JP6829483B2 - 形質転換体およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、形質転換体、および当該形質転換体を用いたイソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの製造方法に関する。
イソプレノイド(テルペノイドとも呼ばれる)は、これまでに植物を含め、動物、微生物などの種々の生物から約40,000種が単離されており、自然界で最も多様な化合物群を形成している。イソプレノイドの中には、医薬品、農薬、機能性食品又は香料として用いられている化合物など産業上有用な化合物が多く含まれている。これらの化合物は、自然界に微量にしか蓄積しない化合物が多いことから、遺伝子組換えテクノロジーを利用した生産技術の開発が進められている。
こうした中、組換えDNA技術の進歩により、従来、真核宿主として利用できなかった微生物を用いて、目的の代謝物をより効率良く生産することが可能となりつつある。油性酵母もその一つであり、油性酵母は、バイオマスの20%以上もの量の脂質を、生産および蓄積する能力を持つ、一連の酵母の総称である。これらの酵母は、その脂質生産能の高さからイソプレノイド生合成経路の潜在活性が高いことが期待される。この油性酵母のイソプレノイド生合成経路をさらに強化することによってイソプレノイド化合物を高生産することが期待できる。
イソプレノイド化合物の生産においては、特にメバロン酸経路が重要な役割を担っている。メバロン酸経路を構成するヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子は、メバロン酸経路の律速酵素の一つであることが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)において報告されている。
ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子を利用したメバロン酸経路の改良は、従来型酵母である出芽酵母および分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)で研究が進められ、GAPDH、GAL1、PGK1、TDH3、TEF2、及びNMT1遺伝子のプロモーターの制御下で、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子を発現させることによって、メバロン酸経路の下流のイソプレノイド等の生合成を促進することが報告されている(非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3)。一方、非従来型酵母では、油性酵母の1種であるヤロビア・リポリティカ(Yarrowia lipolitica)およびトルラ酵母(Candida utilis)において、TEF遺伝子プロモーター、またはGAP遺伝子プロモーター制御下でヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子を発現させることにより、イソプレノイド類の生産性を上げることに成功しており、リコペンの生産量が、TEF遺伝子プロモーター制御下では4.2倍、GAP遺伝子プロモーター制御下では3.9倍増加することが報告されている(非特許文献4および非特許文献5)。以上説明してきたように、油性酵母で利用可能なプロモーターに関する情報は極めて少ないのが現状であった。
現在では、出芽酵母や分裂酵母など種々の酵母においてゲノム塩基配列が公開されており、油性酵母の1種であるリポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)のゲノム塩基配列についても、Joint Genome Institute(http://jgi.doe.gov/)によって公開されている。
K. Allen G. Donald et. al., Appl Environment Microbiol, 1997, Vol. 63(9) P.3341-3344 Chikara Ohto et. al., Appl Microbiol Biotechnol, 2009, Vol. 82, P.837-845 Bing Cheng et. al., Appl Biochem Biotechnol, 2010, Vol. 160, P. 523-531 Falk Matthaus et. al., Appl Enviroment Microbiol, 2014, Vol. P.1660-1669 Hiroshi shimada et. al., Appl Enviroment Microbiol, 1998, Vol. 64, P.2676-2680 Nikolai A. Shevchuk et. al., Nucleic Acids Research, 2004, Vol. 32(2) e19 Christopher H. Calvey et. al., Current Genetics, 2014, 60(3) P.223-230
真核宿主(例えば、油性酵母)によっては遺伝子発現を制御するプロモーターおよびターミネーターに関する情報が極めて不足しており、イソプレノイド生合成酵素をコードしている遺伝子を発現させるのに適した発現制御配列を準備する必要があった。
本発明の一態様は、外来性のイソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子を発現可能な形質転換体、および、当該形質転換体を用いたイソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、脂質生産培地で発現する、油性酵母の遺伝子を調べ、脂質生産培地で比較的高い発現を示した遺伝子群の発現制御配列を取得し、これら発現制御配列を用いてイソプレノイドの生産量を指標にイソプレノイド生合成酵素遺伝子の発現に適した発現制御配列を探索し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の(1)〜(9)に記載の発明を含む。
(1)真核宿主に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に以下の(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されていることを特徴とする、形質転換体:
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(2)上記ポリヌクレオチド構築物は、更に、上記イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の下流に以下の(e)〜(h)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする、(1)に記載の形質転換体:
(e)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(f)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドまたはその一部;
(g)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(h)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
(3)真核宿主に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に以下の(a´)〜(d´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されていることを特徴とする、形質転換体:
(a´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(4)上記ポリヌクレオチド構築物は、更に、上記イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の下流に以下の(e´)〜(h´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする、(3)に記載の形質転換体:
(e´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(f´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(g´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(h´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
(5)上記真核宿主が、油性酵母であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の形質転換体。
(6)上記油性酵母が、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)であることを特徴とする、(5)に記載の形質転換体。
(7)上記イソプレノイド生合成酵素は、メバロン酸経路酵素、カロテノイド生合成酵素、モノテルペン生合成酵素、セスキテルペン合成酵素、トリテルペン合成酵素、またはジテルペン合成酵素であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の形質転換体。
(8)上記メバロン酸経路酵素は、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG−CoA Reductase、HMGR)であることを特徴とする、(7)に記載の形質転換体。
(9)(1)〜(8)のいずれか1つに記載の形質転換体を培養する培養工程と、
培養後の培地および/又は当該形質転換体内より目的物質を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする、イソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの製造方法。
本発明の一態様によれば、油性酵母等の真核宿主を用いて効率的にイソプレノイド前駆体およびイソプレノイドを生産することができる、という効果を奏する。
本願の実施例における、リアルタイムPCRによる遺伝子発現量解析の結果を示す図である。 本願の実施例における、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(tHMGR)遺伝子発現ベクターの構築方法を示す図である。 本願の実施例における、リコペン生合成ベクター(pUC−lyc)の構築方法を示す図である。 本願の実施例における、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の発現調節株におけるリコペン生産量の比較結果を示す図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意図する。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」および「遺伝子」は、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、遺伝子は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、又は、RNAの形態(例えば、mRNA)であり得る。DNAおよびRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAおよび一本鎖RNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。また、遺伝子は、化学的に合成された遺伝子であってもよく、コードするタンパク質の発現が向上するように、コドンユーセージ(Codon usage)が変更された遺伝子であってもよい。同じアミノ酸をコードするコドン同士であれば置換することも可能である。
また、用語「タンパク質」は、「ペプチド」又は「ポリペプチド」と交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、塩基およびアミノ酸の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記又は3文字表記を使用する。
