JP6826495B2 - 漏水位置検出システム - Google Patents

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Description

本発明は、廃棄物処分場などに敷設される遮水シートの漏水位置を検出するためのシステムに関する。
廃棄物処分場などでは、廃棄物中の液体が外部へ流れ出ること、廃棄物中の液体が地下水を汚染することなどを防ぐために、廃棄物が廃棄される窪地の上に遮水シートが敷設されることがある。このような遮水シートでは、亀裂などの破損が生じているとその役割を十分に果たせなくなるおそれがある。そのため、通常、破損の有無が定期的に検査され、遮水シートが破損している場合には破損が補修される。
遮水シートの破損の有無及び位置を検出するための漏水位置検出システムとして、例えば特許文献1に記載の漏水発生位置検出方式が提案されている。
特許文献1に記載の漏水発生位置検出方式は、遮水シートの上下どちらか一方の側に設けられた第1の電極と、遮水シートの他方の側に設けられ、複数の線状電極を格子状になるように配置するとともに、それらの交点部分には絶縁処理を施して成る第2の格子状の線状電極と、第1の電極に一端側を接続した電源と、電流検出回路と、電極切換器とを含む。
特許文献1に記載の電極切換器は、第2の格子状の線状電極における一本の線状電極のみを選択して電流検出回路に接続し、他の線状電極はすべて電源の他端側へ接続する。この電極切換器は、第2の格子状の線状電極の一端側にそれぞれ接続された複数のベース端子と、これら複数のベース端子に対応し電流検出回路に共通に接続された複数の第1の切換端子と、複数のベース端子に対応し電源の他方に共通に接続された複数の第2の切換端子とを有する。
選択された一本の線状電極の近傍で遮水シートが破損している場合、選択された一本の線状電極と第1の電極とは、遮水シートの破損個所から流れ出る液体を介して導通する。これにより、特許文献1に記載の漏水発生位置検出方式は、選択された一本の線状電極に流れる電流を検出して遮水シートにおける漏水の有無を検出する。また、漏水が検出されたときに選択されていた線状電極の位置に基づいて、漏水の位置が検出される。
そして、漏水が検出された場合、その検出された位置に対応する箇所の廃棄物などを掘り起こして、遮水シートが補修される。
特開平11−248590号公報
一般的な廃棄物処分場などにおける遮水シートの検査の1つに、竣工時に遮水シートの破損を点検する竣工検査がある。竣工検査の時には廃棄物が廃棄されていないため、廃棄物処分場の施工中の雨などによる水気が遮水シート上にあるものの、廃棄物に含まれるほどの液体が遮水シート上にあることは稀である。
特許文献1に記載の漏水発生位置検出方式では、上述のように、破損個所から流れ出る液体を介して第1の電極と線状電極とが導通することを利用して破損の有無及び位置を検出する。そのため、特許文献1に記載の漏水発生位置検出方式を竣工検査に適用したとしても、遮水シート上の液体が通常乏しいため、破損の有無及び位置を検出できない可能性が高い。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、竣工検査にて遮水シートの破損の有無及び位置を検出することが可能な漏水位置検出システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る漏水位置検出システムは、
電力を供給する電源と、
前記電源によって予め定められた電圧が印加される少なくとも1つの印加電極と、
液体の流通を遮るための遮水シートと、
前記遮水シートを介して前記印加電極と反対の領域に配置された複数の測定電極と、
前記複数の測定電極のうちの電気的に接続された測定電極に流れる電流値を測定する電流測定回路と、
前記複数の測定電極の各々と前記電流測定回路との電気的な接続と絶縁とを切り替える第1の切替器とを備え、
複数の測定電極の各々は、線状であり、他の少なくとも一部の測定電極と互いに交差するように設けられ、当該他の少なくとも一部の測定電極との交点にて互いに絶縁されており、
前記遮水シートは、絶縁性のシートである絶縁部と、当該絶縁部の一面に一体的に設けられた良導体とを有し、
前記良導体は、前記印加電極と前記複数の測定電極とのいずれかに電気的に接続されており、
前記印加電極は、線状の電極であって、互いに平行に複数設けられており、
前記漏水位置検出システムは、
前記複数の印加電極の各々と、前記電流測定回路、前記電源及び基準電圧のいずれかとの間で電気的な接続を切り替える第2の切替器と、
電気的に、前記第1の切替器及び前記第2の切替器と、前記電流測定回路との間に介在する第3の切替器とをさらに備え、
前記第3の切替器は、前記電流測定回路と、前記第1の切替器及び前記第2の切替器のいずれかの切替器との間で電気的な接続を切り替える。
本発明によれば、竣工検査にて遮水シートの破損の有無及び位置を正確に検出することが可能になる。
