JP6836468B2 - 光偏向器 - Google Patents

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本発明は、光偏向器に関し、より詳細には、電気光学効果を有する結晶に電圧を印加することにより、該結晶に入射された光を偏向することができる光偏向器に関する。
電界を印加することにより光の向きを変えることができる光偏向器は、プロジェクタの表示素子、レーザプリンタ、高分解能な共焦点顕微鏡、バーコードリーダ等の様々な分野において用いられている。光偏向器としては、ポリゴンミラーを回転させる技術、ガルバノミラーにより光の偏向方向を制御する技術、MEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いたものが広く使用されている。また、電気光学効果を有する電気光学結晶を用いた光偏向器は、可動部を持たない固体素子である(例えば、特許文献1参照)。電気光学結晶に電圧を印加すると、電気光学効果により結晶の屈折率が変化し、ビームを偏向させることができる。電気光学結晶を用いた光偏向器は、機械的な可動部分が無いことと、電気光学効果がMHz〜GHzの範囲の高周波数で応答するため、高速な光偏向が可能である。
電気光学結晶であるKTN(KTa1-xNbx3)結晶またはKLTN結晶(K1-yLiyTa1-xNbx3)(以下、まとめてKTN結晶という)は、低い電圧で屈折率が大きく変わる電気光学効果が大きい物質として知られている。さらに、電極としてTi、Cr材料を用いると、結晶内に電荷を注入することができ、注入された電荷によって生じる内部電界を利用して、高速・広角な光偏向器を実現することができる。従って、レンズ、プリズム、ミラーといった一般的な光学部品を、高速で動く必要がある用途に用いる場合に、これら光学部品に代えて、KTN結晶を用いることができる。
図1に、従来のKTN結晶を用いた光偏向器の構成を示す。KTN結晶101の対向する2つ面のそれぞれに、電極102,103が形成されている。2つの電極102,103の間には、制御電圧源104から電圧が印加される。入射光105は、KTN結晶101の電極102,103が形成された面と直行する面(xy平面)に入射され、KTN結晶101内をz軸方向に伝搬する。KTN結晶101内において偏向を受けて、x軸方向に進行方向を変えた出射光106が得られる。制御電圧源104からの印加電圧に応じた偏向角が得られる。制御電圧源104からは、光偏向器の用途に応じた電圧が与えられる。例えば、印加電圧の波形は、正弦波、鋸波などであり、光偏向器の用途に応じて印加される。適切な最大偏向角を得るために、KTN結晶101へは、概ね数百V程度の電圧を印加する。
高周波動作時には、印加電圧によって電極から注入された電子の移動距離が電極間の距離より短くなるため、理想的な空間電荷制御状態が実現されず、偏向角が減少する。この問題点に対しては、偏向を生じさせるための印加電圧を印加する前に、KTN結晶101にバースト状の波形の電圧を印加することによって、結晶中へ電子を注入し、予めトラップ準位に電子を捕捉させる制御法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
KTN結晶101中のトラップに、予め電子を充填することによって、偏向を生じさせるための電圧の印加に際しては、KTN結晶101中に電界の分布または傾斜を生じさせることが可能となり、光偏向を実現することができる。トラップ準位に電子を捕捉させる方法として、DCバイアス電圧に光偏向や走査のための交流電圧を重畳して、KTN結晶101に印加する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
DCバイアス電圧を印加し続けると、トラップ準位から熱励起等で再放出された電子を補うように電子が負電極から供給されるため、長時間経過しても一定の電子が結晶内に残留する。従って、高周波動作に必要な電子の捕捉量を一定に保持し、長時間経過しても偏向角が減少しない偏向器を実現することができる。
