以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
まず、本発明の実施形態による車両の構成について説明する。図1は、この実施形態による変速機の制御装置を備えた車両の制御系統を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態による車両Veは、クラッチ・ツウ・クラッチ変速を行うことが可能な自動変速機30を備える。車両Veは、動力源10の出力側に入力軸20を介して自動変速機30が連結されている。動力源10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関若しくはモータなどによって構成され、または内燃機関およびモータを組み合わせたハイブリッドタイプの動力源である。動力源10は、少なくとも出力トルクTtを電気的に制御可能に構成される。具体的に例えば、動力源10がガソリンエンジンの場合、電子スロットルバルブを備えてスロットル開度を電気的に制御することによって、吸入空気量に応じた出力トルクTtを設定できる。また、点火時期の遅角制御または進角制御を行うことにより出力トルクTtを一時的に変化可能に構成されている。換言すると、車両Veにおける動力源10は、入力軸20を介して自動変速機30に入力されるトルクTtを発生する装置である。この実施形態において、車両Veがトルクコンバータ(図示せず)を備えている場合、トルクコンバータは動力源10を構成し、入力軸20の回転数N(以下、入力軸回転数N)はトルクコンバータのタービン回転数となる。
自動変速機30は、所定の係合機構C1を係合させることにより、所定の変速ギヤ段に設定できる。また、係合機構C1を解放するとともに他の係合機構C2を解放状態から係合状態に切り替えることによって、他の変速ギヤ段が設定できる。なお、係合機構C1,C2はあくまでも例であり、係合機構C1,C2の数は2つに限定されない。係合機構C1,C2はいずれも、相互に回転する摩擦部材同士を係合させたり解放させたりするクラッチ機構や、回転可能な摩擦部材を固定された摩擦部材に係合させたり解放させたりするブレーキ機構から構成される。すなわち、係合機構C1,C2は、クラッチ機構またはブレーキ機構の組み合わせから構成される。これにより、自動変速機30は、係合機構C1,C2の組み合わせによって複数の変速ギヤ段に設定可能な有段式の変速機である。なお、設定可能な変速比の全体に亘って切り換えられる変速のすべてがクラッチ・ツウ・クラッチ変速でなくてもよく、少なくとも1つの変速がクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる変速機であればよい。
係合機構C1,C2は所定のアクチュエータによってトルク容量を制御可能に構成されている。係合機構C1,C2のトルク容量を制御するアクチュエータは、例えば油圧アクチュエータであるが、電動アクチュエータであってもよい。これにより、係合機構C1,C2のトルク容量は、電気的に制御可能に構成される。例えば、この実施形態による自動変速機30は、複数の電磁弁や制御バルブ(リニアソレノイドバルブ)などによって油圧が制御される油圧回路を備え、電磁弁によって油路を切り替えることによって変速を実行する。自動変速機30は、変速の過程において、係合機構C1,C2のトルク容量や変速ギヤ段を設定している状態における係合機構C1,C2のトルク容量を、電磁弁によって制御可能に構成される。自動変速機30の出力軸40から出力されたトルクToutは、終減速機を構成するデファレンシャル50に伝達される。デファレンシャル50に伝達されたトルクToutは、左右の駆動輪60に駆動トルクとして伝達される。
車両Veは、動力源10および自動変速機30を制御する制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)70を備える。この実施形態によるECU70は、動力源10を制御する制御装置と、自動変速機30を制御する制御装置とを統合した制御装置である。なお、動力源10を制御する制御装置と自動変速機30を制御する制御装置とを別体とし、ECU70としては、それぞれの制御装置に制御信号を出力可能に構成された電子制御装置であってもよい。ECU70は、物理的にはCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および入出力インタフェイスを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU70の機能は、ROM内に保持されるアプリケーションプログラムをRAM内にロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで制御対象を動作させたり、RAMやROM内におけるデータの読み出しおよび書き込みを行ったりして実現される。
