JP6829245B2 - 有機−無機複合薄膜、pHセンサおよび有機−無機複合薄膜の製造方法 - Google Patents

有機−無機複合薄膜、pHセンサおよび有機−無機複合薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、色素骨格を組み込んだ有機−無機複合薄膜、それを用いたpHセンサ、および有機−無機複合薄膜の製造方法に関する。
微生物を培養する用途では、培養液のpHは、一般にガラス電極を用いるpHセンサにより測定されている。最近では、小型の培養容器が開発されている。この小型の培養容器に対しては、ガラス電極を用いるpHセンサのサイズが大きいため、さらに小型のpHセンサが求められている。
そこで薄膜化が可能なpHセンサの開発が試みられている。特許文献1では、蛍光色素をポリマーマトリックスに組み込んだpHセンサが提案されている。非特許文献1では、色素とシリカゾルとの混合物を基板に塗布してセンサ層を形成したpHセンサが提案されている。
米国特許US2005/0090014A1号公報
D. Wencel et al., "Sensors and Actuators B", Elsevier, 139 (2009) 208-213
微生物の培養容器中で使用されるpHセンサは、38℃付近の温かい培養液中に長時間浸漬される。また、培養容器は、γ線などの放射線により滅菌処理する必要があるため、容器とともにpHセンサも放射線によって滅菌処理できることが要求される。
しかし、特許文献1のpHセンサでは、温かい培養液に長時間浸漬させると、色素が溶出したり、ポリマーが膨潤してpHの検知感度が大きく低下したりする。また高エネルギーのγ線を照射すると、ポリマーが分解して、薄膜が劣化し、色素が溶出する。特許文献2でも、色素の溶出を抑制することは難しい。γ線による滅菌処理は、常温にて密閉状態で行うことが可能であり、滅菌後の残留物がないことなどの利点があるため、微生物培養容器の滅菌処理方法として適している。しかし、γ線滅菌が可能な有機色素を用いた光学pHセンサは未だ報告例が少なく、その開発が望まれる。
本発明の目的は、色素の溶出が抑制され、放射線に対する耐久性が高い有機−無機複合薄膜、pHセンサおよび有機−無機複合薄膜の製造方法を提供することである。
本発明の一局面は、ポリシロキサン骨格と、前記ポリシロキサン骨格に組み込まれた有機塩と、を含む有機−無機複合薄膜であって、
前記有機塩は、色素骨格を有するアニオンと、ケイ素含有基を有するカチオンとで構成され、前記カチオンは、前記ケイ素含有基に含まれるケイ素原子を介して前記アニオンとともに前記ポリシロキサン骨格分散して組み込まれている、有機−無機複合薄膜(有機−無機ハイブリッド薄膜)に関する。
本発明の他の一局面は、上記有機−無機複合薄膜で構成された、pHセンサに関する。
本発明のさらに他の局面は、アルコキシシリル基を含むカチオンと色素骨格を有するアニオンとの有機塩を形成する第1工程と、
前記有機塩と、加水分解縮合性基を有するシラン化合物とを、加水分解反応および重縮合反応させてポリシロキサン骨格を形成するとともに、前記有機塩を前記ポリシロキサン骨格分散した状態で組み込む第2工程と、
前記第2工程で得られる反応混合物を基材に塗布して加熱する第3工程と、を含む、有機−無機複合薄膜の製造方法に関する。
本発明に係る有機−無機複合薄膜によれば、培養液などの温かい溶液中に長時間浸漬しても、色素の溶出を抑制することができる。また、γ線などの高エネルギーの放射線に対する耐久性が高い。
実施例1で得られた有機−無機複合薄膜の励起スペクトルである。 実施例1で得られた有機−無機複合薄膜の蛍光スペクトルである。 実施例1で得られた有機−無機複合薄膜をリン酸緩衝溶液に浸漬させた状態で求めた、波長405nmおよび455nmのそれぞれの励起光に由来する波長505nmの発光のピーク強度比I455nm/I405nmと、リン酸緩衝溶液のpHとの関係を示すグラフである。 有機−無機複合薄膜のpH応答性を評価するための評価装置の模式図である。 リン酸緩衝溶液のpHを変化させた場合の、実施例1で得られた有機−無機複合薄膜についてのピーク強度比I455nm/I405nmの経時変化を示すグラフである。 リン酸緩衝溶液のpHを繰り返し変化させた場合の、実施例1で得られた有機−無機複合薄膜についてのピーク強度比I455nm/I405nmの経時変化(再現性)を示すグラフである。 実施例1で得られた有機−無機複合薄膜を、38℃のリン酸緩衝溶液に1週間浸漬させた際のpH応答性の測定において、pH6.8におけるピーク強度比I455nm/I405nmとpH8.0におけるピーク強度比I455nm/I405nmとの差(ΔI455nm/I405nm)の経時変化を示すグラフである。 実施例1で得られた有機−無機複合薄膜のγ線への暴露前後で、リン酸緩衝溶液のpHを変化させた場合のピーク強度比I455nm/I405nmの経時変化を示すグラフである。 実施例1で得られた有機−無機複合薄膜のγ線への暴露前後で、リン酸緩衝溶液のpHを繰り返し変化させた場合のピーク強度比I455nm/I405nmの経時変化(再現性)を示すグラフである。
本発明に係る有機−無機複合薄膜は、ポリシロキサン骨格と、ポリシロキサン骨格に組み込まれた有機塩と、を含む。有機塩は、色素骨格を有するアニオンと、ケイ素含有基を有するカチオンとで構成され、カチオンは、ケイ素含有基に含まれるケイ素原子を介してアニオンとともにポリシロキサン骨格に組み込まれている。