トラップ準位に捕捉された電子によって、一様でない電界分布が形成され、電界分布の変化に応じた屈折率分布が生じる。この一様でない屈折率分布の中を光が透過すると、光の進路が屈曲する。このとき、結晶の中央付近では、屈折率が高い二次関数の屈折率分布となるので、KTN結晶101を透過した出射光106は、偏向されると同時に集光され、焦点以降は発散する。この集光を回避するために、KTN結晶101の前後、もしくは前後のどちらか一方に補正用のレンズを配置して、平行光とする方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。図1の光偏向器では、KTN結晶101の出射側にシリンドリカル凹レンズ107を配置して、出射光108を平行光としている例を示している。
トラップ準位に捕捉された電子は空間的に一様であるとし、その密度をNとする。この状態でKTN結晶チップに対して変調電圧を印加すると、ガウスの法則により、電極からの距離をxとした場合の電界分布E(x)は以下の式で表される。
ここで、eは電気素量、εは比誘電率、Vは電極に印加する電圧をそれぞれ示す。上述したKTN結晶チップの形状における屈折率分布Δn(x)は、以下の式で表すことができる。
ここでdは結晶厚、nは結晶の屈折率、g11は電気光学定数である。この式の意味するところは、トラップされた電子によって屈折率分布型レンズのように結晶厚方向中央の屈折率が大きい凸レンズとなり、その光軸が電圧に応じてx軸方向に平行移動するという事である。これによって、光偏向と集光が同時に発現する。このように、トラップ準位に捕捉された電子が結晶内で空間的に一様である場合には、印加電圧とそれに対応する偏向角が変化しても結晶内を透過する光に対して、屈折率変化は係数の等しい二次関数の分布である。従って、透過光が受ける集光効果は偏向角に依存せず一定であり、焦点距離が透過場所に依存しない通常のレンズによって、どの偏向角においても集光性を補正して平行光とすることが可能である。
国際公開第2006/137408号 特開2011−186218号公報 特開2015−142111号公報 特許5565910号公報 特開2015-31929号公報
T. Imai, J. Miyazu, and J. Kobayashi, "Measurement of charge density distributions in KTa1-xNbxO3 optical beam deflectors," Opt. Mater. Express 4, 976 (2014).
しかしながら、非特許文献1によれば、KTN結晶内の電荷密度Nは、結晶の誘電率が高い場合には空間的に一様に近づくが、誘電率が低い場合には電圧印加時の陰極付近のみに蓄積され、結晶内で不均一な分布となる。
電荷密度Nが空間的に一様ではなく、N(x,y,z)のように結晶内の位置に依存するような分布の場合には、結晶内で偏向される光の透過位置によって、電気光学結晶のレンズとしての効果が異なることになる。つまり、光偏向のための駆動電圧の瞬時値によって、レンズ効果が異なることになる。このため、レーザプリンタ等では、感光体の面内において、ビームスポット径が一様でなく、露光状態が変化してしまうという問題があった。
これに対して、特許文献5においては、光偏向のための電圧に同期して焦点距離が変化する可変焦点レンズをKTN結晶の出射側に配置し、KTN結晶への印加電圧に依存せずに、集光特性が一定な偏向光を得られる方法が提案されている。しかしながらこの方法では、本来の光偏向器の他に動的に動作する付加的な可変焦点レンズが必要となり、可変焦点レンズを動作させる電源、光偏向器と可変焦点レンズを同期させるための電気回路などの構成が複雑になってしまうという問題があった。
本発明の目的は、レンズ効果を有する光偏向器において、レンズ効果の空間的変化を補償した光偏向器を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明の実施態様は、電気光学結晶の対向する面に少なくとも2つの電極が形成された光偏向器であって、前記少なくとも2つの電極に電圧を印加すると、電気光学効果により前記電気光学結晶内に一様でない屈折率分布が生じることにより、前記電圧により形成された電界に直交する光の進路を屈曲させ、偏向角により集光特性が変化する光偏向器と、前記電気光学結晶の出側に配置されたプリズムであって、前記光が偏向する範囲にわたって出射側のビームウェスト位置とビームウェスト径の少なくとも一方の変化を補償するように空間的に集光特性が分布しており、前記電気光学結晶からの出射光の焦点位置が前記電気光学結晶の出射面から遠い偏向角の側に頂角が配置されているプリズムとを備えたことを特徴とする。

以上説明したように、本発明によれば、光偏向器の後段に集光特性や光路長が空間的に分布している光学素子を配置することにより、レンズ効果の偏向方向における変化を補償することができる。
