以下、添付図面を参照して、本願の開示するレーダ装置および物標グループ化方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[1.物標グループ化処理]
実施形態に係る物標グループ化処理は、レーダ装置によって実行される。かかるレーダ装置は、例えば、周波数変調した連続波を用いて、周辺に存在する物標(例えば、移動物や静止物)を検出する。実施形態に係るレーダ装置は、車両に搭載される車載レーダ装置であるが、車載レーダ装置以外の各種用途(例えば、航空機や船舶の監視等)に用いられてもよい。
かかるレーダ装置は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式やFCM(Fast Chirp Modulation)方式などの物標検出方式を用いて物標の検出を行い、レーダ装置と物標との距離や相対速度などの情報を含む物標データを得る。
レーダ装置は、物標による反射波を受信することによって物標の検出を行うため、一つの物体に複数の反射点が存在するような場合、一つの物体に対して複数の物標データが得られる場合がある。そこで、レーダ装置は、同一の物体と推定される複数の物標データを一つにまとめてグループデータを生成するグルーピング処理を行う。図1Aは、レーダ装置が実行するグルーピング処理の説明図である。
図1Aの左図に示すように、物標Aの物標データと物標Bの物標データがレーダ装置によって得られたとする。物標A、Bが共に同程度の速度で移動し、物標A、B間の距離が所定のグルーピング範囲C内にある場合、レーダ装置は、図1Aの右図に示すように、物標Aのデータと物標Bのデータとを一つのグループとしてグループ化し、グループデータを生成する。レーダ装置は、生成したグループデータをターゲット情報として出力する。これにより、一つの車両に対して、一つのターゲット情報を提供することができる。
かかるグルーピング処理において、互いに異なる車両の物標であっても、これらの物標が共に同程度の速度で移動し、互いの距離が所定のグルーピング範囲Cである場合に、一つのグループとしてグループ化したとする。この場合、複数の車両が存在するにもかかわらず、一台分の車両のターゲット情報が出力される。そのため、PCS(Pre-crash Safety System)やAEB(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御を精度よく行うことができないおそれがある。
そこで、レーダ装置は、互いに異なる車両の物標がグループ化されることを抑制するために、所定条件により前もってグループ化を禁止する処理を行い、その後にグループ化の条件を満たしたとしても、物標データ間のグループ化を行わないようにしている。すなわち、本実施形態においては、対象の物標が、グループ化を実行する条件を満たす前に、グループ化を禁止する条件を満たした場合は、その物標に対してグループ化禁止処理を行い、以降の処理でグループ化を実行する条件を満たしたとしても、グループ化を実行しない。図1Bは、物標データ間のグループ化を禁止するグルーピング処理の説明図である。
図1Bの左図に示す場合、物標Aと物標Bとの間の横方向(車幅方向)の距離(以下、横距離と記載する)が所定距離以上であるため、レーダ装置は、物標Aと物標Bとは異なる車両の物標であると判定して、物標Aの物標データと物標Bの物標データとのグループ化を禁止するグループ化禁止状態に設定する。
これにより、図1Bの右図に示すように物標Aと物標Bとが近接して物標Aと物標Bとの距離がグルーピング範囲Cになり且つ同程度の速度になった場合であっても、物標Aの物標データと物標Bの物標データとはグループ化禁止状態に設定されている。そのため、物標Aの物標データと物標Bの物標データとはグループ化されない。これにより、物標Aの物標データと物標Bの物標データとをそれぞれ異なる車両のターゲット情報としてレーダ装置から出力することができる。
このように、実施形態に係るレーダ装置は、物標Aと物標Bとがグループ化の条件を満たす場合であっても、物標Aと物標Bとがグループ化禁止状態に設定されている場合、物標Aと物標Bとのグループ化が行われない。これにより、互いに異なる車両の物標がグループ化されることを抑制することができ、物標のグループ化を精度よく行うことができる。以下、実施形態に係るレーダ装置についてさらに詳細に説明する。
[2.レーダ装置の構成例]
図2は、実施形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。実施形態に係るレーダ装置1は、例えばミリ波レーダの各種方式のうち、周波数変調した連続波であるFM−CWを用いて、かかるレーダ装置1が搭載された車両の周辺に存在する物標を検出する。
かかるレーダ装置1は、送信部10と、受信部20と、信号処理部30とを備え、かかるレーダ装置1が搭載された車両の挙動を制御する車両制御装置2と接続される。かかる車両制御装置2は、レーダ装置1による物標の検出結果に基づいて、上述したPCSやAEBなどの車両制御を行う。
[2.1.送信部10]
送信部10は、信号生成部11と、発振器12と、送信アンテナ13とを備える。信号生成部11は三角波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器12に供給する。発振器12は、信号生成部11で生成された変調信号に基づいて、時間の経過に従って周波数が変化する送信信号STを生成して、送信アンテナ13へ出力する。
送信アンテナ13は、発振器12からの送信信号STを送信波TWへ変換し、かかる送信波TWを車両の外部に出力する。送信アンテナ13が出力する送信波TWは、所定の周期で周波数が上下するFM−CWとなる。送信アンテナ13から車両の前方に送信された送信波TWは、他の車両などの物標で反射されて反射波となる。
[2.2.受信部20]
受信部20は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ21と、複数のミキサ22と、複数のA/D変換器23とを備える。ミキサ22およびA/D変換器23は、受信アンテナ21毎に設けられる。
各受信アンテナ21は物標からの反射波を受信波RWとして受信し、かかる受信波RWを受信信号SRへ変換して出力する。なお、図2に示す受信アンテナ21、ミキサ22およびA/D変換器23の数は、それぞれ4つであるが、それぞれ3つ以下または5つ以上であってもよい。
受信アンテナ21から出力された受信信号SRは、不図示の増幅器(例えば、ローノイズアンプ)で増幅された後にミキサ22へ入力される。ミキサ22は、送信信号STと受信信号SRとの一部をミキシングし不要な信号成分を除去してビート信号SBを生成し、A/D変換器23へ出力する。
