以下、本発明の一実施形態(以下では本実施形態と呼ぶ)について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
<<車両用シートの基本構成>>
先ず、本実施形態に係る車両用シートの基本構成について図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、具体的には車両の前後方向(走行方向)と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向であり、具体的には車両の横幅方向(左右方向)と一致する方向である。
また、以下に説明するシート各部の位置や姿勢については、特に断る場合を除き、車両用シートが通常状態にあるときの内容となっている。ここで、通常状態とは、車両用シートが着座可能であるときの状態、より具体的にはシートバック2が起立姿勢にあるときの状態を意味する。
本実施形態に係る車両用シート(以下、「本シートS」と呼ぶ)は、車両の後部座席(厳密には、二列目以降の座席)として利用されるものである。本シートSは、シート本体Shと、シート本体Shを前後方向にスライド移動させるスライドレール機構30と、によって構成されている。そして、シート本体Shが通常時の位置(着座可能な位置)から幾分前方へスライド移動した際、車室内において本シートSの後方に位置するスペースは、荷物置き用スペース(すなわち、荷室)として利用される。
シート本体Shの構成を概説すると、図1に示すように、シート本体Shは、乗員が座るシートクッション1、乗員の背が凭れ掛かるシートバック2、及び乗員の頭部を支えるヘッドレスト3からなる。シートクッション1及びシートバック2は、その骨格をなすフレームに対してウレタン等のパッド材1a、2aを組み付け、更にパッド材1a、2aを表皮材1b、2bにて覆うことで構成されている。なお、シートクッション1及びシートバック2の構成については、概ね公知の構成と同様である。
また、シートバック2の下端部とシートクッション1の後端部とは、リクライニング機構20を介して連結されている。このリクライニング機構20は、公知のリクライニング機構と同様の構成になっている。具体的に説明すると、リクライニング機構20は、不図示のリクライニングロック機構を内部に備えている。このリクライニングロック機構は、通常時、シートバックS2の回動動作に対する規制(ロック)が設定された状態にある。一方で、シートクッション1の側端部に設けられた解除レバー21を乗員が操作すると、リクライニングロック機構の状態は、ロック状態からロック解除状態へ移行する。
そして、シートバック2は、リクライニングロック機構がロック解除状態へ移行すると、前傾又は後傾する向きに回動可能となる。つまり、シートバック2は、シートクッション1に対して倒伏する向き、及び起立する向きの双方に回動可能である。このシートバック2の回動動作により、シートバック2の倒伏度合い(分かり易くは、シートクッション1とシートバック2とがなす角度(倒伏角度))が変化するようになる。なお、以下の説明では、シートバック2が回動する際の向きのうち、倒伏する向きを「第一向き」と呼び、起立する向きを「第二向き」と呼ぶ。
スライドレール機構30の構成を概説すると、スライドレール機構30は、シート本体Shの下方位置に配置され、幅方向に間隔を空けて一対設けられている。各スライドレール機構30は、図1に示すように、ロアレール31とアッパレール32とを有する。ロアレール31は、その延出方向が前後方向に沿うように車体フロアに固定されている。アッパレール32は、ロアレール31に対して摺動自在に組み付けられている。そして、アッパレール32がロアレール31に対して摺動(スライド移動)することにより、アッパレール32に固定されたシート本体Shが前後方向にスライド移動するようになる。
また、スライドレール機構30は、アッパレール32のロアレール31に対する摺動、換言するとシート本体Shのスライド動作を規制するためのスライドロック機構を有している。このスライドロック機構は、通常時、シート本体Shのスライド動作に対する規制(スライドロック)が設定された状態にある。一方で、シートクッション1の側端部に設けられた解除レバー39を乗員が操作すると、スライドロック機構の状態は、ロック状態からロック解除状態へ移行する。そして、シート本体Shは、スライドロック機構がロック解除状態へ移行すると、前後方向にスライド移動可能となる。
ところで、本実施形態では、図2に示すように、シート本体Shのスライド移動範囲が2つの区間に分かれている。一方の区間は、2つの区間のうち、スライド移動範囲においてより後側に位置する区間であり、本シートSの状態が通常状態(すなわち、着座可能状態)にあるときにシート本体Shが位置し得る区間である。かかる区間(以下、「ウォークイン区間R1」と呼ぶ)内にシート本体Shが位置しているときには、解除レバー21を操作することでリクライニングロック機構の状態をロック状態からロック解除状態に移行させ、シートバック2を回動させることが可能となる。同様に、ウォークイン区間R1内にあるとき、シート本体Shは、解除レバー39の操作によってスライドロックが解除されることで自在にスライド移動することが可能となる。
なお、ウォークイン区間R1は、本発明の所定区間に相当する。また、以下の説明では、ウォークイン区間R1内にあるときのシート本体Shの位置を「通常位置」と呼ぶこととする。
2つの区間のうち、もう一方の区間は、スライド移動範囲においてより後側に位置する区間であり、本シートSの後方スペースを荷室として利用するために設定された区間である。つまり、かかる区間(以下、「荷室形成区間R2」と呼ぶ)内にシート本体Shが位置しているとき、本シートSの後方に荷室が形成されるようになる。また、荷室形成区間R2内でシート本体Shを前方へ移動させれば、荷室を拡張することが可能となる。
なお、以下の説明では、荷室形成区間R2内にあるときのシート本体Shの位置を「荷室形成位置」と呼ぶこととする。
また、本実施形態において、シート本体Shは、ウォークイン区間R1から荷室形成区間R2へ進入しようとするとき、シートバック2の倒伏角度が所定の大きさ以上でないと、荷室形成区間R2へ進入することができないことになっている。つまり、本実施形態では、シート本体Shがウォークイン区間R1をその前端(一端に相当)に向かってスライド移動している際、上記の倒伏角度が所定の大きさ以上である場合にのみ、シート本体Shがウォークイン区間R1の前端位置(つまり、ウォークイン区間R1と荷室形成区間R2との境界位置)を越えられるようになっている。
以上のように本実施形態では、シートバック2の倒伏角度が所定の大きさ以上でなければ、シート本体Shが荷室形成区間R2に進入することができないことになっている。換言すると、シート本体Shが荷室形成区間R2内に位置する期間中、シートバック2が常に前傾姿勢となっている。これは、シート本体Shが荷室形成位置にあるとき、本シートSとその前方に位置する車両用シートとの間隔が非常に狭くなっており、このような状況で乗員が本シートSに無理やり着座しないようにするためである。
