以下、熱伝導部材の実施形態を図面に基づいて説明する。初めに、熱伝導部材の技術的な概念について説明する。熱伝導部材は、後述する基材の表面に伝熱材を配設することによって構成されている。図1は、熱伝導部材10が配設される基材5の一例を示すケース5Aの斜視図である。ケース5Aの下方には、発熱部材1が配置されており、ケース5Aの下方よりケース5Aに熱が伝搬する。ケース5Aの表面(外側面51及び内側面52)には、放熱部材2が設置されている。また、ケース5Aの内側には、発熱部材1よりも発熱量が少ない被保護部材3が収納されている。この被保護部材3は、熱保護を要する部材であり、発熱部材1からの熱が被保護部材3に伝達されることが抑制されると共に、被保護部材3が発生する熱を適切に逃がすことが求められる。
ケース5Aは、樹脂製である。基材5となる樹脂の表面に伝熱材が配設されて熱伝導部材10が形成されている。好ましくは、伝熱材は、メッキによってケース5Aに配設されている。発熱部材1、放熱部材2、被保護部材3に接触する接触部、並びに、これらに接続される伝熱経路20が伝熱材によってケース5Aの表面(外側面51及び内側面52)に形成されている。
図2は、熱伝導部材10における熱回路の一例を模式的に示している。熱伝導部材10には、接触部として、発熱部材1に接する第1接触部11と、放熱部材2に接する第2接触部12と、被保護部材3に接する第3接触部13とが形成されている。また、伝熱経路20として、第3接触部13を迂回して第1接触部11と第2接触部12とを接続する第1伝熱経路21と、第3接触部13と第2接触部12とを接続する第2伝熱経路22とが形成されている。発熱部材1から伝わる熱は、第1伝熱経路21及び第2接触部12を通って、良好に放熱部材2へと導かれるので、発熱部材1の熱が被保護部材3に与える影響を低減することができる。また、被保護部材3が発生する熱は、第2伝熱経路22及び第2接触部12を通って放熱部材2へと導かれるので被保護部材3が発生する熱も適切に逃がすことができる。
図3は、熱伝導部材10における熱回路の他の例を模式的に示している。図2に例示した熱経路に対して、さらに、伝熱経路20として、第1接触部11及び第3接触部13に接続されることなく、第2接触部12に接続され、第3接触部13を囲うように配設される第3伝熱経路23が設けられている。被保護部材3を囲う第3伝熱経路23は、発熱部材1から被保護部材3の方向へ伝わる熱を受け止める熱シールドして機能すると共に、受け止めた熱を放熱部材2へと導く。これによって、発熱部材1からの熱が被保護部材3に与える影響をさらに低減することができる。
図4及び図5は、図3の熱回路に対応する接触部(11,12,13)及び伝熱経路20の一例を示している。図4は、ケース5Aの外側面51の接触部と伝熱経路の一例をケース5Aの展開図上で示しており、図5は、ケース5Aの内側面52の接触部(11,12,13)と伝熱経路20の一例をケース5Aの展開図上で示している。図5に示すように、ケース5Aの内側面52には、発熱部材1に接触する第1接触部11と、放熱部材2に接触する第2接触部12と、被保護部材3に接触する第3接触部13とが形成されている。また、ケース5Aの内側面52には、これらの接触部をつなぐ第1伝熱経路21と、第2伝熱経路22と、第3伝熱経路23とが形成されている。尚、第1伝熱経路21は複数の経路から形成され、それぞれ所定間隔離れて形成されている。また、第2伝熱経路22も同じく、複数の経路から形成され、それぞれ所定間隔離れて形成されている。
図5に示すように、第1伝熱経路21は、第3接触部13を迂回して第1接触部11と第2接触部12とを接続している。また、第2伝熱経路22は、第3接触部13と第2接触部12とを接続している。また、第3伝熱経路23は、第1接触部11及び第3接触部13の何れにも接続されることなく、第2接触部12に接続されると共に、第3接触部13を囲うように配設されている。図4に示すように、ケース5Aの外側面51には、放熱部材2に接触する第2接触部12と、第2接触部12に接続される第2伝熱経路22が形成されている。第2伝熱経路22は、裏面側の内側面52に設けられた第1接触部11から伝わった発熱部材1の熱を、第2接触部12を介して放熱部材2に伝達する。