本明細書中において「イソプレノイド」とは、イソプレノイド生合成酵素の触媒活性により、基質としてゲラニル二リン酸(GDPおよびGPPとも称する)(GPPの各種異性体を含む)、ファルネシル二リン酸(FDPおよびFPPとも称する)(FPPの各種異性体を含む)、および/または、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGDPおよびGGPPとも称する)(GGPPの各種異性体を含む)から生成されるC(xは10、15、20、30、または、40であり、yは14〜54であり、yは0〜4である)の化学式を有する化合物を意図する。また、「イソプレノイド」とは、当該化合物に対して、炭素原子数の増加、炭素原子数の減少、または、酸化等の修飾を施した化合物、をも意図する。触媒活性によるイソプレノイドの環化、酸化および水酸化等の生体内の酵素反応、並びに付随する非酵素反応により、イソプレノイドにおいて脱水反応等が行われることがあるが、これらに限定されない。イソプレノイドは、非環、単環または多環の任意の形態をとり得るが、共通して、イソプレノイド基本骨格を有する。したがって、イソプレノイド基本骨格を有する任意の化合物は、本明細書におけるイソプレノイドの概念に包含される。
本明細書において「相同性(homology)」とは、類縁の塩基配列と同一の塩基配列を有する割合を意味している。また、「同一性(identity)」とは、比較塩基配列と同一の塩基配列を有する割合を意図している。
〔1.形質転換体〕
本発明の一実施形態に係る形質転換体は、真核宿主に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に、(動作可能、又は、機能可能に連結された)以下の(a)〜(d)または(a´)〜(d´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されていることを特徴とする。
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(a´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
本発明の一実施形態に係る形質転換体は、真核宿主に、特定の遺伝子と、ポリヌクレオチド構築物とが導入されている。
本明細書において「真核宿主」とは、真核生物に由来する宿主(例えば、真核細胞、または、真核生物)を意図する。なお、上記真核生物は、例えば、非ヒトである真核生物であってもよい。真核宿主としては、例えば、酵母などのアルコール発酵を行う微生物および耐酸性微生物等が挙げられる。真核宿主の中でも、油性酵母が好ましい。油性酵母とは、一般の酵母と比較し、脂質の生産能力および蓄積能力が高い酵母を意味する。真核宿主が油性酵母であれば、イソプレノイド生合成経路の潜在活性が高いため、好ましい。
「油性酵母」という用語は、油を産生し得る、すなわちそれらの乾燥細胞重量(「DCW」)の約20%を超えて脂質を蓄積し得る、酵母に分類される油性微生物を指す。油性酵母の例としては、ヤロビア(Yarrowia)属、カンジダ(Candida)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、およびリポマイセス(Lipomyces)属が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酵母がDCWの約20%を超えて脂質を蓄積する能力は、組換え遺伝子操作の試みを通じて得られた能力、または生物の天然能力を通じた能力であってもよい。
例えば、上記油性酵母としては、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、リポマイセス・メセブリウス(Lipomyces mesembrius)、リポマイセス・ドーレンジョンギ(Lipomyces doorenjongii)およびリポマイセス・コッキー(Lipomyces kockii)等のリポマイセス属酵母;ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ロドトルラ・オウランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)、ロドトルラ・バカラム(Rhodotorula bacarum)、ロドトルラ・アルメニアカ(Rhodotorula armeniaca)およびロドトルラ・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)等のロドトルラ属酵母;クリプトコッカス・カーバタス(Cryptococcus curvatus)およびクリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)等のクリプトコッカス属酵母;カンジダ・カーバタ(Candida curvata)といった一部のカンジダ属酵母;ヤロビア・リポリティカ(Yarrowia lipolitica);キサントフィロマイセス・デンドロハス(Xanthophyllomyces dendrorhous);アピオトリカム・カーバタム(Apiotrichum curvatum)等が挙げられる。中でも、油性酵母としては、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)が好ましい。
本発明の一実施形態に係る形質転換体は、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子が導入されている。
イソプレノイド生合成酵素としては、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を生合成する酵素、つまりイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を基質として触媒作用を有する酵素である限り、特に限定されないが、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、もしくは、カロテノイドを生合成する酵素、または、これらを基質とする酵素を挙げることができる。具体的には、上記酵素は、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、または、カロテノイドに、様々な官能基(例えば、−CO−、−OH、−O−、−COH、−COOH、−SH、−C=C−、−C=C=C−、−O−O−、−NH、または、−C≡C−)を導入する酵素であってもよい。更に具体的には、上記酵素は、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG−CoA Reductase、HMGR)、GGPP合成酵素、フィトエン合成酵素、フィトエンデサチュラーゼ、リコペンシクラーゼ、β−カロテンケト化酵素およびβ−カロテン水酸化酵素等のカロテノイド生合成酵素;メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、β−ミルセンおよびリナロール等のモノテルペン合成酵素;ベツリン酸合成酵素、ルペオール合成酵素、グリチルリチン合成酵素、スクアレン合成酵素、ウルソール酸合成酵素およびオレアノール酸合成酵素等のトリテルペン生合成酵素;ステビオサイド合成酵素およびタキサジエン合成酵素等のジテルペン生合成酵素;ファルネソール合成酵素、エレモール合成酵素、ゲルマクレンD合成酵素、β−エレメン合成酵素、β−カリオフィレン合成酵素、β−ユーデスモル合成酵素、α−ネオクロベン合成酵素、β−キュベベン合成酵素、セドレン合成酵素、アルテミシニン合成酵素、サントニン合成酵素およびファルネセン合成酵素等のセスキテルペン生合成酵素等が挙げられる。好ましくは、上記酵素は、メバロン酸経路酵素、カロテノイド生合成酵素、モノテルペン生合成酵素、セスキテルペン合成酵素、トリテルペン合成酵素、またはジテルペン合成酵素であり、さらに好ましくは、上記酵素は、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG−CoA還元酵素)である。イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子が、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素をコードする遺伝子であることにより、メバロン酸経路を活性化でき、イソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの生産量を増大させることができるため、好ましい。
本発明の一実施形態に係る形質転換体に導入されているポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(d)または(a´)〜(d´)からなる群より選択される。
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(a´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(b´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(c´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(d´)配列番号5に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
なお、本明細書中「ポリヌクレオチドまたは(あるいは)その一部」との記載は、プロモーター配列またはターミネーター配列(これらは遺伝子発現調節配列である)は、一部のコアとなる配列のみがあれば、プロモーター活性またはターミネーター活性を有する場合があるという知見を反映した記載である。すなわち、プロモーター配列またはターミネーター配列は、典型的な遺伝子配列である、タンパク質をコードする遺伝子配列(すなわち、構造遺伝子配列)が少なくともその大部分の配列を持たないと、機能するタンパク質を作れないという科学的常識とは、違った遺伝子配列として捉える必要がある。
上記(a)および(a´)のポリヌクレオチドについて具体的に説明する。
配列番号1は、ピルビン酸キナーゼ(Pyruvate kinase)(PYK)遺伝子のプロモーター配列であり、配列番号5は、ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)(PK)遺伝子のプロモーター配列である。
配列番号1および5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、プロモーター活性を有する。そのため、配列番号1または5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを真核宿主に導入することで、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素等のイソプレノイド生合成酵素をコードしている遺伝子の発現を活性化することができるため、好ましい。
上記「ピルビン酸キナーゼのプロモーター配列」の具体的な塩基配列は、配列番号1に限定されないし、上記「ホスホケトラーゼのプロモーター配列」の具体的な塩基配列は、配列番号5に限定されない。この場合、「ピルビン酸キナーゼのプロモーター配列」は、周知のあらゆるピルビン酸キナーゼのプロモーター配列(例えば、様々な生物における周知のピルビン酸キナーゼのプロモーター配列)であってもよい。また、「ホスホケトラーゼのプロモーター配列」は、周知のあらゆるホスホケトラーゼのプロモーター配列(例えば、様々な生物における周知のホスホケトラーゼのプロモーター配列)であってもよい。
本明細書中、「プロモーター活性を有するポリヌクレオチド」とは、任意の真核宿主において機能し、当該ポリヌクレオチドの下流に、任意のタンパク質をコードする塩基配列を導入した場合、当該塩基配列の転写が活性化されて、任意のmRNA、または、タンパク質の合成(すなわち、発現)が確認できることを意味する。タンパク質の発現を確認する手段としては、RT−PCR、または、ウエスタンブロット等の公知のmRNA、または、タンパク質検出方法が挙げられる。なお、下流とは、転写方向、すなわちセンス鎖における5’側から3’側に向かう方向において、より3’側の位置を意味する。
上記(b)および(b´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号1および5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列およびホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有する。
このようなポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドあるいはその一部をプローブとして、一般的なハイブリダイゼーション技術により得ることができる。
上記(b)および(b´)のポリヌクレオチドが、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであれば、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素等のイソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の発現を活性化することができるため、好ましい。
上記(b)および(b´)のポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなる遺伝子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR技術により合成することができる。かかるハイブリダイゼーションあるいはPCRによって、配列番号1もしくは5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列からなるポリヌクレオチドと相同性の高いポリヌクレオチドを単離することができる。
上記ポリヌクレオチドの単離は、特に限定されないが、好ましくは、ストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションによって行う。本明細書中、用語「ストリンジェントな条件」は、いわゆる塩基配列に特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成され、非特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成されない条件をいう。上記ストリンジェントな条件としては、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が37℃であるハイブリダイゼーション条件、あるいはこれと同様のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が好ましい。よりストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件によれば、より相同性の高いポリヌクレオチドを単離できるため好ましい。かかるハイブリダイゼーション条件としては、例えば、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が42℃のハイブリダイゼーション条件を挙げることができ、さらにストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件としては、50%ホルムアミド存在下で65℃のハイブリダイゼーション条件を挙げることができる。
上記単離されたポリヌクレオチドの、配列番号1もしくは5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列もしくはホスホケトラーゼのプロモーター配列との相同性は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。なお、遺伝子の塩基配列の相同性は、遺伝子解析プログラム、BLAST(http://blast.genome.ad.jp)又はFASTA(http://fasta.genome.ad.jp/SIT/FASTA.html)などによって決定することができる。
上記(c)および(c´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号1および5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列およびホスホケトラーゼのプロモーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有する。
上記(c)および(c´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号1および5のいずれかに示す塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列およびホスホケトラーゼのプロモーター配列を有する遺伝子と、機能的に同等である、つまりプロモーター活性を有する限り、その具体的な配列については限定されない。ここで置換、欠失、挿入および/または付加されてもよい塩基の数は、前記機能を失わせない限り、限定されてないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の導入法によって置換、欠失、挿入および/または付加できる程度の数をいい、50塩基以内であり、好ましくは40塩基以内であり、さらに好ましくは30塩基以内であり、さらに好ましくは20塩基以内であり、さらに好ましくは10塩基以内であり、さらに好ましくは5塩基以内であり、さらに好ましくは3塩基以内である。また、明細書中において「変異」とは、部位特異的突然変異誘発法等によって人為的に導入された変異を主に意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
上記(d)および(d´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号1および5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列およびホスホケトラーゼのプロモーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、プロモーター活性を有する。
上記(d)および(d´)のポリヌクレオチドと、配列番号1および5に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのプロモーター配列およびホスホケトラーゼのプロモーター配列との同一性は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。なお、遺伝子の塩基配列の同一性は、遺伝子解析プログラム、BLAST(http://blast.genome.ad.jp)又はFASTA(http://fasta.genome.ad.jp/SIT/FASTA.html)などによって決定することができる。
上記ポリヌクレオチド構築物は、更に、上記イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の下流に、(動作可能、又は、機能可能に連結された)以下の(e)〜(h)または(e´)〜(h´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
(e)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(f)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドまたはその一部;
(g)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(h)配列番号2に記載の塩基配列もしくはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
(e´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部;
(f´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドまたはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(g´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
(h´)配列番号6に記載の塩基配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドまたはその一部からなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
上記(e)および(e´)の遺伝子について具体的に説明する。
配列番号2は、ピルビン酸キナーゼ(Pyruvate kinase)(PYK)遺伝子のターミネーター配列であり、配列番号6は、ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)(PK)遺伝子のターミネーター配列である。
配列番号2または6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、ターミネーター活性を有する。そのため、配列番号2または6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを真核宿主に導入することで、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素等のイソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の発現を最適化することができるため、好ましい。
上記「ピルビン酸キナーゼのターミネーター配列」の具体的な塩基配列は、配列番号2に限定されないし、上記「ホスホケトラーゼのターミネーター配列」の具体的な塩基配列は、配列番号6に限定されない。この場合、「ピルビン酸キナーゼのターミネーター配列」は、周知のあらゆるピルビン酸キナーゼのターミネーター配列(例えば、様々な生物における周知のピルビン酸キナーゼのターミネーター配列)であってもよい。また、「ホスホケトラーゼのターミネーター配列」は、周知のあらゆるホスホケトラーゼのターミネーター配列(例えば、様々な生物における周知のホスホケトラーゼのターミネーター配列)であってもよい。
本明細書中「ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド」とは、任意の真核宿主において機能し、任意のタンパク質をコードする塩基配列の下流に当該ポリヌクレオチドを導入した場合、当該塩基配列の転写を終了させることを意味する。転写が終了していることを確認する手段としては、当該ポリヌクレオチドの下流にレポーター遺伝子を導入し、当該レポーター遺伝子が発現していないことが確認できればよい。
上記(f)および(f´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号2および6に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列およびホスホケトラーゼのターミネーター配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有する。
このようなポリヌクレオチドは、配列番号2または6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドあるいはその一部をプローブとして、一般的なハイブリダイゼーション技術により得ることができる。
上記(f)および(f´)の遺伝子が、ターミネーター活性を有する遺伝子であれば、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素等のイソプレノイド生合成酵素をコードしている遺伝子の発現を最適化することができるため、好ましい。
上記ポリヌクレオチドの単離は、特に限定されないが、好ましくは、ストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションによって行う。上記ストリンジェントな条件としては、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が37℃であるハイブリダイゼーション条件、あるいはこれと同様のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が好ましい。よりストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件によれば、より相同性の高いポリヌクレオチドを単離できるため好ましい。かかるハイブリダイゼーション条件としては、例えば、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が42℃のハイブリダイゼーション条件を挙げることができ、さらにストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件としては、50%ホルムアミド存在下で65℃のハイブリダイゼーション条件を挙げることができる。
