本発明の実施形態において、前記油量変更部は、前記ピニオンギヤが特定の方向に押し付けられるときの負荷(トルク)が大きい程、前記油圧制御回路から供給される前記潤滑油の流量を増加する。このようにすれば、ピニオンギヤ等の耐久性(例えば耐摩耗性、耐焼き付き性等)が向上させられる。
また、前記油量変更部は、前記ピニオンギヤの自転の回転速度が高い程、前記油圧制御回路から供給される前記潤滑油の流量を増加する。このようにすれば、ピニオンギヤ等の耐久性が向上させられる。
図1は、本発明が適用される車両10の走行に関わる各部の概略構成を説明する図であると共に、その各部を制御する為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の動力源となり得る、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2と、動力伝達装置14と、駆動輪16とを備えるハイブリッド車両である。尚、本明細書では、「エンジン」との表現は「機関」と同意である。
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等、所定の燃料を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関である。このエンジン12は、後述する電子制御装置90によってスロットル開度或いは吸入空気量、燃料供給量、点火時期等の運転状態が制御されることにより、エンジン12のトルク(以下、エンジントルクTeともいう)が制御される。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、駆動トルクを発生させる電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、インバータ部や平滑コンデンサなどを有する車両10に備えられた電力制御ユニット50を介して、各々電力を授受する蓄電装置としての車両10に備えられたバッテリユニット52に接続されており、後述する電子制御装置90によって電力制御ユニット50が制御されることにより、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の出力トルク(力行トルク又は回生トルク)であるMG1トルクTg及びMG2トルクTmが制御される。
動力伝達装置14は、エンジン12と駆動輪16との間の動力伝達経路に備えられている。動力伝達装置14は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内に、第1回転機MG1、第2回転機MG2、第1動力伝達部20、第2動力伝達部22等を備えている。又、動力伝達装置14は、第1動力伝達部20の出力回転部材である出力軸24に連結されたプロペラシャフト26、プロペラシャフト26に連結されたドライブピニオン28、デフリングギヤ30を介してドライブピニオン28と噛み合うディファレンシャルギヤ32、ディファレンシャルギヤ32に連結されたドライブシャフト34等を備えている。
第1動力伝達部20は、エンジン12のクランク軸に連結された、第1動力伝達部20の入力回転部材である入力軸36と同軸心に配置されており、第1差動機構38、第2差動機構40、第1回転機MG1、クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLc等を備えている。
第1差動機構38は、第1サンギヤS1、互いに噛み合う複数対の第1ピニオンギヤP1a,P1b、第1ピニオンギヤP1a,P1bを自転及び公転可能に支持する第1キャリアC1、第1ピニオンギヤP1a,P1bを介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を有する公知のダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、差動作用を生じる差動機構として機能する。第1差動機構38は、例えば歯車比ρ1(歯車比ρについては後述)を適切にすることを考慮してダブルピニオン型の遊星歯車機構を採用している。又、第2差動機構40は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、第2ピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持する第2キャリアC2、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を有する公知のシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、差動作用を生じる差動機構として機能する。
第1差動機構38において、第1キャリアC1は、入力軸36に一体的に連結され、その入力軸36を介してエンジン12が動力伝達可能に連結された第1回転要素RE1であり、第1差動機構38の入力回転部材として機能する。第1リングギヤR1は、ブレーキBR1を介してケース18に選択的に連結される第2回転要素RE2である。第1サンギヤS1は、第2差動機構40の入力回転部材(すなわち第2差動機構40の第2リングギヤR2)に連結された第3回転要素RE3であり、第1差動機構38の出力回転部材として機能する。
第2差動機構40において、第2サンギヤS2は、第1回転機MG1のロータ軸42に一体的に連結されており、第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された反力要素としての第4回転要素RE4である。第2キャリアC2は、出力軸24に連結されており(すなわち出力軸24と一体回転するように設けられており)、駆動輪16に連結された出力要素としての第5回転要素RE5であり、第2差動機構40の出力回転部材として機能する。第2リングギヤR2は、第1差動機構38の出力回転部材(すなわち第1差動機構38の第1サンギヤS1)に連結された入力要素としての第6回転要素RE6であり、第2差動機構40の入力回転部材として機能する。
第1キャリアC1と第1リングギヤR1とは、クラッチCL1を介して選択的に連結される。又、第1リングギヤR1と第2キャリアC2とは、クラッチCLcを介して選択的に連結される。よって、クラッチCL1は、第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とを選択的に連結する第1係合装置である。又、ブレーキBR1は、第2回転要素RE2をケース18に選択的に連結する第2係合装置である。又、クラッチCLcは、第2回転要素RE2と第5回転要素RE5とを選択的に連結する第3係合装置である。クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcは、好適には何れも湿式の摩擦係合装置であり、油圧アクチュエータによって係合制御される多板型の油圧式摩擦係合装置である。
図2は、各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の作動状態(係合や解放などの状態)を制御する、車両10に備えられた油圧制御回路60の要部の一例を示す図である。図2において、油圧制御回路60は、プライマリレギュレータバルブ62、及びリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3等を備えている。プライマリレギュレータバルブ62は、車両10に備えられた機械式のオイルポンプ64(MOP64ともいう)が発生する油圧を元圧として、又は、車両10に備えられた電動式のオイルポンプ66(EOP66ともいう)が発生する油圧を元圧として、ライン油圧PLを調圧する。MOP64は、例えばエンジン12の回転に伴って回転する、動力伝達装置14の何れかの回転部材(回転要素も同意)に連結されており、エンジン12によって回転駆動されることで油圧を供給する。EOP66は、例えばエンジン12の回転停止時(例えばエンジン12の運転を停止したモータ走行時)に、後述する電子制御装置90によって制御される不図示の専用のモータによって回転駆動されることで油圧を供給する。リニアソレノイドバルブSL1は、ライン油圧PLを元圧として、クラッチCL1に供給する係合油圧(CL1油圧Pcl1ともいう)を調圧する。リニアソレノイドバルブSL2は、ライン油圧PLを元圧として、ブレーキBR1に供給する係合油圧(BR1油圧Pbr1ともいう)を調圧する。リニアソレノイドバルブSL3は、ライン油圧PLを元圧として、クラッチCLcに供給する係合油圧(CLc油圧Pclcともいう)を調圧する。リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3は、基本的には何れも同じ構成であり、電子制御装置90によりそれぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御が為され、各油圧Pcl1,Pbr1,Pclcを独立に調圧する。各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)は、油圧制御回路60から各々供給される各油圧Pcl1,Pbr1,Pclcに応じて作動状態が切り替えられる。尚、油圧制御回路60は、更に、セカンダリレギュレータバルブ68、及び潤滑圧制御用ソレノイドバルブSLUB等を備えている。これらの詳細な説明については、後述する。
図1に戻り、第1差動機構38は、クラッチCL1及びブレーキBR1の各作動状態を切り替えることにより、直結状態、エンジン12の逆回転変速状態、ニュートラル状態(中立状態)、及び内部ロック状態の4つの状態を形成することが可能である。具体的には、第1差動機構38は、クラッチCL1の係合状態では、第1差動機構38の各回転要素が一体回転される直結状態とされる。又、第1差動機構38は、ブレーキBR1の係合状態では、第1リングギヤR1の回転がゼロ[rpm]とされ、エンジン回転速度Neの正回転に対して第1サンギヤS1(第1差動機構38の出力回転部材)が負回転となるエンジン12の逆回転変速状態とされる。又、第1差動機構38は、クラッチCL1の解放状態且つブレーキBR1の解放状態では、第1差動機構38の差動が許容されるニュートラル状態とされる。又、第1差動機構38は、クラッチCL1の係合状態且つブレーキBR1の係合状態では、第1差動機構38の各回転要素が回転停止となる内部ロック状態とされる。
第2差動機構40は、差動が許容される状態では、第2リングギヤR2に入力されるエンジン12の動力を第1回転機MG1及び第2キャリアC2へ分割(分配も同意)する動力分割機構として機能することが可能である。よって、車両10では、第2リングギヤR2に入力されるエンジントルクTeの反力を第1回転機MG1にて取ることにより、第2キャリアC2へ機械的に伝達される直達トルク(エンジン直達トルクともいう)と、第1回転機MG1に分割された動力による第1回転機MG1の発電電力で駆動される第2回転機MG2によるMG2トルクTmとでエンジン走行することが可能である。これにより、第2差動機構40は、後述する電子制御装置90によって電力制御ユニット50が制御されて第1回転機MG1の運転状態が制御されることによりギヤ比(変速比)を制御する公知の電気式差動部(電気式無段変速機)として機能する。つまり、第2差動機構40は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動状態が制御される電気式変速機構である。
