JP6829128B2 - シリコーン部材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オイル、有機溶剤などの疎水性の液体と接触する部材に有用なシリコーン部材およびその製造方法に関する。
シリコーンは、柔軟で微細加工が容易であり、光透過性に優れるという理由から、種々の製品に用いられている。シリコーン製の部材は疎水性である。このため、オイル、有機溶剤などの疎水性の液体を接触させると、液体が部材に染み込むことで、部材が膨潤し変形するおそれがある。液体の染み込みを抑制するには、例えば、部材の表面を親水性にすることが考えられる。例えば、特許文献1には、C−N結合およびC=O結合を有し親水性の改質層を備えるシリコーン部材が記載されている。
特開2014−196386号公報 特開2004−35941号公報
特許文献1に記載されているように、シリコーン部材の表面を改質して親水性を付与する場合、形成される改質層の厚さはナノメートルオーダーである。改質層の厚さが極めて薄いため、これだけでは疎水性の液体の染み込みを充分に抑制することはできない。一方、シリコーン部材の表面に、酸化ケイ素などからなる非晶質(ガラス質)の親水性膜を形成することも考えられる。しかし、非晶質の膜は硬いため、比較的柔軟なシリコーン部材との馴染みが悪い。このため、膜割れが生じやすく、割れた部分から液体が染み込むおそれがある。この場合、親水性膜を薄くすれば、膜割れは生じにくくなる。しかし、薄膜化した分、液体の染み込みを抑制する効果は低下してしまう。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、疎水性の液体と接触しても液体が染み込みにくいシリコーン部材を提供することを課題とする。また、当該シリコーン部材を容易に製造することができる製造方法を提供することを課題とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明のシリコーン部材は、シリコーン製の基材と、該基材の表面に配置されるバリア積層体と、を備え、該バリア積層体は、有機成分を含む金属酸化物からなる二層以上の積層構造を有し、親水性を有する最表層と、該最表層と該基材との間に配置される一層以上の中間層と、を有することを特徴とする。
(2)上記課題を解決するため、本発明のシリコーン部材の製造方法は、シリコーン製の基材の表面に、有機成分を含む金属酸化物からなる一層以上のバリア層をプラズマCVD法により形成するバリア層形成工程と、該バリア層の最表面を改質処理して、親水性を有する最表層を形成する改質処理工程と、を有することを特徴とする。
(1)本発明のシリコーン部材においては、シリコーン製の基材の表面に、二層以上の積層構造を有するバリア積層体が配置される。バリア積層体の最表層は、親水性を有する。このため、シリコーン部材のバリア積層体側にオイル、有機溶剤などの疎水性の液体が接触しても、液体が基材に染み込みにくい。また、バリア積層体は、親水性の最表層だけでなく、基材と接する一層以上の中間層を有する。つまり、最表層と基材との間には中間層が介在する。このため、シリコーン製の基材の表面に直接一層の親水性層を形成するのとは異なり、親水性を有する最表層を厚くしなくても、バリア積層体の厚さを確保することができる。これにより、疎水性の液体の染み込み抑制効果が高くなる。
バリア積層体の各層は、炭素などの有機成分を含む金属酸化物からなる。このため、酸化ケイ素などの金属酸化物のみからなる層とは異なり、層の硬さを軟らかくすることができる。また、炭素の含有量により層の硬さを調整することができる。例えば、基材と接する層については、炭素の含有量を相対的に多くして、軟らかな層にする。こうすることで、基材との親和性を良くし、密着性を向上させることができる。反対に、最表層については、炭素の含有量を相対的に少なくして、非晶質に近い硬い層にする。こうすることで、疎水性の液体の染み込み抑制効果を高くすることができる。
以上より、本発明のシリコーン部材においては、疎水性の液体の染み込みによる膨潤が抑制される。また、バリア積層体の剥離や最表層の割れが抑制されるため、耐久性も高い。