これにより送信信号STの周波数と、受信信号SRの周波数との差となるビート周波数を示すビート信号SBが生成される。ミキサ22で生成されたビート信号SBは、A/D変換器23でデジタルの信号に変換された後に信号処理部30に出力される。
図3は、一つの送信波TWと一つの受信波RWの関係およびビート信号SBを示す図である。図3の上図に示すように、送信波TWは、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波であり、かかる送信波TWの周波数は、時間に対して線形的に変化する。ここでは、送信波TWの中心周波数をf0、周波数の変位幅をΔF、周波数が上下する一周期の逆数をfmとする。
受信波RWは、送信波TWが物標で反射したものであるため、送信波TWと同様に、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波となり、また、送信波TWに対して遅延が生じる。送信波TWに対する受信波RWの遅延時間τは、レーダ装置1を搭載した車両から物標までの縦距離に応じた時間になる。また、受信波RWには、レーダ装置1を搭載した車両に対する物標の相対速度に応じたドップラ効果により、送信波TWに対して周波数fdの周波数偏移が生じる。ここで、縦距離は車両の進行方向の距離である。
このように、受信波RWには、送信波TWに対して、縦距離に応じた遅延時間τとともに物標との相対速度に応じた周波数偏移が生じる。このため、図3の下図に示すように、ビート信号SBのビート周波数は、送信信号STの周波数が上昇する区間(以下、アップ期間と記載する)と周波数が下降する区間(以下、ダウン区間と記載する)とで異なる値となる。
[2.3.信号処理部30]
信号処理部30は、送信制御部31と、物標データ導出部32と、連続性判定部33と、グルーピング部34と、出力部35とを備える。かかる信号処理部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を含むマイクロコンピュータであり、レーダ装置1全体を制御する。
かかるマイクロコンピュータのCPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信制御部31、物標データ導出部32、連続性判定部33、グルーピング部34および出力部35として機能する。なお、送信制御部31、物標データ導出部32、連続性判定部33、グルーピング部34および出力部35は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
[2.3.1.送信制御部31]
送信制御部31は、送信部10の信号生成部11を制御し、信号生成部11から三角波状に電圧が変化する変調信号を発振器12へ出力させる。これにより、時間の経過に従って周波数が変化する送信信号STが発振器12から送信アンテナ13へ出力される。
[2.3.2.物標データ導出部32]
物標データ導出部32は、複数のミキサ22のそれぞれから出力されるビート信号SBに対してそれぞれ高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を行う。これにより、物標データ導出部32は、複数のミキサ22のそれぞれから出力されるビート信号SBを周波数スペクトルのデータにそれぞれ変換する。なお、かかる周波数スペクトルのデータには、フーリエ変換処理の周波数分解能に応じた周波数間隔で設定された周波数ビンごとの信号レベルの情報が含まれる。
物標データ導出部32は、変換した周波数スペクトルのデータに基づき物標を検出し、かかる物標との相対速度および距離などのパラメータを含む物標データを導出する物標データ導出処理を行う。かかる物標データ導出処理は、物標データ導出部32により所定周期Ts(例えば、1/20秒)毎に繰り返し実行され、導出された物標データが所定周期Ts毎に物標データ導出部32から連続性判定部33へ出力される。
かかる物標データ導出部32は、変換した周波数スペクトルにおいて、所定の信号レベルを超えるピークを、送信信号STの周波数が上昇するアップ区間と、送信信号STの周波数が下降するダウン区間とのそれぞれの区間で抽出する。以下、このように抽出される周波数を「ピーク周波数」という。
物標データ導出部32は、アップ区間およびダウン区間それぞれについて、所定の角度演算処理により、1つのピーク周波数の信号から、同一周波数ビンに存在する複数の物標についての情報を分離し、それら複数の物標それぞれの角度を推定する。物標データ導出部32における角度の推定は、例えば、DBF(Digital Beam Forming)や、MUSIC(Multiple Signal Classification)などの周知の角度推定方式を用いて行われる。なお、以下において、物標データ導出部32によって推定された物標の角度を「ピーク角度」と記載し、かかるピーク角度の信号パワーを「角度パワー」と記載する。
物標データ導出部32は、算出したアップ区間のピーク角度および角度パワーと、ダウン区間のピーク角度および角度パワーとの一致度合い等に基づき、アップ区間のピークおよびダウン区間のピークを対応づけるペアリングを行う。例えば、物標データ導出部32は、マハラノビス距離が最小値となるアップ区間のピークとダウン期間のピークとを対応付ける。なお、マハラノビス距離の算出は、周知技術を用いることができる。
物標データ導出部32は、ペアリングしたアップ区間およびダウン期間のピークから、各物標の物標データを導出する。かかる物標データには、レーダ装置1(レーダ装置1が搭載された車両)に対する物標との相対速度および距離(縦距離および横距離)などのパラメータが含まれる。
例えば、物標データ導出部32は、ペアリングしたアップ区間およびダウン区間の2つのピークデータのピーク周波数の差から各物標との相対速度を導出し、これら2つのピークデータのピーク周波数の和から各物標との距離を導出する。また、物標データ導出部32は、各物標との距離と角度とから、物標との縦距離および横距離とを導出する。以下、物標との相対速度および距離を物標の相対速度および距離(縦距離および横距離)と記載する場合がある。
このように、物標データ導出部32は、物標に反射した送信波TWの反射波を受信波RWとして受信して取得される受信信号SRに基づいて複数の物標を検出することができる。なお、物標データ導出部32は、例えば、FCM方式の物標検出方式を用いて物標を検出する構成であってもよい。
[2.3.3.連続性判定部33]
連続性判定部33は、過去に検出された物標と、新たに検出された物標との時間的な連続性を判定する。すなわち、連続性判定部33は、過去に導出された物標と、新たに導出された物標とが同一の物標であるか否かを判定する。