このように、色素骨格は、カチオンに含まれるケイ素原子を介してポリシロキサン骨格に組み込まれている(つまり、ケイ素元素を介して色素骨格がポリシロキサン骨格に結合している)。従って、色素の溶出を抑制することができる。また、有機−無機複合薄膜のマトリックスはポリシロキサン骨格であるため、ポリマーマトリックスの場合と比べて、培養液などの温かい溶液に長時間浸漬させた場合や、γ線などの放射線に暴露させた場合にも、膨潤や分解などが抑制され、耐久性が高い。これによっても、色素の溶出が抑制される。また、色素の吸収(または励起)および発光の高い感度を確保することもできる。
本発明の好ましい実施形態に係る有機−無機複合薄膜は、有機−無機複合薄膜に導入された色素骨格の励起(または吸収)特性および/または発光特性により、pH応答性を示す。従って、薄膜状のpHセンサとして利用することができる。このような薄膜状のpHセンサは、従来のガラス電極を用いるpHセンサとは異なり、極めて省スペースである。よって、小型の培養容器などに用いるのに適している。
以下、有機−無機複合薄膜およびその製造方法、ならびに有機−無機複合薄膜の製造方法を用いたpHセンサについてより具体的に説明する。
(有機−無機複合薄膜)
有機−無機複合薄膜は、ポリシロキサン骨格に有機塩が組み込まれた構造を含んでいる。有機塩は、色素骨格を有するアニオンとケイ素含有基を有するカチオンとの塩である。このカチオンに含まれるケイ素含有基のケイ素原子が、有機−無機複合薄膜を形成する際に、ポリシロキサン骨格に組み込まれることで、色素骨格をポリシロキサン骨格に強固に結合することができる。
色素骨格を有するアニオンは、有機−無機複合薄膜の用途に応じて公知の色素から適宜選択できる。色素は、適度な波長の光(例えば、紫外光や可視光など)を吸収して、発光したり、変色したりするものであればよい。有機−無機複合薄膜をpHセンサとして利用する場合には、pH応答性の色素を使用すればよい。
色素(または色素骨格)は、光エネルギーを吸収するための共役系を有しており、このような共役系として、例えば、下記式(P1)、(P2)または(P3):
で表される骨格を含むものなどが挙げられる。
色素骨格を有するアニオンにおいて、上記の共役系の骨格は、アニオン性基を有しており、アニオン性基に加え、さらに置換基を有していてもよい。アニオン性基としては、スルホン酸基(−SO3 -)、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシ基などが挙げられる。アニオンは、これらのアニオン性基を一種有してもよく、二種以上有してもよい。入手が容易である観点から、アニオン性基のうち、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する色素を利用することが好ましい。また、アニオンにおけるアニオン性基の個数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。ポリシロキサン骨格に導入されたカチオンとの結合性を高める観点からは、2つ以上であることが好ましく、3つ以上であってもよい。
アニオンが共役系骨格に有する置換基としては、例えば、炭化水素基、ヒドロキシ基、アルカリ金属オキシ基(−ONaなど)、オキソ基(=O)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、Iなど)などが挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。アニオンは、これらの置換基を一種有してもよく、二種以上有してもよい。アニオンにおける置換基の個数は特に制限されず、0個であってもよく、1個であっても、2個以上であってもよい。
骨格(ピレン系骨格)(P1)を有するアニオンとしては、(P1−1)で表される6,8−ジヒドロキシピレン−1,3−ジスルホン酸アニオン、ピラニンに対応する(P1−2)で表されるアニオン(8−ヒドロキシピレン−1,3,6−トリスルホン酸アニオン)などが例示される。骨格(P2)を有するアニオンとしては、フルオレセインに対応する(P2−1)で表されるアニオン、エオシンに対応する(P2−2)で表されるアニオンなどが例示される。骨格(P3)を有するアニオンとしては、ブロモフェノールブルーに対応する(P3−1)で表されるアニオン、フェノールスルホンレッドに対応する(P3−2)で表されるアニオンなどが例示される。
有機−無機複合薄膜は、アニオンを一種含んでもよく、二種以上含んでいてもよい。
カチオンは、ケイ素含有基を有していればよいが、このケイ素含有基のケイ素原子を介してポリシロキサン骨格に導入されている。ポリシロキサン骨格への導入が容易である観点から、ケイ素含有基は、加水分解縮合性基であるアルコキシシリル基に由来するものであることが好ましい。アルコキシシリル基を含むカチオン(またはカチオンと上記アニオンとの有機塩)のアルコキシシリル基が、加水分解反応と重縮合反応とを利用するゾルゲル反応によってポリシロキサン骨格に導入される。