第1動力伝達部20では、第2差動機構40における動力分割比とは異なる動力分割比にて作動する電気式無段変速機を構成することが可能である。すなわち、第1動力伝達部20では、第1サンギヤS1(第3回転要素RE3)と第2リングギヤR2(第6回転要素RE6)とが連結されていることに加え、クラッチCLcを係合状態とすることによって第1リングギヤR1(第2回転要素RE2)と第2キャリアC2(第5回転要素RE5)とが連結されることで、第1差動機構38と第2差動機構40とで1つの差動機構を構成し、第1差動機構38と第2差動機構40との全体を、第2差動機構40単独での動力分割比とは異なる動力分割比にて作動する電気式無段変速機として機能させることが可能となる。
第1動力伝達部20では、上述した4つの状態が形成される第1差動機構38と、第2差動機構40とが連結されており、車両10は、クラッチCLcの作動状態の切替えと合わせて、後述する複数の走行モードを実現することが可能となる。
このように構成された第1動力伝達部20においては、エンジン12の動力や第1回転機MG1の動力は出力軸24へ伝達される。従って、エンジン12及び第1回転機MG1は、第1動力伝達部20を介して駆動輪16に動力伝達可能に連結される。
第2動力伝達部22は、入力軸36(又は出力軸24)と同軸心に配置されており、第2回転機MG2、及び出力軸24に連結されたリダクション機構44を備えている。リダクション機構44は、第3サンギヤS3、第3ピニオンギヤP3、第3ピニオンギヤP3を自転及び公転可能に支持する第3キャリアC3、第3ピニオンギヤP3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を有する公知のシングルピニオン型の遊星歯車機構である。第3サンギヤS3は、第2回転機MG2のロータ軸46に連結された入力要素である。第3リングギヤR3は、ケース18に連結された反力要素である。第3キャリアC3は、出力軸24に連結された出力要素である。このように構成されたリダクション機構44は、MG2回転速度Nmを減速して出力軸24に伝達する。これにより、第2動力伝達部22においては、第2回転機MG2の動力は第1動力伝達部20を介すことなく出力軸24へ伝達される。従って、第2回転機MG2は、第1動力伝達部20を介さずに駆動輪16に動力伝達可能に連結される。つまり、第2回転機MG2は、第1動力伝達部20を介さずに動力伝達装置14の出力回転部材であるドライブシャフト34に動力伝達可能に連結された回転機である。尚、動力伝達装置14の出力回転部材は、駆動輪16と連結される出力回転部材であり、ドライブシャフト34の他に、出力軸24やプロペラシャフト26なども同意である。
このように構成された動力伝達装置14は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。又、動力伝達装置14では、エンジン12の動力や第1回転機MG1の動力や第2回転機MG2の動力は、出力軸24へ伝達され、その出力軸24から、ディファレンシャルギヤ32、ドライブシャフト34等を順次介して駆動輪16へ伝達される。
車両10は、エンジン12、動力伝達装置14などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2の各出力制御、後述する走行モードの切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、回転機制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、出力回転速度センサ72、レゾルバ等のMG1回転速度センサ74、レゾルバ等のMG2回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、シフトポジションセンサ80、バッテリセンサ82など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力軸24の回転速度である出力回転速度No、MG1回転速度Ng、MG2回転速度Nm、アクセル開度θacc、車両10に備えられたシフト操作部材としてのシフトレバー56の操作位置(操作ポジション)POSsh、バッテリユニット52のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbatなど)が供給される。又、電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置54、電力制御ユニット50、油圧制御回路60、EOP66など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sp、EOP66を駆動する為のポンプ駆動制御指令信号Sopなど)が、それぞれ出力される。尚、電子制御装置90は、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリユニット52の充電状態を示す値としてのバッテリユニット52の充電容量SOC(バッテリ容量SOCともいう)を算出する。
シフトレバー56の操作ポジションPOSshは、例えばP,R,N,Dポジションである。Pポジションは、動力伝達装置14がニュートラル状態とされ且つ機械的に出力軸24の回転が阻止(ロック)された状態を選択する操作ポジションである。Rポジションは、車両10の後進走行を可能とする、動力伝達装置14の後進走行モードを選択する操作ポジションである。Nポジションは、動力伝達装置14がニュートラル状態とされた状態を選択する操作ポジションである。Dポジションは、車両10の前進走行を可能とする、動力伝達装置14の前進走行モードを選択する操作ポジションである。
電子制御装置90は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92、及び動力伝達切替手段すなわち動力伝達切替部94を備えている。
ハイブリッド制御部92は、電子スロットル弁を開閉制御し、燃料噴射量や噴射時期を制御し、点火時期を制御するエンジン制御指令信号Seを出力して、エンジントルクTeの目標トルクが得られるようにエンジン12の出力制御を実行する。又、ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1や第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御指令信号Smgを電力制御ユニット50へ出力して、MG1トルクTgやMG2トルクTmの目標トルクが得られるように第1回転機MG1や第2回転機MG2の出力制御を実行する。
ハイブリッド制御部92は、アクセル開度θacc及び車速Vに基づいて要求駆動トルクを算出し、充電要求値(充電要求パワー)等を考慮して低燃費で排ガス量の少ない運転となるように、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2の少なくとも1つから要求駆動トルクを発生させる。
ハイブリッド制御部92は、走行モードとして、モータ走行(EV走行)モードと、ハイブリッド走行(HV走行)モード(エンジン走行モードともいう)とを走行状態に応じて選択的に成立させる。EV走行モードは、エンジン12の運転を停止した状態で、第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を走行用の動力源として走行するモータ走行を可能とする制御様式である。HV走行モードは、少なくともエンジン12を走行用の動力源として走行する(すなわちエンジン12の動力を駆動輪16へ伝達して走行する)HV走行(エンジン走行)を可能とする制御様式である。尚、エンジン12の動力を第1回転機MG1の発電によって電力に変換し、専らその電力をバッテリユニット52に充電するモードのように、車両10の走行を前提としないモードであっても、エンジン12を運転した状態とするので、HV走行モードに含まれる。
動力伝達切替部94は、ハイブリッド制御部92により成立させられた走行モードに基づいて、クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcのそれぞれの作動状態を制御する。動力伝達切替部94は、ハイブリッド制御部92により成立させられた走行モードにて走行する為の動力伝達が可能となるように、クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcを各々係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号Spを油圧制御回路60へ出力する。
ここで、車両10にて実行可能な走行モードについて図3、及び図4−図16を用いて説明する。図3は、各走行モードにおけるクラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcの各作動状態を示す図表である。図3の図表中の○印は係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の係合を示し、空欄は解放を示し、△印は運転停止状態のエンジン12を連れ回し状態とするエンジンブレーキ(エンブレともいう)の併用時に、状況に応じて何れか一方を係合すること、又は、両方を係合する場合があることを示している。又、「G」は回転機(MG1,MG2)を主にジェネレータとして機能させることを示し、「M」は回転機(MG1,MG2)を駆動時には主にモータとして機能させ、回生時には主にジェネレータとして機能させることを示している。図3に示すように、車両10は、走行モードとして、EV走行モード及びHV走行モードを選択的に実現することができる。EV走行モードは、第2回転機MG2を単独の動力源とするモータ走行が可能な制御様式である単独駆動EVモードと、第1回転機及び第2回転機MG2を動力源とするモータ走行が可能な制御様式である両駆動EVモードとの2つのモードを有している。HV走行モードは、オーバードライブ(O/D)インプットスプリットモード(以下、O/DHVモードという)と、アンダードライブ(U/D)インプットスプリットモード(以下、U/DHVモードという)と、固定段モードとの3つのモードを有している。