例えば、連続性判定部33は、前回導出された物標データに基づいて今回の物標データを予測し、今回導出されたその予測位置の所定範囲内で最も近い物標データを、過去に導出された物標データと連続性を有する物標データであるとする。
なお、過去に導出された物標データと連続性を有する新たな物標データがある場合、かかる新たな物標データには、連続性を有する過去に導出された物標データと同じ物標番号(以下、物標IDと記載する)が付される。また、過去に導出された物標データと連続性を有しない新たな物標データには新たな物標IDが付される。
また、信号処理部30において、物標IDが付された新たな物標データのパラメータ(相対速度、縦距離、横距離など)と前回導出された時間的に連続性を有する物標データのパラメータとを時間軸方向に平滑化して新たな物標データを補正するフィルタリング部(図示せず)を設けることもできる。
[2.3.4.グルーピング部34]
グルーピング部34は、複数の物標に対してグルーピング処理を行う。各物標は、物標データ導出部32によって導出された物標データやフィルタリング部で補正された物標データによって特定されるものであり、したがって、以下において、「物標」は「物標データ」と読み替えることもできる場合がある。
かかるグルーピング部34は、複数の物標同士の関係がグループ化禁止条件を満たす場合に、これら複数の物標を一つのグループにするグループ化を禁止する。そして、グルーピング部34は、これら複数の物標同士の関係がグループ化条件を満たす場合、これら複数の物標に対するグループ化が禁止されていなければ、これら複数の物標を一つのグループとしてグループ化する。一方、グルーピング部34は、これら複数の物標同士の関係がグループ化条件を満たす場合、これら複数の物標に対するグループ化が禁止されていれば、これら複数の物標をグループ化しない。
また、グルーピング部34は、グループ化が禁止されている複数の物標に対して、グループ化禁止解除条件を満たす場合に、グループ化の禁止を解除することができる。
図4は、グルーピング部34の構成例を示す図である。図4に示すように、グルーピング部34は、記憶部41と、グループ化禁止部42と、グループ化部43と、グループ化禁止解除部44とを備える。
[2.3.4.1.記憶部41]
記憶部41は、禁止条件情報記憶部51と、禁止テーブル記憶部52と、グループ化条件情報記憶部53と、グループ化情報記憶部54と、禁止解除条件情報記憶部55とを備える。
禁止条件情報記憶部51は、物標のグループ化が禁止される条件の情報(以下、グループ化禁止条件情報と記載する)を記憶する。かかるグループ化禁止条件情報には、速度差閾値Pv1、横距離閾値Prs1および縦距離閾値Prf1が含まれるグループ化禁止条件の情報が含まれる。
グループ化禁止条件は、互いに異なる物体の物標である可能性が高い物標同士をグループ化されないように予め判定するための条件である。速度差閾値Pv1、横距離閾値Prs1および縦距離閾値Prf1は、それぞれ互いに異なる物体の可能性が高い物標同士を識別するための閾値である。
禁止テーブル記憶部52は、物標間の状態がグループ化禁止状態であるか否かを示すテーブル(以下、禁止テーブルと記載する)を記憶する。図5は、禁止テーブルの一例を示す図である。図5に示す禁止テーブルでは、2つの物標の組み合わせ毎にグループ化禁止状態であるか否かを示す情報が設定され、グループ化禁止状態が「1」として表されており、グループ化禁止状態でないグループ化非禁止状態が「0」として表されている。例えば、物標ID1(物標IDが「1」)の物標と物標ID3(物標IDが「3」)の物標との組み合わせに対して、グループ化禁止状態が設定されている。また、物標ID1の物標と物標ID7(物標IDが「7」)の物標との組み合わせに対して、グループ化非禁止状態が設定されている。
グループ化条件情報記憶部53は、物標のグループ化が行われる条件の情報(以下、グループ化条件情報と記載する)を記憶する。かかるグループ化条件情報には、速度差閾値Gv1、横距離閾値Grs1および縦距離閾値Grf1が含まれるグループ化条件の情報が含まれる。
グループ化条件は、同一の物体の物標である可能性が高い物標同士をグループ化するための条件である。速度差閾値Gv1、横距離閾値Grs1および縦距離閾値Grf1は、同一の物体の物標である可能性が高い物標を識別するための閾値であり、グループ化禁止条件で設定された相対速度差、横距離差および縦距離差よりも小さい閾値が設定される。すなわち、Gv1<Pv1、Grs1<Prs1、Grf1<Prf1である。
グループ化条件を満たす2以上の物標が一つのグループとしてグループ化される。ただし、グループ化条件を満たす2以上の物標同士であっても、後述するように、上述したグループ化禁止状態に設定されている2以上の物標同士は一つのグループとしてグループ化されない。
グループ化情報記憶部54は、グルーピング部34によってグループ化されたグループの情報(以下、グループ化情報と記載する)を記憶する。かかるグループ化情報には、複数の物標IDとグループのグループIDとが関連付けられる。また、かかるグループ化情報には、グループID毎のグループデータが含まれる。
禁止解除条件情報記憶部55は、グループ化が禁止された2つの物標に対してグループ化の禁止が解除される条件であるグループ化禁止解除条件の情報(以下、禁止解除条件情報と記載する)を含む。かかる禁止解除条件情報には、速度差閾値Kv、横距離閾値Krs、縦距離閾値Krfおよび継続時間閾値Ktが含まれる。
速度差閾値Kv、横距離閾値Krs、縦距離閾値Krfおよび継続時間閾値Ktは、同一の物体の物標である可能性が高い物標を識別するための閾値である。かかる速度差閾値Kv、横距離閾値Krsおよび縦距離閾値Krfは、例えば、グループ化条件で設定された速度差閾値Gv1、横距離閾値Grs1および縦距離閾値Grf1と同じかそれよりも小さい閾値に設定される。
[2.3.4.2.グループ化禁止部42]
グループ化禁止部42は、禁止条件情報記憶部51に記憶されたグループ化禁止条件情報に基づき、複数の物標同士の関係が禁止条件を満たす場合に、これら複数の物標を一つのグループにするグループ化を禁止する状態にする。
かかるグループ化禁止部42は、物標関係判定部61と、グループ化禁止設定部62とを備える。物標関係判定部61は、物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、物標間の相対速度や距離がグループ化禁止条件を満たすか否かを判定する。