従来のKTN結晶を用いた光偏向器の構成を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例1にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例1におけるプリズムのビーム径倍率の入射角依存性示す図である。 実施例2にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例2における焦点距離の印加電圧依存性を示す図である。 実施例2における自由曲面ミラーの焦点距離と印加電圧の関係を示す図である。 実施例3にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例4にかかる光偏向器の構成を示す図である。 光学素子の焦点距離と、ガウシアンビームを入射した場合のビームウェスト位置との関係を示す図である。 焦点距離を変化させた時のビームウェスト位置とビーム径倍率の関係を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図2に、本発明の一実施形態にかかる光偏向器の構成を示す。電気光学効果を利用した光偏向器は、電気光学結晶201の対向する2つ面のそれぞれに、電極202,203が形成されている。制御電圧源204から、この電極対を介して、電気光学結晶201内への電荷の注入、または光の偏向のための電圧を印加する。
電気光学結晶として、特許文献1に開示されている電気光学結晶を用いる。特許文献1に記載されているタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbx3(0<x<1):以下、KTNという)、またはリチウムをドープした結晶(K1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1):以下、KLTNという)は、電圧印加による電界に伴って、結晶に電荷の注入が行なわれる。その結果、結晶内に、注入電荷により形成される空間電荷分布、または、注入電荷がさらに電気光学結晶中に捕捉されて生成されるトラップ電荷分布が生じる。この電荷分布によって一様でない電界分布が形成され、電界分布の変化に応じた屈折率分布が生じる。この一様でない電界分布が屈折率の勾配を発現させ、屈折率の勾配に直交する光線の進路を屈曲させる。このとき、電気光学結晶の中央付近で屈折率が高い非線形な屈折率分布となるので、電気光学結晶201を透過した入射光205は、偏向されると同時に集光されて出射光206または出射光208となり、焦点以降は発散する。
光偏向器として用いる電気光学結晶201の組成分布や、電荷充填のための印加電圧によっては、トラップ密度Nが常に空間的に一様とは限らない。この場合には、結晶内で偏向される光の透過位置によって、電気光学結晶のレンズ効果が異なる。つまり、光偏向器である電気光学結晶への印加電圧の瞬時値によって、電気光学結晶によって形成される焦点位置が異なることになる。この変動を補償するような空間的に集光特性が分布している光学素子209によって、光偏向器への印加電圧の瞬時値に関わらず、一定の焦点距離を有する偏向動作が得られる。
例えば、空間的に集光特性が分布している光学素子209がない場合には、偏向時の出射光のビーム形状は、角度によって焦点位置が異なる出射光206または出射光208となる。このとき、出射光208は、出射光206に比べて焦点位置が電気光学結晶201の出射面に近い。これを、光偏向器201の後段に配置する光学素子209によって、出射光のビームが発散するような波面変化を与え、出射光206と同じ焦点位置を有するような出射光210に変換する。または、出射光206の焦点位置が電気光学結晶201の出射面に近くなるような光学素子209の配置によって、出射光206の焦点位置を出射光208と同様の出射光211に変換する。
光偏向器として用いる電気光学結晶201が偏向角により集光特性が変化しているとき、出射光のビームの発散角を補正する光学素子209は、出射光が偏向する範囲にわたって、空間的に光学特性が分布している。このようなビームの補正によって、出射光はどの偏向角においても等しい焦点位置を有することができる。例えば、レーザプリンタ等では感光体面上のどの位置においてもビームウェストを形成できるという利点が生じる。また、出射光をどの偏向角においても平行光となるようにすることもでき、例えば、分光装置などの応用では、分光帯域全域において分解能が劣化することなく、一様な分解能の分光特性を得ることができる。