また、本実施形態では、倒伏角度が所定の大きさ以上となるまでシートバック2が第一向きに回動すると、これに連動してスライドロックが解除されることになっている。さらに、前述したように、シート本体Shは、シートバック2が前傾姿勢であるときにウォークイン区間R1の前端を越えて荷室形成区間R2へ進入する。さらにまた、本実施形態では、荷室形成区間R2への進入後にシート本体Shを荷室形成位置で保持すべく、シート本体Shが荷室形成区間R2の所定位置に達した際に、解除されたスライドロックを再設定することになっている。
以上のように本実施形態では、シートバック2の倒伏角度及びスライド移動範囲におけるシート本体Shの位置に応じてスライドロックの設定/解除が切り替わるようになっている。つまり、本シートSには、シートバック2の回動動作やシート本体Shのスライド動作に連動して動作することでスライドロックの設定/解除を切り替える機構が備わっている。
以下では、スライドロックの設定/解除を切り替えるために動作する機構を含め、本シートSにおいてシートバック2の回動動作やシート本体Shのスライド動作に連動して動作する機構について説明することとする。
<<シートバックの回動動作やシート本体のスライド動作に連動する機構について>>
本シートSは、シートバック2の回動動作やシート本体Shのスライド動作に連動する機構として4種類のユニット(具体的には、後述する第一連動ユニット70、第二連動ユニット80、第三連動ユニット90及び中継ユニット40)を備えている。また、これらのユニットの中には、スライドロック機構の状態、すなわちスライドロックの設定及び解除を切り替えるものがある。以下では、先ず、スライドロック機構について説明し、その後に上記4種類のユニットの各々について説明することとする。
(スライドロック機構について)
スライドロック機構について図3及び図4を参照しながら説明すると、スライドロック機構は、図3に図示の回転軸37及び押圧ブラケット38、並びに図4に図示のロックレバー33及びレバー支持ブラケット34を有する。回転軸37及び押圧ブラケット38は、シート本体Sh(より具体的にはシートクッションフレーム10の下端部)に設けられている。ロックレバー33及びレバー支持ブラケット34は、アッパレール32に設けられている。
なお、本実施形態では、図3及び4に示すように、シートクッションフレーム10の下端部とアッパレール32との間にレール取り付けブラケット15が介在している。つまり、本実施形態においてアッパレール32は、レール取り付けブラケット15を介してシートクッションフレーム10、具体的にはサイドフレーム11の下端部に取り付けられている。
回転軸37は、シートクッションフレーム10において幅方向に沿って延出するように設けられた軸体である。また、回転軸37の端部には解除レバー39が取り付けられている。そして、解除レバー39の前端部が上方且つ後方に向かって回動するように当該解除レバー39が操作されると、回転軸37は、幅方向に沿う中心軸周りに回転する。
押圧ブラケット38は、左右に間隔を空けて一対設けられた金属板製の部材であり、それぞれ回転軸37に溶接されている。したがって、回転軸37が回転すると、各押圧ブラケット38は、回転軸37と一体的に回転するようになる。また、各押圧ブラケット38が回転軸37と一体的に回転すると、各押圧ブラケット38の下部に形成された押圧部38aが円弧状に下降する。
なお、各押圧ブラケット38には不図示の付勢バネが取り付けられており、かかる付勢バネからの付勢力を受けている。これにより、各押圧ブラケット38及び各押圧ブラケット38が溶接された回転軸37は、通常時、解除レバー39が操作された際に回転する向きとは反対の向きに付勢される。この結果、各押圧ブラケット38は、通常時には所定の待機位置にあることになる。
ロックレバー33は、各アッパレール32に設けられた金属製の部材であり、レバー支持ブラケット34を介して回動可能な状態でアッパレール32に取り付けられている。このロックレバー33には不図示のロック爪が備えている。他方、ロアレールには、その延出方向に沿って並ぶ複数の係合孔(不図示)が形成されている。
そして、ロックレバー33がその回動範囲の一端位置にあるとき、上記のロック爪は、ロアレール31に形成された複数のロック孔のうちのいずれかに係合するようになる。かかる状態にロックレバー33があるとき、ロアレール31に対するアッパレール32の摺動が制限される。すなわち、ロックレバー33が回動範囲の一端位置にあることでスライドロックが設定されるようになる。他方、ロックレバー33が回動範囲の他端位置にあるとき、上記のロック爪は、ロック孔から脱離する。かかる状態にロックレバー33があるとき、ロアレール31に対するアッパレール32の摺動が許容される。すなわち、ロックレバー33が回動範囲の他端位置にあることでスライドロックが解除されるようになる。
なお、ロックレバー33には不図示の付勢バネが取り付けられており、かかる付勢バネからの付勢力を受けている。そして、ロックレバー33は、上記の付勢力を受けることで、通常時には回動範囲の一端位置、すなわちロック爪がロック孔に係合するロック位置に保持される。
また、ロックレバー33は、図4に示すように、支持軸35によってレバー支持ブラケット34に支持される被支持部33aと、この被支持部33aと連続した位置において幅方向外側に張り出すように延出している張り出し部33bと、を有する。この張り出し部33bは、押圧ブラケット38の押圧部38aの直下位置にある。そして、押圧ブラケット38の回転によって押圧部38aが下降した際に、張り出し部33bは当該押圧部38aによって押し下げられる。これにより、ロックレバー33は、上記の付勢力に抗して回動範囲の他端位置、すなわちロック爪がロック孔から脱離するロック解除位置に向かうように回動する。
(第一連動ユニットについて)
次に、第一連動ユニット70について図5及び6を参照しながら説明する。第一連動ユニット70は、シートクッションフレーム10やシートバックフレーム100の側部の脇位置に配置されており、シートバック2の回動動作に連動して動く機構である。この第一連動ユニット70は、図5及び6に示すように、シートバック側回動体71と連結リンク72とケーブル接続リンク73とリンク取り付けブラケット74とを有する。
