JP5845489B2 - B型肝炎ウイルス群を検出し、遺伝子多様性を評価するためのオリゴヌクレオチドのセット、並びにそれを用いた方法 - Google Patents

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Description

本発明は、B型肝炎ウイルス群を検出し、遺伝子多様性を評価するためのオリゴヌクレオチドのセット、およびそれを用いたB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するための方法に関する。
現在、B型肝炎ウイルス(HBV)は、世界でおよそ3億人が感染しているとの報告がある。B型肝炎ウイルスの感染は急性および慢性の肝炎(B型肝炎)を引き起こし、さらには肝硬変、肝癌を引き起こすことが知られている。また、毎年30万人がB型肝炎関連疾患で死亡していると報告されている。
このB型肝炎ウイルスには多様な遺伝子型(ジェノタイプ)が存在する。提唱されている基準では、ウイルスゲノム全体(約3200塩基長)の8%(約250塩基)以上の塩基に相違が認められる場合、これを別の遺伝子型としており、現在までに、主にA〜Hまでの8種類の遺伝子型が定義されている。個々のB型肝炎ウイルスのゲノム配列と、これら異なる遺伝子型間の近縁関係は、ウイルスゲノムもしくはゲノム上の同一領域の塩基配列間の進化距離を計算することにより定量的に、あるいは、遺伝子系統樹を作成することにより視覚的に確認することが可能である。
一方、このようなB型肝炎ウイルスの遺伝子型や、遺伝子の多様性に関連して、以下のような調査や、医療への応用が行われている。まず、世界中の国々において各地域の人々に感染しているB型肝炎ウイルスの遺伝子型とその分布を調べることによって、人々の過去の移動や共通の祖先を推定することがなされている。また、ヒトからヒトへのB型肝炎ウイルス感染が疑われた場合に、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性に基づいた感染経路の推定が行われている。具体的には、親子関係にある2名の被験者間において、各被験者が有するB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性が異なる場合には第三者からの感染(水平感染)を推定、遺伝子多様性が同じ若しくは近縁種であれば当該2名間での感染(垂直感染、家族内感染)を推定することができる。水平感染の場合、各被験者の有するB型感染ウイルス間の進化距離を計算することにより、共通する感染源からの感染後の経過時間を推定することも行われている。さらに、B型肝炎ウイルスの遺伝子型の相違によって、感染患者における肝疾患の進行速度が異なることが知られており、感染したB型肝炎ウイルスの遺伝子型や感染後の変異に基づいて予測される病理経過を治療方針情報とすることができる。また、感染したB型肝炎ウイルスの遺伝子型に応じた、B型肝炎ウイルス関連疾患を対象とした薬剤の効果が調査されており、投薬方針情報とすることができる。
以上のように、被験者におけるB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を簡易的且つ迅速に評価することができれば、B型肝炎ウイルス感染経路の推定、関連疾患の診断、治療方針の検討の上で極めて有益となり、その社会的、医学的意義は極めて大きい。
このようなB型肝炎ウイルスの遺伝子型を塩基配列に基づき評価する方法としては、例えば、特許文献1〜5における方法として、B型肝炎ウイルスの遺伝子型を特徴付ける核酸領域を含む広範な領域を対象として遺伝子を増幅し、遺伝子型に影響されずに、B型肝炎ウイルスの感染を確実に探知することを目的とし、さらに必要な場合は、増幅した塩基配列を調査することにより、遺伝子型を評価可能とする方法が発明されている。また、特許文献6における方法として、B型肝炎ウイルスの遺伝子型を判別可能な各遺伝子型に特異的な核酸プローブを整備し、プローブのターゲット領域を全て含む広範な領域を増幅して、プローブとのハイブリにより遺伝子型を判定する方法が発明されている。さらに、特許文献7における方法として、B型肝炎ウイルスの其々の遺伝子型と特異的に増幅可能なプライマーのセットにより遺伝子型を判定する方法が発明されている。
国際公開公報第WO/1994/008032号(国際特許出願第PCT/US1993/009233号) 特許第2811321号 特許第4571857号 特許第4463826号 特許第2811321号 特開第2011−120556号 特許第4633523号
上述した特許文献1〜7のように、現在までにB型肝炎ウイルスの遺伝子型を評価可能な方法、および、決定するための手法が発明され報告されている。しかしながら、特許文献1〜5においては、未知の遺伝子型を含めた遺伝子型の評価が可能であり、B型肝炎ウイルスに関する新しい知見やウイルスの進化に対応して、将来にわたり応用可能な手法であるが、遺伝子型の評価に利用する塩基配列の領域及び特定手段が明確に定義されていないため、得られた遺伝子型の情報を異なる作業者の間で相互利用することができない、という問題がある。
これらの方法においては、増幅する塩基配列の全長を遺伝子型判定領域であると定義することも可能であるが、プライマーの設計において増幅領域の全塩基配列を決定することを前提とした設計が行われていないため、増幅領域全般にわたり、安定した塩基配列の解読が可能かどうかの検証がされておらず、また、増幅領域の塩基配列が長いため配列決定にコストがかかり現実的でない。また、特許文献6、7の方法では、遺伝子型の特定方法および得られる情報が明確であり、情報を異なる作業者の間で容易に相互利用することは可能であるが、既知の少数の遺伝子型にしか対応していない、という問題がある。