(2)本発明のシリコーン部材の製造方法においては、シリコーン製の基材の表面に、まず一層以上のバリア層を形成し、次にその最表面を改質処理することにより、当該最表面に親水性を付与する。すなわち、バリア層の最表層が親水性になる。最初に形成したバリア層は、改質処理後に、親水性を有する最表層と、それ以外の一層以上の中間層と、を有するバリア積層体になる。このように、本発明のシリコーン部材の製造方法によると、上記本発明のシリコーン部材を容易かつ短時間に製造することができる。
ちなみに、特許文献2には、樹脂基材の表面に、高周波プラズマCVD法によりコーティング膜を形成する表面処理方法が記載されている。しかしながら、特許文献2には、光学部品の曲面に均一な膜を形成するための方法が記載されているだけであり、特許文献2に記載されている表面処理方法においては、基材の材質としてシリコーンは想定されていない。よって、形成されるコーティング膜の最表層を親水性にすることも、記載されていない。
本発明のシリコーン部材の一実施形態の断面図である。 同シリコーン部材の製造方法におけるバリア層形成工程の概略図である。 同シリコーン部材の製造方法における改質処理工程の概略図である。
まず、本発明のシリコーン部材およびその製造方法の一実施形態を示す。図1に、本実施形態のシリコーン部材の断面図を示す。図1に示すように、シリコーン部材1は、基材10と、バリア積層体20と、を有している。基材10は、シリコーンゴム製であり、200mm四方の正方形シート状を呈している。基材10の厚さは3mmである。バリア積層体20は、基材10の上面に配置されている。バリア積層体20は、基材10の上面全体を被覆している。バリア積層体20の厚さは、75nmである。シリコーン部材1の可視光透過率は、94%である。
バリア積層体20は、最表層21と、中間層22と、を有している。最表層21および中間層22は、いずれも有機成分を含むケイ素酸化物からなる。最表層21の厚さは、4nmである。最表層21は、親水性を有している。最表層21の水接触角は、70°である。最表層21に含有される炭素量は、最表層21のX線光電子分光測定により得られるケイ素(Si)原子、酸素(O)原子、炭素(C)原子の合計原子数を100%とした場合の9%である。中間層22は一層からなり、最表層21と基材10との間に配置されている。中間層の厚さは、71nmである。中間層22に含有される炭素量は、中間層22のX線光電子分光測定により得られるSi原子、O原子、C原子の合計原子数を100%とした場合の65%である。
シリコーン部材1の製造方法は、以下の通りである。図2に、バリア層形成工程を示す。図3に、改質処理工程を示す。図2に示すように、まず、アルゴン(Ar)とヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)とを含むガス雰囲気中で、基材10の上面にマイクロ波プラズマPを照射して、基材10の上面に有機成分を含むケイ素酸化物からなる一層のバリア層200を形成する(バリア層形成工程)。次に、酸素(O)ガス雰囲気中で、バリア層200の上面にマイクロ波プラズマPを照射して改質処理を行うことにより、親水性を有する最表層21を形成する(改質処理工程)。こうすることにより、基材10の上面に、最表層21と、中間層22と、を有するバリア積層体20が形成される。
シリコーン部材1の最表層21は、親水性を有する。このため、シリコーン部材1のバリア積層体20側にオイル、有機溶剤などの疎水性の液体が接触しても、液体が基材10に染み込みにくい。したがって、シリコーン部材1の膨潤が抑制される。また、バリア積層体20の厚さは、75nmである。このため、最表層21の厚さが4nmと薄くても、バリア積層体20として、疎水性の液体の染み込みを抑制するのに充分な厚さを確保することができる。これにより、疎水性の液体の染み込み抑制効果が高くなる。バリア積層体20を構成する最表層21および中間層22は、いずれも有機成分を含むケイ素酸化物からなる。このうち、最表層21の炭素含有量は、9%である。中間層22の炭素含有量は、65%である。最表層21の炭素含有量は、中間層22の炭素含有量よりも少ない。このため、中間層22は、最表層21よりも軟らかい。これにより、疎水性の液体の染み込み抑制と、基材に対する密着性と、の両立が実現されている。
