以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の解体技術が適用される構造物の一例について、図1−1〜図6−2を参照して説明する。
図1−1は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、容器の筒状部分の径方向内側に配置された切断装置にケーブルが接続された態様を示す図である。図1−2は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、容器外に配置された切断装置にケーブルが接続された態様を示す図である。図1−3は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、第1クレーンにより切断装置吊り具を容器内から搬出しながら、第2クレーンにより環状片吊り具を容器の鉛直上側に搬入する態様を示す図である。
図2−1は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、切断装置が筒状部分に固定されており、且つ筒状部分の環状の縁に環状片吊り具が配置されており、当該環状の縁を通して切断装置にケーブルが接続された態様を示す図である。図2−2は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、切断装置にケーブルを接続した後、伸縮ユニットが収縮し、容器から離間するよう台車が移動した態様を示す図である。
図3−1は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、切断装置のカッターの切削により筒状部分に生じた開口にスペーサが挿入され、挿入されたスペーサが切断中の環状片を支持する態様を示す図である。図3−2は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、切断装置により筒状部分から環状片が切り出された態様を示す図である。
図4−1は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、第2クレーンにより環状片を容器外に搬送する態様を示す図である。図4−2は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、第2クレーンを遠隔操作して環状片を容器外に搬送しながら、第1クレーンにより切断装置吊り具を筒状部分の径方向内側に搬送する態様を示す図である。
図5−1は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、切断装置吊り具を切断装置に装着し、接続装置の伸縮ユニットを伸長させて、ケーブルを再び切断装置に接続した態様を示す図である。図5−2は、本実施形態の解体装置及び解体方法を説明する模式図であり、ケーブルが接続されている切断装置を、第1クレーンにより、環状片の厚さ分、鉛直下側に移動させた態様を示す図である。
なお、図1−1〜図5−2において、鉛直上側を矢印Uで示し、鉛直下側を矢印Dで示している。また、容器の筒状部分の軸心を一点鎖線Aで示し、筒状部分の径方向内側を矢印R1で示し、径方向外側を矢印R2で示している。
(解体対象である構造物)
図1に示すように、本実施形態において、解体の対象となる構造物は、原子力施設において炉心及び炉内構造物を収容する原子炉圧力容器(以下、単に「容器」と記す)1である。容器1は、金属製であり、鉛直方向に軸心(図に一点鎖線Aで示す)が延びている筒状の部分(以下、筒状部分と記す)2と、筒状部分2の鉛直下側において下向きに膨出したドーム状をなしている部分1aとを有する。本実施形態において、床4は、水平方向に広がっており、容器1は、筒状部分2の軸心Aが鉛直方向に延びるように床4上に配置されている。
解体の対象である容器1に付着している放射性物質からは、比較的高い線量率の電離放射線が放出されており、解体作業を行う作業員は、当該容器1に近接して長時間、解体作業を行うことが困難である。なお、筒状部分2の径方向内側の面(以下、単に「内面」と記す)を符号2aで示し、筒状部分2の径方向外側の面(以下、単に「外面」と記す)を符号2cで示す。また、筒状部分2の鉛直上側の縁を符号2eで示す。なお、以下の説明において、筒状部分2の周方向すなわち軸心A周りの周方向について、単に「周方向」と記す。
(切断装置)
本実施形態の解体装置は、上述した筒状部分2から、その軸心Aを中心として環状をなしている切断片(以下、環状片と記す)を切り出すための装置(以下、切断装置と記す)20を有している。切断装置20は、図1−1に示すように、筒状部分2を切削可能な装置(以下、単に「カッター」と記す)22と、当該カッター22が筒状部分2の周方向に旋回するよう当該カッター22を駆動可能な装置(以下、旋回駆動装置と記す)24を含んでいる。さらに、切断装置20は、筒状部分2の内面2aを押圧することにより、当該筒状部分2の径方向内側に配置された切断装置20を当該筒状部分2に固定可能な装置(以下、単にアクチュエータと記す)26をさらに含んでいる。切断装置20は、筒状部分2の径方向内側に配置可能に構成されている。
切断装置20のうち、カッター22、旋回駆動装置24及びアクチュエータ26は、それぞれ、容器1外にある動力源から動力(power)の供給を受けることにより作動可能となる。具体的には、カッター22及び旋回駆動装置24は、容器1外にある電力源からの電力(electric power)を、ケーブル3を通して供給されて作動する。また、アクチュエータ26は、容器1外にある圧力源からの液圧すなわち機械的動力(kinetic power)の供給を受けて作動可能となる。
本実施形態のカッター22は、ディスク状の刃22aを有している。カッター22は、電力の供給を受けて作動して、刃22aを回転駆動する。刃22aが回転しながら筒状部分2に接することにより、当該筒状部分2を切削する。カッター22の作動、すなわち刃22aの回転駆動は、容器1外から遠隔操作される。
本実施形態のアクチュエータ26は、切断装置20が筒状部分2の径方向内側に配置されたときに、当該筒状部分2の径方向に伸縮可能に構成されている。アクチュエータ26は、いわゆる油圧シリンダとして構成されており、液圧(油圧)の供給を受けて作動して伸長する。アクチュエータ26のうち油圧を受けて筒状部分2の径方向に移動可能な可動部26aを有する。アクチュエータ26は、可動部26aが径方向外側に移動して筒状部分2の内面2aを押圧することにより、筒状部分2の径方向内側の所望の位置に切断装置20を固定する(すなわち保持する)ことが可能である。また、アクチュエータ26は、油圧の供給の有無に拘わらず、筒状部分2の内面2aを押圧する位置に可動部26aを保持する機能を有している。アクチュエータ26による切断装置20の筒状部分2への固定、すなわち可動部26aの移動は、容器1外から遠隔操作される。