以上、熱伝導部材10の技術的な概念について説明した。1つの態様として、基材5は、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路30(図7参照)が設置されるインバータケース50(図8、図9等参照)とすることができる。また、発熱部材1は、車輪Wの駆動力源と車輪Wとの動力伝達経路に備えられた変速装置TM、及び、駆動力源の1つとしての回転電機MGを含む車両用駆動伝達装置100とすることができる(図6、図8等参照)。この場合、被保護部材3は、1つの態様としてインバータ回路30の直流電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑する直流リンクコンデンサC(平滑コンデンサ)とすることができる(図7、図9等参照)。以下、熱伝導部材10が、車両用駆動伝達装置100及びインバータケース50を含む車両用駆動装置200(図8参照)に適用される形態を例として具体的な態様を説明する。
本実施形態では、図6に示すように、車輪Wの駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えた車両(ハイブリッド車両)における車両用駆動伝達装置100(ハイブリッド車両用駆動装置)を例として説明する。車両用駆動伝達装置100は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
内燃機関Eは、ガソリンや軽油、エタノール、天然ガスなどの炭化水素系の燃料や水素などの爆発燃焼により動力を出力する。回転電機MGは、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する電気機器であり、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機MGは、図7を参照して後述するように、高圧直流電源BHから電力の供給を受けて力行し、又は、内燃機関Eのトルクや車両の慣性力により発電した電力を高圧直流電源BHに供給する(回生する)。共に車輪Wの駆動力源となり得る内燃機関Eと回転電機MGとは、駆動力源連結装置としてのクラッチCLを介して駆動連結されている。
尚、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指す。具体的には、「駆動連結」とは、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、さらに変速装置TM、カウンタギヤ機構CG、差動歯車装置DFを備えている。即ち、図6に示すように、車両用駆動伝達装置100には、内燃機関Eと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に(即ち、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路に)、内燃機関Eの側から順に、クラッチCL、回転電機MG、変速装置TM、カウンタギヤ機構CG、差動歯車装置DF(出力用差動歯車装置)が設けられている。本実施形態では、クラッチCLから差動歯車装置DFまでの装置が、後述する駆動装置ケース102(図8参照)内に収容されている。
図6に示すように、入力軸Iは、回転電機MGと共に車輪Wの駆動力源として機能する内燃機関Eに駆動連結される。例えば、内燃機関Eの出力軸(クランクシャフト等)に、入力軸Iが駆動連結される。内燃機関Eの出力軸と入力軸Iとは、ダンパ等を介して駆動連結されても良い。駆動力源連結装置としてのクラッチCLは、入力軸I(内燃機関E)と回転電機MGとを選択的に駆動連結する。即ち、クラッチCLは、2つの駆動力源、内燃機関Eと回転電機MGとを駆動連結したり、切り離したりする。例えば、クラッチCLは、油圧駆動式の摩擦係合装置や、電磁駆動式の摩擦係合装置、噛み合い式の係合装置等によって構成される。また、クラッチCLは、例えばトルクコンバータのロックアップクラッチであってもよい。
回転電機MGは、入力軸Iと同軸に配置されている。回転電機MGは、駆動装置ケース102に固定されたステータと、当該ステータの径方向内側に回転可能に支持されたロータとを有する。ステータは、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイルとを含み、ロータは、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石を含む。回転電機MGのロータは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速装置TMの入力軸(変速入力軸)でもある。
