JP4682122B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
ここでアップシフトを行う際には、変速の前後で入力軸の回転数を低下させる必要がある。
したがって、パワーON状態の時には、入力軸トルクに逆らって変速を進行させなければならないため、自動変速機内の結合側摩擦係合要素を締結して入力軸回転数を低下させて変速を進行させている。
一方、パワーOFF状態の時には、入力軸の回転数が自然減速するため、変速中は積極的に結合側摩擦係合要素を締結させることなく、変速を進行させることができる。
図5中、パワーON/OFF判定線より上側部分がパワーON運転領域となり、パワーON/OFF判定線より下側領域がパワーOFF運転領域となる。
パワーON運転領域で自動変速機がニュートラルになるとエンジンが吹き上がり、パワーOFF運転領域で自動変速機がニュートラルになるとエンジン回転数が自然減速する。
この制御によって、パワーON状態でのアップシフト時にエンジントルクが低下するため、結合側摩擦係合要素の締結によって入力軸の回転数を次の変速段に対応する回転数まですばやく低下させることができる。
これはエンジントルク指令に対する実トルクの応答性がよいため、上記の様にパワーON/OFF判定に基づいて変速制御を実行しても問題は生じない。
ただし、燃焼安定性等の面で限界があり、大きなトルクダウンを行うことができなかった。
このスロットル抑制制御は、変速中に電子制御スロットル(ETV)のスロットル弁を強制的に一瞬だけ閉じることによってエンジンへの吸入空気量を減らし、エンジン出力を低下させるものである。
なお、このスロットルの閉じ動作は、車両のドライバによるアクセルの踏み込み量が一定であっても、ドライバの意思とは無関係に行われている。
これにより図6の中段に示すように、スロットル弁の閉じタイミングより少し遅れてEv値が一瞬だけ急激に低下する。
また、EV値の低下タイミングよりも少し遅れて実エンジントルクも低下(アクセルをOFFにすると、エンジントルクはマイナス側の値となる)する。
このようにエンジントルクを低下させることにより、入力軸の回転数を目標とする次の変速段に対応する回転数まですばやく低下させることができる。
このような制御を行うものとして、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
しかしながら、Ev値がパワーON/OFF判定線以下にまで低下してパワーOFF状態であると判定されても、エンジン制御装置によってスロットル弁を閉じている時間は極めて短時間であり、空気の慣性やスロットルバルブとシリンダとの間に残っている空気が原因で実際のエンジンのトルクが、急激に変動するEv値に追従できずに実エンジントルクがゼロ以下(トルクゼロ線以下)まで低下しない場合(図6の下段参照)や、実エンジントルクがゼロ以下に低下している時間が極めて短時間である場合が発生する。
実エンジントルクがゼロ以下にならない場合、Ev値はパワーOFF領域に入るため、変速制御装置はパワーOFF判定に基づいて結合側摩擦係合要素の油圧制御を行うが、実際のエンジントルクはゼロ以下となっておらず未だ加速側であり、入力軸トルクと油圧制御とのアンマッチが生じる。この結果、結合側摩擦係合要素に滑りが生じてエンジンの吹き上がりが発生することがある。
図1は、自動変速機を備えた車両の駆動系の構成図であり、図2は、変速制御に用いるシフトマップである。
図1に示すように、内燃機関である自動車用のガソリンエンジン(以下、単にエンジンと記す)1の後端には自動変速機2が接続され、この自動変速機2を介してエンジン出力が図示しない駆動輪に伝達される。
自動変速機2は、トルクコンバータ3、変速機本体4、油圧コントローラ5から構成されている。
変速機本体4は複数組のプラネタリギヤのほか、油圧クラッチや油圧ブレーキ等の摩擦係合要素を内蔵している。また、油圧コントローラ5には、一体に形成された油圧回路のほか、油圧制御用の複数の電磁弁が収納されている。
エンジン1は、電子制御スロットル16を備える。
電子制御スロットル16は、ECU6からの信号に基づいてスロットル弁が駆動されて、エンジンの出力を制御している。
なおECU6は、エアフローセンサ10によって検出された値を基にEv値を算出している。
そしてECU6は、各種の入力情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期等、エンジン1の総合的な制御を行う。
また、TCU7も、入力情報に基づき、油圧コントローラ5を介して変速機本体4内の摩擦係合要素を駆動し、自動変速機2の変速制御を行う。
