JP3740586B2 - 建物の漏水を電気的に検査する装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルなどの建物の漏水の検査に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビルなどの建物の屋上の水漏れを検査するには、屋上に散水又は水を張り、水が漏れないかを確認する方法や、色などの付いた発見しやすい煙を屋内から出して外部に漏出した煙を検知器や目視により確認する方法で漏水の有無とその位置を確認している。
【0003】
しかし、従来の方法では、以下のような問題点がある。
<イ>散水又は水張りによる方法では、万一漏水個所が存在すると、発生した漏水がビル内装の仕上げ材に染み出して仕上げ材を汚す恐れがある。逆に、漏水が仕上げ材などに染み出して、表面に現れないと発見できない問題がある。
<ロ>漏水を発見しても、漏水を起こした箇所を見つけるまでに時間を要したり、正確に漏水個所を特定できない問題がある。
<ハ>色の付いた煙等を用いる方法では、建物には漏水を発生させる隙間以外に換気扇や窓の隙間など多数の隙間があり、建物全体にガスを充満させて調査することはできない。また、漏水は僅かな隙間から通って発生する場合が多く、この場合は多少の圧力をかける必要がある。このようなことから、広い面積を一度に検査する方法には適しておらず、もっぱら局部的な検査に使われている。例えば、漏水はあるがどこから漏水しているのか場所が特定できないような場合に、その場所を特定するために用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、建物の漏水位置を簡単に発見できるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建物の防水材の上に配置する導電媒体と、導電媒体内に配置する外部電極と、建物の躯体側に配置する内部電極と、内部電極と外部電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、防水材の面上の導電媒体の電位を測定する測定電極とを備え、測定電極で測定された防水材の面上の電位分布の歪みから防水材の漏水位置を求める、建物の漏水を電気的に検査する装置、または前記建物の漏水を電気的に検査する装置において、内部電極として、建物のコンクリート中の鉄筋や鉄骨を利用することを特徴とする、建物の漏水を電気的に検査する装置、または前記建物の漏水を電気的に検査する装置において、導電媒体として水又は水を染み込ませたマットを利用することを特徴とする、建物の漏水を電気的に検査する装置、または前記建物の漏水を電気的に検査する装置において、内部電極と外部電極間に規定値以上の電流が流れた場合に電位分布を求めることを特徴とする、建物の漏水を電気的に検査する装置、または前記建物の漏水を電気的に検査する装置において、導電媒体内に測定電極としてメッシュ状点電極を配置して電位を測定することを特徴とする、建物の漏水を電気的に検査する装置、または前記建物の漏水を電気的に検査する装置において、メッシュ状点電極に対する基準電極を建物の躯体内に配置することを特徴とする、建物の漏水を電気的に検査する装置にある。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、図面を用いて本発明の実施の態様を説明する。
<イ>建物の漏水を検査する装置の概要
建物1の漏水を検査する装置は、ビルなどの建物1の屋上4や壁面などの防水の検査を行う装置であり、電気的に漏水の有無と位置を検査することができる。図1は、本発明を説明するためのもので、建物1の屋上4の模式図である。屋上4の防水材、例えば防水シート2の上に水32や水を含ませたマット33などの電気を通す媒体31を載せ、媒体31内に外部電極12を設置し、建物1の躯体6内に内部電極13を設置し、外部電極12と内部電極13間に電源10(電圧印加手段)により電圧を印加する。電極間に流れる電流は電流計11で測定する。防水シート2は電気絶縁性を示すことから、防水シート2に破損がなければ、ほとんど電流が流れない。ところが、図1に示すように、防水シート2に破損が生じ穴が開くと、この穴(破損個所30)を通って電流が流れる。
【0007】