本発明の一実施の形態に係る漏水位置検出システムの構成を示す図である。 一実施の形態に係る上シートを上方から見た図である。 一実施の形態に係る上シートを前方から見た部分拡大図である。 一実施の形態に係る制御装置の機能的な構成を示す図である。 破損箇所の近傍を拡大した断面図である。 本発明の一実施の形態に係る漏水位置検出システムの施工方法の流れの一例を示す図である。 変形例1に係る漏水位置検出システムの構成を示す図である。 変形例1に係る漏水位置検出システムの施工方法の流れの一例を示す図である。 変形例2に係る漏水位置検出システムの構成を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。また、前後上下左右の方向を示す用語は、説明のために用いるのであって、本発明を限定する趣旨ではない。
(漏水位置検出システムの構成)
本発明の一実施の形態に係る漏水位置検出システム100は、廃棄物処分場などで、廃棄物が廃棄される窪地の上に敷設される上シート104の破損の有無及び位置を検出するためのシステムである。漏水位置検出システム100は、図1に示すように、電源101と、複数の印加電極102_1〜102_3と、ベントナイトマット103と、上シート104と、複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5と、下シート106と、電流測定回路107と、不織布108と、第1の切替器109と、第2の切替器110と、第3の切替器111と、制御装置112とを備える。
電源101は、交流の電力を供給する装置である。電源101から供給される電力の周波数、電圧の大きさなどは、例えば制御装置112を通じてユーザにより適宜設定される。なお、電源101は、コンセントなどから供給される商業電源などであってもよく、直流電源であってもよい。
複数の印加電極102_1〜102_3の各々は、予め定められた電圧が電源101によって印加される線状の電極である。複数の印加電極102_1〜102_3は、前後方向に向けて互いに平行に設けられている。印加電極102_1〜102_3の各々を特に区別しない場合、以下では、印加電極102とも表記する。
ベントナイトマット103は、複数の印加電極102の下に設けられるマットである。ベントナイトマット103は、ベントナイトを主たる材料としており、優れた吸水性を発揮する。
なお、ベントナイトマット103は、吸水性を有する部材の一例である。吸水性を有する部材の材料は、不織布、織布、砂などの土質材料などであってもよく、上面が複数の印加電極102を含む予め定められた領域を覆う程度に前後左右に広がっていれば厚みは適宜変更されてもよい。
上シート104は、液体の流通を遮るためのシートであって、窪地に廃棄された廃棄物中の液体が外部へ流れ出ることや廃棄物中の液体が地下水を汚染することなどを防ぐために設けられる。
上シート104は、絶縁性のシートである絶縁部113_aと、当該絶縁部の一面(本実施の形態では下面)に一体的に設けられた良導体113_bとを有し、遮水シートに相当する。良導体113_bは、上シート104の一面を実質的に等電位にできる導電性の層であり、例えば、カーボンやアルミニウム、銅などの金属の材料を片面に薄く混ぜ込むこと、金属の蒸着などによって設けられる。良導体113_bには、複数の印加電極102に電気的に接続されており、これによって電圧が印加される。
本実施の形態に係る上シート104は、上方から見た図2に示すように、固定部FPにて複数の帯状の上シート104を繋ぎ合わせて構成されている。固定部FPは、図1の点線丸囲み部Cを拡大して図3に示すように、隣接する帯状の上シート104が互いに固定された部分である。すなわち、隣接する帯状の上シート104は、外縁近傍が互いに重なり合うように配置され、その重なり合った部分の少なくとも一部が、固定部FPとして互いに固定されている。
隣接する帯状の上シート104は、すき間から液体が流通しないように、溶着、接着などによって固定部FPにて固定されればよい。また、上シート104が、一枚のシートで構成されてもよいのは勿論である。
なお、良導体113_bを印加電極102によって印加するには、印加電極102の少なくとも1つ又は一部と帯状の良導体113_bの各々とが電気的に接続していればよい。また、印加電極102は、例えば蛇行した形状をなす1本の線状の電極であってもよい。
複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5は、上シート104を介して複数の印加電極102と反対の領域に配置される電極である。複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5の各々を特に区別しない場合、以下では、測定電極105とも表記する。
複数の測定電極105の各々は、線状であり、他の少なくとも一部の測定電極105と互いに交差するように設けられている。複数の測定電極105の各々は、他の測定電極105と交差する交点に絶縁部材114が固定されており、これによって、当該他の測定電極105と導通しないように互いに絶縁されている。
なお、測定電極105同士の交点における絶縁処理の方法は、絶縁部材114を固定する方法に限られず、例えば、交点近傍にのみ被覆処理を施すなどであってもよい。