こうした問題は、例えば、B型肝炎ウイルスに関連した疾患の様態や薬剤の効果の研究において、現在の遺伝子型の定義よりもより詳細な遺伝子情報、すなわち遺伝子の多様性との関連を研究する上で大きな障害となる。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、簡便かつ迅速に、かつ、明確に、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を特定することを可能にするオリゴヌクレオチドのセットを提供することを目的とする。また本発明は、このオリゴヌクレオチドのセットを用いることにより、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するための方法を提供することを目的とする。
本発明の第一の主要な観点によれば、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するためのオリゴヌクレオチドのセットであって、当該オリゴヌクレオチドのセットは、以下の組み合わせ:(a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、(b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、から選択されるものであり、前記配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドの上流配列であり、前記配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドの下流配列である、オリゴヌクレオチドのセット、が提供される。
このような構成によれば、配列番号2〜5の各塩基配列に対応するB型肝炎ウイルスゲノムの各塩基配列領域が、遺伝子型の違いに関わらず、比較的変異の少ない塩基配列領域であることが確認済みであることから、B型肝炎ウイルスの遺伝子型によらず、感染したB型肝炎ウイルスを検出する方法を提供することができる。
さらにこのような構成によれば、前記オリゴヌクレオチドのセットは、配列番号1であらわされるB型肝炎ウイルスゲノム配列において、(a)254塩基長、(b)257塩基長というサイズの領域(目的領域)を増幅するように設計したものであり、すなわち、目的領域の塩基配列長が、DNA濃度などのサンプル条件にばらつきがあっても同じプロトコルで目的通り増幅が可能でありかつワンパスでほぼ100%の精度で配列決定できるなど、塩基配列決定に用いられる様々な装置・手法において容易に全長を解読することが可能な短いサイズの塩基配列でありかつ当該全長塩基配列が安定して決定可能であることを確認済みであることから、より長いサイズの塩基配列の決定において必要となる逆鎖の配列決定による精度向上を必要とせず、目的領域の全塩基配列により遺伝子多様性を評価する方法を提供することができる。
さらにこのような構成によれば、前記目的領域は、多様な遺伝子型における塩基配列の多様性を十分に包含していることを確認済みであり、未知のものも含めて、遺伝子多様性を評価可能な方法を提供することができる。
さらにこのような構成によれば、前記目的領域は、被験者の違い、検出・解読作業者の違い、作業日時の違いに関わらず、B型肝炎ウイルスゲノム上のほぼ同一領域となり、相互に比較可能となる。例えば、遺伝子多様性を評価する方法の応用により、B型肝炎ウイルス感染者間における保有ウイルスの進化距離の計算を行う方法や、1感染者におけるウイルス進化の度合いやその経時変化の観測を行う方法を提供することができる。
さらにこのような構成によれば、解読した前記目的領域の塩基配列をコンピュータに蓄積してデータベース化し、遺伝子多様性比較のための情報源とすることが可能である。例えば、遺伝子多様性を評価する方法の応用により、データベース化された塩基配列と被験者より得たB型肝炎ウイルスの当該目的領域の塩基配列から遺伝子系統樹を作成し、遺伝子系統樹上における位置関係を評価することにより、当該被験者における保有ウイルスの遺伝子多様性の詳細、感染時期、感染経路などを推定する方法を提供することができる。
本発明の第二の主要な観点によれば、被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するための方法であって、前記被験者由来の生物学的試料又は生物学的試料から得られた核酸調製物を鋳型として、前記オリゴヌクレオチドのセットの組み合わせ:(a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、(b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、から選択されるオリゴヌクレオチドのセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により当該生物学的試料又は核酸調製物におけるB型肝炎ウイルス核酸の目的領域を増幅させる工程と、前記増幅させた産物を検出する工程と、前記検出した増幅産物の塩基配列を決定する工程と、前記決定した塩基配列を、予め用意された前記目的領域の塩基配列もしくは塩基配列群と共に系統解析することにより、前記1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価する工程とを有し、前記決定する工程は前記オリゴヌクレオチドのセットを用いるものである、ことを特徴とする、方法、が提供される。