シートバック側回動体71は、側面視で略半円状の部材であり、シートバックフレーム100のサイドフレーム101と幅方向において隣り合う位置に配置されている。このシートバック側回動体71は、シートバック2に対して相対回動可能な状態で支持されている。具体的に説明すると、シートバック側回動体71は、サイドフレーム101を貫通するリクライニング機構20の軸(リクライニング軸20a)に支持されている。このリクライニング軸20aは、シートバック側回動体71に形成された不図示の軸穴に挿入されており、シートバック2が回動した際には上記の軸穴の内周面に摺接する。これにより、シートバック側回動体71は、リクライニング軸20aを中心にしてシートバック2に対して相対回動する。換言すると、図5及び6を対比すると分かるように、シートバック2は、回動するときにシートバック側回動体71に対して相対回動する。
また、シートバック側回動体71は、図6に示すように、シートバック2が第一向きに回動した際にシートバック2の倒伏角度が所定の大きさに達した時点で、サイドフレーム101に取り付けられた押圧ブラケット102と当接する。この押圧ブラケット102は、サイドフレーム101の外側面に取り付けられた金具であり、幅方向外側に張り出した張り出し部102aを有する。そして、上記の倒伏角度が所定の大きさになるまでシートバック2が第一向きに回動すると、シートバック側回動体71の上端部に張り出し部102aが当接する。かかる時点からシートバック2が第一向きに更に回動すると、シートバック側回動体71がその上端部を押圧ブラケット102により押されるようになる。これにより、シートバック側回動体71は、リクライニング軸20aを中心にして、図6中の矢印f1の向きに回動するようになる。
上記のシートバック側回動体71の回動動作は、連結リンク72を介してケーブル接続リンク73に伝達され、これにより、ケーブル接続リンク73が回動動作を行う。より具体的に説明すると、連結リンク72は、図5に示すように、長尺体からなる部材であり、その長手方向一端部(厳密には、上端部72a)がシートバック側回動体71に連結されている。したがって、シートバック側回動体71が回動すると、連結リンク72は、図6中の矢印f2の向きに移動する。
一方、連結リンク72の長手方向他端部(厳密には、下端部72b)は、図5に示すように、略扇形状のケーブル接続リンク73の後方下端部に連結されている。また、ケーブル接続リンク73は、その上端部のうち、後端よりもやや前方に位置する部分に設けられた回動軸73aを介してリンク取り付けブラケット74に回動自在な状態で支持されている。そして、連結リンク72が矢印f2の向きに移動すると、ケーブル接続リンク73が、回動軸73aを中心にして図6中の矢印f3の向きに回動する。
また、図5に示すように、ケーブル接続リンク73の前端部には第一ケーブルC1及びストッパ解除ケーブルCsが接続されている。より具体的に説明すると、上記二つのケーブルC1、Csは、それぞれ、ケーブル本体として機能するインナケーブルと、インナケーブルを被覆するアウタケーブルとを有する。各ケーブルのアウタケーブルの先端部は、リンク取り付けブラケット74の前端部を幅方向外側に向かって折り曲げることで形成されたケーブル保持部74aに保持されている。また、各ケーブルのインナケーブルの先端部は、ケーブル接続リンク73の前端部に形成されたケーブル留め部73b、73cに留められている。そして、ケーブル接続リンク73が回動すると、ストッパ解除ケーブルCs及び第一ケーブルC1のそれぞれが、図6中の矢印f4、f5の向きに牽引されるようになる。
一方、通常時(厳密には、シートバック2の倒伏角度が所定の角度よりも小さいとき)、ストッパ解除ケーブルCs及び第一ケーブルC1は、それぞれ、対応する付勢部材により図6中の矢印f4、f5とは反対向きに付勢されている。これにより、第一連動ユニット70内の各可動部(すなわち、シートバック側回動体71、連結リンク72及びケーブル接続リンク73)は、通常時には図5に図示の待機位置に位置し続けるようになる。
(第二連動ユニットについて)
次に、第二連動ユニット80について図7及び8を参照しながら説明する。第二連動ユニット80は、スライドレール機構30周りに配置されており、シートバック2の回動動作に連動して動く機構である。この第二連動ユニット80は、図7及び8に示すように、スライド部材81と動作変換部材82と昇降ブラケット83とを有する。
スライド部材81は、金属板からなる部材であり、図5に示すように、シートクッションフレーム10とアッパレール32との間に介在したレール取り付けブラケット15の上壁に載置されている。また、スライド部材81は、レール取り付けブラケット15上で前後方向にスライド可能に構成されている。具体的に説明すると、スライド部材81は、不図示の付勢部材により前方に付勢されている。このため、スライド部材81は、通常時、そのスライド移動範囲において前端位置に位置するようになる。
一方、スライド部材81の後端部には、図5に示すようにケーブル留め部81aが設けられている。このケーブル留め部81aには、ストッパ解除ケーブルCsのインナケーブルのうち、ケーブル接続リンク73に留められている側とは反対側の端部が留められている。そして、ストッパ解除ケーブルCsが図8中の矢印f4の向き(図6中の矢印f4に相当する向き)に牽引されると、スライド部材81は、上記の付勢部材の付勢力に抗して後方へスライド移動する。
上記のスライド部材81のスライド動作は、動作変換部材82によって昇降ブラケット83の昇降動作に変換される。具体的に説明すると、動作変換部材82は、図7に示すように、数字の「6」の字状に成形された部材であり、その下端部は、支持軸82aを介してアッパレール32(厳密には、ロアレール31よりも上方に位置する部分)に回動可能な状態で支持されている。また、動作変換部材82の上端部に形成された係合部82bは、スライド部材81の前端部と係合しており、詳しくは、スライド部材81に形成された不図示の係合孔の内縁面に掛かり止めされている。
一方、昇降ブラケット83は、スライド部材81のスライド動作に連動して上下移動する上下移動部材であり、動作変換部材82の直前位置に配置されている。また、昇降ブラケット83の上端部には、図7に示すように上下方向に延びたルーズ穴83aが形成されている。このルーズ穴83a内には、アッパレール32の上端部から幅方向外側に突出した円柱状突起32aが挿入されている。また、昇降ブラケット83の後端部には半円状の切り欠き83bが形成されている。この切り欠き83bの内縁面には、動作変換部材82の前端部から前方に向かって突出した突起部82cが係合している。
そして、スライド部材81が後方へスライド移動すると、動作変換部材82は、係合部82bがスライド部材81によって後方に引かれるために、支持軸82aを中心にして図8中の矢印f11の向きにて回動するようになる。また、動作変換部材82が回動すると、動作変換部材82の突起部82cが、昇降ブラケット83に形成された切り欠き83bの内縁面を上方に押し上げる。これにより、昇降ブラケット83は、円柱状突起32aがルーズ穴83aの内縁面にガイドされながら上昇(図8中の矢印f12の向きへ移動)するようになる。