詳細には、複数の測定電極105は、複数の第1電極105_A1〜105_A5と、複数の第2電極105_B1〜105_B5とを含んで、格子状に設けられている。
複数の第1電極105_A1〜105_A5の各々は、左右方向に延在する直線状の電極である。本実施の形態では、複数の第1電極105_A1〜105_A5は、前後に等間隔で設けられている。複数の第2電極105_B1〜105_B5の各々は、前後方向に延在する直線状の電極である。本実施の形態では、複数の第2電極105_B1〜105_B5は、左右に等間隔で設けられている。
また、本実施の形態では、第1電極105_A1〜105_A5同士の前後の間隔と、第2電極105_B1〜105_B5同士の左右の間隔とは、等しい。すなわち、複数の第1電極105_A1〜105_A5と複数の第2電極105_B1〜105_B5とは、等しい間隔Lで設けられている。
なお、複数の測定電極105は、他の少なくとも一部の測定電極105と互いに交差するように設けられていれば、本実施の形態の態様に限られない。例えば、第1電極105_A1〜105_A5同士が、互いに平行でなくてもよく、等間隔でなくてもよく、曲線状であってもよい。また例えば、第2電極105_B1〜105_B5同士も、互いに平行でなくてもよく、等間隔でなくてもよく、曲線状であってもよい。
下シート106は、ベントナイトマット103の下に敷かれるシートであり、良導体113_bを有しないことを除いて上シート104と同様であってよい。下シート106と上シート104とは、外縁近傍が液体を流通させない(液密な)袋状に固着される。複数の印加電極102と第2の切替器110とを接続する配線を、下シート106と上シート104との間から導出する箇所には、下シート106と上シート104との間へ液体が浸入しないように防水処理が施される。これによって、ベントナイトマット103は、下シート106と上シート104とで形成される防水空間の中に密封される。
電流測定回路107は、複数の印加電極102及び複数の測定電極105のうち、後述する切替器109〜111を介して電流測定回路107に電気的に接続された電極102,105の間に流れる電流値を測定する。
第1の切替器109は、複数の測定電極105の各々と電流測定回路107との電気的な接続と絶縁とを切り替えるための切替器である。
本実施の形態では、第1の切替器109は、図1に示すように、複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5のそれぞれに対応付けられた10個のスイッチを有する。第1の切替器109の各スイッチは、検出用端子S1と、第1測定用端子S2と、第1基準端子S3と、を有し、検出用端子S1と第1基準端子S3とのいずれを第1測定用端子S2に接続するかを切り替える。
検出用端子S1は、測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5のいずれか1つに電気的に接続された端子である。第1測定用端子S2は、電流測定回路107に電気的に接続され得る配線L1が電気的に接続された端子である。第1基準端子S3は、基準電圧となる配線L2が電気的に接続された端子である。
第1の切替器109のスイッチが検出用端子S1を第1測定用端子S2に接続すると、後述する第3の切替器111が第1の切替器109を電流測定回路107に接続するように設定された状態である場合、当該スイッチに接続された測定電極105と電流測定回路107とが電気的に接続される。
第1の切替器109のスイッチが、第1基準端子S3を第1測定用端子S2に接続すると、当該スイッチに接続された測定電極105と電流測定回路107とが電気的に絶縁されて、測定電極105が基準電圧になる。
第2の切替器110は、複数の印加電極102の各々と、電流測定回路107、電源101及び基準電圧のいずれか1つとの間で電気的な接続を切り替えるための切替器である。
本実施の形態では、第2の切替器110は、図1に示すように、複数の印加電極102_1〜102_3のそれぞれに対応付けられた3個のスイッチを有する。第2の切替器110の各スイッチは、印加電極端子T1と、第2測定用端子T2と、電源端子T3と、第2基準端子T4と、を有し、第2測定用端子T2と電源端子T3と第2基準端子T4とのいずれを印加電極端子T1に接続するかを切り替える。
印加電極端子T1は、印加電極102_1〜102_3のいずれか1つが電気的に接続された端子である。第2測定用端子T2は、電流測定回路107に電気的に接続され得る配線L3が電気的に接続された端子である。電源端子T3は、電源101に接続されて印加される配線L4が電気的に接続された端子である。第2基準端子T4は、配線L2が電気的に接続された端子である。
第2の切替器110のスイッチが、第2測定用端子T2を印加電極端子T1に接続すると、後述する第3の切替器111が第2の切替器110を電流測定回路107に接続するように設定された状態である場合、当該スイッチに接続された印加電極102と電流測定回路107とが電気的に接続される。