変速装置TMは、入力軸I及び回転電機MGと同軸に配置されている。変速装置TMは、複数の変速段を形成するために、遊星歯車機構等の歯車機構及び複数の係合装置(クラッチやブレーキ等)を備えた有段変速機構を有するものとして構成することができる。或いは、変速装置TMは、2つのプーリー(滑車)にベルトやチェーンを通し、プーリーの径を変化させることで連続的な変速を可能にする変速機構(無段変速機構(CVT:Continuously Variable Transmission))を有するものでもよい。また、変速装置TMは、変速比が固定されたギヤ機構であってもよい。即ち、変速装置TMは、入力軸の回転を変速して出力軸に伝達すると共に、変速比が可変の場合には、その変速比が変更可能に構成された変速機構を有していれば、その方式はどのようなものでもよい。尚、変速比は、変速装置TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力軸の回転速度に対する入力軸の回転速度の比(=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)である。変速装置TMは、中間軸Mに入力される回転及びトルクを、各時点における変速比に応じて変速するとともにトルク変換して、当該変速装置TMの出力部材(変速出力部材)である変速出力ギヤGoに伝達する。
変速出力ギヤGoは、カウンタギヤ機構CGに駆動連結されている。カウンタギヤ機構CGは、入力軸I等と回転軸心が平行状であって別軸に配置されている。尚、「平行状」とは、平行な状態、又は実質的に平行とみなせる状態(例えば5°以下の角度で並行する状態)を意味する。例えば、カウンタギヤ機構CGは、共通の軸部材にそれぞれ形成された2つのギヤを有する。一方のギヤは、変速装置TMの変速出力ギヤGoに噛み合い、他方のギヤは、差動歯車装置DFの差動入力ギヤGiに噛み合っている。
差動歯車装置DFは、入力軸I等及びカウンタギヤ機構CGと回転軸心が平行状であって別軸に配置されている。差動歯車装置DFは、出力部材としての出力軸Oを介して車輪Wに駆動連結されている。差動歯車装置DFは、互いに噛合する複数の傘歯車を含んで構成され、差動入力ギヤGiに入力される回転及びトルクを、左右2つの出力軸O(即ち、左右2つの車輪W)に分配して伝達する。これにより、車両用駆動伝達装置100は、内燃機関E及び回転電機MGの少なくとも一方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
複数相の交流(ここでは3相交流)により動作する回転電機MGは、図7に示すように、インバータ回路30を介して高圧直流電源BH(バッテリやキャパシタ等)に電気的に接続されている。高圧直流電源BHの電源電圧は、例えば200〜400[V]である。高圧直流電源BHは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどである。高圧直流電源BHは、インバータ回路30を介して回転電機MGに電力を供給可能であると共に、回転電機MGが発電して得られた電力を蓄電可能である。インバータ回路30と高圧直流電源BHとの間には、インバータ回路30の直流側の正負両極間電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑化する直流リンクコンデンサC(平滑コンデンサ)が備えられている。直流リンクコンデンサCは、回転電機MGの消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧Vdc)を安定化させる。
直流電力と交流電力との間で電力を変換するインバータ回路30は、直流電力を複数相(ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機MGに供給すると共に、回転電機MGが発電した交流電力を直流電力に変換して高圧直流電源BHに供給する。インバータ回路30と回転電機MGとは、交流端子台70を介して接続されている。インバータ回路30は、複数のスイッチング素子31を有して構成される。スイッチング素子31には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC−MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC−SIT(SiC - Static Induction Transistor)などのパワー半導体素子を適用すると好適である。図7に示すように、本実施形態では、スイッチング素子31としてIGBTが用いられる。
