以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[実施の形態1]
(点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成)
図1A、Bは、実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100の構成の一例を示す断面図である。図1Aは、点滴灌漑用チューブ100の軸方向における断面図であり、図1Bは、点滴灌漑用チューブ100の当該軸方向に垂直な方向における断面図である。点滴灌漑用チューブ100は、チューブ110およびエミッタ120を有する。
チューブ110は、灌漑用液体を流すための管である。灌漑用液体は、例えば、ポンプを用いてチューブ110内に送られる。チューブ110の管壁には、チューブ110の軸方向において所定の間隔(例えば、200〜500mm)で灌漑用液体をチューブ110外に吐出するための複数の吐出口112が形成されている。吐出口112の開口部の直径は、灌漑用液体が通過することができれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出口112の開口部の直径は、1.5mmである。チューブ110の内壁面の吐出口112に対応する位置には、エミッタ120がそれぞれ接合されている。チューブ110の軸方向に垂直な断面形状および断面積は、チューブ110の内部にエミッタ120を配置することができれば特に限定されない。
チューブ110の材料は、特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の材料は、ポリエチレンである。
灌漑用液体の例には、水、液体肥料、農薬およびこれらの混合液が含まれる。
図2A〜Cは、実施の形態1に係るエミッタ120またはエミッタ本体121の構成を示す図である。図2Aは、エミッタ本体121の平面図であり、図2Bは、エミッタ120の平面図であり、図2Cは、エミッタ120の底面図である。図3は、本実施の形態に係るエミッタ120の構成を示す断面図である。図3は、図2Bに示されるA−A線における断面図である。
図1Aに示されるように、エミッタ120は、吐出口112を覆うようにチューブ110の内壁面に接合されている。エミッタ120の形状は、チューブ110の内壁面に密着して、吐出口112を覆うことができれば特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の軸方向に垂直な方向の断面における、チューブ110の内壁面に接合するエミッタ120の裏面の形状は、チューブ110の内壁面に沿うように、チューブ110の内壁面に向かって凸の略円弧形状である。エミッタ120の平面視形状は、四隅がR面取りされた略矩形状である。エミッタ120の大きさは、特に限定されない。本実施の形態では、エミッタ120の長辺方向の長さは25mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.5mmである。
本実施の形態に係るエミッタ120は、少なくとも、エミッタ本体121、フィルム122およびカバー123よって構成されている。エミッタ120の機能の詳細については後述する。
エミッタ本体121(エミッタ120)は、互いに表裏の関係にある第1面1211および第2面1212を有する。本実施の形態では、第1面1211は、エミッタ120の表面側(灌漑用液体側)に位置し、第2面1212は、エミッタ120の裏面側(チューブ110側)に位置する。
エミッタ本体121には、本実施の形態の効果を得られる範囲内において、凹部、溝、凸部および貫通孔が、適宜に形成されている。詳細については後述するが、本実施の形態では、エミッタ本体121の第1面1211には、少なくとも、取水用凹部153、流量減少用凹部161および逆流防止用凹部171が形成されている(図2A参照)。また、エミッタ本体121の第2面1212には、少なくとも、第1接続溝131、第1減圧溝132、第2接続溝133、第2減圧溝134および吐出用凹部181が形成されている(図2C参照)。
エミッタ本体121は、適度な可撓性を有する材料で形成されている。エミッタ本体121の材料の例には、樹脂およびゴムが含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。エミッタ本体121の可撓性は、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。エミッタ本体121の可撓性の調整方法の例には、弾性を有する樹脂の選択や、硬質の樹脂材料に対する弾性を有する樹脂材料の混合比の調整などが含まれる。エミッタ本体121は、例えば、射出成形によって製造されうる。
フィルム122は、エミッタ本体121の第1面1211の一部に接合されている。フィルム122は、流量減少用凹部161の開口部を塞ぐようにエミッタ本体121上に配置されている。すなわち、フィルム122は、当該開口部の外側の部分でエミッタ本体121に接合されている。フィルム122は、可撓性を有し、灌漑用液体の圧力により変形する。
フィルム122の形状および大きさは、エミッタ本体121の形状および大きさや、エミッタ本体121に形成されている流量減少用凹部161の開口部の形状および大きさなどに応じて適宜設定されうる。フィルム122の厚みは、所望の可撓性に応じて適宜設定されうる。
フィルム122は、可撓性を有する樹脂材料で形成されている。フィルム122の材料は、所望の可撓性に応じて適宜設定されうる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。フィルム122の可撓性も、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。フィルム122の可撓性の調整方法の例は、エミッタ本体121の可撓性の調整方法と同じである。フィルム122は、例えば、射出成形によって製造されうる。