第2の切替器110のスイッチが、電源端子T3を印加電極端子T1に接続すると、当該スイッチに接続された印加電極102と電源101とが電気的に接続される。
第2の切替器110のスイッチが、第2基準端子T4を印加電極端子T1に接続すると、当該スイッチに接続された印加電極102が基準電圧になる。
第3の切替器111は、電気的に、第1の切替器109及び第2の切替器110と、電流測定回路107との間に介在する。第3の切替器111は、電流測定回路107と、第1の切替器109及び第2の切替器110のいずれかの切替器との間で電気的な接続を切り替える。
本実施の形態では、第3の切替器111は、図1に示すように、第1切替用端子U1と、第2切替用端子U2と、測定器端子U3と、を有し、第1切替用端子U1と第2切替用端子U2とのいずれを測定器端子U3に接続するかを切り替える。
第1切替用端子U1は、配線L1が電気的に接続された端子である。第2切替用端子U2は、配線L2が電気的に接続された端子である。測定器端子U3は、電流測定回路107に電気的に接続された配線L5が電気的に接続された端子である。
第3の切替器111が、第1切替用端子U1を測定器端子U3に接続すると、電流測定回路107と第1の切替器109とが配線L1及びL5を通じて電気的に接続される。
第3の切替器111が、第2切替用端子U2を測定器端子U3に接続すると、電流測定回路107と第2の切替器110とが配線L3及びL5を通じて電気的に接続される。
不織布108は、複数の測定電極105を保護するため、複数の測定電極105の上に設けられるマットである。
制御装置112は、電源101、電流測定回路107、第1の切替器109、第2の切替器110及び第3の切替器111と通信可能に接続されており、これらの機器を制御する。それによって、制御装置112は、例えば、電流測定回路107によって測定された電流値を取得し、取得した電流値に基づいて上シート104の破損の検出及びその位置の推定を行う。
詳細には、制御装置112は、複数の測定電極105の各々に流れる電流値を取得する。このとき、制御装置112は、測定された測定電極105がいずれであるかを識別するための識別情報と、電流値を示す電流値情報とを対応付けて取得する。そして、制御装置112は、取得した電流値に基づいて、上シート104に破損があるか否かを判定し、破損がある場合には、その位置を推定する。
制御装置112は、機能的には図4に示すように、破損検出部115と、位置推定部116と、破損確認部117と、を有する。
破損検出部115は、すべての印加電極102と電源101とが電気的に接続されるように第2の切替器110を設定し、かつ、電流測定回路107と第1の切替器109とが電気的に接続されるように第3の切替器111を設定する。この状態(検出モード)で、破損検出部115は、測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5の各々を順次、電流測定回路107に電気的に接続するように、第1の切替器109を制御する。これによって、破損検出部115は、複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5の各々に流れる電流値を取得する。破損検出部115は、取得した電流値の各々と第1閾値とを比較し、比較した結果に基づいて、上シート104の破損を検出する。
なお、第1〜第3の切替器111の設定は、ユーザなどが手動で行ってもよい。
詳細には例えば、破損検出部115は、取得した電流値に予め設定された第1閾値を超える値が含まれる場合に、上シート104に破損があると判定する。また、破損検出部115は、取得した電流値のすべてが第1閾値以下である場合に、上シート104に破損がないと判定する。
例えば、図2に二点鎖線で示すように、4本の測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3で囲まれた上シート104の領域に、穴が開いた破損箇所Bがあるとする。測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3の各々と破損箇所Bとの距離は、測定電極105_A1、測定電極105_B2、測定電極105_B3、測定電極105_A2の順で近いものとする。
この場合、検出モードで測定電極105_A1を電流測定回路107に電気的に接続すると、図5に示すように、印加電極102、良導体113_b、砂Sや不織布108に含まれる雨水などの水気を介して、測定電極105_A1に電流が流れる。
ここで、砂Sは、廃棄物処分場などにおいて上シート104の上に通常、数十センチ程度の厚さで敷かれるものである。また、図5では、図を分かり易くするため、各部の大きさの比率が実際とは異なることがある。
同様に、測定電極105_A2,105_B2,105_B3の各々についても、電流測定回路107に電気的に接続されると、電流が流れる。破損検出部115は、測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3の電流値に基づいて、破損があると判定する。