上記単離されたポリヌクレオチドの、配列番号2もしくは6に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列との相同性は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
上記(g)および(g´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号2および6に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列およびホスホケトラーゼのターミネーター配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有する。
上記(g)および(g´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号2および6のいずれかに示す塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列およびホスホケトラーゼのターミネーター配列を有する遺伝子と機能的に同等である、つまりターミネーター活性を有する限り、その具体的な配列については限定されない。ここで置換、欠失、挿入および/または付加されてもよい塩基の数は、前記機能を失わせない限り、限定されないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の導入法によって置換、欠失、挿入および/または付加できる程度の数をいい、50塩基以内であり、好ましくは40塩基以内であり、さらに好ましくは30塩基以内であり、さらに好ましくは20塩基以内であり、さらに好ましくは10塩基以内であり、さらに好ましくは5塩基以内であり、さらに好ましくは3塩基以内である。また、明細書中において「変異」とは、部位特異的突然変異誘発法等によって人為的に導入された変異を主に意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
上記(h)および(h´)のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号2および6に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列およびホスホケトラーゼのターミネーター配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有する。
上記(h)および(h´)のポリヌクレオチドと、配列番号2もしくは6に記載の塩基配列、またはピルビン酸キナーゼのターミネーター配列もしくはホスホケトラーゼのターミネーター配列との同一性は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。なお、遺伝子の塩基配列の同一性は、遺伝子解析プログラム、BLAST(http://blast.genome.ad.jp)又はFASTA(http://fasta.genome.ad.jp/SIT/FASTA.html)などによって決定することができる。
プロモーター活性を有するポリヌクレオチドと、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドとの好ましい組み合わせは、それぞれ上記(a)〜(d)と(e)〜(h)との組み合わせ、または、(a´)〜(d´)と(e´)〜(h´)との組み合わせから選択される限り、特に限定されない。プロモーター活性を有するポリヌクレオチドが配列番号1に記載の塩基配列からなる場合は、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドは配列番号2に記載の塩基配列からなることが好ましい。また、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドが配列番号5に記載の塩基配列からなる場合は、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドは配列番号6に記載の塩基配列からなることが好ましい。
配列番号1、2、5および6に記載の塩基配列からなる各ポリヌクレオチドは、それぞれ、油性酵母の遺伝子の、プロモーター活性又は、ターミネーター活性を有するDNA断片として取得された。したがって、本発明の一実施形態に係る発現制御配列は、油性酵母、あるいはリポマイセス属酵母のこれらの遺伝子のプロモーター活性、又はターミネーター活性を有するDNA、あるいはかかるプロモーター配列、又はターミネーター配列に相同性を有し、本プロモーター活性、又は本ターミネーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。このようなポリヌクレオチドは、配列番号1、2、5および6のいずれかに記載の塩基配列の少なくとも一部からなるプローブを用いたハイブリダイゼーション技術や、該塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いたPCR技術を利用して、酵母から取得することができる。さらに、上述したストリンジェントな条件で配列番号1、2、5および6のいずれかに記載の塩基配列からなる各ポリヌクレオチドにハイブリダイズするDNAを選択することができる。なお、本発明の一実施形態に係るプロモーター配列又はターミネーター配列は、本プロモーター活性又は本ターミネーター活性を有する限りこのような各種形態のポリヌクレオチドの一部分であってもよい。本発明の一実施形態に係るプロモーター配列およびターミネーター配列は、ゲノムDNAであってもよく、また、化学的に合成されたDNAであってもよい。
本発明の一実施形態に係る形質転換体が導入されているポリヌクレオチド構築物は、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、遺伝子発現制御配列をコードしている特定のポリヌクレオチドとが、機能的に連結されていることが好ましい。
本明細書において「遺伝子発現制御配列(単に、発現制御配列とも言う)」とは、プロモーター活性又はターミネーター活性を有する配列を示す。また、本明細書において「機能的な連結」とは、連結したタンパク質をコードするDNAの発現を本発現制御配列の影響下あるいは支配下におくような結合をいう。
ポリヌクレオチド構築物の形態は、特に限定されず、プラスミド(DNA)、ウイルス(DNA)、ウイルス(RNA)、バクテリオファージ(DNA)、レトロトランスポゾン(DNA)および人工染色体(YAC、PAC、BACおよびMAC等)から、外来遺伝子の導入形態(染色体外あるいは染色体内)又は真核宿主の種類に応じて選択されるベクターである。つまり、本ポリヌクレオチド構築物は、遺伝子発現制御配列からなるDNAの他、これらのいずれかの形態のベクターとしてのDNA等を含んでいてもよい。本ポリヌクレオチド構築物は、好ましくは、プラスミドベクター又ウイルスベクターの形態を採る。プラスミドベクターとしては、例えば、原核細胞性ベクター、真核細胞性ベクター、動物細胞性ベクターおよび植物細胞性ベクター等の当該分野において周知であるベクターを使用することができる。本ポリヌクレオチド構築物は、真核宿主において、細胞質あるいは宿主染色体外において保持されていてもよいし、また、宿主染色体に組み込まれて保持されていてもよい。
上記ポリヌクレオチド構築物は、本プロモーター配列および本ターミネーター配列に対して機能的に結合された、所望のタンパク質をコードするDNA(以下、コードDNAともいう。)を含んでいてもよい。また、本プロモーター配列が機能的であれば、ターミネーター配列については、必ずしも必要ではない。コードDNAは、cDNAのみならず、転写されても翻訳されないDNA配列を含むものであってもよい。
上記ポリヌクレオチド構築物においては、相同組換えにより本プロモーター配列およびコードDNAを宿主染色体に組み込むための相同組換え用DNA配列を含んでいることが好ましい。このようなDNA配列を含んでいることにより、宿主染色体の所望の部位にこれらのDNA配列の組み込みを達成する他、所望の遺伝子の破壊を同時に達成することができる。相同組換え用DNA配列は、例えば、宿主染色体における、本DNA配列を導入しようとするターゲット部位あるいはその近傍のDNA配列と相同なDNA配列である。相同組換え用DNA配列は、ターゲット遺伝子あるいはその近傍のDNA配列の、少なくとも1箇所に相同である配列を有しており、好ましくは、ターゲット遺伝子あるいはその近傍の少なくとも2箇所にそれぞれ相同な配列を備えている。例えば、2個の相同組換え用DNA配列を、染色体上のターゲット部位の上流側のDNAと下流側のDNAとのそれぞれに相同なDNA配列とし、これらの相同組換え用DNA配列の間に本プロモーター配列とコードDNAとを連結することが好ましい。
上記ポリヌクレオチド構築物は、前記遺伝子が真核宿主に導入されたか否か、さらには真核宿主中で確実に発現しているか否かを確認するために、選択マーカーを含んでいることが好ましい。選択マーカーとしては、特に限定しないが、薬剤抵抗性遺伝子および栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を用いることができる。選択マーカー遺伝子としては、例えば、ナーセオスリシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性G418遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子等を使用することができる。
本ポリヌクレオチド構築物を適当な真核宿主に導入する方法は、特に限定されない。例えば、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿法、アグロバクテリウム法、PEG法又は直接マイクロインジェクション法等の各種の適切な手段のいずれかにより、上記ポリヌクレオチド構築物を適当な真核宿主に導入することができる。本ポリヌクレオチド構築物の導入後、そのポリヌクレオチド構築物を導入された形質転換体は、選択培地で培養されることが好ましい。
上記ポリヌクレオチド構築物を導入された形質転換体においては、ポリヌクレオチド構築物の構成成分である、プロモーターDNA、ターミネーターDNAおよびコードDNA等が染色体上あるいは染色体外因子(人工染色体を含む)上に存在することになる。上述のポリヌクレオチド構築物に、相同組換えを達成できる相同組換え用DNA構築物が導入されると、宿主染色体上の所望の位置に本プロモーターDNAおよび本ターミネーターDNAと該DNAに対して機能的に結合されたコードDNAを保持する形質転換体が得られる。また、相同組換え用DNAを保持しない構築物を導入した際には、宿主染色体上のランダムな位置に本プロモーターDNAおよび本ターミネーターDNAが該DNAに対して機能的に結合されたコードDNAを保持する形質転換体が得られる。
〔2.イソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの製造方法〕
本発明の一実施形態に係るイソプレノイド前駆体またはイソプレノイド(本明細書中、イソプレノイド化合物ともいう)の製造方法は、上記形質転換体を培養する培養工程と、培養後の培地および/又は当該形質転換体内より目的物質を回収する回収工程と、を含むことが好ましい。
イソプレノイド前駆体としては例えば、メバロン酸(MVA)、ホスホメバロン酸(PMVA)、ジホスホメバロン酸(DPMVA)、イソペンテル二リン酸(IPP)、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)およびゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)が挙げられる。
イソプレノイドとしては例えば、モノテルペン、ポリテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペンおよびカロテノイド等の各種イソプレノイドが挙げられる。
モノテルペンは特に限定されず、その一例としてメントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、β-ミルセン、およびリナロールを挙げることができる。
ポリテルペンは特に限定されず、その一例として、イソプレンゴムを挙げることができる。
セキステルペンは特に限定されず、その一例として、ファルネソール、エレモール、ゲルマクレンD、β-エレメン、β-カリオフィレン、β-ユーデスモル、α-ネオクロベン、β-キュベベン、セドレン、アルテミシニン、サントニン、およびファルネセンを挙げることができる。