エミッタ本体121およびフィルム122は、一体であってもよいし、別体であってもよい。たとえば、エミッタ本体121およびフィルム122は、それぞれヒンジ部を介して一体的に形成されていてもよい。ヒンジ部を軸にフィルム122を回動させ、フィルム122をエミッタ本体121の第1面1211に接合すればよい。エミッタ本体121およびフィルム122の接合方法は、特に限定されない。当該接合方法の例には、樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。なお、上記ヒンジ部は、エミッタ本体121およびフィルム122を接合した後に切断されてもよい。
カバー123は、エミッタ121本体の第1面1211の一部に接合されている。カバー123は、逆流防止用凹部171の開口部を塞ぐようにエミッタ本体121上に配置されている。すなわち、カバー123は、当該開口部の外側の部分でエミッタ本体121に接合されている。カバー123の形状および大きさは、エミッタ本体121の形状および大きさや、エミッタ本体121に形成されている逆流防止用凹部171の開口部の形状および大きさなどに応じて適宜設定されうる。
カバー123は、可撓性を有する材料で形成されていてもよいし、剛性を有する材料で形成されていてもよい。カバー123の材料の例には、樹脂、ゴムおよび金属が含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。カバー123の可撓性は、エミッタ本体121の可撓性の調整方法と同じである。カバー123は、例えば、射出成形によって製造されうる。本実施の形態では、カバー123は、剛性を有する材料で形成されている。本明細書中、「剛性を有する材料」とは、当該材料によって形成された部材が、灌漑用液体の圧力によって変形しない程度の剛性を有する材料を意味する。
エミッタ本体121およびカバー123は、一体であってもよいし、別体であってもよい。エミッタ本体121およびカバー123の接合方法の例は、エミッタ本体121およびフィルム122の接合方法の例と同じである。
フィルム122およびカバー123は、一体であってもよいし、別体であってもよい。フィルム122およびカバー123が一体である場合、フィルム122およびカバー123は、いずれも可撓性を有する。本実施の形態では、フィルム122およびカバー123は、別体である。カバー123に剛性を付与する観点からは、フィルム122およびカバー123は、別体であることが好ましい。
点滴灌漑用チューブ100は、エミッタ120の裏面をチューブ110の内壁面に接合することによって作製される。チューブ110とエミッタ120との接合方法は、特に限定されない。当該接合方法の例には、エミッタ120またはチューブ110を構成する樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。なお、通常、吐出口112は、チューブ110とエミッタ120とを接合した後に形成されるが、接合前に形成されてもよい。
エミッタ120は、取水部150、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144、流量減少部160、逆流防止弁170および吐出部180を有する。取水部150および流量減少部160は、エミッタ120の表面(エミッタ本体121の第1面1211)に配置されている。また、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144および吐出部180は、エミッタ120の裏面(エミッタ本体121の第2面1212)に配置されている。逆流防止弁170は、第1面1211および第2面1212に開口している貫通孔内に配置されている。
エミッタ120およびチューブ110が互いに接合されることにより、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144および吐出部180が形成される。また、エミッタ120において、取水部150と吐出部180とを繋ぐ流路も形成される。当該流路は、取水部150から吐出部180まで灌漑用液体を流通させる。
取水部150は、灌漑用液体をエミッタ120内に取り入れる。取水部150は、エミッタ本体121の第1面1211の約半分の領域に配置されている(図2A、B参照)。取水部150は、取水側スクリーン部151および取水用貫通孔152を有する。
取水側スクリーン部151は、エミッタ120に取り入れられる灌漑用液体中の浮遊物がエミッタ120内に侵入することを防止する。取水側スクリーン部151は、チューブ110内に対して開口しており、取水用凹部153、複数のスリット154および複数のスクリーン用凸条部155を有する。
取水用凹部153は、エミッタ本体121の第1面1211において、フィルム122が接合されていない領域に形成されている凹部である。取水用凹部153の深さは特に限定されず、エミッタ120の大きさに応じて適宜設定される。取水用凹部153の外周壁には複数のスリット154が形成されており、取水用凹部153の底面上には複数のスクリーン用凸条部155が形成されている。また、取水用凹部153の底面には取水用貫通孔152が形成されている。
複数のスリット154は、取水用凹部153の内側面と、エミッタ本体121の外側面とを繋いでおり、エミッタ本体121の側面から灌漑用液体を取水用凹部153内に取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物が取水用凹部153内に侵入することを防止する。スリット154の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、スリット154の形状は、エミッタ本体121の外側面から取水用凹部153の内側面に向かうにつれて、幅が大きくなるように形成されている(図2A、B参照)。このように、スリット154は、いわゆるウェッジワイヤー構造となるように構成されているため、取水用凹部153内に流入した灌漑用液体の圧力損失が抑制される。