本発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記評価する工程は、前記予め用意された前記目的領域の塩基配列群と、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの目的領域の塩基配列とで進化距離を算出し、与えられた閾値に基づいて、近縁関係にある塩基配列の有無および近縁関係にある塩基配列の由来を特定し、これにより、前記被験者のB型肝炎ウイルス感染経路を推定するものである。
また、本発明の他の実施形態によれば、このような方法において、前記評価する工程は、前記予め用意された前記目的領域の塩基配列群と、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの目的領域の塩基配列とによって遺伝子系統樹を作成し、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの塩基配列の当該遺伝子系統樹における相対的位置により、前記被験者の1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルス感染経路を表現するものである。
本発明の第三の主要な観点によれば、生物学的試料又は生物学的試料から得られた核酸調製物におけるB型肝炎ウイルス核酸の目的領域を増幅させ、塩基配列を決定するためのキットであって、以下の組み合わせ:(a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、(b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、から選択される1若しくはそれ以上のオリゴヌクレオチドのセットを有するものであることを特徴とする、キット、が提供される。
なお、上述した以外の本発明の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る、B型肝炎ウイルスに感染した患者およびその家族構成を示す模式図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る、B型肝炎ウイルスの感染経路を推定するための解析結果を示す図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る、B型肝炎ウイルスの感染経路を推定するための遺伝子系統樹である。 図4は、本発明の一実施形態に係る、B型肝炎ウイルスの感染経路を推定するための遺伝子系統樹で、家族内感染を示唆する結果を得た例である。
上述したように、本発明によれば、B型肝炎ウイルスを検出し、遺伝子多様性を評価するためのオリゴヌクレオチドのセットであって、当該オリゴヌクレオチドのセットは、以下の組み合わせ:(a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、(b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、から選択されるものであり、前記配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドの上流配列であり、前記配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドの下流配列である、オリゴヌクレオチドのセット、が提供される。
また、このオリゴヌクレオチドのセットをプライマーとして利用することで、B型肝炎ウイルスの感染を検出し、遺伝子多様性を簡便且つ迅速に評価することができる。
本発明において、「B型肝炎ウイルス(HBV)」とは、ヘパドナウイルス科、オルトヘパドナウイルス属に属するDNAウイルスであり、細胞外においては直径42nmの球状粒子で、その構造は内部にHBc抗原と部分的に一本鎖である二本鎖環状DNAが存在し、それを包むHBs抗原(S抗原)を有する外被により構成される。B型肝炎ウイルスゲノムの全長は長鎖においては約3020〜3320塩基長、短鎖においては1700〜2800塩基長である。また、殆どのB型肝炎ウイルスは、感染後増殖が盛んな時期に可溶性蛋白質であるHBe抗原を分泌する。
本明細書において使用するB型肝炎ウイルスは、任意の遺伝子型、遺伝子亜型、いずれかのサブタイプ、株、またはバリアントであっても良い(例えば、遺伝子型A−H、遺伝子亜型Aa、Ae、Ba、Bj、S抗原によるサブタイプadr、adw、ayr、aywなど)。B型肝炎ウイルスゲノムの例としては、配列ID番号1で示す配列を有するものがある。
本明細書において、「B型肝炎ウイルス感染」とは、前記B型肝炎ウイルスの生体への感染の事実、感染の様態、および、感染によって引き起こされる症状の全てを指すものである。 なお、本明細書において単に「被験者」と表現した場合は、前記B型肝炎ウイルスの感染が可能である、ヒトおよびチンパンジーなどのサルを含む全ての生体を指すものである。感染の様態としては、不顕性感染、一過性感染、キャリア、無症候キャリア(ウイルスの立場からはセロコンバージョン)などが挙げられる。感染によって引き起こされる症状の具体例としては、B型肝炎、肝硬変、肝繊維化、肝癌などが挙げられる。B型肝炎は、慢性肝炎、急性肝炎、劇症肝炎等に分類することができ、また、これらの各々の肝炎におけるウイルス血症もB型肝炎ウイルス感染症に含まれる。生体がB型肝炎ウイルス感染症であるか否かは、例えば、血清中のB型肝炎ウイルス抗体量の測定、血清中のB型肝炎ウイルスのコア抗原の検出および血清中のB型肝炎ウイルスのRNAの検出、ならびにこれらの組み合わせにより判断することができる。