ジテルペンは特に限定されず、その一例として、タキサン類(例えば、バッカチンIII、10デアセチルバッカチンIII、およびパクリタキセル)およびステビオシド類(例えば、ステビオサイド、レバウディオサイドA、およびレバウディオサイドC)を挙げることができる。
トリテルペンは特に限定されず、その一例として、スクアレン、ウルソール酸、グリチルリチン、β-アミリン、ルペオール、オレアノール酸およびジンセノシド類(例えば、20(R)−ジンセノシド Rb3、ジンセノシド Rb2、およびジンセノシド Rc)を挙げることができる。
カロテノイドは、特に限定されず、その一例として、カロテン類(例えば、αカロテン、βカロテン、γカロテン、δカロテン、リコペン、およびトルレン)並びにキサントフィル類(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、レチノール、レチナール、レチノイン酸およびビオラキサンチン)を挙げることができる。
イソプレノイドは、好ましくは、カロテノイドを示す。さらに好ましくは、カルテノイドは、リコペンである。
上記培養工程では、形質転換体を、固体培地を用いて培養(すなわち、固体培養)してもよいし、液体培地を用いて培養(すなわち、液体培養)してもよい。形質転換体の培養スケール(換言すれば、イソプレノイド化合物の生産スケール)の調節の容易性、および、イソプレノイド化合物生産の低コスト化の観点からは、液体培地を用いて培養することが好ましい。また、液体培地を用いた培養であれば、形質転換体を連続培養することによって、イソプレノイド化合物の生産量を飛躍的に上げることができる。
本発明の一実施形態に係る形質転換体の培養にあたっては、形質転換体の種類に応じて培養条件を選択することができる。このような培養条件は、当業者においては周知である。真核宿主が資化可能な炭素源、窒素源および無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地および合成培地のいずれも使用することができる。炭素源としては、グルコース、キシロース、グリセロール、フルクトース、スクロースおよびデンプン等の炭水化物;酢酸およびプロピオン酸等の有機酸;エタノール等のアルコールを用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物の他、ペプトン、イースト抽出物等を用いることができる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅および炭酸カルシウムなどを用いることができる。
上記培養工程は、通常、振とう培養又は通気攪拌培養等の好気条件下、30℃で72〜192時間行う。培養時間は、好ましくは96〜190時間、さらに好ましくは100〜180時間、より好ましくは120〜168時間であるが、本発明の一実施形態は、これらの培養時間に限定されない。培養期間中、pHは2.0〜7.0に保持することが好ましい。培養期間中のpHは、pH3.0〜7.0が好ましく、pH4.0〜7.0がさらに好ましく、pH5.0〜7.0がより好ましい。また、pHの調整は、無機あるいは有機酸、およびアルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養中は、必要に応じてG418、ハイグロマイシンおよびノーセオスリシン(clonNAT)などの抗生物質を培地に添加することができる。
本発明の一実施形態に係るイソプレノイド化合物の製造方法は、上述した培養工程の後に、培養後の培地および/又は当該形質転換体内より目的物質を回収する回収工程を有していてもよい。回収工程の具体的な構成は特に限定されないが、回収工程は、以下に説明する抽出工程、および/又は、精製工程を包含する工程であってもよい。
本発明の一実施形態に係るイソプレノイド化合物の製造方法は、上述した培養工程の後に、形質転換体からイソプレノイド化合物を抽出するための抽出工程を有していてもよい。当該構成であれば、純度の高いイソプレノイド化合物を取得することができる。
抽出工程では、形質転換体と有機溶媒とを接触させ、形質転換体によって生産されたイソプレノイド化合物を有機溶媒中に移行させる。そして、当該有機溶媒を回収することによって、イソプレノイド化合物を回収することができる。また、抽出工程では、炭酸ガス、メタノール、および水等を用いて、イソプレノイド化合物を超臨界抽出することもできる。
形質転換体と有機溶媒とを接触させる場合には、形質転換体を含む培地と有機溶媒とを混合してもよいし、形質転換体を含む培地を遠心分離して形質転換体を回収し、当該形質転換体を水に懸濁した後、当該水と有機溶媒とを混合してもよい。より純度の高いイソプレノイド化合物を取得するという観点からは、形質転換体を含む培地を遠心分離して形質転換体を回収し、当該形質転換体を水に懸濁した後、当該水と有機溶媒とを混合する方が好ましい。
上述した有機溶媒の種類は、イソプレノイド化合物の種類に応じて、適宜選択すればよい。有機溶媒として、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルメチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルフォキシド、クロロフォルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトニトリル、又は、ピリジンを単独で使用してもよい。また、これらの有機溶媒の少なくとも2つを混合して使用してもよい。
本発明の一実施形態に係るイソプレノイド化合物の製造方法は、上述した抽出工程の後に、抽出物に含まれるイソプレノイド化合物をクロマトグラフィーで精製する精製工程を有していてもよい。当該構成であれば、更に純度の高いイソプレノイド化合物を取得することができる。
この際使用される分離用の担体としては、例えば、シリカゲル、硝酸銀添加シリカゲル、オクタデシルジメチルシリル修飾シリカゲル、ジメチルシリル修飾シリカゲル、オクチルジメチルシリル修飾シリカゲル、プロピルアミノ修飾シリカゲル、シアノプロピル修飾シリカゲルおよびフェニル修飾シリカゲル等の各種化学修飾シリカゲル;アルミナ並びに活性炭等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態に係る製造方法を用いることで、イソプレノイド化合物が、遺伝的修飾を含まない対照細胞におけるイソプレノイド化合物のレベルより少なくとも50%高いレベルで生産することができる。
以下、本発明の具体例を記載するが、本発明を以下の具体例に限定する趣旨ではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施できる。
本発明者らは、上記課題を解決するために、具体的には以下のように鋭意研究を行った。
具体的には、本発明者らは、油性酵母の1種であるリポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)においてヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の発現に最適なプロモーター種の探索を試みた。脂質生産培地で培養している油性酵母リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)より、トータルRNAを取得した。その後、RNAシークエンスによる網羅的な油性酵母の遺伝子発現解析を行い、脂質生産培地で発現している遺伝子の発現量の情報を取得した。さらに、リアルタイムPCR法によって各遺伝子の発現量の解析を行った。その結果に基づき、脂質生産培地において大小、様々な発現量を示す複数の遺伝子を選定し、その遺伝子のプロモーター配列、およびターミネーター配列を単離した。単離した発現制御配列(プロモーター配列、および/又はターミネーター配列)を用いてメバロン酸経路の改良を行い、リコペン生合成遺伝子を導入した油性酵母株でのリコペン生産量の改善を試みた。
メバロン酸経路の中でもヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素は、メバロン酸経路の律速ステップの1つに関わることが、出芽酵母において報告されている。今回新たに油性酵母から探索したプロモーター配列およびターミネーター配列を用いて、リコペン生産を指標に、メバロン酸経路に対するヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の発現の影響を評価した。
油性酵母に導入したヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子としてはアミノ末端を削った短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(tHMGR)遺伝子を利用した。この目的は、短縮型酵素遺伝子を利用することによって酵素活性のフィードバック阻害による減少を抑えることであった(非特許文献6)。
以下に、その詳細を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
<実施例1.RNAシークエンス解析による発現遺伝子の検出>
油性酵母リポマイセス・スターキー株を脂質生産培地にて30℃、180rpmの回転振とうにより5日間培養後、菌体を採取し、トータルRNAを調製した。脂質生産培地は40g/lのグルコース、0.5g/lの(NHSO、1g/lのKHPO、0.5g/lのMgSO・7HO、0.1g/lのCaCl・2HO、0.1g/lのNaClおよび1.5g/lの酵母の抽出物(Yeast extract)から構成される。RNAの調製にはアイソジェンII(ISOGEN II)(ニッポンジーン社製)を用いた。得られたトータルRNAについて、RNAシークエンス解析を外注し、各遺伝子の発現量を示すFPKM値データを取得した。取得したFPKM値および既に解読していた、リポマイセス・スターキー株のゲノム塩基配列情報から、脂質生産培地で発現している遺伝子とその発現量とをリスト化した。
(定量的PCR法による遺伝子の発現解析)
RNAシークエンス解析によって、脂質生産培地で発現している遺伝子を選抜した。選抜した遺伝子の中から発現強度が高い遺伝子5種について、リアルタイムPCR法により各遺伝子の発現量を確認した。次に、プライムスクリプト(登録商標)逆転写酵素(PrimeScriptTM Reverse Transcriptase)(タカラバイオ株式会社製)用いて、トータルRNA 0.5μgを逆転写反応させ、1本鎖cDNAを調製した。調製したcDNA溶液1μlとTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製)とを混合し、Stratagene Mx3005P(アジレントテクノロジー(Agilent technologies)株式会社製)による定量的PCR解析を行った。これらの結果を図1に示す。図1に示すように、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素遺伝子の発現強度に対して、ホスホケトラーゼ遺伝子の発現強度は800倍に相当し、翻訳伸長因子遺伝子の発現強度は600倍に相当し、ヒスチジンキナーゼ遺伝子の発現強度は300倍に相当し、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ遺伝子の発現強度は120倍に相当し、ピルビン酸キナーゼ遺伝子の発現強度は、120倍に相当した。
さまざまな発現活性を示す遺伝子発現制御配列を得るため、上述の定量的PCR解析の結果を元にして、上記5種の遺伝子についてプロモーター配列、およびターミネーター配列を取得した。遺伝子のプロモーター配列の情報と、予想される開始コドン上流1.0kbおよび、ストップコドン下流0.5kbのターミネーター配列の情報とをそれぞれ取得した。なお、逆転写反応およびリアルタイムPCRについては、キットおよび測定装置のプロトコールに従って行った。
<実施例2.ベースベクターの構築>