複数のスクリーン用凸条部155は、取水用凹部153の底面上に配置されている。スクリーン用凸条部155の配置および数は、取水用凹部153の開口部側から灌漑用液体を取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物の侵入を防止することができれば特に限定されない。本実施の形態では、複数のスクリーン用凸条部155は、スクリーン用凸条部155の長軸方向がエミッタ120の短軸方向に沿うように配列されている。また、スクリーン用凸条部155は、エミッタ本体121の第1面1211から取水用凹部153の底面に向かうにつれて幅が小さくなるように形成されている。すなわち、スクリーン用凸条部155の配列方向において、隣接するスクリーン用凸条部155間の空間は、いわゆるウェッジワイヤー構造となっている。また、隣接するスクリーン用凸条部155間の間隔は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。このように、隣接するスクリーン用凸条部155間の空間は、いわゆるウェッジワイヤー構造となるように構成されているため、取水用凹部153内に流入した灌漑用液体の圧力損失が抑制される。
取水用貫通孔152は、取水用凹部153の底面に形成されている。取水用貫通孔152の形状および数は、取水用凹部153の内部に取り込まれた灌漑用液体をエミッタ本体121内に取り込むことができれば特に限定されない。本実施の形態では、取水用貫通孔152は、取水用凹部153の底面において、エミッタ120の長軸方向に沿って形成された1つの長孔である。この長孔は、複数のスクリーン用凸条部155により部分的に覆われているため、第1面1211側から見た場合、取水用貫通孔152は、多数の貫通孔に分かれているように見える。
チューブ110内を流れてきた灌漑用液体は、取水側スクリーン部151によって浮遊物が取水用凹部153内に侵入することが防止されつつ、エミッタ本体121内に取り込まれる。
第1接続流路141(第1接続溝131)は、流路に配置されており、取水部150(取水用貫通孔152)と、第1減圧流路142(第1減圧溝132)とを接続する。第1接続流路141(第1接続溝131)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第1接続溝131とチューブ110の内壁面とにより、第1接続流路141が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路141を通って、第1減圧流路142に流れる。
第1減圧流路142(第1減圧溝132)は、流路において第1接続流路141の下流に配置されており、第1接続流路141(第1接続溝131)と第2接続流路143(第2接続溝133)とを接続する。第1減圧流路142は、取水部150から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、第2接続流路143に導く。第1減圧流路142(第1減圧溝132)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に配置されている。本実施の形態では、第1減圧流路142の上流端は第1接続流路141に接続されており、第1減圧流路142の下流端は第2接続流路143の上流端に接続されている。
第1減圧溝132の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、第1減圧溝132の平面視形状は、ジグザグ形状である。第1減圧溝132には、内側面から突出する略三角柱形状の第1凸部1361が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。第1凸部1361は、平面視したときに、先端が第1減圧溝132の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が互いに接合されることで、第1減圧溝132とチューブ110の内壁面により、第1減圧流路142が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1減圧流路142により減圧されて第2接続流路143(第2接続溝133)に導かれる。
第2接続流路143(第2接続溝133)は、流路において第1減圧流路142の下流に配置されており、第1減圧流路142(第1減圧溝132)と、第2減圧流路144(第2減圧溝134)とを接続する。第2接続流路143は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の短軸方向に沿って直線状に形成されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第2接続溝133とチューブ110の内壁面とにより、第2接続流路143が形成される。取水部150から取り込まれ、第1接続流路141に導かれ、第1減圧流路142で減圧された灌漑用液体は、第2接続流路143を通って、第2減圧流路144に導かれる。
第2減圧流路144(第2減圧溝134)は、流路において第2接続流路143の下流に配置されており、第2接続溝133(第2接続流路143)と、流量減少部160とを接続する。第2減圧流路144は、第2接続流路143から流入した灌漑用液体の圧力を減圧させて、流量減少部160に導く。第2減圧流路144(第2減圧溝134)は、エミッタ本体121の第2面1212の外縁部においてエミッタ120の長軸方向に沿って配置されている。第2減圧溝134の上流端は第2接続溝133の下流端に接続されており、第2減圧流路144の下流端は流量減少部160の第1接続用貫通孔164に接続されている。
第2減圧溝134の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、第2減圧溝134の平面視形状は、第1減圧溝132の形状と同様のジグザグ形状である。第2減圧溝134には、内側面から突出する略三角柱形状の第2凸部1362が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。第2凸部1362は、平面視したときに、先端が第2減圧溝134の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることで、第2減圧溝134とチューブ110の内壁面により、第2減圧流路144が形成される。取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1減圧流路142および第2減圧流路144により減圧されて、流量減少部160に導かれる。