また、本明細書において、「オリゴヌクレオチド」とは、特定の配列を増幅するためのプライマーや、特定の配列を検出するためのプローブとして使用することのできる塩基配列をいう。本願発明において、オリゴヌクレオチドは、目的の遺伝子、mRNA、cDNAまたはその他の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子またはmRNA分子にハイブリダイズ可能な、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチドのものであり、また好ましくは100ヌクレオチド以下、より好ましくは40ヌクレオチド以下のものである。
本明細書において、「プライマー」とは、任意の標的配列を増幅するために使用されるオリゴヌクレオチドであって、標的配列にハイブリダイズした後に、オリゴヌクレオチドの伸長が行われるものである。なお、オリゴヌクレオチドがプローブとして機能する場合には、そのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする標的配列を検出するために使用される。本願明細書においては、本願明細書において開示されるすべてのオリゴヌクレオチドが、B型肝炎ウイルスの増幅、検出または定量のために使用可能である。
本願発明において、上述した配列ID番号2〜5のオリゴヌクレオチドは、(a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドとのセット、(b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとのセット、のいずれかのセットでプライマーとして使用されることが好ましい。また、本願発明においては、これらのオリゴヌクレオチドのセットを組み合わせたキットを提供することも可能である。
また、本願発明において、配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドは、配列ID番号1で表されるB型肝炎ウイルスゲノム配列上において、配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドの重複領域を含む上流配列となるものである。また、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドは、配列ID番号1で表されるB型肝炎ウイルスゲノム配列上において、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドの重複領域を含む下流配列となるものである。
本願発明において、上述したオリゴヌクレオチドのセットを用いることにより、被験者由来の生物学的試料または生物学的試料から得られた核酸調製物におけるB型肝炎ウイルスの有無を検出し、遺伝子多様性を評価、特定、及び/若しくは判定することができる。また、同一の被験者が異なる遺伝子多様性の複数のB型肝炎に感染する場合や、B型肝炎ウイルスが被験者体内において進化的に多様化して複数の遺伝子多様性のB型肝炎ウイルスが同時に存在する場合など、があるため、本明細書において単に「B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を特定」、「B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価」等と表現した場合には、1若しくはそれ以上の種類のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価等することを指す。なお、本明細書において単に「B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性」等と表現した場合は、B型肝炎ウイルスにおいて提唱されている遺伝子型分類の基準(ウイルスゲノムの全塩基配列の8%以上の塩基に相違があるものをA−Hに分類)に加え、限定されたゲノム領域における塩基配列の相違や、より小さな割合の相違に基づく遺伝子の多様性が定義される可能性を含むものである。
また、本明細書において、「生物学的試料」または「生物学的試料から得られた核酸調製物」とは、被験者から得られる試料であって、本願発明に係るオリゴヌクレオチドのセットを用いてB型肝炎ウイルス核酸の所定の領域を増幅させることができるものであれば良い。例えば、これらに限られるものではないが、尿、血液(全血、末梢血を含む)、血清、血漿を含む体液、LCRまたは肝臓バイオプシーのような組織が含まれる。
また、本明細書において、B型肝炎ウイルス核酸の所定の領域を増幅させるためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が用いられる。PCRとしては、分子生物学又は医学分野において通常用いられるものであって、B型肝炎ウイルスを迅速にかつ正確に検出できるものであれば特に制限されることなく、公知の方法、種類や条件を同様に使用できる。また、PCRは、変性段階ならびにアニーリング及び伸張段階よりなる2段階PCRであることが好ましい。例えば、本願発明においては、通常のPCRに加えて、リアルタイムPCR、Nested−PCR、PCR−RFLP(Restriction fragment length polymorphism)、RT(Reverse transcription)−PCR、RAPD(Random amplified polymorphic DNA)−PCR等を使用しても良い。また、本願発明に係る方法を実施するためには、好ましくはNested−PCRが用いられる。また、PCRの条件としては、目的領域を適切に増幅させるために当業者が適宜設定可能である。