インバータ回路30は、よく知られているように複数相のそれぞれに対応するアームを有するブリッジ回路により構成される。つまり、図7に示すように、インバータ回路30の直流正極側と直流負極側との間に2つのスイッチング素子31が直列に接続されて1つのアームが構成される。3相交流の場合には、この直列回路(1つのアーム)が3回線(3相)並列接続される。つまり、回転電機MGのU相、V相、W相に対応するステータコイルのそれぞれに一組の直列回路(アーム)が対応したブリッジ回路が構成される。尚、各スイッチング素子31には、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列にフリーホイールダイオードが備えられている。本実施形態では、スイッチング素子31及びフリーホイールダイオードを有して構成される3相アームのインバータ回路30が、IPM(Intelligent Power Module)32(図9参照)としてモジュール化されている。
インバータ回路30は、インバータ制御装置80(CNTL)により制御される。インバータ制御装置80は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。本実施形態では、インバータ制御装置80は、制御基板81(図9参照)上に構成され、制御基板81は、インバータ回路30(IPM32)と共にインバータケース50に設置されている(図9参照)。インバータ制御装置80は、上述した高圧直流電源BHよりも遙かに低圧の、例えば12〜24[V]程度の電源電圧の低圧直流電源BLから電力を供給される(図7参照)。
例えば、インバータ制御装置80は、車両制御ユニットや車両ECU(Electronic Control Unit)90(VHL-ECU)等の上位の制御装置からCAN(Controller Area Network)などを介して要求信号として提供される回転電機MGの目標トルクに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路30を介して回転電機MGを制御する。インバータ制御装置80は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。電流フィードバック制御については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
尚、回転電機MGの各相のステータコイルを流れる実電流は電流センサ39により検出され、インバータ制御装置80はその検出結果を取得する。また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置や回転速度は、例えばレゾルバなどの回転センサ38により検出され、インバータ制御装置80はその検出結果を取得する。
図8は、車両用駆動伝達装置100の部分的な分解斜視図である。上述したように、車両用駆動伝達装置100は、内燃機関Eと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達装置、具体的には、クラッチCL、回転電機MG、変速装置TM、カウンタギヤ機構CG、差動歯車装置DFが駆動装置ケース102内に収容されて構成されている。駆動装置ケース102の上部には、内部に直流リンクコンデンサCを収納したインバータケース50が設置される。詳細は図9の断面図を参照して後述するが、インバータケース50の上には、インバータ回路30を構成するIPM32及びインバータ制御装置80を構成する制御基板81等が設置され、IPM32及び制御基板81を内包するように、インバータケース50にインバータカバー60が設置される。
図8のIX-IX断面図である図9はインバータケース50の断面を模式的に示している。インバータケース50は図9に示すように、断面が逆U字状に形成されており、開口側に形成されたフランジ部が発熱部材1としての車両用駆動伝達装置100(駆動装置ケース102)に接触する第1接触部11となる。インバータケース50の内部には、直流リンクコンデンサCと、回転電機MGの各ステータコイルに接続されている交流端子台70とが配置されている。上述したように、インバータケース50の天面には、インバータ回路30を構成するIPM32が設置されている。IPM32の上には、大電流で動作するIPM32から放射される高エネルギーのスイッチングノイズを遮蔽するためのシールドプレート83を介して、インバータ制御装置80が形成された制御基板81が設置されている。
直流リンクコンデンサCは、インバータ回路30の直流側の電圧である直流リンク電圧Vdcを平滑するので、直流リンクコンデンサCとインバータ回路30(IPM32)とは、直流バスバー72で接続されている。また、交流端子台70とインバータ回路30(IPM32)とは、交流バスバー71で接続されている。図9に示すように、直流リンクコンデンサCとIPM32とは、インバータケース50を挟んで配置されており、交流端子台70とIPM32とも、同様にインバータケース50を挟んで配置されている。このため、インバータケース50には、これらのバスバー(71,72)を通過させるための開口部9が形成されている。図9に示すように、交流バスバー71は、第1開口部91を通って、IPM32と交流端子台70とを接続している。直流バスバー72は、第2開口部92を通って、IPM32と直流リンクコンデンサCとを接続している。