有機−無機複合薄膜において、カチオンは、−Si−R−基を有していればよく、−Si−R−N+≡構造を有する窒素含有カチオンであることが好ましい。Rは、アルキレン基(アルキリデン基も含む)、−R1−A−基、−R1−A−R2−基であり、R1およびR2はそれぞれアルキレン基であり、Aはアリーレン基である。−R1−A−基および−R1−A−R2−基においては、R1がSiに結合し、AまたはR2がNに結合している。
R、R1およびR2のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、1,4−ブチレンなどのC1-6アルキレン基(アルキリデン基も含む)が好ましく、プロピレン、トリメチレンなどのC1-4アルキレン基であってもよい。Aで表されるアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンなどのC6-14アリーレン基が好ましい。窒素含有カチオンは、窒素含有複素環式カチオンであってもよく、アンモニウムカチオンであってもよい。
有機−無機複合薄膜において、カチオンは、−Si−R−基を有するアルキルアンモニウムカチオンであることが好ましい。このようなカチオンは、下記式(C)で表される状態で有機−無機複合薄膜に含まれている。
(式中、R4、R5、およびR6は、それぞれアルキル基を示す。)
4、R5およびR6で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどのC1-22アルキル基(好ましくはC1-20アルキル基)が例示される。R4、R5およびR6は、全てまたは2つが同じであってもよく、全てが異なっていてもよい。アルキル基のうち、C1-4アルキル基が好ましく、R4、R5、およびR6の全てがC1-4アルキル基であってもよく、これらのうち2つがC1-4アルキル基であり、残る1つが、C6-22アルキル基(またはC6-20アルキル基)であってもよい。
上記のカチオンは、有機−無機複合薄膜に導入される前は、−Si−R基が、下記のトリアルコキシシリルアルキル基であるカチオンである。
(式中、R7、R8、およびR9は、それぞれアルキル基を示し、Rは前記に同じである。)
7、R8、およびR9で表されるアルキル基としては、それぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどのC1-4アルキル基が挙げられる。なお、高い加水分解速度が得られ易い観点からは、メチル基やエチル基(中でもメチル基)が好ましい。
有機−無機複合薄膜に導入される前のカチオンの具体例としては、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムカチオン、N−トリメトキシシリルプロピル−N−テトラデシル−N,N−ジメチルアンモニウムカチオン、N−トリメトキシシリルプロピル−N−オクタデシル−N,N−ジメチルアンモニウムカチオン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ドデシル−N−メチルアンモニウムカチオン、N−トリメトキシシリルベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムカチオン、N−トリメトキシシリルエチルベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
有機−無機複合薄膜中に含まれる有機塩の含有量は、例えば、0.005〜2質量%であり、0.01〜2質量%または0.05〜0.5質量%であることが好ましい。有機塩の含有量がこのような範囲である場合、色素の高い感度が得られ易い。
有機−無機複合薄膜は、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、充填剤、補強材、着色剤、顔料など)を含むことができる。有機−無機複合薄膜は、必要に応じて、コロイダルシリカを含んでもよい。有機−無機複合薄膜中のコロイダルシリカの含有量は、例えば、10〜60質量%であり、30〜50質量%または40〜50質量%であることが好ましい。
有機−無機複合薄膜の厚みは、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、0.1〜10μmであってもよい。pHセンサに使用する場合には、例えば、1〜5μmから適宜決定でき、1〜3μmであることが好ましい。
(有機−無機複合薄膜の製造方法)
有機−無機複合薄膜は、アルコキシシリル基を含む上記のカチオンと、上記のアニオンとの有機塩を形成し(第1工程)、この有機塩を加水分解反応および重縮合反応(を利用するゾルゲル反応)によりポリシロキサン骨格に組み込み(第2工程)、得られる反応混合物を基材に塗布して加熱すること(第3工程)により製造できる。
(第1工程)
第1工程では、上記のカチオンとアニオンとを溶媒に溶解させることにより有機塩を含む溶液を調製する。カチオンおよびアニオンは、通常、別の塩の形態でそれぞれ準備される。これらの別の塩のカウンターイオンとしては、カチオンおよびアニオンが解離し易いものが適宜選択される。
溶媒としては、カチオンおよびアニオンを溶解して有機塩を形成できればよく、例えば、水を用いてもよく、メタノール、エタノールなどのアルコールなど、各種有機溶媒を使用してもよく、これらの混合溶媒を用いてもよい。
第1工程は、必要に応じて、加熱下または冷却下で行ってもよいが、室温(例えば、20〜30℃)で行うこともできる。第1工程は、大気雰囲気下で行うことができる。