アクチュエータ26は、筒状部分2の径方向内側において略円板状をなしているベース25に結合されている。ベース25の鉛直上側には、略円板状をなしており且つ当該ベース25に対して筒状部分2の軸心Aを中心に回動可能な部材(以下、旋回テーブルと記す)23が配置されている。旋回テーブル23上には、上述したカッター22と、ケーブル3が接続されるコネクタ(以下、受けコネクタと記す)28が設けられている。
本実施形態の旋回駆動装置24は、アクチュエータ26及びベース25に対して、旋回テーブル23を回転駆動する。すなわち、旋回駆動装置24は、旋回テーブル23上にあるカッター22及び受けコネクタ28は、筒状部分2の軸心Aを中心に旋回させる。
切断装置20は、アクチュエータ26により筒状部分2に固定された状態で、カッター22の刃22aを回転(自転)させることにより筒状部分2を切削する。切断装置20は、カッター22により筒状部分2を切削しながら、旋回駆動装置24を作動させて、当該カッター22を軸心A周りに1回転、旋回(すなわち公転)させる。これにより、切断装置20は、筒状部分2から環状片8(図3−2、図4−1及び図4−2参照)を切り出す。
(ケーブル)
このように構成された切断装置20は、図1−1及び図1−2に示すように、容器1外から延びる動力を伝達可能なケーブル3が接続されることにより、当該ケーブル3を通して動力の供給を受ける。具体的には、カッター22、旋回駆動装置24は、容器1外にある電源から当該ケーブル3を通して電力の供給を受ける。アクチュエータ26は、容器1外にある液圧源から当該ケーブル3を通して液体すなわち機械的動力の供給を受ける。
上述したケーブル3は、液圧等の機械的動力(kinetic power)を伝達するために油等の液体を通す配管と、電力(electric power)を伝達するための金属線の電線を内部に含んでおり、且つ可撓性を有している。
また、切断装置20のうち少なくともカッター22、旋回駆動装置24及びアクチュエータ26は、当該ケーブル3を介して容器1外から作業員等により遠隔操作可能に構成されている。本実施形態において、ケーブル3は、切断装置20、すなわちカッター22、旋回駆動装置24及びアクチュエータ26を、それぞれ遠隔操作するための信号線を内部に含んでいる。なお、カッター22、旋回駆動装置24及びアクチュエータ26は、それぞれ無線を介して容器1外から遠隔操作されるものとしても良い。
ケーブル3の先端には、切断装置20に動力を送るためのコネクタ(以下、送りコネクタと記す)32が設けられている。送りコネクタ32は、上述した受けコネクタ28と接続可能に構成されている。なお、ケーブル3の他端は、図示しない動力源に接続されており、具体的には、油圧ポンプ等の液圧源や、電源に接続されている。
ケーブル3の送りコネクタ32と切断装置20の受けコネクタ28が接続されると、液圧源から液圧すなわち機械的動力と、電源からの電力は、ケーブル3の送りコネクタ32と、これに接続された受けコネクタ28を通して、切断装置20に供給される。切断装置20を固定するためのアクチュエータ26は、ケーブル3及び受けコネクタ28を通して液圧(機械的動力)の供給を受け、カッター22及び旋回駆動装置24は、ケーブル3及び受けコネクタ28を通して電力の供給を受ける。加えて、本実施形態においては、ケーブル3に含まれる信号線が切断装置20に接続されることにより、カッター22、旋回駆動装置24及びアクチュエータ26が、それぞれ、容器1外から遠隔操作可能となる。
(クレーン)
図1−1に示すように、容器1の筒状部分2の鉛直上側には、切断装置20を搬送可能なクレーン10が配置されている。本実施形態において、クレーン10は、いわゆる「天井走行クレーン」として構成されており、容器1の鉛直上側において水平方向に延びているレール14と、当該レール14に沿って水平方向に移動可能な巻上機15を含んでいる。クレーン10は、当該巻上機15から鉛直下側に延びており、遠隔操作により鉛直方向に駆動されるフック16を、さらに有している。クレーン10のフック16には、切断装置吊り具18が係合している。つまり、クレーン10は、切断装置吊り具18を介して切断装置20を吊った状態で当該切断装置20を搬送する。
(切断装置吊り具)
切断装置吊り具18は、鉛直上側の端部においてクレーン10のフック16と係合可能に構成されており、且つ鉛直下側の端部において切断装置20を保持可能に構成されている。より具体的には、切断装置吊り具18は、鉛直下側の端において切断装置20の旋回テーブル23に結合可能に構成されている。切断装置吊り具18は、遠隔操作により旋回テーブル23に結合されることにより、切断装置20を保持する。切断装置吊り具18による切断装置20の保持は、容器1外から遠隔操作される。
(環状片吊り具)
環状片吊り具50は、図1−3に示すように、鉛直上側の端部においてクレーン10と係合可能に構成されている。また、環状片吊り具50は、図4−1に示すように、筒状部分2から切り出された環状片8を保持可能に構成されている。環状片吊り具50は、図2−1〜図3−2に示すように、筒状部分2の鉛直上側の端部に配置される。
環状片吊り具50は、筒状部分2の鉛直上側にある環状の縁2eを挟み込むクランプ53を有している。クランプ53は、当該縁2eに沿って筒状部分2の周方向に延びており、筒状部分2のうち環状の縁2eを含む部分を、その径方向外側と内側から挟み込む。本実施形態において、環状片吊り具50は、クランプ53の鉛直上側において略円板状をなしている部分(以下、板状部分と記す)51を有している。環状片吊り具50のうち板状部分51には、上述したケーブル3等を通すための貫通孔52が形成されている。なお、当該貫通孔52は、切欠きであるものとしても良い。
また、環状片吊り具50は、図3−1及び図3−2に示すように、切断中の環状片8を支持可能な複数のスペーサ55を有している。複数のスペーサ55は、筒状部分2の周方向に間隔をあけて配列されている。また、環状片吊り具50には、複数のスペーサ55と一対一で対応して配列されており、それぞれ対応するスペーサを駆動可能な複数のスペーサ駆動装置57を有している。
複数のスペーサ55及び複数のスペーサ駆動装置57は、クランプ53より筒状部分2の径方向内側に配置されている。各スペーサ55は、その対応するスペーサ駆動装置57により、筒状部分2の径方向内側において、図3−1に示すように筒状部分2の周方向に垂直な断面に沿って回動可能に支持されている。
また、環状片吊り具50は、上述したクランプ53及びスペーサ駆動装置57に容器1外から動力を供給するためのケーブル54を有している。なお、クランプ53及びスペーサ駆動装置57は、当該ケーブル54を通して電力の供給を受けて作動する。なお、クランプ53及びスペーサ駆動装置57は、当該ケーブル54を通して油圧等の機械的動力の供給を受けて作動するものとしても良い。本実施形態において、ケーブル54は、電力を送るための電線等に加えて、クランプ53及びスペーサ駆動装置57を容器1外から遠隔操作するための信号線を含んでいる。
