小板値、HBs抗原、HBV DNA値及び観察期間については群間で有意な差は見られなかった。I97L変異とP79Q変異のある患者のHBs抗原値は、野生型I97の患者、I97L変異で野生型P79の患者と比較して有意に低値であった(P = 0.026、P = 0.015)。性差、年齢、AL、T.Bil、アルブミン、血小板値、HBV DNA値及び観察期間については有意な差は見られなかった(図11)。I97L変異のある患者ではHBV DNA値は3〜4 log copies/mLで変動し徐々に減少した。一方、野生型I97の患者では5 log copies/mL付近で観察期間(4年)の間変動した(図12A)。I97L変異のある患者ではALT値は2.5年間20〜50 IU/Lで変動し、その後1.5年は20 IU/L程度で安定した。対照的に野生型I97の患者ではALT値は30〜70 IU/L程度4年にわたり変動した(図12B)。追加のコアP79Q変異を考慮した場合、I97L変異とP79Q変異のある患者ではHBV DNA値は3〜4 log copies/mLで変動し、徐々に減少した。一方、野生型I97の患者では5 log copies/mL程度で観察期間(4年)の間、変動した(図12C)。I97L変異とP79Q変異のある患者では2.5年間、ALT値は20〜50 IU/Lで変動し、その後1.5年は20 IU/Lより低く安定した。対照的に野生型I97でP79Q変異の患者ではALT値は4年にわたって30〜70 IU/Lで変動した(図12D)。
I97L変異のあるHBe抗原陰性患者においてHBV DNA低値且つALT正常の累積発現率は野生型I97の患者より有意に高かった(P = 0.036)(図13A)。更に、HBs抗原消失の累積出現率はI97L変異のある患者で有意に高かった(P = 0.044)(図13B)。コアP79Q変異を考慮に入れた場合、I97L変異とP79Q変異のある患者で持続HBV DNA低値とALT正常の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者、I97L変異で野生型P79の患者より有意に高かった(P =0.001、P =0.011)(図13C)。更に、I97L変異とP79Q変異のある患者のHBs抗原消失の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者より有意に高率であった (P = 0.037)。そしてI97L変異で野生型P79の患者のHBs抗原消失の累積発現率は野生型I97で野生型P79の患者より有意に高率であった(P = 0.050)(図13D)。
<考察>
この検討の結果、HBe抗原陰性のB型慢性肝炎患者において持続HBV DNA低値とALT正常と関連するコア領域の変異、I97Lが同定された。驚くことに、このコア領域の変異はHBs抗原消失とも関連していた。Ehataらは、I97Lを含むコア領域(84〜101アミノ酸残基)の変異が免疫反応による肝障害を反映すると報告した(参考文献19)。その研究では、HBe抗原陰性患者のうち4症例全例でコアI97L変異がみられた。また、コア残基84〜99の変異は重症肝炎と関連していることが示された(参考文献20)。更に驚いたことに、コアI97L変異は感染の自然経過中にみられる最も高頻度にみられる変異であった(参考文献21、22)。コア領域の変異は免疫認識部位の周りに頻度が高く見つかり、免疫排除期により多く見られる(参考文献22)。これらの結果はI97L変異が免疫反応により引き起こされるかもしれないことを示している。また、免疫反応が重篤な肝障害を起こしたときにI97L変異を生じさせ、最終的に肝硬変や肝癌を発症させる可能性を示している(参考文献23)。しかしながら、今回の研究ではI97L変異は多くの患者、特にHBe抗原陰性患者に肝硬変のない状態で認められることが示された。それゆえ、ある患者ではI97L変異は重篤な肝障害を起こすことなく、免疫反応により誘導されるかもしれない。あるいは、最初に感染した時にすでに存在するのかもしれない。B型慢性肝炎感染の自然経過中にI97L変異が誘導されるメカニズムを明らかにするためには、更なる研究が必要と考えられる。
今回の結果と以前の研究の結果との乖離は、以前の研究で使用されたHBV DNAを増幅する際のプロトコールの限界によるものかもしれない。今回使用した、進歩したPCRの方法はHBV DNAの検出限界を向上させ、その結果として、I97L変異がHBV DNA低値とALT正常の患者の非活動性期に多く見られることを示した。今回の研究結果は、持続HBV DNA低値である多くの患者がI97L変異を持っていることを示した。更に、この研究でHBs抗原消失を呈した全ての患者がこの変異を持っていた。また、I97L変異に加えてP79Q変異を持つことは、持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発生率に有意に影響を与えていた。検討1でみられた他のコア変異は持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発生率に有意な影響を与えなかった。この研究ではP79Q変異の全てがI97L変異と一緒に存在し、I97L変異への頻度の低いP79Q変異の追加は、I97L変異で野生型P79の患者と比較した場合に、持続HBV DNA低値且つALT正常の累積発生率を有意に増加させた(P = 0.005, P = 0.011。図9C、図13C)。それゆえ、コアI97L変異は単独で持続HBV DNA低値とALT正常を予測することができるものの、頻度が低いとはいえ付加的なコアP79Q変異も考慮することが持続HBV DNA低値とALT正常の予測により有用であった。