具体的には、物標関係判定部61は、物標データ導出部32によって導出される各物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、2つの物標の組み合わせ毎に、物標間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfを演算する。
物標関係判定部61は、グループ化禁止条件(|ΔV|≧Pv1、|ΔRs|≧Prs1、および、|ΔRf|≧Prf1のうち少なくとも一つ)を満たす2つの物標の組み合わせがあるか否かを判定する。
グループ化禁止設定部62は、物標関係判定部61によってグループ化禁止条件を満たすと判定された2つの物標の組み合わせに対してグループ化禁止状態に設定する。グループ化禁止状態の設定は、例えば、図5に示す禁止テーブルのうち該当する2つの物標の組み合わせに対して「1」を設定することによって行われる。
例えば、グループ化禁止設定部62は、物標ID1、ID3の物標データに基づき、物標ID1の物標と物標ID3の物標との相対速度が速度差閾値Pv1以上である場合、物標ID1と物標ID3との間の状態をグループ化禁止状態に設定する。
ここで、図6および図7に示すように、ID1〜ID7の7つの物標データがある場合を考える。図6は、ID1〜ID7の7つの物標とレーダ装置1との位置関係を示す図であり、図7は、ID1〜ID7の7つの物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離および縦距離)の状態を示す図である。なお、図7に示す例では、レーダ装置1を搭載した車両の速度が55[km/h]であるとしている。
図6および図7に示す例では、車両C1に対して検出された物標は、ID2の物標であり、車両C2に対して検出された物標は、ID1の物標とID7の物標であり、車両C3に対して検出された物標は、ID6の物標である。また、ガードレールに対して検出された物標は、ID3〜ID5の物標である。
また、例えば、ID1の物標の相対速度、縦距離および横距離は、0[km/h]、30[m]、−2[m]であり、ID2の物標の相対速度、縦距離および横距離は、5[km/h]、20[m]、0[m]であることを示している。
グループ化禁止部42は、上述したように、速度差閾値Pv1、横距離閾値Prs1、および縦距離閾値Prf1に基づいて、物標同士の組み合わせをグループ化禁止状態に設定する。ここで、Pv1=10[km]、Prs1=10[m]、Prf1=30[m]であるとする。
この場合、|ΔV|≧Pv1となる相対速度差ΔVを有する2つの物標の組み合わせは、図8(a)に示すようになる。図8は、グループ化禁止部42による禁止テーブルの設定方法の一例を示す図である。
すなわち、ID1の物標とID3〜ID5のいずれかの物標との組み合わせ、ID2の物標とID3〜ID6のいずれかの物標との組み合わせ、および、ID3〜ID5のいずれかの物標とID6またはID7の物標との組み合わせが、|ΔV|≧Pv1となる相対速度差ΔVを有する2つの物標の組み合わせである。
また、|ΔRs|≧Prs1となる横距離差ΔRsを有する2つの物標の組み合わせは、図8(b)に示すようになる。すなわち、ID1、ID3〜ID5、ID7のいずれかの物標とID6の物標との組み合わせが、|ΔRs|≧Prs1となる横距離差ΔRsを有する2つの物標の組み合わせである。
また、|ΔRf|≧Prf1となる縦距離差ΔRfを有する2つの物標の組み合わせは、図8(c)に示すようになる。すなわち、ID1〜ID4のいずれかの物標とID5の物標との組み合わせが、|ΔRf|≧Prf1となる縦距離差ΔRfを有する2つの物標の組み合わせである。
したがって、|ΔV|≧Pv1、|ΔRs|≧Prs1、または、|ΔRf|≧Prf1のいずれかを満たす2つの物標の組み合わせは、図8(d)に示す状態になる。したがって、グループ化禁止状態「1」は、図5に示す禁止テーブルのように設定される。
また、ID3の物標とID4の物標とは互いの関係が|ΔV|<Pv1、|ΔRs|<Prs1、および、|ΔRf|<Prf1である。同様に、ID1の物標とID2の物標、ID1の物標とID7の物標、および、ID2の物標とID7の物標の各2つの物標は互いの関係が|ΔV|<Pv1、|ΔRs|<Prs1、および、|ΔRf|<Prf1である。したがって、グループ化非禁止状態「0」は、図5に示す禁止テーブルのように設定される。
[2.3.4.3.グループ化部43]
グループ化部43は、上述したグループ化条件情報および禁止テーブルに基づき、複数の物標同士の関係がグループ化条件を満たし、グループ化禁止状態でない場合に、これら複数の物標データを一つのグループにするグループ化を行う。
また、グループ化部43は、上述したグループ化情報に基づき、前回一つのグループとしてグループ化された複数の物標が互いにグループ化条件を満たす場合に、これら複数の物標を引き続き同一グループとしてグループ化する。
かかるグループ化部43は、物標関係判定部71と、グループ設定部72とを備える。物標関係判定部71は、物標関係判定部61と同様に、物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、物標間の相対速度や距離がグループ化条件を満たすか否かを判定する。
具体的には、物標関係判定部71は、物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、2つの物標の組み合わせ毎に、かかる2以上の物標間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfを演算する。
物標関係判定部71は、|ΔV|≦Gv1、|ΔRs|≦Grs1、および、|ΔRf|≦Grf1のすべての条件(グループ化条件)を満たす2つ以上の物標の組み合わせがあるか否かを判定する。例えば、物標関係判定部71は、3つの物標A、B、Cにおいて2つの物標の組み合わせ(物標AとB、物標AとC、物標BとC)のすべてがグループ化条件を満たすか否かを判定する。
また、物標関係判定部71は、グループ化情報記憶部54に記憶されたグループ化情報に基づき、前回一つのグループとしてグループ化された複数の物標が|ΔV|≦Gv1、|ΔRs|≦Grs1、および、|ΔRf|≦Grf1のすべての条件(グループ化条件)を満たすか否かを判定する。
グループ設定部72は、物標関係判定部71によってグループ化条件を満たすと判定された2つ以上の物標の組み合わせに対し、グループ化禁止状態でない場合に、グループ化処理を行う。かかるグループ化処理は、グループ化条件を満たす2つ以上の物標の物標データを一つのグループデータとしてまとめる処理である。