流量減少部160は、流路内において、第2減圧流路144の下流であり、かつ逆流防止弁170の上流に配置されており、かつエミッタ120の表面側に配置されている。流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によるフィルム122の変形に応じて灌漑用液体の流量を減少させつつ、灌漑用液体を逆流防止弁170に送る。
流量減少部160の構成は、上記の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、流量減少部160は、流量減少用凹部161、弁座部162、連通溝163、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165、およびダイヤフラム部166を有する。
流量減少用凹部161は、エミッタ本体121の第1面1211に配置されている。流量減少用凹部161の平面視形状は、特に限定されず、例えば、略円形状である。流量減少用凹部161の深さは、特に限定されず、連通溝163の深さ以上であればよい。流量減少用凹部161の内面には、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165が開口している。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の底面に開口している。
弁座部162は、流量減少用凹部161の底面に配置されている。本実施の形態では、弁座部162は、第2接続用貫通孔165の開口部を取り囲むように、ダイヤフラム部166に面して非接触に配置されている。弁座部162は、チューブ110を流れる灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合、ダイヤフラム部166が密着できるように構成されている。弁座部162にダイヤフラム部166が接触することによって、流量減少用凹部161から逆流防止弁170に流れ込む灌漑用液体の流量を減少させる。
弁座部162の形状は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、弁座部162は、円筒形状の凸部である。本実施の形態では、当該凸部の端面は、内側から外側に向かうにつれて流量減少用凹部161の底面からの高さが低くなっている。
連通溝163は、流量減少用凹部161の内部と、弁座部162に囲まれている第2接続用貫通孔165とを連通している。連通溝163は、弁座部162の、ダイヤフラム部166が密着可能な面の一部に配置されている。
第1接続用貫通孔164は、流量減少部160において流路の上流側に連通している。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164は、第2減圧流路144(第2減圧溝134)に連通している。第1接続用貫通孔164は、流量減少用凹部161の内面に配置されている。第1接続用貫通孔164は、例えば、流量減少用凹部161の底面または測面に配置される。本実施の形態では、第1接続用貫通孔164は、流量減少用凹部161の底面において、弁座部162が配置されていない領域に配置されている。
第2接続用貫通孔165は、流量減少部160において流路の下流側に連通している。本実施の形態では、第2接続用貫通孔165は、逆流防止弁170に連通している。第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の内面に配置されている。第2接続用貫通孔165は、例えば、流量減少用凹部161の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の底面の中央部分に配置されている。
なお、第1接続用貫通孔164および第2接続用貫通孔165の位置は、本実施の形態の態様に限定されない。たとえば、第1接続用貫通孔164の代わりに第2接続用貫通孔165が、弁座部162の外側に配置されていてもよい。また、第2接続用貫通孔165の代わりに第1接続用貫通孔164が、弁座部162に取り囲まれるように配置されてもよい。
ダイヤフラム部166は、フィルム122の一部である。ダイヤフラム部166は、流量減少用凹部161の内部とチューブ110の内部との連通を遮断するように、かつ流量減少用凹部161の開口部を塞ぐように配置されている。ダイヤフラム部166は、可撓性を有し、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁座部162に接触するように変形する。たとえば、ダイヤフラム部166は、チューブ110内を流れる灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合に流量減少用凹部161側に歪む。具体的には、ダイヤフラム部166は、灌漑用液体の圧力が高くなるにつれて、弁座部162に向かって変形し、やがて弁座部162に接触する。ダイヤフラム部166が弁座部162に密着している場合であっても、ダイヤフラム部166は、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165および連通溝163を閉塞しないため、第1接続用貫通孔164からの灌漑用液体は、連通溝163および第2接続用貫通孔165を通って、逆流防止弁170に送られうる。
逆流防止弁170は、流路内において、流量調整部160の下流であり、かつ吐出部180の上流に配置されている。逆流防止弁170は、吐出部180に向かって流れる灌漑用液体に対して流路を開放し、かつ吐出部180から流路に逆流する流体に対して流路を閉鎖する。これにより、逆流防止弁170は、灌漑用液体を吐出部180に送るとともに、送液を停止したときに吐出部180から流路に逆流する流体が、逆流防止弁170の上流へ流通するのを阻止する。
吐出部180から流路内へ逆流する流体によって、エミッタ120からの灌漑用液体の吐出量を調整するための構成要素における流路内が汚染されたり、目詰まりが生じたりすることを抑制する観点から、逆流防止弁170は、流路の下流側に配置されていることが好ましい。すなわち、逆流防止弁170は、吐出量を調整するための構成要素の下流に配置されていることが好ましく、吐出部180に直接連通する位置に配置されていることがより好ましい。本実施の形態では、逆流防止弁170は、流量調整部160の下流に配置されているため、流路内に逆流した上記流体が流量調整部160内に流れ込まない。