尚、回転電機MGの近傍には図7を参照して上述したように、レゾルバなどの回転センサ38が設置されている。従って、回転センサ38と制御基板81とを接続するための配線75も、開口部9(本実施形態では第2開口部92)を通ってインバータケース50の内部のコネクタ76に接続されている。同様に、交流バスバー71を流れる電流は、電流センサ39により検出されて、検出結果は、インバータ制御装置80に提供される。電流センサ39と制御基板81とを接続するための不図示の配線も、開口部9(好適には交流バスバー71が通る第1開口部91)を通って配置されている。
断面逆U字状のインバータケース50の底部(天面)には、放熱部材2が備えられている。本実施形態では、液体冷媒を用いたヒートシンク4によって放熱部材2が構成されている。インバータケース50には、ヒートシンク4に対して液体冷媒を給排する冷媒給排口7が設けられている。例えば、符号7aを液体冷媒の供給口、符号7bを液体冷媒の排出口とすることができるが、逆であってもよい。
図4及び図5を参照して上述したように、熱伝導部材10は、基材5としてのインバータケース50の表面に伝熱材により接触部(11,12,13)と伝熱経路20とを形成することによって構成される。但し、インバータケース50は、上述したように、バスバーや配線を通すための開口部9を有する。このため、伝熱経路20は、開口部9を迂回して配設される。以下、図10及び図11も参照して説明する。
図10は、図4と同様にインバータケース50の外側面51の接触部(11,12,13)と伝熱経路20の一例をインバータケース50の展開図上で示しており、図11は、図5と同様にインバータケース50の内側面52の接触部(11,12,13)と伝熱経路20の一例をインバータケース50の展開図上で示している。図11に示すように、インバータケース50の内側面52には、車両用駆動伝達装置100(発熱部材1)に接触する第1接触部11と、ヒートシンク4(放熱部材2)に接触する第2接触部12と、直流リンクコンデンサC(被保護部材3)に接触する第3接触部13とが形成されている。また、インバータケース50の内側面52には、これらの接触部をつなぐ第1伝熱経路21と、第2伝熱経路22と、第3伝熱経路23とが形成されている。図10に示すように、インバータケース50の外側面51には、ヒートシンク4(放熱部材2)に接触する第2接触部12と、第2接触部12に接続される第1伝熱経路21が形成されている。
図11に示すように、第1伝熱経路21は、第3接触部13を迂回して第1接触部11と第2接触部12とを接続している。また、第1伝熱経路21は、開口部9を迂回して配設されている。第2伝熱経路22は、第3接触部13と第2接触部12とを接続している。本実施形態では、第3接触部13と第2接触部12との離間距離が短く、第3接触部13と第2接触部12との間に開口部9が形成されていない。従って、本実施形態では、第2伝熱経路22は、開口部9を迂回することなく配設されている。しかし、第3接触部13と第2接触部12との間に開口部9が存在する場合には、第2伝熱経路22も、開口部9を迂回して配設されると好適である。
図5と同様に、図11に示す例においても、第3伝熱経路23は、第1接触部11及び第3接触部13の何れにも接続されることなく、第2接触部12に接続されると共に、第3接触部13を囲うように配設されている。第3伝熱経路23は、発熱部材1から伝搬する熱が被保護部材3に達することを抑制するための熱シールド(ガード)として設けられる。開口部9に存在する空気は、伝熱材に比べて熱伝導率が低いため、そのまま熱シールドとして機能させてもよい。従って、第3伝熱経路23は、開口部9を迂回することなく、例えば開口部9によって遮断される状態で形成されてもよい。当然ながら、第3伝熱経路23で発熱部材1から伝搬する熱を受止めて放熱部材2へ導くことを重視する場合には、開口部9を迂回して第3伝熱経路23が形成されてもよい。
図4と同様に、図10に示す例においても、インバータケース50の外側面51には、ヒートシンク4(放熱部材2)に接触する第2接触部12と、第2接触部12に接続される第2伝熱経路22が形成されている。図11に示した内側面52の伝熱経路20と同様に、第1伝熱経路21は、開口部9を迂回して配設されている。