例えば、グループ設定部72は、3つの物標が互いにグループ化条件を満たし且つグループ化禁止状態に設定されていないと判定した場合、かかる3つの物標を一つのグループとし、かかる3つの物標の物標データから一つのグループデータを生成する。この場合、グループ設定部72は、例えば、3つの物標のうち最も縦距離が短い物標の縦距離をグループデータの縦距離とし、3つの物標の横距離の平均値をグループデータの横距離とし、3つの物標の相対速度の平均値をグループデータの相対速度とする。
また、グループ設定部72は、前回一つのグループとしてグループ化された複数の物標が互いにグループ化条件を満たす場合に、これら複数の物標を引き続き同一グループとしてグループ化し、同様に、グループデータを生成する。
グループデータを生成すると、グループ設定部72は、グループ化によって設定したグループ毎に、グループのグループIDと、グループ化した物標の物標IDと、生成したグループデータとを含むグループ化情報を記憶部41のグループ化情報記憶部54に記憶する。
図9は、グループ化部43によるグループ化処理の説明図(その1)である。図9に示すように、禁止テーブルにおいて、ID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態に設定されているとする。また、ID1の物標とID2の物標との間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfが|ΔV|≦Gv1、|ΔRs|≦Grs1、および、|ΔRf|≦Grf1のすべての条件を満たすとする。
この場合、グループ化部43は、ID1の物標とID2の物標とがグループ化条件を満たすが、禁止テーブルにおいてID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態であるため、ID1の物標とID2の物標とをグループ化しない。
このように、グループ化部43は、グループ化条件を満たす2つの物標がある場合であっても、互いに異なる物体の物標として判定している場合には、グループ化条件を満たす2つの物標に対するグループ化を行わない。これにより、誤って異なる物体の物標同士を同一の物体の物標としてグループ化することを抑制でき、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
図10は、グループ化部43によるグループ化処理の説明図(その2)である。図10に示すように、禁止テーブルにおいて、ID1〜ID4の物標のうちID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態に設定されており、それ以外の組み合わせがグループ化非禁止状態であるとする。また、ID1〜ID4の物標のうちのいずれの2つの物標間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfも|ΔV|≦Gv1、|ΔRs|≦Grs1、および、|ΔRf|≦Grf1のすべての条件を満たすとする。
この場合、グループ化部43は、ID1の物標とID2の物標とがグループ化条件を満たすが、禁止テーブルにおいてID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態であるため、ID1の物標とID2の物標とをグループ化しない。一方、グループ化部43は、禁止テーブルにおいてグループ化禁止状態になっておらず、かつ、前回のグループ化で一つのグループとしてグループ化されていた物標を一つのグループとしてグループ化する。例えば、前回のグループ化でID1、ID3、ID4の物標が一つのグループとしてグループ化されていた場合、グループ化部43は、ID1、ID3、ID4の物標を一つのグループとしてグループ化する。
このように、グループ化部43は、誤って異なる物体の物標同士を同一の物体の物標としてグループ化することを抑制しつつ、同一物体に対して検出された複数の物標のグループ化を精度よく行うことができる。
また、グループ化部43は、過去のグループ化情報を用いて、一つのグループとしてグループ化された複数の物標のグループ(以下、物標グループと記載する)に基づき、物標グループの再グループ化を行うことができる。例えば、グループ化部43は、前回以前にグループ化された複数の物標グループに含まれる複数の物標ID同士が互いにグループ化条件を満たす場合、グループ化を解除し、再グループ化をすることができる。
図11は、グループ化部43による再グループ化処理の説明図である。図12に示すように、グループ化情報において、グループID1のグループに物標ID1、ID5、ID6の物標がグループ化され、グループID2のグループに物標ID2〜ID4の物標がグループ化されているとする。また、禁止テーブルにおいて、ID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態となっており、ID1〜ID6の物標が互いに|ΔV|≦Gv1、|ΔRs|≦Grs1、および、|ΔRf|≦Grf1のすべての条件を満たしているものとする。
この場合、禁止テーブルにおいてID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態であるため、グループ化部43は、グループID1、ID2のグループに対する再グループ化は行わない。すなわち、一方のグループに含まれる少なくとも1つの物標と、他方のグループに含まれる少なくとも1つの物標との関係がグループ化禁止状態である場合は、一方のグループの残りの物標と他方のグループの残りの物標との関係がグループ化禁止状態でなくとも、再グループ化は行わない。これにより、誤って異なる物体の物標同士を同一の物体の物標としてグループ化することを抑制でき、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
一方、禁止テーブルにおいてID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化禁止状態でない場合、グループ化部43は、グループID1、ID2のグループに対する再グループ化を行う。すなわち、グループ化部43は、ID1〜ID6の物標を一つのグループとしてグループ化する。
[2.3.4.4.グループ化禁止解除部44]
グループ化禁止解除部44は、禁止解除条件情報に基づき、グループ化が禁止された複数の物標同士がグループ化禁止解除条件を満たす場合に、これら複数の物標に対するグループ化禁止状態を解除する。
かかるグループ化禁止解除部44は、物標関係判定部81と、グループ化禁止解除設定部82とを備える。物標関係判定部81は、グループ化禁止状態に設定された複数の物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、物標間の相対速度や距離がグループ化禁止解除条件を満たすか否かを判定する。