ECU70は、あらかじめ記憶している各種のマップやデータ、およびプログラム、ならびに外部から入力される各種データに基づいて演算を行い、演算結果を制御指令信号として動力源10や自動変速機30に出力する。各種のマップは、各種のパラメータに対応させて制御目標値を実験やシミュレーションなどによって定めたものである。各種のマップとしては例えば、変速ギヤ段を決める変速線図、運転者の要求に応じた駆動力を定める駆動力マップ、出力軸40の目標角加速度や入力軸20の目標角加速度、解放側クラッチのトルク要求値などのマップである。また、外部から入力される信号としては例えば、車速V、アクセル開度Acc、自動変速機30で設定されている変速比γなどである。
ECU70は、この一実施形態において具体的に、少なくとも多重変速判定部71、入力トルク判定部72、および角加速度緩衝処理部73を有する。多重変速判定手段としての多重変速判定部71は、自動変速機30において多重変速が行われたか否かを判定する。具体的に多重変速判定部71は、自動変速機30において、駆動ダウンシフトから駆動アップシフトへの短時間のギヤ段の変速、または被駆動アップシフトから被駆動ダウンシフトへの短時間のギヤ段の変速が行われたか否かを判定する。ここで、短時間とは、ECU70からギヤ段の変更の指令が出力されてから、自動変速機30における回転数が動力源10から出力された入力軸回転数Nと同期するまでの間より短い時間である。入力トルク判定手段としての入力トルク判定部72は、動力源10から入力軸20を通じて自動変速機30に入力されるトルクが、所定値(閾値)以下であるか否かを判定する。また、入力トルク判定部72は、自動変速機30の入力軸20の目標角加速度Δωの変化の有無を判定してもよい。角加速度緩衝処理手段としての角加速度緩衝処理部73は、動力源10の出力する角加速度、すなわち入力軸20の角加速度の目標値(目標角加速度)を動力源10に指示する。なお、ECU70の構成は、必ずしもこれらの判定部や処理部のみに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
次に、上述した実施形態における車両Veに搭載された変速機の制御装置における第1の実施形態による制御方法について説明する。図2は、この第1の実施形態における変速機の制御装置による制御方法の一例を説明するためのタイムチャートである。
この第1の実施形態による車両Veにおいては、クラッチ・ツウ・クラッチ変速制御によって、駆動ダウンシフトが行われた後に短時間で駆動アップシフトが行われた場合を想定する。なお、駆動ダウンシフトとは、動力源10から出力されたトルクによって入力軸20が回転されている状態での、クラッチ・ツウ・クラッチ変速による自動変速機30の変速ギヤ段のダウンシフトを意味し、パワーオンダウンシフトとも称される。また、駆動アップシフトとは、動力源10から出力されたトルクによって入力軸20が回転されている状態での、変速ギヤ段がアップシフトされた状態を意味し、パワーオンアップシフトとも称される。
まず、ECU70は、入力されるアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて、マップによって設定されている変速ギヤ段を判定して、自動変速機30に対して設定された変速ギヤ段になるように制御指令信号を出力する。その結果、図2に示すように、時点T1において、例えば第1変速としての駆動ダウンシフトが実行される。すなわち、ECU70からの制御指令信号に基づいて、自動変速機30の変速ギヤ段は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって所定のギヤ段からより低いギヤ段に変速される。