詳細には例えば、測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3の電流値に基づいて、測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3の各交点の電流値を求め、交点の電流値の少なくとも1つが第1閾値を超える場合に、破損があると判定する。交点の電流値は、その交点を通る前後方向及び左右方向の各測定電極の電流値を足し合わせることによって求められる。
位置推定部116は、破損検出部115によって破損があると判定された場合、すなわち、上シート104の破損が検出された場合、破損検出部115によって取得された電流値のうち値が大きい4つの電流値に基づいて、上シート104の破損の位置を推定する。
詳細には例えば、位置推定部116は、破損検出部115によって取得された電流値のうち値が大きい4つの電流値を取得する。そして、位置推定部116は、破損検出部115によって検出された破損が、4つの電流値の各々に対応する測定電極105で囲まれた上シート104の領域内にあると推定する。
通常、上シート104に破損がある場合、測定電極105を流れる電流の大きさは、破損している場所と測定電極105との距離が近い程、大きくなる。そのため、図2に二点鎖線で示す破損箇所Bの例では、位置推定部116は、測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3の電流値を取得する。これにより、位置推定部116は、破損検出部115によって検出された破損箇所Bが、4本の測定電極105_A1,105_A2,105_B2,105_B3で囲まれた上シート104の領域内にあると推定する。
さらに、位置推定部116は、破損があると推定された領域を囲む測定電極105の電流値に基づいて、破損があると推定された上シート104の領域内のどこが破損しているか、すなわち検出された破損のより詳細な位置を推定する。
例えば、測定電極105_A1、測定電極105_A2、測定電極105_B2、測定電極105_B3のそれぞれの電流値が、a、b、c、dであるとする。この場合、測定電極105或いはその交点を流れる電流値が、破損箇所Bからの距離に比例すると仮定して、位置推定部116は、破損箇所Bの位置を推定する。
破損確認部117は、破損検出部115によって破損が検出された場合に、隣接する印加電極102の各組み合わせについて、一方の印加電極102に印加し、他の印加電極102を電流測定回路107に電気的に接続するように、第2の切替器110及び第3の切替器111を設定する。この状態(確認モード)で、破損確認部117は、電流測定回路107によって測定された電流値が予め定められた第2閾値を超える場合に、当該処理対象となっている印加電極102の間に破損があると判定する。確認モードでは、処理対象となっている印加電極102の組み合わせに含まれない印加電極102は、基準電圧に接続されるとよい。
詳細には例えば、破損確認部117は、隣接する印加電極102_1及び102_2の組み合わせを処理対象とした場合、一方の印加電極102_1に印加し、他の印加電極102_2を電流測定回路107に電気的に接続する。このとき、印加電極102_3は、基準電圧に接続されるとよい。なお、印加電極102_2に印加し、印加電極102_1を電流測定回路107に電気的に接続してもよい。
図2に二点鎖線で示す破損箇所Bが上シート104にある場合、破損箇所Bを通じて水気がベントナイトマット103に吸収されている。そのため、印加電極102_1に印加した、印加電極102_2を電流測定回路107に電気的に接続した確認モードでは、ベントナイトマット103に吸収された水気によって、隣接する印加電極102_1及び102_2の間で電流が流れる。その結果、電流測定回路107によって測定される電流値が第2閾値を超えると、破損確認部117は、隣接する印加電極102_1及び102_2の間に破損があると判定する。
次に、隣接する印加電極102_2及び102_3の組み合わせを処理対象とした場合、図2に二点鎖線で示す破損箇所Bが上シート104にある例では、隣接する印加電極102_2及び102_3は、乾燥している。そのため、電流測定回路107によって測定される電流値が第2閾値を超えず、破損確認部117は、隣接する印加電極102_2及び102_3の間に破損がないと判定する。
このように、破損検出部による検出の結果が誤りでないか否かを破損確認部117によってチェックすることができ、破損の検出の精度を向上させることが可能になる。
また、位置推定部116によって推定された破損箇所Bの位置が、破損確認部117により破損があると判定された印加電極102_2及び102_3の間に含まれているか否かによって、より正確に破損検出部による検出の結果をチェックすることができる。従って、破損の検出の精度をより向上させることが可能になる。
なお、制御装置112は、物理的には例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、通信インタフェースなどから構成されるとよい。そして、上述の制御装置112が備える各機能又は制御装置112が実行する処理は、例えば、CPUが予めインストールされたソフトウェア・プログラム(単に、「プログラム」ともいう。)を、RAMをワークスペースとして実行することによって実現される。