具体的には、物標関係判定部81は、物標データに含まれるパラメータ(相対速度、横距離、縦距離)に基づいて、互いにグループ化禁止状態に設定された2つの物標の組み合わせ毎に、2つの物標間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfを演算する。
物標関係判定部81は、ΔV≧|Kv|、ΔRs≧|Krs|、および、ΔRf≧|Krf|である状態の継続時間が継続時間閾値Kt以上になるという条件であるグループ化禁止解除条件を満たす2つの物標の組み合わせがあるか否かを判定する。
グループ化禁止解除設定部82は、物標関係判定部81によってグループ化禁止解除条件を満たすと判定された2つの物標の組み合わせに対してグループ化禁止状態を解除する。グループ化禁止状態の解除は、例えば、図5に示す禁止テーブルのうち該当する2つの物標間の状態をグループ化禁止状態「1」からグループ化非禁止状態「0」に設定することによって行われる。
例えば、グループ化禁止状態「1」に設定された物標ID1と物標ID2との組み合わせにおいて、ΔV≧|Kv|、ΔRs≧|Krs|、および、ΔRf≧|Krf|の状態が継続時間閾値Kt以上継続した場合、グループ化禁止設定部62は、物標ID1と物標ID2との間の状態をグループ化非禁止状態「0」に設定する。
図12は、グループ化禁止解除部44による処理の説明図である。図12(a)に示すように、物標ID1の物標と物標ID2の物標とが離れており、物標ID1の物標と物標ID2の物標とがグループ化禁止条件を満たすため、物標ID1の物標と物標ID2の物標との組み合わせはグループ化禁止状態に設定される。
したがって、その後、図12(b)に示すように、物標ID1の物標が物標ID2の物標に近づき、物標ID1の物標と物標ID2の物標とがグループ化条件を満たすことになった場合であっても、物標ID1の物標と物標ID2の物標とはグループ化されない。
これにより、例えば、車両C2の物標として検出された物標ID2の物標に連続する物標として車両C1の物標が誤判定された場合であっても、同一の車両C1の物標である物標ID1の物標と物標ID2の物標とはグループ化禁止状態である限り、グループ化されない。
そこで、グループ化禁止解除部44は、グループ化が禁止された複数の物標データ同士がグループ化禁止解除条件を満たす場合に、これら複数の物標データに対するグループ化禁止状態を解除するようにしている。これにより、元々異なる物体の物標に対して割り当てられた物標IDが同一の物体の物標に対して誤設定された場合であっても、これら複数の物標に対してグループ化を適切に行うことができる。
[2.3.5.出力部35]
出力部35は、グループ化処理後の物標データであるグループデータやグループ化されなかった物標データをターゲット情報として車両制御装置2へ出力する。
[3.信号処理部30による処理]
次に、フローチャートを用いて、レーダ装置1の信号処理部30が実行する処理の流れの一例を説明する。図13は、信号処理部30が実行する処理手順の一例を示すフローチャートであり、繰り返し実行される処理である。
図13に示すように、信号処理部30の物標データ導出部32は、受信部20から出力される複数のビート信号SBなどに基づいて、レーダ装置1の物標検出範囲に存在する物標の物標データを導出する(ステップS11)。信号処理部30の連続性判定部33は、物標データ導出部32によって導出された物標データの連続性を判定する(ステップS12)。
次に、信号処理部30のグルーピング部34は、連続性の判定が行われた物標データに対してグループ化処理を行う(ステップS13)。そして、信号処理部30の出力部35は、グループ化処理後の物標データやグループデータをターゲット情報として車両制御装置2へ出力する出力処理を実行する(ステップS14)。
図14は、図13に示すステップS13のグループ化処理の流れを示すフローチャートであり、例えば、2つの物標の組み合わせ毎に実行される。図14に示すように、グルーピング部34は、2つの物標の組み合わせがグループ化禁止条件を満たすか否かを判定する(ステップS21)。グループ化禁止条件を満たすと判定した場合(ステップS21;Yes)、グルーピング部34は、グループ化禁止条件を満たすと判定された2つの物標の組み合わせに対してグループ化禁止状態を設定する(ステップS22)。
グループ化禁止条件を満たさないと判定した場合(ステップS21;No)、グルーピング部34は、2つの物標の組み合わせがグループ化禁止状態であるか否かを判定する(ステップS23)。2つの物標の組み合わせがグループ化禁止状態であると判定した場合(ステップS23;Yes)、グルーピング部34は、グループ化禁止状態の物標の組み合わせがグループ化禁止解除条件を満たすか否かを判定する(ステップS24)。グループ化禁止解除条件を満たすと判定した場合(ステップS24;Yes)、グルーピング部34は、グループ化禁止状態に設定されていると判定された物標の組み合わせのグループ化禁止状態を解除する(ステップS25)。
ステップS22またはS25の処理が終了した場合、グループ化禁止状態の物標の組み合わせではないと判定した場合(ステップS23;No)、または、グループ化禁止解除条件を満たさないと判定した場合(ステップS24;No)、グルーピング部34は、2つの物標の組み合わせがグループ化条件を満たすか否かを判定する(ステップS26)。
グループ化条件を互いに満たすと判定した場合(ステップS26;Yes)、グルーピング部34は、グループ化条件を互いに満たす2以上の物標がグループ化禁止状態に設定されているか否かを判定する(ステップS27)。グループ化禁止状態に設定されている2つの物標の組み合わせがないと判定した場合(ステップS27;No)、グルーピング部34は、グループ化条件を互いに満たす2以上の物標を一つのグループとしてグループ化する(ステップS28)。
グループ化条件を満たさない場合(ステップS26;No)、または、グループ化禁止状態に設定されている2つの物標の組み合わせがあると判定した場合(ステップS27;Yes)、グルーピング部34は、図14に示す処理を終了する。
[4.その他の処理]
実施形態に係るレーダ装置1において、上述したグループ化禁止条件に加え、物標のグループ化が規制される条件(以下、グループ化規制条件と記載する)を設定することもできる。この場合、レーダ装置1において、上述したグループ化条件に加え、物標のグループ化が規制された物標間をグループ化するための条件である規制物標間グループ化条件が設定される。