以上、本発明のシリコーン部材およびその製造方法の一実施形態を示したが、本発明のシリコーン部材およびその製造方法は、上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。次に、本発明のシリコーン部材およびその製造方法について詳しく説明する。
<シリコーン部材>
本発明のシリコーン部材は、シリコーン製の基材と、該基材の表面に配置されるバリア積層体と、を備える。本明細書において「シリコーン」とは、シリコーン樹脂およびシリコーンゴムの両方を含む概念である。基材の形状は特に限定されず、用途に応じて種々の形状を採用すればよい。例えば、本発明のシリコーン部材を、ホースやマイクロチューブなどに適用する場合には、円筒状の基材の内周面にバリア積層体を配置するとよい。
バリア積層体は、基材の一面に配置されていても、二面以上に配置されていてもよい。バリア積層体は、有機成分を含む金属酸化物からなる二層以上の積層構造を有する。金属酸化物としては、ケイ素酸化物、チタン酸化物、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物などが挙げられる。バリア積層体を構成する各層(最表層および中間層の各層)に含まれる金属酸化物は、同じでも異なっていてもよい。バリア積層体を構成する各層に含まれる炭素量は、同じでも異なっていてもよい。例えば、層の炭素含有量を変化させることにより、層の硬さを調整することができる。
バリア積層体は、親水性を有する最表層と、該最表層と基材との間に配置される一層以上の中間層と、を有する。最表層は、改質により形成されたものでもよく、成膜されたものでもよい。例えば、改質により、水酸基、アミノ基、C−N結合、C=O結合、アミド結合(O=C−N)などが付与された形態が挙げられる。成膜されたものである場合には、単分子膜であってもよい。
最表層を非晶質に近い硬い層にして、疎水性の液体の染み込み抑制効果を高めるという観点から、最表層の炭素含有量は、比較的少ない方が望ましい。最表層の炭素含有量は、中間層の炭素含有量よりも少ないことが望ましい。例えば、最表層に含有される炭素量は、該最表層のX線光電子分光測定により得られる金属原子、O原子、C原子の合計原子数を100%とした場合の5%以上30%以下であることが望ましい。
上記実施形態においては、中間層は一層であったが、中間層は二層以上でもよい。二層以上の場合には、層ごとに炭素含有量を変えてもよい。例えば、最表層から基材方向に、炭素含有量を増加させることが望ましい。中間層のうち、基材と接する層(基底層)については、基材との親和性を良くして密着性を向上させるという観点から、炭素含有量は比較的多いことが望ましい。例えば、基底層に含有される炭素量は、該基底層のX線光電子分光測定により得られる金属原子、O原子、C原子の合計原子数を100%とした場合の30%より多く75%以下であることが望ましい。
最表層が親水性を有するか否かは、最表層の水接触角を測定して判断すればよい。本明細書においては、JIS R3257:1999に準じて測定された水接触角が80°以下の場合を、親水性を有すると判断する。好適な水接触角は、70°以下である。
バリア積層体の厚さは、特に限定されない。ある程度の厚さを確保して、疎水性の液体の染み込み抑制効果を高めるという観点から、バリア積層体の厚さは15nm以上であることが望ましい。30nm以上、さらには50nm以上であるとより好適である。一方、基材から剥離しにくくする、用途により透明性を確保するなどの観点から、バリア積層体の厚さは300nm以下であることが望ましい。200nm以下、さらには150nm以下であるとより好適である。また、最表層を薄くして割れにくくするという観点から、最表層の厚さは10nm以下であることが望ましい。8nm以下、さらには5nm以下であるとより好適である。