図4−図16は、第1差動機構38及び第2差動機構40の各々における各回転要素RE1−RE6の回転速度を相対的に表すことができる共線図である。この共線図において、各回転要素の回転速度を表す縦線Y1−Y4は紙面向かって左から順に、縦線Y1は第1回転機MG1が連結された第4回転要素RE4である第2サンギヤS2の回転速度を、縦線Y2はエンジン12(図中の「ENG」参照)が連結された第1回転要素RE1である第1キャリアC1の回転速度を、縦線Y3はブレーキBR1を介してケース18に選択的に連結される第2回転要素RE2である第1リングギヤR1の回転速度、及び出力軸24(図中の「OUT」参照)に連結された第5回転要素RE5である第2キャリアC2の回転速度を、縦線Y4は相互に連結された、第3回転要素RE3である第1サンギヤS1及び第6回転要素RE6である第2リングギヤR2の回転速度をそれぞれ示している。出力軸24にはリダクション機構44を介して第2回転機MG2が連結されている。又、白四角印(□)における矢印はMG1トルクTgを、白丸印(○)における矢印はエンジントルクTeを、黒丸印(●)における矢印はMG2トルクTmをそれぞれ示している。又、第1キャリアC1と第1リングギヤR1とを選択的に連結するクラッチCL1が白抜きで表されたものはクラッチCL1の解放状態を、クラッチCL1がハッチング(斜線)で表されたものはクラッチCL1の係合状態をそれぞれ示している。又、第1リングギヤR1をケース18に選択的に連結するブレーキBR1における白菱形印(◇)はブレーキBR1の解放状態を、黒菱形印(◆)はブレーキBR1の係合状態をそれぞれ示している。又、第1リングギヤR1と第2キャリアC2とを選択的に連結するクラッチCLcにおける白菱形印(◇)はクラッチCLcの解放状態を、黒菱形印(◆)はクラッチCLcの係合状態をそれぞれ示している。又、第1差動機構38に関する回転速度を相対的に表す直線は破線で示され、第2差動機構40に関する回転速度を相対的に表す直線は実線で示されている。尚、黒丸印(●)における矢印は、第1回転機MG1に分割されたエンジン12の動力による第1回転機MG1の発電電力、及び/又は、バッテリユニット52から供給される電力で駆動される第2回転機MG2によるMG2トルクTmであり、エンジン直達トルク分は含まれていない。又、クラッチCLcにおける黒菱形印(◆)は、黒丸印(●)と重なっている為、図中では表されていない。又、縦線Y1、Y2、Y3、Y4の相互の間隔は、差動機構38,40の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリアとリングギヤとの間が遊星歯車機構の歯車比ρ(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)に対応する間隔とされる。
図4は、単独駆動EVモード時の共線図である。単独駆動EVモードは、図3の「通常」に示すように、クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcを共に解放した状態で実現される。単独駆動EVモードでは、クラッチCL1及びブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38の差動が許容され、第1差動機構38はニュートラル状態とされる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12の運転を停止させると共に、第2回転機MG2から走行用のMG2トルクTmを出力させる。図4は、第2回転機MG2が正回転(すなわち車両10の前進時における第2キャリアC2の回転方向)にて正トルクを出力している前進時の場合である。後進時は、前進時に対して第2回転機MG2を逆回転させる。車両走行中には、第2回転機MG2の回転(ここでは駆動輪16の回転も同意)に連動して出力軸24に連結された第2キャリアC2が回転させられる。単独駆動EVモードでは、更に、クラッチCLcが解放されているので、エンジン12及び第1回転機MG1は各々連れ回されず、エンジン回転速度Ne及びMG1回転速度Ngをゼロとすることができる。これにより、エンジン12及び第1回転機MG1における各々の引き摺り損失を低減して電費を向上する(すなわち電力消費を抑制する)ことができる。ハイブリッド制御部92は、フィードバック制御によりMG1回転速度Ngをゼロに維持する。或いは、ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1の回転が固定されるように第1回転機MG1に電流を流す制御(d軸ロック制御)を実行して、MG1回転速度Ngをゼロに維持する。或いは、MG1トルクTgをゼロとしても第1回転機MG1のコギングトルクによりMG1回転速度Ngをゼロに維持できるときはMG1トルクTgを加える必要はない。単独駆動EVモードは、クラッチCL1及びクラッチCLcを解放した状態で第2回転機MG2のみを動力源としてモータ走行することが可能な走行モードである。尚、MG1回転速度Ngをゼロに維持する制御を行っても、第1動力伝達部20はMG1トルクTgの反力を取れない中立状態であるので、駆動トルクに影響を与えない。又は、単独駆動EVモードでは、第1回転機MG1を無負荷として空転させても良い。
図5は、両駆動EVモード時の共線図である。両駆動EVモードは、図3の「両駆動」に示すように、クラッチCL1及びブレーキBR1を係合した状態、且つクラッチCLcを解放した状態で実現される。両駆動EVモードでは、クラッチCL1及びブレーキBR1が係合されており、第1差動機構38の差動が規制され、第1リングギヤR1の回転が停止させられる。その為、第1差動機構38は何れの回転要素も回転が停止させられ、第1差動機構38は内部ロック状態とされる。これによって、エンジン12はゼロ回転で停止状態とされ、又、第1サンギヤS1に連結された第2リングギヤR2もゼロ回転で固定される。第2リングギヤR2が回転不能に固定されると、第2リングギヤR2にてMG1トルクTgの反力トルクが取れる為、MG1トルクTgに基づくトルクを第2キャリアC2から機械的に出力させて駆動輪16へ伝達することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12の運転を停止させると共に、第1回転機MG1及び第2回転機MG2から各々走行用のMG1トルクTg及びMG2トルクTmを出力させる。図5は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2が共に正回転にて正トルクを出力している前進時の場合である。後進時は、前進時に対して第1回転機MG1及び第2回転機MG2を逆回転させる。
図4,図5を用いた説明で示したように、単独駆動EVモードは第2回転機MG2のみにて車両10を駆動し、両駆動EVモードは第1回転機MG1及び第2回転機MG2にて車両10を駆動することが可能である。従って、モータ走行する場合、低負荷時は、単独駆動EVモードが成立させられて第2回転機MG2による単独走行とされ、高負荷時は、両駆動EVモードが成立させられて第1回転機MG1及び第2回転機MG2による両駆動とされる。尚、エンジン走行を含め、車両減速中の回生は、主に第2回転機MG2にて実行される。
単独駆動EVモードでの走行中に第2回転機MG2にて回生制御を行う場合、運転が停止されたエンジン12は連れ回されずゼロ回転で停止状態とされるので、回生量を大きく取ることができる。一方で、単独駆動EVモードでの走行時にバッテリユニット52が満充電状態であると、回生エネルギーが取れない為、回生ブレーキにて制動トルクを得ることができない。単独駆動EVモードでの走行時に、バッテリユニット52が満充電状態となり回生エネルギーが取れない場合はエンジンブレーキにて制動トルクを得たり、又は、バッテリユニット52が満充電に近い状態ではエンジンブレーキを併用することが考えられる。又、別の観点では、単独駆動EVモードでの走行時にバッテリ容量SOCが低下して第2回転機MG2へ供給する電力を確保し難くなると、第2回転機MG2を駆動することができない。単独駆動EVモードでの走行時に、バッテリ容量SOCが低下した場合はエンジン走行へ切り替えることが考えられる。以上のことから、EV走行モードでは、エンジンブレーキを速やかに作用させる為の又はエンジン走行へ速やかに切り替える為の準備をしておくスタンバイモード、及びエンジンブレーキを併用するエンブレ併用モードを有している。
図6、図7は、各々、EV走行モードにおけるスタンバイモード時の共線図である。このスタンバイモードは、図3の「スタンバイモード」に示すように、クラッチCL1又はクラッチCLcを係合した状態で実現される。クラッチCL1又はクラッチCLcが係合されるとエンジン12は連れ回し状態とされ得るが、このスタンバイモードでは第1回転機MG1が無負荷で空転させられているので、運転停止中のエンジン12はゼロ回転で停止状態とされる。従って、このスタンバイモードでは、エンジンブレーキを作用させずに、第2回転機MG2にてモータ走行又は回生制御を行うことができる。スタンバイモードの状態から、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げてエンジントルクTe(負値)の反力を第1回転機MG1にて取ることで、エンジン回転速度Neに応じたエンジンブレーキを作用させることができる。又、スタンバイモードの状態から、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げて点火することで、エンジン走行へ移行することができる。
図6に示すようなクラッチCL1が係合されたスタンバイモードにおける各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の作動状態は、後述するHV走行モードのU/DHVモード時の前進走行における各係合装置の作動状態と同じ状態である。スタンバイモードではエンジン12は運転されていないが、便宜上、クラッチCL1が係合されたスタンバイモードを、U/Dインプットスプリットでのスタンバイモードと称する。
図7に示すようなクラッチCLcが係合されたスタンバイモードにおける各係合装置の作動状態は、後述するHV走行モードのO/DHVモード時の前進走行における各係合装置の作動状態と同じ状態である。便宜上、クラッチCLcが係合されたスタンバイモードを、O/Dインプットスプリットでのスタンバイモードと称する。
図8、図9は、各々、EV走行モードにおけるエンブレ併用モード時の共線図である。このエンブレ併用モードは、図3の「エンブレ併用」に示すように、クラッチCL1又はクラッチCLcを係合した状態で実現される。クラッチCL1又はクラッチCLcが係合されるとエンジン12は連れ回し状態とされるので、このエンブレ併用モードでは、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを制御しつつエンジントルクTe(負値)の反力を取ることで、エンジン回転速度Neに応じたエンジンブレーキを作用させることができる。従って、このエンブレ併用モードでは、第2回転機MG2による回生ブレーキに加えて又は替えて、エンジンブレーキを作用させることができる。尚、クラッチCL1及びクラッチCLcを係合することでもエンジンブレーキを作用させることができる。この場合は、第1回転機MG1にてエンジントルクTe(負値)の反力を取る必要はない。クラッチCL1及びクラッチCLcが係合されたエンブレ併用モードにおける各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の作動状態は、後述するHV走行モードの直結固定段モード時における各係合装置の作動状態と同じ状態である。