本明細書において、「目的領域」とは、本願発明に係るオリゴヌクレオチドのセットを用いることによって増幅することのできる、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するために適切なB型肝炎ウイルスゲノムにおける塩基配列領域である。本願発明においては、目的領域の塩基配列の相違に基づいてB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を決定する。また、本願明細書において、「目的領域」と表現した場合には、B型肝炎ウイルスゲノムにおける特定の領域を示すものであるが、異なるプライマーセットを用いることによりその領域と配列長は若干異なるものとなる。
本明細書において、増幅産物の検出は、これに限定されるものではないが、例えば核酸プローブを用いて検出することができる。核酸プローブは、本願発明に係るオリゴヌクレオチドのセットにより増幅される領域を特異的に検出するプローブであればよい。核酸プローブは、上記目的領域の増幅産物に相補的であり、且つ相互の交差反応性がより低い核酸プローブを用い、増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイゼーションさせ、それぞれの核酸プローブに結合した増幅産物を検出する。好ましくは、本願発明に係る一実施形態において、増幅産物の検出は、目的領域を増幅させるために用いたオリゴヌクレオチドのセットが用いられる。また、核酸プローブと増幅産物とのハイブリダイゼーションは適切な条件下で行うことができる。適切な条件は、特に制限されるものではなく、増幅産物の種類や構造、検出配列に含まれる塩基の種類、核酸プローブの種類によって異なり、当業者が適宜設定可能である。
また、検出には、任意の基体に固定化したプローブと増幅産物とがハイブリダイズした2本鎖核酸を用いることができる。この2本鎖核酸は、例えば、これらに限定されるものではないが、放射性物質、蛍光染料、ジゴキシゲニン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アクリジウムエステル、ビオチン及びナタ豆ウレアーゼ(jack bean urease)等によって標識されたプローブを用いて検出することもできる。また、増幅産物を、電気泳動後に染料により視覚化することによって検出してもよい。
また、本願発明に係る一実施形態において、本願発明に係るオリゴヌクレオチドのセットを用いて上記目的領域を増幅させた後、当該領域に係る核酸の塩基配列の決定は、分子生物学や医学の分野において周知の任意の手段を用いることができる。
本願発明に係る一実施形態において、被験者より得た生物学的試料または生物学的試料から得られた核酸調製物より増幅させた目的領域の塩基配列を、予め用意した目的領域の塩基配列群と共に系統解析することにより、B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価することができる。この場合、予め用意した目的領域の塩基配列群と、被験者より得た生物学的試料または生物学的試料から得られた核酸調製物由来の目的領域の塩基配列とで、相互の目的領域間の塩基配列の差異に基づき、進化距離を計算することによって、遺伝子多様性の評価を行うが、この進化距離の計算は種々の方法によって行われる。例えば、本願発明における一実施形態において、系統解析を行う際のデータ解析手法としてはクラスタ解析や各種解析ソフトウェアや解析アルゴリズム等の分子遺伝学、分子生物学又は生命情報科学等の分野で用いられる任意の解析手段を用いることができる。より具体的には、例えば、予め用意した目的領域の塩基配列群と、被験者における目的領域の塩基配列とを対象に、解析ソフトウェア「CLUSTALW」を用いてマルチプルアライメントを実施した後、解析アルゴリズム「Gojobori’s 6 parameters法」により塩基配列間の進化距離の推定を行うことができる。
また、本願発明に係る一実施形態において、被験者より得た生物学的試料または生物学的試料から得られた核酸調製物より増幅させた目的領域の塩基配列と、予め用意した目的領域の塩基配列群とによって遺伝子系統樹を作成することもできる。本願発明においては、遺伝子系統樹は、近隣接合法(NJ法)やUPGMA法等の任意の手法によって作成可能である。
また、本願発明においては、予め用意された目的領域の塩基配列群や当該配列群に関連する各種データを、任意のデータベースに格納できる構成を取り得る。すなわち、本願発明は、このようなデータを格納するデータベースと、当該データ及び各種解析に必要なプログラム等を読み出して実行する解析装置をも提供することができる。このような解析装置によれば、当該データベースから蓄積データを取り出し、被験者より得た生物学的試料または生物学的試料から得られた核酸調製物より増幅させた目的領域の塩基配列データと比較するだけで、被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性をいつでも簡便に評価することができる。
また、本願発明においては、上述のようにして求めた進化距離や、遺伝子系統樹上における相対的な位置により、親子関係にある2名の被験者が感染したB型感染ウイルスが、水平感染によるものか、或いは垂直感染によるものなのかを推定することができる。例えば、式1によって求められるPの値によって、垂直感染、すなわち家族内感染を推定できる。より具体的には、式1によって求められるPの値が10e(−15)以上である場合、家族内感染を推定できる。