以上、インバータ回路30を設置するインバータケース50を基材5とし、発熱部材1が車両用駆動伝達装置100であり、放熱部材2がヒートシンク4であり、被保護部材3が直流リンクコンデンサCであり、インバータケース50の表面に伝熱材により接触部(11,12,13)及び伝熱経路20を形成して熱伝導部材10を構成する形態を例示した。しかし、冒頭に説明したように、熱伝導部材10の技術的な概念は、発熱部材1、放熱部材2、被保護部材3が本例とは異なる部材であっても適用することができる。例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末において、発熱部材1をマイクロプロセッサ、放熱部材2をヒートシンクや放熱ファン、被保護部材3をメモリカードや液晶表示装置などとし、筐体を基材5として、熱伝導部材10が構成されてもよい。
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した熱伝導部材(10)の概要について簡単に説明する。
少なくとも発熱部材(1)と放熱部材(2)との間で熱を伝導する熱伝導部材(10)は、1つの態様として、前記発熱部材(1)に接する第1接触部(11)と、前記放熱部材(2)に接する第2接触部(12)と、熱保護を要し、前記発熱部材(1)よりも発熱量が少ない被保護部材(3)に接する第3接触部(13)と、前記放熱部材(2)へ熱を伝導する伝熱経路(20)として、前記第3接触部(13)を迂回して前記第1接触部(11)と前記第2接触部(12)とを接続する第1伝熱経路(21)と、前記伝熱経路(20)として、前記第3接触部(13)と前記第2接触部(12)と、を接続する第2伝熱経路(22)と、を備え、前記第1接触部(11)、前記第2接触部(12)、前記第3接触部(13)、及び前記伝熱経路(20)が、基材(5)の表面に配設された、前記基材(5)よりも高い熱伝導率を有する伝熱材により形成され、前記基材(5)は、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路(30)を設置するインバータケース(50)であり、前記被保護部材(3)は、前記インバータ回路(30)の直流電圧(Vdc)を平滑する平滑コンデンサ(C)である。
この構成によれば、発熱部材(1)が発する熱を、第1接触部(11)、第1伝熱経路(21)、第2接触部(12)を介して放熱部材(2)に伝達することができる。また、第1伝熱経路(21)は、被保護部材(3)に接する第3接触部(13)を迂回しているため、発熱部材(1)が発する熱が被保護部材(3)に伝搬することが抑制される。また、被保護部材(3)が発する熱は、第3接触部(13)、第2伝熱経路(22)、第2接触部(12)を介して放熱部材(2)に伝達され、被保護部材(3)が適切に冷却される。このように、本構成によれば、発熱量が大きい部材の熱が耐熱性の低い部材に伝わることを抑制すると共に、これらの部材が発生する熱を適切に放熱領域に導いて熱を逃がすことができる。
また、第1接触部(11)、第2接触部(12)、第3接触部(13)、及び伝熱経路(20)が、基材(5)の表面に配設された、基材(5)よりも高い熱伝導率を有する伝熱材により形成されているので、基材(5)が熱伝導率の低い材質であっても、基材(5)の表面に、基材(5)よりも高い熱伝導率を有する伝熱材を配設することによって、それぞれの接触部(11,12,13)や伝熱経路(20)を適切に設けることができる。また、基材(5)と伝熱材とを簡素に一体化して熱伝動部材(10)を形成することができる。
また、インバータ回路(30)に設置される平滑コンデンサ(C)は、多くの場合、電解コンデンサやフィルムコンデンサが用いられ、セラミックコンデンサなどよりも耐熱性が低い。従って、平滑コンデンサ(C)が他の発熱部品(1)によって加熱されることは好ましくない。また、平滑コンデンサ(C)自身も、直流電圧(Vdc)の平滑の際に流れる電流及び内部抵抗によって発熱するため、冷却されることが好ましい。従って、平滑コンデンサ(C)は、被保護部材(3)として適切に保護されることが好ましい。
ここで、前記伝熱経路(20)として、前記第1接触部(11)及び前記第3接触部(13)に接続されることなく、前記第2接触部(12)に接続され、前記第3接触部(13)を囲うように配設される第3伝熱経路(23)を備えると好適である。
第3接触部(13)を囲う第3伝熱経路(23)は、発熱部材(1)からの熱が伝搬してきても、第3接触部(13)を介して被保護部材(3)に達しないように当該熱を受け止める熱シールドとして機能する。さらに、第3伝熱経路(23)は第2接触部(12)を介して放熱部材(2)に接続されているため、受け止めた熱を適切に放熱することができ、被保護部材(3)へ輻射されることも抑制される。