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られるアルコキシシリル基を含む有機塩と、加水分解縮合性基を有するシラン化合物とを、加水分解反応および重縮合反応を利用するゾルゲル反応に供することにより、ポリシロキサン骨格を形成する。なお、第2工程には、公知のゾルゲル反応の条件が適宜採用できる。
加水分解縮合性基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ基などのアルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)が例示される。シラン化合物は、加水分解縮合性基を1つ有していればよく、2つ以上有していてもよい。
シラン化合物は、加水分解縮合性基以外の有機基を有していてもよい。このような有機基としては、アルキル基の他、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基などの官能基を有する炭化水素基(アルキル基、アリール基など)などが挙げられる。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどのC1-4アルキル基が好ましい。官能基を有するシラン化合物としては、シランカップリング剤として使用される材料が好ましい。
シラン化合物は、有機−無機複合薄膜の用途に応じて適宜選択できる。シラン化合物のうち、アルキルトリアルコキシシラン、シランカップリング剤(グリシドキシアルキルトリアルコキシシランなど)が好ましい。アルキルトリアルコキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランなどのシランカップリング剤とを併用してもよい。この場合、シラン化合物に占めるアルキルトリアルコキシシランの比率を、例えば、30〜90モル%、好ましくは50〜80モル%または60〜80モル%とすると、有機−無機複合薄膜の耐久性をさらに高めることができる。
有機塩とシラン化合物とのモル比は、例えば、1:100〜1:5000の範囲で適宜決定でき、1:500〜1:2000または1:750〜1:1250であってもよい。モル比がこのような範囲である場合、色素の高い感度が得られ易く、また色素の溶出も抑制し易い。
第2工程は、有機塩基および/または酸の存在下で行われる。有機塩基としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物やアンモニアなどの無機有機塩基を用いてもよく、アミン、窒素含有複素環化合物(イミダゾール、1−メチルイミダゾール、イミダゾリンなど)などの有機塩基を用いてもよく、これらを併用してもよい。酸としては、塩酸、硫酸などの無機酸を用いてもよく、酢酸などの有機酸を用いてもよく、これらを併用してもよい。
第2工程は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどの有機溶媒、またはこれらの混合溶媒が使用される。第2工程は、溶媒中で、有機塩と、シラン化合物とを混合することにより行ってもよく、有機塩を含む溶液とシラン化合物を含む溶液とを混合することにより行ってもよい。複数のシラン化合物を用いる場合には、予め混合した後に、有機塩と混合してもよく、有機塩と、各シラン化合物とを混合してもよい。
第2工程は、大気中で行うことができる。第2工程は、加熱下または冷却下で行ってもよいが、室温(例えば、20〜30℃)で行うこともできる。
第2工程では、各成分を混合することにより、シリカを含む流動性のゾルが形成される。このゾルを用いて、続く第3工程において有機−無機複合薄膜を形成する。
(第3工程)
第3工程では、第2工程で得られた反応混合物(シリカゾル)を、基材の表面に塗布することで塗膜を形成し、加熱することにより、有機−無機複合薄膜を形成する。基材としては、ガラス、セラミックス、石英などの無機系の基材が好ましい。
加熱温度は、溶媒の種類に応じて適宜設定でき、例えば、100〜200℃であり、100〜150℃であることが好ましい。加熱時間は、特に制限されないが、例えば、1〜20時間であり、1〜10時間であってもよい。
(pHセンサ)
本発明の有機−無機複合薄膜は、有機−無機複合薄膜の光学特性(例えば、吸収(励起)特性および/または発光特性)と、pH応答性とを関連付けることで、pHセンサとして利用できる。色素骨格は、有機塩の形態で有機−無機複合薄膜に導入されているため、有機−無機複合薄膜の吸収(励起)または発光スペクトルにおいて、色素に特徴的なピークのピーク強度が、pHの変動に応じて変化する。そのため、このピーク強度と、有機−無機複合薄膜が浸漬される溶液のpHとを関連付けることで、ピーク強度を測定することによりpHを把握することができる。従って、pHセンサとして有機−無機複合薄膜を利用する場合には、pH応答性の色素骨格が導入された有機−無機複合薄膜を利用すれば簡便である。