この変速判定部7aの判定によって、変速段の切り替えが必要であると判定されたときには、TCU7内に備えられた変速制御部7cが、油圧コントローラ5を介して変速機本体4内の摩擦係合要素を駆動し、自動変速機2の変速制御を行う。
さらに、TCU7には、アップシフト及びダウンシフトに応じて、エンジン運転状態が、変速機入力軸の回転を増加させるパワーON状態であるか、変速機入力軸の回転を減少させるパワーOFF状態であるかを判定するパワーON/OFF判定部7bが設けられている。
またTCU7は、エンジントルク抑制部7dを備える。
エンジントルク抑制部7dは、上述の電子制御スロットルを用いたトルクダウン制御を行うために電子制御スロットル16を所定時間だけ閉じる旨の指示をECU6に対して行う。
アップシフトを行う際にパワーON状態であった場合、解放側摩擦係合要素の解放と結合側摩擦係合要素の係合との開始タイミングを合わせずに、単純に解放側摩擦係合要素を解放してしまうとエンジンが吹き上がり(ランナップ)を起こし入力軸回転速度が上昇してしまう。
そして、入力軸の回転数が所定回転数まで下降すると、結合側の摩擦係合要素の係合を開始させ、結合側の摩擦係合要素の係合力を徐々に強め、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を高速段確立回転数に向けて漸減させ、入力軸回転数が高速段確立回転数に到達した時点で結合側の摩擦係合要素の係合を完了させるようにする。
ECU6は、図示しない点火プラグの点火時期を遅らせ、さらに電子制御スロットル16のスロットル弁を強制的に一瞬だけ閉じる。
これによってエンジンの出力トルクが低下して、変速レスポンスの短縮や結合側摩擦係合要素などの耐久性向上等を図ることができる。
図3は、アップシフト制御時における各部の状態変化を示すタイムチャートである。
なお図3中、アクセル開度はアクセル踏込量センサ12より得られる値である。ここでは車両の運転者は、車両が加速するようにアクセルを一定開度で踏み続けているものとする。
また、結合側油圧指示値は、結合側摩擦係合要素への油圧の指示値であり、入力軸回転数は自動変速機のトルクコンバータのタービン回転数である。
なお、時刻t1から所定時間の間は結合側油圧指示値を急激に上昇させてピストンのガタ詰めを行っている。
エンジントルク抑制部7dは、あらかじめイナーシャフェーズ開始となるようにタイミングを決定された時刻t2において、ECU6に対してトルクダウンを行う旨の指示を出す。
ECU6は、エンジンの点火時期リタード制御とともにスロットル抑制制御を開始する。
これによって電子制御スロットル16は、所定の開度にまでスロットルが閉じられる。
このようにトルクダウン制御を行うことにより、トルクダウン開始と同時にイナーシャフェーズも開始(時刻t3)する。
なお図3では電子制御スロットル16を、所定のスロットル開度に閉じられた状態から所定勾配で所定のスロットル開度まで開けている。
これにより、上述のように、スロットル弁の閉じタイミングより少し遅れてEv値が一瞬だけ急激に低下し、さらにEv値の低下タイミングよりも少し遅れてAT入力軸トルクも低下する。
その後、入力軸回転数と車両の出力軸回転数とが同期する時刻t6において変速が終了する。
図4は、変速制御部7cがパワーONからパワーOFFに対応する変速制御則へと移行する手順を示す図である。
ステップ100において、電子制御スロットル16の抑制制御によって低下したEv値がパワーON/OFF判定線未満となり、パワーON/OFF判定部7bによってパワーOFF判定がされたかどうかを判断する。
パワーOFF判定がされていない場合にはスタートへ戻り、ステップ100の処理を繰り返す。
一方、パワーOFF判定がされた場合にはステップ101へ進む。
経過時間Aが敷居値αを超えた場合には、Ev値の変化にAT入力軸トルクが追従して、AT入力軸トルクがトルクゼロ線を下回るものとしてステップ104へ進む。
経過時間Aが敷居値αを超えていない場合にはステップ102へ進む。
アクセル戻し量が敷居値β以上である場合には、アクセルを戻したことによってAT入力軸トルクがトルクゼロ線を下回るものとして、ステップ104へ進む。
アクセル戻し量が敷居値β以上でない場合にはステップ103へ進む。
パワーOFF判定がされていない場合、たとえばEv値がパワーON/OFF判定線未満となった直後にEv値が上昇してパワーON/OFF判定線を超えた場合には、本処理を終了し、パワーONに対応する変速制御則で各摩擦係合要素の制御を行う。
この場合には、変速制御部7cはEv値がパワーON/OFF判定線を下回ったとしても、AT入力軸トルクはトルクゼロ線を下回っていないので、パワーONに対応する変速制御則で各摩擦係合要素の制御を行う。