ここで、前記第1接触部(11)、前記第2接触部(12)、前記第3接触部(13)、及び前記伝熱経路(20)が、基材(5)の表面に配設された、前記基材(5)よりも高い熱伝導率を有する伝熱材により形成されていると好適である。つまり、前記第1接触部(11)、前記第2接触部(12)、前記第3接触部(13)、及び前記伝熱経路(20)は、基材(5)の表面に配設された伝熱材料により形成され、当該伝熱材は、前記基材(5)よりも高い熱伝導率を有する材料であると好適である。
この構成によれば、基材(5)が熱伝導率の低い材質であっても、基材(5)の表面に、基材(5)よりも高い熱伝導率を有する伝熱材を配設することによって、それぞれの接触部(11,12,13)や伝熱経路(20)を適切に設けることができる。また、基材(5)と伝熱材とを簡素に一体化して熱伝動部材(10)を形成することができる。
尚、伝熱経路(20)により適切に熱を誘導する観点からは、伝熱材に比べて基材(5)の熱抵抗が高いことが好ましい。換言すれば、伝熱材は、基材(5)よりも熱伝導率の高い材料であることが好ましい。
ここで、前記基材(5)が開口部(9)を有し、前記第1伝熱経路(21)及び前記第2伝熱経路(22)は、前記開口部(9)を迂回して配設されていると好適である。
開口部(9)に存在する空気は、多くの場合個体よりも熱伝導率が低い(熱抵抗が高い)従って、開口部(9)によって熱の伝導が妨げられるおそれがある。従って、放熱部材(2)へ熱を導く第1伝熱経路(21)及び第2伝熱経路(22)は、開口部(9)を迂回して連続するように配設されることが好ましい。
尚、上述したように第3伝熱経路(23)を有する場合、第3伝熱経路(23)は同様に迂回しても良いし、迂回しなくてもよい。発熱部材(1)から伝搬してきた熱を受け止め、この熱を積極的に放熱部材(2)を介して放熱させる場合には、開口部(9)を迂回すると好適である。一方、発熱部材(1)から伝搬してきた熱が第3接触部(13)を介して被保護部材(3)に達しないように遮蔽することで充分であれば、開口部(9)を迂回せず、開口部(9)に第3伝熱経路(23)の一端が接続されていてもよい。上述したように、開口部(9)に存在する空気は、熱伝導率が低い(熱抵抗が高い)ため、開口部(9)も熱シールドの一部として機能させることができる。
1つの態様として、前記基材(5)は、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路(30)を設置するインバータケース(50)であり、前記被保護部材(3)は、前記インバータ回路(30)の直流電圧(Vdc)を平滑する平滑コンデンサ(C)であると好適である。
インバータ回路(30)に設置される平滑コンデンサ(C)は、多くの場合、電解コンデンサやフィルムコンデンサが用いられ、セラミックコンデンサなどよりも耐熱性が低い。従って、平滑コンデンサ(C)が他の発熱部品(1)によって加熱されることは好ましくない。また、平滑コンデンサ(C)自身も、直流電圧(Vdc)の平滑の際に流れる電流及び内部抵抗によって発熱するため、冷却されることが好ましい。従って、平滑コンデンサ(C)は、被保護部材(3)として適切に保護されることが好ましい。
1つの態様として、前記発熱部材(1)は、車輪(W)の駆動力源と前記車輪(W)との動力伝達経路に備えられた変速装置(TM)、及び、前記駆動力源の1つとしての回転電機(MG)を含む車両用駆動伝達装置(100)であると好適である。
変速装置(TM)や回転電機(MG)、これらを流体圧や電気信号によって制御する駆動制御装置を含む車両の複数の駆動装置は、設置効率や動力伝達効率を考慮して、互いに近傍に位置するように配置されることが多い。回転電機(MG)は多くの場合、インバータ回路(30)を利用して駆動制御されるため、回転電機(MG)を含む車両用駆動伝達装置(100)とインバータ回路(30)とは近傍に配置される。インバータ回路(30)は、多くの場合、油脂や塵埃から電気回路を保護するために、インバータケース(50)などのケースに収容される。従って、インバータケース(50)と車両用駆動伝達装置(100)とはしばしば近接して配置される。車両用駆動伝達装置(100)に含まれる回転電機(MG)や変速装置(TM)は多くの熱を発生する発熱部材(1)であるが、当然ながらこれらにおいて発生する熱がインバータ回路(30)(例えば平滑コンデンサ(C))に影響を与えないことが好ましい。本構成によれば、発熱量が大きい車両用駆動伝達装置(100)の熱が耐熱性の低い平滑コンデンサ(C)に伝わることを抑制すると共に、車両用駆動伝達装置(100)及び平滑コンデンサ(C)が発生する熱を適切に放熱領域に導いて熱を逃がすことができる。