図8に示すようなクラッチCL1が係合されたエンブレ併用モードにおける各係合装置(クラッチCL1、ブレーキBR1、クラッチCLc)の作動状態は、後述するHV走行モードのU/DHVモード時の前進走行における各係合装置の作動状態と同じ状態である。エンブレ併用モードではエンジン12は運転されていないが、便宜上、クラッチCL1が係合されたエンブレ併用モードを、U/Dインプットスプリットでのエンブレ併用モードと称する。
図9に示すようなクラッチCLcが係合されたエンブレ併用モードにおける各係合装置の作動状態は、後述するHV走行モードのO/DHVモード時の前進走行における各係合装置の作動状態と同じ状態である。便宜上、クラッチCLcが係合されたエンブレ併用モードを、O/Dインプットスプリットでのエンブレ併用モードと称する。
図10は、HV走行モードのU/DHVモード時の前進走行での共線図である。U/DHVモードの前進走行(以下、U/DHVモード(前進)という)は、図3の「U/Dインプットスプリット」の「前進」に示すように、クラッチCL1を係合した状態、且つブレーキBR1及びクラッチCLcを解放した状態で実現される。U/DHVモード(前進)では、クラッチCL1が係合され且つブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38は直結状態とされるので、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力は、第1サンギヤS1に連結された第2リングギヤR2に直接的に伝達される。加えて、U/DHVモード(前進)では、クラッチCLcが解放されており、第2差動機構40単独にて電気式無段変速機が構成される。これによって、第1動力伝達部20では、第2リングギヤR2に入力されるエンジン12の動力を第2サンギヤS2と第2キャリアC2とに分割することができる。すなわち、第1動力伝達部20では、第2リングギヤR2に入力されるエンジントルクTeの反力を第1回転機MG1にて取ることにより、エンジン直達トルクが第2キャリアC2へ機械的に伝達されると共に、第1回転機MG1に分割されたエンジン12の動力による第1回転機MG1の発電電力が所定の電気経路を介して第2回転機MG2に伝達される。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の発電により出力させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる。ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1の発電電力にバッテリユニット52から供給される電力を加えて第2回転機MG2を駆動することもできる。図10は、第2回転機MG2が正回転にて正トルクを出力して前進走行している場合である。
図11は、HV走行モードのO/DHVモード時の前進走行での共線図である。O/DHVモードの前進走行(以下、O/DHVモード(前進)という)は、図3の「O/Dインプットスプリット」の「前進」に示すように、クラッチCL1及びブレーキBR1を解放した状態、且つクラッチCLcを係合した状態で実現される。O/DHVモード(前進)では、クラッチCLcが係合されており、第1差動機構38と第2差動機構40とで1つの差動機構が構成される。加えて、O/DHVモード(前進)では、クラッチCL1及びブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38と第2差動機構40との全体にて、第2差動機構40単独での動力分割比とは異なる動力分割比にて作動する電気式無段変速機が構成される。これによって、第1動力伝達部20では、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力を第2サンギヤS2と第2キャリアC2とに分割することができる。すなわち、第1動力伝達部20では、第1キャリアC1に入力されるエンジントルクTeの反力を第1回転機MG1にて取ることにより、エンジン直達トルクが第2キャリアC2へ機械的に伝達されると共に、第1回転機MG1に分割されたエンジン12の動力による第1回転機MG1の発電電力が所定の電気経路を介して第2回転機MG2に伝達される。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の発電により出力させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる。図11は、第2回転機MG2が正回転にて正トルクを出力している前進時の場合である。
図12は、HV走行モードのU/DHVモード時の後進走行での共線図であり、電気式無段変速機としての機能を達成している構成に対して、エンジン12の回転とトルクとが負値に逆転して入力される、エンジン逆転入力の場合である。U/DHVモードのエンジン逆転入力での後進走行(以下、U/DHVモード逆転入力(後進)という)は、図3の「U/Dインプットスプリット」の「後進」の「エンジン逆転入力」に示すように、ブレーキBR1を係合した状態、且つクラッチCL1及びクラッチCLcを解放した状態で実現される。U/DHVモード逆転入力(後進)では、クラッチCL1が解放され且つブレーキBR1が係合されており、第1差動機構38はエンジン12の逆回転変速状態とされるので、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力は、第1サンギヤS1に連結された第2リングギヤR2に負回転及び負トルクにて伝達される。加えて、U/DHVモード逆転入力(後進)では、クラッチCLcが解放されており、第2差動機構40単独にて電気式無段変速機が構成される。これによって、第1動力伝達部20では、第2リングギヤR2に逆転して入力されるエンジン12の動力を第2サンギヤS2と第2キャリアC2とに分割することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の力行により出力させ、バッテリユニット52から供給される電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる。図12は、第2回転機MG2が負回転にて負トルクを出力して後進走行している場合である。又、U/DHVモード逆転入力(後進)では、エンジン12の動力が第2リングギヤR2に負回転及び負トルクにて伝達されるので、MG2トルクTmと合わせて後進走行用の駆動トルクを出すことができる。尚、第1回転機MG1の力行に用いる電力を発電する為に第2回転機MG2が負回転にて正トルクを出力しても良く、この場合でも、負トルクとなるエンジン直達トルクの方がMG2トルクTmよりも絶対値が大きくなることから後進走行が可能である。
図13は、HV走行モードのU/DHVモード時の後進走行での共線図であり、エンジン正転入力の場合である。U/DHVモードのエンジン正転入力での後進走行(以下、U/DHVモード正転入力(後進)という)は、図3の「U/Dインプットスプリット」の「後進」の「エンジン正転入力」に示すように、クラッチCL1を係合した状態、且つブレーキBR1及びクラッチCLcを解放した状態で実現される。U/DHVモード正転入力(後進)では、クラッチCL1が係合され且つブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38は直結状態とされるので、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力は、第1サンギヤS1に連結された第2リングギヤR2に直接的に伝達される。加えて、U/DHVモード正転入力(後進)では、クラッチCLcが解放されており、第2差動機構40単独にて電気式無段変速機が構成される。これによって、第1動力伝達部20では、第2リングギヤR2に入力されるエンジン12の動力を第2サンギヤS2と第2キャリアC2とに分割することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の発電により出力させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる。図13は、第2回転機MG2が負回転にて負トルクを出力して後進走行している場合である。尚、エンジン直達トルクは正トルクとなるが、第1回転機MG1の発電電力にて駆動される(又は、第1回転機MG1の発電電力にバッテリユニット52から供給される電力を加えて駆動される)第2回転機MG2の出力トルク(負値)はエンジン直達トルクよりも絶対値が大きくなることから後進走行が可能である。
図14は、HV走行モードのO/DHVモード時の後進走行での共線図であり、エンジン正転入力の場合である。O/DHVモードのエンジン正転入力での後進走行(以下、O/DHVモード正転入力(後進)という)は、図3の「O/Dインプットスプリット」の「後進」の「エンジン正転入力」に示すように、クラッチCL1及びブレーキBR1を解放した状態、且つクラッチCLcを係合した状態で実現される。O/DHVモード正転入力(後進)では、クラッチCLcが係合されており、第1差動機構38と第2差動機構40とで1つの差動機構が構成される。加えて、O/DHVモード正転入力(後進)では、クラッチCL1及びブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38と第2差動機構40との全体にて、第2差動機構40単独での動力分割比とは異なる動力分割比にて作動する電気式無段変速機が構成される。これによって、第1動力伝達部20では、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力を第2サンギヤS2と第2キャリアC2とに分割することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の発電により出力させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる。図14は、第2回転機MG2が負回転にて負トルクを出力して後進走行している場合である。尚、エンジン直達トルクは正トルクとなるが、U/DHVモード正転入力(後進)の場合と同様に、後進走行が可能である。
図10−図14を用いた説明で示したように、U/DHVモードとO/DHVモードとでは、電気式無段変速機としての機能を達成している構成に対して、エンジン12の動力が入力される回転要素が異なっており、第1動力伝達部20を電気式無段変速機として機能させるときの動力分割比が異なる。すなわち、O/DHVモードとU/DHVモードとで、エンジン12に対する、回転機MG1,MG2の各出力トルクや各回転速度の比率が変えられる。クラッチCLcは、エンジン走行中のエンジン12に対する、回転機MG1,MG2の各出力トルクや各回転速度の比率を変更する為に、作動状態が切り替えられる。