これに対して、通常時(すなわち、スライド部材81がそのスライド移動範囲の前端位置にあるとき)、昇降ブラケット83は、図7に示すように昇降範囲における下端位置に位置する。
ところで、昇降ブラケット83が下端位置にあるときにシート本体Shがウォークイン区間R1を前方に向かって移動して当該区間の前端位置に到達すると、昇降ブラケット83の下端部に形成された被係止部83cが、図9Aに示すように、ロアレール31内でストッパSPに係止されるようになる。このストッパSPは、移動規制部材に相当し、ロアレール31の底壁上に設けられ、より具体的には、ウォークイン区間R1の前端(一端)に配置されている。そして、被係止部83cがストッパSPに係止された状態にあるとき、シート本体Shは、それ以上前方に移動することができず、つまり、ウォークイン区間R1を越えることができない。
これに対して、昇降ブラケット83が上端位置にあるときにシート本体Shがウォークイン区間R1を前方に向かって移動して当該区間の前端位置に到達した場合、被係止部83cは、図9Bに示すように、ストッパSPの上方を乗り越えるようになる。かかる状態にあるとき、シート本体Shは、ウォークイン区間R1を越えて更に前方へ(換言すると、荷室形成区間R2内を)移動可能となる。
以上のように本実施形態では、昇降ブラケット83が上下方向においてストッパSPに係止される位置とストッパSPを乗り越える位置と、の間で上下移動する。そして、昇降ブラケット83がストッパSPを乗り越える位置にあるときにのみ、シート本体Shは、ウォークイン区間R1の前端を越えた位置へスライド移動することが可能である。
なお、昇降ブラケット83を含め、第二連動ユニット80の各可動部は、上述したようにシートバック2の回動動作に連動して動作する。より具体的に説明すると、シートバック2が第一向きに回動することで第一連動ユニット70においてストッパ解除ケーブルCsが矢印f4の向きに牽引されると、第二連動ユニット80の各可動部が動作するようになる。この際、昇降ブラケット83は、シートバック2の倒伏角度に応じた距離だけ上昇する。
以上のような構成により、本実施形態では、シートバック2の倒伏角度が所定の大きさ以上であるときにのみ、シート本体Shの荷室形成区間R2への進入が許可されるようになる。なお、シート本体Shの荷室形成区間R2への進入が許可される条件として設定されるシートバック2の倒伏角度については、乗員が本シートSに着座するのを効果的に阻止するのに好適な角度に設定されているのが好ましい。
(第三連動ユニットについて)
次に、第三連動ユニット90について図10及び11を参照しながら説明する。第三連動ユニット90は、シート本体Shのスライド動作に連動して動く機構である。厳密に説明すると、第三連動ユニット90は、シート本体Shがウォークイン区間R1を前方へスライド移動して当該区間の前端に到達したことを契機にして動くものである。この第三連動ユニット90は、図10及び11に示すように、トリガー用リンク91とケーブル接続リンク92と中間リンク93、94、95と起立規制用リンク96とを有する。
トリガー用リンク91は、上下方向に長く延出した部材であり、支持軸91aを介してアッパレール32(厳密には、ロアレール31よりも上方に位置する部分)に回動可能な状態で支持されている。このトリガー用リンク91は、ウォークイン区間R1を前方へ移動するシート本体Shが当該区間の前端を越えると、支持軸91aを中心にして回動するようになる。より具体的に説明すると、ロアレール31の底壁のうち、ウォークイン区間R1の前端を越えた位置にある部分には、図11に示すように傾斜状の段差DCが形成されている。この段差DCは、ウォークイン区間R1の前端を越えた位置、すなわち、荷室形成区間R2の所定位置に配置された部材に相当する。
トリガー用リンク91は、シート本体Shの前方へのスライド移動に伴って前進して上記の段差DCの配置位置に差し掛かると、当該段差DCから作用を受ける。具体的に説明すると、トリガー用リンク91の下端部には当接部91bが形成されている。この当接部91bは、トリガー用リンク91が段差DCの配置位置に差し掛かった際に当該段差DCの後端に当接する。そして、当接部91bが段差DCに当接した後にシート本体Shが更に前方へスライド移動すると、図11に示すように、シート本体Shが前方に向かうに連れて当接部91bが段差DCを乗り上がるようにトリガー用リンク91が図11中の矢印f9の向きに回動する。
上述したトリガー用リンク91の回動動作は、ケーブル接続リンク92に伝達される。この結果、ケーブル接続リンク92が第二ケーブルC2を牽引するようになる。より具体的に説明すると、ケーブル接続リンク92は、支持軸92aを介してシート本体Sh中の所定部位(例えば、シートクッションフレーム10のサイドフレーム11)に回動可能な状態で支持されている。また、ケーブル接続リンク92の下端部には係合端部92bが形成されている。かかる係合端部92bは、図10に示すように、トリガー用リンク91の上端部に形成された係合端部91cと係合している。また、ケーブル接続リンク92の上端部には、図10に示すようにケーブル留め部92cが設けられている。このケーブル留め部92cには、第二ケーブルC2のインナケーブルの端部が留められている。
そして、トリガー用リンク91が図11中の矢印f9の向きに回動すると、ケーブル留め部92cが設けられている上端部が後方へ倒れるようにケーブル接続リンク92が回動する。これにより、第二ケーブルC2が図11中の矢印f8の向きに牽引されるようになる。以上のようにトリガー用リンク91及びケーブル接続リンク92は、前方移動しているシート本体Shが段差DCに差し掛かったときに当該段差DCから作用を受けて動作する動作体として機能する。そして、両リンクが動作することで第二ケーブルC2が牽引されることになっている。
また、ケーブル接続リンク92が回動すると、その回動動作が複数の中間リンク93、94、95を介して起立規制用リンク96に伝達され、この結果、起立規制用リンク96が動作する。具体的に説明すると、複数の中間リンク93、94、95のうち、最も前側に位置する中間リンク93は、前後方向に長く延出している。かかる中間リンク93は、その長手方向一端部(前端部)にてケーブル接続リンク92中、支持軸92aよりもやや上方に設けられたリンク取り付け部92dに取り付けられている。
最も前側に位置する中間リンク93の直ぐ後ろには、略V字状をなす中間リンク94が配置されている。かかる中間リンク94は、その屈曲部分に設けられた支持軸94aを介してシート本体Sh中の所定部位(例えば、シートクッションフレーム10のサイドフレーム11)に回動可能な状態で支持されている。また、略V字状の中間リンク94が有する端部のうち、より前側に位置する端部には、最も前側に位置する中間リンク93の長手方向端部(後端部)が取り付けられるリンク取り付け部94bが形成されている。また、より後側に位置する他端部には、上下方向に長く延出した中間リンク95の下端部が取り付けられるリンク取り付け部94cが形成されている。