Figure 0005845489
次に、本発明の効果に関して実施例を示して説明する。しかし、本発明は以下に記載された実施例に限定されるものではなく、様々な変更及び修飾は当業者によって容易になされることが理解されるであろう。
以下に、本実施形態による実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
後述する実施例は、以下に記載する実験方法および実験材料を用いて実験を行った。なお、ここで説明する実験方法および実験材料は例示的なものであり、当業者であれば、本願発明を実施するため、ここで説明する実験方法および実験材料と同等のその他の実験方法および実験材料を採用することができる。
実験概要および結果
以下の実施例においては、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染した10家族の合計23人の被験者を対象としている。各家族における家族構成と被験者の関係を図1に示す。図中の各ダイアグラムのタイトル(FM1〜FM10)が家族ID、各ダイアグラム中の数字(1〜23)が被験者IDである。各ダイアグラムのノードである丸および四角は女性および男性を表し、ノードとエッジの組み合わせで家族の関係を表している。すなわち、各ダイアグラムにおいて上段下段で親子を表し、1本の直線であるエッジで繋がれた2つのノードが両親であることを表している。
各被験者の血清より抽出したB型肝炎ウイルスのDNAは、B型肝炎ウイルスの目的領域を、配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとのセット、および、配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドとのセットを用いて、ネステッドPCR法により増幅し、配列決定を行った。
また、本実施例においては、前記予め用意されたB型肝炎ウイルスの目的領域の塩基配列群として、Hepatitis Virus Database(HVDB、URL:http://s2as02.genes.nig.ac.jp/)より情報を収集した。収集した塩基配列群はA〜Hの遺伝子型に属す97の塩基配列である(表2)。予め用意した目的領域の塩基配列群と、前記被験者より取得したB型肝炎ウイルスの目的領域の塩基配列とを対象に、解析ソフトウェア「CLUSTALW」を用いてマルチプルアライメントを実施した後、解析アルゴリズム「Gojobori’s 6 parameters法」により進化距離を算出し、また、NJ法により遺伝子系統樹を作成した。
評価の結果、9つの家族に属する全被験者由来の塩基配列は遺伝子型Cであり、各家族に属する被験者由来の塩基配列は、それぞれ遺伝子系統樹において1つのクラスタに位置した。しかしながら、4名の被験者からなる残り1家族(図1における家族FM2)については、3名(被験者ID3、4、5)由来の塩基配列は、同じクラスタの極近傍に集中しているのに対して、残り1名(被験者ID6)由来の塩基配列は他の被験者由来の塩基配列と異なるクラスタに位置しており、この被験者のみ、感染経路が異なっていることが示唆された(図3)。
実験方法及び実験材料
(患者)
表1に、本実施例において用いた10家族の合計23人の被験者に関する情報を示す。
Figure 0005845489
すべての被験者のB型肝炎ウイルスへの感染がHBs抗原ポジティブとして確認されており、また、B型肝炎ウイルスの家族内感染およびB型肝炎ワクチンの接種履歴が記録されている。すべての被験者から血清サンプルを得て、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)、B型肝炎表面抗体(抗HBs)、およびB型肝炎コア抗体(抗HBc)の確認試験を行なった。確認試験までの間、血清サンプルはアリコートに分け−80℃で保存した。
(血清学的テスト)
血清は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、B型肝炎e抗原(HBeAg)、及びHBeAgに対する抗体(HBe抗体)(日本、東京、Dinabot)について検査を行なった。HBcAgに対する抗体(抗HBc)の診断は、ARCHITECT(日本、東京、アボットジャパン)によって検証した。
無症候キャリアの定義は、被験者にB型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗体)が存在するにも関わらず、1年間(3ヵ月の間隔で少なくとも4回調査)にわたってALTレベルが正常であり、且つ、門脈高血圧症の兆候が無い場合とした。
慢性肝炎の定義は、6ヵ月間(隔月で少なくとも3回の調査)にわたって、持続して高いALTレベル(正常[35IU/リットル]の上限の1.5倍以上)である場合とした。
血清中のB型肝炎ウイルスのDNA濃度は、市販キット(スイス、バーゼル、Roche Diagnostics、Taqman Real−time PCR;Amplicor HBV Monitor)で、2.6〜7.6 log copies/mlの検出範囲で数量化した。
(B型肝炎ウイルスDNAの抽出)
血清からのB型肝炎ウイルスDNAの抽出は、200mlの血清から、QIAamp DNA Blood Mini Kit(カリフォルニア州バレンシア、Qiagen)を用いて抽出した。抽出したDNAは、後述するようにB型肝炎ウイルスの目的領域の増幅およびダイレクトシークエンシングによる目的領域の塩基配列の取得のために用いた。