これまで、本発明の一実施の形態に係る漏水位置検出システム100の構成について説明した。ここから、本実施の形態に係る漏水位置検出システム100の施工方法の一例を説明する。
(漏水位置検出システムの施工方法)
漏水位置検出システム100は、例えば、廃棄物処分場などの構造物の建設地に、廃棄物を廃棄するための窪地が造成された後、その窪地を利用して施工される。図6は、本発明の一実施の形態に係る漏水位置検出システム100の施工方法の一例である。
図6に示すように、漏水位置検出システム100を構成する部品が準備される(工程1)。
ここで、漏水位置検出システム100を構成する部品は、下シート106、ベントナイトマット103、複数の印加電極102_1〜102_3、上シート104、複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5、不織布108、電源101、電流測定回路107、制御装置112、第1の切替器109、第2の切替器110、第3の切替器111、及び、配線L1〜L4を含む配線を含む。
下シート106が、造成された窪地(地面)の上に敷設される(工程2)。
ベントナイトマット103が、工程2にて敷設された下シート106の上に敷設される(工程3)。
複数の印加電極102_1〜102_3が、工程3にて敷設されたベントナイトマット103の上に配置される(工程4)。この工程によって、複数の印加電極102が、造成した窪地の上に配置される。
上シート104が、工程4にて配置された複数の印加電極102の上に敷設される(工程4)。この工程において、上シート104は、良導体113_bを下方に向けて配置される。これによって、良導体113_bと複数の印加電極102とが接触し、電気的に導通する。
本実施の形態では、上述のように、上シート104が複数の帯状の上シート104を接続して構成されており、良導体113_bは、上シート104に設けられる。そのため、良導体113_bは、複数の帯状の良導体113_bから構成される。工程4では、良導体113_bが設けられた上シート104は、複数の帯状の良導体113_bの各々が複数の印加電極102の少なくとも1つと接触して電気的に導通するように、良導体113_bを下方に向けて複数の印加電極102の上に敷設される。
下シート106と上シート104とは、各々の外縁近傍が液密に互いに固着され、これらのシート106,104の間に防水空間を形成するように密封される(工程6)。
このとき、複数の印加電極102と第2の切替器110とを接続する配線を外部へ導出しつつ、この導出する箇所から下シート106と上シート104との間へ液体が浸入しないように防水処理が施される。これによって、ベントナイトマット103は、液密な防水空間の中に収容される。そのため、上シート104の破損などがなければ、通常は濡れないようにベントナイトマット103は設置される。
複数の測定電極105_A1〜105_A5,105_B1〜105_B5が、工程5にて敷設された上シート104の上に配置される(工程7)。この工程によって、複数の測定電極105が、上シート104の上に配置される。
詳細には、複数の第2電極105_B1〜105_B5が、左右に並べて等間隔Lで配置される。その後、複数の第1電極105_A1〜105_A5が、前後に並べて等間隔Lで配置される。第2電極105_B1〜105_B5の各々と複数の第1電極105_A1〜105_A5の各々とが交差する交点には、ゴムなどの絶縁性の材料で作られた概ね正方形のシートである絶縁部材114が固定される。絶縁部材114は、例えば接着剤で固定されるとよい。
不織布108が、工程7にて設置された複数の測定電極105の上に敷設される(工程8)。
配線L1〜L4を含む配線が、複数の印加電極102、複数の測定電極105、電源101、電流測定回路107、制御装置112、第1の切替器109、第2の切替器110及び第3の切替器111に接続される(工程9)。
これによって、複数の印加電極102、複数の測定電極105、電源101、電流測定回路107、制御装置112、第1の切替器109、第2の切替器110及び第3の切替器111が、配線によって、図1に示すように電気的に接続される。
これによって、本実施の形態に係る漏水位置検出システム100の施工が完了する。
本実施の形態によれば、上シート104の一面に良導体113_bが設けられている。そのため、検出モードで印加電極102に印加すると、砂S及び不織布108に含まれた程度の比較的僅かな水気であっても、上シート104に破損が生じている場合、破損箇所の近傍の印加電極102及び測定電極105が、良導体113_bを介して導通する。
これにより、上シート104の上の水気が比較的乏しいことが多い竣工検査であっても、検出モードで測定電極105の各々に流れる電流値を電流測定回路107により計測することによって、複数の測定電極105に電流が流れるか否かに基づいて、上シート104に破損が生じているか否かを判定することができる。また、電流が流れた測定電極105の位置関係に基づいて、上シート104のいずれの領域に破損が生じているかを推定することができる。従って、竣工検査にて上シート104の破損の有無及び位置を検出することが可能になる。