各スペーサ駆動装置57は、遠隔操作されることにより、その対応するスペーサ55を駆動して、図3−1に示すように、当該スペーサ55を、カッター22の切削により筒状部分に生じた開口6に挿入する。スペーサ55は、当該開口6に挿入されることにより、その鉛直上側にある筒状部分2の縁2eを含む環状の部分、すなわち切断中の環状片8を支持する。図3−2及び図4−1に示すように、筒状部分2から環状片8が切り出されると、当該スペーサ55は、クランプ53共に環状片8を保持する。環状片吊り具50におけるクランプ53の作動、各スペーサ55の開口6への挿入、及び環状片8の保持は、容器1外から遠隔操作される。
(第1及び第2クレーン)
本実施形態においては、図1−3に示すように、2つのクレーン10,10Bを用いる。上述した切断装置吊り具18と係合しており、図1−2に示すように当該切断装置吊り具18を介して切断装置20を搬送可能なクレーン10を、以下に「第1クレーン」と記す。一方、例えば、図1−3及び図4−1に示すように、環状片吊り具50と係合しており、当該環状片吊り具50を介して環状片8を搬送するクレーン10Bを、以下に「第2クレーン」と記す。本実施形態において、切断装置吊り具18は、その鉛直上側の端が第1クレーン10のフック16と係合しており、環状片吊り具50は、その鉛直上側の端が第2クレーン10Bのフック16と係合している。
第1クレーン10は、切断装置吊り具18が切断装置20を保持しており、且つ切断装置20が筒状部分2に固定されていない場合、切断装置吊り具18を介して当該切断装置20を吊り上げて当該切断装置20を搬送することができる。また、切断装置20が筒状部分2の径方向内側にあるとき、第1クレーン10の巻上機15を遠隔操作して切断装置20を鉛直方向に移動させることにより、当該切断装置20が環状片8を切り出すための位置決めを行うことができる(図5−1及び図5−2参照)。また、第2クレーン10Bは、筒状部分2から環状片8が切り出された後、当該環状片8を容器1外に搬送することができる(図4−1及び図4−2参照)。
本実施形態においては、切断装置吊り具18と係合する第1クレーン10と、環状片吊り具50と係合する第2クレーン10Bとの2つのクレーン10,10Bを同時に使用する。例えば、図1−3に示すように、第1クレーン10を遠隔操作して筒状部分2の径方向内側から切断装置吊り具18を容器1外に搬送しながら、第2クレーン10Bを遠隔操作して筒状部分2の鉛直上側にある環状の縁2eに環状片吊り具50を配置することができる。また、図4−2に示すように、第2クレーン10Bを遠隔操作して環状片8を容器1外に搬送しながら、第1クレーン10を遠隔装置して切断装置吊り具18を筒状部分2の径方向内側に搬送することができる。
(接続装置)
本実施形態の解体装置は、図1−1に示すように、筒状部分2の径方向内側に配置された切断装置20に上述したケーブル3を接続可能な装置(以下、単に「接続装置」と記す)30を備えている。本実施形態において、接続装置30は、ケーブル3の送りコネクタ32を保持した状態で鉛直方向に伸縮する機能を有するユニット(以下、伸縮ユニットと記す)33と、当該伸縮ユニット33と結合されており且つ略水平方向に移動可能な台車39とを有している。
本実施形態の台車39は、上述した床4より鉛直上側において水平方向に広がっている床41上を走行する。これにより、台車39及び伸縮ユニット33は、水平方向に移動することが可能である。台車39は、ケーブル3の一部を収容している。本実施形態において、台車39内には、ケーブル3を繰り出すことが可能であり、且つケーブル3を巻き上げることが可能な巻上装置(図示せず)が設けられており、ケーブル3の一部は、台車39内において巻回されている。
本実施形態の伸縮ユニット33は、台車39に結合されている基部36と、当該基部36に対して鉛直方向に相対移動可能な中間部35と、当該中間部35に対して鉛直方向に相対移動可能な先端部34とを含んでいる。先端部34及び中間部35は、略円筒状をなしている。先端部34、中間部35及び基部36は、それぞれ、内部にケーブル3を通すための空間が形成されている。
基部36に対して中間部35が鉛直下側に移動し、当該中間部35に対して先端部34が鉛直下側に移動する。このようにして、伸縮ユニット33は、図1−1に示すように鉛直下側に伸長する。一方、先端部34及び中間部35がそれぞれ基部36側、すなわち鉛直上側に移動することにより、伸縮ユニット33は、図2−2に示すように鉛直上側に収縮する。なお、基部36又は台車39内には、基部36に対して中間部35及び先端部34を駆動するため機構を有することが好適である。
伸縮ユニット33は、その先端部34にケーブル3の送りコネクタ32を保持可能である。具体的には、台車39内の巻上装置によりケーブル3を巻き上げる方向の力を作用させて、送りコネクタ32を先端部34に当接させる。これにより、先端部34の鉛直下側には、送りコネクタ32が保持される。なお、先端部34に送りコネクタ32を保持するための機構を設けることも好適である。
このように構成された接続装置30は、図1−1及び図1−2に示すように、切断装置20が筒状部分2に固定されている場合、筒状部分2の環状の縁2eの径方向内側を通して、伸縮ユニット33を伸長させる。詳細には、送りコネクタ32を保持する先端部34を鉛直下側に移動させる。当該先端部34に保持された送りコネクタ32を、切断装置20の受けコネクタ28に当接させて接続する。なお、伸縮ユニット33が伸長する間、台車39内の巻上装置は、先端部34及び送りコネクタ32が鉛直下側に移動する分、ケーブル3を繰り出す。
また、接続装置30は、図2−1に示すように、切断装置20が筒状部分2に固定されており、且つ筒状部分2の環状の縁2eに環状片吊り具50が配置されている場合には、環状片吊り具50に形成された貫通孔52を通して伸縮ユニット33を伸長させる。すなわち、送りコネクタ32を保持する先端部34を、貫通孔52と環状の縁2eの径方向内側を通して鉛直下側に移動させて、当該送りコネクタ32を受けコネクタ28に接続する。
一方、筒状部分2から環状片8を切り出す際、接続装置30は、図2−2及び図3−1に示すように、送りコネクタ32を受けコネクタ28に接続したまま、伸縮ユニット33を収縮させる。加えて、環状片吊り具50から離間するよう台車39を(退避)移動させる。なお、台車39内の巻上装置は、台車39が移動する分、ケーブル3を繰り出す。これにより、筒状部分2から環状片8を切り出すとき(図6−2のステップS30参照)に、旋回するカッター22の刃22aが、伸縮ユニット33との接触することを防止することができる。
筒状部分2から環状片8が切り出された後、接続装置30は、図3−2に示すように、台車39内の巻上装置によりケーブル3に張力を作用させて切断装置20の受けコネクタ28から送りコネクタ32を外し、当該ケーブル3を巻き上げる。ケーブル3及びその送りコネクタ32を、環状片8の径方向内側及び環状片吊り具50の貫通孔52を通して先端部34の近傍まで移動させる。これにより、図4−1に示すように、環状片8を容器1外に搬送することが可能となる。