pHの変動と関連付ける場合、有機−無機複合薄膜の光学スペクトルにおけるピーク強度の変動は、基準となるピークとのピーク強度比に基づいて評価すると、スペクトル測定の感度に左右されることなくpHを評価することができる。例えば、pHが変動してもピーク強度が変化しない基準物質を既知濃度で有機−無機複合薄膜に添加しておき、この基準物質のピークのピーク強度と、有機−無機複合薄膜に含まれる色素のピーク強度とのピーク強度比と、pHの変動との関係を予め調べ、この関係に基づいて、測定したピーク強度比からpHセンサが浸漬されている溶液のpHを求めることができる。また、蛍光励起スペクトルにおいて特徴的な発光のピークが少なくとも2つあるような色素骨格が導入された有機−無機複合薄膜を用いる場合には、一方の発光のピークを基準として、ピーク強度比を求め、このピーク強度比とpH変動との関係を予め調べておき、この関係に基づいて、pHを求めることができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
合成例1(トリメトキシシリル基を有する蛍光色素(MSi−HPTS)の合成)
ピラニン(1)(9.8mg,95.0μmol)をメタノール(1.8mL)に溶かして超音波により十分拡散させた。得られたピラニン溶液に、撹拌下で、濃度60質量%のオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(2)のメタノール溶液を滴下することにより、均一な溶液を得た。このとき、化合物(2)の添加量は、239mg(289μmol)であった。溶液から溶媒を減圧留去することで、粘性液体として、下記式で表されるMSi−HPTSを定量的に得た。
得られたMSi−HPTSの1H−NMRの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 9.35 (s, 1H), 9.23 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 9.13 (d, 1H, J = 9.6Hz), 9.06 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 8.61 (d, 1H, J = 9.6 Hz), 8.29 (s, 1H), 3.55 (s, 27H), 3.22-3.17 (m, 12H), 2.99 (s, 18 H), 2.61 (1 H), 1.77-1.73 (m, 6 H), 1.67-1.63 (m, 6 H), (m, 90 H), 0.90 (t, 9 H, J = 6 Hz), 0.58 (t, 6 H, J = 8 Hz).
実施例1(MSi−HPTSを含む有機−無機複合薄膜の作製)
(1)原料溶液の調製
ピラニン(1)(7.2mg,13μmol)、濃度60質量%のオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(2)のメタノール溶液、およびメタノール(0.25mL)を混合することにより、MSi−HPTS溶液を調製した。このとき、化合物(2)の添加量は、33mg(39μmol)であった。また、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(GPTMS)(1.6g,7mmol)、1−メチルイミダゾール(MI)(0.4g,5.0mmol)、水(0.5mL,28mmol)、およびエタノール(2.6mL,45mmol))を混合することにより溶液Aを調製した。エチルトリエトキシシラン(ETEOS)(1.4g,7.0mmol)、濃度0.1mol/Lの塩酸水溶液(0.5mL,塩酸0.050mmol)、エタノール(2.6mL,45mmol)を混合することにより溶液Bを調製した。溶液Aおよび溶液Bをそれぞれ調製から約30分静置した。
(2)有機−無機複合薄膜の作製
MSi−HPTS溶液に、溶液Aおよび溶液Bを加えて、6日間攪拌することにより混合物を得た。
幅1cmの短冊状にカットしたスライドガラスを、濃度30質量%の硝酸水溶液に浸漬し、蒸留水およびエタノールで洗浄し、乾燥させた。スライドガラスの片面をマスキングした後、上記の混合物を3mm/sの速度でディップコートした。得られた被覆物を、140℃で4時間熱処理することにより、有機−無機複合薄膜を作製した。得られた有機−無機複合薄膜の厚みは、2μmであり、透明であった。
(3)光学スペクトル測定
上記(2)で得られたMSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜を、濃度0.1mol/Lのリン酸緩衝溶液中に浸漬し、励起スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。測定は、pHがそれぞれ、3、4、5、6、7、8、および9であるリン酸緩衝溶液中で行った。
得られた有機−無機複合薄膜の励起スペクトルおよび蛍光スペクトルを図1および図2にそれぞれ示す。
図2の蛍光スペクトルでは、505nmに1種類のピークが確認された。このピークは、ピラニンの蛍光スペクトルでも確認され、光有機プロトン移動に由来するものである。このことから、図2に示されるピークは、ピラニン骨格の光誘起プロトン移動に由来し、蛍光色素骨格の蛍光特性が有機−無機複合薄膜に導入された後も保存されていると示唆される。
図1の励起スペクトルでは、405nmと455nmの2つのピークが確認された。これらのピークは、それぞれ、ピラニンの励起スペクトルでも確認されることから、ピラニン骨格に由来するものと言える。また、405nmのピークは、pHが増加してもほとんど変化しないのに対し、455nmのピークは、pHの増加に応じて強度が増加している。なお、405nmのピークは、ピラニン骨格の酸型の化学種に由来し、455nmのピークはピラニン骨格のプロトン脱離体である有機塩基型の化学種に由来する。