起立規制用リンク96は、前後方向に延出した側方視で略ダンベル型をなし、前後方向中央部に設けられた支持軸96aを介してシート本体Sh中の所定部位(例えば、シートクッションフレーム10のサイドフレーム11)に回動可能な状態で支持されている。また、起立規制用リンク96の前端部にはリンク取り付け部96bが形成されている。このリンク取り付け部96bには、上下方向に延出した中間リンク95の上端部が取り付けられている。また、起立規制用リンク96の後端部には、横向き台形状の規制部96cが形成されている。
そして、ケーブル接続リンク92が回動すると、これに連動する形で中間リンク93が後方に移動し、その後方の中間リンク94が支持軸94aを中心にして回動し、更に後方の中間リンク95が下方に移動する。この結果、起立規制用リンク96が支持軸96aを中心に回動し、具体的には、図11中の矢印f10の向きに回動する。
以上のように構成された第三連動ユニット90は、本発明の回動動作規制機構として機能し、シート本体Shがウォークイン区間R1の前端位置を越えて荷室形成区間R2内にあるときにシートバック2の起立動作(すなわち、第二向きへの回動動作)を規制する。より詳しく説明すると、シート本体Shがウォークイン区間R1の前端位置を越える際、シートバック2は、前傾姿勢にあり、その倒伏角度が所定の大きさ以上となっている。
一方、シートバックフレーム100は、サイドフレーム101の外表面の下端部に、図10に図示の係合ブロック97を備えている。この係合ブロック97は、側面視でコンマ記号状の部材であり、図10に示すように、その外周部の一部分が矩形状に隆起している。換言すると、係合ブロック97の外周面には角状の凹み97aが形成されていることになる。
上記の凹み97aは、通常時、すなわち、シートバック2が起立姿勢にあるとき、図10に示すように係合ブロック97の外周面において最も下方位置にある。一方、シートバック2が前傾姿勢にあって倒伏角度が所定の角度以上であるとき、上記の凹み97aは、通常時における位置よりも幾分後方且つ上方に位置するようになる。また、このとき、起立規制用リンク96は、支持軸96aを中心に回動して、その後端部(すなわち、規制部96c)が幾分持ち上がった姿勢となっている。以上の位置に凹み97a及び規制部96cがあるとき、両者は図11に示すように係合し合い、具体的には、角状の凹み97aに規制部96cの後方上側の角部が嵌まり込むようになる。
そして、凹み97a及び規制部96cが係合した状態では、係合ブロック97の外周部のうち、凹み97aと隣接する部分(具体的には、矩形状に隆起した隆起部97b)が規制部96cの後面に係止されるようになる。この結果、シートバック2の起立動作が規制されるようになる。
以上のように第三連動ユニット90は、シート本体Shがウォークイン区間R1の前端を越えると、上述した段差DCからの作用を受けて第二ケーブルC2を図11の矢印f8の向きに牽引すると共に、シートバック2の起立動作を規制するようになる。つまり、シート本体Shがウォークイン区間R1の前端を越えて荷室形成区間R2にあるときには、シートバック2は、前傾姿勢から起立させることが制限され、前傾姿勢のままで保持されるようになる。この結果、シート本体Shが荷室形成区間R2にある間に乗員が本シートSに着座しようとするのを、適切に抑制(阻止)することが可能となる。
(中継ユニットについて)
次に、中継ユニット40について説明する。中継ユニット40は、シートバック2の回動動作及びシート本体Shのスライド動作に連動して動作する機構である。より具体的に説明すると、中継ユニット40は、第一連動ユニット70とスライドロック機構との間を中継し、シートバック2が第一向きに回動して倒伏角度が所定の大きさ以上となった際に第一連動ユニット70の動作をスライドロック機構に伝達する。これにより、倒伏角度が所定の大きさ以上となるまでシートバック2が第一向きに回動すると、これに連動してスライドロックが解除されるようになる。
また、中継ユニット40は、第二連動ユニット80とスライドロック機構との間を中継し、シート本体Shがウォークイン区間R1を前方に向かってスライド移動して当該区間の前端に到達した際に、第二連動ユニット80の動作を利用して、解除されたスライドロックを再設定する(換言すると、スライドロックの解除をキャンセルする)。
以上のように中継ユニット40は、本発明の規制切り替え機構に相当し、スライドロックの設定及び解除を切り替えるために動作する。以下では、先ず、既出の図3を参照しながら中継ユニット40の配置位置等について説明する。
本実施形態において、中継ユニット40は、図3に示すようにシートクッション1の下部に取り付けられている。より具体的に説明すると、中継ユニット40は、ユニット内の部材をシート本体Shに取り付けるためのケーシング43を有する。このケーシング43は、略皿状に加工成形された鋼板からなり、その内側には中継ユニット40の各部が収容されている。ケーシング43が設けられていることで、中継ユニット40の各部(厳密には、ケーシング43内に収容された部品)への異物の付着が抑制される。
一方、シートクッションフレーム10は、図3に示すように、その前端部にU字状に折り曲げされてなる前方フレーム12を有する。この前方フレーム12は、幅方向両端部をなす側部13と、前端部をなす前端連結部14とを有する。この前端連結部14は、シートクッションフレーム10の前端部にて側部13同士を連結している。また、前方フレーム12の下部には、図3に示すように、前端連結部14よりも後方位置で側部13同士を連結する後方連結部16が溶接されている。
そして、本実施形態では、図3に示すように、前後方向において前端連結部14と後方連結部16との間にケーシング43及びケーシング43内の部品が配置されている。このように本実施形態では、シートクッションフレーム10における前端連結部14と後方連結部16との間のスペースを利用して中継ユニット40をよりコンパクトに配置することが可能となる。これにより、中継ユニット40を設けることに起因した本シートSの大型化を効果的に抑制することが可能となる。
また、本実施形態において、ケーシング43を含む中継ユニット40の各部は、シートクッション1の下部に配置されている。このため、中継ユニット40が目立ち難くなり、また、乗員が本シートSに着座した際に感じる着座感に影響が及ぶのを抑えることが可能となる。
次に、中継ユニット40の具体的構成について図12〜図14を参照しながら説明する。図12〜14は、中継ユニット40を上方から見たとき(すなわち、着座側から見た)時の図である。なお、以下の説明において、「上側」とは、ケーシング43の底面と直交する方向においてより上側にあることを意味し、「下側」とは、同方向においてより下側に在ることを意味する。