(B型肝炎ウイルスのDNA塩基配列の決定)
B型肝炎ウイルスの目的領域は、配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとのセット、および、配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドとのセットを用いて、Nested PCRにより増幅し、塩基配列を決定した。すなわち、Nested PCR用の外側セット用のフォワードプライマーが、5’−AGGTATGTTGCCCGTTTGTC−3’(HBS/F2)(配列ID番号4)であり、内側セット用のフォワードプライマーが5’−GTATGTTGCCCGTTTGTCCT−3’(HBS/F1)(配列ID番号2)である。またNested PCR用の外側セット用のリバースプライマーが5’−AAAGCCCTACGAACCACTGA−3’(HBS/R2)(配列ID番号5)、及び内側セットのリバースプライマーが用の5’−AAGCCCTACGAACCACTGAA−3’(HBS/R1)(配列ID番号3)である。Nested PCRは、Veriti(カリフォルニア州フォスターシティー、Applied Biosystems)を用いて、第1および第2のPCRにおいて上記プライマーによって35サイクル(95℃、15秒;58℃、30秒;72℃、30秒)で実行した。PCR産物は、Nested PCRの第2のPCRで使用したプライマーのセットと同じもの(配列ID番号2及び配列ID番号3)を用いて、BigDye Terminator V3.1サイクル・シークエンシング・キット(カリフォルニア州フォスターシティー、Applied Biosystems)で、両側でシーケンシング反応を行った。シーケンシング反応産物は、ABI 3130xl DNA分析器(Applied Biosystems)で分析し、塩基配列を得た。得られた配列は、B型肝炎ウイルスの各遺伝子型に対応するGenBankの塩基配列と比較した。
(予め用意された目的領域の塩基配列群の整備)
前記予め用意された目的領域の塩基配列群として、Hepatitis Virus Database(HVDB)よりB型肝炎ウイルスのS遺伝子配列を、関連情報を含めて収集した。S遺伝子配列は前記目的領域を含んでいる。収集した塩基配列により遺伝子系統解析を行い、遺伝子系統的な多様性を代表する塩基配列を選択した。また、代表的なA〜Hまでの8種類の遺伝子型の情報を加え、予め用意された目的領域の塩基配列群とした。予め用意された目的領域の塩基配列群を構成する塩基配列の内容を表2に示す。
Figure 0005845489
(被験者由来の塩基配列の評価のための計算)
被験者由来のB型肝炎ウイルスの目的領域の塩基配列(評価対象配列)は以下のようにして評価した。評価対象配列を上述の予め用意された目的領域の塩基配列群に加え、全体の塩基配列を解析ソフトウェア「CLUSTALW」で解析し、マルチプルアライメントを作成した。ここでは、評価対象配列の質に関係なく、評価対象配列間のダイレクトアライメントを行った場合よりも正確なアライメントが得られた。マルチプルアライメントにおいて全配列に共通する領域だけを使用して、Gojobori’s 6 parameters法により、塩基配列間の進化距離を計算し、進化距離マトリックスを作成した。最後に、NJ法を用いて進化距離マトリックスから遺伝子系統樹を作成した。
核酸の違いの分布はポアソン分布によって近似されるが、本実施例においては、PCR産物における相違部位数の平均は4.67塩基であった。2つの独立したサンプルが偶然に同じ配列を有している確率は1%未満と推定され、家族内感染のケースでは偽陽性データはほとんど出現しなかった。
前述のとおり、上記方法により10家族23被験者の感染経路を決定する分析を行った。1つの家族から得られた2つまたは3つの配列データは、家族ID:FM2のケースを除いて、1つのクラスタに分類された(図4)。これらの9つの系統の感染経路は家族内であり、これは、予め被験者より得ていた家族内感染情報を裏付けるものであった。
(家族における多重感染経路のケース)
家族ID:FM2のケースの結果は他とは異なる。表1および図1に示すように、この家族には4人のキャリア、すなわち、3姉妹(被験者ID4、5、6)、及びその姉妹のうちの1人(被験者ID4)の息子(被験者ID3)が含まれる。全体の塩基配列を対象に解析ソフトウェア「CLUSTALW」によりマルチプルアライメントを作成し、相違塩基数を算出した(図2)。被験者ID6由来の塩基配列(図2中でprobe3)のみが、他の被験者由来の塩基配列と比較して4塩基異なっていたことを示している。この結果から、被験者ID3、4、5の間でのB型肝炎ウイルスへの感染が垂直感染(家庭内感染)であったことが、また、被験者ID6への型肝炎ウイルスへの感染が水平感染であったことが推測された。前述の方法により家族ID:FM2のケースで遺伝子系統樹を作成すると(図3)、被験者ID6由来の塩基配列のみが、他のメンバーから遠く離れたクラスタに分類さてており、明らかに感染経路が異なることが示唆された。
その他、本発明は、さまざまに変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。

Claims (8)

  1. B型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するためのオリゴヌクレオチドのセットであって、当該オリゴヌクレオチドのセットは、以下の組み合わせ:
    (a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、