この電流が発生すると、電流が流れるている箇所、つまり破損部を中心とした電位分布の歪みが発生する。この状況を図2乃至図3に示す。図2は、防水シート2に破損がない場合の電位分布を示しており、電流が内外に流れないため電位分布の歪みがなく、外部電極12を中心とした同心円上の整った分布になる。
【0008】
ところが、図3に示すとおり、防水シート2に破損がある場合は、破損部を通って電流が内外に流れるための、破損部を中心とした電位分布の歪みが発生する。この電位分布の歪みを、防水シート2近傍にメッシュ状に配置した測定電極21で捕らえることで、破損の位置が検知できる。
【0009】
<ロ>電極の配置
電位分布の測定方法には、幾つかの方法がある。例えば、
▲1▼多数の測定電極21に対して基準電極22を設置し、基準電極22の電位を基準に各測定電極21の電位を電位測定器20で求める方法で、この場合、各測定電極21の測定電圧をプロットするだけで、図2乃至図3の等電位図を描くことができる。また、
▲2▼各測定電極21間の電位を測定し、それぞれの測定値の積分値を取ることで、図2乃至図3の電位分布を得ることができる。
【0010】
また、破損の有無だけであれば、防水シート2を通して流れる電流の大きさから判断することも可能である。つまり、防水シート2の固有抵抗は予め測定しておくことでわかるので、防水シート2の厚さ、面積によって破損がない場合に、どの程度の電流が流れるか予測できる。
防水シート2に破損がない場合、内部電極13と外部電極12間に流れる電流は、以下の式から予測することができる。
【0011】
【式1】
【0012】
それに対して、防水シート2に破損があると、破損の個所からかなり多くの電流が流れる。そこで、所定の電流値を決めて、それより多くの電流が流れると、防水シート2が破損していると判断できるようにする。この方法で破損の有無が分かれるので、破損が有ると判断した場合に、破損個所30を知るための電位分布の測定を行う。このように、破損の有無の測定と破損個所30の測定のように2段階の測定方法を取れば、効率的な測定を行うことができる。
【0013】
【実施例】
以下に、図面を用いて実施例を説明する。
<イ>実施例1
防水シート2で防水した屋上4に適用した場合の実施例を図4に示す。躯体6側の内部電極13には、躯体6の鉄筋5を使用し、基準電極22は躯体6側に鉄筋5と接触しないように配置し、外部電極12と複数の測定電極21は防水シート2上に設置する。
【0014】
漏水の測定は、防水シート2上に水32を張り、外部電極12と鉄筋5の間に電圧を印加し、防水シート2に破損がないかどうか調査する。まず、外部電極12と鉄筋5間に電圧を加え、電極間に流れる電流と、基準電極22と測定電極21との間の電位差を測定し、式1の関係から防水シート2の破損の有無を確認する。
【0015】
次ぎに、この何れか1つの電位測定電極21を選択し、この測定電極21と他の測定電極21間の電位差を測定し、電位分布を求める。この電位分布の歪みを確認し、歪みの電気的中心位置を求めることで、防水シート2の破損位置を推定する。
【0016】
また、特にの基準を設けずに、各測定電極21間の電位差を求め、これを積分することで電位分布を求めても、基準を設けた場合と同様の解析を行うことにより、防水シート2の破損位置を推定できる。
【0017】
更に、各測定電極21間の電位差を求めるだけで、破損位置近傍の電位差が大きくなることを利用して、防水シート2の破損位置を推定することも可能である。つまり、電位差の積分を取る代わりに、電位分布の微分を取って防水シート2の破損位置を特定する方法である。
【0018】
内部電極13に鉄筋5を用いると、躯体6側に独立した内部電極13を配置する場合に比べて、躯体6側の電位勾配が殆どなくなり、破損位置の測定精度が上がる。湿潤状態のコンクリート3の比抵抗は、20乃至100Ωmであるのに対して、鉄筋5の比抵抗は、10-7Ωm程である。また、鉄筋5は躯体6中にメッシュ状にしかもそれぞれの鉄筋5が接触した状態で入っており、単独に躯体6中に電極を挿入して比抵抗のある程度大きいコンクリート3に点として電圧を加える場合に比べて、比抵抗の小さいメッシュ状の鉄筋5に電圧を加えた方が躯体6全体に均一な電圧を加えることができる。電位分布が斜めになっているような場合(内部電極13から離れるに従って電圧が下がる)、防水シート2に破損があって電位分布に歪みが生じた場合、この歪みは電位勾配の上に発生するため、この歪みも電位勾配に引かれた状態で斜めに発生する。このため、電位歪みのピーク位置が実際の破損位置よりもずれてしまい、破損位置の位置測定精度が悪くなる。これが、鉄筋5を内部電極13に利用することで改善される。