中継ユニット40は、図12〜14に示すように、前述したケーシング43に加え、固定回動軸41、可動回動軸42、第一回動体44、第二回動体45、第三回動体46、係合ピン47、第一コイルばね51、第二コイルばね52、第三コイルばね53、第一ケーブルC1、第二ケーブルC2及び第三ケーブルC3を有する。
固定回動軸41は、ケーシング43に固定された軸体であり、第一回動体44及び第三回動体46の回動軸として機能する。すなわち、この固定回動軸41は、第一回動体44及び第三回動体46が回動する際の共通の回動軸として機能し、両回動体は、固定回動軸41を中心にして(より詳しくは、固定回動軸41周りに)回動する。このような構成により、第一回動体44及び第三回動体46の各々に対して回動軸を個別に設ける場合よりも部品数が少なくなる結果、本シートSの大型化が抑制されるようになる。
なお、本実施形態において、固定回動軸41は、ケーシング43の中央位置に程近い位置に設けられている。より詳しく説明すると、ケーシング43のうち、固定回動軸41が固定される部分は、その周囲よりも一段浮き上がっており、固定回動軸41の台座を形成している。また、固定回動軸41は、第一回動体44及び第二回動体45を貫いており、その上端部がカシメられることで両回動体が固定回動軸41から抜け外れるのを抑制している。
可動回動軸42は、第三回動体46に取り付けられた軸体であり、第三回動体46が回動する際に一体的に回動する。この可動回動軸42は、第二回動体45を貫いており、第二回動体45が第一回動体44に対して相対回動する際の回動軸として機能する。なお、可動回動軸42の上端部はカシメられており、これにより、第二回動体45が可動回動軸42から抜け外れるのを抑制している。
ケーシング43は、平面視で略矩形状の外形形状をなしている。また、図12に示すように、ケーシング43のうち、固定回動軸41が固定されている部分からやや前方に位置する部分が切り起こされて突出部(以下、第一突出部48)を形成している。この第一突出部48は、ケーシング43の底面(換言すると、第一回動体44、第二回動体45及び第三回動体46の各々が取り付けられている面)から突出した爪状の突出部である。そして、第一突出部48は、図13に示すように、第一回動体44が固定回動軸41周りに回動する際(厳密には、図12において時計回りに回動する際)に第一回動体44の外縁と当接する。すなわち、第一突出部48は、第一回動体44の回動範囲の一端位置を規定し、第一回動体44が当該位置に到達した後に更に回動するのを制限するものである。
また、ケーシング43のうち、固定回動軸41が固定されている部分の斜め前方に位置する部分についても、切り起こされて突出部(以下、第二突出部49)を形成している。この第二突出部49は、ケーシング43の底面からアーチ状に隆起した突出部である。そして、図12に示すように、第二突出部49は、通常時、第三回動体46の下面と当接している。つまり、第三回動体46は、固定回動軸41周りに回動する際に第二突出部49と摺接するようになる。このように、第三回動体46が回動する際に第二突出部49が第二回動体45と当接するで、第三回動体46の回動経路が第二突出部49によって規制される。この結果、第三回動体46は、上記の回動経路に沿って適切に回動するようになる。
なお、第三回動体46がその回動経路に沿って適切に回動するための構成として、上記の第二突出部49に加えて、ガイドスリット50が更にケーシング43に設けられている。このガイドスリット50は、ケーシング43において固定回動軸41の側方に形成されており、第三回動体46の回動経路に沿って円弧状に延出している。そして、ガイドスリット50の縁部には、第三回動体46に設けられた不図示のスリット係合部が係合している。そして、第三回動体46は、スリット係合部をガイドスリット50の縁部に沿わせることで、規定された回動経路に沿って適切に回動するようになる。
また、図3や図12に示すように、ケーシング43の外側から第一ケーブルC1、第二ケーブルC2及び第三ケーブルC3の各々がケーシング43内に引き込まれている。これらのケーブルは、それぞれ、ケーシング43内において第一回動体44、第二回動体45及び第三回動体46のうち、対応する回動体に接続されている。
そして、本実施形態では、上記三本のケーブルのすべてがケーシング43から見て同じ方向から(具体的には前方から)引き込まれている。すなわち、第一ケーブルC1、第二ケーブルC2及び第三ケーブルC3は、それぞれ、第一回動体44、第二回動体45及び第三回動体46に対して同じ方向から対応する回動体に向かって引き込まれていることになる。以上のように各ケーブルを配索することでケーシング43周りにおけるケーブル配索スペースが少なくて済み、尚且つ各ケーブルをケーシング43内へ適切に引き込むことが可能となる。
第一回動体44は、固定回動軸41周りに回動する回動体であり、鋼材からなる。この第一回動体44は、倒伏角度が所定の大きさ以上となるまでシートバック2が第一向きに回動した際にシートバック2の回動動作に連動して回動する。具体的に説明すると、図12に示すように、略C字状をなす第一回動体44の一端部には、第一回動体用ケーブルに相当する第一ケーブルC1のインナケーブルの先端部が連結(掛かり止め)されている。ここで、第一ケーブルC1は、倒伏角度が所定の大きさ以上となるまでシートバック2が第一向きに回動したときに、前述した第一連動ユニット70によって図6中の矢印f5の向きに牽引される。そして、第一ケーブルC1が牽引されることにより、第一回動体44は、図13に示すように、固定回動軸41を中心として時計回りに回動するようになる。
以上のように第一ケーブルC1を介してシートバック2の回動動作(前傾動作)が第一回動体44に伝達され、第一回動体44が回動するようになる。すなわち、第一ケーブルC1は、シートバック2の回動動作に第一回動体44の回動動作を連動させるために第一回動体44に接続されていることになる。
なお、第一回動体44は、固定回動軸41を中心として時計回りに回動する際、その外縁が第一突出部48と当接する位置まで回動する。それ以降、第一ケーブルC1が牽引され続ける限り(換言すると、シートバック2が所定の大きさ以上の倒伏角度にて前傾している間)、第一回動体44が第一突出部48との当接位置に保持される。
また、第一回動体44のうち、第一ケーブルC1が連結されている側とは反対側の端部には、半円状の切り欠き44aが形成されている。さらに、第一回動体44のうち、固定回動軸41が貫通している部分の周辺部分には第三コイルばね53の一端部が掛かり止めされている。