逆流防止弁170の構成は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、逆流防止弁170は、逆流防止用凹部171、弁体172、固定部174および第3接続用貫通孔175を有する。
逆流防止用凹部171は、エミッタ本体121の第1面1211に配置されている。逆流防止用凹部171の平面視形状は、特に限定されない。本実施の形態では、平面視した状態において、逆流防止用凹部171は、略円形状の円形部と、当該円形部から突出している突出部とを有する。逆流防止用凹部171の深さは、特に限定されない。当該円形部の深さと当該突出部の深さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施の形態では、円形部の深さと突出部の深さとは、互いに同じである。
逆流防止用凹部171の底部の一部は、弁体172および固定部174により構成されている。本実施の形態では、逆流防止用凹部171の円形部の底部は、弁体172および固定部174により構成されている。逆流防止用凹部171の内面には、第3接続用貫通孔175が開口している。本実施の形態では、第3接続用貫通孔175は、逆流防止用凹部171の突出部の底面に配置されている。
弁体172は、吐出部180に向かって流れる灌漑用液体の圧力に応じて下流に向けて変形する。一方で、弁体172は、吐出部180から流路に逆流する流体の圧力によっては、上流に向けて変形しない。弁体172は、固定部174とともに流路を塞ぐように配置されている。流路における弁体172の上流および下流は、流路の開放状態において、弁体172および固定部174の間に形成される隙間を介して、互いに連通する。
弁体172の位置は、流路内の灌漑用液体の圧力に応じて流路を開閉することができれば特に限定されない。本実施の形態では、弁体172は、流路の、第1面1211および第2面1212の対向方向に沿って延在している部分に配置されている。すなわち、弁体172は、第1面1211および第2面1212に開口している貫通孔内に配置されている。
弁体172の数、形状および大きさは、上記機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、弁体172の平面視形状は、扇形状である。弁体172の数は、2つである。2つの弁体172は、扇形の頂点に相当する部分で互いに接するように配置されている。
弁体172は、流路の内壁に固定されている固定端部と、固定端部の反対側に位置している自由端部とを含む。当該固定端部は、流路の側面(流路用の溝の内壁面)に固定されている。本実施の形態では、固定端部は、扇形状の弁体172における円弧状部分である。自由端部は、扇形状の弁体172における先端部(頂部)である。流路が閉鎖されている状態において、弁体172の上流側の端縁は、固定部174の下流側の端縁に接している。
弁体172の上記自由端部には、流路の下流に向けて突出している凸部173が形成されている。本実施の形態では、凸部173は、2つの弁体172の自由端部のそれぞれに形成されている。
凸部173は、弁体172の肉厚な部分である。灌漑用液体が吐出部180側から流路内に逆流したとき、2つの凸部173は、互いに押圧しあう。すなわち、一方の弁体172の凸部173は、他方の弁体172に対して弁座として機能する。これにより、弁体172の上流側への変形に起因して、流路が意図せず開放されることを防止しうる。流体の逆流をより確実に防止する観点からは、弁体172が変形していない状態においても、2つの凸部173は、互いに接していることが好ましい。すなわち、凸部173の、上記自由端部側の表面は、弁体172の、自由端部の端面であることが好ましい。
凸部173の数、形状および大きさ(厚み)は、弁体172の数、形状および大きさに応じて、適宜変更されうる。本実施の形態では、凸部173の数は、2つである。凸部173の平面視形状は、直角二等辺三角形である。凸部173の立体形状の例には、三角錐形状および三角柱形状が含まれる。本実施の形態では、凸部173の立体形状は、第2面1212に向けて突出している略三角錐形状である。
凸部173の厚み(灌漑用液体の流れ方向における凸部173の長さ)は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。流路をより確実に閉鎖する観点からは、凸部173は、弁体172において固定端部から自由端部に向かうにつれて、凸部173の厚みが厚くなる部分を含むことが好ましい。これにより、吐出部180側から流路内に逆流した流体の圧力によって、2つの凸部173は、より広い面で互いに押圧しあうことができる。また、凸部173の、固定端部側の表面が流体の圧力を受けることによって、2つの凸部173の対向方向に沿う方向の力が凸部173に加わり、結果として、2つの凸部173は、より強い力で互いに押圧しあうことができる。
弁体172の凸部173が形成されていない部分の厚みは、固定部174の厚みに比べて十分に薄い。当該部分の厚みは、流路内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁体172が適度に変形できればよく、エミッタ本体121の材料などに応じて適宜調整されうる。
弁体172の平面視形状と固定部174の平面視形状とは、いずれも扇形状である。弁体172および固定部174の形状は、円形状を均等の大きさに四分割することで形成されうる扇形状と同じである。弁体172および固定部174は、円周方向に沿って交互に配置されている。弁体172および固定部174は、互いに隣接している。
固定部174は、流路の内壁から流路の中心に向けて突出している凸部である。固定部174は、流路内の灌漑用液体の圧力によってほとんど変形しない。固定部174の数、形状および大きさは、弁体172の数、形状および大きさに応じて適宜調整されうる。本実施の形態では、固定部174の数は、2つである。本実施の形態では、固定部174の平面視形状は、扇形状である。2つの固定部174は、扇形の頂点に相当する部分で互いに接するように配置されている。固定部174の平面視形状は、弁体172の平面視形状と同様である。固定部174の下流側の端縁は、弁体172の上流側の端縁に接している。固定部174の厚みは、流路内の灌漑用液体の圧力によって固定部174がほとんど変形しなければよく、適宜調整されうる。