なお、接続装置30は、環状片8が切り出された後、筒状部分2から切断装置20が外れるようアクチュエータ26を作動させるために、図5−1に示すように、退避していた台車39を容器1に近接させた後、伸縮ユニット33を伸長させて、ケーブル3を再び切断装置20に接続することも好適である。この場合、筒状部分2から切断装置20が外れた後には、図5−2に示すように、第1クレーン10を遠隔操作して、ケーブル3が接続されている切断装置20を、環状片8の厚さT分、鉛直下側に移動させる。受けコネクタ28及び送りコネクタ32が鉛直下側への移動している間、接続装置30は、ケーブル3を繰り出すことが好適である。
(解体方法)
上述した解体装置を用いた構造物の解体方法について、図6−1及び図6−2を参照して説明する。図6−1及び図6−2は、本実施形態の解体方法を説明するフローチャートである。なお、図6−1には、本実施形態の解体方法のうち容器の筒状部分から環状片を切り出す前の手順を示しており、図6−2には、環状片を切り出して以降の手順を示している。
図6−1にステップS10で示すように、最初に、図1−1に示す容器1から所定の距離、離れている作業エリアにおいて、切断装置20に切断装置吊り具18を装着する。切断装置吊り具18の装着は、例えば、図1−2に示すように容器1から離れた位置にある床43上において行われ、具体的には、切断装置20又は切断装置吊り具18を遠隔操作することにより、実現することができる。なお、床43において作業員の手作業により切断装置吊り具18を切断装置20に装着するものとしても良い。
また、切断装置20にケーブル3を接続する(S12)。例えば、図1−2に示すように、切断装置20の受けコネクタ28の鉛直上側において、接続装置30の伸縮ユニット33を伸長させて、その先端部34が保持している送りコネクタ32を受けコネクタ28に接続する。なお、当該ステップS12においては、接続装置30を用いずに、作業員が手作業により切断装置20にケーブル3を接続するものとしても良い。
これにより、切断装置20のうちカッター22及び旋回駆動装置24は、ケーブル3を介して電力の供給を受けて作動可能となる。同様に、切断装置20を固定するためのアクチュエータ26は、当該ケーブル3を介して、液圧すなわち機械的動力の供給を受けて作動可能となる。切断装置20を保持している切断装置吊り具18を、図1−2に示すように、第1クレーン10のフック16と係合させる。
切断装置20を第1クレーン10により吊った状態で、第1クレーン10を遠隔操作して、容器1外にある床43(図1−2参照)から、図1−1に示す筒状部分2の径方向内側に切断装置20を搬送し、位置決めする(S14)。より具体的には、図1−1に示すように、筒状部分2の径方向内側において、筒状部分2の環状の縁2eより鉛直下側にある所定の位置にカッター22の刃22aが位置するように、切断装置20を位置決めする。なお、切断装置20へのケーブル3の接続(S12)は、切断装置20の位置決め(S14)を行った後に、接続装置30を用いて行わるものとしても良い。
切断装置20の位置決めが行われた後、アクチュエータ26を遠隔操作して、容器1の筒状部分2に切断装置20を固定する(S16)。具体的には、アクチュエータ26は、ケーブル3を介して供給された液圧により作動して、その可動部26aを筒状部分2の径方向外側に移動させる。可動部26aは、筒状部分2の内面2aを押圧する。内面2aと可動部26aとの間に生じる摩擦力により、切断装置20を容器1の筒状部分2に固定することができる。
切断装置20が筒状部分2に固定された後、切断装置20又は切断装置吊り具18を遠隔操作して、切断装置20から切断装置吊り具18を外す(S18)。本実施形態においては、さらに、接続装置30を遠隔操作して、一旦、切断装置20からケーブル3を外す(S20)。ケーブル3を外すことにより、切断装置吊り具18の容器1外への搬出や、環状片吊り具50の容器1内への搬送が容易となる。
切断装置20から切断装置吊り具18が外された後、切断装置吊り具18とフック16が係合している第1クレーン10を遠隔操作して、切断装置20を保持してない切断装置吊り具18を容器1外に搬送する(S22)。例えば、容器1から離れた位置にある床43(図1−2参照)に搬送する。
本実施形態においては、図1−3に示すように、第1クレーン10により切断装置吊り具18を容器1内から搬出しながら(S22)、第2クレーン10Bにより環状片吊り具50を容器1の鉛直上側に搬入する(S24)。このとき、当該ケーブル3の接続装置30は、切断装置吊り具18の搬出作業又は環状片吊り具50の搬入作業の障害とならないよう、容器1から離れた位置に退避させておく。
ステップS24においては、接続装置30を容器1の近傍から退避させた状態で、環状片吊り具50とフック16が係合している第2クレーン10Bを遠隔操作して、環状片8を保持していない環状片吊り具50を、筒状部分2の環状の縁2eに当該環状片吊り具50を配置する。より具体的には、環状片吊り具50のクランプ53が当該縁2eを挟み込めるように配置する(S24)。なお、クランプ53は、ケーブル54を介して電力の供給を受けている。
第2クレーン10Bにより環状片吊り具50が配置された後、そのクランプ53を遠隔操作して、筒状部分2の環状の縁2eに環状片吊り具50を固定する(S26)。具体的には、環状片吊り具50のクランプ53を作動させて、当該クランプ53により当該縁2eを挟み込む。
縁2eに環状片吊り具50を固定した後、接続装置30を遠隔操作して、切断装置20にケーブル3を接続する(S28)。具体的には、容器1から離れた位置に退避していた接続装置30を、容器1の近傍に移動させる。そして、図2−1に示すように、接続装置30の伸縮ユニット33を、鉛直下側に伸長させる。伸縮ユニット33は、送りコネクタ32と、これを保持している先端部34を、環状片吊り具50内に形成された貫通孔52及び筒状部分2の環状の縁2eの径方向内側を通して鉛直下側に移動させる。先端部34に保持されている送りコネクタ32は、受けコネクタ28に挿し込まれて接続される。これにより、切断装置20のうちカッター22及び旋回駆動装置24は、ケーブル3を介して電力の供給を受けて作動可能となる。
なお、本実施形態においては、切断装置20にケーブル3を接続した後、図2−2に示すように、伸縮ユニット33を収縮させ、さらに接続装置30が容器1から離間するよう台車39を移動させる。これにより、カッター22、旋回テーブル23、受けコネクタ28及び受けコネクタ28は、旋回駆動装置24により駆動されて筒状部分2の軸心A周りに旋回することが可能となる。
切断装置20にケーブル3を接続した後、図3−1に示すように、カッター22及び旋回駆動装置24を遠隔操作して、カッター22により筒状部分2を切削しながら、旋回駆動装置24によりカッター22を筒状部分2の周方向に1回転、旋回させる(S30)。本実施形態においては、カッター22の刃22aを回転駆動し、回転している刃22aを、筒状部分2の径方向内側から押し当てて筒状部分2の径方向外側に貫通させる。このように刃22aが回転している状態で、旋回駆動装置24により、刃22aを筒状部分2の周方向に(すなわち、軸心A周りに)1回転、旋回させる。これにより、筒状部分2から環状片8を切り出すことができる(図3−2参照)。