MG1回転速度Ngがゼロとされてエンジン12の動力が電気パス(第1回転機MG1や第2回転機MG2の電力授受に関わる電気経路である電気的な動力伝達経路)を介することなく全て機械的に第2キャリアC2へ伝達される状態となる所謂メカニカルポイントの状態のときに、エンジン12の回転が減速されて第2キャリアC2から出力されるアンダードライブ状態となる場合がU/DHVモードであり、又、エンジン12の回転が増速されて第2キャリアC2から出力されるオーバードライブ状態となる場合がO/DHVモードである。U/DHVモードでのエンジン直達トルクは、エンジントルクTeに対して増大される。一方で、O/DHVモードでのエンジン直達トルクは、エンジントルクTeに対して減少される。
U/DHVモード(前進)、U/DHVモード正転入力(後進)、及びU/Dインプットスプリットでのエンブレ併用モードは、クラッチCL1及びクラッチCLcのうちの何れか一方の係合装置であるクラッチCL1を係合した状態(すなわちクラッチCL1を係合且つクラッチCLcを解放した状態)で、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより第2差動機構40の差動状態が制御されるときには(つまり電気式無段変速機が構成されるときには)、エンジントルクTeよりも増大されたトルクが第2キャリアC2に機械的に伝達される走行モードである。一方で、O/DHVモード(前進)、O/DHVモード正転入力(後進)、及びO/Dインプットスプリットでのエンブレ併用モードは、クラッチCL1及びクラッチCLcのうちの前記一方の係合装置とは別の係合装置であるクラッチCLcを係合した状態(すなわちクラッチCL1を解放且つクラッチCLcを係合した状態)で、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより第2差動機構40の差動状態が制御されるときには、エンジントルクTeよりも減少されたトルクが第2キャリアC2に機械的に伝達される走行モードである。尚、U/DHVモード逆転入力(後進)は、電気式無段変速機が構成されるときにエンジントルクTeよりも増大されたトルクが第2キャリアC2に機械的に伝達される走行モードである。
U/DHVモード(前進)及びO/DHVモード(前進)は、クラッチCL1及びクラッチCLcのうちの何れか一方の係合装置を係合した状態で第2差動機構40の差動状態が制御されるときに前進走行を可能にする前進走行モードである。U/DHVモード正転入力(後進)及びO/DHVモード正転入力(後進)は、クラッチCL1及びクラッチCLcのうちの何れか一方の係合装置を係合した状態で第2差動機構40の差動状態が制御されるときに後進走行を可能にする第1後進走行モードである。U/DHVモード逆転入力(後進)は、ブレーキBR1を係合した状態で第2差動機構40の差動状態が制御されるときに後進走行を可能にする第2後進走行モードである。ハイブリッド制御部92は、エンジン走行時(HV走行時)、運転者によるシフトレバー56の操作によってDポジションが選択されているときには、前進走行モードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、エンジン走行時(HV走行時)、運転者によるシフトレバー56の操作によってRポジションが選択されているときには、第1後進走行モード及び第2後進走行モードのうちの何れかの後進走行モードを成立させる。このように、車両10では、前進走行モードと第1後進走行モードと第2後進走行モードとが選択的に成立させられる。
図15は、HV走行モードの固定段モード時の共線図であり、第1差動機構38及び第2差動機構40の各回転要素が一体回転させられる、直結の場合である。固定段モードの直結(以下、直結固定段モードという)は、図3の「固定段」の「前進」の「直結」に示すように、クラッチCL1及びクラッチCLcを係合した状態、且つブレーキBR1を解放した状態で実現される。直結固定段モードでは、クラッチCL1が係合され且つブレーキBR1が解放されており、第1差動機構38は直結状態とされる。加えて、直結固定段モードでは、クラッチCLcが係合されており、第1差動機構38及び第2差動機構40の各回転要素が一体回転させられる。これによって、第1動力伝達部20では、エンジン12の動力を直接的に第2キャリアC2から出力することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12から走行用のエンジントルクTeを出力させる。この直結固定段モードでは、バッテリユニット52からの電力にて第1回転機MG1を駆動して、第1回転機MG1の動力を直接的に第2キャリアC2から出力することもできる。又、この直結固定段モードでは、バッテリユニット52からの電力にて第2回転機MG2を駆動して、第2回転機MG2の動力を駆動輪16へ伝達することもできる。よって、ハイブリッド制御部92は、エンジントルクTeを出力させることに加えて、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の少なくとも一方の回転機から走行用のトルクを出力させても良い。つまり、直結固定段モードでは、エンジン12のみで車両10を駆動しても良いし、又、第1回転機MG1及び/又は第2回転機MG2でトルクアシストしても良い。直結固定段モードは、クラッチCL1及びクラッチCLcを共に係合した状態とすることでエンジントルクTeを第2キャリアC2から直接的に出力することができる(見方を換えれば、第1差動機構38及び第2差動機構40の各回転要素が一体回転させられる)走行モードである。
図16は、HV走行モードの固定段モード時の共線図であり、第2キャリアC2が回転不能に固定される、出力軸固定の場合である。固定段モードの出力軸固定(以下、出力軸固定段モードという)は、図3の「固定段」の「前進」の「出力軸固定」に示すように、ブレーキBR1及びクラッチCLcを係合した状態、且つクラッチCL1を解放した状態で実現される。出力軸固定段モードでは、クラッチCLcが係合されており、第1差動機構38と第2差動機構40とで1つの差動機構が構成される。加えて、出力軸固定段モードでは、ブレーキBR1が係合され且つクラッチCL1が解放されており、第2キャリアC2が回転不能に固定される。これによって、第1動力伝達部20では、第1キャリアC1に入力されるエンジン12の動力の反力を第1回転機MG1にて取ることができる。従って、出力軸固定段モードでは、エンジン12の動力による第1回転機MG1の発電電力をバッテリユニット52に充電することができる。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を運転(作動)させると共に、第1回転機MG1の発電によってエンジン12の動力に対する反力を取り、第1回転機MG1の発電電力を電力制御ユニット50を介してバッテリユニット52に充電する。この出力軸固定段モードは、第2キャリアC2が回転不能に固定される為、車両10の停止時にバッテリユニット52を専ら充電するモードである。図15,図16を用いた説明で示したように、HV走行モードの直結固定段モードや出力軸固定段モードのときには、クラッチCLcが係合される。
第1動力伝達部20の減速比I(=Ne/No)が比較的大きな領域では、エンジンパワーPeに対するMG1パワーPgの出力比率(Pg/Pe)、及びエンジンパワーPeに対するMG2パワーPmの出力比率(Pm/Pe)の各絶対値は、U/DHVモードの方がO/DHVモードよりも小さくされる。従って、減速比Iが比較的大きな領域では、U/DHVモードを成立させることで、MG1パワーPgの増大及びMG2パワーPmの増大を各々抑制することができる。一方で、減速比Iが「1」よりも小さいような比較的小さな領域では、出力比率(Pm/Pe)が負値となり(すなわち出力比率(Pg/Pe)が正値となり)、出力比率(Pg/Pe)及び出力比率(Pm/Pe)の各絶対値は、U/DHVモードの方がO/DHVモードよりも大きくされる。出力比率(Pm/Pe)が負値となる状態(すなわち出力比率(Pg/Pe)が正値となる状態)は、第2回転機MG2が発電し、その発電電力が第1回転機MG1に供給される動力循環状態である。この動力循環状態となることは、できるだけ回避又は抑制されることが望ましい。その為、減速比Iが比較的小さな領域では、O/DHVモードを成立させることで、動力循環パワーを低減することができる。減速比Iに応じてU/DHVモードとO/DHVモードとを切り替えることで、より低出力(低パワー)の回転機MG1,MG2でエンジンパワーを伝達することができる。
つまり、比較的大きな減速比Iを用いるエンジン12の高負荷時にU/DHVモードを成立させ、比較的小さな減速比Iを用いるエンジン12の低負荷時又は高車速時にO/DHVモードを成立させるように、U/DHVモードとO/DHVモードとを使い分けることで、回転機MG1,MG2の各トルクや各回転速度の増加が防止又は抑制され、高車速時には動力循環パワーが低減される。このことは、電気パスにおけるエネルギ変換損失が減り、燃費の向上につながる。又は、回転機MG1,MG2の小型化につながる。
図17及び図18は、各々、エンジン走行とモータ走行との切替制御に用いる走行モード切替マップの一例を示す図である。これらの走行モード切替マップは、各々、車速Vと車両10の走行負荷(以下、車両負荷という)(例えば要求駆動トルク)とを変数としてエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係である。
図17は、バッテリ容量SOCを保持した状態で走行するCS(Charge Sustain)走行での動力伝達装置14の状態遷移(つまり車両10の走行モードの切替え)を示している。この図17は、車両10が、例えばバッテリ容量SOCが元々比較的少なく設定されたハイブリッド車両等である場合に用いられる。又は、この図17は、車両10が、例えばバッテリ容量SOCが元々比較的多く設定されたプラグインハイブリッド車両、レンジエクステンデッド車両等においてバッテリ容量SOCを保持するモードが成立された場合に用いられる。一方で、図18は、バッテリ容量SOCを消費しながら走行するCD(Charge Depleting)走行での動力伝達装置14の状態遷移(つまり車両10の走行モードの切替え)を示している。この図18は、車両10が、例えばバッテリ容量SOCが元々比較的多く設定されたプラグインハイブリッド車両やレンジエクステンデッド車両等においてバッテリ容量SOCを消費するモードが成立された場合に用いられる。車両10が、例えばバッテリ容量SOCが元々比較的少なく設定されたハイブリッド車両等である場合には、この図18を用いないことが好ましい。