【0019】
<ロ>実施例2
実施例1の防水シート2上に張った水32の代わりに、マット33(導電性マットの方が非導電性マットより、防水シート2の破損個所30で電位分布の歪みを大きく表すことができる。)を用い、このマット33に水を散水する場合の実施例を図5に示す。マット33は防水シート2上に敷設され、万遍なく水を散水することで、防水シート2表面全体を導電性状態にする。万一防水シート2に破損部があると、この破損部に水が染み込み、防水シート2の表面と裏面間に絶縁破壊を起こす。これによて、破損の有無と破損位置を検知する。躯体6側の内部電極13と基準電極22、防水シート2側の外部電極12と測定電極21は、実施例1と同様に設置して、同様の方法で防水シート2の破損を調査する。
【0020】
<ハ>実施例3
壁面に応用した実施例を図6に示す。防水シート2により防水した壁面の外側にマット33を敷設し、万遍なく水を散水することで、防止シート表面全体を導電性状態にする。もし、防水シート2に破損部があると、この破損部に水が染み込み、防水シート2の表面と裏面間の絶縁が破壊するので、破損の有無と破損位置を検知できる。躯体6側の内部電極13と基準電極22、防水シート2側の外部電極12と測定電極21は、実施例1と同様に設置する。つまり、躯体6側の内部電極13は、躯体6中の鉄筋5を利用し、躯体6側の基準電極22は、鉄筋5と接しないように躯体6中に設置して使用する。測定電極21と外部電極12は、防水シート2の外側に設置する。この状態で、実施例と同様の方法で防水シート2の破損を調査する。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、次のような効果を得ることができる。
<イ>広い範囲を一度に検査することができる。
<ロ>防水シートの漏水部位置を速やかに特定することができる。
<ハ>建物の内装材に染みなどの汚れを付けずに検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物の漏水検査をする説明図
【図2】防水シートに破損箇所がない場合の電位分布図
【図3】防水シートに破損箇所がある場合の電位分布図
【図4】屋上に水を張って漏水検査をする説明図
【図5】屋上に水を含んだマットを敷いて漏水検査をする説明図
【図6】建物の側面の漏水検査の説明図
Claims (6)
- 建物の防水材の上に配置する導電媒体と、
導電媒体内に配置する外部電極と、
建物の躯体側に配置する内部電極と、
内部電極と外部電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
防水材の面上の導電媒体の電位を測定する測定電極とを備え、
測定電極で測定された防水材の面上の電位分布の歪みから防水材の漏水位置を求める、
建物の漏水を電気的に検査する装置。 - 請求項1に記載の建物の漏水を電気的に検査する装置において、
内部電極として、建物のコンクリート中の鉄筋や鉄骨を利用することを特徴とする、
建物の漏水を電気的に検査する装置。 - 請求項1に記載の建物の漏水を電気的に検査する装置において、
導電媒体として水又は水を染み込ませたマットを利用することを特徴とする、
建物の漏水を電気的に検査する装置。 - 請求項1に記載の建物の漏水を電気的に検査する装置において、
内部電極と外部電極間に規定値以上の電流が流れた場合に電位分布を求めることを特徴とする、
建物の漏水を電気的に検査する装置。 - 請求項1に記載の建物の漏水を電気的に検査する装置において、
導電媒体内に測定電極としてメッシュ状点電極を配置して電位を測定することを特徴とする、
建物の漏水を電気的に検査する装置。 - 請求項5に記載の建物の漏水を電気的に検査する装置において、
メッシュ状点電極に対する基準電極を建物の躯体内に配置することを特徴とする、
建物の漏水を電気的に検査する装置。
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