この筒状部分2から環状片8を切り出すステップS30において、筒状部分2のうちカッター22の切削により筒状部分2に生じた開口(いわゆるスロット)6は、当該カッター22が旋回するに従って周方向に延びる。本実施形態において、当該開口6には、断面が楔状をなしているスペーサ55を挿入する。当該開口6は、より具体的には。筒状部分2の径方向に刃22aが貫通して生じたものであり、筒状部分2を切断して形成された鉛直方向に隣り合う2つの切断面の間の空間である。当該開口6は、当該刃22aが筒状部分2の軸心A周りを旋回するに従って当該筒状部分2の周方向に延びる。
環状片吊り具50は、筒状部分2の周方向に間隔をあけて配列された複数のスペーサ55と、当該複数のスペーサ55と一対一で対応して配列されており、それぞれ対応するスペーサ55を駆動可能な複数のスペーサ駆動装置57とを有している。各スペーサ駆動装置57は、カッター22の刃22aにより開口6が形成された後、遠隔操作されることにより、その対応するスペーサ55を駆動して、当該スペーサ55を上述した開口6に挿入する。当該ステップS30において、複数のスペーサ55は、カッター22が旋回するに従って筒状部分2の周方向に延びる開口6に、順次挿入される。
各スペーサ55は、その鉛直上側にある切断中の環状片8を、その鉛直下側にある筒状部分2に対して支持する。筒状部分2の周方向にカッター22が1回転、旋回して、環状片8が切り出されると、スペーサ55は、クランプ53と共に当該環状片8を保持する。
本実施形態において、環状片吊り具50のクランプ53が筒状部分2の環状の縁2eを把持しているとき、スペーサ55及びスペーサ駆動装置57は、当該クランプ53より筒状部分2の径方向内側に配置されている。スペーサ駆動装置57は、その対応するスペーサ55を回動可能に支持している。スペーサ駆動装置57は、遠隔操作により当該スペーサ55を回動させて、筒状部分2の径方向内側から当該開口6にスペーサ55を挿入する。
筒状部分2から環状片8を切り出した後、接続装置30を遠隔操作して、図3−2に示すように、切断装置20からケーブル3を外す。具体的には、接続装置30によりケーブル3に対して切断装置20から外れる方向の力(いわゆる張力)を作用させて、切断装置20にある受けコネクタ28からケーブル3の送りコネクタ32を外す。接続装置30は、環状片吊り具50の貫通孔52及び環状片8の環状片8の径方向内側を通してケーブル3を巻き上げる(図3−2参照)。
なお、切断装置20からケーブル3を外してケーブル3を巻き上げる方法は、この態様に限定されるものではない。切断装置20からケーブル3を外す方法には、様々な方法を用いることができる。
例えば、接続装置30と共に旋回駆動装置24を遠隔操作して、接続装置30がケーブル3を巻き上げながら、旋回駆動装置24が、切断装置20の旋回する部分、すなわちカッター22、旋回テーブル23及び受けコネクタ28を、1回転、環状片8を切り出した時とは逆方向に旋回させることも好適である。
なお、旋回駆動装置24が、1回転、環状片8を切り出した時とは逆方向に旋回させた後、接続装置30によりケーブル3を巻き上げ、ケーブル3に上述した張力を作用させて、受けコネクタ28から送りコネクタ32を外すものとしても良い。
また、旋回駆動装置24が、1回転、逆方向に旋回させた後、接続装置30が、ケーブル3を巻き上げながら伸縮ユニット33を、貫通孔52及び環状片8の内側を通して図2−1に示すように伸長させて、受けコネクタ28が先端部34に保持された状態で、ケーブル3を巻き上げながら伸縮ユニット33を収縮させることにより、受けコネクタ28から送りコネクタ32を外すものとしても良い。
切断装置20からケーブル3を外した後、第2クレーン10Bを遠隔操作して、環状片8を、これを保持している環状片吊り具50と共に、容器外から離れた場所にある解体作業エリア(図示せず)に搬送する。なお、当該解体作業エリアにおいて、環状片8は、より小さな片に解体される。
本実施形態においては、図4−2に示すように、第2クレーン10Bにより環状片8を容器1から搬出する(S34)と共に、第1クレーン10により切断装置吊り具18を容器1の鉛直上側に搬入する(S36)。なお、このとき、ケーブル3は、切断装置20から外されており、当該ケーブル3の接続装置は、切断装置吊り具18の搬入作業又は環状片吊り具50の搬出作業の障害とならないように、容器1から離れた位置に退避させておく。
ステップS36においては、図4−2に示すように、接続装置30を容器1の近傍から退避させた状態で、切断装置吊り具18とフック16が係合している第1クレーン10を遠隔操作して、切断装置吊り具18を、筒状部分2の径方向内側に搬送し、切断装置20上に配置する。より具体的には、切断装置吊り具18が切断装置20に装着される位置に配置する。
第1クレーン10により切断装置吊り具18が配置された後、切断装置吊り具18又は切断装置20を遠隔操作して、図5−1に示すように、切断装置吊り具18を切断装置20に装着する(S38)。本実施形態においては、さらに、接続装置30を遠隔操作して、切断装置20にケーブル3を接続する。具体的には、退避していた台車39を容器1の近傍に移動させ、先端部34に送りコネクタ32を保持している伸縮ユニット33を伸長させて当該送りコネクタ32を切断装置20の受けコネクタ28に接続する。これにより、アクチュエータ26は、図示しない動力源から液圧すなわち機械的動力の供給を受ける。
切断装置20にケーブル3を接続した後、アクチュエータ26を遠隔操作して、切断装置20を、容器1の筒状部分2から外す(S44)。具体的には、アクチュエータ26は、ケーブル3を介して供給された液圧により作動して、その可動部26aを筒状部分の径方向内側に移動させる。これにより、可動部26aと筒状部分2の内面2aとの間の係合が解かれる。これにより、切断装置20は、これを保持する切断装置吊り具18を介して、第1クレーン10に吊られた状態となる。第1クレーン10を操作することにより、切断装置20は、筒状部分2に対して鉛直方向に相対移動可能となる。
切断装置20を筒状部分2から外した後、第1クレーン10を遠隔操作して、切断装置20を、図5−2に示すように、鉛直下側に移動させて位置決めする(S46)。具体的には、筒状部分2の径方向内側において、切断装置20を、図5−1に示す環状片8を切り出した後の位置から環状片8の厚さ(図4−2及び図5−2に寸法Tで示す)分、鉛直下側に移動させる。すなわち、図5−2に示すように、カッター22の刃22aが、筒状部分2の環状の縁2eから環状片8の厚さ分、鉛直下側に位置するように、切断装置20を位置決めする。
切断装置20を位置決めした後、ステップS16に戻り、アクチュエータ26を遠隔操作して、筒状部分2に切断装置を固定する。ステップS16(切断装置の固定)〜S46(切断装置の位置決め)までのステップを繰り返すたびに、ステップS30において筒状部分2からは環状片8が切り出され、当該環状片8が、解体作業エリアに搬送される(S34)。図示しない解体作業エリアにおいて、略同一形状をなしている複数の環状片8は、それぞれ、より小さな片に解体される。このような小さな片は、例えば、放射性廃棄物として処理することが容易となる。