このように、励起スペクトルにおいては、405nmのピークはpH変化に対して変化がなく、455nmのピークはpH変化に応じて強度が増加する一方、蛍光スペクトルでは、505nmの波長のピーク強度がpH変化に応じて増加する。そのため、405nmの波長の励起光に由来する505nmの発光波長のピーク強度を基準として利用し、この基準に対する455nmの波長の励起光に由来する505nmの発光波長のピーク強度の変化を調べれば、pHを把握することができる。よって、有機−無機複合薄膜をpHセンサとして利用することができると考えられる。
各pHについて、波長405nmおよび455nmの励起光のそれぞれに由来する505nmの蛍光のピーク強度I405nmおよびI455nmを求め、I455nmの、基準となるI405nmに対する比(=I455nm/I405nm)を算出した。図3に、強度比I455nm/I405nmとpHとの関係を示す。また、図3には、参照として、下記式で表されるHPTS−IPを用いて作製した有機−無機複合薄膜を用いた評価結果も合わせて示す。
なお、HPTS−IPは、非特許文献1に記載された手順に従って合成し、有機−無機複合薄膜は、MSi−HPTS溶液に代えて、合成したHPTS−IP13μmolを0.25mLのメタノールに溶解させた溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして作製した。
図3に示されるように、MSi−HPTSを用いた実施例1の有機−無機複合薄膜では、pH3〜9の範囲で、pHの増加に伴って、強度比I455nm/I405nmが増加しており、pH応答性を有していると言える。ピーク強度I405nmおよびI455nmを測定し、強度比I455nm/I405nmを算出すれば、この強度比に基づいてpHを把握することができる。図3において、pH4〜8の範囲では、特に、pHに対する強度比I455nm/I405nmの増加率が大きくなっており、感度が高くなっていると言える。pH7〜8の範囲では特に、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜は、参照色素であるHPTS−IPを用いた有機−無機複合薄膜に比べて、pHに対する強度比I455nm/I405nmの増加率が大きくなっており、感度が高いことが分かる。また、算出したMSi−HPTSを用いた実施例1の有機−無機複合薄膜のpKa値は、6.38であった。これは、生理学的に用いられるpH領域に鋭敏に応答することを示しており、微生物培養容器用のpHセンサに応用できることが示唆された。
(4)pH応答性の評価
図4に示す評価装置を用いて、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜のpH応答性を評価した。評価装置1は、溶液を収容する容器(セル)2と、セル2に緩衝溶液を導入する導入管3と、セル2内の溶液を排出する排出管4と、薄膜状のpHセンサ5と、pHセンサ5に405nmおよび455nmの各励起光を照射するための発光ダイオード(LED)6a,6bと、pHセンサ5からの発光を検出するための光電子倍増管(PMT)7と、PMTからの検出値を評価するためのコンピュータ(PC)8とを備えている。また、セル2には、参照用にガラス電極を用いたpHメータ9も装着している。
セル2内に、導入管3からpH6.8およびpH8.0のリン酸緩衝溶液(濃度0.1mol/L)を一定時間毎に交互に送液することで、セル2内の溶液のpHを6.8から8.0に変化させ、次いで8.0から再度6.8に変化させた。このとき、セル2内の溶液の温度は、38℃に制御するとともに、必要に応じて、排出管4よりセル2内の溶液を排出させた。このとき、セル2内の溶液のpHは、ガラス電極を用いたpHメータ9でモニタした。また、pHセンサ5としてセル2内の壁面にスライドガラス側を貼り付けた有機−無機複合薄膜に、LED6a,6bからそれぞれ波長405nmおよび455nmの励起光を照射し、pHセンサ5からの発光をPMT7およびPC8により解析して、強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化をプロットした。また、上記の6.8から8.0および8.0から6.8へのpH変化を1サイクルとして、3サイクル繰り返した際についても、強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化を調べた。
図5は、強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化を示すグラフ(実線)である。図5には、ガラス電極を用いたpHセンサ9によるpHの経時変化(点線)も合わせて示す。図6は、溶液のpH変化を3サイクル繰り返した際のMSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜における強度比I455nm/I405nmの経時変化を示すグラフである。図5から、薄膜状のpHセンサ(有機−無機複合薄膜)5による強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化は、従来のpHセンサ9のpHの経時変化とほぼ同じ挙動を示しており、ほぼ同等のpH応答性を示すことが分かった。また、図6に示されるように、薄膜状のpHセンサ(有機−無機複合薄膜)5は、2サイクルおよび3サイクル目も1サイクル目とほぼ同じ強度比I455nm/I405nmの経時変化を示しており、ベースラインもほぼ同じである。このことから、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜がpHセンサとして良好な再現性を有することが分かる。