第3接続用貫通孔175は、逆流防止弁170において流路の上流側に連通している。本実施の形態では、第3接続用貫通孔175は、流量減少部160に連通している。第3接続用貫通孔175は、逆流防止用凹部171の内面に配置されている。第3接続用貫通孔175は、例えば、逆流防止用凹部171の底面または側面に配置される。本実施の形態では、第3接続用貫通孔175は、逆流防止用凹部171の突出部の底面に配置されている。
吐出部180は、灌漑用液体をエミッタ120外に吐出する。吐出部180は、エミッタ本体121の第2面1212側において、チューブ110の吐出口112に面して配置されている。吐出部180は、エミッタ120内の灌漑用液体をチューブ110の吐出口112に送る。これにより、吐出部180は、灌漑用液体をエミッタ120の外部に吐出することができる。吐出部180の構成は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出部180は、吐出用凹部181と、侵入防止部182とを有する。
吐出用凹部181は、エミッタ本体121の第2面1212に配置されている。吐出用凹部181の底部の一部は、弁体172および固定部174により構成されている。吐出用凹部181の平面視形状は、略矩形状である。吐出用凹部181の底面には、弁体172、固定部174および侵入防止部182が配置されている。
侵入防止部182は、吐出口112からの異物の侵入を防止する。侵入防止部182は、前述の機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、侵入防止部182は、隣接して配置された4つの凸部である。4つの凸部は、エミッタ120をチューブ110に接合した場合に、弁体172および吐出口112の間に位置するように配置されている。
[点滴灌漑用チューブの動作]
次に、点滴灌漑用チューブ100の動作について説明する。
まず、チューブ110内に灌漑用液体が送液される。点滴灌漑用チューブ100へ送液される灌漑用液体の圧力は、簡易に点滴灌漑法を導入できるように、またチューブ110およびエミッタ120の破損を防止するため、0.1MPa以下であることが好ましい。チューブ110内の灌漑用液体は、取水部150からエミッタ120内に取り込まれる。具体的には、チューブ110内の灌漑用液体は、スリット154、またはスクリーン用凸条部155間の隙間から取水用凹部153に入り込み、取水用貫通孔152を通過する。このとき、取水部150は、取水側スクリーン部151(スリット154およびスクリーン用凸条部155間の隙間)を有しているため、灌漑用液体中の浮遊物を除去することができる。また、取水部150には、いわゆるウェッジワイヤー構造が形成されているため、取水部150へ流入した灌漑用液体の圧力損失は抑制される。
取水部150から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路141に到達する。第1接続流路141に到達した灌漑用液体は、第1減圧流路142を通過し、第2接続流路143に到達する。第2接続流路143に到達した灌漑用液体は、第2減圧流路144に流れ込む。第2減圧流路144に流れ込んだ灌漑用液体は、第1接続用貫通孔164を通って、流量減少部160に流れ込む。流量減少部160に流れ込んだ灌漑用液体は、第2接続用貫通孔165および第3接続用貫通孔175を通って逆流防止弁170に流れ込む。逆流防止弁170に流れ込んだ灌漑用液体は、逆流防止弁170の弁体172を下流側に向けて変形させつつ、弁体172および固定部174の間に形成された隙間を通って吐出部180に流れ込む。吐出部180に流れ込んだ灌漑用液体は、チューブ110の吐出口112からチューブ110外に吐出される。
(流量減少部および逆流防止弁の動作)
ここで、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じた流量減少部160および逆流防止弁170の動作について説明する。図4A〜Cは、流量減少部160および逆流防止弁170の動作について説明するための断面模式図である。なお、図4A〜Cは、図2Bに示されるA−A線における部分拡大断面図である。図4Aは、チューブ110に灌漑用液体が送液されていない場合における断面図であり、図4Bは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第1圧力である場合における断面図であり、図4Cは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第1圧力を超える第2圧力である場合における断面図である。
流量減少部160および逆流防止弁170は、第2接続用貫通孔165および第3接続用貫通孔175を介して互いに連通している。流量減少部160では、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、ダイヤフラム部166が流量減少用凹部161側に歪むように変形することで、灌漑用液体の流量が制御される。逆流防止弁170では、流路内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁体172が下流に向けて歪むように変形して、流路が開放される。なお、本実施の形態では、カバー123は、剛性材料により構成されているため、灌漑用液体の圧力によって変形しない。
チューブ110内に灌漑用液体が送液される前は、フィルム122に灌漑用液体の圧力が加わらないため、ダイヤフラム部166は、変形していない(図4A参照)。また、弁体172も変形していないため、逆流防止弁170において、流路は閉鎖されている。
チューブ110内に灌漑用液体を流し始めると、ダイヤフラム部166および弁体172が変形し始める(図4B参照)。ダイヤフラム部166は、弁座部162に接触していない状態では、取水部150から取り入れられた灌漑用液体は、エミッタ120内の流路を通って、チューブ110の吐出口112から外部に吐出される。このとき、逆流防止弁170の弁体172は下流側に歪む。このとき、弁体172および固定部174の間に隙間が形成される。これにより、逆流防止弁170において、吐出部180に向かって流れる灌漑用液体に対して流路が開放され、灌漑用液体が吐出部180に向かって移動することができる。このように、チューブ110内への灌漑用液体の送液開始時や、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定の圧力より低い場合には、取水部150からエミッタ120内に取り入れられた灌漑用液体は、流路を通って外部に吐出される。