本実施の形態によれば、位置推定部116が、複数の測定電極105の各々に流れる電流値のうち値が大きい4つの電流値の比率に基づいて、上シート104の破損の位置を推定する。これにより、複数の測定電極105によって画される上シート104の領域内のどこが破損しているか、より精度の良い破損の位置を得ることができる。従って、竣工検査にて上シート104の破損のより精度の良い位置を検出することが可能になる。
本実施の形態によれば、線状の印加電極102が互いに平行に複数設けられている。また、印加電極102の各々の接続先を電流測定回路107と電源101と基準電圧とのいずれかに切り替えることができる第2の切替器110を備える。これにより、確認モードに設定して、検出処理によって検出された破損が誤りでないか否かを確認するための確認処理を行うことができる。従って、竣工検査にて上シート104の破損の有無をより正確に検出することが可能になる。
本実施の形態によれば、第3の切替器が設けられる。これにより、検出処理と確認処理とを容易に切り替えることが可能になる。
(変形例1)
図7に示すように、本変形例に係る漏水位置検出システム200では、複数の印加電極102と複数の測定電極105とが、実施の形態に係るそれぞれとは上シート104を介して上下逆に設けられる。すなわち、本変形例では、複数の印加電極102が、上シート104の上に配置される。また、複数の測定電極105が、上シート104の下に配置されて、良導体113_bに接触する。
本変形例によれば、上シート104に破損が生じると、破損箇所の近傍の印加電極102及び測定電極105が、実施の形態と同様に、砂S及び不織布108に含まれた水気と良導体113_bとを介して導通する。
そのため、実施の形態と同様に、検出モードで複数の測定電極105に電流が流れるか否かに基づいて、上シート104に破損が生じているか否かを判定することができる。また、上シート104に破損が生じている場合、実施の形態と同様の方法で、検出モードで複数の測定電極105の各々に流れる電流値に基づいて、破損箇所の位置を推定することができる。なお、実施の形態によれば、良導体113_bの全体を概ね等電位にできるので、良導体113_bの抵抗値などの影響をあまり受けることなく、上シート104に破損を囲む測定電極105とその他の測定電極105とで、検出モードにおいて流れる電流値の差を容易に検出できる。そのため、実施の形態に係る漏水位置検出システム100の方が、本変形例よりも竣工検査にて上シート104の破損の有無及び位置をより正確に検出することが可能になる。
本変形例に係る施工方法は、例えば、図8に示すように、実施の形態に係る施工方法工程4と工程7とを入れ替えたものとすればよい。
本変形例では、複数の測定電極105と第1の切替器109とを接続する配線が、下シート106と上シート104との間を通過し、下シート106と上シート104とで形成される防水空間の外へ導出されることになる。この配線が、防水空間の外へ導出される箇所は、実施の形態と同様に防水処理が施される。
一般的に、この防水処理は、通過させる配線が少ない方が容易であることが多い。また、通常、印加電極102の方が測定電極105よりも本数が少ないので、防水空間の外へ導出される配線の数は、防水空間内に測定電極105を配置した方が少なくてよい。そのため、実施の形態に係る漏水位置検出システム100の方が、本変形例よりも容易に施工することが可能である。
(変形例2)
印加電極102は、図9に示す漏水位置検出システム300のように、印加電極102_1〜102_4を含む4本以上であってもよい。漏水位置検出システム300は、4本の印加電極102のうちの内側に配置された2本102_2,102_3の電圧値を測定するための電圧測定回路315と、第4の切替器316とをさらに備える。第4の切替器316は、電圧測定回路315を内側2本の印加電極102_2,102_3に電気的に接続するか否かを切り替える。
本変形例によれば、いわゆる四電極法によって、検出モードで測定電極105の各々に流れる電流値に基づいて検出された破損が誤りでないか否かを確認するための確認処理を行うことができる。詳細には例えば、左右に並ぶ複数の印加電極102のうち、外側に配置された2本102_1,102_4の間に電源101と電流測定回路107とを直列に電気的に接続した回路によって印加して、内側に配置された2本102_2,102_3の間の電圧を電圧測定回路315によって測定することによって、測定された印加した電圧と電流に基づいてインピーダンスを求める手法である。内側に配置された2本の印加電極102_2,102_3とは、言い換えると、外側(左端及び右端)に配置された2本の印加電極102_1,102_4以外の2本の印加電極102である。ベントナイトマット103が水分を含むか否かによってインピーダンスが変化するため、四電極法によって確認処理を行うことができる。