本実施形態によれば、大型の容器1の解体に際して、作業員が重量物を取り扱うことや、放射線に曝されることを抑制して、より安全に解体作業を行うことができる。なお、本実施形態によれば、筒状部分2のうち切断装置20の切削によりが生じた開口6には、スペーサ55が挿入されるものとしたので、切断中の環状片8の自重によって当該開口6がふさがることを防止することができ、筒状部分2から環状片8を切り出すステップS30において、切断装置20による切断作業をより容易に行うことができる。
(解体方法:S16,30,32,34,40,44,46)
(まとめ)
以上に説明したように本実施形態の解体方法においては、図6−1及び図6−2に示すように、切断装置20を、アクチュエータ26を遠隔操作して筒状部分2の径方向内側に固定するステップ(S16)と、カッター22及び旋回駆動装置24を遠隔操作して、カッター22により筒状部分2を切削しながら旋回駆動装置24によりカッター22を周方向に1回転旋回させて、筒状部分2から環状片8を切り出すステップ(S30)と、切断装置20にケーブル3を接続可能であり且つ切断装置20からケーブル3を外すことが可能な接続装置30を遠隔操作して、筒状部分2の径方向内側に配置された切断装置20から、筒状部分2の鉛直上側にある環状の縁2eの径方向内側を通してケーブル3を外すステップ(S32)と、筒状部分2の鉛直上側に配置されており、環状片8を搬送可能なクレーン10Bを遠隔操作して、当該環状片8を容器1(構造物)外に搬送するステップ(S34)と、接続装置30を遠隔操作して、縁2eの径方向内側を通して切断装置20にケーブル3を接続するステップ(S40)と、アクチュエータ26を遠隔操作して、切断装置20を筒状部分2から外すステップ(S44)と、切断装置20と係合するクレーン10を遠隔操作して、切断装置20を鉛直下側に移動させて位置決めするステップ(S46)と、を含むものとした。
本実施形態の解体方法によれば、筒状部分2から環状片8を切り出した(S30)後、接続装置30を遠隔操作して、筒状部分2の鉛直上側にある環状の縁2eの径方向内側を通して切断装置20からケーブル3を外す(S32)ものとしたので、ケーブル3を外した後、即座に当該環状片8をクレーンにより容器1から搬送する(S34)ことができる。また、環状片8を搬送した(S34)後、接続装置30を遠隔操作して、切断装置20に当該ケーブル3を接続する(S40)ことにより、アクチュエータ26を作動させて切断装置20を筒状部分2から外す(S44)が可能となり、次の環状片8を切り出すための位置決め(S46)を行うことができる。これにより、筒状部分2を有する容器1(構造物)から複数の環状片8を切り出して搬送する作業を、遠隔操作により比較的短時間で行うことができる。
また、本実施形態の解体方法においては、第1クレーン10を遠隔操作して、筒状部分2の径方向内側から容器1(構造物)外に切断装置吊り具18を搬送しながら、第2クレーン10Bを遠隔操作して、筒状部分2の鉛直上側の縁2eに環状片吊り具50を配置するステップ(図6−1のS22及びS24参照)と、第2クレーン10Bを遠隔操作して、環状片8を容器1外に搬送しながら、第1クレーン10を遠隔装置して切断装置吊り具18を筒状部分2の径方向内側に搬送するステップ(図6−2のS34及びS36参照)とを、さらに含むものとした。切断装置20を筒状部分2の径方向内側に残しつつ、2つのクレーン10,10Bを用いて、環状片8及び環状片吊り具50の搬送と、切断装置吊り具18の搬送とをほぼ同時に行うことができるため、筒状部分2から複数の環状片8を切り出して搬送する作業を、より短時間で行うことができる。
なお、上述した本実施形態においては、図1−3及び図6−1に示すように、第1クレーン10により切断装置吊り具18を容器1外に搬送しながら(S22)、第2クレーン10Bにより環状片吊り具50を容器1の鉛直上側に搬送する(S24)ものとしたが、本発明に係る解体方法は、この態様に限定されるものではない。ステップS22及びS24において、切断装置吊り具18及び環状片吊り具50は、同じクレーンを用いて搬送するものとしても良い。
例えば、ステップS22において、同じクレーンにより切断装置吊り具18を、所定の場所に搬送した後、ステップS24において、当該クレーンのフックに環状片吊り具50を係合させ、当該クレーンにより環状片吊り具50を容器1の鉛直上側に搬送して、筒状部分2の環状の縁2eに当該環状片吊り具50を配置することも可能である。
また、本実施形態においては、図4−2及び図6−2に示すように、第2クレーン10Bにより環状片8及び環状片吊り具50を解体作業エリアに搬送しながら、第1クレーン10により切断装置吊り具18を容器1の径方向内側に搬送するものとしたが、本発明に係る解体方法は、この態様に限定されるものではない。ステップS34及びS36において、切断装置吊り具18、環状片8及び環状片吊り具50は、同じクレーンを用いて搬送することも可能である。
例えば、ステップS34において、同じクレーンにより環状片8及び環状片吊り具50を、解体作業エリアに搬送した後、ステップS36において、当該クレーンのフックに切断装置吊り具18を係合させ、当該クレーンにより切断装置吊り具18を容器1の径方向内側に搬送して、切断装置20上に配置することも可能である。
また、本実施形態において、スペーサ55及びスペーサ駆動装置57は、環状片吊り具50のうちクランプ53より径方向内側に配置されるものとしたが、本発明に係るスペーサ及びスペーサ駆動装置は、この態様に限定されるものではない。本発明に係るスペーサ及びスペーサ駆動装置は、筒状部分2を挟み込むクランプ53より筒状部分2の径方向外側に配置されているものとしても良い。
また、本実施形態において、スペーサ駆動装置57は、スペーサ55を回動させることにより、当該スペーサ55を開口6に挿入するものとしたが、本発明に係るスペーサ駆動装置は、この態様に限定されるものではない。本発明に係るスペーサ及びスペーサ駆動装置は、カッター22の切削により生じた開口6にスペーサ55を挿入可能なものであれば良く、スペーサ駆動装置は、筒状部分2の径方向にスペーサを駆動して、開口6に当該スペーサを挿入するものとしても良い。
また、本実施形態において、スペーサ55は、断面が楔状をなしているものとしたが、本発明に係るスペーサは、この形態に限定されるものではない。本発明に係るスペーサは、カッターにより筒状部分に形成された開口6に滑らかに挿入することができ、且つ筒状部分2のうち当該開口6より鉛直上側にある部分、すなわち切断中の環状片8を支持可能なものであれば良い。本発明に係るスペーサには、様々な形状のものを用いることができる。