次に、上述した本実施形態の光偏向器に関して、より具体的な実施例を述べる。
図3に、実施例1にかかる光偏向器の構成を示す。KTN、KLTNなどの電気光学結晶301を備える光偏向器は、電気光学結晶301の対向する2つの面のそれぞれに、電極302,303が形成されている。電気光学結晶301に入射される入射光305は、シリンドリカル凹レンズ307を透過した後に、電気光学結晶301に入射される。平行光である入射光305は、このシリンドリカル凹レンズ307によって、電気光学結晶301へ拡散しながら入射される。入射光305は、電気光学結晶301のレンズ効果によって、出射光として出射される。
電気光学結晶301は、厚さ1.2mmのKTN結晶を用い(電極間隔も1.2mmとなる)、ビーム直径1.0mmの光線を、電界に平行な直線偏光で入射した。電気光学結晶301の長さは4mmである。電気光学結晶301の入出射端面は、反射膜と反射防止膜の両方が形成されており、折り返し光路により入射光が偏向される距離は12mmとなっている。
電気光学結晶301に制御電圧源304により、振幅±360V、周波数200kHzの正弦波状のAC電圧を、―240VのDCバイアス電圧に重畳して印加する。電圧は結晶表面に蒸着された金属からなる電極302、303を介して印加されている。このとき、110mrad(約6.5°)の偏向角が得られる。DCバイアス電圧を印加することによって、結晶内のトラップ密度は、空間的に一様ではない。結晶内でのトラップ密度が一様でないために、結晶内で偏向される光の透過位置によって、電気光学結晶のレンズとしての効果が異なる。プリズム309がない場合には、出射光が偏向した時のビームは、偏向角によって焦点位置が異なり、出射光306、308のような形状である。
実施例1では、電気光学結晶301の後段に、SF11ガラスを硝材とし、入射面と出射面のなす角が30°のプリズム309を配置した。プリズム309は透過する光のビーム径を拡大するので、透過後のビームは、プリズム309に入射される前に比べて、回折による広がりが抑えられる。このプリズム309によるビーム径の拡大率は、入射角に依存する。
図4に、実施例1におけるプリズムのビーム径倍率の入射角依存性示す。実施例1では、偏向されている状態のうち、焦点位置が電気光学結晶301の出射面に近い偏向角(電圧)のとき(図3において出射光308の場合)、プリズム309への入射角が大きくなり、焦点位置が遠い偏向角(電圧)のとき(図3において出射光306の場合)、プリズムへの入射角が小さくなるように配置している。さらに、プリズム309の頂角、つまりプリズムの幅が小さくなる方向が、焦点位置が遠い偏向角の側になるように配置する。
この配置によって、焦点位置が近い偏向角(電圧)の出射光308は、焦点距離が大きい偏向角(電圧)の出射光306に比べて、ビームがより拡大され、回折による広がりを抑制する効果がより得られ、出射光310となる。一方、出射光306は、プリズム309によって、出射光311となる。このように出射光が偏向する範囲にわたって空間的に集光特性が分布しているプリズム309によって、焦点位置の角度依存性が抑制され、制御電圧源から光偏向器に印加されるAC電圧の瞬時値に関わらず、一定の焦点位置を有する偏向動作が得られる。
図5に、実施例2にかかる光偏向器の構成を示す。KTN、KLTNなどの電気光学結晶401を備える光偏向器は、電気光学結晶401の対向する2つの面のそれぞれに、電極402,403が形成されている。電気光学結晶401に入射される入射光405は、シリンドリカル凹レンズ407を透過した後に、電気光学結晶401に入射される。電気光学結晶401の形状、駆動条件は、実施例1と同じである。
実施例2では、電気光学結晶401の後段に、自由曲面ミラー409を用いることにより、光偏向器によって発現される偏向角に依存した集光効果を補正している。自由曲面ミラー409は、偏向方向に沿って偏向方向の曲率半径が変化している凹面ミラーであり、その曲率は光偏向器の接地側の電極402から制御電圧源側の電極403に向かって小さくなっている。つまり、自由曲面ミラー409の曲率は、偏向された出射光のうち、焦点位置が電気光学結晶401の出射面に近い偏向角(電圧)のときの出射光が照射される面の曲率半径は小さく、焦点位置が遠い偏向角(電圧)のときの出射光が照射される面の曲率半径は大きくなっている。