以下に、本実施例におけるベクター構築の詳細を図2および図3に基づいて説明するが、ベクター構築の手順はこれに限定されるものではない。図2は、本願の実施例における、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(tHMGR)遺伝子発現ベクターの構築方法を示す図である。それぞれ、PYK:ピルビン酸キナーゼ(Pyruvate kinase)、TEF:翻訳伸長因子(Translation elongation factor 1)、PK:ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)、HK:ヒスチジンキナーゼ(Histidine kinase)、ACC:アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetyl Co-A carboxylase)の各遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列をベクターに導入した。図3は、本願の実施例における、リコペン生合成ベクター(pUC−lyc)の構築方法を示す図である。PGK:ホスホグリセリン酸キナーゼ(Phosphoglycerate kinase)、TPI:Triosephosphate isomerase、TEF:翻訳伸長因子(Translation elongation factor 1)の各遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列を、crtE、crtBおよびcrtIの各遺伝子の発現に用いた。なお、ベクター構築における一連の反応操作は、当業者に標準的な方法である、制限酵素処理とライゲーションとによるクローニング、オーバーラップエクステンションPCRクローニング(非特許文献6参照)、およびHifi DNAクローニングキット(NEB社製)の各方法に準じて行った。その他、一般的なクローニング法において、一連の酵素類はNEB社製の製品を使用した。なお、本キットを用いたDNA構築物についてはNEB社の利用許諾権利が及ばないことが、使用説明書に明記されている。
(pUC19−Notベクターの構築)
pUC19ベクター内のBspQIサイトの削除および、NotIサイトの新たな導入を行うため、プライマーとして、pUC−Not−F(配列番号7)およびpUC−Not−R(配列番号8)を用いてインバースPCRを行った。使用した各プライマー配列の詳細を、表1に記載する。PCR反応には増幅酵素として、増幅断片の正確性が高いとされる、プライムスター HS DNA ポリメラーゼ(PrimStar HS DNA polymerase)(タカラバイオ社製)を使用した。プライマーDNA50pmol×2、5倍濃縮酵素反応用バッファー10μl、2.5mMのdNTPmix4μlおよびプライムスター HS DNA ポリメラーゼ1.25ユニットを加えた溶液を作製した。サーマルサイクラーPCR(製品名:Thermal Cycler Dice Gradient、タカラバイオ社製)にpUC19プラスミドDNA10ngと、上記溶液50μlとをセットし、pUC19プラスミドDNAを鋳型に用いてDNA断片を増幅した。サーマルサイクラーの反応条件は、94℃1分の熱処理を行った後、98℃で10秒、55℃で15秒および72℃で2分40秒(伸長時間1分/1kb)の3つの温度変化を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返し、最後に4℃で反応試料を保存した。この反応試料5μlを0.8%TAEアガロースゲル(含有)にて電気泳動し、0.5μg/mlのエチジウムブロマイド溶液に浸漬した。その後、このゲルを254nmの紫外線照射(紫外線照射機はニッポンジーン社製)によってDNAのバンドを検出し、遺伝子増幅の確認を行った。増幅したDNA断片をセルフライゲーションしてベクター上にNotIサイトを導入した。ライゲーション反応液を大腸菌コンピテント細胞に導入し、大腸菌を形質転換した。大腸菌コンピテント細胞は、DH5α株(東洋紡社製)を使用し、詳細な取り扱いは付属のプロトコールに従った。抗生物質であるアンピシリン50μg/mlを含有したLBプレートを用いてコロニー選抜を行い、各選抜コロニーから、エタノール沈殿処理によってプラスミドDNAを調製した。なお、エタノール沈殿処理および制限酵素処理等の一連操作の詳細なマニュアルは、Molecular Cloning : A Laboratory Manual second edition(Maniatisetal., Cold Spring Harbor Laboratory press. 1989)に従った。
(pUC−G418ベクターおよびpUC−clonNATベクターの構築)
TEF遺伝子のプロモーター配列(配列番号3)およびTDH遺伝子のターミネーター配列を、リポマイセス・スターキー株から精製したゲノムDNAを鋳型に用いて、PCRにより増幅した。プライマーは、TEF遺伝子のプロモーター配列に対して、pTEF−F1(配列番号9)とpTEF−R1(配列番号10)とを用い、TDH遺伝子のターミネーター配列に対して、tTDH3−F1(配列番号11)とtTDH3−R1(配列番号12)とを用いた。primestar HSによるPCR反応で、プロモーター配列およびターミネーター配列のDNA断片を調製した。以降、全ての発現制御配列はリポマイセス・スターキー株のゲノムDNAを鋳型に用いて調製した。G418遺伝子についても、pUC19ベクターを鋳型に用いてG418遺伝子をPCRにより増幅した。プライマーはG418−F(配列番号13)およびG418−R(配列番号14)を用いた。増幅した3断片を利用してオーバーラップPCRを行い、プロモーター配列およびターミネーター配列をG418遺伝子に機能的に連結した。オーバーラップPCRは、非特許文献6に記載の方法に従い行った。作製したG418カセットの両端に、ベースベクターへの連結のためにNotIサイトが付加されるようにプライマーを設計した。次に、連結したDNA断片をpCR−BluntII−TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific社製)へサブクローニングした。サブクローニングの一連の反応操作は、一般的なDNAサブクローニング法に準じて行った。DNAサブクローニング法の詳細は付属のプロトコールに従った。次に、NotI処理したpUC19−NotIおよびG418カセットをライゲーションすることにより、G418選抜マーカーを持つベースベクターpUC−G418を構築した。
同様にclonNAT耐性遺伝子についても、プライマーとして、clonNAT−F(配列番号15)およびclonNAT−R(配列番号16)を用いてPCRによりclonNAT耐性遺伝子を増幅させた後、オーバーラップPCRにより、TEF遺伝子のプロモーター配列およびTDH遺伝子のターミネーター配列をclonNAT耐性遺伝子に機能的に連結した発現カセットを構築した。G418遺伝子と同様に連結した耐性遺伝子発現カセットは、pCR blunt topoベクターにサブクローニングした後、NotI処理して、pUC−NotIのNotIサイトに常法によりクローニングし、pUC−clonNATを構築した(コンストラクトの詳細は、図2の上段参照)。
Figure 0006829483
<実施例3.発現カセットベクターの構築>
(発現制御配列(プロモーターDNAおよびターミネーターDNA)のクローニング)
実施例1および2において脂質生産培地で発現を示した遺伝子について、高い発現活性を示す遺伝子を5種類選定し、選定した遺伝子の発現制御配列(プロモーターDNA(1.5kb)およびターミネーターDNA(0.5kb))をクローニングした。当該発現制御配列の取得における遺伝子資源は、油性酵母リポマイセス・スターキー株のゲノムDNAを鋳型とするPCR増幅法によって単離した。本株をYPD培養液5mlで2晩培養した後、ゲノムDNA調製キット(製品名:Genとるくん(商標)−酵母用−、タカラバイオ社製)を用いて、ゲノムDNAを調製した。また、調製したゲノムDNAは、分光光度計(製品名:UVmini−1240、株式会社島津製作所製)によりDNA濃度を測定した。各遺伝子の発現制御配列は、リポマイセス・スターキー株のゲノムDNA配列を鋳型に用いて、プライムスター HS DNAポリメラーゼを用いてPCR増幅により取得した。各遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の増幅に用いたプライマーは以下である:ピルビン酸キナーゼ(PYK)遺伝子発現制御配列のプロモーター配列に対しては、pPYK−F(配列番号17)とpPYK−R(配列番号18);ピルビン酸キナーゼ(PYK)遺伝子発現制御配列のターミネーター配列に対しては、tPYK−F(配列番号19)とtPYK−R(配列番号20);ヒスチジンキナーゼ(Histidine kinase)(HK)遺伝子発現制御配列のプロモーター配列に対しては、pHK−F(配列番号21)とpHK−R(配列番号22);ヒスチジンキナーゼ(Histidine kinase)(HK)遺伝子発現制御配列のターミネーター配列に対しては、tHK−F(配列番号23)とtHK−R(配列番号24);ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)(PK)遺伝子発現制御配列のプロモーター配列に対しては、pPK−F(配列番号25)とpPK−R(配列番号26);ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)(PK)遺伝子発現制御配列のターミネーター配列に対しては、tPK−F(配列番号27)とtPK−R(配列番号28);アセトアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetoacetyl Co-A carboxylase)(ACC)遺伝子発現制御配列のプロモーター配列に対しては、pACC−F(配列番号29)とpACC−R(配列番号30);アセトアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetoacetyl Co-A carboxylase)(ACC)遺伝子発現制御配列のターミネーター配列に対しては、tACC−F(配列番号31)とtACC−R(配列番号32);翻訳伸長因子(Translation elongation factor 1)(TEF)遺伝子発現制御配列のプロモーター配列に対しては、pTEF−F(配列番号33)とpTEF−R(配列番号34);翻訳伸長因子(Translation elongation factor 1)(TEF)遺伝子発現制御配列のターミネーター配列に対しては、tTEF−F(配列番号35)とtTEF−R(配列番号36)であった。各プライマー配列の詳細を表2に記載する。油性酵母リポマイセス・スターキー株のゲノムDNA100ngを鋳型に用いて、プライマーDNA50pmol×2、5倍濃縮酵素反応用バッファー×10μl、2.5mMのdNTPmix4μlおよびプライムスター HS DNAポリメラーゼ1.25ユニットを加えた50μlの反応液を、サーマルサイクラーPCR(製品名:Thermal Cycler Dice Gradient、タカラバイオ社製)にセットしてDNA断片を得た。サーマルサイクラーの反応条件は、94℃2分間の熱処理を行った後、98℃で10秒、55℃で15秒、72℃で1分30秒の3つの温度変化を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返し、最後に4℃で反応試料を保存した。当該反応試料5μlを0.8%TAEアガロースゲル(含有)にて電気泳動し、0.5μg/mlのエチジウムブロマイド溶液に浸漬した。その後、本ゲルを254nmの紫外線照射(紫外線照射機はニッポンジーン社製)によってDNAのバンドを検出し、遺伝子増幅の確認を行った。
pUC19−NotIをSmaI制限酵素で処理し、ベクターを調製した。