また、本実施形態においては、伸縮ユニット34によって送りコネクタ32を受けコネクタ28に接続するものとして説明したが、これに限られない。たとえば、送りコネクタ32を十分な重量を有するものとして構成し、接続装置30からケーブルで受けコネクタ28と水平位置を合わせて吊り降ろし、送りコネクタ28の自重により受けコネクタ28と接続されるものとしてもよい。あるいは、送りコネクタ32に受けコネクタ28側を把持するクランプ機構を設けて、送りコネクタ32を受けコネクタ28に吊り降ろしてからクランプ機構を動作させることで接続されるものとしてもよい。クランプ機構を動作させるアクチュエータは、電動でも流体圧によるものでもよい。
さらに、上述のように送りコネクタ32を吊り降ろす場合に、水平方向の位置合わせ精度や送りコネクタ32の揺動による影響を緩和するため、送りコネクタ32を受けコネクタ28にガイドする機構を設けてもよい。ガイド機構は、例えば受けコネクタ28の上部に、斜め上方向に放射状に広がる構造物(例えばろう斗状の構造物)とし、受けコネクタ28の近傍まで吊り下ろされた送りコネクタ32が当該構造物の上面に当接し、さらに吊り下ろされると受けコネクタ28へ導かれる機能を有するものである。
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態の解体装置について、図6−2及び図7を参照して説明する。図7は、本実施形態の解体装置を説明する模式図である。本実施形態の解体装置は、環状片吊り具と、クレーンとの間に作用する力に応じて歪むばねを、さらに備える点で、第1の実施形態と異なっている。なお、第1の実施形態と略共通の構成及び方法については、同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の解体装置は、環状片8を保持可能な環状片吊り具50Cと、第2クレーン10Bのフック16Cとの間にばね17が設けられている。本実施形態のばね17は、環状片吊り具50Cとフック16Cとの間に配置された引張コイルばねである。ばね17は、その軸心が鉛直方向に延びており、鉛直上側の端17aがフック16Cと係合しており、且つ鉛直下側の端17cが環状片吊り具50Cと係合している。なお、ばね17は、第2クレーン10Bのフック16Cの一部分を形成しているものとしても良い。
ばね17は、環状片吊り具50Cと当該フック16Cとの間に作用する力(張力)に応じて鉛直方向に伸長する。ばね17は、筒状部分2から環状片8が切り出された後、環状片吊り具50C及び環状片8の荷重に応じた長さになる。
上述した環状片8を切り出すステップ(図6−2のステップS30参照)においては、フック16Cと環状片吊り具50Cとの間に作用する力が所定の値となるように当該第2クレーン10Bを遠隔操作する。すなわち、第2クレーン10Bにより環状片8を保持している環状片吊り具50Cを吊り上げて、ばね17の歪(具体的には、ばね17の長さ)を作業員の目視等により確認しながら、カッター22による筒状部分2から環状片8を切り出す(S30)。このとき、ばね17の長さは、上述した「環状片吊り具50C及び環状片8の荷重に応じた長さ」であることが好ましい。
本実施形態においては、ばね17が所定の長さになるように第2クレーン10Bを遠隔操作し、当該第2クレーン10Bにより環状片吊り具50Cを鉛直上側に引張る(吊り上げる)力を作用させながら、図6−2のステップS30に示す筒状部分2から環状片8を切り出す作業を行う。
本実施形態によれば、切断中の環状片8の自重によって開口6が塞がることを防止することができる。また、筒状部分2から環状片8を切り出した瞬間に、フック16Cと環状片吊り具50Cとの間に作用する力の変動(すなわち衝撃)や、環状片8の変位が生じても、これらをばね17により吸収又は緩和することが可能となる。本実施形態によれば、第1の実施形態のように切断中の環状片8をスペーサ55により支持する必要がない。スペーサ55や、当該スペーサ55を駆動するスペーサ駆動装置57が不要なため、低コストの環状片吊り具50Cを実現することができる。
なお、本実施形態において、ばね17には、引張コイルばねが用いられるものとしたが、本発明に係るばねは、これに限定されるものではない。本発明に係るばねは、クレーンと環状片吊り具との間に作用する力に応じて歪むものであれば良く、様々な形態のばねを用いることができる。
なお、本実施形態においては、図6−2にステップS30示す筒状部分2から環状片8を切り出すステップにおいて、第2クレーン10Bと環状片吊り具50との間に作用する力を、ばね17の歪みすなわち長さを目視により確認するものとしたが、本発明において、クレーンと環状片吊り具との間に作用する力を確認する手法は、この態様に限定されるものではない。例えば、ばね17の歪みを様々な手法により計測しながら、筒状部分2から環状片8を切り出すことも好適である。ばね17の歪みを計測する手法には、例えば、歪ゲージによる計測や、レーザ計測等、様々な計測器や計測方法を用いることができる。
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態の解体装置について、図6−2及び図8を参照して説明する。図8は、本実施形態の解体装置を説明する模式図である。本実施形態の解体装置は、環状片吊り具が、カッターの切削により筒状部分に生じて周方向に延びる開口を、当該筒状部分の径方向外側において覆うカバーを、さらに有する点において、第2の実施形態と異なっている。なお、第1及び第2の実施形態と略共通の構成及び方法については、同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の解体装置の環状片吊り具50Eは、上述した開口6を、当該筒状部分2の径方向外側において覆うためのカバー(以下、外側カバーと記す)60を有している。具体的には、当該開口6は、カッター22の切削により筒状部分2に生じて当該筒状部分2の周方向に延びている。外側カバー60は、当該開口6の径方向外側において当該開口6に沿って当該周方向に延びている。本実施形態において、外側カバー60は、環状をなしており、環状片吊り具50Eのクランプ53が筒状部分2の環状の縁2eを把持しているときに当該筒状部分2と同軸をなしている。
外側カバー60は、図8に示す筒状部分2の軸心Aを含む縦断面において、当該筒状部分2の縁2eを挟み込むクランプ53より径方向外側に突出している部分(以下、外側突出部と記す)61と、筒状部分2の径方向において開口6と対向している部分(以下、対向部と記す)63と、筒状部分2の外面2cと接触する部分(以下、接触部と記す)65とを有している。本実施形態において、外側突出部61は、クランプ53の径方向外側に結合されており、対向部63は、当該外側突出部61から鉛直下側に延びている。接触部65は、開口6より鉛直下側において当該対向部63から径方向内側に延びている。
本実施形態において、外側カバー60のうち外側突出部61及び対向部63は、剛体で構成されている。一方、接触部65は、筒状部分2の外面2cと密着するよう、弾性変形可能に構成されている。接触部65は、合成樹脂等のエラストマーで構成された環状の部材により実現することができる。また、接触部65は、内部に空気等の気体が充填されるエアバック(図示せず)を、筒状部分2の周方向に隙間なく配列することにより実現することもできる。この場合、内部に充填される気体は、筒状部分2をカッター22により切削する際に、エアバック内に気体を充填して当該エアバックを膨らますことが好適である。