駆動ダウンシフトにおいては、動力源10から出力されたトルクによって、入力軸20の入力軸回転数Nが変速に伴った変化方向に変化させられる。換言すると、駆動ダウンシフトにおいては、動力源10から出力されるトルクによって変速を自発的に進行できる。そのため、複数の係合機構C1,C2におけるトルク分担率を変えることなく、解放させる側の係合機構のトルクの絶対値を低下させるだけで変速を進行させることができる。これにより、係合させる側の係合機構によって、入力軸回転数N、トルクコンバータを備えた動力源10の場合にはタービン(いずれも図示せず)の回転数を、変速に伴う変化方向に変化させる必要がない。駆動ダウンシフトにおいては、動力源10の回転数である入力軸回転数Nは増加する。また、ECU70によって、入力軸20の目標角加速度Δωは、正の目標角加速度Δω1に設定される。これにより、入力軸回転数Nは、動力源10が出力するトルクによって、駆動ダウンシフト後の変速ギヤ段に対応した同期回転数N1d(以下、第1ダウンシフト後同期回転数N1d)に向かって増加する。
次に、時点T2において、第2変速としての駆動アップシフトが実行される。この場合、ECU70からの制御指令信号に基づいて、自動変速機30の変速ギヤ段は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって所定のギヤ段からより高いギヤ段に変速される。ここで、従来技術においては、駆動ダウンシフトから短時間で駆動アップシフトに移行した場合、ECU70からの制御指令信号に基づいて、図2中太破線で示すように、時点T2において、目標角加速度Δωは正側の目標角加速度Δω1から負側の目標角加速度Δω2に直ちに切り換えられた。この場合、入力軸回転数のグラフに示すように、入力軸回転数Nは、駆動アップシフトが実行された時点T2において、駆動アップシフト後の変速ギヤ段に対応した同期回転数N2u(以下、第2アップシフト後同期回転数N2u)に向かって減少するように変化する。
駆動アップシフトにおいては、パワーオン時に動力源10から出力される正のトルクによって入力軸回転数Nが変化させられる方向と、変速に伴う動力源10の回転数の変化方向、すなわち変速によって進められる方向とが異なる。すなわち、駆動アップシフトにおいては、動力源10が出力するトルクによって変速を自発的に進行できない。そのため、トルク分担率を変えないまま解放される側の係合機構の絶対値を低下させて、単に解放される側の係合機構を解放させる方向にトルク容量を低減させるだけでは、変速を進行させられない。そこで、解放される側の係合機構および係合される側の係合機構のトルク分担率を制御して、動力源10の回転数を変速に伴う変化方向に変化させる必要がある。この場合、クラッチ・ツウ・クラッチ変速において、係合される側の係合機構のトルク容量が駆動アップシフトの変化方向に直ちに切り換えられ、係合機構C1,C2を制御するための油圧が急変してトルク容量が急変するため、変速ショックが生じる。
そこで、この第1の実施形態においては、時点T1〜T2の時間が短時間である場合、ECU70の多重変速判定部71が、自動変速機30において多重変速が実行されたと判定する。さらに、入力トルク判定部72が、動力源10からの入力トルクが所定値以下であると判定する。この場合に、ECU70の角加速度緩衝処理部73は、目標角加速度Δωの緩衝処理を実行する制御指令信号を出力する。なお、入力トルク判定部72は、さらに、アクセル開度Accの増加による目標角加速度Δωの変化の有無を判定してもよい。
ECU70の角加速度緩衝処理部73が制御指令信号を出力すると、図2における時点T2〜T3の間において実線で示すように、入力軸20の目標角加速度Δωは、正の目標角加速度Δω1から緩やかに減少される。これにより、係合機構C1,C2を制御するアクチュエータに対してECU70から指示される油圧の変化を緩やかにすることができる。なお、短時間とは、ECU70から駆動ダウンシフトの制御指令信号が出力されてから、入力軸回転数Nが第1ダウンシフト後同期回転数N1dに達するまでの間よりも短い時間をいう。
時点T2〜T3において緩衝処理が実行される時間(緩衝処理時間)ΔTは、変速ギヤ段の変速前後における差回転に応じて設定される。差回転が大きいほど緩衝処理時間ΔTを長くする。なお、差回転とは第1ダウンシフト後同期回転数N1dと第2アップシフト後同期回転数N2uとの差である。さらに、緩衝処理時間ΔTが増加すると変速時間も増加し、摩擦材における発熱の問題が生じる。そこで、緩衝処理時間ΔTは摩擦材における発熱も考慮して設定される。時点T3においては、ECU70によって、入力軸20の目標角加速度Δωは負側の目標角加速度Δω2に切り換えられる。