プライマーとしてそれぞれ、PYK遺伝子のプロモーター配列(配列番号1)に対して、pPYK−F(配列番号17)およびpPYK−R(配列番号18)、PYK遺伝子のターミネーター配列(配列番号2)に対して、tPYK−F(配列番号19)およびtPYK−R(配列番号20)を用いて、各配列を前述した方法でPCRにより増幅した。Hifi DNA cloning Kit(NEB社製)を用いて、pUC−G418のSmaIサイト中、プロモーター配列とターミネーター配列との間に2つのBspQIサイトが含まれるように、増幅したプロモーター配列およびターミネーター配列をクローニングし、DH5α株に形質転換してpUC−ptPYKを構築した。PYK遺伝子と同様に、プライマーとして、それぞれ、TEF遺伝子のプロモーター配列(配列番号3)に対して、pTFE−F(配列番号33)およびpTEF−R(配列番号34)、TEF遺伝子のターミネーター配列(配列番号4)に対して、tTFE−F(配列番号35)およびtTEF−R(配列番号36)を用いてpUC−ptTEFを構築した。PYK遺伝子と同様に、プライマーとして、それぞれ、PK遺伝子のプロモーター配列(配列番号5)に対して、pPK−F(配列番号25)およびpPK−R(配列番号26)、PK遺伝子のターミネーター配列(配列番号6)に対して、tPK−F(配列番号27)およびtPK−R(配列番号28)を用いてpUC−ptPKを構築した。PYK遺伝子と同様に、プライマーとして、それぞれ、ヒスチジンキナーゼ(HK)遺伝子のプロモーター配列に対して、pHK−F(配列番号21)およびpHK−R(配列番号22)、ヒスチジンキナーゼ(HK)遺伝子のターミネーター配列に対して、tHK−F(配列番号23)およびtHK−R(配列番号24)を用いてpUC−ptHKを構築した。PYK遺伝子と同様に、プライマーとして、それぞれ、アセトアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetoacetyl Co-A carboxylase)(ACC)遺伝子のプロモーター配列に対して、pACC−F(配列番号29)およびpACC−R(配列番号30)、アセトアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetoacetyl Co-A carboxylase)(ACC)遺伝子のターミネーター配列に対して、tACC−F(配列番号31)およびtACC−R(配列番号32)を用いてpUC−ptACCを構築した(pUC−ptPYK、pUC−ptTEF、pUC−ptPK、pUC−ptHKおよびpUC−ptACCの各コンストラクトの詳細は、図2の中段参照)。
構築した各ベクターを、アルカリ抽出法によって調製し、これをQIAprepSpinMiniPrepKit(キアゲン社製)にてカラム精製した。次に、分光光度計UltroJP2005−137306A2005.6.2spec3000(株式会社島津製作所製)にてDNA濃度を測定し、DNA塩基配列キットBigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(PE アプライド バイオシステムズ(PE Applied Biosystems)社製)に従ってシークエンシング反応を行った。反応試料を塩基配列解析装置ABIPRISM3100 Genetic Analyzer(PE アプライド バイオシステムズ(PE Applied Biosystems)社製)にセットし、構築した遺伝子カセットの塩基配列を決定した。なお、機器の使用方法の詳細は本装置付属のマニュアルに従った。
Figure 0006829483
(短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(tHMGR)遺伝子発現制御用ベクターの構築)
実施例1において脂質生産培地での培養で比較的高い発現を示した5種の遺伝子から発現制御配列を取得し、リポマイセス・スターキー用コドンに最適化した、出芽酵母由来の短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(tHMGR)遺伝子のDNA断片を遺伝子合成により準備した。合成した遺伝子断片を、プライマーとして、tHMGR−PYK−F(配列番号37)およびtHMGR−PYK−R(配列番号38)を用いてプライムスターHS DNAポリメラーゼでPCRにより増幅した。これをBspQI処理したpUC−ptPYKおよびHifi DNA cloning Kit(NEB社)を用いてライゲーションした(図3参照)。そして、DH5α株へ形質転換し、50mg/Lのアンピシリン含有LB寒天培地で選抜することによってpUC−ptPYK−tHMGRを持つクローンを得た(コンストラクトの詳細は、図2の下段参照)。
pUC−ptPYK−tHMGRと同様の方法で、pUC−ptTEF−tHMGR、pUC−ptPK−tHMGR、pUC−ptHK−tHMGRおよびpUC−ptACC−tHMGRを構築した。すなわち、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子のDNA断片を鋳型に用いて、プライマーとしてそれぞれ、以下を用いてDNA断片を増幅した:pUC−ptTEF−tHMGRに対して、tHMGR−TEF−F(配列番号45)とtHMGR−TEF−R(配列番号46);pUC−ptPK−tHMGRに対して、tHMGR−PK−F(配列番号41)とtHMGR−PK−R(配列番号42);pUC−ptHK−tHMGRに対して、tHMGR−HK−F(配列番号39)とtHMGR−HK−R(配列番号40)、;pUC−ptACC−tHMGRに対して、tHMGR−ACC−F(配列番号43)とtHMGR−ACC−R(配列番号44)。増幅した各DNA断片を、それぞれ、BspQI処理したpUC−ptTEF、pUC−ptPK、pUC−ptHKおよびpUC−ptACCの各ベクターにライゲーションすることで、それぞれ、pUC−ptTEF−tHMGR、pUC−ptPK−tHMGR、pUC−ptHK−tHMGRおよびpUC−ptACC−tHMGRの各ベクターを構築した。各プライマーの塩基配列を表3に、各ベクターのコンストラクトの詳細を、図2の下段に示す。
Figure 0006829483
<実施例4.リコペン生合成ベクターの構築>
パントエア・アナティス(Patoea ananatis)由来のリコペン生合成経路遺伝子(crtE,crtBおよびcrtI)発現カセットを下記のように構築した。
crtE発現カセットの構築のため、PGK遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列を、リポマイセス・スターキー株から精製したゲノムDNAを鋳型に用いてプライムスターHS DNAポリメラーゼにより増幅した。プライマーは、PGK遺伝子のプロモーター配列に対して、pPGK−sacI−F(配列番号47)とpPGK−sacI−R(配列番号48)とを用い、PGK遺伝子のターミネーター配列に対して、tPGK−sacI−F(配列番号49)とtPGK−sacI−R(配列番号50)とを用いた(各プライマーの塩基配列は、表4参照)。crtE遺伝子について遺伝子合成によりコドンを最適化した配列を準備し、プライマーとして、crtE−F(配列番号59)およびcrtE−R(配列番号60)を用いて上記配列をPCRにより増幅した。増幅した3断片を利用してオーバーラップPCRを行い、crtE遺伝子に機能的にプロモーター配列およびターミネーター配列を連結させた(非特許文献6参照)。以後のベクター構築のため、作製したcrtE発現カセットの両端にはSacIサイトが付加されるようにプライマーを設計した(配列番号47〜50)。連結したDNA断片をpCR−bluntII−TOPOベクター(ライフテクノロジー社製)にサブクローニングした後、DNA配列を解読し、設計どおりに連結されていることを確認した。
同様にcrtBについては、TPI遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の制御下になるように、プライマーとして、pTPI−F(配列番号51)、pTPI−R(配列番号52)、tTPI−F(配列番号53)、tTPI−R(配列番号54)、crtB−F(配列番号61)およびcrtB−R(配列番号62)を用いて、発現制御配列と遺伝子合成したcrtBとが機能的に連結したcrtB発現カセットを構築した。以後のベクター構築のため、作製したcrtB発現カセットの両端にはSmaIサイトが付加されるようにプライマーを設計した(配列番号51〜54)。同様にcrtIについては、TEF遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の制御下になるように、プライマーとして、pTEF−pstI−F(配列番号55)、pTEF−pstI−R(配列番号56)、tTEF−pstI−F(配列番号57)、tTEF−pstI−R(配列番号58)、crtI−F(配列番号63)およびcrtI−R(配列番号64)を用いて、発現制御配列と遺伝子合成したcrtIが機能的に連結したcrtI発現カセットを構築した。以後のベクター構築のため、作製したcrtI発現カセットの両端にはPstIサイトが付加されるようにプライマーを設計した(配列番号55〜58)。crtE、crtBおよびcrtIの各発現カセットをそれぞれ、pUC−G418のSacIサイト、SmaIサイトおよびPstIサイトへと、常法に従いクローニングし、リコペン生合成用ベクターpUC−lycを構築した(図3参照)。
油性酵母リポマイセス・スターキー株へのリコペン生合成遺伝子の導入は、非特許文献7に記載されている方法に従い、酢酸リチウム法による核ゲノムへの遺伝子導入により行った。pUC−lycを鋳型に用いて、プライマーとして、pUC−F(配列番号65)およびpUC−R(配列番号66)を用いて、リコペン生合成遺伝子と選抜マーカーとを含む領域11kbpをPCRにより増幅し、形質転換に用いるDNA断片を調製した。PCRにはTks Gflex(タカラバイオ社)を用いた。25μg/mlのG418を含むYPD寒天培地でG418耐性を示すコロニーを30℃、7日間培養して取得し、コロニーPCRによりcrtE発現カセット、crtB発現カセットおよびcrtI発現カセットを保持していることを確認した。コロニーPCRにはKODFx酵素(TOYOBO社)を使用し、リコペン生合成に必要な3遺伝子を検出するためのプライマーとして、crtE発現カセットに対して、crtE−F(配列番号59)とcrtE−R(配列番号60)とを使用し、crtB発現カセットに対して、crtB−F(配列番号61)とcrtB−R(配列番号62)とを使用し、crtI発現カセットに対して、crtI−F(配列番号63)とcrtI−R(配列番号64)とを使用した。リコペン生合成遺伝子導入株は野生株と比べて、薄い赤色を呈色していることから、呈色を指標にスクリーニングすることも可能である。
Figure 0006829483
<実施例5.形質転換酵母の作製>
油性酵母リポマイセス・スターキー株へのリコペン生合成遺伝子の導入は、非特許文献7に記載されている方法に従い、酢酸リチウム法による核ゲノムへの遺伝子導入によって行った。pUC−lycを鋳型に用いて、プライマーとして、pUC−F(配列番号65)およびpUC−R(配列番号66)を用いて、リコペン生合成遺伝子と選抜マーカーとを含む領域11kbpをPCRにより増幅し、形質転換に用いるDNA断片を調製した(各プライマーの塩基配列は、表5参照)。PCRにはTks Gflex(タカラバイオ社製)を用いた。プライマーDNA50pmol×2、2倍濃縮酵素反応用バッファー25μlおよびTks Gflex DNAポリメラーゼ1.25ユニットを加えた50μlの反応液をサーマルサイクラーにセットして、pUC−lycプラスミドDNA10ngを鋳型に用いて、DNA断片を調製した。サーマルサイクラーの反応条件は、94℃1分の熱処理を行った後、98℃で10秒、55℃で15秒、68℃で5分30秒(伸長時間30秒/1kb)の3つの温度変化を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返し、最後に4℃で反応試料を保存した。25mg/lのG418を含むYPD寒天培地でG418耐性を示すコロニーを30℃、7日間培養して取得し、コロニーPCRによりcrtE遺伝子(0.91kb)、crtB遺伝子(0.93kb)およびcrtI遺伝子(1.48kb)を保持していることを確認した。コロニーPCRにはKODFx酵素(TOYOBO社)を使用し、リコペン生合成に必要な3遺伝子を検出するためのプライマーとして、それぞれ以下を使用した;crtE遺伝子に対して、crtE−F(配列番号59)とcrtE−R(配列番号60)、crtB遺伝子に対して、crtB−F(配列番号61)とcrtB−R(配列番号62)、およびcrtI遺伝子に対して、crtI−F(配列番号63)とcrtI−R(配列番号64)。プライマーDNA50pmol×2、2倍濃縮酵素反応用バッファー5μl、2mM dNTPmix0.4μlおよびKOD Fx DNAポリメラーゼ0.1ユニットを加えた10μlの反応液をサーマルサイクラーにセットし、菌体懸濁液1μlを鋳型に用いて、DNA断片を調製した。サーマルサイクラーの反応条件は、95℃5分の熱処理を行った後、98℃で10秒、55℃で30秒、68℃で1分30秒(伸長時間1分/1kb)の3つの温度変化を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返し、最後に4℃で反応試料を保存した。リコペン生合成遺伝子導入株は野生株と比べて、薄い赤色を呈色していることから、呈色を指標にスクリーニングすることも可能である。