チューブ110内の灌漑用液体の圧力がさらに高まると、ダイヤフラム部166は、弁座部162に向かってさらに変形する。通常は、灌漑用液体の圧力が高くなるにつれて、流路を流れる灌漑用液体の量が増大するはずであるが、本実施の形態に係るエミッタ120では、第1減圧流路142および第2減圧流路144で灌漑用液体の圧力を減少させるとともに、ダイヤフラム部166と弁座部162との間隔を狭めることで、流路を流れる灌漑用液体の量の過剰な増大を防止している(図4B参照)。そして、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定値(第2圧力)以上である場合に、ダイヤフラム部166は、弁座部162に接触する(図4C参照)。この場合であっても、ダイヤフラム部166は、第1接続用貫通孔164、第2接続用貫通孔165および連通溝163を閉塞しないため、取水部150から取り入れられた灌漑用液体は、連通溝163を通って、チューブ110の吐出口112から外部に吐出される。このように、流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第2圧力以上である場合、ダイヤフラム部166が弁座部162に接触することにより、流路を流れる灌漑用液体の液量の増大を抑制する。
このように、流量減少部160は、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によるフィルム122の変形に応じて、チューブ110の吐出口112から吐出される灌漑用液体の流量を調整する。このため、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100は、灌漑用液体の圧力が低圧および高圧のいずれの場合であっても、一定量の灌漑用液体をチューブ110外に吐出できる。
(逆流防止弁の機能)
ここで、逆流防止弁170の機能についてさらに説明する。まず、比較のために、逆流防止弁170を有しない比較用のエミッタについて説明する。前述のとおり、点滴灌漑用チューブが、高低差のある場所に配置されている場合、チューブ110内への灌漑用液体の送液を停止すると、高い位置におけるエミッタから吐出される灌漑用液体の量と、低い位置におけるエミッタから吐出される灌漑用液体の量とに差が生じる。これにより、高低差に起因して、チューブ110内が陰圧となって、結果として、比較用のエミッタを有する点滴灌漑用チューブでは、チューブ外から細かい土を含んだ空気や水などの流体が、エミッタの流路に逆流する、いわゆるサイフォン現象が生じることがある。
これに対して、本実施の形態に係るエミッタ120は、逆流防止弁170を有する。チューブ110内への灌漑用液体の送液を停止した後、流路内の灌漑用液体の圧力は低下するため、流路の開放状態において、流路の下流側に向けて変形していた弁体172は、変形前の状態に戻る。これにより、逆流防止弁170において、流路は閉鎖される。さらに、チューブ110内が陰圧となったとしても、隣り合う凸部173は、弁体172が上流に向けて変形しないように、互いに押圧しあう。このため、流体が、吐出部180から流路に逆流したとしても、流路の閉鎖状態は維持される。結果として、チューブ110外に存在する、細かい土などを含んだ空気や水などの流体が、弁体172の上流へ流通することを阻止できる。
(効果)
以上のとおり、本実施の形態に係るエミッタ120は、弁体172を含む逆流防止弁170を有する。これにより、エミッタ120では、サイフォン現象の発生を抑制できる。したがって、本実施の形態に係るエミッタ120を有する点滴灌漑用チューブ100によれば、高低差のある場所であっても、サイフォン現象に起因する流路の目詰まりの発生を抑制できる。また、逆流防止弁170は、1つの部材で構成されうるため、エミッタ本体121は、一体成形物で構成されうる。
[実施の形態2]
図5A、Bは、実施の形態2に係るエミッタ220の一部の構成を示すとともに、逆流防止弁270の動作について説明するための底面図である。なお、図5Aは、チューブ110に灌漑用液体が送液されていない場合における底面図であり、図5Bは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定値以上である場合における底面図である。
実施の形態2に係るエミッタ220は、エミッタ本体221およびフィルム122によって構成されており、取水部150、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143、第2減圧流路144、流量減少部160、逆流防止弁270および吐出部180を有する。実施の形態2に係るエミッタ220は、逆流防止弁270の構成と、カバー123を有しない点のみが実施の形態1に係るエミッタ120と異なる。そこで、実施の形態1に係るエミッタ120と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
エミッタ本体220は、逆流防止弁270の構成が実施の形態1における逆流防止弁170と異なる点を除いて、実施の形態1におけるエミッタ本体120と同様である。実施の形態2では、逆流防止弁270は、逆流防止用凹部271および2つの弁体272を有する。
逆流防止用凹部271は、エミッタ本体221の第2面1212に配置されている。逆流防止用凹部271は、吐出用凹部181と隣り合うように配置されている。逆流防止用凹部271の平面視形状は、特に限定されない。本実施の形態では、逆流防止用凹部271の形状は、略矩形状である。逆流防止用凹部271の内面には、第2接続用貫通孔165が開口している。本実施の形態では、第2接続用貫通孔165は、逆流防止用凹部271の底面に配置されている。第2接続用貫通孔165は、流量減少用凹部161の内面と、逆流防止用凹部271の内面とに開口している。