第二回動体45は、第一回動体44と係脱可能な部材であり、鋼材からなる。この第二回動体45は、第一回動体44と係合しているときには第一回動体44と一体的に回動し、第一回動体44との係合状態から脱すると第一回動体44に対して相対回動する。より詳しく説明すると、第二回動体45は、略直線状に延出した外形形状となっており、図12に示すように、延出方向端部に係合ピン47が取り付けられている。この係合ピン47は、第二回動体45の上面から突出した略円柱状のピンである。
そして、通常時、係合ピン47には第一回動体44の端部が係合しており、具体的には、係合ピン47の外周面の一部が第一回動体44の端部に形成された切り欠き44aに嵌まり込んで当該切り欠き44aの内縁面に当接している。かかる状態において第一回動体44が回動すると、図13に示すように、第二回動体45も固定回動軸41を中心とする回動経路に沿って時計回りに回動するようになる。
一方で、第二回動体45は、図12に示すように可動回動軸42に支持されている。また、第二回動体45のうち、係合ピン47が取り付けられている側とは反対側の端部には、第二回動体用ケーブルに相当する第二ケーブルC2のインナケーブルの先端部が連結されている。ここで、第二ケーブルC2は、シート本体Shがウォークイン区間R1を前方に向かって移動して当該区間の前端に達した際に第三連動ユニット90により図13中の矢印f8の向きに牽引される。
そして、第二ケーブルC2が牽引されることにより、第二回動体45は、図14に示すように、可動回動軸42を中心として時計回りに回動するようになる。この回動動作により、第一回動体44と第二回動体45との係合状態が解除されるようになり、同図に示すように、第二回動体45が第一回動体44に対して時計回りに相対回動するようになる。なお、第二回動体45が第一回動体44に対して相対回動した際には、図14に示すように、第一回動体44における切り欠き44aが形成されている側の端部が、第二回動体45における係合ピン47が取り付けられている側の端部の下に潜り込むようになる。
また、第二回動体45のうち、可動回動軸42が貫通している部分の周辺部分には第三コイルばね53の一端部が掛かり止めされている。
第三回動体46は、固定回動軸41周りに回動する回動体であり、鋼材からなる。この第三回動体46は、図12〜14に示すように、半円状の外形形状をなしており、第一回動体44及び第二回動体45の下側に配置されている。すなわち、第三回動体46の上方には残り二つの回動体が重ねられた状態で配置されている。
第三回動体46は、固定回動軸41に回動自在な状態で支持されているが、同軸には第一回動体44も支持されている。ここで、第一回動体44及び第三回動体46は、互いに別れた状態で固定回動軸41に支持されている。このため、上記二つの回動体は、互いに独立した状態で固定回動軸41周りに回動(相対回動)することが可能である。
また、第三回動体46において固定回動軸41が貫通している部分から斜め後方に位置する部分には、図12に示すように可動回動軸42が立設されている。この可動回動軸42には、前述したように、第二回動体45が回動可能な状態で支持されている。
以上のように構成された第三回動体46は、固定回動軸41周りに回動することでスライドロックの設定位置及び解除位置の間を往復移動する。ここで、「設定位置」とは、スライドロックを設定する時点での第三回動体46の位置であり、具体的には図12に図示された第三回動体46の位置である。「解除位置」とは、スライドロックを解除する時点での第三回動体46の位置であり、具体的には図13に図示された第三回動体46の位置である。
より具体的に説明すると、図12に示すように、第三回動体46の側方前端部には、第三回動体用ケーブルに相当する第三ケーブルC3のインナケーブルの一端部が連結されている。一方、第三ケーブルC3のインナケーブルの他端部は、図4に示すように、スライドロック機構の押圧ブラケット38に連結されている。ここで、押圧ブラケット38は、不図示の付勢部材により常時付勢された状態にある。このため、押圧ブラケット38は、通常時、当該付勢部材の付勢力によりスライドロック設定時の位置(具体的には、押圧ブラケット38の押圧部38aがロックレバー33の張り出し部33bの上方に幾分浮き上がっているときの位置)に保持されることになる。また、上記の付勢力により、押圧ブラケット38に連結された第三ケーブルC3も付勢されることになり、図12中の矢印f6の向きに牽引される。
一方で、第三回動体46が固定回動軸41を中心にして設定位置から解除位置に向かうように回動する(分かり易くは時計回りに回動する)と、第三ケーブルC3が、上記の付勢力に抗して図13中の矢印f7の向きに牽引されるようになる。これにより、押圧ブラケット38が回動して押圧部38aがロックレバー33の張り出し部33bを押し下げる。この結果、ロックレバー33がロック解除位置に至り、スライドロックが解除されるようになる。以上のように第三回動体46が解除位置に向かって回動すると、第三ケーブルC3が第三回動体46によって牽引されることにより、スライドロック機構の各部が作動してスライドロックが解除されるようになる。
ところで、解除位置に向かう第三回動体46の回動動作は、第一回動体44及び第二回動体45が係合した状態で一体的に回動することによって実現される。具体的に説明すると、第一回動体44及び第二回動体45が係合した状態で第一回動体44が時計回りに回動すると、第二回動体45が固定回動軸41を中心とした回動経路に沿って同じく時計回りに回動する。この際、第二回動体45が可動回動軸42を介して第三回動体46を時計回りに押す。すなわち、第二回動体45は、第三回動体46を連れながら第一回動体44と一体的に回動する。この結果、第三回動体46が固定回動軸41を中心として時計回りに回動するようになり、最終的に解除位置に至るようになる。
反対に、第一回動体44と第二回動体45との係合状態が解除されると、第三回動体46は、第二回動体45による押圧から解放される結果、設定位置へ復帰するようになる。具体的に説明すると、第二回動体45は、可動回動軸42を中心にして第一回動体44に対して相対回動することで第一回動体44との係合状態を脱する。これにより、第二回動体45は、固定回動軸41を中心とした回動経路に沿った回動動作を中断する。この結果、第二回動体45から第三回動体46への押圧がなくなる。その一方で、第三回動体46には、押圧ブラケット38に掛かる付勢力が第三ケーブルC3を介して作用する。このため、第二回動体45による押圧から解放された第三回動体46は、上記の付勢力により固定回動軸41を中心にして反時計回りに回動し、設定位置へ戻るようになる。
第三回動体46の構成について更に詳しく説明すると、第三回動体46において第三ケーブルC3のインナケーブルの先端部が連結されている部分よりも若干後方に位置する部分には、図12に示すように、第一コイルばね51の端部が掛かり止めされている。さらに、第三回動体46の後端部には、同図に示すように、第二コイルばね52及び第三コイルばね53の端部が掛かり止めされている。