時点T3以後においては、入力軸20の目標角加速度Δωは、負側の目標角加速度Δω2に維持される。これに伴って、入力軸回転数Nは、第2アップシフト後同期回転数N2uに向かって低減される。時点T4において、入力軸回転数Nが第2アップシフト後同期回転数N2uになると、ECU70によって目標角加速度Δωは0に設定される。
上述したように、角加速度緩衝処理部73による緩衝処理の制御指令信号は、多重変速判定部71による多重変速の判定が肯定されたことを前提として出力される。その上で、動力源10からの入力トルクが所定値以下の場合、かつアクセルの踏み増しによる目標角加速度Δωの変化がほとんどない場合、角加速度緩衝処理部73によって緩衝処理が実行される。これは、動力源10からの入力トルクが所定値より大きい場合や、目標角加速度Δωの変化があった場合にまで緩衝処理を実行すると、従来に比して、時点TP〜T4の間の時間分だけ変速時間が増加して、係合機構C1,C2における摩擦材の発熱量が増加するためである。そこで、この第1の実施形態においては、動力源10からの入力トルクが所定値より大きい場合、またはアクセルの踏み増しによる目標角加速度Δωの変化があった場合には、入力軸20の目標角加速度Δωの緩衝処理は実行しないようにする。これにより、係合機構C1,C2の摩擦材の発熱量が増加することを抑制できる。
図3は、上述した第1の実施形態における制御方法の効果を説明するためのタイムチャートである。図4は、比較例としての従来技術における制御方法を示すタイムチャートである。図4に示すように、変速ギヤ段が駆動ダウンシフトから駆動アップシフトに多重変速された場合、目標角加速度Δωは直ちに引き下げられる。これに伴って、係合機構の係合油圧は増加し、続いて破線囲み部Cに示すように、加速度Gは急激に変化する。これに対し、第1の実施形態においては、図3において破線囲み部Aに示すように、目標角加速度Δωに対して緩衝処理を実行する。すなわち、目標角加速度Δωの変化を緩やかにする。これによって、係合油圧の増加が緩やかになるため、図3において破線囲み部Bに示すように、加速度Gの変化が緩やかになる。すなわち、変速ショックのレベルが緩和される。
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、自動変速機30において、短時間で駆動ダウンシフトから駆動アップシフトへの多重変速が行われた際に、動力源10からの入力トルクが所定値以下の場合に、入力軸20の目標角加速度Δωに対して緩衝処理を実行する。これにより、自動変速機30における変速に伴う係合機構C1,C2の発熱量の増加を抑制しつつ、係合機構C1,C2のトルク容量の急変を抑制することによって変速ショックを抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、上述した車両Veに搭載された変速機の制御装置における第2の実施形態による制御方法について説明する。図5は、この第2の実施形態における変速機の制御装置による制御方法の一例を説明するためのタイムチャートである。
第2の実施形態による車両Veにおいては、クラッチ・ツウ・クラッチ変速制御によって、被駆動アップシフトが行われた後に短時間で被駆動ダウンシフトが行われた場合を想定する。なお、被駆動ダウンシフトとは、駆動輪60の回転によるトルクによって入力軸20が回転されている状態において、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって自動変速機30の変速ギヤ段がダウンシフトされた状態を意味し、パワーオフダウンシフトとも称される。また、被駆動アップシフトとは、駆動輪60の回転によるトルクによって入力軸20が回転されている状態において、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって自動変速機30の変速ギヤ段がアップシフトされた状態を意味し、パワーオフアップシフトとも称される。
まず、ECU70は、入力されるアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて、マップによって設定されている変速ギヤ段を判定して、自動変速機30に対して設定された変速ギヤ段になるように制御指令信号を出力する。その結果、図5に示すように、時点t1において、例えば第1変速としての被駆動アップシフトが実行される。すなわち、ECU70からの制御指令信号に基づいて、自動変速機30の変速ギヤ段は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって所定のギヤ段からより高いギヤ段に変速される。