この場合には敷居値αを、たとえば(dVTH)と、(Δt)の関数とみなすことができる。
ここでdVTHは、図3に示すように電子制御スロットル16を所定開度まで閉じる際に用いたスロットル制御指示値の勾配であり、Δtは、電子制御スロットル16の抑制制御を開始した図3の時刻t2から抑制制御が終了するt5までの間の時間とする。
またΔtは、スロットルを所定開度に閉じてから再び元の開度に戻すまでの所定時間(時刻t2〜t5)が経過する前に、パワーONからパワーOFFへの判定がされた場合には、スロットル抑制制御の開始(時刻t2)からパワーOFF状態が判定されるまでの間とする。
ここで、エンジンの実トルク変化速度はフリクション等の機械的な要因や吸入空気量の変化速度限界によって限界がある。そのため、dVTHが大きい程、実トルクの変化がエンジンからのトルク情報に追従し難く、パワーON/OFF判定線を下回った時点でのトルク情報と実トルクの乖離は大きくなる。
したがって、dVTHが大きいほど、敷居値αを大きく設定することが好ましい。
これは、トルク情報と実トルクもほぼ一定の変化勾配で変化すると仮定すると、Δtが大きい程、トルク情報と実トルクとの差が比例して蓄積されるので、敷居値αを大きめに設定することが好ましい。
このように、敷居値αをdVTHが大きいほど大きく、かつ、Δtが大きいほど大きくなるように設定することにより、パワーONに対応する変速制御則から、パワーOFFに対応する変速制御則に移行する時期をより適切なものとすることができ、エンジンの吹き上がりや変速ショックの発生を防止することができる。 (以上、請求項3〜5に対応する効果)
なお、エンジンの負荷を示す値として、Ev値を用いるものとしたが、エンジンの負荷を示すものであれば他の値を用いてもよい。
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
4 変速機本体
5 油圧コントローラ
6 ECU
7 TCU
7a 変速判定部
7b パワーON/OFF判定部
7c 変速制御部
7d エンジントルク抑制部
8 クランク角センサ
10 エアフローセンサ
11 スロットルセンサ
12 アクセル踏込量センサ
13 NTセンサ
14 NOセンサ
Claims (5)
- 内燃機関の負荷と回転速度とをパラメータとして規定される運転領域を、判定線を挟んで高負荷側のパワーON運転領域と低負荷側のパワーOFF運転領域とに区分して、前記内燃機関の負荷と回転速度との検出情報から前記内燃機関の運転状態が前記パワーON運転領域とパワーOFF運転領域のいずれであるかによってパワーON状態またはパワーOFF状態を判定する判定部と、該判定部の判定結果に応じた変速制御則で変速を行う変速制御部と、前記内燃機関のスロットルバルブを閉じ側に制御することにより、アップシフト変速制御中のエンジントルクを低下させるトルクダウン制御を行うエンジントルク抑制部とを備え、前記変速制御部は、前記エンジントルク抑制部によるトルクダウン制御中において、前記判定部が前記パワーON状態から前記パワーOFF状態への移行を判定しても、所定期間は前記パワーOFF状態の判定に応じた変速制御則への移行を禁止し、前記パワーOFF状態の判定が前記所定時間を超えて継続されたときに、前記パワーOFF状態の判定に応じた変速制御則へ移行することを特徴とする自動変速機の制御装置。
- アクセルの踏み込み量を検出するアクセル踏込量センサを備え、前記変速制御部は、前記所定期間内において、前記アクセル踏込量センサによってアクセルの戻し量が所定値以上となったことが検出されたときに、前記移行の禁止を解除して、前記パワーOFF状態の判定に応じた変速制御則へ移行することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記所定時間は、前記内燃機関の単位時間当たりの負荷の変化率が大きいほど、相対的に長くなるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記エンジントルク抑制部は、走行状態に応じてあらかじめ定められた期間だけトルクダウン制御を実行するものであり、前記所定時間は、前記あらかじめ定められた期間が長くなるほど、相対的に長くなるように設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記判定部が、前記あらかじめ定められた期間中にパワーOFF状態を判定した場合に、前記所定時間は、前記エンジントルク抑制部の作動開始から前記パワーOFF判定までの時間にもとづいて決定されることを特徴とする請求項4に記載の自動変速機の制御装置。
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