図6に、実施例2における電気光学結晶401のみによる焦点距離の印加電圧依存性を示し、図7に、実施例2における自由曲面ミラーの焦点距離と印加電圧の関係を示す。電気光学結晶401の焦点距離が短い電圧(焦点位置が電気光学結晶401の出射面に近い電圧)のときの出射光が照射される凹面の曲率は小さくし、自由曲面ミラーの焦点距離を長くして印加電圧に対する焦点距離の変動を補償する。一方、焦点距離が長い電圧(焦点位置が出射面から遠い電圧)のときの出射光が照射される凹面の曲率は大きくし、自由曲面ミラーの焦点距離を短くして印加電圧に対する焦点距離の変動を補償する。このようにして、印加電圧に対する焦点距離の変動を補償するように、自由曲面ミラー409の曲率が設定されていることがわかる。
自由曲面ミラー409の焦点距離は、位置の関数としてf(x)と表すと、各々の入射位置において自由曲面ミラー409に入射される光の焦点位置から、自由曲面ミラー409までの距離が常にf(x)となるような自由曲面を形成している。これによって、自由曲面ミラー409で反射された光は、どの偏向角度においても平行光となる。実施例2では、平行光を生成する例としたが、平行光にすることが必ずしも重要ではなく、出射光が偏向する範囲内で、各々の瞬間のビームの拡散角を一定に保つことが本質である。
実施例2では、制御電圧源404からの印加電圧として、マイナスのDCバイアス電圧を印加しているため、電気光学結晶401内の電荷密度が、制御電圧源側の電極403付近で大きくなるため、自由曲面ミラー409の曲率の変化と電極の関係を上記のようにしている。印加電圧として、プラスのDCバイアス電圧を印加する場合には、電気光学結晶401内の接地側の電極402付近の電荷密度が大きくなる。従って、自由曲面ミラー409の曲率が電極402側で小さくなるように配置すればよい。
図8に、実施例3にかかる光偏向器の構成を示す。KTN、KLTNなどの電気光学結晶501を備える光偏向器は、電気光学結晶501の対向する2つの面のそれぞれに、電極502,503が形成されている。電気光学結晶501に入射される入射光505は、シリンドリカル凹レンズ507を透過した後に、電気光学結晶501に入射される。電気光学結晶501の形状、駆動条件は、実施例1と同じである。
実施例3では、電気光学結晶501の後段に、透過型の光学素子509を用いることにより、光偏向器によって発現される偏向角に依存した集光効果を補正している。光学素子509は、SF11ガラスを硝材とし、出射面において自由曲面が形成され、出射光の偏向角に応じて出射面の曲率が変化しており、出射光が偏向する範囲にわたって空間的に集光特性が分布している。
実施例3では透過型の光学素子509を用いたが、同様の集光効果を奏するように、素子の内部に屈折率分布を有する光学素子を用いても良い。この場合、光学素子の形状は、表面が平面となるので、光学素子の形状加工が容易になる。このような光学素子は、内部の屈折率分布を調整することにより、出射面の形状で集光特性を与える光学素子509に比べ、空間的に分解能の高い集光特性を与えることができる。
実施例2、3によれば、自由曲面を有するミラーなどの光学素子を、電気光学結晶の出射側に配置することによって、光偏向器の出射光の偏向の範囲内で、ビームの拡散角を一定に保つことができる。この光偏向器を、回折格子などの分散素子と組み合わせて分光装置として用いると、分光帯域全域にわたって分解能が劣化することなく、一様な分解能の分光特性を得ることができる。
図9に、実施例4にかかる光偏向器の構成を示す図である。KTN、KLTNなどの電気光学結晶601を備える光偏向器は、電気光学結晶601の対向する2つの面のそれぞれに、電極602,603が形成されている。電気光学結晶601の出射側にシリンドリカル凹レンズ607を配置して、出射光608を平行光としている。すなわち、シリンドリカル凹レンズ607の焦点距離は、光偏向器による出射光の偏向範囲内で焦点距離が大きい偏向角(焦点位置が電気光学結晶601の出射面から遠い電圧)の時のビームが、平行光になるように選択する。光偏向器によって発現されるビームの集光効果は、印加電圧と、印加電圧に対応する偏向角に依存している。従って、一部の偏向角においては、ビームの集光特性が良好に打ち消されているが、集光特性を打ち消しきれない偏向角のビームが存在している。