最表層の厚さは、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により求めることができる。上記実施形態では、SIMS分析装置としてアルバック・ファイ(株)製「PHI(登録商標)ADEPT−1010」を用い、一次イオン種Cs、一次加速電圧1.0KVとして、約100μm角の範囲で検出分析した結果を採用した。この際、最表面から中間層に到達するまで観測を行い、炭素(C)濃度が最小値の2倍になるときの最表面からの深さ、または、中間層のC濃度の半分になるときの最表面からの深さのうち、小さい方を最表層の厚さとした。なお、SIMS分析においては、最表面が汚染しないように留意する必要があり、クリーン環境などを保てない場合には、最表面へ大気中の有機物が付着することによる最表面のC濃度増加を考慮する必要がある。この場合には、有機物の付着によるものと考えられる範囲を除外して、C濃度が最小値の2倍になるときの最表面からの深さ、または、中間層のC濃度の半分になるときの最表面からの深さ、または、酸素(O)の二次イオン強度の最大値の半分になるときの深さのうち、最も小さいものを最表層の厚さとする。SIMS分析は一例であり、最表層の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面構造解析や、X線光電子分光測定などによっても求めることができる。深さ方向への成分分布を精度よく検出することができるという理由から、SIMS分析が好適である。
本発明のシリコーン部材を、ホースやマイクロチューブなどに適用して、中を流れる流体を視認できるようにしたい場合など、用途により、シリコーン部材の透明性が必要になる場合がある。この場合、シリコーン部材の可視光透過率を80%以上にするとよい。可視光透過率を90%以上にするとより透明性が高くなる。本明細書においては、JIS A5759:2016に準拠した分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用い、波長380〜780nmの透過スペクトルを測定して、可視光透過率を計算した。
<シリコーン部材の製造方法>
本発明のシリコーン部材の製造方法は、バリア層形成工程と、改質処理工程と、を有する。以下、各工程を説明する。
[バリア層形成工程]
本工程は、シリコーン製の基材の表面に、有機成分を含む金属酸化物からなる一層以上のバリア層をプラズマCVD法により形成する工程である。
プラズマCVD法においては、真空容器内に、原料ガスおよびキャリアガスを供給して所定のガス雰囲気を形成した後、プラズマを発生させて成膜を行う。原料ガスは、金属酸化物の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、有機成分を含むケイ素酸化物の層を形成する場合には、HMDSO、テトラエトキシシラン(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)などのガスを用いればよい。有機成分を含むチタン酸化物の層を形成する場合には、オルトチタン酸テトライソプロピル(TTIP)、チタン酸テトラエチル、チタン酸イソプロピルなどのガスを用いればよい。キャリガスとしては、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスや窒素などが挙げられる。成膜する際の圧力は、1〜100Pa程度にすればよい。
プラズマの発生方法は、特に限定されない。例えば、高周波(RF)電源を用いたRFプラズマや、マイクロ波電源を用いたマイクロ波プラズマなどを採用すればよい。なかでも、マイクロ波プラズマは、プラズマ密度が大きく成膜速度が大きいため生産性が高い、プラズマダメージが少なく薄膜の形成に適している、などの理由から好適である。マイクロ波の周波数は、特に限定されない。8.35GHz、2.45GHz、1.98GHz、915MHzなどが挙げられる。
[改質処理工程]
本工程は、先の工程において形成されたバリア層の最表面を改質処理して、親水性を有する最表層を形成する工程である。
改質処理の方法は特に限定されないが、短時間で処理できる、先の工程と連続して処理できるという理由から、プラズマを照射して行うことが望ましい。上述したように、プラズマにはRFプラズマやマイクロ波プラズマなどがあるが、プラズマ密度が大きく処理速度が大きい、プラズマダメージが少なく薄い層の形成に適しているなどの理由から、マイクロ波プラズマが好適である。