次に、リコペン生合成遺伝子を保持している株に対して、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の導入を行った。遺伝子導入用ベクターpUC−ptPYK−tHMGR、pUC−ptTEF−tHMGR、pUC−ptPK−tHMGR、pUC−ptHK−tHMGR又はpUC−ptACC−tHMGRを鋳型に用いて、プライマーpUC−F(配列番号65)およびpUC−R(配列番号66)を用いてリコペン生合成遺伝子と選抜マーカーとを含む領域6.5kbpをPCRにより増幅して形質転換に用いるDNA断片を調製した。PCRにはTks Gflex(タカラバイオ社)を用いた。前述と同様に、酢酸リチウム法による核ゲノムDNAへの遺伝子導入を行った。形質転換体の選抜は25μg/mlのclonNATを含有するYPD寒天培地上で行い、取得したコロニーについて、コロニーPCRにより短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子を保持していることを確認した。コロニーPCRにはプライマーとして、tHMGR−PYK−F(配列番号37)およびtHMGR−PYK−R(配列番号38)を用い、1.5kbの増幅として電気泳動により検出した。
Figure 0006829483
<実施例6.発酵試験による各プロモーターの検証>
リコペン生合成遺伝子と、各遺伝子の発現制御配列とを連結させた短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子発現カセットを導入した遺伝子組換え体において、リコペン生産量を定量した。これにより、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の発現に適した発現制御配列を選抜した。それぞれの菌株を2mlのYPD培地に植菌後、30℃、180rpmの振とう培養により2日間、前培養した。その後、50mlの脂質生産培地を入れた三角フラスコに前培養液を500μl植菌した。30℃、180rpmの回転振とう培養を5日間行い、培養液5mlから菌体ペレットを回収した。上記菌体ペレットに0.5mlのDMSOと2mlの酢酸エチルとを添加して1分間ボルテックスした後、2時間静置した。次に、塩化ナトリウム飽和水溶液2mlを添加して1分間ボルテックスした後、2000×G 5分の遠心分離により、有機層と水層とに分離した。リコペンは有機層(酢酸エチル)に分配されることから、上層の有機層1mlを回収し、回収した有機層をHPLC(株式会社島津製作所製)に供した。逆相カラム(COSMSIL 5C18−MS−II 4.6ID×150mm)、移動相(アセトニトリル:エタノール=7:3)および流速1ml/minというHPLCでの検出条件下、吸収波長 452nmでリコペンの検出を行った。濃度既知のリコペン標品を用いた検量線からサンプル濃度を定量した(図4参照)。図4に、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子の発現調節株におけるリコペン生産量の比較の結果を示す。図4中、pUC−ptPYK−tHMGRは、ピルビン酸キナーゼ(Pyruvate kinase)遺伝子の発現制御配列を用いてtHMGR遺伝子を発現させた結果を示し、pUC−ptTEF−tHMGRは、翻訳伸長因子(Translation elongation factor 1)遺伝子の発現制御配列を用いてtHMGR遺伝子を発現させた結果を示し、pUC−ptPK−tHMGRは、ホスホケトラーゼ(Phosphoketolase)遺伝子の発現制御配列を用いてtHMGR遺伝子を発現させた結果を示し、pUC−ptACC−tHMGRは、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(Acetyl Co-A carboxylase)遺伝子の発現制御配列を用いてtHMGR遺伝子を発現させた結果を示し、pUC−ptHK−tHMGRは、ヒスチジンキナーゼ(Histidine kinase)遺伝子の発現制御配列を用いてtHMGR遺伝子を発現させた結果を示す。図4に示すように、ピルビン酸キナーゼ(PYK)遺伝子の発現制御配列を用いた場合のリコペン生産量が最も高く、次に翻訳伸長因子(TEF)遺伝子の発現制御配列を用いた場合のリコペン生産量が高く、3番目に、ホスホケトラーゼ(PK)遺伝子の発現制御配列を用いた場合のリコペン生産量が高いことが分かった。
発明者らが、ピルビン酸キナーゼ(PYK)遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の制御下で、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子をリポマイセス・スターキー内で発現させたところ、イソプレノイド化合物の生産量が最も増加することがわかった。これは、各プロモーターの発現強度と、イソプレノイド化合物の生産量との関連性からでは当業者が思いつかない結果であった。また、ホスホケトラーゼ(PK)遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の制御下で、短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子を発現させることによって、ピルビン酸キナーゼ(PYK)遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列の制御下で発現させる場合に比べてイソプレノイド化合物の生産量が減少することが分かった。これはイソプレノイド生合成経路の活性を任意に調節できることを示しており、ホスホケトラーゼ(PK)遺伝子の発現解析で示された本遺伝子が最も高い発現量であったというデータからは予想困難な結果であった。
なお、油性酵母においてはもちろんのこと、真核宿主においても、PYK遺伝子のプロモーター配列、およびPK遺伝子のプロモーター配列を利用すると、イソプレノイド生合成酵素遺伝子についてそれぞれ相当高い発現レベルで、およびかなり高い発現レベルで制御できるという知見はこれまで存在しなかった。
実施例の形質転換体は、メバロン酸経路の律速ステップであるヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素活性を最適化するために発現に適した発現制御配列が、機能的に短縮型ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素遺伝子に連結されているポリヌクレオチド構築物を導入されている。従って、実施例の形質転換体を培養することで、メバロン酸経路の活性を増大し、イソプレノイド生合成酵素の働きを促進し、イソプレノイドの生産量を増大させることがわかった。
本発明は、医薬品、飼料、食品添加物、機能性食品、香料およびバイオ燃料などの種々の産業において利用可能である。

Claims (9)

  1. 油性酵母に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に以下の(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されていることを特徴とする、形質転換体:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (c)配列番号1に記載の塩基配列において、50個以内の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (d)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
  2. 真核宿主に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に以下の(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されており、
    上記ポリヌクレオチド構築物は、更に、上記イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の下流に以下の(e)〜(h)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする、形質転換体:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (c)配列番号1に記載の塩基配列において、50個以内の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (d)配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド、
    (e)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (f)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (g)配列番号2に記載の塩基配列において、50個以内の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (h)配列番号2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
  3. 真核宿主に、イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子と、当該遺伝子の上流に以下の(a´)〜(d´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドとを含むポリヌクレオチド構築物が、導入されていることを特徴とする、形質転換体:
    (a´)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b´)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (c´)配列番号5に記載の塩基配列において、50個以内の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (d´)配列番号5に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
  4. 上記ポリヌクレオチド構築物は、更に、上記イソプレノイド生合成酵素をコードする遺伝子の下流に以下の(e´)〜(h´)からなる群より選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでいることを特徴とする、請求項3に記載の形質転換体:
    (e´)配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (f´)配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (g´)配列番号6に記載の塩基配列において、50個以内の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド;
    (h´)配列番号6に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有するポリヌクレオチドからなり、かつ、ターミネーター活性を有するポリヌクレオチド。
  5. 上記真核宿主が、油性酵母であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の形質転換体。
  6. 上記油性酵母が、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)であることを特徴とする、請求項1または5に記載の形質転換体。
  7. 上記イソプレノイド生合成酵素は、メバロン酸経路酵素、カロテノイド生合成酵素、モノテルペン生合成酵素、セスキテルペン合成酵素、トリテルペン合成酵素、またはジテルペン合成酵素であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形質転換体。
  8. 上記メバロン酸経路酵素は、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG−CoA Reductase、HMGR)であることを特徴とする、請求項7に記載の形質転換体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の形質転換体を培養する培養工程と、培養後の培地および/又は当該形質転換体内より目的物質を回収する回収工程と、を含むことを特徴とする、イソプレノイド前駆体またはイソプレノイドの製造方法。
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