そこで、シリンドリカル凹レンズ607の出射側に、さらに空間位相変調器609を配置した。空間位相変調器609は、透過光または反射光の断面内において、各々場所の位相を独立に変調することができる光学素子である。電気光学結晶601にて偏向された光は、空間位相変調器609に入射される。空間位相変調器609は、中央から周辺部に向かって位相を大きく遅らせるように位相変調量が連続的に制御されている。位相変調量は、偏向された出射光のうち、焦点位置が電気光学結晶601の出射面に近い偏向角(電圧)のときの出射光が照射される面は大きく、焦点位置が遠い偏向角(電圧)のときの出射光が照射される面は小さくなっている。
このようにして、シリンドリカル凹レンズ607によって平行光とされた偏向角の出射光610に対しては、空間位相変調器609で位相変化を与えず、シリンドリカル凹レンズ607によって集光効果が打ち消されなかった偏向角の出射光606に対して集光効果を打ち消すような空間分布の位相変調を与える。空間位相変調器609が挿入される前の焦点距離に応じて、各々の出射光の焦点距離を延伸することにより、出射光の偏向する範囲内全域にわたって、光の拡散角を一定に保つことができる。
空間位相変調器として、空間的な位相変調分布を有するホログラフィック光学素子、回折光学素子を用いてもよい。
レンズ効果を有する光学素子にガウシアンビームを入射する場合、入射側のビームウェストの光学素子からの位置をs、出射側のビームウェストの位置をs''とすると、下記のSelfの式の関係が成り立つ。
Rはレイリー長、fは光学素子の焦点距離である。この式により焦点距離を変化させた時のs、s''の関係を求めた結果を、図10に示す。
実施例1〜4において、光偏向器(電気光学結晶)への入射光は、ほぼ平行光であると想定しており、入射側のビームウェストの位置は、光偏向器から離れた位置にある。このとき、図10の矢印Aで示すように、光偏向器のレンズパワー(=焦点距離の逆数)により、出射側のビームウェストの位置は、単調に増減する。しかしながら、光偏向器への入射側のビームウェストの位置は様々な場合があるので、図10の矢印Bで示すように、入射側ビームウェスト位置によっては単調に増減しない場合がある。このような場合においても光偏向器のレンズパワーを補正するためには、Selfの式の関係を考慮して、外部に配置する光学素子のレンズ効果を決定することが有効である。
また、ビームウェスト位置だけでなく、ビームウェスト径も偏向角により変化するため、これを補正することが望まれる。Selfの式によれば、入射光と出射光の間のビームウェスト径の比率、すなわち倍率mは下式のように表される。
図11に、焦点距離を変化させた時のビームウェスト位置とビーム径倍率の関係を示す。図11の矢印Cで示すように、焦点距離の変化に応じ、ビームウェスト径も変化することがわかる。このように、偏向角に応じて光偏向器の集光特性(焦点距離)が変化し、出射光のビームウェスト位置、ビームウェスト径が上述したように偏向角により変化する。このとき、実施例1〜4に示した補償用の光学素子の特性も、偏向角に応じて変化させ、ビームウェスト位置とビーム径の変動を抑制することが望ましい。
そこで、ビームウェスト位置が光偏向器の出射側にある場合についての補償方法を述べる。ビームウェスト位置が光偏向器の入射側にある場合も同様の方法で補償することができる。
例えば、実施例1(図3)の光偏向器と同じ構成であって、補償光学素子としてプリズムを使用する場合について説明する。光がプリズム内部を透過するとき、光路長は、空気中よりも長くなるため、光偏向器と出射光のビームウェスト位置との間の距離を、プリズムにより調整することができる。すなわち、偏向角によってビームウェスト位置が変化するのに伴い、ビームウェスト位置が光偏向器から遠い場合にはプリズム内の光路長を長く設定し、ビームウェスト位置が光偏向器から近い場合にはプリズム内の光路長を短く設定すればよい。
ビームウェスト位置が偏向角により単調に増減する場合、ビームウェスト位置が遠い偏向角のときプリズムの幅が大きく、ビームウェスト位置が近い偏向角のときプリズムの幅が小さくなるように、プリズムの頂角側をビームウェスト位置が近い偏向角側に配置する。また、プリズムへの入射角度および出射角度によりビーム径の倍率が変わるので、ビームウェスト径を補償することもできる。さらに、プリズムの頂角およびプリズムへの入射角度を適当に決定することにより、ビームウェスト位置およびビームウェスト径を同時に補償することもできる。
実施例1(図3)の構成に、さらにプリズムを追加する構成とすれば、光路長とビーム径の倍率とをある程度独立に設定することができるため、補償の精度を向上させることができる。