本実施形態によれば、金属製やコンクリート製の筒状部分を、カッター22により切削するときに生じる、切り屑、砥粒を含む液、ヒューム等の有害物質が、開口6から容器1外に放出されることを抑制することができる。なお、カッター22の切削により生じ、外側カバー60と開口6との間にある空間に溜まった有害物質は、掃除機等の塵芥を回収可能な装置により回収される。
〔第4の実施形態〕
第4の実施形態の解体装置及び解体方法について、図6−2及び図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の解体装置を説明する模式図である。本実施形態の解体装置は、切断装置が、前記カッターが筒状部分を切削することにより生じた物質を、吸引して保持可能な吸引装置を、さらに有する点で、第3の実施形態と異なっている。なお、第1、第2及び第3の実施形態と略共通の構成及び方法については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の解体装置においては、図9に示すように、切断装置20Gは、ケーブル3を介して機械的動力又は電力の供給を受けて作動する装置として、上述したカッター22、旋回駆動装置24、アクチュエータ26に加えて、当該カッター22が筒状部分2を切削することにより生じた有害物質を吸引可能な吸引装置70を有している。吸引装置70は、筒状部分2の径方向内側においてカッター22の近傍に配置されている。
本実施形態において、吸引装置70は、カッター22の刃22aが筒状部分2を切削することにより生じた塵芥を主に吸引し、吸引した塵芥を保持する機能を有している。吸引装置70は、吸引した塵芥を保持可能な本体71と、当該本体71からカッター22の刃22aすなわち筒状部分2に生じた開口6に向けて延びており、当該開口6の近傍において生じた塵芥を本体71に導くノズル72とを有している。
ノズル72は、塵芥を空気と併せて吸入する吸入口73を有しており、当該吸入口73は、刃22aの鉛直下側であって開口6の近傍に配置されている。ノズル72は、吸入口73から吸入された塵芥と空気を本体71に導く。本体71は、ノズル72を通して吸引された塵芥と空気の混合流体から当該塵芥を分離するフィルタ(図示せず)を有しており、分離された塵芥を保持する機能を有している。
吸引装置70は、カッター22及び旋回駆動装置24と同様に、ケーブル3を介して電力の供給を受けて作動する。吸引装置70の作動は、カッター22及び旋回駆動装置24と同様に、遠隔操作される。吸引装置70は、旋回駆動装置24により駆動されて、筒状部分2の周方向に旋回する。吸引装置70は、カッター22の切削により生じた塵芥を吸引しながら、カッター22と共に旋回する。
本実施形態によれば、カッター22による筒状部分2の切削により生じた塵芥等の有害物質が、容器1内に飛散することを防止することができる。これにより、容器1内に配置された切断装置20等が塵芥等により汚染されることを抑制することができる。
なお、本実施形態において、吸引装置70は、その本体71内において、吸引した混合流体から塵芥を分離してこれを保持するものとしたが、本発明に係る吸引装置は、この態様に限定されるものではない。吸引装置は、カッター22が筒状部分2を切削することにより生じた物質を吸引可能なものであれば良く、例えば、吸引した塵芥と空気の混合流体を、図示しないホースを通して容器1外に送出して、容器1外において混合流体から塵芥を分離して回収するものとしても良い。
〔他の実施形態〕
以上に説明した実施形態の他に、筒状部分を有する構造物を解体する解体装置及び解体方法には、種々の変更が可能である。
なお、本実施形態の切断装置20において、カッター22及び旋回駆動装置24は、電力の供給を受けて作動可能となり、アクチュエータ26は、液体すなわち機械的動力の供給を受けて作動可能となるものとしたが、本発明に係るカッター、旋回駆動装置及びアクチュエータは、この態様に限定されるものではない。本発明に係るカッター、旋回駆動装置及びアクチュエータは、容器1外にある動力源からケーブル3を通して動力の供給を受けて作動可能となるものであれば良い。例えば、アクチュエータは、ケーブル3を通して電力の供給を受けて作動可能となるものとしても良い。また、カッター及び旋回駆動装置は、ケーブル3を通して液圧等の機械的動力の供給を受けて作動可能となるものとしても良い。なお、ケーブル3を介して伝達される機械的動力は、液圧に限定されるものではなく、空気圧等を用いることも好適である。
また、各実施形態において、切断装置20のカッター22は、ディスク状の刃22aを有しており、電力の供給を受けて作動し、当該刃22aが回転することにより、金属で構成された筒状部分2を切削する、いわゆるディスクソーであるものとしたが、本発明に係るカッターは、この態様に限定されるものではない。カッターは、ケーブルを介して油圧等の機械的動力又は電力の供給を受けて作動し、金属やコンクリートで構成された筒状の構造物を切削可能なものであれば良い。本発明に係るカッターには、水の噴流により構造物を切削するウォータジェット加工装置を用いることができ、特に、砥粒や研磨材等を含んだ水の噴流により構造物を切削するアブレイシブ・ウォータジェット加工装置を用いることも好適である。また、筒状の構造物が金属製である場合、カッターには、高い温度で金属を酸化させてその酸化物をガスにより吹き飛ばすガス溶断装置や、レーザのエネルギによって金属を溶融させて切断するレーザ切断装置を用いるものとしても良い。
また、各実施形態において、切断装置20のアクチュエータ26は、液圧を供給を受けて作動して、その可動部26aを径方向外側に移動させて、当該可動部26aが筒状部分2の内面2aを押圧するものとしたが、本発明に係るアクチュエータは、この態様に限定されるものではない。本発明に係るアクチュエータは、ケーブルを介して液圧等の機械的動力又は電力の供給を受けて作動し、筒状の構造物の径方向内側において所望の位置に切断装置を固定可能なものであれば良く、油圧シリンダ等、様々な形態のアクチュエータを用いることができる。
なお、各実施形態において、解体対象である構造物すなわち容器1は、金属製の原子炉圧力容器であるものとしたが、本発明に係る解体技術が適用される構造物は、これに限定されるものではない。本発明に係る解体技術は、鉛直方向に軸心が延びる筒状部分を含む構造物であれば適用することができる。例えば、原子炉圧力容器からの放射線を遮蔽するために原子炉圧力容器の径方向外側に配置されて当該原子炉圧力容器を囲うコンクリート製の壁体、いわゆる遮蔽壁(防護壁)にも、本発明の解体技術を適用することができる。また、鉛直方向に軸心が延びる筒状部分を含むものであれば、貯水タンクや石油タンク等、大型の容器にも本発明の解体技術を適用することができる。
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。