例えば、酸素を含むガス雰囲気中で、バリア層の最表面にマイクロ波プラズマを照射すればよい。これにより、金属原子と炭化水素基との結合が切断され、金属原子と酸素原子との結合が形成されると共に、水酸基などの親水性の官能基が導入される。酸素を含むガスとは、酸素のみでもよく、酸素とキャリアガスとの混合ガス、あるいは空気でもよい。酸素とキャリアガスとの混合ガスの場合、酸素の含有割合は、混合ガス全体の圧力を100%として15%以上であることが望ましい。キャリガスとしては、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスや窒素などが挙げられる。改質処理する際の圧力は、1〜100Pa程度にすればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<シリコーン部材の製造>
[実施例1]
以下のようにして、上記実施形態のシリコーン部材1を製造した(前出図1参照)。まず、真空容器内にシリコーンゴム製の基材(縦200mm×横200mm×厚さ3mm)を配置して、内部を0.5Pa以下の減圧状態にした。次に、真空容器内にArガスおよびHMDSOガスを供給して、合計圧力7Paの混合ガス雰囲気を形成した。それから、周波数2.45GHz、出力電力1kWにてマイクロ波プラズマを発生させて、60秒間成膜処理を行った。このようにして、基材の上面全体に、有機成分を含むケイ素酸化物からなる一層のバリア層を形成した。バリア層の厚さは75nmであった。
再び真空容器内を0.5Pa以下の減圧状態にした後、真空容器内にOガスを供給して、圧力6PaのOガス雰囲気を形成した。そして、周波数2.45GHz、出力電力1.5kWにてマイクロ波プラズマを発生させて、バリア層の上面にマイクロ波プラズマを10秒間照射した。このようにしてバリア層の上面を改質処理し、バリア層に親水性を有する最表層を形成した。最表層の厚さは4nm、水接触角は70°であった。製造したシリコーン部材を、実施例1のシリコーン部材と称す。実施例1のシリコーン部材は、本発明のシリコーン部材の概念に含まれる。
なお、水接触角については、JIS R3257:1999に準じて測定した(以下の比較例についても同じ)。すなわち、最表層に液量2μlの水を滴下して、水が最表層に接触してから1分以内の水接触角を測定した。
[比較例1]
実施例1と同じシリコーンゴム製の基材の上面全体に、親水性を有する改質層を形成した。まず、真空容器内に基材を配置して、内部を0.5Pa以下の減圧状態にした。次に、真空容器内にOガスを供給して、圧力6PaのOガス雰囲気を形成した。そして、周波数2.45GHz、出力電力1.5kWにてマイクロ波プラズマを発生させて、基材の上面にマイクロ波プラズマを10秒間照射した。このようにして基材の上面を改質処理し、基材の上面全体に親水性を有する改質層を形成した。改質層の厚さは4nm、水接触角は30°であった。製造したシリコーン部材を、比較例1のシリコーン部材と称す。
[比較例2]
実施例1と同じシリコーンゴム製の基材の上面全体に、親水性を有し、有機成分を含むケイ素酸化物膜を形成した。まず、真空容器内に基材を配置して、内部を0.5Pa以下の減圧状態にした。次に、真空容器内にArガス、Oガス、およびTEOSガスを供給して、合計圧力7Paの混合ガス雰囲気を形成した。それから、周波数2.45GHz、出力電力1kWにてマイクロ波プラズマを発生させて、60秒間成膜処理を行った。このようにして、基材の上面全体に、有機成分を含むケイ素酸化物膜を形成した。ケイ素酸化物膜の厚さは150nm、水接触角は60°であった。製造したシリコーン部材を、比較例2のシリコーン部材と称す。
[比較例3]
比較例2の製造方法において、マイクロ波プラズマの出力電力を0.5kWに、成膜時間を2秒間に変更して、基材の上面全体に、有機成分を含むケイ素酸化物膜を形成した。ケイ素酸化物膜の厚さは4nm、水接触角は60°であった。製造したシリコーン部材を、比較例3のシリコーン部材と称す。
<シリコーン部材の評価>
[評価方法]