逆流防止用凹部271の深さは、逆流防止用凹部271の深さ方向における弁体272の長さとほぼ同じである。これにより、逆流防止用凹部271内に弁体272を配置したときに、流路が塞がれうる。結果として、灌漑用液体の圧力による弁体272の変形によって、流路を開閉することができる。
弁体272は、吐出部180に向かって流れる灌漑用液体の圧力に応じて下流に向けて変形する。一方で、弁体272は、吐出部180から流路に逆流する流体により上流に向けて変形しない。前述のとおり、2つの弁体272は、流路を塞ぐように配置されている。流路における弁体272の上流および下流は、流路の開放状態において、2つの弁体172の間に形成される隙間を介して、互いに連通する。
実施の形態2では、弁体272は、流路の、第2面1212の面方向に沿って延在している部分に配置されている。すなわち、弁体272は、その開口部が第2面1212に配置されている逆流防止用凹部271内に配置されている。
弁体272の数、形状および大きさは、上記機能を発揮することができれば特に限定されない。本実施の形態では、先端部(自由端部)に近づくほど幅が広くなっている板形状である。弁体272の数は、2つである。2つの弁体272は、先端部で互いに接するように配置されている。
弁体272は、流路の内壁に固定されている固定端部と、固定端部の反対側に位置している自由端部とを含む。当該固定端部は、流路の側面に固定されている。本実施の形態では、固定端部は、板形状の弁体272における基端部である。弁体272の上面は、チューブ110の内壁面に接し、弁体272の下面は、逆流防止用凹部271の底面に接している。自由端部は、板形状の弁体272における先端部(頂部)である。
弁体272の当該自由端部には、流路の下流に向けて突出している凸部273が形成されている。本実施の形態では、凸部273は、2つの弁体272の自由端部のそれぞれに形成されている。
凸部273は、弁体272の肉厚な部分である。灌漑用液体が吐出部180側から流路内に逆流したとき、2つの凸部273は、互いに押圧しあう。すなわち、一方の弁体272の凸部273は、他方の弁体272に対して弁座として機能する。これにより、弁体272の上流側への変形に起因して、流路が意図せず開放されることを防止しうる。流体の逆流をより確実に防止する観点からは、弁体272が変形していない状態においても、2つの凸部273は、互いに接していることが好ましい。すなわち、凸部273の、上記自由端部側の表面は、弁体272の、自由端部の端面であることが好ましい。
凸部273の数、形状および大きさ(厚み)は、弁体272の数、形状および大きさに応じて、適宜変更されうる。本実施の形態では、凸部273の数は、2つである。凸部273の平面視形状は、台形である。凸部273の立体形状の例には、多角柱形状である。本実施の形態では、凸部273の立体形状は、四角柱形状である。
凸部273の厚み(灌漑用液体の流れ方向における凸部273の長さ)は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。流路をより確実に閉鎖する観点からは、凸部273は、弁体272において固定端部から自由端部に向かうにつれて、凸部273の厚みが厚くなる部分を含むことが好ましい。これにより、吐出部180側から流路内に逆流した流体の圧力によって、2つの凸部273は、より広い面で互いに押圧しあうことができる。また、凸部273の、固定端部側の表面が流体の圧力を受けることによって、2つの凸部273の対向方向に沿う方向の力が凸部273に加わり、結果として、2つの凸部273は、より強い力で互いに押圧しあうことができる。
弁体272の凸部273が形成されていない部分の厚みは、流路内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁体272が適度に変形できればよく、エミッタ本体221の材料などに応じて適宜調整されうる。
実施の形態2における弁体272には、流路の下流側に突出している凸部273が形成されている。これにより、実施の形態1における弁体172と同様に、弁体272が上流側へ変形することを防止でき、流路の意図しない開放を防止することができる(図5A、B参照)。すなわち、弁体272も、吐出部180に向かって流れる灌漑用液体に対して流路を開放し、かつ吐出部180から流路に逆流する流体に対して流路を閉鎖することができる。
(効果)
実施の形態2に係るエミッタ220および点滴灌漑用チューブは、実施の形態1と同様の効果を有する。実施の形態2では、弁体272は、エミッタ本体221の第2面1212に配置されている逆流防止用凹部271内に配置されている。逆流防止用凹部271の開口部は、チューブ110の内壁面により塞がれるため、別途、逆流防止用凹部271の開口部を塞ぐための部材(実施の形態1におけるカバー123)が必要ない。したがって、実施の形態2は、エミッタ220の構成要素の数を低減する観点からより好ましい。
なお、上記実施の形態1、2に係るエミッタ120、220では、逆流防止弁170、270における弁体172、272の数が2つの場合について説明したが、本発明に係るエミッタの構成は、この態様に限定されない。たとえば、弁体の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。弁体の数が1つの場合、流路の内壁が弁座として機能する。
また、本発明に係るエミッタおよび点滴灌漑用チューブの構成は、上記実施の形態1、2に係るエミッタ120、220および点滴灌漑用チューブ100に限定されず、例えば、エミッタは、第1減圧流路142、第2減圧流路144および流量調整部160を有していなくてもよい。この場合、エミッタは、少なくともエミッタ本体およびカバーによって構成される。
また、上記実施の形態1、2では、エミッタ120、220およびチューブ110が接合されることにより、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143および第2減圧流路144が形成されている態様について説明したが、第1接続流路141、第1減圧流路142、第2接続流路143および第2減圧流路144は、あらかじめエミッタ120内に流路として形成されていてもよい。
さらに、上記実施の形態1では、固定部174を有するエミッタ120について説明したが、本発明に係るエミッタは、固定部174を有していなくてもよい。