(5)温水中における耐久性(pH応答性の変化)の評価
図4の評価装置の装置を用いて、セル2内にpH6.8のリン酸緩衝溶液(濃度0.1mol/L)を入れて、攪拌しながら、LED6a、6bにより、405nmおよび455nmの励起光を1週間パルス照射した。このとき、セル2内の溶液の温度は38℃に維持した。また、1〜4日目および7日目について、1日1回に、pH6.8からpH8.0、pH8.0からpH6.8へとセル2内の溶液のpHを変化させて強度比I455nm/I405nmを求め、pH6.8における強度比とpH8.0における強度比との差(ΔI455nm/I405nm)を算出した。この強度比の差は、pH応答性の感度を示す。図7に、ΔI455nm/I405nmの経時変化を示す。図7には参照として、上記(3)で作製したHPTS−IPを用いた有機−無機複合薄膜を用いた評価結果も合わせて示す。
図7から、HPTS−IPを用いた有機−無機複合薄膜では、1日目から薄膜の表面に凹凸が生じ、7日経過後にはスライドガラスから剥離していた。また、4日目までΔI455nm/I405nmが徐々に増加した。それに対し、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜は、7日経過後も初日と同様にpH応答性の高い感度を維持しており、温水(温かい緩衝溶液)中、励起光をパルス照射した場合でも性能が維持されていることが分かる。また、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜の状態を目視で観察したところ、2日目から薄膜の表面には小さな凹凸が生じたものの、7日経過後も薄膜はスライドガラスに付着しており、剥離は全く見られなかった。
(6)温水中における耐久性(色素の溶出)の評価
MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜を、蒸留水に30分間浸漬して洗浄し、十分に乾燥させた。洗浄および乾燥した有機−無機複合薄膜と、蒸留水5mLとを、サンプル管に入れ、サンプル管を38℃に維持した水浴に14日間浸漬させた。このとき、1日毎に、温水の吸収スペクトルを測定し、405nmにおける吸光度λ1を求めた。一方、ピラニンの濃度既知の水溶液の吸収スペクトルを測定して、405nmにおける吸光度λ0を求めた。λ1およびλ0から、上記の温水に含まれる色素の量を算出した。温水中に溶出した色素の量は、1日目には0.01nmol未満であり、2日目には0.1nmol未満、3日以降は、0.2nmol未満と、少なく、有機−無機複合薄膜からの色素の溶出は抑制されていると言える。
(7)γ線照射に対する耐久性の評価
スライドガラスに代えて石英基板を用いたこと以外は、上記(2)と同様にしてMSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜を形成した。有機−無機複合薄膜を石英基板毎、60Coによるγ線(20kGy)に暴露させた。γ線への暴露前および暴露後の有機−無機複合薄膜について、pH6.8から8.0、8.0から6.8に変化させた場合のpH応答性を、上記(4)と同様にして測定し、強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化を調べた。結果を図8に示す。また、このときのガラス電極を用いたpHセンサ9によるpHの経時変化も合わせて図8に示す。さらに、上記の6.8から8.0および8.0から6.8へのpH変化を1サイクルとして、3サイクル繰り返した際の強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化を図9に示す。
図8から、γ線への暴露前に比べて、暴露後は、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜の強度比I455nm/I405nmは約0.1低下したものの、pHセンサ9のpH変化とほぼ同等の経時変化が示された。このことから、γ線暴露後も、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜は、pH応答性を有していることが分かる。また、図9に示されるように、γ線暴露後においても、2サイクルおよび3サイクル目も1サイクル目とほぼ同じ経時変化が得られていることから、pHセンサとしての再現性も確認された。
実施例2