製造したシリコーン部材の上面(改質および/または成膜が施された側)に、有機溶剤のトルエンを接触させて、シリコーン部材の変形の有無を観察した。まず、シリコーン部材の上面中央に、直径10mmの円筒状のステンレス管を配置した。次に、ステンレス管の内側にトルエンを10ml注入した。それから5分間経過した後、残留しているトルエンをスポイトで除去し、ステンレス管を取り外した。そして、シリコーン部材の上面におけるトルエン接触部と非接触部との厚さの差を、デジタルゲージ((株)小野測器製「DG−925」)にて測定した。この際、厚さの差が50μm未満であれば、変形なし(膨潤なし)と判断した。また、シリコーン部材を顕微鏡で観察し、形成された最表層(実施例1)、改質層(比較例1)、ケイ素酸化物膜(比較例2、3)の割れの有無を調べた。
[評価結果]
表1に、各シリコーン部材における割れおよび変形の有無をまとめて示す。表1には、比較例4として、シリコーンゴム製の基材自体にトルエンを接触させた時の結果も示す。
Figure 0006829128
表1に示すように、実施例1のシリコーン部材においては、最表層の割れも部材の変形も生じなかった。これに対して、極めて薄い改質層のみが形成された比較例1のシリコーン部材においては、改質層の割れは生じなかったが、厚さの差が300μm以上になり、基材のみの比較例4と同程度に部材が大きく変形していた。厚いケイ素酸化物膜が形成された比較例2のシリコーン部材においては、膜割れが生じ、厚さの差も250μm以上になり部材が大きく変形していた。薄いケイ素酸化物膜が形成された比較例3のシリコーン部材においては、膜割れは生じなかったが、厚さの差が250μm以上になり部材が大きく変形していた。
以上より、バリア積層体を備える本発明のシリコーン部材によると、疎水性の液体の染み込みによる膨潤が抑制されることが確認された。
1:シリコーン部材、10:基材、20:バリア積層体、21:最表層、22:中間層、200:バリア層、P:マイクロ波プラズマ。

Claims (10)

  1. シリコーン製の基材と、
    該基材の表面に配置されるバリア積層体と、を備え、
    該バリア積層体は、有機成分を含む金属酸化物からなる二層以上の積層構造を有し、親水性を有する最表層と、該最表層と該基材との間に配置される一層以上の中間層と、を有し、
    該バリア積層体の厚さは15nm以上300nm以下であり、
    該バリア積層体における任意の一層をX線光電子分光測定し、該一層に含有される金属原子、酸素原子、炭素原子の合計原子数を100%とした場合、該最表層に含有される炭素量は5%以上30%以下であり、該中間層のうち該基材と接する層に含有される炭素量は30%より多く75%以下であるシリコーン部材。
  2. 前記バリア積層体は、層ごとに炭素含有量が異なる請求項1に記載のシリコーン部材。
  3. 前記金属酸化物は、ケイ素酸化物、チタン酸化物、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物から選ばれる一種以上である請求項1または請求項2に記載のシリコーン部材。
  4. 前記最表層の水接触角は、80°以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシリコーン部材。
  5. 前記最表層の厚さは、10nm以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシリコーン部材。
  6. 可視光透過率が80%以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のシリコーン部材。
  7. 請求項1に記載のシリコーン部材の製造方法であって、
    シリコーン製の基材の表面に、有機成分を含む金属酸化物からなる一層以上のバリア層をプラズマCVD法により形成するバリア層形成工程と、
    該バリア層の最表面を改質処理して、親水性を有する最表層を形成する改質処理工程と、を有するシリコーン部材の製造方法。
  8. 前記改質処理は、プラズマを照射して行う請求項7に記載のシリコーン部材の製造方法。
  9. 前記プラズマは、マイクロ波プラズマである請求項8に記載のシリコーン部材の製造方法。
  10. 前記マイクロ波プラズマの照射による前記改質処理は、酸素を含むガス中で行う請求項9に記載のシリコーン部材の製造方法。
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