図17において、高負荷時にはU/DHVモードが成立され、低負荷時又は高車速時にはO/DHVモードが成立され易いように、車速V及び車両負荷等の走行状態に応じた各走行モードの領域が設定されている。又、バッテリユニット52の電力持ち出しが可能である場合(或いはエンジン12の暖機やエンジン12の運転による各装置の暖機が完了している場合)、エンジン12の運転効率が悪くなる領域では、モータ走行において第2回転機MG2の力行を行う。その為、破線に示すような低車速且つ低負荷となる領域で、単独駆動EVモードの領域が設定されている。又、車両負荷が負の場合、U/DHVモード又はO/DHVモードにおいて、エンジン12の負トルクを用いたエンジンブレーキを作用させる減速走行が行われる。バッテリユニット52の電力受け入れが可能である場合、モータ走行において第2回転機MG2による回生制御を行う。その為、一点鎖線に示すような車両負荷が負となる領域で、単独駆動EVモードの領域が設定されている。このように設定されたCS走行での走行モード切替マップでは、例えば発進時は、前後進走行共にU/DHVモードが成立させられる。これにより、エンジンパワーPeをより有効に使える為、発進加速性能が向上する。前進走行で車速Vの上昇と共に、第1動力伝達部20の減速比Iが「1」付近になる。この状態で、直結固定段モードに移行させても良い。低車速走行では、エンジン回転速度Neが極低回転となる為、U/DHVモードから直接O/DHVモードに移行させる。直結固定段モードは、回転機MG1,MG2を介した動力伝達が無い為、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換に伴う熱損失が無くなる。よって、燃費向上や発熱回避に有利である。その為、トーイング等の高負荷時や高車速時は、積極的に直結固定段モードに移行させても良い。尚、モータ走行を選択するスイッチが運転者によって操作されてモータ走行が選択されているときには、破線に示すような領域で単独駆動EVモードが成立させられる。
図18において、車両負荷が低い領域では単独駆動EVモードが成立され、車両負荷が高い領域では両駆動EVモードが成立されるように、車速V及び車両負荷等の走行状態に応じた各走行モードの領域が設定されている。両駆動EVモードでは、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の運転効率に基づいて(例えば電費向上、回転機MG1,MG2の温度低下、電力制御ユニット50の温度低下等を目的として)、第1回転機MG1と第2回転機MG2とのパワー分担割合が決められる。又、バッテリユニット52の最大出力や回転機MG1,MG2の最大出力によっては、又は、モータ走行時における車速Vの上昇による動力伝達装置14の何れかの回転要素の回転速度の上昇がエンジン12を運転することで緩和されるような場合には、図18に示すように、高負荷領域や高車速領域にてHV走行モードの領域が設定されて、エンジン12を走行用の動力源とした状態に移行させても良い。又、車両負荷が負となる領域では、モータ走行において第2回転機MG2による回生制御が行われるように、単独駆動EVモードの領域が設定されている。このように設定されたCD走行での走行モード切替マップでは、例えば車速Vが上昇すると、回転機MG1,MG2、差動機構38,40等の各要素の回転速度が増大する為、CS走行での走行モード切替マップで設定されたようなHV走行モードに移行させて、各要素の回転速度が制限内とされるように制御される。尚、単独駆動EVモードでは、第1回転機MG1とエンジン12とが切り離される(つまり第1回転機MG1とエンジン12との相互間の動力伝達が遮断される)為、単独駆動EVモードの高車速側の領域を両駆動EVモードよりも高車速側に広げても良い。車両負荷が負となる領域での回生制御は、単独駆動EVモードに替えて、両駆動EVモードとしても良い。又、駆動トルクや車速Vに上限を設けて、エンジン12が始動しないようにして、燃料消費しないようにしても良い。
ハイブリッド制御部92は、図17又は図18に示すような走行モード切替マップに車速V及び車両負荷(例えば要求駆動トルク)を適用することで、成立させる走行モードが何れの走行モードであるかを判断する。ハイブリッド制御部92は、判断した走行モードが現在の走行モードである場合には、現在の走行モードをそのまま成立させる一方で、判断した走行モードが現在の走行モードとは異なる場合には、現在の走行モードに替えてその判断した走行モードを成立させる。
ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードを成立させた場合には、第2回転機MG2のみを走行用の動力源とするモータ走行を可能とする。ハイブリッド制御部92は、両駆動EVモードを成立させた場合には、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の両方を走行用の動力源とするモータ走行を可能とする。
ハイブリッド制御部92は、U/DHVモード又はO/DHVモードを成立させた場合には、エンジン12の動力に対する反力を第1回転機MG1の発電により受け持つことで第2キャリアC2にエンジン直達トルクを伝達すると共に第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2を駆動することで駆動輪16にトルクを伝達して走行するエンジン走行を可能とする。ハイブリッド制御部92は、U/DHVモード又はO/DHVモードでは、公知のエンジン12の最適燃費線を考慮したエンジン動作点(すなわちエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン動作点)にてエンジン12を作動させる。尚、このU/DHVモード又はO/DHVモードでは、第1回転機MG1の発電電力にバッテリユニット52からの電力を加えて第2回転機MG2を駆動することも可能である。
ハイブリッド制御部92は、直結固定段モードを成立させた場合には、エンジン12の動力を直接的に第2キャリアC2から出力して走行するエンジン走行を可能とする。ハイブリッド制御部92は、直結固定段モードでは、エンジン12の動力に加えて、バッテリユニット52からの電力にて第1回転機MG1を駆動して、第1回転機MG1の動力を直接的に第2キャリアC2から出力したり、バッテリユニット52からの電力にて第2回転機MG2を駆動して、第2回転機MG2の動力を駆動輪16に伝達して走行することも可能である。
ハイブリッド制御部92は、車両停止時に、バッテリ容量SOCがバッテリユニット52の充電が必要であると判断される予め定められた所定容量以下の場合には、出力軸固定段モードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、出力軸固定段モードを成立させた場合には、エンジン12の動力に対する反力を第1回転機MG1の発電により受け持つと共に第1回転機MG1の発電電力を電力制御ユニット50を介してバッテリユニット52に充電する。
U/DHVモードとO/DHVモードとは、どちらも第1動力伝達部20が電気式無段変速機として機能させられる。又、第1動力伝達部20の減速比Iが「1」となる状態は、クラッチCL1及びクラッチCLcが共に係合された直結固定段モードの状態(図15参照)と同等の状態である。従って、ハイブリッド制御部92は、クラッチCL1が係合されたU/DHVモードと、クラッチCLcが係合されたO/DHVモードとの切替えを、減速比Iが「1」の同期状態のときにクラッチCL1とクラッチCLcとの各作動状態を切り替えることで(直結固定段モードと同等の状態を介して)実行する。又は、ハイブリッド制御部92は、クラッチCL1が係合されたU/DHVモードと、クラッチCLcが係合されたO/DHVモードとの切替えを、クラッチCL1とクラッチCLcとで掴み替えを行う、所謂クラッチツゥクラッチの変速制御にて実行しても良い。
単独駆動EVモードでは、クラッチCL1又はクラッチCLcを係合することで、エンジン12が連れ回し状態とされる。よって、ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、クラッチCL1又はクラッチCLcを係合し、エンジン回転速度Neを引き上げて点火する。この際、ハイブリッド制御部92は、必要に応じて第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げても良い。
又は、ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、エンジン回転速度Neがゼロ[rpm]の状態でクラッチCL1又はクラッチCLcを係合した状態と同じ状態となるように、第1回転機MG1で差動機構38,40の各要素の回転速度を同期制御した後、クラッチCL1を係合した状態と同じ状態ではクラッチCL1を係合し、又は、クラッチCLcを係合した状態と同じ状態ではクラッチCLcを係合し、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げて点火する。つまり、ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、スタンバイモードを成立させる為の係合装置(クラッチCL1又はクラッチCLc)は未だ解放されているが差動機構38,40の各要素の回転速度はそのスタンバイモードと同等の状態となるように第1回転機MG1で同期制御した後、そのスタンバイモードを成立させる為の係合装置を係合してスタンバイモードを一旦成立させ、そのスタンバイモードの状態から、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げて点火する。このように、単独駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、スタンバイモードを経由してエンジン走行に移行しても良い。この場合、エンジン走行時の走行モード(U/DHVモード又はO/DHVモード)に合わせて、経由するスタンバイモード(U/Dインプットスプリット又はO/Dインプットスプリット)が成立させられれば良い。
エンジン12の始動に際して、駆動輪16に連結された第2キャリアC2には、エンジン回転速度Neを上昇させる為の反力として、運転停止中のエンジン12の回転を引き上げることに伴うエンジン12の負トルク(エンジン引き込みトルクともいう)が伝達される為、駆動トルクの落ち込みが生じる。ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、エンジン始動時のショックを抑制する為に、駆動トルクの落ち込みを補償するトルク(反力キャンセルトルクともいう)を第2回転機MG2により追加で出力させる。
クラッチCL1及びブレーキBR1が係合された状態である両駆動EVモードでは、ブレーキBR1を解放することで、エンジン12が連れ回し状態とされる。よって、ハイブリッド制御部92は、両駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、ブレーキBR1を解放した後にクラッチCLcを係合し、エンジン回転速度Neを引き上げて点火する。この際、ハイブリッド制御部92は、必要に応じて第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げても良い。又は、ハイブリッド制御部92は、両駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、ブレーキBR1を解放し、第1回転機MG1にてエンジン回転速度Neを引き上げて点火する。又は、両駆動EVモードでは、クラッチCL1及びブレーキBR1を解放することで単独駆動EVモードと同等の状態とされるので、クラッチCL1及びブレーキBR1を解放して、上述した単独駆動EVモードでのエンジン始動を行うことも可能である。ハイブリッド制御部92は、両駆動EVモードでのモータ走行中にエンジン12を始動する場合には、反力キャンセルトルクを第2回転機MG2により追加で出力させる。