被駆動アップシフトにおいては、上述した駆動ダウンシフトと同様の原理によって、入力軸回転数Nが変速に伴った変化方向に変化させられる。被駆動アップシフトにおいては、入力軸回転数Nは減少する。また、ECU70によって、入力軸20の目標角加速度Δωは、負の目標角加速度Δω2に設定される。これにより、入力軸回転数Nは、被駆動アップシフト後の変速ギヤ段に対応した同期回転数N1u(以下、第1アップシフト後同期回転数N1u)に向かって減少する。
次に、時点t2において、第2変速としての被駆動ダウンシフトが実行される。この場合、ECU70からの制御指令信号に基づいて、自動変速機30の変速ギヤ段は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって所定のギヤ段からより低いギヤ段に変速される。ここで、従来技術においては、被駆動アップシフトから短時間で被駆動ダウンシフトに移行した場合、ECU70からの制御指令信号に基づいて、図5中太破線で示すように、時点t2において、目標角加速度Δωは負側の目標角加速度Δω2から正側の目標角加速度Δω1に直ちに切り換えられた。この場合、入力軸回転数のグラフに示すように、入力軸回転数Nは、被駆動ダウンシフトが実行された時点t2において、被駆動ダウンシフト後の変速ギヤ段に対応した同期回転数N2d(以下、第2ダウンシフト後同期回転数N2d)に向かって増加するように変化する。
被駆動ダウンシフトにおいては、上述した駆動アップシフトと同様の原理によって、入力軸回転数Nが変化させられる方向と、変速に伴う動力源10の回転数の変化方向、すなわち変速によって進められる方向とが異なる。被駆動ダウンシフトにおいては、クラッチ・ツウ・クラッチ変速において、係合される側の係合機構のトルク容量が被駆動ダウンシフトの変化方向に直ちに切り換えられ、係合機構C1,C2を制御するための油圧が急変するため変速ショックが生じる。
そこで、この第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、時点t1〜t2の時間が短時間である場合、ECU70の多重変速判定部71が、自動変速機30において多重変速が実行されたと判定する。さらに、入力トルク判定部72が、動力源10からの入力トルクが所定値以下であると判定する。この場合に、ECU70の角加速度緩衝処理部73は、目標角加速度Δωの緩衝処理を実行する制御指令信号を出力する。なお、入力トルク判定部72が、アクセル開度Accの増加による目標角加速度Δωの変化がないと判定した場合を条件として加えることも可能である。
ECU70の角加速度緩衝処理部73が制御指令信号を出力して、図5における時点t2〜t3の間において実線で示すように、入力軸20の目標角加速度Δωを負の目標角加速度Δω2から緩やかに増加させる。これにより、係合機構C1,C2を制御するアクチュエータに対してECU70から指示される油圧の変化を緩やかにできる。なお、短時間とは、ECU70から被駆動アップシフトの制御指令信号が出力されてから、入力軸回転数Nが第1アップシフト後同期回転数N1uに達するまでの間よりも短い時間をいう。
時点t2〜t3における緩衝処理時間ΔTは、第1の実施形態と同様に、変速ギヤ段の変速前後における差回転、および係合機構の摩擦材における発熱を考慮して設定される。なお、差回転とは第1アップシフト後同期回転数N1uと第2ダウンシフト後同期回転数N2dとの差である。時点t3においては、ECU70によって、入力軸20の目標角加速度Δωは正側の目標角加速度Δω1に切り換えられる。
時点t3以後においては、入力軸20の目標角加速度Δωは、正側の目標角加速度Δω1に維持される。これに伴って、入力軸回転数Nは、第2ダウンシフト後同期回転数N2dに向かって増加される。時点t4において、入力軸回転数Nが第2ダウンシフト後同期回転数N2dになると、ECU70によって目標角加速度Δωは0に設定される。なお、変速時間は、時点tP〜t4の時間分だけ増加する。その他の制御方法は、第1の実施形態と同様である。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。