グループ化規制条件および規制物標間グループ化条件を用いることによって、物標のグループ化が禁止されないような状態であっても、グループ化を制限することができ、異なる物体である可能性がある2以上の物標のグループ化を抑制することが可能となる。以下、これらグループ化規制条件および規制物標間グループ化条件を用いた処理について具体的に説明する。なお、上述した「グループ化条件」と「規制物標間グループ化条件」との区別を明確にするために、以下においては、「グループ化条件」を「非規制物標間グループ化条件」と記載するものとする。
グループ化規制条件は、異なる物体の物標である可能性がグループ化禁止条件よりも低いが、互いに異なる物体の物標である可能性がある物標同士がグループ化されてしまう可能性を低減してグループ化を規制するための条件である。禁止条件情報記憶部51は、グループ化情報として、グループ化規制条件の情報を記憶する。グループ化規制条件の情報には、速度差閾値Pv2、横距離閾値Prs2および縦距離閾値Prf2が含まれる。これら速度差閾値Pv2、横距離閾値Prs2および縦距離閾値Prf2は、それぞれ互いに異なる物体の可能性がある物標同士を識別するための閾値であり、Pv1>Pv2、Prs1>Prs2、Prf1>Prf2である。
規制物標間グループ化条件は、グループ化規制条件が設定されている2以上の物標同士を同一の物体の物標であるとしてグループ化するための条件である。グループ化条件情報記憶部53は、規制物標間グループ化条件の情報を記憶する。かかる規制物標間グループ化条件の情報には、速度差閾値Gv2、横距離閾値Grs2および縦距離閾値Grf2が含まれる。速度差閾値Gv2、横距離閾値Grs2および縦距離閾値Grf2は、同一の物体の物標である可能性が上述した非規制物標間グループ化条件よりも高い物標を識別するための閾値である。なお、Gv1>Gv2、Grs1>Grs2、Grf1>Grf2である。
グループ化禁止部42の物標関係判定部61は、グループ化禁止条件を満たさない2つの物標の組み合わせのうち、グループ規制条件(|ΔV|≧Pv2、|ΔRs|≧Prs2、および、|ΔRf|≧Prf2のうち少なくとも一つを満たす)を満たす2つの物標の組み合わせがあるか否かを判定する。
グループ化禁止部42のグループ化禁止設定部62は、物標関係判定部61によってグループ化禁止条件を満たさないがグループ化規制条件を満たすと判定された2つの物標の組み合わせに対してグループ化規制状態に設定する。グループ化規制状態の設定は、例えば、図5に示す禁止テーブルのうち該当する2つの物標の組み合わせに対して「2」に設定することによって行われる。
例えば、物標ID1の物標と物標ID2の物標との相対速度が速度差閾値Pv2以上であって速度差閾値Pv1未満である場合、グループ化禁止設定部62は、物標ID1と物標ID2との組み合わせに対してグループ化規制状態に設定する。
グループ化部43は、複数の物標同士の関係がグループ化規制状態である場合であっても、規制物標間グループ化条件を満たす場合に、これら複数の物標データを一つのグループにするグループ化を行う。一方、グループ化部43は、グループ化規制状態の関係にある複数の物標同士が非規制物標間グループ化条件を満たすが、規制物標間グループ化条件を満たさない場合、これら複数の物標データを一つのグループにするグループ化は行わない。
具体的には、グループ化部43の物標関係判定部71は、グループ化規制状態が設定された2つの物標の組み合わせのうち、|ΔV|≦Gv2、|ΔRs|≦Grs2、および、|ΔRf|≦Grf2のすべての条件を満たす2つの物標の組み合わせがあるか否かを判定する。
グループ化部43のグループ設定部72は、物標関係判定部71によって非規制物標間グループ化条件を満たすと判定された2つ以上の物標の組み合わせに対し、グループ化禁止規制状態およびグループ化禁止状態でない場合に、グループ化処理を行う。また、グループ設定部72は、物標関係判定部71によってグループ化規制状態が設定された2つ以上の物標の組み合わせが規制物標間グループ化条件を満たすと判定された場合、かかる2つ以上の物標を一つのグループとし、同様に、グループデータを生成する。
図15は、グループ化部43によるグループ化処理の説明図(その3)である。図15に示すように、禁止テーブルにおいて、ID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化規制状態に設定されているとする。また、ID1の物標とID2の物標との間の相対速度差ΔV、横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRfが|ΔV|≦Gv2、|ΔRs|≦Grs2、および、|ΔRf|≦Grf2のすべての条件を満たすとする。
この場合、グループ化部43は、ID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化規制状態に設定されているが、ID1の物標とID2の物標とが規制物標間グループ化条件を満たすため、ID1の物標とID2の物標とをグループ化する。一方、グループ化部43は、ID1の物標とID2の物標とが規制物標間グループ化条件を満たさない場合、ID1の物標とID2の物標とをグループ化しない。なお、図15に示すように、Grs2およびGrf2で規定される規制物標間グループ化範囲Ar2は、Grs1およびGrf1で規定される非規制物標間グループ化範囲Ar1よりも狭い。
このように、禁止テーブルにおいてID1の物標とID2の物標との組み合わせがグループ化規制状態に設定されている場合、グループ化部43は、非規制物標間グループ化条件よりも厳しい規制物標間グループ化条件を満たす場合に、グループ化を行う。そのため、例えば、物標の検出や連続性の判定の誤りによって同一物体の物標でないと判定された場合において、グループ化される可能性を増加させることができ、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
[5.変形例]
上述した実施形態においては、グループ化条件やグループ化禁止条件などに対して継続時間の条件が設定されている例を説明していないが、グループ化条件やグループ化禁止条件などには、継続時間の条件を含んでもよい。例えば、グループ化部43は、上述した非規制物標間グループ化条件や規制物標間グループ化条件を所定時間以上継続して満たす場合に、グループ化を実行することができる。この場合、グループ化禁止解除条件の継続時間閾値Ktは、例えば、非規制物標間グループ化条件および規制物標間グループ化条件の継続時間閾値よりも大きな値に設定される。