    (b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、
    (c)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、
    (d)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、
    から選択されるものであり、前記配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドの上流配列であり、前記配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドは、前記配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドの下流配列である、オリゴヌクレオチドのセット。
  2. 配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドとのセットである、請求項1記載のオリゴヌクレオチドのセット。
  3. 配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとのセットである、請求項1記載のオリゴヌクレオチドのセット。
  4. 被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価するための方法であって、
    前記被験者由来の生物学的試料又は生物学的試料から得られた核酸調製物を鋳型として、配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチドとを有するオリゴヌクレオチドのセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により当該生物学的試料又は核酸調製物におけるB型肝炎ウイルス核酸の目的領域を増幅させる工程と、
    前記増幅させた産物を検出する工程と、
    前記検出した増幅産物の塩基配列を決定する工程と、
    前記決定した塩基配列を、予め用意された前記目的領域の配列群と共に系統解析することにより、前記1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの遺伝子多様性を評価する工程と
    を有し、前記決定する工程は前記オリゴヌクレオチドのセットを用いるものである、
    ことを特徴とする、方法。
  5. 請求項4記載の方法において、
    前記評価する工程は、前記予め用意された前記目的領域の配列群と、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの目的領域との進化距離を算出し、与えられた閾値に基づいて、近縁関係にある配列の有無および近縁関係にある配列の由来を特定し、これにより、前記被験者のB型肝炎ウイルス感染経路を特定するものである、
    ことを特徴とする、方法。
  6. 請求項4記載の方法において、
    前記評価する工程は、前記予め用意された前記目的領域の配列群と、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの目的領域とによって遺伝子系統樹を作成し、前記被験者が有する1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルスの塩基配列の当該系統樹における相対的位置により、前記被験者の1若しくはそれ以上のB型肝炎ウイルス感染経路を表現するものである、
    ことを特徴とする、方法。
  7. 請求項4記載の方法において、この方法は、さらに、
    前記被験者由来の生物学的試料又は生物学的試料から得られた核酸調製物を鋳型として、配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとを有するオリゴヌクレオチドのセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により当該生物学的試料又は核酸調製物におけるB型肝炎ウイルス核酸の目的領域を増幅させる工程を有するものであり、
    前記増幅させる工程は、前記増幅させた目的領域を鋳型として、配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチド若しくは配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド若しくは配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチドとを有するオリゴヌクレオチドのセットを用いるものである、
    ことを特徴とする、方法。
  8. 生物学的試料又は生物学的試料から得られた核酸調製物におけるB型肝炎ウイルス核酸の目的領域を増幅させ、塩基配列を決定するためのキットであって、以下の組み合わせ:
    (a)配列ID番号2で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号3で表されるオリゴヌクレオチド、
    (b)配列ID番号4で表されるオリゴヌクレオチドと、配列ID番号5で表されるオリゴヌクレオチド、
    から選択される1若しくはそれ以上のオリゴヌクレオチドのセット
    を有するものであることを特徴とする、キット。
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