2.B型慢性肝炎におけるインターフェロン治療によるコアI97の変化と肝炎沈静化(研究2)
B型慢性肝炎においてその後の経過を予測するにはHBV DNA及びALTの値に加え、コアI97変異及び追加のP79Q変異を測定することが望まれる(研究1)。コアI97変異の更なる臨床的意義を見出すべく、インターフェロン治療前後のI97L変異により、その後肝炎が鎮静化するかどうかを検討した。
<方法>
B型慢性肝炎患者においてインターフェロン治療前後にI97変異が測定された18名(年齢中央値36歳、男/女=14/4、HBe抗原陽性/陰性=12/6、IFN治療/PegIFN治療=7/11)を対象とした。観察期間は中央値3.5年である。インターフェロン治療前後のI97とKaplan-Meier法による累積肝炎沈静化率(HBVDNA値 4.0 log copies/mL未満且つALT値 30 IU/L未満を半年以上持続)と患者背景を比較検討した。I97変異はダイレクトシークエンスにより調べた。
<結果>
観察開始時にHBe抗原陽性例(陽性群=12例)の年齢は中央値で33歳であり、HBe抗原陰性例(陰性群=6例)の中央値59.5歳と比較して有意に若年であった(P=0.003)。その他の項目(ALT、血小板値、T.Bil、アルブミン、HBV DNA、HBs抗原量及び観察期間)に有意な差はみられなかった。陽性群では8例(66.7%)でセロコンバージョンが起こりHBe抗原陰性となった。陽性群ではI97変異はIFN治療前の3/12(25.0%)が治療後の5/12(41.6%)になり、Peg-IFNの施行された2例で治療前I97野生型が治療後I97L変異になり、その後肝炎が沈静化した。陰性群ではI97L変異は治療前で3/6(50%)であり、治療後も変化は見られなかった。治療後I97L変異のある症例の累積肝炎沈静化率はI97L野生型である症例より有意に高率であった(P=0.040)。
<考察>
HBe抗原陽性のB型慢性肝炎患者においてI97野生型の症例の一部でPegIFNによりI97L変異が誘導され、その症例では肝炎が鎮静化した。また、IFN治療前I97L変異例も含めて、IFN治療後におけるI97L変異例ではI97野生型例より肝炎が鎮静化していた。
本発明はB型肝炎患者の治療方針の決定、見直しなどに有用である。本発明によれば、客観的な指標に基づき、患者毎により適切な治療方針を立てることができる。その結果、積極的な治療が必要な患者に対しては早期且つ適時の治療介入が可能になり、重症化の回避、治療効果の増大などを望める。一方、本発明は不要ないし不要な医療行為を未然に防止することにも役立ち、不要な医療行為を未然に防止することによる医療経済への貢献も期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
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配列番号2〜22:人工配列の説明:プライマー

Claims (6)

  1. B型慢性肝炎患者である被検者由来の、遺伝子型がC型のB型肝炎ウイルスにおける、コア領域のアミノ酸配列における97番目のアミノ酸の変異であるI97L変異及びコア領域のアミノ酸配列における79番目のアミノ酸の変異であるP79Q変異の有無を指標にすること特徴とする、B型肝炎患者の臨床経過を予測する方法。
  2. 以下のステップ(1)及び(2)を含む、請求項1に記載の予測方法:
    (1)被検者由来の、遺伝子型がC型のB型肝炎ウイルス遺伝子サンプルについて、I97L変異とP79Q変異の有無を調べるステップ、
    (2)ステップ(1)の結果に基づき、B型慢性肝炎患者の臨床経過を判定するステップであって、I97L変異とP79Q変異の存在は肝炎鎮静化の確率が高いことを表す、ステップ。
  3. 肝炎鎮静化の確率の高さに関する、以下の(a)又は(b)の基準に従いステップ(2)の判定を行う、請求項2に記載の予測方法:
    (a) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合又はI97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
    (b) I97L変異とP79Q変異のいずれも認められない場合 < I97L変異とP79Q変異の片方が認められる場合 < I97L変異とP79Q変異の両方が認められる場合
  4. 以下のステップ(3)を更に含む、請求項2又は3に記載の予測方法:
    (3)判定結果に基づき、被検者の治療方針を決定又は変更するステップ。
  5. 遺伝子型がC型のB型肝炎ウイルスにおける、コア領域のアミノ酸配列における97番目のアミノ酸の変異であるI97L変異を検出するための核酸と、遺伝子型がC型のB型肝炎ウイルスにおける、コア領域のアミノ酸配列における79番目のアミノ酸の変異であるP79Q変異を検出するための核酸と、を含む、B型慢性肝炎患者の臨床経過を予測するための検査キット。
  6. 遺伝子型がC型のB型肝炎ウイルスにおける、コア領域のアミノ酸配列における97番目のアミノ酸の変異であるI97L変異と、コア領域のアミノ酸配列における79番目のアミノ酸の変異であるP79Q変異の、B型慢性肝炎患者の臨床経過を予測するためのマーカーとしての使用。
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