ここで、第2差動機構40が有するピニオンギヤである第2ピニオンギヤP2における潤滑について説明する。
図19は、第2ピニオンギヤP2及び第2ピニオンギヤP2の周辺部材を示す部分断面図である。図19において、第2キャリアC2は、第2ピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持する支持軸であるピニオンシャフトPS、及び、ピニオンシャフトPSを保持する、第1保持部材CP1及び第2保持部材CP2等を備えている。ピニオンシャフトPSは、ころ軸受84a,84bを介して第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持する。第2保持部材CP2の内部には、第1潤滑油路86が設けられ、又、ピニオンシャフトPSとの内部には、第1潤滑油路86と相互に連通する第2潤滑油路87が設けられている。加えて、ピニオンシャフトPSには、第2潤滑油路87を外周面と連通させる第3潤滑油路88が設けられている。第3潤滑油路88は、図示の状態で、例えば手前から奥にわたって孔が空いている。油圧制御回路60から供給される潤滑油は、第1潤滑油路86、第2潤滑油路87、及び第3潤滑油路88を順に介して、第2ピニオンギヤP2やころ軸受84a,84bに対して吐出される。つまり、第2キャリアC2が回転すれば、第2差動機構40全体に潤滑油が供給される。このように、第3潤滑油路88は、油圧制御回路60から供給される潤滑油を第2ピニオンギヤP2に対して吐出する潤滑孔である。
図2に戻り、セカンダリレギュレータバルブ68は、ライン油圧PLを元圧として潤滑圧Plubを調圧する調圧弁である。潤滑圧Plubが流通する油路は第1潤滑油路86と相互に連通しており、潤滑圧Plubに調圧された油は第2ピニオンギヤP2やころ軸受84a,84bの潤滑油として供給される。潤滑圧制御用ソレノイドバルブSLUBは、潤滑圧Plubを制御する為のパイロット圧をセカンダリレギュレータバルブ68に対して出力する。潤滑圧制御用ソレノイドバルブSLUBにより潤滑圧Plubが変更されることにより、第2ピニオンギヤP2やころ軸受84a,84bに対して吐出される潤滑油の流量(潤滑油量ともいう)が変更される。
第2ピニオンギヤP2等は、効率良く潤滑されることが望ましい。効率良く潤滑されれば、潤滑油量を低減できるので(つまり潤滑圧Plubを低くできるので)、燃費に有利である。効率良く潤滑されるということは、例えば第3潤滑油路88から吐出された潤滑油が、摩耗や焼き付き等に対して不利となる負荷圏全体に届き易くされるということである。例えば、エンジン走行(HV走行)時に、第2リングギヤR2と第2ピニオンギヤP2との噛合い部分に加わる荷重、及び第2サンギヤS2と第2ピニオンギヤP2との噛合い部分に加わる荷重によって、第2ピニオンギヤP2にはピニオンシャフトPSに押し付けられる荷重(例えばラジアル荷重)が作用する。このようなラジアル荷重を支えるころ軸受84a,84bが存在する領域が負荷圏である。このように、負荷圏は、第2ピニオンギヤP2に作用する荷重によって第2ピニオンギヤP2が特定の方向に押し付けられる領域である。
図20、図21、図22は、各々、第2差動機構40を軸心方向から見たときの図であり、HV走行モードのU/DHVモード時における負荷圏を示す模式図である。図20、図21、図22において、白抜きの矢印は、第2ピニオンギヤP2、第2サンギヤS2、及び第2リングギヤR2のそれぞれの回転方向(第2ピニオンギヤP2については自転方向)を示しており、時計回りが正回転方向である。又、丸囲みaの領域は負荷圏を示している。又、矢印bは第2キャリアC2の回転方向を示している。尚、図20、図21、図22は、負荷圏と第3潤滑油路88との位置関係を分かり易く示す為の模式図であり、第2キャリアC2は図示されていない。又、第2ピニオンギヤP2は自転するが、第3潤滑油路88は第2ピニオンギヤP2の自転に伴う回転はしない。
図20は、図10の共線図を用いて説明したU/DHVモード(前進)時における負荷圏を示している。図20において、U/DHVモード(前進)時における負荷圏は、その負荷圏に近い側の第3潤滑油路88の開口(以下、第3潤滑油路88の開口といえば、負荷圏に近い側をいう)に対して、第2ピニオンギヤP2の自転方向下流側となる位置とされている。つまり、第3潤滑油路88の開口は、負荷圏に対して第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側となる位置に設けられている。従って、第3潤滑油路88(つまり第3潤滑油路88の開口)から吐出した潤滑油は、第2ピニオンギヤP2の自転によって直ぐに負荷圏に到達する方向に運ばれるので、第2ピニオンギヤP2等が効率良く潤滑され得る。負荷圏に対して潤滑油が届き易い位置に第3潤滑油路88が形成されているので、潤滑圧Plubを低くする(つまり潤滑油量を少なくする)ことが可能である。上述した、負荷圏に対して潤滑油が届き易い位置に第3潤滑油路88を形成するという考えは、O/DHVモード(前進)でも同様である。前進走行は、車両10において後進走行と比較して走行の機会が多いと考えられる。その為、第3潤滑油路88は、前進走行モードでの前進走行時に、第2ピニオンギヤP2における負荷圏に対して第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側となる予め定められた位置に設けられている。
図21は、図13の共線図を用いて説明したU/DHVモード正転入力(後進)時における負荷圏を示している。図21において、U/DHVモード正転入力(後進)時における負荷圏は、U/DHVモード(前進)時とは逆に、第3潤滑油路88の開口に対して、第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側となる位置とされている。つまり、U/DHVモード正転入力(後進)では、第3潤滑油路88の開口は、負荷圏に対して第2ピニオンギヤP2の自転方向下流側となる位置に設けられている。従って、第3潤滑油路88から吐出した潤滑油は、第2ピニオンギヤP2の自転によって負荷圏から遠ざかる方向に運ばれるので、第2ピニオンギヤP2等が潤滑され難い。その為、U/DHVモード正転入力(後進)時では、U/DHVモード(前進)時と比べて、潤滑圧Plubを高くする(つまり潤滑油量を多くする)必要がある。これは、O/DHVモード正転入力(後進)でも同様である。
図22は、図12の共線図を用いて説明したU/DHVモード逆転入力(後進)時における負荷圏を示している。図22において、U/DHVモード逆転入力(後進)時における負荷圏は、U/DHVモード正転入力(後進)時と同様の位置であるが、U/DHVモード正転入力(後進)時とは第2ピニオンギヤP2の自転方向が逆であるので、第3潤滑油路88の開口に対して、第2ピニオンギヤP2の自転方向下流側となる位置とされている。つまり、第3潤滑油路88の開口は、U/DHVモード(前進)時と同様に、負荷圏に対して第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側となる位置に設けられている。従って、U/DHVモード逆転入力(後進)時では、U/DHVモード正転入力(後進)時と異なり、潤滑圧Plubを高くする必要がない。
図23、図24、図25は、各々、HV走行モード時における潤滑圧Plubを設定する為の予め定められた関係(マップ、潤滑圧マップ)を示す図である。図23、図24、図25において、ピニオン回転速度は、第2ピニオンギヤP2の自転の回転速度である。ピニオン回転速度は、回転センサで検出可能な分かっている回転速度(例えば、第2サンギヤS2の回転速度であるMG1回転速度Ng、及び第2キャリアC2の回転速度である出力回転速度No)を用いて算出することができる。又、パラメータのトルクは、第2ピニオンギヤP2に掛かるトルク(つまり第2ピニオンギヤP2が特定の方向に押し付けられるときの負荷である、負荷圏に掛かるトルク)の推定値である。このトルクは、第2ピニオンギヤP2に掛かるトルクに相当するトルクであれば良く、エンジントルクTe、出力軸24におけるトルクである出力トルクToなどが用いられる。このトルクにおける「トルク小(二点鎖線)」、「トルク中(一点鎖線)」、「トルク大(実線)」で用いたトルク値は、各々、図23、図24、図25における各潤滑圧Plubの設定値の比較を容易にする為に、同値としている。又、破線a及び破線bは、図23、図24、図25における各潤滑圧Plubの設定値を比較する為に図示した共通の基準線である。破線aは、ピニオン回転速度の基準線であり、図23、図24、図25の各々での絶対値は同じである。破線bは、潤滑圧Plubの基準線であり、図23、図24、図25の各々での絶対値は同じである。
図23、図24、図25における潤滑圧マップでは、各々、第2ピニオンギヤP2に掛かるトルクが大きい程、潤滑圧Plubが高くされる(すなわち、油圧制御回路60から供給される潤滑油量が増加される)。又、図23、図24、図25における潤滑圧マップでは、各々、ピニオン回転速度が高い程、潤滑圧Plubが高くされる。
図23は、HV走行モードでの前進走行モード時における潤滑圧マップを示している。前述したように、前進走行モード時では、負荷圏に対して潤滑油が届き易い位置に第3潤滑油路88が形成されているので、比較的低い潤滑圧Plubが設定される。
図24は、HV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時(U/DHVモード正転入力(後進)時、又は、O/DHVモード正転入力(後進)時)における潤滑圧マップを示している。前述したように、HV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時では、第2ピニオンギヤP2等が潤滑され難いので、前進走行モード時よりも高い潤滑圧Plubが設定されて、潤滑油量が増加される。
図25は、U/DHVモード逆転入力(後進)時における潤滑圧マップを示している。前述したように、U/DHVモード逆転入力(後進)時では、HV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時と比べて、第2ピニオンギヤP2等が潤滑され易いので、そのエンジン正転入力での後進走行時程には高い潤滑圧Plubが設定されない。この図25の実施例では、前進走行モード時よりは高い潤滑圧Plubが設定される。
具体的には、電子制御装置90は、第2ピニオンギヤP2等の潤滑性能を向上する制御機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部96、及び油量変更手段すなわち油量変更部98を備えている。