一般的に、上シート104の良導体113_bの抵抗分布は概ね均一であるため、直線状の印加電極102間のインピーダンスは、ほぼ安定した値となる。しかし、良導体113_bと印加電極102との接触抵抗が印加電極102の長さ方向の位置によって異なることで、印加電極102間のインピーダンスが変化することがある。
四電極法によれば、上述のように、電源101により制御された大きさの電圧を4本の印加電極102の外側2本の印加電極102に加えて電流値を測定し、内側2本の印加電極102の電圧値と、測定した電流値とに基づいて印加電極102間のインピーダンスを求める。この方法によれば、電源101では入力インピーダンスを大きくすることができるため、インピーダンスを求める際に、良導体113_bと印加電極102との接触抵抗の影響を低減することができる。従って、本変形例によれば、検出処理によって検出された破損が誤りでないか否かを、実施の形態よりも正確に確認することが可能になる。
なお、変形例1では、上シート106と下シート106との間に挟まれた電極は、測定電極105である(図7参照)。この場合、前後方向を向く測定電極105_B1〜101_B5のいずれか4本、又は、左右方向を向く測定電極105_A1〜101_A5のいずれか4本を用いて、四電極法による確認処理を行うことができる。
(変形例3)
実施の形態では、上シート104が遮水シートに相当するものとして説明した。しかし、下シート106の上面に良導体113_bが設けられてもよい。この場合、下シート106の下方に、印加電極102を配置することで、竣工検査にて下シート106の破損の有無及び位置を正確に検出することが可能になる。
以上、本発明の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
100,200,300 漏水位置検出システム
101 電源
102 印加電極
103 ベントナイトマット
104 上シート
105 測定電極
106 下シート
107 電流測定回路
108 不織布
109 第1の切替器
110 第2の切替器
111 第3の切替器
112 制御装置
113 良導体
114 絶縁部材
315 電圧測定回路
316 第4の切替器

Claims (4)

  1. 電力を供給する電源と、
    前記電源によって予め定められた電圧が印加される少なくとも1つの印加電極と、
    液体の流通を遮るための遮水シートと、
    前記遮水シートを介して前記印加電極と反対の領域に配置された複数の測定電極と、
    前記複数の測定電極のうちの電気的に接続された測定電極に流れる電流値を測定する電流測定回路と、
    前記複数の測定電極の各々と前記電流測定回路との電気的な接続と絶縁とを切り替える第1の切替器とを備え、
    複数の測定電極の各々は、線状であり、他の少なくとも一部の測定電極と互いに交差するように設けられ、当該他の少なくとも一部の測定電極との交点にて互いに絶縁されており、
    前記遮水シートは、絶縁性のシートである絶縁部と、当該絶縁部の一面に一体的に設けられた良導体とを有し、
    前記良導体は、前記印加電極と前記複数の測定電極とのいずれかに電気的に接続されており、
    前記印加電極は、線状の電極であって、互いに平行に複数設けられており、
    前記複数の印加電極の各々と、前記電流測定回路、前記電源及び基準電圧のいずれかとの間で電気的な接続を切り替える第2の切替器と、
    電気的に、前記第1の切替器及び前記第2の切替器と、前記電流測定回路との間に介在する第3の切替器とをさらに備え、
    前記第3の切替器は、前記電流測定回路と、前記第1の切替器及び前記第2の切替器のいずれかの切替器との間で電気的な接続を切り替える
    ことを特徴とする漏水位置検出システム。
  2. 前記印加電極は、前記良導体に電気的に接続される
    ことを特徴とする請求項1に記載の漏水位置検出システム。
  3. 前記印加電極は、4本以上であり、
    前記漏水位置検出システムは、前記印加電極のうちの内側に配置された2本の印加電極の電圧値を測定するための電圧測定回路と、
    前記電圧測定回路を内側に配置された2本の印加電極に電気的に接続するか否かを切り替える第4の切替器とをさらに備える
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の漏水位置検出システム。
  4. 前記複数の測定電極の各々に流れる電流値のうち値が大きい少なくとも4つの電流値に基づいて、前記遮水シートの破損の位置を推定する位置推定部をさらに備え、
    前記複数の測定電極は、
    第1の方向に延在する直線状の複数の第1電極と、
    前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する直線状の複数の第2電極とを含み、
    ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の漏水位置検出システム。
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