また、グループ化禁止部42は、グループ化禁止条件やグループ化規制条件を所定時間以上継続して満たす場合に、グループ化禁止状態やグループ化規制状態を設定することができる。この場合、グループ化禁止条件およびグループ化規制条件の継続時間閾値は、非規制物標間グループ化条件および規制物標間グループ化条件の継続時間閾値よりも小さな値であってもよく、大きな値であってもよい。
また、グルーピング部34は、レーダ装置1を搭載した車両の走行状態(例えば、車両の速度、走行している道路種別)や物標の検出状態に基づいて、非規制物標間グループ化条件、グループ化禁止条件、規制物標間グループ化条件およびグループ化規制条件を変更することができる。また、不図示の入力部への入力内容や車両周辺の状態(例えば、天気や道路の混雑状況)に基づいて、非規制物標間グループ化条件、グループ化禁止条件、規制物標間グループ化条件およびグループ化規制条件を変更することもできる。
例えば、グルーピング部34は、距離が遠い物標に対して、物標との距離が遠いほど、非規制物標間グループ化条件を緩やか(例えば、Gv1、Grs1、Grf1を大きくする)にし、また、規制物標間グループ化条件を緩やかにすることができる。また、グルーピング部34は、距離が遠い物標に対して、物標との距離が遠いほど、グループ化禁止条件を厳しく(例えば、Pv1、Prs1、Prf1を大きく)し、グループ化規制条件を厳しく(例えば、Pv2、Prs2、Prf2を大きく)することができる。
また、グルーピング部34は、縦距離が第1距離(例えば、150m)以内になった場合に、グループ化禁止条件やグループ化規制条件に基づいて2つ以上の物標をグループ化禁止状態やグループ化規制状態を設定することができる。この場合、グルーピング部34は、縦距離が第1距離よりも近い第2距離(例えば、100m)以内になった場合に、非規制物標間グループ化条件や規制物標間グループ化条件に基づいて2つ以上の物標をグループ化することができる。これにより、物体が互いに異なる2つの物標をグループ化前にグループ化を精度よく禁止することができ、車両制御装置2において、車両追従動作や衝突防止動作などを精度よく行うことができる。
また、上述した実施形態では、非規制物標間グループ化条件と規制物標間グループ化条件を2以上の物標をグループ化するための条件としたが、かかる例に限定されない。例えば、規制物標間グループ化条件を用いなくてもよく、この場合、グループ化規制条件は用いられない。また、物標との相対速度、縦距離および横距離に基づいてグループ化処理を行ったが、物標との相対速度、距離および角度に基づいてグループ化処理を行ってもよく、その他のパラメータを含んでグループ化処理を行ってもよい。
[6.効果]
以上のように、実施形態に係るレーダ装置1は、受信部20および物標データ導出部32(物標検出部の一例)と、グループ化禁止部42と、グループ化部43とを備える。受信部20および物標データ導出部32は、物標に反射した送信波の反射波を受信して取得される受信信号SRに基づいて複数の物標を検出する。グループ化禁止部42は、物標データ導出部32によって検出された複数の物標同士の関係が予め設定されたグループ化禁止条件を満たす場合に、複数の物標を一つのグループにするグループ化を禁止する。グループ化部43は、物標データ導出部32によって検出された複数の物標同士の関係が予め設定された非規制物標間グループ化条件(グループ化条件の一例)を満たす場合、これら複数の物標のグループ化がグループ化禁止部42によって禁止されていなければ、これら複数の物標を一つのグループとしてグループ化する。これにより、互いに異なる物体(例えば、車両)の物標が誤ってグループ化されることを抑制することができ、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
また、グループ化禁止部42は、複数の物標間の横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRf(距離差の一例)、と相対速度差ΔV(速度差の一例)の少なくとも一つがグループ化禁止条件を満たす場合に、複数の物標に対するグループ化を禁止する。これにより、例えば、同じ相対速度でも距離差が大きい2以上の物標や距離差が少ないが相対速度がある2以上の物標に対して、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
また、レーダ装置1は、グループ化禁止部42によってグループ化が禁止された複数の物標が予め設定されたグループ化禁止解除条件を満たす場合に、グループ化の禁止を解除するグループ化禁止解除部44を備える。これにより、誤ってグループ化が禁止された場合であっても、グループ化禁止状態を解除することができるため、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
グループ化禁止解除部44は、複数の物標間の横距離差ΔRsおよび縦距離差ΔRf(距離差の一例)、と相対速度差ΔV(速度差の一例)がグループ化禁止解除条件を満たす場合に、複数の物標に対するグループ化禁止状態を解除する。これにより、例えば、グループ化の場合と同様のパラメータ(距離や速度)を用いることで、グループ化禁止状態を解除する処理を比較的簡易に行うことができる。
グループ化禁止部42は、物標データ導出部32によって検出された複数の物標同士の関係が予め設定されたグループ化規制条件を満たす場合に、これら複数の物標を一つのグループにするグループ化を規制する。また、グループ化部43は、グループ化禁止部42によってグループ化が規制された複数の物標同士の関係が予め設定された規制物標間グループ化条件を満たさない場合、これら複数の物標を一つのグループとしてグループ化を行わず、これら複数の物標同士の関係が規制物標間グループ化条件を満たす場合、これら複数の物標を一つのグループとしてグループ化を行う。これにより、例えば、物標の検出や連続性の判定の誤りによって同一物体の物標でないと判定された場合において、グループ化される可能性を増加させることができ、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
また、グループ化部43は、2つのグループに含まれる複数の物標が互いに非規制物標間グループ化条件を満たす場合、これら2つのグループに含まれる複数の物標のうちグループ化禁止部42によってグループ化が禁止されている2以上の物標の組み合わせがなければ、これら2つのグループを一つのグループにグループ化する。これにより、2つのグループが誤って一つのグループとして再グループ化されることを抑制することができ、物標のグループ化を精度よく行うことができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。