状態判定部96は、車両10がエンジン12で走行中であるか否かを判定する。又、状態判定部96は、運転者によるシフトレバー56の操作によってDポジションが選択されているか否かを判定する。又、状態判定部96は、運転者によるシフトレバー56の操作によってRポジションが選択されているか否かを判定する。又、状態判定部96は、U/DHVモード逆転入力(後進)が選択されている(成立させられている)か否かを判定する。
油量変更部98は、例えば図23、図24、図25に示すような潤滑圧マップを用いて潤滑圧Plubを設定し、その潤滑圧Plubとなるようにセカンダリレギュレータバルブ68を制御する指令(広義には油圧制御指令信号Spの一つ)を油圧制御回路60(特には潤滑圧制御用ソレノイドバルブSLUB)に出力して、油圧制御回路60から供給される潤滑油量を制御(変更)する。油量変更部98は、第2ピニオンギヤP2に掛かるトルクが大きい程、潤滑圧Plubを高くして油圧制御回路60から供給される潤滑油量を増加する。これにより、第2ピニオンギヤP2等の耐久性(例えば耐摩耗性、耐焼き付き性等)が向上させられる。又、油量変更部98は、ピニオン回転速度が高い程、潤滑圧Plubを高くして油圧制御回路60から供給される潤滑油量を増加する。これにより、第2ピニオンギヤP2等の耐久性が向上させられる。
油量変更部98は、状態判定部96により車両10がエンジン12で走行中であり且つDポジションが選択されていると判定された場合には、例えば図23に示すような前進走行モード時における潤滑圧マップを用いて潤滑圧Plubを設定する。
油量変更部98は、状態判定部96により車両10がエンジン12で走行中であり且つRポジションが選択されており且つU/DHVモード逆転入力(後進)が選択されていると判定された場合には、例えば図25に示すようなU/DHVモード逆転入力(後進)時における潤滑圧マップを用いて潤滑圧Plubを設定する。
油量変更部98は、状態判定部96により車両10がエンジン12で走行中であり且つRポジションが選択されており且つU/DHVモード逆転入力(後進)が選択されていないと判定された場合には、例えば図24に示すようなHV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時における潤滑圧マップを用いて潤滑圧Plubを設定する。従って、油量変更部98は、第1後進走行モード(U/DHVモード正転入力(後進)、O/DHVモード正転入力(後進))時には第2後進走行モード(U/DHVモード逆転入力(後進))時と比較して高い潤滑圧Plubを設定して、油圧制御回路60から供給される潤滑油量を増加する。
図26は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち特定の走行モード(本実施例では前進走行モード)での潤滑に適するように第3潤滑油路88を設けた場合であっても第2ピニオンギヤP2の潤滑性能を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図26において、先ず、状態判定部96の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、車両10がエンジン12で走行中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部96の機能に対応するS20において、運転者によるシフトレバー56の操作によってDポジションが選択されているか否かが判定される。このS20の判断が肯定される場合は油量変更部98の機能に対応するS30において、例えば図23に示すような前進走行モード時における潤滑圧マップが用いられて、Dポジション用の潤滑圧Plubが設定される。前進走行モード時では、負荷圏に対して潤滑油が届き易い位置に第3潤滑油路88が形成されているので、比較的低い潤滑圧Plubが設定される。よって、燃費に有利である。上記S20の判断が否定される場合は状態判定部96の機能に対応するS40において、運転者によるシフトレバー56の操作によってRポジションが選択されているか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合は状態判定部96の機能に対応するS50において、U/DHVモード逆転入力(後進)が選択されているか否かが判定される。このS50の判断が肯定される場合は油量変更部98の機能に対応するS60において、例えば図25に示すようなU/DHVモード逆転入力(後進)時における潤滑圧マップが用いられて、Rポジションでエンジン逆転入力モード用の潤滑圧Plubが設定される。U/DHVモード逆転入力(後進)時では、第2ピニオンギヤP2等が潤滑され易いので、HV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時程、高い潤滑圧Plubが設定される必要はない。上記S50の判断が否定される場合は油量変更部98の機能に対応するS70において、例えば図24に示すようなHV走行モードでのエンジン正転入力での後進走行時における潤滑圧マップが用いられて、Rポジションでエンジン正転入力モード用の潤滑圧Plubが設定される。エンジン正転入力での後進走行時では、第2ピニオンギヤP2等が潤滑され難いので、比較的高い潤滑圧Plubが設定されて潤滑量が増加される。上記S40の判断が否定される場合は油量変更部98の機能に対応するS80において、その他、潤滑圧Plubが設定される。
上述のように、本実施例によれば、ピニオンシャフトPSに設けられた、第2ピニオンギヤP2に対して潤滑油を吐出する第3潤滑油路88は、前進走行モードでの前進走行時に、負荷圏に対して第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側となるように位置させられているので、前進走行モードでの前進走行時には第3潤滑油路88から吐出された潤滑油が負荷圏全体に届き易くされる。これにより、前進走行モード時は、油圧制御回路60から供給される潤滑油量を低減することが可能となり、燃費に有利である。又、負荷圏に対して第3潤滑油路88が第2ピニオンギヤP2の自転方向下流側に位置させられる第1後進走行モード(U/DHVモード正転入力(後進)、O/DHVモード正転入力(後進))時には、前進走行モード時と同様に負荷圏に対して第3潤滑油路88が第2ピニオンギヤP2の自転方向上流側に位置させられる第2後進走行モード(U/DHVモード逆転入力(後進))時と比較して、油圧制御回路60から供給される潤滑油量が増加させられるので、潤滑に不利な第1後進走行モード時であっても第3潤滑油路88から吐出された潤滑油が負荷圏全体に届き易くされる。よって、前進走行モードでの潤滑に適するように第3潤滑油路88を設けた場合であっても、第2ピニオンギヤP2の潤滑性能を向上することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、第1係合装置として、第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とを選択的に連結するクラッチCL1を例示したが、この態様に限らない。例えば、第1係合装置は、第2回転要素RE2と第3回転要素RE3とを選択的に連結するクラッチでも良いし、第1回転要素RE1と第3回転要素RE3とを選択的に連結するクラッチでも良い。要は、第1係合装置は、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3のうちの何れか2つの回転要素を連結するクラッチであれば良い。
また、前述の実施例では、第1差動機構38及び第2差動機構40の各々における各回転要素RE1−RE6の回転速度を相対的に表すことができる共線図(図4−図16参照)において、縦線Y1は第1回転機MG1が連結された第4回転要素RE4の回転速度を、縦線Y2はエンジン12が連結された第1回転要素RE1の回転速度を、縦線Y3はブレーキBR1を介してケース18に選択的に連結される第2回転要素RE2の回転速度、及び出力軸24に連結された第5回転要素RE5の回転速度を、縦線Y4は相互に連結された、第3回転要素RE3及び第6回転要素RE6の回転速度をそれぞれ示していたが、この態様に限らない。
例えば、クラッチCL1を係合した状態でU/DHVモードが成立させられ、又、クラッチCLcを係合した状態でO/DHVモードが成立させられることに替えて、クラッチCLcを係合した状態でU/DHVモードが成立させられ、又、クラッチCL1を係合した状態でO/DHVモードが成立させられるように、第1差動機構及び第2差動機構が構成されていても良い。
この場合には、第1差動機構及び第2差動機構の各々における各回転要素RE1−RE6の回転速度を相対的に表すことができる共線図において、縦線Y1は第1回転機MG1が連結された第4回転要素RE4の回転速度を、縦線Y2は相互に連結された、第3回転要素RE3及び第6回転要素RE6の回転速度を、縦線Y3はブレーキBR1を介してケース18に選択的に連結される第2回転要素RE2の回転速度、及び出力軸24に連結された第5回転要素RE5の回転速度を、縦線Y4はエンジン12が連結された第1回転要素RE1の回転速度をそれぞれ示す。この構成でも、クラッチCLcは、第2回転要素RE2と第5回転要素RE5とを選択的に連結する第3係合装置である。
また、前述の実施例では、第1差動機構38はダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、第2差動機構40はシングルピニオン型の遊星歯車機構であったが、この態様に限らない。例えば、シングルピニオン型の遊星歯車機構で第1差動機構が構成されていても良い。又は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構で第2差動機構が構成されていても良い。従って、第1差動機構における第1サンギヤS1、第1キャリアC1、及び第1リングギヤR1と、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3との対応関係、及び、第2差動機構における第2サンギヤS2、第2キャリアC2、及び第2リングギヤR2と、第4回転要素RE4、第5回転要素RE5、及び第6回転要素RE6との対応関係は、前述の実施例における第1差動機構38及び第2差動機構40で示した対応関係に限らないことは言うまでもないことである。
また、前述の実施例では、クラッチCL1、ブレーキBR1、及びクラッチCLcは、湿式の油圧式摩擦係合装置であったが、電気動力によって作動状態が切り替えられる係合装置であっても良い。
また、前述の実施例では、車両10は、第2動力伝達部22が入力軸36と同軸心に配置されるような連結関係のギヤトレーンであったが、例えば第2動力伝達部22が入力軸36の軸心とは別の軸心上に配置されるような連結関係のギヤトレーンなどであっても良い。又、FR方式の車両10に好適に用いられる動力伝達装置14を用いて発明を説明したが、本発明は、例えばFF方式、RR方式など他の方式の車両に用いられる動力伝達装置においても適宜適用することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。