次に、実施例2(図5)の光偏向器と同じ構成であって、補償光学素子として自由曲面ミラーを使用する場合について説明する。自由曲面ミラーの場合には、ミラーに入射するまでの光路長とレンズパワーとを制御することにより、出射光のビームウェスト位置とビームウェスト径を変化させることができる。ビームウェスト位置、ビームウェスト径のいずれかの変化を補償するように自由曲面ミラーの形状を決定しても良いし、両方の変化を抑制するように自由曲面ミラーの形状を決定しても良い。例えば、ビームウェスト位置が光偏向器から遠い偏向角に対して自由曲面ミラーの焦点距離を短くし、ビームウェスト位置が光偏向器から近い偏向角に対して自由曲面ミラーの焦点距離を長くすればよい。
同様にして、空間位相変調器、屈折率分布を有する媒体を用いる場合も、偏向角に応じて位相変調量、屈折率分布を変化させることにより、出射光のビームウェスト位置、ビームウェスト径を調整することができ、偏向角に依存した変化を抑えることができる。
実施例2(図5)の構成に、さらに自由曲面ミラーを追加する構成とすれば、光路長とビームウェスト径をある程度独立に設定することができるため、補償の精度を向上させることができる。
ビームウェスト位置が入射側にある場合も、同様にして、光偏向器の入射側に空間的に光学特性が分布している光学素子を配置して、ビームウェスト位置と光偏向器の距離に応じて補償を行えばよい。
実施例5によれば、光偏向器の出射光の偏向の範囲内で、出射光のビームウェスト位置、ビームウェスト径の一方、または双方のバラツキを抑制することができる。また、入射光のビームウェスト位置、ビームウェスト径に応じて補償光学系を最適化することもできる。この光偏向器を、回折格子などの分散素子と組み合わせて分光装置として用いると、分光帯域全域にわたって分解能が劣化することなく、一様な分解能の分光特性を得ることができる。
なお、実施例1ないし5においては、KTNまたはKLTNを用いた光偏向器について説明したが、それ以外の電気光学効果を有する結晶を用いた光偏向器であってもよい。
101 KTN結晶
102、103、202、203、302、303、402、403、502、503、602、603 電極
104、204、304、404、504、604 制御電圧源
105、205、305、405、505、605 入射光
106、108、206、208、210、211、306、308、310、311、406、408、506、508、606、608、610 出射光
107、307、507、607 シリンドリカル凹レンズ
201、301、401、501、601 電気光学結晶
209、509 光学素子
309 プリズム
409 自由曲面ミラー
609 空間位相変調器

Claims (3)

  1. 電気光学結晶の対向する面に少なくとも2つの電極が形成された光偏向器であって、前記少なくとも2つの電極に電圧を印加すると、電気光学効果により前記電気光学結晶内に一様でない屈折率分布が生じることにより、前記電圧により形成された電界に直交する光の進路を屈曲させ、偏向角により集光特性が変化する光偏向器と、
    前記電気光学結晶の出側に配置されたプリズムであって、前記光が偏向する範囲にわたって出射側のビームウェスト位置とビームウェスト径の少なくとも一方の変化を補償するように空間的に集光特性が分布しており、前記電気光学結晶からの出射光の焦点位置が前記電気光学結晶の出射面から遠い偏向角の側に頂角が配置されているプリズム
    を備えたことを特徴とする光偏向器。
  2. 前記電気光学結晶の入射側と出射側の少なくとも一方に配置された第2の光学素子であって、前記光が偏向する範囲にわたって出射側のビームウェスト位置およびビームウェスト径の変化を補償するように空間的に光学特性が分布している第2の光学素子をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
  3. 前記電気光学結晶は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbx3(0≦x≦1))結晶、リチウムを添加したK1-yLiyTa1-xNbx3(0≦x≦1、0≦y≦1)結晶のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の光偏向器。
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