また、図12に示すように、第三回動体46の幅方向両側端部のうち、第三ケーブルC3のインナケーブルが接続されている側とは反対側に位置する側端部には、第二ケーブルC2のアウタケーブルが保持されている。
さらに、第三回動体46において固定回動軸41が貫通している部分から第三ケーブルC3に若干寄った部分は、上方に切り起こされて爪状突起部46aを形成している。この爪状突起部46aは、通常時、図12に示すように第一回動体44の外縁と当接している。かかる状態では、第三回動体46に対する第一回動体44の回動動作(厳密には、反時計回りの回動動作)が制限されるようになる。
第一コイルばね51は、固定回動軸41の斜め後方においてケーシング43及び第三回動体46に掛かり止めされた付勢部材である。この第一コイルばね51により、第三回動体46は、固定回動軸41を中心として反時計回りに付勢される。このため、第三回動体46は、固定回動軸41を中心として時計回りに回動する際(すなわち、解除位置に向かって回動する際)、第一コイルばね51の付勢力に抗して回動することになる。一方、第三回動体46は、解除位置から設定位置へ戻る際、第一コイルばね51の付勢力を受けることで速やかに設定位置に戻ることとなる。
第二コイルばね52は、第二回動体45及び第三回動体46の各々の後端部に掛かり止めされた付勢部材である。この第二コイルばね52により、第二回動体45は、可動回動軸42周りに回動する際の回動範囲において一端位置に向かうように付勢される。ここで、回動範囲における一端位置とは、第二回動体45が第一回動体44と係合可能な位置、具体的には図12に示すように第二回動体45に取り付けられた係合ピン47に第一回動体44の端部に形成された切り欠き44aが嵌まり込む位置である。そして、第二回動体45は、第二コイルばね52の付勢力により、通常時には上記回動範囲における一端位置に位置するようになる。一方、第二回動体45は、上記回動範囲における一端位置から他端位置に向かって可動回動軸42周りに回動する際、第二コイルばね52の付勢力に抗して回動することになる。
第三コイルばね53は、固定回動軸41の後方において第一回動体44及び第三回動体46に掛かり止めされた付勢部材である。この第三コイルばね53により、第一回動体44は、第三回動体46に対する相対位置が所定位置(具体的には図12に示すように爪状突起部46aと当接する位置)になるように付勢される。このため、第一回動体44は、第三回動体46に対して相対回動する際、第三コイルばね53の付勢力に抗して回動することになる。換言すると、第三回動体46は、第一回動体44に対して回動する際、第三コイルばね53の付勢力に抗して回動することとなる。
次に、中継ユニット40各部の動作を、シートバック2の回動動作及びシート本体Shのスライド動作と関連付けて説明することとする。なお、以下では、シート本体Shを通常時時の位置から前方へスライド移動させて荷室形成区間R2内に位置させるケースを例に挙げて説明する。
先ず、シート本体Shが通常時の位置(すなわち、ウォークイン区間R1内の所定位置)にあるときにシートバック2が第一向きに回動する。やがて、シートバック2の倒伏角度が所定の大きさ、具体的には、第一連動ユニット70において押圧ブラケット102がシートバック側回動体71と当接する際の倒伏角度となる。その時点からシートバック2が更に前傾すると、押圧ブラケット102がシートバック側回動体71を前方に押圧する。この結果、第一連動ユニット70が第一ケーブルC1を図6中の矢印f5の向きに牽引するようになる。
第一ケーブルC1が牽引されると、中継ユニット40において、図13に示すように第一回動体44が固定回動軸41を中心として時計回りに回動するようになる。この時点では、第一回動体44の端部に形成された切り欠き44aが係合ピン47に係合している。すなわち、第二回動体45と第一回動体44とが係合した状態にある。このため、第一回動体44が回動すると、これに伴って第二回動体45が固定回動軸41を中心とした回動経路に沿って回動することになる。また、この際、第二回動体45は、可動回動軸42を押しながら回動する。これにより、第三回動体46は、第一コイルばね51の付勢力に抗しながら固定回動軸41を中心として時計回りに回動するようになる。すなわち、第二回動体45は、第三回動体46を連れ回りながら第一回動体44と一体的に回動する。これにより、当初には設定位置にあった第三回動体46が、回動して解除位置に至るようになる。そして、第三回動体46は、解除位置まで回動することで第三ケーブルC3を図13中の矢印f7の向きに牽引するようになる。
以上のように第三ケーブルC3が上記の如く牽引されることでスライドロックが解除され、シート本体Shが前後方向に自在にスライド移動し得る状態になる。そして、シート本体Shは、ウォークイン区間R1を前方に向かって移動し、やがて当該区間R1の前端を越えるようになる。この際、トリガー用リンク91の下端部に形成された当接部91bがロアレール31の底面に設けられた段差DCに差し掛かって当該段差DCに当接する。かかる時点からシート本体Shが更に前方へスライド移動すると、上記の当接部91bが段差DCを乗り上がるようにトリガー用リンク91が回動する。この結果、第三連動ユニット90が第二ケーブルC2を図11中の矢印f8の向きに牽引する。
第二ケーブルC2が牽引されると、中継ユニット40において、図14に示すように第二回動体45が、第二コイルばね52の付勢力に抗しながら可動回動軸42を中心として回動する。すなわち、第二回動体45は、第一回動体44に対して相対回動するようになる。これにより、切り欠き44aが係合ピン47から脱離し、第二回動体45が第一回動体44との係合状態から脱するようになる。なお、第一回動体44と第二回動体45との係合状態が解除されることで、第一回動体44のうち、切り欠き44aが形成されている側の端部が第二回動体45の下に潜り込むようになる。
また、第一回動体44と第二回動体45との係合状態が解除されることにより、第二回動体45は、もはや可動回動軸42を押さなくなる。これにより、それまで解除位置にあった第三回動体46が、第一コイルばね51の付勢力、及び、スライドロック機構側から第三ケーブルC3を介して伝達される付勢力(図14中の矢印f6の向きの付勢力)によって反対方向に回動する。すなわち、第三回動体46は、解除位置から設定位置に向かうように第一回動体44に対して相対回動する。そして、第三回動体46が設定位置に至ると、第三ケーブルC3が再びスライドロック機構側に牽引されるようになる。
以上のように第三ケーブルC3が上記の如く牽引されることでスライドロックが再び設定される。つまり、シートバック2の倒伏角度が所定の大きさ以上となった以降、解除されていたスライドロックが、シート本体Shが荷室形成区間R2に進入することにより再設定されることになる。この結果、シート本体Shの位置を荷室形成区間R2内で保持(ロック)することが可能となる。