(1)において、GPTMSの量を、4.2mmolに変更し、ETEOSの量を、9.8mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、溶液Aおよび溶液Bを調製し、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜を作製した。得られた有機−無機複合薄膜を、実施例1の(5)と同様にして、38℃のリン酸緩衝溶液に浸漬し、励起光を1週間パルス照射した。このとき、MSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜は、3日目から表面に小さな凹凸が生じたものの、スライドガラスからの剥離は見られず、実施例1に比べて耐久性が向上していた。
実施例3
実施例1の(2)において、混合物に、コロイダルシリカ(平均粒径:75nm)を43質量%添加したこと以外は、実施例1と同様にしてMSi−HPTSを用いた有機−無機複合薄膜を作製した。得られた有機−無機複合薄膜は乳白色であった。また、有機−無機複合薄膜を用いて、強度比I455nm/I405nmおよびpHの経時変化を実施例と同様にして確認したところ、従来のpHセンサ9のpHの経時変化に匹敵する挙動を示していることが確認された。また、薄膜状のpHセンサ(有機−無機複合薄膜)は、2サイクルおよび3サイクル目も1サイクル目とほぼ同じ強度比I455nm/I405nmの経時変化を示しており、pHセンサとして良好な再現性を有することが確認された。
合成例および実施例では、ピラニンを導入した有機−無機複合薄膜を用いた例を示したが、ピラニン以外の他の色素を用いる場合でもピラニンの場合と同様に有機−無機複合薄膜を作製することができる。MSi−HPTSでは、ピラニン骨格がシリカ骨格内に組み込まれていることで、温水やγ線に対する耐久性が得られているため、他の色素を用いた場合でも、同様に高い耐久性が得られることが示唆される。また、MSi−HPTSは、ピラニンに由来する光学特性を示すことから、有機−無機複合薄膜は、導入した色素に応じた光学特性を示すことが示唆される。よって、導入した色素に応じたpH特性が得られると考えられる。
本発明に係る有機−無機複合薄膜によれば、培養液などの温かい溶液中に長時間浸漬したり、この状態で光線を照射したりしても、色素の溶出が抑制される。また、γ線などの放射線に対する耐久性が高く、滅菌処理に対する耐久性が高い。よって、培養容器中で使用されるpHセンサとして有用である。特に、薄膜状であるため、小型の培養容器にも用いることができる。
1:pH応答性の評価装置、2:セル、3:導入管、4:排出管、5:薄膜状のpHセンサ、6a,6b:LED、7:PMT、8:PC、9:ガラス電極を用いたpHセンサ

Claims (8)

  1. ポリシロキサン骨格と、前記ポリシロキサン骨格に組み込まれた有機塩と、を含む有機−無機複合薄膜であって、
    前記有機塩は、色素骨格を有するアニオンと、ケイ素含有基を有するカチオンとで構成され、前記カチオンは、前記ケイ素含有基に含まれるケイ素原子を介して前記アニオンとともに前記ポリシロキサン骨格分散して組み込まれている、有機−無機複合薄膜
  2. 前記色素骨格は、下記式(P1)、(P2)または(P3):
    で表される骨格を含む、請求項1に記載の有機−無機複合薄膜。
  3. 前記アニオンは、下記式(P1−1)、(P1−2)、(P2−1)、(P2−2)、(P3−1)、および(P3−2):
    からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1または2に記載の有機−無機複合薄膜。
  4. 前記カチオンは、−Si−R−基(式中、Rはアルキレン基、−R1−A−基、または−R1−A−R2−基であり、R1およびR2はそれぞれアルキレン基であり、Aはアリーレン基である)を有するアルキルアンモニウムカチオンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機−無機複合薄膜。
  5. 前記色素骨格は、下記式(P1)、(P2)または(P3):
    で表される骨格を含み、
    前記カチオンは、−Si−R−基(式中、Rはアルキレン基、−R1−A−基、または−R1−A−R2−基であり、R1およびR2はそれぞれアルキレン基であり、Aはアリーレン基である)を有するアルキルアンモニウムカチオンであり、
    前記有機塩の含有量は、0.01〜2質量%である、請求項1に記載の有機−無機複合薄膜。
  6. 前記アニオンは、前記有機−無機複合薄膜の吸収、励起または発光スペクトルにおいて、前記色素骨格に特徴的なピークの強度がpHの変動に応じて変化するpH応答性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機−無機複合薄膜。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機複合薄膜で構成された、pHセンサ。
  8. アルコキシシリル基を含むカチオンと色素骨格を有するアニオンとの有機塩を形成する第1工程と、
    前記有機塩と、加水分解縮合性基を有するシラン化合物とを、加水分解反応および重縮合反応させてポリシロキサン骨格を形成するとともに、前記有機塩を前記ポリシロキサン骨格分散した状態で組み込む第2工程と、
    前記第2工程で得られる反応混合物を基材に塗布して加熱する第3工程と、を含む、有機−無機複合薄膜の製造方法。
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